新型コロナのワクチン接種は大手製薬企業によってハイジャックされてしまった感が強い。その結果、今の混乱が起こっている。ワクチン接種は、そもそも、大多数の人々の間に感染症に対する抗体を作って、感染症の大流行を抑えることが目的である。一言で言えば、その目的は人々の健康を確保することにある。それ以外には何もない。
ところが、利益を追求することが許されている資本主義世界においてはさまざまな資源を有する大手製薬企業は新型コロナの大流行を周到に作り出し(たとえば、米国立衛生研究所がウィルスを感染し易く改変する研究を中国の武漢研究所に委託した)、世界の人々を感染症から救うという美名の下にワクチンを非常に短期間の内に開発し、米国やヨーロッパ各国の政府は新たに開発されたワクチンの使用を認可した。こうして、医療関係者ばかりではなく一般大衆に対してもワクチン接種が約3カ月前に始まった。しかしながら、ワクチンの供給が間に合わず、EUと英国との間ではワクチンの取り合い騒ぎが起こった。
予測されていたとは言え、ワクチン接種が始まると死亡事例が報告され始めた。もちろん、個々の事例にはご当人特有の健康状態やその他諸々の要因、たとえば、接種の時点で患っていた慢性疾病、当人の免疫力の強弱、アレルギー症に対する感受性、年齢、等における個人的な差異がついてまわる。素人目にも話は十分すぎる程複雑だ。ある事例はワクチン接種とは関係がないかも知れない。そして、もうひとつの事例はワクチン接種による副作用であるかも知れない。われわれ素人が日常接することができるメディアでは詳しい情報はなかなか得られない。こうして、新型コロナの大流行について全体像をバランス良く把握することはさらに難しいものとなる。
ここに、「ワクチン接種 - 新型コロナとの戦いにおける勝利はまさにいばらの道」と題された記事がある(注1)。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。
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今やすっかり忘れ去られてしまったテレサ・メイ前英国首相が放った「ひどくあり得そうなことだ」(highly likely)という文言がジャーナリズムの世界に新たなトレンドを形成することになろうとはいったい誰が想像し得たであろうか。この新たなトレンドにおいては事実ではなく、単なる主張であってさえもそれは報道に値するかのようである。残念なことには、最近は大手メディアの名門さえもがこの新たなトレンドを踏襲することに意味がありそうだと考えているようである。悲しいことに、ウオールストリートジャーナルさえも例外ではない。同紙は最近モスクワ政府は大手製薬企業のファイザーが開発したワクチンの信用を台無しにしようとしていると報じたのである。
この種の報道においてもっとも驚ろかされる事は彼らは事実に基づいた裏付けを示さず、証拠にまったく欠如していることだ。この状況は、かってはロシアにおいてオンライン・プラットフォームとして著名であった新聞社がいったいどのような報道をしてくれるのかに関して読者に対して何の確実な概念さえをも示してはくれない。ジャーナリズムにおけるこのトレンドのもうひとつの明瞭な特徴はニセ情報の使用にある。また、さらに興味をそそられる点がある。問題の記事ではそれが言及しているサイトに直接繋がるリンクを示してはおらず、読者は自分たちが読んでいる記事について自分自身で何らかの判断を下すしかない。この報道は単に妄想逞しい記事にしか過ぎないのか?それとも、依然として敬意を払われている西側の著名な新聞社の専門家の意見や引用に基づいたものであって、信用するに値する報道なのか?
