2019年2月17日日曜日

グリフォサートの致死性を明らかにしたことによりスリランカ人の専門家が著名な科学賞を受賞

殺虫剤のグリフォサートに関しては、私は201462日に「芳ちゃんのブログ」に「モンサントの除草剤と腎疾患との関連性」と題して投稿した。

その内容はスリランカの米栽培農家の間で流行している慢性腎疾患に関する報告であった。たとえば、「典型的なグリフォサートの半減期は47日とされているが、金属イオンとの強固な化合物が生成されると、生分解するのに22年もの期間を要する・・・」といった極めて重要な情報がそこには見られる。つまり、モンサント社が広報のために用いていた情報が実は偽りであったという事実が報告されているのである。かなり詳細な報告であり、興味のある読者にはお勧めである。

ここに「グリフォサートの致死性を明らかにしたことによりスリランカ人の専門家が著名な科学賞を受賞」と題された最近の記事がある(注1)。この記事で報告されている科学賞は米国科学振興協会が科学者として、あるいは、技術者としてさまざまな困難にもひるまず「科学の自由と責任」を実践した人に対して授与するものだ。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。


<引用開始>

産業界が提供する除草剤の致死性を突き止めるために、二人の公衆衛生の研究者が利害関係を有する強力な企業側と闘い、ついに医学上の謎を突き止め、世界中の農業従事者の健康を防護してくれた。これらふたりの科学者は米国科学振興協会(AAAS)から2019年度の「科学の自由と責任」賞を受賞することになった。

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スリランカだけではなく世界各国で何万人もの生命を奪った腎疾患の流行を招いた原因を突き止めるために行った調査研究の過程においては、サラス・グナティラーケ(Sarath Gunatilake)とチャンナ・ジャヤスマーナChanna Jayasumana)の両博士は死の脅迫に曝され、研究作業には不正行為があったとする根も葉もない嫌がらせ、等に直面した。最終的に、彼らが主張する見解は容疑者である「グリフォサート」という除草剤を一般大衆の関心に曝し、影響を被ったいくつもの国々でこの除草剤は販売禁止となった。

ジャヤスマーナ博士とのサステイナブル・パルスによる独占インタビュー
「著しい額の資本を危機に曝し、産業界と個人との間には勢力の不均衡が歴然としている中で悪を正すことは、これら二人の科学者が見せた科学的追及の意欲、職業上の粘り強さ、個人的なリスクの甘受、等の極めてユニークな組み合わせを必要とし、まさにそれらが今年の受賞をもたらしたのだ、とAAASの「科学の責任、人権および法律のプログラム」を率いるジェシカ・ウィンダムは言う。

1994年頃から、スリランカのノースセントラル州で米を栽培する農民らが慢性腎疾患(CKD)を発病した。この病気の流行には特異な側面が観察された。この病気で死亡した農民は比較的若く、糖尿病や高血圧といった通常CKDに伴う症状は見られなかったのである。2011年、同国の保健省はカリフォルニア州立大学ロングビーチ校の医師であり研究者でもあるグナティラーケ博士を招待し、この病気の原因を究明することにした。
当時、ジャヤスマーナ医師はノースセントラル州にあるラジャラタ大学で博士号を取得するためにCKDの流行について研究をしていたが、研究資金に窮していた。彼はグナティラーケ博士の指導の下で客員研究員としてカリフォルニア州立大学ロングビーチ校に加わることになり、尿や飲料水および米のサンプルを持参した。グナティラーケと ジャヤスマーナは「ラウンドアップ」という商品名でモンサント社によって販売されているグリフォサートがヒ素やカドミウム、その他の重金属を汚染された飲料水を飲んだ人たちの腎臓へ輸送し、これがCKDを引き起こしていることを発見した。

2014年、彼らはInternational Journal of Environmental Research and Public Health誌に調査結果を発表した。中米や北アフリカおよび東南アジアでもまったく同様の疾患が流行していたことから、この研究報告は世界中で関心を呼んだ。現時点までにこの論文は23,000回もダウンロードされ、64回も引用されている。

