2021年5月26日水曜日

ビル・ゲーツとペンタゴンはなぜフロリダで遺伝子込み替えをした蚊を放出するのか?

蚊が媒介する感染症としてデング熱やジカ熱感染症がある。

デング熱は主に熱帯や亜熱帯地域で多発する感染症であって、日本にもっとも近い流行地は台湾だという。発熱、頭痛、筋肉痛が伴う。ところが、2014年に日本国内でもデング熱の感染例が報告された。20141031日に国立感染症研究所が報告した「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ」を見ると、160例が報告されている。それらの大部分は代々木公園へ行ったとか、明治神宮外苑、新宿中央公園、その他の公園へ行ったと、患者らは報告している。中には感染地を推定できなかった事例もいくつかある。

一方、ジカ熱感染症は中南米を中心に報告されている。ブラジルでは集団感染が起こり、2016年のリオデジャネイロでのオリンピックの開催に懸念が持たれたが、結果としてオリンピックを通じて感染したという報告はなかったようだ。症状は比較的軽く、発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛が現れる。しかしながら、妊娠中の女性が感染すると、胎児に影響が現れて小頭症という先天性障害をもたらす恐れがある。このブラジルにおけるジカ熱感染症の集団感染は20148月から症例が認められて、2016年には205千人強の症例があった。しかし、2017年には13千人と急減した。ウィルスに対する集団免疫が確立され、ようやく収束したと言われている。WHO201611月に収束を宣言した。

これらの感染症を媒介する蚊はヒトスジシマカとネッタイシマカの二種類。ヒトスジシマカは一般にやぶ蚊とも呼ばれ、日本では本州(青森を除く)以南に生息しており、その出現期は5月から11月。ネッタイシマカは日本では以前は沖縄県や小笠原諸島で生息していたが、近年は採集報告はないという。ただし、蚊は航空機を介して日本国内へも移動し、温度環境が比較的整っている地域や場所で発見された事例が報告されている。2012年に成田国際空港で幼虫および蛹が発見された。2017年、2018年には中部国際空港で採集されたネッタイシマカからは強い殺虫剤抵抗性を示す遺伝子が検出されており、今後殺虫剤による駆除が容易ではなくなる可能性が示唆されている。ここに「ビル・ゲーツとペンタゴンはなぜフロリダで遺伝子込み替えをした蚊を放出するのか?」と題された記事がある(注1)。遺伝子組み換えをした蚊を特定の地域に放出して、病原体を運搬する蚊を撲滅するというアイディアについては前々から聞いている人は多いのではないかと思う。つまり、ブラジルでの失敗をよそに、フロリダを舞台にしてまたしても具体的なプロジェクトが出て来たということだ。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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住民からの強い抵抗があるにもかかわらず、米環境庁とフロリダ州当局はフロリダキーズ地区に遺伝子組み換えを行ったキラー・モスキートを何百万匹も放出するという計画を承認した。本計画については議論が沸き起こっている。と同時に、バイデン大統領が科学担当の大統領補佐官として指名した人物は蚊から始まってファイザーやモデルナの新型コロナ用mRNA「ワクチン」に至るまでの遺伝子組み換え、さらには、遺伝子組み換えの鮭にも使用されるゲノム編集技術(CRISPR)の開発にも関わって来た。ビル・ゲイツ、ペンタゴンおよび優生学を標榜する連中がどうして寄り集まっているのかは、率直に言って、警戒すべき事態である。

430日、フロリダキーズのモスキート・コントロール・ディストリクトとバイオテクノロジー企業のオクシテックは75千万匹遺伝子組み換えをした放出を開始すると発表した。蚊の種類はネッタイシマカであって、遺伝子編集技術を使って遺伝子組み換えが行われている。ネッタイシマカはフロリダキーズでは蚊の総個体数のほんの4%を占めるだけである。この放出計画は昨年の選挙の際に住民投票を要求した環境グループからの激しい反対に遭遇したが、不思議なことには、モスキート・コントロール・ディストリクトは住民投票を拒否した。オクシテックとディストリクトの理事会はこの放出によってデング熱やジカ熱その他の感染症を媒介するネッタイシマカを撲滅すると主張している。

