2022年5月30日月曜日

西側はキエフ政府を見限る用意をしている

 

ロシア・ウクライナ戦争に関する見方に最近著しい変化が現れているようだ。その最たるものはこの戦争を背後から操って来た米国においてである。

米民主党を支える中心的な存在として自他ともに認めるニューヨークタイムズ紙は、ウクライナは領土を割譲して、ロシアとの和平を図るべきだと言った。元国務長官のヘンリー・キッシンジャーは最近のダボスサミットで領土面での譲歩を行い、戦争を終わらせるようウクライナに推奨した。要するに、米国内にはこの戦争が米ロ間の核戦争に発展する危険性を孕んでおり、その危険がますます身近に迫って来ているという認識がある。だが、バイデン政権は具体的にどのように停戦に持ち込み、和平するかに関しての具体策がない。今年11月の中間選挙では民主党が敗退する可能性が高まる中、選挙に悪影響を与えずにウクライナで矛を収める最強の筋書きを模索中のようだ。自分たちが8年をかけて開始したこの戦争を国内では面子を保ち、かつ、民主党の有権者に失望を与えずにこの戦争を収束させることは至難の技であるに違いない。

この種の態度の変化は、最近、英国や欧州にも見られるという。

ここに、「西側はキエフ政府を見限る用意をしている」と題された最新の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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最も頑強なウクライナ・ナチスがアゾフスタル製鉄所で降伏したことはウクライナ軍のやる気を予測通りに弱体化させた。将兵は退却し、脱走し、降伏し、まだ動員されていない者は召喚状を受け取ることから逃げようとしている。ウクライナ人は何かを自覚し始めたようだ。

しかしながら、彼らの友人である西側の好戦派の闘争心はウクライナ人以上に顕著に萎縮した。マリウポリが解放された直後、ウクライナのマリウポリはアングロサクソンの主要メディアの第一面から姿を消した。「戦争の88日目、戦争の89日目...」といった見出しを持った戦闘記事はどこかへ行ってしまったのである。

英国のプロパガンダ(ウクライナのマリウポリに代わって)ジョニー・デップとアンバー・ヒアードとの訴訟事件げている (「証人はデップ路上排尿した時、デップのペニスをたのか?」、「デップぺニスたらえていると・・・」といった具合だ)。その一方で、米国の各紙は11月の中間選挙の準備に集中している。

米国における情報の領域では常識的な声が最初は臆病に、その後は大声で聞こえるようになった。「ウクライナでの戦争はますます激しくなっている、米国よ、私はこれに対して準備ができていない!」これは、何処かの名もない新聞の社説ではなく、こともあろうに民主党の主要メディアであるニューヨークタイムズの社説なのである。NYT編集者は「ウクライナの指導者たちは妥協に達する過程で必要とされる痛みを伴う領土に関する決断をすぐにでも下すべきだ」と推奨している。まあ、簡単に言えば、ウクライナの領土をロシアに割譲しなさいと言っている。

「ウクライナ紛争については真剣な議論が必要だ!」このような発言はかなり急速な変化である。 しかも、これは米軍の広報紙の役を務めているワシントンタイムズの弁だ。世界的な核による対決を防ぐためにウクライナの状況を観察するようにと呼びかけている彼らの姿を同紙のページで目にするのは実に奇妙である。私に言わせれば、「あんた方は以前はいったい何処にいたの?」と聞いてみたくなる程だ。

このような立ち位置の修正は99歳の国際政治の重鎮の手によって行われた。ヘンリー・キッシンジャーである。ダボス会議の式典についてはあまり誉めそやすことはしなかったものの、彼はキエフ政府はできるだけ早く降伏するようにと助言した。つまり、モスクワとの和平交渉を始めることだと。

興味深いことに、著名な保守派の広報家であるパトリック・ブキャナンは「もしもこの戦争がなかったとしたら」というテーマを展開した。特別軍事作戦の当初から、彼は同胞たちに軍国主義的な怒りには陥ることなく、ロシアとの対立についてはそのリスクと利益を賢明に評価するよう強く促していたのだ。今、この紛争を長引かせることに関してブキャナンは何の利益も見出せないでいる。見えて来るのは核戦争と相互破壊のリスクだけだ。

