ここに「アフガニスタンの運命は麻薬によって決まる。政治ではない」と題されたアフガニスタンにおける米軍の駐留に関する新しい記事がある(注1)。実に衝撃的な表題だ。
米軍が駐留する国々が米軍あるいは米国の資本家にとってどんな利益を与えているのかを観察すると、「アフガニスタンの運命は麻薬によって決まる」という主張は素人のわれわれにとっても決して理解不能ではなく、実に分かりやすい。要するに、麻薬の密売から得られる収入は駐留米軍にとっては自分たちが予算と言う足枷から脱却することを可能とする手段であり、非常に魅力的な資金源であるに違いない。
歪められた国際政治、特に、意図的に政治的不安定さを引き起こされた国々をこの論理で眺めてみると、シリアやイラク、リビアについてはこれらの国々で産出される原油が米軍の駐留の主要な理由であることは明白だ。少なくとも、複数の主要な理由のひとつである。それはまさに非合法的に原油資源を略奪することに他ならない。独裁政治を排して、一般庶民のために民主的な社会を勝ち取ってやるという甘い言葉は実際には決して主要目的ではない。そういった文言は一般大衆の耳に心地よく響くのであろう。しかしながら、それはあくまでも大手メディアが自分たちの記事や番組を消費してくれる一般大衆に向けて喧伝するプロパガンダであり、詭弁でしかない。それ以上の何物でもないのである。特定の国の指導者を排することは、その国に政治的な不安定さを作り出して、米軍が侵攻し、資源を略奪し易い環境を整えるためのものだ。こうして、この帝国主義的なシナリオは何回も繰り返されてきた。まさに米国の対外政策の教科書となっている。
こういった状況を考えると、「アラブの春」の実態は何であったのかという問いかけに対する答えが明瞭に浮かび上がってくる。そして、今や、これらの実態の多くは数多くの献身的なフリーランスのジャーナリストによって詳細に検証され、報告されているのである。幸か不幸か、われわれは、今、そんな世界に住んでいるのだ。
本日はこの記事(注1)を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
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CIAの著名な高官が航空機事故で死亡したという噂が流れているにもかかわらず、本日、アフガニスタンの消息筋は彼はパキスタンの統合情報局(ISI)によって確保されていると言った。
その報によると、当人はマイク・ダンドレアといって、イランの外交に従事していたソレイマニ将軍や他にも何百人ものイラク人を殺害した張本人である。
彼は生きており、大丈夫だと米国は主張しているものの、他の消息筋や諜報機関、パシユトウン人の抵抗組織を抱えているアフガニスタンの現場の情報筋はそれとはまったく違った話を伝えているのである。
墜落した航空機は諜報活動に従事していたものであり、移動式指揮センターであった。死体が見つかった。しかし、それにも増して重要なことは生存者があって、彼らは捕虜となったという点だ。
アフガニスタンにおいてはあの地域で捕虜になるとタリバン(ロシアでは違法集団)に拘留されるよりも、むしろ、パキスタンのISIというスパイ組織の手に渡されることが多い。
ダンドレアは果たして帰国するのか?それとも、米国政府は何時も嘘をついてきたように今回もまた嘘をついて、彼は現地に残されてしまうのであろうか?
