2017年3月23日木曜日

「トランプ・ロシア共謀説を支える証拠は期待するな」 - 民主党の長老らが警告



前回のブログで予告したように、今日のブログでは『「トランプ・ロシア共謀説を支える証拠は期待するな」 - 民主党の長老らが警告』と題された記事 [1] をご紹介して、トランプ・ロシア共謀説についてさらに深く突っ込んでみたいと思う。これはグレン・グリーンワルドが最近発表したものだ。

トランプ大統領候補とロシアとの共謀をあれ程喧伝してきたヒラリー・クリントンの支持派もついにその証拠を見せることは出来ずに、このキャンペーンに幕引きをせざるを得ないかのようだ。

もしそうならば、陰謀が本当にあったのか、それとも、前回のブログでご紹介したマーガレット・キンバリーが言うように、大統領選における大失敗から皆の関心を他所へ向けるためだけのものであったのかは依然として曖昧なままで幕引きとなってしまう。しかし、民主党の長老たちが望むように幕引きが行われた場合には、大多数の人たちは「やっぱりそうだったのか。あれはフェークニュースだったのだ」と受け取ることだろう。この大騒乱を引き起こした民主党指導部の責任は避けられそうにはない。その責任はいったいどのように取るのだろうか?



<引用開始>

MSNBCテレビから始まって市や町の公会堂における集会に至るまで、トランプの勝利以降、民主党の母体にとってもっとも重要な案件はロシアであった。多くの場合、他の課題に対する関心は希薄とならざるを得なかった。米国での選挙結果を操作するためにトランプの選挙運動の中枢がクレムリンと結託していたことを証明しない限りはトランプの大統領職を剥奪することは出来ないけれども、この路線への執着は継続して見られた。しかし、この主張を支える証拠は完全に皆無であった。 

民主党員にとっては主要な問題点は余りにも多くのメディア界の人物インターネット上のペテン師らが関連性が希薄になるばかりの、事実に根拠を置いてはいない陰謀を提言することによって個人的に利益を得ていることであった。たとえば、右翼系のメディアの論客らはビル・クリントンやオバマの選出後にそうしていたのである。今や、何百万人もの党の先兵は「トランプ・ロシア陰謀説」を信じているのだが、少なくとも現時点では何の証拠もない。彼らはその日が間違いなくやって来ること、つまり、その日が真近に迫り、この陰謀説が実証され、トランプが排除されることを待ち望んでいるのだ。



Photo-1: MSNBCのレイチェル・マッダウの番組:ロシア人がわれわれの政府を制御しているのかも・・・

意図的に扇動して来たとは言え、民主党の長老らはこの期待感には明らかに困惑しており、そうした期待感を今は鎮静しようとしている。かっては採用しようとしたベースには何の理由も証拠もないという事実を多くの人たちが示そうとしている。

MSNBC主導のサーカスに冷や水をかけようとした人物の中でもっとも最近の例はオバマ大統領の前CIA長官代行のマイケル・モーレルである。この文脈の中で彼にもっとも注目が集まる理由は何かと言えば、彼は(ヒラリー・)クリントンの支持者の間ではもっとも弁舌が立つ「CIA代理人」のひとりであったという点だ。8月には、彼はニューヨークタイムズ紙上でクリントンの支持を表明したばかりではなく、トランプの不忠をはっきりと批判する最初の高官となった。「諜報関係者の間では、われわれはプーチン氏はトランプ氏を偶然にもロシアの代理人として起用したと言いたい」と述べた。 

水曜日の夜、モーレルは諜報関係者のフォーラムに現れて、 「トランプ陣営のメンバーがロシアと結託した」という主張については疑義を挟んだ。「トランプの選挙運動でロシアと共謀したという疑義については、煙が上がったけれども、火は見つからない」と彼は言った。さらに、「キャンプファイアーも無く、ろうそくの火も無く、火の粉さえも無い。でも、たくさんの人たちがそれを探し回っている」と付け加えた。