プロジェクトはプレスリリースでは肯定的こえるがいくつかの理由から警戒すべきだ。第一に、この議論が多い遺伝子組み換えの蚊の放出に関する住民投票が拒否されたこと。第二には、放出後の遺伝的形質は多くの場合予測できない形で突然変異を起こし、このような蚊を何百万匹も放出することに関するリスクや恩典については費用対効果解析が行われてはいない点だ。このプロジェクトを通じて今までにはいなかったような強力な蚊が突然変異によって現れるかも知れない。このようなリスクを冒す価値はあるのか?誰も答えることはできない。伝統的な手法による蚊のコントロールテクニックは今までうまく行われてきたではないか。

オクシテックCEOであるグレイ・フランドセンは米政府とのわりからバルカン半島では暗い過去を持っている。彼は米海軍の顧問として、ならびに、ジョージ・ソロス傘下のインターナショナル・クライシス・グループの特別研究員として1990年代に行われたユーゴスラビアの破壊では重要な役割を演じたのである。バイオテクノロジーに関してはそれ以前には何の経験も持ち合わせてはいないにもかかわらず、フランドセンは2017年にオクシテックの最高経営責任者となった。英国の企業であったオクシテック社は、現在、ランドール・J・クラークによって率いられているバージニア州ラドフォード市に所在する米ベンチャーキャピタル企業であるサード・セキュリティー社の所有である。また、クラークは遺伝子組み換えをした鮭を生産する企業であるアクアバウンティー社を所有してもいる。

ブラジルでの大失敗

オクシテックはブラジルのバイーア州で遺伝子組み換えのネッタイシマカを放出するもうひとつのプロジェクトを推進した。その地域でジカ熱感染症やマラリア、その他の感染症を媒介する蚊と交尾をするかどうかを観察するための試験的放出を行ったのだが、ネイチャー・リポート誌に発表された研究報告によると、ターゲットとなった蚊の種類の個体数は当初減少したものの、かなり減少していた総個体数は何か月か後には放出前の水準近くにまで戻ってしまった。エール大学からの研究者チームとブラジルのいくつかの研究所とが実験の進捗状況について追跡をした。彼らの知見によると、ターゲットとした群の個体数は当初目立って減少していたが、約18か月後には放出以前の個体数レベルに戻ってしまったのである。論文の指摘によると、そればかりではなく、一部の蚊は「ハイブリッドな活力」を持っているようであった。つまり、自然のままの蚊と遺伝子組み換えの蚊との交配によって「放出前の個体群よりも強力な」個体群を新たに現出させたのである。これらの蚊は殺虫剤に対してより強い耐性を獲得しており、一言で言えば殺虫剤に耐性を持った「スーパー・モスキート」である。ブラジルでのオクシテックによる調査結果は「これらが感染症の広がりやこれらの危険な媒介生物に対するコントロール策に今後どのような影響を与えるのかは不明だ」と結論した。

端的に言って、遺伝子の突然変異は予測不能だ。2020年のもうひとつの科学的研究によると、「不妊症」の雄は雌に先祖帰りをして、抵抗力があるGMO個体群を形成し、環境中に生き残るのである。この研究は中国、ドイツおよび米農務省の研究者らによって発表された。研究所のハエに突然変異がごく自然に起こり、意図された形質に対する抵抗性をもたらすことを示した。換言すると、「スーパー・フライ」または「スーパー・モスキート」の出現である。