結局のところ、米国は、ニクソン大統領の辞職後、米軍の何百人にものぼる捕虜をベトナムに置き去りにせざるを得なかった。これは誰であっても帰国させるといった嘘をつき、米国の市民に対して新たに一連の嘘を報じることを認める代わりに、むしろ、彼らは単に米国人が苦しみ、死んでいく様を見ることを選んだからに他ならない。
背景
ドナルド・トランプ米大統領はアフガニスタンから米軍を撤退させ、彼の個人的な資金提供を行う同盟者と関係を持つ民間請負業者に置き換えようとしている。トランプ政権では評価が大きく分かれる教育長官の兄弟であるエリック・プリンスは、消息筋の話によると、トランプのために非公式な「国務長官」の役を演じている。つまり、ポンぺオが行くことができないような場所へ赴き、トランプのために中国と個人的な約束を取り付け、サウジや湾岸諸国との間で武器に関する商談を纏めているが、彼にとっては特にアフガニスタンにおける利権が重要な関心事である。
ひとつのことだけは明白だ。米国は膨大なヘロインのビジネスが誰か安全な人物の手に納まるまではアフガニスタンから撤兵することはできない。仮にあなたが和平合意を導いたカタールを中心とした交渉の場に居合わせたとしよう。アフガニスタンで豊富に産出する希土類については何の言及もされないけれども、その会合では麻薬の商売を確保することに関しては延々と話が続くのである。
ブラックウオーターのような軍事サービス企業は今やプリンスによって再導入されつつあり、この取り組みにおいては彼は重要な役割を演じるのかも知れない。
戦争のごまかし
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米国は2001年にアフガニスタンへ武力侵攻し、オサマ・ビン・ラデンとアル・カエダを追い回し、彼らの24カ所もの大きな地下の基地を探しまわった。このために何千人もの米国の雇用兵が投入され、後にその数は何万人にも達した。
カブールには巨大な「グリーン・ゾーン」施設が構築されている。これは地方軍閥のリーダーや大物の麻薬取引業者、米議会からの訪問者、等のために準備された何百万ドルもかけた居住地域である。麻薬問題はかっては皆無であった社会、アヘンの生産はまったく存在しなかった国家が米国国際開発庁(USAID)や米農務省の専門家らの手によって世界のアヘン生産の95%を生産する国家へと変貌したのである。
その2年以内にヘロインの生産設備が米国の監督下で構築され、まずはロシアを対象にその流通が開始された。しかし、供給過剰となり、安価で高品質のヘロインは米国やヨーロッパならびに至る所で何百万人もの中毒者を現出させたのである。
このプロセスにおいては、約9百万人にものぼるアフガニスタン人が麻薬依存症となり、その他にも何百万人もが売春に引きずり込まれた。これらの状況はすべてが米国の軍事サービス企業によるものである。
パキスタンの破壊
戦争が続く中で、安い麻薬が洪水のように北側(訳注:アフガニスタンの北側にはタジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンが位置している)へ流出し、隣接する国々は辛酸を舐めることのなったが、もっとも酷い状況に見舞われたのはパキスタンであった。
パキスタンは1970年代に米国と組んで、対ロ秘密戦争に関与した。このCIAとの合同の取り組みはパキスタンの軍部を何十年にも渡って安定化してくれるであろうと彼らは期待した。しかしながら、決してそうはならなかった。
それに代わって、パキスタンに敵対する勢力にとってはアフガニスタンでのテロ行為は自分たちの計画を先へ進めるのに好都合であったのである。インドとイスラエルはワシントンのブッシュ政権の庇護を受けて、パキスタンとの国境地帯にテロリストを訓練するキャンプを設け、今日でも継続しているテロ行動を開始した。単純に言って、カシミール紛争とは別のもうひとつの前線が作り出された。
この取り組みは米国との同盟関係がないパキスタンを破産せしめ、結局のところ、これはパキスタンを中国の影響圏へと追いやることになった。
繰り返しになるが、パキスタンにはタリバンが住む平地についてではなく、アフガニスタンから流れ出てくるヘロインにまつわる何十億ドルもの大金に目をやり、大仕事を待ち望んでいる連中がいる。
また、彼らはアフガニスタンへの米国の武力侵攻で自分たちが失った物事に対する見返りとして自分たちは米国から何らかの支払いを受け取る正当な理由があるのだとも考えている。
二番目の問題は、アフガニスタンで戦争を継続し、麻薬王国を樹立するには、米国はパキスタン経由で有用な兵站路を確保することを求めていたという事実である。これは政治的にも軍事的にもCIAをして長期的な隠密作戦を行うことを強いたが、イムラン・カーンが首相として選出されると本作戦は終止符を打った。彼は米国に逆らって立ち上がる力を持っていたのである。
今日、パキスタンにはヘロイン取引の一部を自分たちのために欲しいと考える連中がいる。これは単にテロ活動のために失った収入源の代わりにするということではなく、世界中で数多くの政治的ならびに軍事的な指導者たちが麻薬の取引に関与しているという理由からなのである。
すべては金だ。
真実は何か?