オバマの前CIA長官は元来はバズフィードが出版したものであって、悪名高い、爆発的な威力を持っている「ファイル」の信ぴょう性に関しては真剣な疑いを投げかけ、その著者であるクリストファー・スティールは情報源と話しをするために仲介人に金を支払ったと言っている。「このファイルがわれわれを何処かへ導いてくれるわけではなく、そんな風にはとても思えない」と彼は言っている。

モーレルの意見はオバマ政権では国家安全保障の分野ではトップであるジェームズ・クラッパーの断定的な所見を反映したものである。ジェームズ・クラッパーは、先週 [訳注:35]、「Meet the Press」 というテレビ番組で彼がオバマ政権で国家情報長官を務めていた頃、「トランプ・ロシア陰謀説」を支える証拠は何も無かったと述べている。「そのような陰謀の証拠は何もなかった」と、クラッパーは明快に述べた。2013年に公のCIAのポジションから去ったものの諜報のコミュニティーとは依然として繋がりを保とうとしているモーレルとは違って、クラッパーはたった7週間前まではオバマ政権の国家情報長官であった。彼は120日には職から離れた。

多分もっとも明白な点としては、(これらの事項を調査するよう求められている)上院諜報委員会の民主党議員らはバズフィードニュースに対して最近こう言っている。 つまり、「もしも陰謀の証拠が見つからなかった場合、民主党の基盤がどうなるのだろうかと思うと、皆が茫然自失の状態だ。」 今や、そのような状況となりそうだ。「ある高官が言ったように、始まったばかりのパネルの調査を巡っては過剰に膨張した期待感があって、これには目に見える程に欲求不満が高まっている」と、バズフィードのアリ・ワトキンスが書いている。

さらに、「もしも上院委員会がトランプとロシアの諜報工作員とを結ぶ特効薬を見い出さなかったとしたら、この調査は誤魔化しとして見られることだろうと何人かの委員会メンバーは嫌々ながらも認めている。」 メンバーのひとりはワトキンスに次のように言った。「結論は皆が期待しているような内容にはならないだろうと思う。」 

これらすべてをもっとも意味のある物事にしているのはクラッパーやモーレルといった高官らが熟練を積んだ偽情報の工作員であるという事実だ。特に、クラッパーは自分の関心事を前進させるためには嘘をつくことさえも厭わない。それにもかかわらず、そうすることの動機は持ちながらも、彼らは陰謀の証拠があると主張することは拒んでいる。事実、証拠が存在すると考えることは止めるようにと彼らは明確に要請しているのである。法律が認識しているように、信ぴょう性に欠けた主張はそれらが「関心に逆らって」成された主張であれば ある程より信じられ易くなるのである。

メディア界の人物らも同様に期待感を鎮静させようとし始めた。「スティール・ファイル」を出版したバズフィードの編集長を務めるベン・スミスは、昨日、警告の記事を発表した それによると、「民主党の母体が抱く動かぬ証拠に対する期待感は非常に強く、ツイッターやケーブルニュースは私の同僚であるチャーリー・ウーゼルが呼ぶところの「ブルー・ディテクティブ」たちで一杯だ。これは左翼であるグレン・ベックの新しいバージョンであって、デジタル黒板は線や矢印で一杯だ。」 さらに、スミスはこう付け加えている。「トランプのためのロシアの行動に関するニュースは明白であるが、トランプの側近とプーチンの側近との間の連携については何の詳細も現れては来なかった。」 スミスの中核的な警告は次のように述べている:

トランプの批評家らは昨年の「フェークニュース」の台頭や圧倒的に右翼的で、代替的な事実に基づく政治手法には恐怖を覚えていた。政敵として同じような妄想の誘惑に負けることがないように、さらには、保守派や進歩派からではなく、結局のところ、人間の特性から力を引き出すフィルターバブルに陥らないように、彼らは今注意深く行動することが必要だ。

そして、ストーリーならびに実際の情報、妄想、さらには、それを取り巻く偽情報、等を網羅するわれわれが何を知っており、何は知らないかを明確に報道し、判断し、皆が聞きたがっていることを伝えるという糖分による一時的な興奮状態に陥らないように、われわれは抵抗し続けなければならない。