グリフォサートの販売会社や子会社、輸入業者の利潤には大きな痛手となり、これは研究者たちに何の影響も無しに済むわけではなかった。つまり、グナティラーケとジャヤスマーナは死の脅迫を受け、産業界から研究資金を受け取っていた12人の科学者らがグナティラーケの研究に不正行為があったとする苦情を申し立てた。結局、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の科学的調査パネルがこの苦情を却下したことから、彼の潔癖が証明された。

グナティラーケ博士によって展開された強力な公衆衛生学上のキャンペーンに感謝の意を表して、スリランカ大統領は腎疾患の撲滅に向けて国家プロジェクトを立ち上げ、ジャヤスマーナをその指導者に任命した。2015年、スリランカはグリフォサートの輸入を禁止する最初の国家となった。3年後、スリランカはグリフォサートの輸入禁止を解除したものの、お茶やゴム園では今でも使用厳禁のままである。

過去の23年間、グナティラーケは学際的な国際会議を開催し、グリフォサートの危険性を議論し、犠牲者の家族のために2万ドルを超す募金を集めた。CKDはスリランカで25,000人もの生命を奪い、中米では20,000人が死亡した。 

「スリランカの貧しくて、何の政治力も持たない米の栽培農家のために勇敢にも声を大にして主張したことが、研究活動や農民の擁護、組織化、協力、等を介して今や世界に広がる環境運動として花を開いた」と公衆衛生学の教授であるハナン・オベイディがこの賞を推薦する手紙の中で書いている。

AAASの「科学の自由と責任」賞は1980年に設立された。この賞は挑戦が強いられる環境の下で科学の自由と責任を行使し、著しい成果を挙げた科学者や技術者、あるいは、組織に授与される。この賞が認識する成果には公衆の健康や安全または福祉を防護すること、あるいは、科学的な調査や教育、政策にかかわる重要な課題に公衆の関心をうながすこと、ならびに、科学者が社会的責任を行使し、科学者や技術者の自由を防衛するために新しい手順を開発すること、等が含まれる。本賞は5,000ドルの賞金と記念の盾で構成されている。

受賞者には、2019215日、ワシントンDCで開催される第185AAAS年次総会にて本賞が授与される予定だ。

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

グナティラーケとジャヤスマーナ両博士はこの研究の過程で死の脅迫を受けたとのことだ。グリフォサートが「ラウンドアップ」という商品名でモンサント社(昨年の6月、ドイツのバイエル社に買収され、モンサントという企業名は消えた)から販売されていたことを考えると、資金力にものを言わせたさまざまな妨害工作が行われたことであろうと容易に想像される。世界最大の「アグリビジネス・マフィア」がふたりの科学者の相手であった。それだけに、グナティラーケとジャヤスマーナ両博士にとっては、このAAASの「科学の自由と責任」賞の受賞は非常に大きな社会的な意味合いを持っていると言える。2019215日は科学者冥利に尽きる一日であったと思う。




参照:

1Sri Lankan Experts Receive Top Scientific Award for Revealing Lethal Truth about Glyphosate: By Sustainable Pulse, Feb/04/2019