さらに言えば、フロリダキーズにおけるデング熱やジカ熱感染症は必ずしも由々しい問題だというわけではない。CDCからの公式報告によると、2020年のジカ熱の患者は地域住民の間では全米で一件もなく、外国からの旅行者の間で4例が報告されただけだ。症状がインフルエンザと似通って軽微で、致死性を示すことが稀なデング熱に関しては、2020年にフロリダキーズにおいて26件あった。今回の流行は過去10年間で初めてのものであった。不思議なことには、2010年にデング熱の小さな流行が起こったが、オクシテックはフロリダで遺伝子組み換えを行った蚊を放出するとの議論をしていた。また、2020年の新しい流行は、不可思議なことではあったが、フロリダで遺伝子組み換えをした蚊の放出を何とか推進しようとしているオクシテックにとっては好都合な出来事であった。この放出計画は2020年に承認された。

オクシテック、ゲーツおよびDARPA

フロリダでの遺伝子組み換えをした蚊の放出について疑念を抱かせるのはオクシテック社のプロジェクトが極めて多くの議論を呼ぶふたつの組織と関わっていることだ。つまり、メリンダ&ビル・ゲーツ財団とペンタゴンの下部機関である国防高等研究計画局(DARPA)からの支援を受けている点である。ゲーツ夫妻はゲノム編集によって開発されたファイザーとモデルナの新型コロナ用「ワクチン」を資金面で支援しており、大口の支援者であるばかりではなく、WHOに対する個人の資金提供者としては最大級の募金額を誇っている。ふたりは10年以上も前からゲノム編集に資金を提供して来た。ゲーツはゲノム編集技術が悪意のある使用に供される可能性があることは十分に承知している。生物兵器への応用が可能なのである。2016年にゲーツは次のように述べている。「次の大流行はテロリストがコンピュータ上で天然痘ウィルスの合成のためにゲノム編集を試みることから始まることであろう」と。20177月、インテル・ヘルス&ライフ・サイエンスのジョン・ソトスは「ゲノム編集の研究は想像を絶するような破壊力を秘めた生物兵器の可能性に扉を開くことになろう」と言った。

2016年、国連では生物多様性条約(CBD)によって安全性が確保されるまではゲノム編集を一時禁止する動きが広がっていたが、ゲーツ財団広告代理店のエマージング・アグ160万ドルを提供してこの動きを阻止した。ETCグループによって取得された電子メールによると、エマージング・アグ社はゲーツ財団の上級職員やDARPAの職員、DARPAから研究資金を受け取った学者、等を含めて65人以上もの専門家たちを動員したのである。彼らは見事に成功した。

昆虫兵器?

DARPAは蚊のゲノム編集に関してはすでに数年にもわたって関与して来た。「昆虫同盟」プログラムを介して、DARPAはゲノム編集(CRISPR)や遺伝子ドライブ技術を用いてネッタイシマカの遺伝子組み換えを行ってきたのである。米国防省は「遺伝子ドライブ」と称して知られ、異論が多いこの技術には少なくとも1億ドルを費やしており、遺伝子組み換え技術に対する資金提供では世界で一位の座を占め、トップクラスの開発組織である。「遺伝子ドライブは強力で危険な新技術であり、それによって開発される潜在的な生物兵器は、特にそれが誤用された場合、平和や食料安保、環境に対して甚大な影響を与える」と、環境安全グループであるETCグループの共同ディレクターを務めるジム・トーマスが警告している。「遺伝子ドライブの開発は今や主として米国の軍部によって資金が提供されているという事実はこの分野全体に関して疑問を抱かせるのに十分だ。」

昆虫兵器は生物兵器の一種であり、感染症を伝播させるのに昆虫を用いる。DARPAによる研究を駆使して、ペンタゴンはジョージアとロシア [訳注:「ロシア」は「ウクライナ」の間違いではないかと思われます] で秘密裏に昆虫戦争の試験を行ったと言われている。ゲーツ財団やオクシテックと共にDARPAが行っている遺伝子組み換えの蚊の開発は昆虫兵器のための秘密プログラムなのではないか。