あなたがお読みのコラムでは、ブキャナンは、20世紀には米指導部は繰り返してヨーロッパで紛争を引き起こそうとし、ソ連の指導者に対しては情報戦争を演出し、その状況を世界大戦の瀬戸際にまでも追いやり、それから、素早く逆転して和平交渉に持ち込んだこと、等を読者に思い出させている。前日はお互いに罵声を浴びせ合っていた超大国の指導者たちはカメラに向かって会合し、抱擁し合い、微笑んだ。これを見て、世界は息を呑んだものである。

「アイク(ドワイト・アイゼンハワー大統領の親しみ易さを示して、ブキャナンは元大統領をこう呼んだ)は「ブダペストの虐殺者」と称されていたニキータ・フルシチョフを12日間の米国ツアーに招待した。ニクソンはレオニード・ブレジネフと共に1968年にワルシャワ条約機構軍を出兵し、プラハの春を粉砕するよう指示した。そろそろ然るべき時間となったのではないか?今は冷戦2を始めるのではなく、米ロはあらたに緊張緩和を開始するべきではないのか?」と著者は問いかけている。

米ソ間の緊張緩和が進行したあの当時に弟子たちが経験したことは誰にとっても想像するに難くない。プラハやブダペストにおけるワシントン。おそらく、まったく同じことをゼレンスキーと彼の仲間たちは、今日、感じているのではないだろうか?

ニュースのテーマに転換点が現れたことについて言えば、ゼレンスキーに対するアングロサクソン系メディアの態度ほど鋭く感じられるものはない。いや、キエフ政権の代表者は依然として頻繁に引用されてはいるのだが、そのトーンがどのように変化したのか、そして、プレゼンテーションはどのように変って来たのかがここでは非常に重要なのだ。

ゼレンスキーはダボスフォーラムで熱烈なスピーチを行った。しかし、彼の最も印象的な発言はメディアでは引用されていない。ニュースの見出しは意図的に退屈で、標準的にしか見えない。つまり、「ゼレンスキーはロシアに対する経済制裁を要求」とか「ロシアに対する最大限の経済制裁」といった具合だ。「ゼレンスキーは支援や投資を要求」、そして、再び「支援を求め」、「国際社会に助けを求める。」まるで地方からやって来た貧しい親戚、つまり、ジトミルからラリオシクがやって来て、何かを懇願し、尋ね、ドアの下で泣き叫んでいるかのような感じだ。そして、彼を蹴り出してしまうことは余りにも気恥ずかしく、ひどく困惑するのである。私はこの状況を排除したいのではあるが、面目を失わずにこれをうまく実行する方法は明確ではないのだ。

同じダボス会議では伝説的な91歳の新興財閥だけがロシアとの戦争での勝利を目標にしてキャンペーンを行った。ジョージ・ソロスである。しかしながら、彼は単に撃墜されたパイロットのような役割を演じているだけのようだ。一部の金融専門家たちは依然として自分たちの計画を彼に発表して貰うことを信じてやまない。ところが、その実現の可能性がないことについては大声で不満を述べている。彼の暴言はすべてが長く、現実からは絶望的な程に遊離している。同じ演説の中でソロスは中国経済が崩壊し、個人的には習近平が崩壊すると約束した。しかし、彼は毎年このような約束をしているのだ。だから、どうだって言うのか?

Photo-6: 26 May, 2022, 08:00 „Kissinger vs. Soros: Realists vs. Globalists

ウクライナでの特別作戦の成功は軍事的勝利にあるというよりはロシアに加わる必要性が理解されたことを反映している。何十万人、何百万人もの人々がそれを同時に理解したことだ。国民の意志におけるこの転換点はもちろん歴史的瞬間である。そして、この時点でワシントンの政治家たちはここから離脱した方が良いと推測し始めている。よく言われているように、「矢の下には立つな」ということだ。

さらには、ロシアに対する超現実的な経済制裁は米国を新たな大恐慌に追いやっている。これらすべての事柄を緊急に押し戻してやらなければ、11月の中間選挙で民主党が勝利するチャンスはない。そして、現状を押し戻すにはウクライナを統合する必要がある。これは個人的なものではなく、ビジネスそのものだ。

もう一つの課題は面子を失うことなくこれを実施する方法である。ワシントン政権はロシアとの和平交渉への願望をいったいどうやって自国の聴衆に売り込めるのだろうか? 結局のところ、民主党は米国人の間に完璧に不健康とも言える軍国主義的な癇癪を解き放ってしまった。ニューヨーク・タイムズ紙の平和主義的な本記事に対するコメントからは「バイデンがリークした!」という呻き声が絶え間なく聞こえて来る。

「ウクライナを裏切ることがどうしてできると言うのか!」と読者は憤慨している。そう、これはNATOや米国自身のイメージにいったいどのような悪影響を与えるのだろうか?ヨーロッパの衛星国、つまり、NATOの同盟諸国は我々をいったいどう思うだろうか?