2019年2月10日日曜日

米国はもっと使い勝手のいい低出力核兵器を本格的に展開する。これは核戦争を起こしにくくすると彼らは言う - あたかも皆の知性を侮辱しているかのようだ


核兵器を使い易くするという考えは核兵器の使用を抑制するという一般的な考えに真っ向から挑む考え方である。しかも、例によって、その理由付けが奮っている。核戦争を起こしにくくするだろうと戦争屋は臆面もなく言うのである。
われわれが住んでいる地球上から核兵器を無くすことはあなたや私が自分たちの次世代に贈り届けることができる究極の贈り物ではないかと私は考える。
特に、福島第一原発の炉心溶融事故による放射能の放出によって居住ができなくなった方々が沢山いる。それだけではなく、放射能の影響は今後何世代にもわたって続く。地震が頻発する日本では原発がもたらす負の影響は過密な人口を持つ国土には余りにも大き過ぎる。
放射能が人間社会に与える影響という視点から議論するとまったく同じことを言っているわけではあるが、私は核戦争の回避や核兵器の廃絶に関する記事をこのブログでたびたびご紹介して来た。その観点からは米ロ間の緊張緩和は最大級の重要性を持っている。MH-17便撃墜事件やスクリッパル父娘毒殺未遂事件といった西側の大手メディアによるロシアに対するフェークニュースの乱発や何の証拠も示さずに犯人呼ばわりする節操を欠いたメディアの大合唱は米ロ間の緊張緩和には百害あって一利も無い。トランプ米大統領がロシアとの和解の方向性を示したが、野党の民主党はこれに反対。彼らの行動は党利党略だけが主要な判断基準であることを示している。政治が生産的ではなくなってしまった!この現実は米国人にとってだけではなく、全世界の一般庶民にとっても非常に大きな不幸である。
ここに「米国はもっと使い勝手のいい低出力核兵器を本格的に展開する。これは核戦争を起こしにくくすると彼らは言う - あたかも皆の知性を侮辱しているかのようだ」と題された最新の記事がある(注1)。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。軍産複合体が推進する社会がここまで来てしまった現実を改めて理解しておきたい。


<引用開始>
ワシントン政府は低出力核兵器は核戦争を起こしにくくすると主張しているが、この主張はとんでもない戯言だ。何と言っても、そのような兵器を計画したそもそもの発端は戦争屋たちが核兵器を「もっと使い易くしてくれ」と愚痴をこぼしたからに他ならない。つまり、核兵器を持たない国に対する戦術的な役割として実際に使うための発想である。
米国は原潜への搭載用として低出力核弾頭の製造を開始したとガーディアン紙が報じた。この報道は国家核安全保障局(NNSA)の電子メールによる発表を引用したものである。 

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W76-2」と称される新兵器。これは原潜に搭載されるトライデント核弾頭を改良したものである。NNSAによると、製造ラインからは最初の生産バッチがすでに取り出され、数量は不明であるが、これらの新兵器は「初期作戦能力」を備えているとされ、9月の終わりには配備可能となる。 
ワシントンで「憂慮する科学者たちのユニオン」の上級代表を務めるスティーブン・ヤングによると、元々は2段階で構成されている「W76」から1段階を排除し、出力を低下させ、W76-2が開発された。 
「手っ取り早く説明すると、必要なことは第2段階をダミーに置き換えるだけだ。この手法はミサイルの試験飛行ではよく採用される」とヤングは言う。水素の同位体である三重水素の量も再調整されるだろうと彼は付け加えた。
TNT火薬換算で100キロトンの爆発力の95パーセントが排除され、5キロトンになる。この爆発力は広島原爆の1/3に相当する。