ペンタゴンは現在世界中25国においてもっとも厳しい警護体制を施したバイオ研究所を運営しており、21億ドルの軍事プログラム、つまり、共同生物学的関与プログラム(CBEP)の下で国防脅威削減局(DTRA)から資金を提供している。これらのバイオ研究所はジョージアやウクライナといった前ソ連邦の国々、中東、東南アジア、アフリカといった地域に散らばっている。これらの研究所での数々の研究プロジェクトが推進されている中、サンシチョウ亜科に属するサンシチョウバエは「急性発熱性疾患に関する調査」という名の下で収集が行われ、全ての雌のサンシチョウバエに対して感染力についての試験が実施された。三番目のプロジェクトではサンシチョウバエの収集を行い、唾液腺の特性について研究を行った。これは兵器化のための研究である。[訳注:サンシチョウ亜科に属するハエは世界中で500種もあると言われ、感染症の媒介者としては30種ほどが知られている]

バイデン政権によって閣僚レベルの科学顧問として指名されたエリック・ランダーは異論人物であるがMIT・ハーバード・ブロード研究所から抜擢された。[訳注:MIT・ハーバード・ブロード研究所はハーバード大学とマサチューセッツ工科大学が共同で運営する研究施設。疾患の研究に重点を置いている] ランダーは遺伝子ドライブやゲノム編集技術の専門家であり、不完全に終わった「ヒト遺伝子に関する米国のプロジェクト」で重要な役割を担った。これはわれわれが支援をする必要があると感じるような種類の科学ではない。むしろ、明らかにこれはもっと大きな優生学に関する動きの一部である。ここでもビル・ゲイツは主要な役割を演じている。

著者のプロフィール:F・ウィリアム・エングラーは戦略的リスクに関するコンサルタントであり、講師役も務めている。彼はプリンストン大学から政治学における博士号を取得し、原油や地政学に関する書籍を著し、ベストセラー作家である。「 New Eastern Outlook」に特別寄稿をしている。

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これで全文の仮訳が終了した。

ウィルスの専門家たちは、ワクチンを製造する大手製薬企業を含めて、一種の運命共同体を形成している。新型コロナの大流行を介して、奇しくもその実態が目に見えて鮮明になって来たように感じられる。10年前に日本で観察された「原子力村」を髣髴とさせるような「ウィルス村」あるいは「ワクチン村」の出現である。

ウィルス学の専門家の多くは大手製薬企業やゲーツ財団、等から研究費を提供して貰って研究活動を維持している。彼らは人類の生命や健康について科学を追求する立場にあるだけではなく、研究費の確保にも追われているのが現状だ。フロリダキーズにおける遺伝子組み換えをした蚊が当初の研究課題を達成できそうにはない場合、その理由が科学的な観点からどこに欠陥があるのかに関してある学者が何らかの指摘をした場合、その学者はそのプロジェクトに研究資金を提供している組織や大企業からは煙ったい目で見られることがある。そうした事態が起こると、その学者は自分の将来の研究活動に災いを呼び込みかねないのである。最悪の場合、キャリアを失うことになる。こうして、お互いを庇い合う「ウィルス村」が出現する。こういった現状を都合よく活用しているのが行政当局とつるんでいる大企業や特定の政治目標を持ち、潤沢な資金に恵まれ学者らに資金提供を行っている財団である。

著者のF・ウィリアム・エングラーは、今、遺伝子組み換えをした蚊の放出に絡んでそのことに関して警鐘を鳴らそうとしている。特筆すべきはこういったプロジェクトの背景にはもっと大きなアジェンダが存在しており、それが見え隠れしていることだ。

今後目を離すことができない課題である。

参照:

1Why Are Gates and Pentagon Releasing GMO Mosquitoes in Florida Keyes? By F.William Engdahl, NEO, May/11/2021






2021年5月20日木曜日

米国の衰退 ー これは幻想か、それとも現実か

 