ロシアとの対立の激しさを弱めようとしているバイデン政権が来たる選挙で民主党を救おうとしているのはどこか滑稽だ。あらんことか、民主党の最も熱心な支持者たちはこれを裏切り行為と認識し、もしもバイデン政権がキエフを見捨てるならば、民主党には反対票を投じるといった脅しをかけている。

また、 東欧圏のタカ派もかなり動揺している。もしもそうではないとしたら、それはどんな状況であろうか?ロシアに対する前哨地帯としての彼らが存在する意味はすべてが我々の目の前で失われようとしている。彼らは個人的な意見としてのキッシンジャーの調停を非難し、ワシントン政府はウクライナに武器を注ぎ込み、ロシアとの戦いを続けるよう要求している。

悲しいかな、ウクライナは私たちの目の前で終わりに近づいている。クリミアに続いて、ドネツクとルガンスクの両共和国がウクライナから離脱し、アゾフ海沿岸はウクライナから離れ、黒海沿岸地帯の運命は霧で覆われている。オデッサとニコラエフのことである。ドゥダ大統領が自国の部隊を送り込んでウクライナへ介入しようとしている西部地域ではいったい何が起こるのかは不明だ。ところで、彼の地では多くの人々には「ポーランドのカード」が長い間意識にあって、自分たち自身は「文明化されたコミュニティ」である欧州連合の一員であると自負しており、彼らはこの地域は「東部境界線」地帯の一部であると見ている。

ウクライナ人戦うことを予定されていたが、今や、それも終わりに近づいている。彼らは前線に出かけ、みっつの約束をしたがそれらをいつでも放り出して、ロンドンに向けて飛んで行ってしまうような大統領のために死ぬことにいったいどんな意味があるのか?

西側のパートナーはもう飽き飽きしている。ウクライナ人は自分たちの関心を再び見失ってしまった。ついに、ゼレンスキー自身も話題に尽きて、ダボスでは西側の新興財閥にウクライナの復興に「投資」すること、即座に損失額を0.5兆ドルとすること ― ロシア国民の魂は広大である  ― を提案した。ああ、いや、そんなお金はないぞ!ああ、すべてにうんざりだ!ジョニー・デップとアンバー・ヒアードはどうなったのだ?

現時点では、モスクワ政府が検討用として提案した和平条約草案は異常な程に無意味に見える。先に述べたキッシンジャーはロシアとウクライナは現状に戻ること、つまり、224日の国境線に戻ることを提案している。イタリアの指導部は、大雑把に言うと、ドンバスとクリミアには自治権を与えるようウクライナに勧告した。まあ、それは、ドミトリー・メドベージェフが言ったように、「ロシアに対してはあからさまに失礼なことだ。」

しかし、「戦争さえなかったならば」という最近の傾向から判断すると、ある時点において合理的な妥協点に辿り着くことは可能である。だが、他にも膠着状態がある。ウクライナがどのよな領土の喪失に終わったとしても、それはウクライナに残される領土について拘泥し続ける愛国者たちを激怒させることであろう。その一方、モスクワ側の譲歩はいかなるものであってもロシアの愛国者を激怒させることであろう。とすると、いったいどのように交渉を進めることができるのであろうか?

全体として、それはすべてが非常に長い話のように見える。ロシアとの紛争における悲惨な特徴に関する認識は徐々にウクライナを支援する西側の支配者達にも届いている。まあ、われわれは戦争を続けなければならないのかも。ここでわれわれはメドベージェフを再び引用する喜びを隠す積りはない。「彼ら(平和条約の執筆者たち)をある方向に向けて送り出すことだ。そして、特別軍事作戦の目標を達成するためにはさらに努力を続けることだ。」