世界中の医療専門家は大多数が「安全で有効なワクチンの数が多くなればなるほど、人類は新型コロナに対して決定的な勝利をより早く収めることができるであろう」と自信をもって考えている。そして、この結論に異論を唱える術はない。しかしながら、ある者は特定の製薬企業のワクチンは副作用を起こすとか、医療専門家が表明した副作用の懸念は本物であり、正直な意見であると言い切ることもまた同様に困難である。このような状況ではワクチン接種を政治化しようとする西側の試みは新型コロナに対して勝利を収めようとするわれわれ人類の集団的勝利をより遠くへと押しやってしまうかも知れない。
事実、世界中のメディア各社は各国で実施されている集団接種の状況に関してはそれぞれ違った考察や見解を報じている。たとえば、接種後に血栓症に見舞われた女性が死亡したことを受けて、オーストリアの当局はアストラセネカ社のワクチンの使用を中断すると決定した。この事例の後、合計で10カ国が中断した。
最近、「スイスメディック」と称されるスイスの医薬品や医療器具を監督する当局がその報告書の中で新型コロナ用のワクチンの接種後合計で16人が死亡したことを明らかにした。同保健当局は各種のワクチンによって引き起こされた合計で364件のさまざまな副作用に関して調査を行った。199件が米国のファイザー社とドイツのビオンテック社によって開発された「コミナティ」に関連し、残りの155件は米国のモデルナ社が開発したワクチンに関連する。読者のどなたかはウオールストリートジャーナルの記事でこれだけ多くの事実に関して何かをお読みになったであろうか?
ドイツのメディアの報道によると、ドイツではアストラセネカ社のワクチンは評判が極めて悪く、接種を受ける資格がある市民の多くはこの「不人気な」アストラセネカのワクチンを接種することを拒んでいる。デンマークのベルリングスク紙は幾つかの国はアストラセネカ社のワクチンを心待ちにしているが、ドイツの倉庫には何百万回分ものワクチンが放置されたままであると報じた。人々はこのワクチンの接種を拒み、このワクチンは品質が劣っていると言う。今、「ワクチン接種委員会」は幾つかの間違いを起こしたことを認め、ワクチンの使用に関する推奨を変更する予定であるとのことだ。
ウクライナのオデッサでは何十人もの医師がアストラセネカがインドで生産したワクチンの接種後に具合が悪くなったと市議会の衛生部門のディレクターを務めるエレナ・ヤキメンコが述べている。前ウクライナ大統領のペトロ・ポロシェンコはこの医師が述べたことを引用して、同国で使用されている新型コロナウィルス用ワクチンを汚物にたとえる程であった。EUはオリジナルのアストラセネカ製とは異なる不良品を故意にウクライナへ送り込んで来たと解説者たちが述べたことから、ウクライナのメディアでは大騒ぎが続いている。
チェコの厚生省はアストラセネカ製の新型コロナ用ワクチンの調達を拒絶した。これはチェコ外相のトマーシュ・ペトシ―チェックが3月3日に述べたものだ。
米国のモデルナ社製ワクチンを接種した人たちは発疹や腫れに見舞われるかも知れない、と著名なニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌が指摘している。
米国カトリック司教会議は、ジョンソン・アンド・ジョンソンが開発した新型コロナ用ワクチンは堕胎された胎児の細胞を使用して製造されていると指摘し、同ワクチンの接種を拒むよう信者たちに推奨している。
3月初めに、日本ではファイザー社製のワクチンを接種した後に2例目のアレルギー症状が発見された。この症例は30代の女性であると日本の厚生省が発表した。
また、ファイザーのCEOを務めるアルバート・ブルラに関してはソーシャルネットワーク上で活発な議論が巻き起こっている。彼は3月7日にエルサレムを訪問する予定であったが、エルサレムへの旅行を取り消したのである。エルサレムポスト紙によると、彼は新型コロナに対するワクチン接種を受けてはいなかったことが判明した。ファイザーのCEOがイスラエルへ旅行するに当たって同行する予定であったチームのメンバーたちもまったく同様に接種をしてはいなかった。これはこの状況を説明するのに説得力のある疑問点を思い起させる。つまり、自分たちの製品について同社の重役たちははたして信頼感を持っていたのだろうかという疑問だ。(訳注:他の情報によると、同CEOは一回目の接種は受けており、2回目は未だ完了してはいなかった。)ファイザー社のワクチンはワシントン政府の認可を最初に得ており、世界中で接種が開始されて今や3カ月を超しているという事実はここに記しておこう。