日本にとってはお隣の中国との関係を考える時、米国との関係を素通りすることはできない。

日本の米国との関係は今までは冷戦構造の中での米国の国際政治力とドル通貨の圧倒的な強さに基づいていた。冷戦の頃は日米同盟を強化することは日本経済にとっても理に適っていたのである。つまり、日本は日米同盟によって世界中を相手に貿易を行い、その恩恵を受けてたっぷりと利益をあげることができたのである。

しかし、昨今の国際経済は冷戦時代のそれとはまったく異なり、大きく変化した。直ぐお隣の中国の経済は拡大の一途を辿り、国際経済の中で大きなウェイトを占めるに至った。日本の外務省は中国との関係をウェブサイトで次のように記述している。「日本にとって中国は最大の貿易相手国であり,日系企業の海外拠点数で中国は第1位であるなど日中経済関係は一層緊密になっており,日中首脳間でも,双方の関心や方向性が一致している分野について経済・実務協力を一層進めることで一致している。

さらに、大手シンクタンクの日本総研が公開したアジア・マンスリー20213月号を覗いてみよう。「2021年の中国経済の行方」と題して次のような予測をしている。「活動制限の強化と帰省の自粛による景気へのマイナス影響を過度に懸念する必要はないと考えられる。個人消費は底堅く推移するとみられる。2021年通年では、前年の水準が低いため、その反動でやや上振れ、+8.1%成長になると見込まれる」と述べている。

こうした現実の中、もしも日本の一般大衆が米国の国内政治を反映して中国を敵視しようとする米国の中国包囲網政策に加担するとすれば、日本経済は世界でももっとも大きな市場をみすみす失うこととなり、日本はドカ貧に陥るのではないか。「日本経済が弱体化してもいいから中国との貿易は控えたい」と言うのか?率直に言って、そのような選択肢は日本にとっては自殺行為だ。日本が中国との通商を維持することは歴史的にも地理的にも極めて自然なことであり、当然の成り行きであろう。

ところが、45日の読売新聞の報道によると、424日の世論調査の結果、菅首相の訪米とバイデン大統領との首脳会談で日米関係が強化されることについて83%の世論が「望ましい」と考え、中国に対する圧力を強める米国に67%の世論が同調すべきであると言う。ただ、世論調査というものは一般大衆を導きたい方向に向けてデザインすることが可能であると言われている。この点を忘れてはならない。

歴史を振り返ってみると、日本は朝鮮特需を経て、日本経済は息を吹き返し、長い繁栄の道を歩み始めた。貿易立国として日本はアジア圏だけではなく、世界経済の中でさえも大きな地位を占めることになった。日米貿易摩擦の際には米国の有力な議員らが日本車をスレッジハンマーで殴り、車を破壊するパフォーマンスがニュース番組を飾った。東南アジア諸国では日本製品が津波のように市場を襲い、現地の地方経済にとっては脅威とさえなった。しかしながら、日本の工業製品の信頼性は世界の市場で次第に認められていった。こうして、メードインジャパンは高品質の代名詞となった。この事実については日本人は誇ってもいいと思う。

近年は観光立国政策によって日本は世界中から観光客を迎え入れるようになり、一種のブームとさえなっている。観光客の多くは東京や大阪、京都といった都市部だけではなく、地方にも足を伸ばしている。彼らは何の抵抗もなく日本を称賛している。「新幹線の乗り心地は最高だ」、「鉄道や公共交通機関は時刻表通りに出発し、目的地には時刻表通りに到着する」、「通りにはゴミがひとつも落ちてはいない」、「小さな小学生でも親の付き添いなしで通学している」、「誰もがとても親切だ」、「夜中でも女性が一人で買い物に行ける」、「落とし物をしても必ず戻ってくる」、「食べ物の種類が実に豊富で、最高に美味しい」、「人種差別はまったく感じられない」と彼らは称賛を惜しまない。