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トランプ政権によると、米国はより柔軟な戦争抑止力を有することになるから、低出力核兵器は核戦争を起こしにくくするだろうと言う。W76-2は敵国(ガーディアン紙によると、特に、ロシア)の考え方に対抗することを可能とする。つまり、現有の核兵器は何百キロトンもの爆発力を持っているので、米国は小さな核兵器による攻撃に対してでも巨大な核兵器で応戦することになり、一般市民の被害もなしに使用するには「余りにも大き過ぎる」のである。
低出力核兵器は「潜在的な敵国は限定的な核戦争には利益を見い出せないだろうから、核の使用の可能性は低下する」と2018年の報告書「核態勢の見直し」が論じている。 
批評家はこれは突飛な議論だと指摘している。この議論は計算違いなんて起こり得ないとの想定に基づいたものだ。
「しかしながら、別のシナリオがいくつもあり得る。特に、予測を超えた発言では定評がある大統領の存在だ。彼は、最近、われわれはどうして核兵器を使えないんだと問うた」とヤングは言う。
ところで、「One Earth Future」基金のメリッサ・ハンハムは米国がトライデント・ミサイルによって何百キロトンもの核弾頭を発射したのか、それとも、低出力の核弾頭を発射したのかについては敵国は知る術がないと指摘した。 
米国科学者連盟において核情報プロジェクトのディレクターを務めるハンス・クリステンセンはこの新しい核弾頭は新兵器や新たな軍事力の開発は行わないとするオバマ政権の政策を破ってしまったと述べている。これによって小型核兵器をめぐるロシアとの軍拡競争が始まるかも知れないと彼は言った。
「潜在的な紛争の初期において戦術的で、かつ、非常に限定的なやり方で戦略核を用いることに関して、この代替用新兵器によって米国は新たな決意をどの程度伝えることができるのだろうか?」とクリステンセンは問うている。「率直に言って、終わりの見えない展開になってしまうのではないかというのが私の最大の懸念だ。」
新たな軍拡競争が勢いを増していることを示す一連の展開がある。ウラジミール・プーチンは新世代のロシア製の武器を公開し、ロシアは1987年に締結された中距離核兵器廃絶(INF)条約で禁じられているクルーズミサイルを開発したとの疑念に曝されている。
(訳注:新世代のロシアの新兵器の中には確かにクルーズミサイルが含まれている。原子力駆動のクルーズミサイルだ。これが地上発射型であれば、確かにINF条約の違反となる。しかし、海上発射型や原潜から発射される場合、あるいは、航空機から発射される場合はINF条約の対象外であると言える。)
トランプは米国を同条約から撤退させると宣言し、同政権は条約の順守を取り止め、この土曜日(22日)にはこの撤退に関して6カ月の事前通知期間が始まる。(ガーディアン紙
トランプ政権が命じた核兵器の見直し作業は野心的な近代化計画を策定した。これはすでに動き出しており、新たな海上発射型クルーズミサイルの開発を求めている。
この見直し命令は米国は「核によらない重大な戦略的攻撃」に対しても核兵器で応戦することが可能になると言う。この戦略的攻撃には「一般市民やインフラ」に対する攻撃も含まれる。この命令は「核による戦争計画と核を伴わない戦争計画」とを強化し、それらを統合することを求めている。 

民主党はこれに制約をかけることが出来るかも:
低出力核兵器がすでに組み立てラインから送り出されたとのことであるが、下院の多数派となった民主党はこのプログラムに制約をかけることが可能だ。
下院軍事委員会の新委員長となった民主党のアダム・スミスは「私は彼らが言う程多く要るとは思わない」と述べている。「核態勢の見直しが求めている程多くの弾頭を配備する余裕があるとは思わないし、そんなに多くを必要とするとは思えない。」 
トランプ政権と下院の民主党との間の闘いにおいては核兵器予算は重要な闘いの場のひとつである。現大統領はリーガン政権時代の核を標榜する好戦派を身の回りに集めている。たとえば、INF条約を破棄することを推進した国家安全保障担当補佐官のジョン・ボルトンやボルトンの新副補佐官のチャールズ・クッパーマン、等。クッパーマンは一方がより強力であれば、何百万人もの犠牲者が出るかも知れないが、核戦争で勝ち抜くことは可能だとする議論をかって展開したことがある。ガーデン紙
元国防長官のウィリアム・ペリーは、先週、記者たちに対して全世界で保有されている核弾頭の数についてはそれ程心配をしてはいないと述べた。むしろ、これらの核弾頭を「使用することが可能だ」とする議論の方が遥かに大きな懸念だと彼は言う。
「核兵器を使用することに戦術的な利点があるとする見方は米国でもロシアでも何年間にもわたって公に議論されたことはない。しかし、今や、両国で議論されている。この事実は非常に悩ましいことだ」とペリーが述べた。「そして、これは非常に危険な考えだ」と付け加えた。