非常に長い間、民主党はこのトランプ・ロシア陰謀説について基本的な理由や合理性および疑念を注入しようとする人たちを悪魔視し、「クレムリンの工作員だ」、あるいは、「プーチンの愛人だ」と称して、彼らを中傷してきた。今週のことではあるが、シンクタンクの「Center for American Progress」が反逆罪という言葉さえをも用いた報告書を発行し、米国には ロシアに奉仕する「第5列」が存在していることを公表したが(これはテロ戦争に反対する者は誰でも反米的な第5列だとしたアンドリュー・サリバンの悪名高い2001年の宣言と似たり寄ったりである)、ジョン・マケインはさらに東方へ拡大してモンテネグロを参加国として含めるというNATOの良識に関して疑義を表明するランド・ポールの声明を聞いていたが、それに速やかに反応して、次のように公言した。「ポールはウラジミール・プーチンのために働いている」と。 

しかし、自己本位でお祭り気分の銀行家や党のハッカーたちによって民主党の母体が信じるようにと導かれた来た事柄に関して現われ始めた深刻な疑いの念や恐怖を感じ取って、このストーリーが過剰に展開することを抑えようとする協調的な努力が突然出現した。今や抑制しようとする人たちは非常に多く、「反逆者だ」とか「ロシア支持者だ」とか言って彼ら全員を中傷することはひどく困難になっているが、何ヶ月にもわたってこれらの問題点を巡って故意に醸成され、扇動されて来た興奮状態を見ると、この抑制の動きは余りにも小さく、余りにも遅すぎたと言えるかも知れない。数多くの民主党支持者は精神錯乱した陰謀説支持者が示す典型的な段階に至っている。この段階においては、陰謀論が誤りであることを証明する証拠こそが陰謀論の存在を証明するものであると見なす程だ。そして、そのことを指摘すると、指摘した者は即座に疑いの目で見られるのだ。

これらの問題点に関して公式な、信用が置ける調査、つまり、証拠が公開されるような調査を実施することが早急に求められている。陰謀を何時までもそのままに残すのではなく、思惑主導の、しかも、情報源が不明なCIAのリーク、あるいは、統制がとれない党員を投入するために必要なケーブルニュースのホスト役からの情報に基づいてではなく、冷厳な事実に基づいてこれらの問題点を解決するにはそもそもこれこそが真の姿であろう。

カーター・ページのような低レベルの工作員の提訴、または、コンピュータへの不法侵入には関係がない別件でポール・マナフォートのような人物を訴追することを視野に入れることは確かに可能であるが、トランプの排除をするために民主党員らが期待していた特効薬は今まで以上に遠のいてしまったようだ。



Photo-2: 新たなツイッター上の探偵たちは、アレックス・ジョーンズになることもなく、トランプを排除したい

トランプ政権の下ではこれらのロシア陰謀説が他の重要案件をすっかり無視させてしまった様子を見るにつけ、証拠の中には何が存在しているのか、ならびに、党が抱いた妄想の中には何があったのかを明確にすることが基本的には重要である。過去6カ月間に気の動顛したメディアやオンラインおよび党の指導者らによって民主党の母体に与えられて来た事柄のほとんどは、彼ら自身の職員が今や必死に警告を与えようとしているように、決定的に後者の範ちゅうに入るものであった。

注: この記事に表明されている見解は全面的に著者のものであって、Information Clearing Houseの意見を反映するものではありません。 

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

トランプ政権と米国の諜報機関との間では情報戦争が進行している。そのひとつはヒラリ-・クリントンの支持者や民主党員が主張しているように、トランプ大統領の選挙運動中にはロシアとの共謀が本当にあったのかどうかという点であり、ふたつ目は選挙運動中にオバマ政権がトランプ・タワーを盗聴するように命令したという点だ。それぞれの結論がどこに落ち着くのかを注目して行きたいと思う。

これらの二点のついてジェームズ・コメイFBI長官は321日に下記のように述べている [2]