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これで全文の仮訳が終了した。

著者は通常兵器によるロシア・ウクライナ戦争は米ロ両国にとっては国際政治上の必要悪であると見ているようだ。

ところで、米ロ両国は、当然ながら、核戦争を是が非でも回避したい意向である。

ロシアは機会がある毎に「ウクライナでは核兵器を使わない」と繰り返して宣言している。

その一方で、「米政府はポーランドが自国の兵力をウクライナへ送り込むことは許さない」と報じられている。これは528日にロシア連邦軍の元空軍司令官であったシュパク上級大将が述べたもの。ポーランドはNATO加盟国である。NATO側からたとえ1個の弾丸でもロシアに向けて発射されると、それは第三次世界大戦の始まりとなる。これは誰にも分かっていることだ。ワルシャワ政府はワシントン政府から「決して始めるなよ!」という非常に明快な命令を受け取った。第三次世界大戦の口火を切ることは誰も望んではいない。なぜならば、どちらも勝者として残ることはないという予測が明確であるからだ。(原典:Ex-commander of the Airborne Forces revealed the US instruction to the Polish authorities: By iz.ru, May/29/2022

こうして見ると、米ロ両政府は核大国としての最終的なリスクをはっきりと認識していると言えよう。残された最大の懸念は好戦派や軍産複合体、対ロ嫌悪感情に支配され、冷静な情勢分析ができなくなった一部の政治家や西側のメディア、あるいは、ネオナチを支援し、正気を失っている超お金持ちの連中が引き起こしかねない気まぐれな行動であろうか。

すべてがうまく行けば、つまり、西側の指導的な政治家が目を覚ましさえすれば、ロシア・ウクライナ戦争は近い将来に停戦に漕ぎ着け、和平交渉が始まることになる。キッシンジャーが世界経済フォーラムで推奨したように、2か月以内に西側がウクライナを説得して、ウクライナの和平交渉が始まるならば、今年の夏は久しぶりに眩いばかりの季節を満喫することが可能となる。あるいは、今の混沌とした世界に明るい将来が見えては来ない場合は、われわれを取り巻く異常な集団心理状態にどっぷりと浸り切って、不眠を訴え、理由が不明なイライラ感に苛まれた日々を送ることになるのだろうか?

ロシア・ウクライナ戦争は一日でも早く終わって欲しい!


参照:

注1:The West is preparing to betray Kiev: By Victoria Nikiforova, RIA Novosti, May/27/2022

 

 

 

2022年5月28日土曜日

WHOにおける密かなクーデター ― 世界中の保健行政に君臨するためのビル・ゲーツや薬品大手の思惑

 

新型コロナ禍の経緯や権威筋の対応の仕方を見ると、ビル・ゲーツや大手ワクチン製造企業によって医学や科学の領域がハイジャックされてしまったように感じられる。今では一般庶民の大多数は新型コロナ禍のせいで経済が停滞したことに気付いている。ほとんどの人はメディアが報じるニュースによって恐怖感を煽られ、都市閉鎖に黙々と従い、安全性が十分に説明されてはいないワクチン接種へも参加した。専門家は、公的な説明とは異なる結論に達した場合、多くの場合、主張したいことについてさえも発表することができなかった。そのような状況が現出したのである。われわれが現在置かれている状況は政府方針に盲目的に、あるいは、渋々ながらも従ったことによってもたらされた結果であると言わざるを得ない。そして、そうした結果は誰かによって最初から計画され、予見されていたものでもあったと言える。そう思わせる状況は決して少なくはない。多くの人たちがすでにインターネット上で説明し、言及している。

考えてみると、これは非常に巨大なシステムあるいはプロジェクトであったと言える。その頂点にはWHOがいた。そして、その背景には公には知られてはいない総合監督役としてエリートたちがすべてを取り仕切っていたのだと私には思える。

保健衛生の最高の権威筋であるWHOの存在理由も含めて、2年半にもわたって世界を席巻した新型コロナ禍の状況は、率直に言って、金儲けが科学よりも優先されたことが最大の特徴であったと言えよう。ぼろ儲けをしたワクチン製造企業の対極に位置し、彼らのシナリオに沿って踊らされたわれわれ一般庶民は今回の苦い経験を振り返って、二度とこんな事態が起こらないように是正措置を講じなければならないだろう。その場合、WHOの存在は避けては通れない議論の対象となりそうだ。

本日、問題として取り上げたいのは「新型コロナV.2」みたいなものだ。それは今年の冬の季節が舞台だ。半年後のことである。世界的規模での金儲けのために大手民間企業が画策し、管轄当局も含めて多くの直接・間接的な参加者を彼らの金儲けのために組織化し、一般消費者には聞こえのいい隠れ蓑、つまり、巧妙な概念を用意して、自分たちの目標のために全世界をゴリ押ししようとる手法、あるいは、システムがまたもや登場する。そう、これは手法なのである。実は、ここで議論の対象としたい点はすでに至るところで語られている。現代的なMBAの思想体系から言えば、これはマーケティングの範疇に属するのではないだろうか。