これらの状況下において、より多くの国々がロシア産の「スプートニクV」ワクチンに注目をしている。西側ではロシア産のワクチンは政治的な理由からその配給や使用が特定の勢力によって恣意的に妨害されて来た。特にウクライナにおいては、ロシア産ワクチンの入手が妨害されているのは純粋に政治的な理由によって引き起こされたものだという議論が最高議会で大っぴらに議論されている。
ブルガリアン・トルード紙(訳注:この名称は「ブルガリアの労働」の意。初稿では「真実」としていましたが、これは間違いでした。お詫び申し上げます。読者のシモムラさまからのご指摘により、「真実」から「労働」へと訂正致します)は、同国は深刻なワクチンの不足に見舞われているのであるが、政府の閣僚らは依然としてロシア恐怖症の政策に固執しており、スプートニクVの調達については耳を貸そうともしないと報じている。
チェコの専門家たちはロシア産のワクチンの品質については何の疑いも持ってはおらず、ロシア人科学者の有能振りを信頼している。リドフキー紙が強調しているように、全世界でワクチン接種を実施するということは単に膨大な商業的機会をもたらすだけではなく、地政学的な影響力も表面化する。たとえば、アストラセネカ社が描写しているように、英国とEUとの間ではワクチンの取り合いが起こった。不幸なことには、ワクチンの選択肢やロシア産のスプートニクVに対する拒絶姿勢は、引用記事によれば、同国の政治的状況によって引き起こされたものであって、それ以外の理由は何もない。そうとは言え、絶望的な現実からチェコ共和国はスプートニクVを調達せざるを得ないかも知れない。
このような文脈において言えば、多くのヨーロッパ諸国においては当局に対する批判は増えるばかりである。市民らは選挙で選ばれた議員らは一般大衆の健康を熟慮するのではなく、政治的ゲームに没頭しているとして議員らを非難している。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官はテレビ局の「ロシア24」とのインタビューにおいて次のように語った。「2020年にはヨーロッパ諸国との同盟関係には諸々の問題が表面化し、洗濯物を入れたバスケットからは汚れた下着がこぼれ落ちた。このような状況が如何に不穏当であるのかについて彼らは十分に認識している。その一方で、彼らはこぼれ堕ちた下着をあの手この手を使って隠そうとしている。」
スロヴァキアのイゴ-ル・マトヴィッチ首相は、スロヴァキアでは新型コロナのせいで毎日約100人もの人々が死亡しているにもかかわらず、ロシアからのワクチンの調達に反対している政治家たちのことを非難している。
そうこうしている内に、フランクフルター・アルゲマイネ・ツアイトウング紙は、幾つもの国々でスプートニクVの調達が進められている中、このワクチンは実際には有効性が非常に高く、保管や輸送の面では極めて容易である点を評価している。同ワクチンは欧州医薬品庁による認可が未だ不確定ではあるけれども、今や世界でもっとも求められている薬品のひとつであることは決して驚きではない。
「ロシア産のスプートニクVワクチンのデータは十分に良好である」とジョー・バイデン政権で医療関係のチーフ補佐官を務めるアンソニー・ファウチは、3月6日、ギリシャのテレビ局とのインタビューで語った。
ヤフーニュース・ジャパンは日本の諜報部門の元最高責任者であった人物の言葉を引用した。彼はロシア産のスプートニクVは世界でも抜きんでた科学上の成果であり、国際社会においてはロシアの権威が高まっていると考えている。その記事によると、日本は同ワクチンの使用を中期的な観点から配慮するべきであるという。アデノウィルス系のワクチンを製造するアストラセネカ社さえもがロシア産ワクチンの優位性を認めている。英国の医学雑誌「ランセット」によると、ロシア産ワクチンの有効率は92%にあることが確認されており、実質的にマトリックス・ワクチンと同レベルに匹敵する 。この点については、ブルームバーグは次のように報じている。「スプートニクVはソ連時代以降の科学技術の成果としてはロシアで最高のものであると言える。」