まずはこの話から始めよう。多くの場合がそうであるように、本物のジャーナリズムの作品はこんな感じなのだ。すなわち、どんな話であっても、それはある文脈の下に始まるのである。今日の世界においても、文脈の第一に重要な点は、本物のストーリーはそれが如何なるものであったとしても大分前には「陰謀論」というレッテルが付されていたような物語を典型的に含んでいる。
こうして、特定された情報源やしっかりとした背景を持ったストーリーを告げようとすると、内部情報を持っている人物や相違する意見を十分に把握している人物に辿り着くことになる。さあ、ここで本論へ入ろう。
2020年の1月へ遡る。米国の偵察機であり、移動式指揮センターであった航空機がアフガニスタンで墜落した。「ベテランズ・トウデイ」から引用すると:
「撃墜された航空機はイラク、イランおよびアフガニスタンでの作戦を指揮するCIAのマイケル・ダンドレア用の移動型指揮センターであって、米国ではもっとも最先端のスパイ・プラットフォームであり、移動可能な指揮センターであって、その機器や書類のすべてが今や敵の手中に陥った。」
ベテランズ・トウデイ・ダマスカス: 殉教者となったカセム・ソレイマニ将軍の暗殺に関する書類の中で責任を問われているマイク・ダンドレアはアフガニスタンで撃墜された航空機事故で死亡したと報じられた。彼はCIAの諜報分野においてはこの地域ではもっとも卓越した人物である。このCIA高官はアフガニスタンにおける航空機事故で死亡した。
2017年以降、ダンドレアは中東での偽旗作戦や暗殺計画を指揮し、ソレイマニ将軍だけではなく、他にも300人ものイラクのデモ参加者の殺害にも関与していた。
それでは、いったい何が真実なのだろうか?タリバンはCIAの高官が飛行機に乗っており、その航空機が墜落し、彼は死亡したと主張している。RTの報道によると:
「タリバンの報道担当者は飛行機の乗組員と乗客は、CIAの高官と称される人物も含めて、皆が即死したと述べた。この未確認情報には米中央情報局(CIA)に属する高官がいるという件も含まれる。」
しかしながら、現場からの直接の電話によると捕虜が捕えられ、少なくとも一人は「人質」としてパキスタンに確保されていると伝えられている。
嘘をつく病
メディアが流血沙汰に関与することで起こる最悪の状況は、恐らくは、2020年8月4日にベイルートで起こった大爆発であろう。
あの事件に関する事実関係はいったいどのようなものであったのだろうか?
♦ 事件の数日前、イスラエルの首相と国防相は爆発が起こった場所にはヒズボラーのロケット貯蔵施設があると言い、そこを爆撃する計画であると言った。
♦ 爆発の直前、イスラエルの航空機が爆発地点に急降下して来るのが見られた。関連ビデオはインターネットで検閲された。
♦ トランプ大統領はペンタゴンの消息筋を引用して、これは爆弾による攻撃、あるいは、それに類するものであろうと述べた。
ここで、小休止しよう。二つのインタビューで、トランプはベイルートでの出来事を攻撃だと言った。ペンタゴンの諜報筋を言及し、トランプがこれらの主張をした後に、メディアはこの事について誰一人も書かなかった。トランプ自身が「この話を作ったのだ」なんて問われることはなかったし、非難されることもなかったのである。トランプが言及することはほとんどすべてが何らかの反論や報復を受けている今日、この件に関してはまったく何も起こらなかった。実に不思議な展開である。何故だろうか?
それはそれとして、他の事実も次のような具合だ:
♦ 爆心地のクレーターは固い岩盤上に形成され、深さが50フィート、直径は500フィートもある。爆発によって引き起こされた同様のクレーターは米国のニューメキシコ州に存在するだけだ。それは2メガトン級の水爆の地上爆発で作られたものだ。
♦ 農薬や花火の爆発が原因であったとするさまざまな解説があるが、それらは初歩的な科学によって簡単に退けられる。
硝酸アンモニウムは燃料油とのスラリー状混合物にし、高性能爆発物によって点火された場合には爆発を起す。しかしながら、十分な量のアルミ粉末を加えていなければ、これでさえも爆発力は大きくならない。
岩盤を爆破するために使用する場合は、深い穴を掘削し、その中に仕掛ける。通常の爆発物を表面で爆発させると岩盤にクレーターを形成する可能性はない。500フィートもあるクレーターの形成はなおさらのことだ。
どうしてこの話を持ち出さなければならないのか?
たとえ命令を受けたとしても、メディアがあり得ないストーリーを一般大衆に向けて報じることなんてあり得ないと考えることは子供じみているし、馬鹿げてもいる。もちろん、これはメディアの存在価値はまったく何もないということを意味している。
さらに悪いことには、毎日のようにさまざまな事例が現れる。たとえば、シリアにおける偽の化学兵器攻撃だ。あるいは、米国はアルカエダやISIS(これらはロシアでは両者共禁じられている)と共謀して中東ばかりではなく、アフリカにまでも彼らを送り込み、あたかも米国の「新しい特殊部隊」でもあるかのようにアジアの東の果てにまでも配置する。
結論
20年後の今日、カブールの偽物政府は依然として前と同様のままだ。米国の操り人形であり、ノーザン・アライアンス(訳注: より穏やかなイスラム教を信仰し、タリバンに反抗して連合するアフガニスタンの多民族的な同盟)のために麻薬ビジネスを推進する。何も変わってはいない。
それでは、和平合意の根底にはいったい何があるのか?