<引用終了>

これで全文の仮訳は終了した。
この引用記事が報告している内容は貴重だと思う。
ハンス・クリステンセンの言葉には重要な要素が含まれている。「潜在的な紛争の初期において戦術的で、かつ、非常に限定的なやり方で戦略核を用いることに関して、この代替用新兵器によって米国は新たな決意をどの程度伝えることができるのだろうか?率直に言って、終わりの見えない展開になってしまうのではないかというのが私の最大の懸念だ。」
これでは歯止めがかからないではないかという指摘だ。
「終わりの見えない展開」とは、たとえ当初限定的な核の使用を意図していたとしても、攻撃に対しては報復攻撃が行われ、事態はどんどん展開して行く状況を指している。最終的には全世界が核戦争に巻き込まれてしまう可能性が高い。軍事的衝突が起こった中でこのような可能性をいったい誰が、いったい何処の国がどのようにしてコントロールすることが出来ると言うのであろうか?例えば、米ロ間にそのようなメカニズムがあるのか?旧冷戦の頃にはそういったメカニズムがあった。今は何もない。このことから、現行の新冷戦は旧冷戦よりも遥かに深刻な状況にあると言われていることを思い起して欲しい。
また、この記事が伝えていることは米国の軍産複合体が自分たちの組織の論理、つまり、軍需産業の金儲けを目指して、低出力核兵器の製造をゴリ押しし、製造を開始したという事実だ。かっては、核兵器は戦争抑止力としての存在であって、それを使うことは避けようとした。今、軍人たちは核兵器を使うために技術革新を追求している。彼らが考える内容ががらりと変わってしまったのだ。軍人たちが考えることには何の規制や制約もない。元国防長官のウィリアム・ペリーの言葉を待つまでもなく、彼らの考えそのものが大きな危険性をはらんでいる。
このような米国社会の深層については無数の分析や解説がある。このブログには2016330日に掲載した「まったくお門違いの勝利」と題した投稿がある。著者のドミトリー・オルロフが実に興味深い議論を展開している。余談になるが、その一部をここで再確認しておきたい。下記のような具合だ。
「・・・実際にはかなり多くの金が着服されるという事実に留意して欲しい。ペンタゴンは数十年にもわたって会計監査を受けたことがなく、説明のつかない額は何十憶ドルにも達する。防衛関連支出のかなりの部分がさまざまな形で米議会の議員に対する政治献金としてリサイクルされ、当の議員らは防衛関連予算の増加にこぞって賛成票を投じる。また、防衛関連の契約企業は退役した将官らに途方もない額のコンサルタント料を支払う。現実にはこれは一種の繰り延べ給与である。彼らは職責にある間ずっと防衛関連企業のために働き続けるが、退役してから初めて給与を手にするのだ。このような仕組みやこれ以外の無数の仕組みを通して国防予算の内でいったいどれほどの額の金が動いているのだろうか?詳細は誰にも分からない。米軍の支配者層はこの地球上に見られる汚職集団の中では最大級であると思われる・・・
第三次世界大戦が起こるとすれば、それは、ほとんど間違いなく米国発であろう。あまりにも巨大化してしまって、誰の手にも負えなくなった軍産複合体の思考形態は戦争の遂行を当然視する。相手が戦争に関心を示さないならば、相手に戦争を仕掛けるのが彼らの仕事である。彼らは、またもや、巧妙に自作自演作戦を仕掛けるだろう。米国は敵の攻撃に応じなければならないと言って、彼らは全米ならびに同盟国の市民に向かって多いに喧伝するに違いない。
あるいは、何らかの偶発的な事故が終わりのない展開を招き、世界規模の核戦争に発展していくのかも知れない。核兵器が配備されている限り、偶発的な事故が核戦争の引き金となる危険性はゼロではない。



参照:

1US Rolls out a More Useable Low-Yield Nuke to Make Nuclear War Less Likely and Insult Your Intelligence: By Tyler Durden, Zero Hedge, Jan/30/2019







2019年2月1日金曜日

ロシアゲートの調査を支援して来た元CIA長官が共謀論から後退


ロシアゲートとは2016年の米大統領選で共和党のドナルド・トランプ候補が民主党のヒラリー・クリントン候補を下した際、敗退を喫したクリントン陣営がトランプの勝利はロシアの支援があったからだという作り話を持ち出し、トランプ新政権の国内政治を機能麻痺に陥れた事件である。国内政治ばかりではなく、米ロ間の外交活動も低迷し、相手国に対する不信感は前回の冷戦時のそれよりも悪化し、史上最悪のレベルに達してしまったと言われている。