ここで、一例を挙げてみよう。最近われわれ素人の目にさえもはっきりと見え始めた状況のひとつに遺伝子組み換え作物用の除草剤「ラウンドアップ」の発がん性がある。この除草剤を開発し、市場に送り出した企業、モンサント(現在はバイエル)はその発がん性が社内でも確認されていたにもかかわらず、関連データを隠ぺいし、長期にわたる安全性試験には取り組もうとさえもしなかった。また、使用者による取扱い時の安全性に対する配慮については積極的に取り組まなかった。そして、モンサント社は管轄官庁である米環境保護庁との癒着が指摘されている。金儲けに優先順位を置こうとする企業の論理からすると、自社が開発した製品を市場へ送り出すためにはユーザーの健康被害の可能性さえもが企業としての関心の対象からは外されてしまう。企業レベルで無視される。そして、不幸なことには、ラウンドアップの製造や販売を行ったモンサントが招いた世界規模の不祥事と言えども、これは氷山の一角にしか過ぎない。(注:ラウンドアップ除草剤に関する発がん性にからむ米国での訴訟問題に加えて、アルゼンチンではこの除草薬によって実に悲惨な健康被害がたくさん出現した。詳しくは、当ブログが201592日に掲載した拙文「アルゼンチン ― モンサントによって汚染された国」をご参照ください。まだお読みになってはいない方にはお勧めです。) 

除草剤ラウンドアップやコロナ禍で世界中が体験した悲惨な経験は資本主義を維持するには必要悪であるとの意見があるかも知れない。しかしながら、果たしてそう言い切れるのかどうか、私にはとてもそんなふうには断定できない。かって日本では企業から排出された化学品が地域の環境を汚染し、地域住民が健康被害に見舞われ、長期間にわたって酷い苦難を強いられた。しかも、所を変えて同じような状況が何度も繰り返されたのである。そのような状況はもう二度と繰り返したくはない!

ここに、「WHOにおける密かなクーデター ― 世界中の保健行政に君臨するためのビル・ゲーツや薬品大手の思惑」と題された記事がある(注1)。この記事は近い将来に起こり得る巨大な問題、つまり、責任の所在関しては焦点が定まりにくい社会悪、あるいは、システム悪になるかも知れない問題に光を当てようとしている。そのことが重要なのであると私は言いたい。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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バイデン政権の起案に基づいて、北半球での次のインフルエンザの季節が始まる202211月に照準を合わせて、世界保健機関(WHO)は、何らかの奇跡が起こらない限り、地球全体で各国の健康行政とその措置について前例のない上意下達の支配体系を確立することであろう。これは密かに仕組まれたクーデターに相当する。WHO194の国連加盟国の国家主権を踏みにじり、各国の保健行政に関して国際法という強力な立場から、つまり、上からあれこれと指示する厳しい権限を新たに持つことになる。これは時には「WHOパンデミック条約」と呼ばれるであろうが、それ以上のことを意味するものだ。さらに悪いことには、WHOの予算の大部分はゲイツ財団のような民間のワクチン関連財団や利益相反となる大手製薬会社から来ている。

過酷とも言えるWHOの新たな権限:

秘密裏に何かを行おうとすることはそれが広く知られ、おそらくは、反対される事態を防ぐためのものであって、秘密主義または隠された方法でそれを実施することを意味する。このような状況は、WHOの公式文書によると、バイデン政権が2022118日にジュネーブのWHOに提出した提案にも適用可能である。WHOの関連機関が急進的な措置を承認するための会合を持つわずか1ヶ月前の412日までのほぼ3ヶ月間、WHOは米国の「修正案」の詳細をひた隠しにして来た。しかも、国際法として条約を採択するのに18ヶ月間もの待ち時間が必要であったことを踏まえるのではなく、今回は6ヶ月だけだ。これは強制的な締め出しを喰らったようなものである。米国の提案はEU加盟国のすべてを含む合計47カ国によって支持されており、ほぼ確実に承認されるであろう。