はっきりしているのは次の点だ。つまり、米国の唯一の現実的な関心事はアフガニスタンで麻薬を生産することである。米国の軍事的存在を抜きにしても、今や、それは可能だ。
米国がアフガニスタンで米軍よりも数多くの民間雇用兵を維持してきたという紛れもない事実は世界を相手に極秘裏にされてきた最悪の事態の中のひとつである。ドナルド・トランプは雇用兵の数を3倍にした。これはオバマ政権以上にあの打ちひしがれた国家で運営されている「麻薬ビジネス」が重要視されていることを物語っている。「USニュース」は次のように報じている:
「雇用兵にまつわる主要問題は、どれを取り上げても、彼らがいったい何をやっているのかという点に十分な関心が払われていない点にある。近年、誰にとっても満足できるような明快な形で報告されたことは一度もない」とブラウン大学のキャサリン・ルツ教授は言う。彼女は「戦争のコスト」プロジェクトのディレクターを務め、米国の紛争地帯に投入されている民間雇用兵について文書化を進めている。「ペンタゴンはわれわれ、つまり、米国の一般大衆に向けて十分に説明するべきだ。誰がこの費用を払っているのか、それは何を意味するのか、どうしてこのようなことが起こっているのか、等について。」
非常に単純な質問がいくつかある。これらのことを問いただすことはできるのだが、誰も質問をしようとはしない。なぜかと言うと、これらの質問を行うことができる完全に自由なメディアは存在しないからだ。ここで、ひとつふたつの要素に注目してみよう:
♦ 米国は兵站部門に4000人の雇用兵を配置し、約5500人の米軍将兵を支援している。一人一人の将兵は個人的な運転手を必要とするのだろうか?それとも、彼らは「まったく別の業務」に携わっているのだろうか?
♦ 5500人の米兵の安全を維持するためにほぼ同数の武装した雇用兵がおり、彼らは米政府から給料を貰っている。米兵らは自分たちを十分に武装しているにもかかわらずだ。このことについて誰も不審には思わないのだろうか?少なくとも、メディアは不審に思ってはいないことは確かだ。
ここで、CIAの暗殺任務の黒幕であると言われているマイク・ダンドレアについて問うてみよう。彼は本当に死亡したのか?彼は何処かでわれわれ皆を笑っているのではないか?あるいは、彼はパキスタンの刑務所で朽ち果てつつあるのではないか?
真実が辺りを制するにしても、そのチャンスはごく僅かであり、ヘロインを全世界に供給している8000人もの民間雇用兵をアフガニスタンで監督するために何十憶ドルもする米国のスパイ専用機を飛行させている現実をいったいどのように説明することができるのか?
著者のプロフィール: ゴードン・ダフはベトナム戦争時は海兵隊戦闘員であった。彼は元米兵や戦争捕虜にかかわるさまざまな課題に何十年にもわたって取り組んできた。また、安全保障問題に悩まされている政府に対しては顧問役を引き受けた。彼は「ベテランズ・トウデイ」の上級編集者であり、重役会の会長を務めている。オンライン誌である「ニュー・イースタン・アウトルック」に特別寄稿を行っている。
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これで全文の仮訳が終了した。
もちろん、米国がアフガニスタンからの撤退を進めたがらない理由としては他にも有力なものがいくつもあることだろう。とは言え、この著者が主張する世界を相手にしたヘロインの商売を独占的に維持したいとする理由は実に説得力があると言える。すべては金だ。
かって、米陸軍のある将軍は米軍の役割は米国政府が他国の資源を略奪する際にその行動を支援することにあるのだと看破した。彼はそのことを本に書いた。この見方は生涯を陸軍で過ごした職業軍人が残した言葉であるだけに、彼の言葉には否定できない重さが感じられる。彼の発言はすでに大分前のことではあるのだが、物事の根底にはたとえ時代が変わったとしても依然として変わりようがない人間社会の特性が横たわっていると言えよう。
参照:
注1:Afghanistan’s Fate Decided by Narcotics, Not Politics: By Gordon Duff, Nov/12/2020