超現実的な大騒動は月曜日にその頂点に達した。ジェームズ・コメイFBI長官と国家安全保障局のマイク・ロジャーズ長官はバラク・オバマ前大統領がトランプ・タワーの盗聴を命令したとするドナルド・トランプ大統領の非難を裏付ける証拠はないことを確認した。「これらのツイートを支持する証拠はなく、われわれはFBI内部を注意深く調べた」とコメイは述べた。

FBI2016年の大統領選においてトランプの選挙運動とロシアのハッキング との間に潜在的な連携があったかどうかについて調査をした。これは11月の大敗についての言い訳として民主党が「作り上げた」ものだとトランプ大統領が月曜日にツイートした件だ。

そして、同記事の著者はさらに下記のように伝えている。

「彼らは2020年には戻って来るだろう」とコメイが言った。「彼らは2018年に戻って来るかも知れない。この大騒動から引き出せる教訓のひとつとしては、彼らは成功したということだ。何故ならば、混乱状態や分裂ならびに反対意見をもたらし、この素晴らしい我が国の特質や民主主義のプロセスに関して疑いの種を蒔いたからだ。」 

さて、この米国政治の大騒動はいったい何処へ行き着くのだろうか?

私の個人的な懸念は米国の好戦的なネオコンや政治家、リベラル派ならびにメディアの連中がペンタゴンと諜報機関を牛耳り、大統領府のコントロールを拒絶するのではないかという点だ。軍産複合体が権力を握って、文民統制が効かなくなる。そうなったら、全世界がさらに不安定化してしまうだろうという非常に根本的な懸念だ。ペンタゴンがあれこれと勝手な作戦を行っていることはすでに確認されている事実だ。

正真正銘の悪夢である。



参照:

1: Key Democratic Officials Now Warning Base Not to Expect Evidence of Trump/Russia Collusion: By Glenn Greenwald, "Information Clearing House" -  "The Intercept", Mar/17/2017

2Comey Disclosures Leave Trump Alone on Island of Conspiracy Theories: By Benjy Sarlin, NBC News, Mar/21/2017




2017年3月20日月曜日

1996年のロシアの大統領選に干渉したクリントン政権



昨年11月の米大統領選の結果、多くの予想を裏切って、特に、民主党陣営の楽観的な予想を裏切ってトランプ候補が当選した。

しかしながら、大敗を喫したクリントン候補の陣営はこの大統領選の結果を覆そうとする戦術を展開した。リベラル派、ネオコン派、ウールストリート、民主党、主流メディア、等はトランプ新大統領およびその閣僚に関して悪口を叩き、あることないことを大合唱し始めた。まさに、フェークニュースの乱用である。異常とも言えるような状況が続いた。そして、今でも、続いている。

ところが、ロシアが米大統領選に干渉したとする証拠は今のところ何も示されてはいないのだ。

この状況を受けて、クールな頭脳を持つ識者らは証拠も示さずに憶測だけで、あるいは、こうあって欲しいとする筋書きのためだけであれこれと強弁することには批判的である。そのような批判の中に、1996年のロシアの大統領選で米国のクリントン政権が大っぴらにロシアの選挙を干渉したことを解説する記事 [1] が最近現れた。これは証拠がないロシア介入説とは違って、証拠が揃っている事実に関する報告である。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

政治が持つ特有のエネルギーと力学によって、今、米国の政治は機能麻痺に陥っている。米国が1996年にロシア大統領選に対して行った干渉について理解しておくことは今進行してる米国政界における大論争や米国の政治によって作り出された対ロ恐怖症、ならびに、政治がもたらす不条理を少しでも理解する上で役立つのではないかと思う次第だ。


<引用開始>

2016年の選挙へロシアが干渉したという証拠は依然として公にされてはいない。証拠の代わりとなるものは何もないが、企業メディアは果てしのないループを繰り返している。民主党には興奮状態を煽り立てる理由が山ほどあるのだ。何と言っても、それは選挙における大失敗から皆の関心を他所へ向けるためである。

ところで、米政府が世界中で選挙に干渉してきた長い歴史に関しては、誰も喋ってはいない。第二次世界大戦以降、いくつかの事例を挙げると、米国の大統領はイタリアやイラン、グアテマラ、ベトナムおよびホンジュラスにおいて選挙民の意思をひっくり返すために選挙において汚い誤魔化しを行い、不正や暴力を犯した。ハイチやチリでの例のように、可能な場合には選挙で選出された指導者を放逐するためには残虐な暴力や殺人行為さえをも用いた。