この提案は「緊急な保健衛生の事態に対するWHOの準備と対応の強化:国際保健規則の改正の提案」と正式に題されて、以前に批准された2005年のWHO国際保健規則条約の「修正」として、米保健福祉省のロイス・ペイス国際問題 (OGA)担当次官補によって提出された。WHO2005年の条約を次のように定義している:「国際保健規則(IHR)は国境を越えた可能性がある公衆衛生上の出来事や緊急事態に対処する際の各国の権利と義務を定義する包括的な法的枠組みを提供している。IHR194WHO加盟国を含む196カ国に対して法的拘束力を持った国際法の文書である(強調を追加)。

ペイス氏はファイザーやリリー、メルク、J&J、アボット等の大手製薬会社やビル・ゲイツが資金提供するAVACといった最も腐敗した団体で構成された「グローバルヘルス評議会」を率いていたが、バイデン政権にやって来た。WHOの「パンデミック」や感染の流行に対する権力についての根本的な変革を提案する彼女の提案書はゲイツや大手製薬会社によっていとも簡単に作成された可能性がある。

ロイス・ペイスの「修正案」はWHOがあらゆる国の政府の判断を覆し、前例のない力を持った「グローバルヘルス独裁政権」に変貌するためにいったい何をするのかについて検討をする前に、ひとつの隠された法的な問題に注目してみよう。2005年のWHO条約の権限を完全に変更することをあたかも過去に批准された条約に単に「修正」を加えるだけだと偽装することによって、WHOは、バイデン政権とともに、修正案の承認には加盟国政府が新たに批准の議論を行う必要はないとも主張している。まさにこれはステルス行為である。選挙で選ばれた代表者による国民的議論もなしに、選挙で選ばれてはいないWHOが、将来、生と死を支配するような世界規模の権威筋となることであろう。この提案を推し進めるために、ワシントン政府とWHOは国民参加の民主的プロセスを意図的に制限しようとしている。

既成事実としての新法:

必要にせばまれて、WHOはついに米国の「修正案」を公開した。これは削除と新たな追加とを示している。バイデン政権が変更する目標はパンデミックに対する対応だけでなく、国家の「保健衛生」に関連するすべての事柄についてWHOが以前から持っていた各国政府に対する諮問機関的な役割を変更して、まったく新しい強力な権限をWHOに与えることによって各国の保健衛生当局よりも優位に立たせることにある。WHO事務局長(現在はテドロス・アドハノム)が決定した場合、WHOは各国の保健当局の決定を上書きする全く新しい権限を持つことになる。米バイデン政権とWHOは共謀して、すべての保健衛生上の決定を各国または地方レベルから剥奪して、スイスのジュネーブでの決定、WHOによる決定へ移行するという全く新しい内容の条約を書き上げたのである。

既存のWHO条約に対するワシントン政府による修正の典型例は第9条だ。米国の変更はWHOは「・・・しなければならない」を挿入し、「・・・かもしれない」を削除することにある。つまり、「締約国が48時間以内に協力の申し出を受け入れない場合、WHOは・・・しなければならない」となる。削除が予定されている条文は「締約国の見解を考慮に入れて、WHOの協力の申し出は・・・」となっている。ドイツやインド、あるいは、米国の保健当局による見解や判断は無関係になる。こうして、WHOは各国の専門家の判断を覆し、将来のあらゆるパンデミック、さらには伝染病、さらには地域の健康問題に関する命令書を国際法として指示することが可能となる。

さらには、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態、地域的な公衆衛生上の緊急事態、または中間的な健康警報の決定」に関しては新たに提案された第12条では、WHOの議長(現在は5年の任期にあるテドロス)だけが、加盟国の合意がなくても、緊急事態の宣言を決定することができる。その後で、WHO事務局長はポリオ、エボラ出血熱、鳥インフルエンザ、新型コロナ、または、WHOが問題であると宣言した事柄についてWHOの担当「緊急委員会」に諮問する。要するに、これは世界で最も腐敗している保健機関のひとつによって行われる市民の健康に対する世界的独裁なのだ。個々のWHO緊急委員会のメンバーは不透明な手順で選ばれる。現在のポリオに関する委員会と同様に、通常、多くのメンバーはGAVICEPIといったゲイツ財団のさまざまな前衛部隊によって縛られている。選考のプロセスは完全に不透明で、WHO内で行われる。