ところで、著者はすでにスプートニクVの接種を受けた。私は「かっては偉大な存在であったウオールストリートジャーナルの編集者や著者たちは米国産のワクチンの接種を受けたのであろうか」と尋ねてみたい衝動に駆られている。
著者のプロフィール:ヴァレリー・クリコフは政治問題の専門家であって、オンライン誌の「New Eastern Outlook」に寄稿している。
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これで全文の仮訳が終了した。
この記事は決して長いものではない。そうとは言え、この記事に述べられている幾つもの要素は初めてお目にかかる類の情報であることから、私はこの記事の有用性を認めざるを得ない。逆説的に言えば、この記事を読むと、われわれ一般大衆が置かれている日常的な情報の欠如や情報の偏りを痛感させられる。
新型コロナ用ワクチンの接種との関連で言えば、副作用によって一個人として生命の危険に曝される可能性は決してゼロではない。一国の国民の健康を取り扱う行政とは常にそういうものだと言って達観してもいられない。医療関係者の間では「インフォームド・コンセント」という概念が社会に浸透してすでに久しい。しかしながら、その同じ医療の世界において今回の新型コロナ用ワクチンの開発、政府認可、集団接種の各段階においてこの基本的な概念の徹底は疎かにされ過ぎたのではないか。
3月17日の記事(原題:Norwegian Prof: It's 'Reasonable to Believe' in Connection Between AstraZeneca Jab and Blood Clots: By Igor Kuznetsov, https://sptnkne.ws/FCSD)によると、アストラセネカ社のワクチンの接種を中断した国の数は20ヵ国になったとのことである。この現状は今まで製薬会社や政府当局は早急にワクチン開発を行い、大規模な接種を一日でも早く始めたいという政治的理由を最優先にし、安全性に関して十分な説明責任を果たして来なかったことの代償であると言えよう。血栓症を起して死亡した方々には極めてお気の毒な話である。
今後起こり得る最大の悪夢は、過去の豊富な事例に基づいて言えば、大手製薬企業の意向を受けて政府当局やWHOがワクチンと血栓症との関連性を真っ向から否定しようとすることだ。その関連性を否定する作業では何人、あるいは、何十人もの学者を動員する必要があろうが、ビッグファーマにとってはその費用はワクチンのビジネスから得られる利益に比べればたかが知れている。
参照:
注1:Vaccination: the Thorny Path Toward Victory over COVID-19: By Valery Kulikov, NEO, Mar/15/2021
ブルガリアの「トルード」はправда「真実」ではなくтруд「労働」だと思います。
返信削除シモムラさま
削除コメントをお寄せいただき有難うございます。本件、私の方の間違いでした。シモムラさまのご指摘に感謝です。
読者のみなさまにはお詫びをして、訂正申し上げます。
毎回理解しやすい翻訳を心がけてくださり、感謝もうしあげます。私は英語の生成文法をOhta先生に師事しましたが、先生は演習ではゼミ生に訳読を求めました。私はこの訳読法に習熟しており、訳しながら理解するということが当たりまえのように思っていたのですが、米国育ちの友人には大変辛い要求であったようです。ある時、彼女の拙い訳読に先生がいらいらして、本を前に投げ出し、「話にならん」とおっしゃいました。彼女は、自分には分かっているのですと、口ごたえしたところ、「分かっているなら、必ず日本語へ訳せるはずなのだ」と返し、その後は私に振りました。先生はガリオア奨学生として米国で学んだ方です。二十年ほど前から、大学では英語で授業を行う教員が優遇されるようになったのですが、私はその政策には加担せず、訳読法を守りました。教え子には大学教員になった方もおりますが、英語の統語構造を漢字の構文に反映させる、あの訳読法は実に有効なツールであると評価してくださった。今では「話す英語」という実践能力の養成に重きが移ったようですが、自分には用人英語の普及としか見えません。
返信削除シモムラさま
削除コメントをお寄せいただき有難うございます。