ロシアが選挙に、あるいは、トランプ候補に直接与えたとされる影響力に関する大騒乱の中、ロシアにおいて米国が成功裏に行った干渉行為については殆んど論じられてはいない。 

1996年、米国の政治コンサルタントたちやビル・クリントン政権はボリス・イルツィンがロシア大統領の座に留まることを確かにしたのである。

この事例についてはあれこれと憶測をする必要はまったくない。当時、一連の物語が公然と語られ、タイム誌 の特集記事にも掲載され、民主政治を堕落させた張本人らが果たした役割が公表されたのである。

1996年、米国のコンサルタントたちやビル・クリントン政権はボリス・イルツィンがロシア大統領の座に留まることを確かにしたのである。」

世論調査結果はイルツィンが共産党の候補者、ゲナディ・ジュガーノフに負ける危険性を示していた。ソ連邦の崩壊はロシア国民にとっては経済的にも政治的にも大混乱をもたらしていた。新興成金たちは大っぴらに公金をかすめ取り、政府職員に対しては無給状態が続いた。ロシア人たちは今まで享受していた安全ネットを失い、この大混乱は平均余命や出生率に急激な低下をもたらした。

米国は一般のロシア人の苦しみには関心を向けなかった。米国が抱いていた唯一の関心はかっては社会主義であった国が再びその方向へ逆戻りすることがないようにすることだった。イルツィンが敗れるかも知れないと分かった時、クリントン政権は国際通貨基金に圧力をかけて迅速に現金を用意し、100憶ドルの融資を与えてイルツィン政府を強化した。

クリントンは今までには見られなかった直接的な関与をした。彼の顧問役であるディック・モーリスとコネを持つチームに率いられて、政治コンサルタントの一団がモスクワへ飛び、仕事をした。しかし、彼らの存在は極秘にされた。陰謀家の一人はこの状況を簡潔にこう説明している。「もしも共産主義者が選挙前にこのことを知ったとしたら、彼らはイルツィンを米国の手先だとして攻撃するだろうと誰もが理解していた。」 もちろん、イルツィンは米国の手先であったし、まさにそれこそが彼らが求める成果であった。

タイム誌の記事は米国の権力掌握を暴露したが、そうしたのは企業メディアだけには留まらなかった。この物語は「Spinning Boris」という題名の映画にもなった。この良く知られた、よく文書化されている物語は皆の関心のもとに曝されるだろうと誰でもが思うかも知れないが、それとはまったく逆の事が起こった。クリントン政権の企みに関する物語はあたかもそんなことは起こらなったとでも言うように記憶の彼方に消え去ってしまったのである。

ルツィンが敗れるかも知れないと分かった時、クリントン政権は国際通貨基金に圧力をかけて迅速に現金を用意し、100憶ドルの融資を与えてイルツィン政府を強化した。

我が国では独立した自由な存在として見なされているメディアは大統領の意向に合わせて歩調をとる。オバマ大統領とヒラリー・クリントン国務長官がロシア叩きを行った後、全米規模の娯楽としてのメディアはそれに従ったのである。この敵意の理由は明白だ。ロシアはヨーロッパからアジアにまたがる広大な国家であり、ヨーロッパ諸国が頼りにするエネルギー資源に恵まれている。同国の天然ガスや石油の埋蔵量は影響力のある重要な役割を担う。それが故に、経済制裁や他の手段による戦争の対象ともなっているのだ。

他国を制御し、潰そうとする米国の欲求は独立心旺盛なロシアによって阻止されている。米国の国民が無限に続く「外国嫌い」という食事療法を処方されている間に、ロシアと中国は「新シルクロード」と名付けられた自分たちの経済連携を推進している。もちろん、この連携は米国からの脅威に対抗するという共通の必要性から生まれたものであるが、ニューヨークタイムズやワシントンポストの読者にはそのことは何も分からない。そればかりではなく、ウラジミール・プーチンの師がビル・クリントンの介入によって再選されたことについてもまったく無知のままである。