米国は中距離核兵器全廃(INF)条約の破棄を持ち出している。そうなるとヨーロッパを舞台にした米ロ間の軍拡競争が再開され、偶発的な軍事衝突がいつ起こるか分かったものではない。大規模な核戦争に発展する下地が出来てしまう。つまり、人類は地上から消されてしまう可能性が格段に高まる。最悪のシナリオである。

ところで、このブログの主要な関心事のひとつはわれわれが住んでいる地球上から核兵器を排除し、核戦争の恐れがない地球環境を次世代に送り届けることにあり、非力ながらも、私自身はその流れでブログを継続してきた。米ロ間の新冷戦が最悪のレベルに陥っていると言われる今、核の脅威については少しでも多くの関連情報を読者の皆さんにお届けしたいと思い、今までさまざまな記事をご紹介してきた。好むと好まざるとにかかわらず、核兵器そのものや軍事衝突、緊張緩和のための国際条約、等はそれぞれが直接・間接にあなたや私の孫の世代が安心・安全を確保する可能性を大きく左右する。加えて、周りには政治家やメディアが声高らかに述べる政策、解説、見解、ニュース、論説、等、無数の情報が流れている。しかし、それらの情報には真偽が巧妙に入り混じっているのが常であって、それらを選り分けることはわれわれ素人にとっては至難の技であり、膨大なエネルギーと時間が必要となる。

ここに、「ロシアゲートの調査を支援して来た元CIA長官が共謀論から後退」と題された記事がある(注1)。非常に興味深い表題だ。「共謀論」とは大統領選の最中にトランプ大統領とロシアとの間に共謀があったとするクリントン陣営の主張を指している。米議会が推進するミュラー特別検察官によるロシアゲートに関する調査は何も成果を挙げなかったことから、これは元CIA長官個人の考えと言うよりも、むしろ、ディープステーツが元CIA長官に共謀論からの後退を仄めかせることにしたという構図かも知れない。いわゆる出口戦略の一環ではないだろうか?

もしそうだとすれば、ロシア共謀論からのディープステーツの後退は歓迎すべきことだ。米ロ関係の緊張を推進する大きなネタがひとつ消され、緊張緩和の後押しをしてくれることになるだろう。あるいは、まったく別の理由が隠されているのかも知れないが、それは時間の経過とともに真相が表面化してくるのを待つしかない。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>

CIA長官のジョン・ブレナンはドナルド・トランプとロシアとの間に共謀があったとする主張を派手に支持していたが、最近のテレビ・インタビューではそのポジションから後退し、米大統領の政策は単純に言って不可思議だと述べるに留まった。

火曜日(115日)夜の MSNBCのクリス・ヘイスとのインタビューで、ヘイスが「トランプの政策上のポジションは本質的にロシア人たちとの秘密裡の関係からもたらされたものだ」と繰り返してブレナンが提言していたことに関して彼に迫った時、ブレナンは「そんなことを言ったとは思わない」と述べた。

「われわれが言っていることについては幾つもの事柄が証明されており、トランプの政治行動は米国の国際的な役割を台無しにすると思う」とブレナンは言い、法務省の防諜および輸出管理部門の元長官であったデイビッド・ラウフマンの意見について喋った。彼の意見についてはヘイスがちょうど引用したばかりだった。 

「ドナルド・トランプがプーチンとの間で何らかの秘密の関係を持っていたかどうかは私には分からない・・・ 私はトランプ氏がどうしてこのような事をするのかを質したい。彼は何らかの形でプーチンに恩義を受けているのだろうか?彼はプーチンやロシア人、あるいは、何かを恐れているのであろうか?現在ならびに以前の米政府の数多くの高官や職員らは困惑し、頭をかいて、トランプがこれらの政策を追求する理由を理解しようとしている」とブレナンは司会者に言った。 