私も文法訳読法で英語を習った者の一人です。私は言語を人に教えるという経験は持ってはいませんが、それぞれ違った教授法には一長一短があって、さまざまな側面についてどれに関しても完璧な手法というのは実現が難しいと思います。
私は、民間企業で勤務した後、産業界の需要に応じるための和訳や英訳を10数年間行って来ました。参考になるかどうかは分かりませんが、当時の小生の実感を記載しておきたいと思います。これは高校時代に教わった英語の話になります。文法や構文について言えば、社会人が必要とする事柄はすべて教わっていたのだという確信を、翻訳業での経験から、抱くようになった次第です。しかし、不足していたのは語彙力です。また、読み書きの分野に比較しますと、聞き取りや発音、スピードは非常に劣っていましたよね。巷ではバイリンガル能力が求められていますが、幸か不幸か、私にとっては外国語はやはり外国語のままでして、それは何時まで経ってもどっしりと腰を据えています。ただし、英文を読んで理解するというスキルは間違いなく向上しています。時にはかなりの時間を掛けなければならないこともあります。多くの場合、それは全体の文脈上からその文章を理解しようとする意識が何らかの理由で欠けている時に起こります。
間違いなく、これが私が即時性が求められる通訳業ではなく、繰り返して反芻する時間的余裕のある翻訳業に進んだ理由であったかと思います。
ブログとの関係で言えば、国際関係や一般社会、たとえば、新型コロナの大流行に関する英文記事を理解することは比較的容易です。ところが、私にとっては経済学関連の記事はハードルが高くなります。経済学関係の語彙はインターネット上で容易に見つけることができるとは言え、やはり、慣れない語彙を使うことには一種の不安がついて回りますよね。
ありがとうございます。同感です。英文法の教科書には、曖昧な術語が多数使われていることも、日本人の英語の独学を妨げているように思います。主語目的語述語という概念は、関係的概念であるのだから、~の主語目的語述語と言わねばなりません。元々これらの用語は戦前と戦後初期の文法書では、「応接する」という述語動詞が要求する名詞、主人役名詞と客人役名詞を指す言葉でした。客人語は賓語とも言いました。それが所謂5文型文法が導入されて、主格名詞や目的格名詞を指すものとして転用され、主語目的語と言い換えられたようです。分詞という用語も安易に使われています。participleとは、動詞verbが動詞本来の機能に加えて、名詞や形容詞の機能を分有participateしたものであることを意味していました。動名詞とか形動詞という方がずうっと分かりやすいのです。不定詞もそうです。何が不定であるかの説明がまずありません。これも動詞の剝き出しの形は、それ自らの時制を決定できないということを意味する用語です。剥き出し形の外側にある述語動詞の時制がそこに適用されており、動詞の剥き出しの形は間接的に時制を与えられているのです。ですから節clauseで言い換えると、時制は過去現在のどれかの表現形を与えられます。これらの規則は入試問題に仕込まれ、良く問題として出されました。露語文法では、主語目的語という用語はありません。主語目的語はダポルニエニエдополнение「補語」と呼ばれ、名の通り「動詞の格枠に嵌まり込む名詞の形」という意味です。動詞командовать「~の指揮をとる」を例にとりましょう。командоватьには「指揮官」と「指揮される者や組織」の鍵穴が開いていて、指揮官の孔形状は主格形▲をしており、指揮を受ける側の鍵孔形状は具格形◆をしているとしましょう。さて指揮官は大尉△で指揮部隊は大隊◇としましょう。Капитан▽▲ батальоном◇◆ командует.となり、この関数構造は意味の世界へ投射されて「大尉は大隊の指揮を執る」の意味を表出するわけです。ロシア語が科学の言語に最適なのは、この関数構造にもよるのでしょう。アラビアでは代数が隆盛しましたが、この動詞構造も典型的関数構造であるのです。因みにロシアの戦争映画でコンバットということばを耳にしませんか。あれはкомандующий батальоном 大隊指揮官комбатコンバットのことなのです。昔コンバットという空想的なアメ映画がありましたね。僕は長い間欧州は米軍によって解放されたと思っていました。
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