その他の権限について言えば、「新パンデミック条約」はテドロスとWHOに世界中でワクチンパスポートや新型コロナワクチンの接種を義務付ける権限を与える。彼らはワクチンパスポートやデジタルIDについて世界規模のプログラムを作成することに取り組んでいる。「新パンデミック条約」の下では、人々がWHOの保健政策によって何らかの害を被った時、WHOには説明責任がない。しかし、WHOは外交特権がある。

WHOの上級職員で内部告発者でもあったアストリッド・シュタッケルバーガー氏は現在ジュネーブ大学医学部グローバルヘルス研究所の科学者であるが、彼は次のように指摘している。「新パンデミック条約が加盟国によって採択された場合、「採択は自然災害やパンデミックの際にはWHOの憲法(第9条に従って)が各国の憲法よりも優先されることを意味する。言い換えれば、WHOは加盟国に指示をするけれども、もはや勧告はしない。」

WHOは何者なのか?

WHOの事務局長は新しい規則の下で、例えば、ブラジル、ドイツ、または、米国が上海スタイルのパンデミックによる都市閉鎖、または、当事国が決定したその他の措置を課す必要があるかどうかを決定する究極の権限を持つことになる。これはけっしていいことではない。特に、エチオピアのティグレ地方出身のWHOのトップであるテドロスが (当時のワシントン政府によって)指定されたテロリスト集団であるマルクス主義組織「ティグレ人民解放戦線」の政治局の元メンバーである場合、そう言える。彼は医学の学位を持っておらず、WHOの歴史上では初めての学位のない事務局長である。彼はコミュニティヘルスの博士号を持ってはいるが、これは間違いなく曖昧な分野であり、世界的な保健衛生の皇帝を務める医学的資格はほとんどない。彼の出版された科学論文の中には「ティグレ地方におけるマラリア伝播に対するダムの影響」といった表題が見受けられる。伝えられるところによると、彼は2017年にWHOへの最大の民間出資者であるビル・ゲイツからの支援を受けて、WHOの仕事を得た。

ティグレが率いる独裁政権のエチオピア保健大臣として、テドロスは2006年、2009年、2011年にエチオピアで起きた3大コレラの大流行に関して破廉恥とも言える隠蔽に関与した。災害医学・公衆衛生学会が発表した調査報告書によると、ある大規模なコレラの流行中に急性水様性下痢(AWD)の原因として研究室でコレラ菌が同定されたにもかかわらず、エチオピア政府(テドロス)は貿易禁輸や観光の減少に起因する経済的影響を恐れて、「コレラの発生」を宣言しないことにした。さらには、政府は国際保健規則(WHO)を無視して、コレラの流行を宣言することを絶えず拒否し、国際的な援助のほとんどを拒んだ。

エチオピアの保健大臣、後には、外務大臣を務めたテドロスは国内のライバル部族、特にアムハラ人に対する組織的な民族浄化を行ったとして、また、野党支持者の世界銀行やその他の食糧援助、縁故主義、病院建設のための国際資金を少数政党の政治的支援に転用したとして非難された。皮肉なことには、これらはテドロスが今日支持している新WHO法とは正反対だ。2021922日、メルケルが率いるドイツ政府はテドロスについての反対はせず、彼の続投を提案した。

WHO、ゲーツ、GERM

新規則の下ではいったい何が待ち受けているのかに関するヒントは、WHOの最大の寄付者(彼のGAVIを含む)であり、「グローバリストであって、何についてでも皇帝」を自負するビル・ゲイツによって与えられた。422日のブログ記事で、ゲイツは頭字語のGERMGlobal Epidemic Response and Mobilization)チームで面白いことを提案している。それは「給与の全額が支払われ、危険な流行に対して協調的な対応をいつでも開始する準備が整っている専門家で構成された恒久的な組織」を抱えることを提案した。彼のモデルはハリウッド映画の「アウトブレイク」だという。「チームの疾病監視専門家は潜在的な流行の発生を探す。一旦ひとつの発生が見つかると、GERMは流行の発生を宣言する能力を持つべきだ。」もちろん、それはテドロスが率いるWHOによって調整されることになる。「この仕事は世界的な信頼性を与えることができる唯一のグループであるWHOによって調整されることになろう。」