これらの言葉はニューヨークタイムズの紙上で、かなり最近、つまり、20188月に「ロシア側の否定」や「共謀はなかったというトランプ氏の主張は、一言で言えば、実にくだらない」と書き、ロシア人がトランプを窮地に陥れたと偽って、そのことを証明しようとしたスティ―ル・ファイルを支持した者にとっては著しい後退を意味する。しかしながら、われわれは今やこれらの事柄の正確さに関しては非常に疑わしいと理解している。

しかし、これはブレナンが最初に口にした主張からは程遠い。7月にヘルシンキでロシアのウラジミール・プーチン大統領との間で開催されたサミットを受けて、ブレナンはこの会合は「重大犯罪と軽犯罪の敷居を高くするが、それさえも超えるものだ。反逆罪に近い」と言って、ブレナンはまたもや米国大統領をこっぴどく攻撃した。

皮肉なことに、ブレナンは起こってしまったこの騒ぎを鎮めようとした。これもMSNBCにおいてだったが、相手はレイチェル・マッダウだった: 

あの時の状況を見ると、火曜日(115日)のヘイスとのインタビューの時と同様に展開したという事実は注目に値すると言えよう。つまり、すっかり定着したロシアゲートの筋書きは、当然のことながら二人の司会者の頬を紅潮させ、二人はトランプに関してブレナンが発した大げさで、遠大な物言いについて彼の誠実さを問うた。ブレナンは確実に得点を挙げるスラムダンクを物にすることに大層熱心であった。どちらのインタビューでも、元CIA長官は彼は自分が言った内容をそのまま意味したのではないとして、前言を翻したのである。

多分、これはブレナン自身の問題である。彼は物事を見極める前にそれに飛びつく。一介の市民になった後でさえも自分はこの国の高度の機密情報にアクセスする権限を与えられるべきだと考える人物にとっては、このような態度はいささか無責任ではないだろうか? 多分、ブレナンが自分の主張を撤回しようがしまいが、彼の衝撃的な文言はトランプに対して激しい怒りを覚え、ロシア政府やロシア人に対して恐怖を感じる民主党員の心を捉えるであろうことは良く分かっているのであろう。CIAでの長い在籍期間中ブレナンはロシアを米国の第一の敵国に築き上げることに焦点を当ててきたのである。

<引用終了>


これで全文の仮訳は終了した。

ブレナンがロシアゲートを支えて来た共謀論から身を引いたという事実は米国の国内政治にとってはかなり重要な出来事であろうかと思う。

何と言っても、彼は元CIA長官という肩書を持っている人物である。彼が発する言葉は大手メディア(NBCニュースおよびMSNBCによって安全保障や諜報に関する分析専門家として)取り上げられ、米国市民の茶の間に送り届けられるからだ。個々の情報が如何に不完全なもの、あるいは、作り話であっても、ひとたびこの情報操作マシーンに乗ってしまうと、それを批判し、論破することは並大抵ではない。辛辣な物言いで定評のあるポール・クレイグ・ロバーツ氏に言わせると、米国の一般市民はあまりにも無頓着で、真実を探り出そうともしない。しかしながら、それが今の米国社会の現実である。

とは言え、最近の世論調査によると(注2)、米国の選挙民の59パーセントはトランプ大統領がミュラー特別検察官が掘り起こした情報を公表するよう希望している。14パーセントは機密のまま維持するべきだと言い、27パーセントはどちらとも言えないと答えた。これらの三つの数値を見ると、大荒れに荒れた2年間の国内政治の結果、共謀論に対する一般庶民の関心は決して低くはなく、むしろ健全であると言えそうである。

民主党が過半数を占める米下院はトランプ大統領に対抗するためにロシアゲートを継続する方針らしい。しかしながら、米国の市民はこのような方針を許容するのであろうか?



参照:

1: WATCH: Ex-CIA Chief Who Pushed Russiagate Probe Backs Off Collusion Theory: By Sputnik, Jan/16/2019, https://sptnkne.ws/k45f 

2: Most US Voters Want Russiagate Records to Be Revealed to Public – Poll: By Sputnik, Dec/31/2018, https://sptnkne.ws/kwvU