自分たちが望む結果を生み出そうとして企業メディアが権力者らと結託する時、ニュースはすべてがフェークニュースと化してしまう。もしも彼らがイルツィンをヒーローにしたいならば、彼らはイルツィンをヒーローにしてしまう。もしも彼らがイルツィンの後継者をならず者にしたいならば、彼はならず者となる。もしも米国が犠牲者の役を演じることを望むならば、その犠牲者は不幸にもロシアのスパイ行為の目標物となる。もしも他国の主権を阻害する米国の歴史が米国にとって不都合な真実であれば、その真実は消されてしまう。 

いったい何が真実であって、何が真実ではないかを判断することは困難である。しかし、この国の政府およびメディアは様々な種類の犯罪行為を隠ぺいしていると想定することは、多くの場合、安全側にあるのだ。1996年のロシア大統領選への介入の物語はそのひとつの例である。

著者のピロフィール: マーガレット・キンバリーの「Freedom Rider」での記事はBARに毎週掲載され、他の出版物にも広く転載される。彼女はhttp://freedomrider.blogspot.comにブログを掲載し、丹念にそれを更新している。著者はニューヨーク市に住み、彼女のメールアドレスはMargaret.Kimberley(at)BlackAgendaReport.com

注: この記事に表明されている見解は全面的に著者のものであって、必ずしもInformation Clearing Houseの見解を反映するものではありません。 

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

この論文は非常に短いが、米国政府および企業メディアによる情報隠しの実態を単刀直入に解説している。小気味がいい説明だ。

民主党には興奮状態を煽り立てる理由が山ほどあるのだ。何と言っても、それは選挙における大失敗から皆の関心を他所へ向けるためであるという見方は非常に説得力がある。クリントン候補が大敗したことによって民主党の中枢が如何に狼狽したかがこの説明によってまさに手に取るように分かる。

著者は自分たちが望む結果を生み出そうとして企業メディアが権力者らと結託する時、ニュースはすべてがフェークニュースと化してしまう。もしも彼らがイルツィンをヒーローにしたいならば、彼らはイルツィンをヒーローにしてしまう。もしも彼らがイルツィンの後継者 [訳注: これはプーチンを指している] をならず者にしたいならば、彼はならず者となる。もしも米国が犠牲者の役を演じることを望むならば、その犠牲者は不幸にもロシアのスパイ行為の目標物となる。もしも他国の主権を阻害する米国の歴史が米国にとって不都合な真実であれば、その真実は消されてしまうとも述べている。これは帝国の政治が持つ特徴を簡潔に総括した、実に秀逸な言葉だ。

また、いったい何が真実であって、何が真実ではないかを判断することは困難である。しかし、この国の政府およびメディアは様々な種類の犯罪行為を隠ぺいしていると想定することは、多くの場合、安全側にあるのだ。1996年のロシア大統領選への介入の物語はそのひとつの例であるという結びの言葉はわれわれを現実に引き戻してくれる。

しかし、冷徹な現実には政府やメディアに対する不信感がついて回る。

政治が時には非常に不条理に見えることがある。その原動力は何かと言うと、今回の米国の大統領選へのロシア介入説の場合は、引用記事が明らかにしているように、民主党の長老たちのエゴである。政治を職業とする連中はそれを政治と呼ぶが、不幸なことには政治の質は際限なく低下してしまうことがある。ベトナム戦争がそうだったし、イラク戦争もそうだった。そして、今回は大統領選挙だ。

ところで、ここに引用した記事と並んで興味深く思った記事がもうひとつある。

それはグレン・グリーンワルドが最近書いたものであって、「トランプ陣営とロシアとの共謀説を支える証拠が出て来るとは期待するな - 民主党の重鎮が警告」と題されている。民主党の長老たちはそろそろトランプ陣営とロシアとの共謀説に幕を引きたいようである。

その詳細は次回のブログでご紹介したいと思う。



参照:

1When America Interfered in a Russian Election: By Margaret Kimberley, Information Clearing House, Mar/16/2017