いったい何が起こるのかというディストピア的な概念は進行中の偽の「鳥インフルエンザ」流行を引き起こしたH5N1であり、たった1羽のひよこであってさえもこの病気について陽性であると判定された場合、世界中で数千万羽の鶏が絶滅させられる。この検査に使われるのは新型コロナ禍でウィルス検出に使用されたのと同じ不正極まりないPCR検査である。トランプ政権下でCDCのトップであったロバート・レッドフィールド博士は最近のインタビューで、鳥インフルエンザウィルスが人間に飛び移り、COVID-19は単なるウォームミングアップであったとさえ思えるような「大流行」が発生し、極めて致命的になるだろうと「予測」している。レッドフィールドは20223月のインタビューで「私たちははっきりと認識しなければならないと思う。私はいつも新型コロナの流行はわれわれに対する警鐘であると思うと言って来た。私はそれが大流行になるとは思わない。私は大流行はまだ先のことであって、それは人間にとっては鳥インフルエンザの大流行の場合であると信じている。死亡率は10~50%とかなり高いだろう。これは大問題になるだろう。新WHOによる独裁的権限の下でWHOは、反論の証拠があってもなくても、そのような詐欺についてさえも健康上の緊急事態を宣言することが可能となろう。

著者のプロフィール: F・ウィリアム・エングダールは戦略的リスクのコンサルタント兼講師である。プリンストン大学で政治学の学位を取得し、石油と地政学に関するベストセラー作家。オンラインマガジン「New Eastern Outlook」で独占的な執筆を行っている。

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これで全文の仮訳が終了した。

過去2年半にわたって世界を席巻して来た新型コロナ禍では米国を中心とする大手のワクチン製造企業は、結果として、売り上げを大きく伸ばし、莫大な利益を挙げた。そういった企業活動を支えたのは世界を相手にするシステムであった。新型コロナウィルスの感染を検出するPCR検査の使用を指定し、90%~95%にも達する擬陽性者を含めて、陽性者を感染者とみなし、一般市民に恐怖心を植え付け、ワクチンの副作用や安全性について批判的な意見を述べる研究者を中傷し、議論の場からつまみ出して反論する者の口を封じた。ファクトチェックという情報操作手法を悪用し、都市閉鎖を実施するという世界規模のシステムであった。WHOはこれに直接的に、あるいは、間接的に関与した。

こうして、このシステムによって支えられ、ある特定の目標を抱く集団からの意見や指示だけが全世界に急速に、かつ、強制的に広められた。ただ、過去2年半におよぶ新型コロナ禍におては、WHOは対処の方法については各国政府に推奨するだけで、強制力はなかった。それが現行のWHOに与えられている役割である。だから、日本政府は日本国内での対処の仕方は、欧米各国とは違って、独自の手法を採ることができた。スウェーデンも他のヨーロッパ諸国とは異なる対処法を採用した。

しかしながら、多くの国々では専制主義的な措置が採用された。驚いたことに、この専制主義的な措置の内容は時間の経過とともにますますエスカレート進化していった。あたかも、各国政府間における競争であるかのように見えた。その典型例は都市閉鎖の実施であり、「ワクチンパスポート」や「デジタルID」の導入であった。国によっては、違反者には罰金が課せられた。私が住んでいるルーマニアにおいても、夜間に外出する際には理由書を携行してはいない場合、当事者には罰金が課せられた。ワクチンパスポートという新システムには何らかの大きな目標が背景に隠されていたに違いない。しかしながら、新型コロナウィルスの致死率が急速に低下したことにともなって、ワクチンパスポートの意義は急速に薄れ、短期間の内に棄却されることとなった。

新型コロナ禍におけるさまざまな失敗から多くを学んだ「ビル・ゲーツや大手製薬企業、WHOの集団」は将来の「新型コロナV.2においてはこのシステムをもっと手際よく準備し、彼らの目標をもっと巧妙に隠ぺいすることであろう。それこそがこの引用記事で指摘されているWHOの改革にあるのだ。

金儲けを目論む連中にとっては「夢よもう一度!」であろうし、このシステムを将来他のプロジェクトのためにも効果的に活用するべく完璧なシステム作りを目指すエリート集団にとっては将来の新型コロナV.2は絶好のチャンスであると考えたとしても決して不思議ではないだろう。

上記に述べたようなディストピア的な考えがすべて杞憂に終わってくれればそれ程嬉しいことはないのであるが、現実はどう展開するのだろうか?

 

参照:

注1:WHO Stealth Coup to Dictate Global Health Agenda of Gates, Big Pharma: By F. William Engdahl, NEO, May/18/2022, journal-neo.org›…coup…dictate-global…gates…pharma/