日本製品に対する評価やこうした言葉を聞くといささか面はゆい感じがしないわけでもないが、決して悪いことではないと思う。むしろ、このような評価は積極的に受け入れ、われわれは今後も国際的な評価を維持するためにさらなる努力をするべきだと思う。そうすることが日本経済を沈没させないためにも有効な策となる筈だ。

その一方で、海外からの観光客の目から見た日本と日本に長年住んでいる外国人が見る日本とは、率直に言って、大きく違うであろうという点も冷静に受けとめなければならない。

米国に関しては総じてポジティブな印象を持っていた私であるが、私の意識を一変させたのは911同時多発テロであった。米政府が主導する事故調査委員会が発行した報告書は真実を報告してはいないと感じたからである。エンジニアの端くれでもある私にとっては同報告書は政治的なものであって、誰か上の方から指示された筋書きを忖度したものであることは疑う余地もなかった。幸か不幸か、この出来事から始まって私の目に映るその後の米国、つまり、最近の20年間の米国の国際政治は負の印象を強くするばかりとなった。米国は大きく変わった。そして、今も変わり続けている。

ここに、「米国の衰退 ー これは幻想か、それとも現実か」と題された記事がある(注1)。冒頭に述べた日本の中国との関わりに大きく関連することから、少しでも多く米国のことを理解し、分析しておきたいと思う次第だ。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。何らかの理解のきっかけになってくれれば幸いである。

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(編集者からの注:寄稿者が述べている見解はあくまでも寄稿者自身のものであって、The Hillの見解ではありません。)

対外政策に関して欧州委員会が最近行った世論調査によると、NATO加盟国の世論の大半は今後の10年以内に中国は「政治的に崩壊した」米国よりも強力な国家になるだろうと思っていることが判明した。また、この世論調査の結果には大多数の人々が自分たちの国は米国と中国やロシアとの潜在的な抗争には中立であるべきだとするメッセージが含まれてもいる。

われわれの敵国も米国の衰退に関しては同様の結論に達しているという事実を疑おうとする連中はアンカレッジで行われたアントニー・ブリンケン米国務長官とその相手である中国政府のとの間で初めて行われた画期的な会合以外には何の情報をも探す必要はないと思う。ウオールストリートジャーナルの「バイデンに対する中国からの警告」と題された論説に詳述されているように、はブリンケンに長く、そして、厳しい口調の叱責を放ったのである。その中で彼は暴力や人種差別、人権の無視、ならびに、「武力行使や資金提供を梃子とした覇権を振りかざすことによって」他国を恒常的に脅かして来た米国の歴史を強く否定しようとする米メディアのよく知られている論調を引用したのである。

「中国式の民主主義」のいい点を褒めちぎって、楊はブリンケンに「米国内の数多くの人々は米国の民主主義には何らの自信も持ってはいない」ことを極めて正確に思い起こさせたのだ。

崩壊に関する最近の議論において、党員らは反射的にバイデン大統領やトランプ前大統領、ならびに、彼らの政策を指をさして非難するのだが、誰もがそういった議論は過去の20数年間にわたってずっと行われており、その結果米国政治の二極化を引き起こし、消耗させてしまったことを認識しなければならない。つまり、歴史家に耳を傾けて崩壊の現象について理解を深めることはいいことだ。歴史家は今日では「対話」と形容される口喧嘩よりも遥かにましで、深く掘り下げた、バランスのとれた洞察を与えてくれよう。

そのような歴史家の一人にナイオール・ファーガソンがいる。2012年に彼は数年間にもわたって良く売れることになる本を執筆した。その表題は「The Great Degeneration: How Institutions Decay and Economies Die」。現在はスタンフォード大学で歴史学の教授を務めているが、ファーガソンは以前はオックスフォードやハーヴァードで研究者の地位を築き上げて、「The Ascent of Money」、「High Financier」、「Civilization: The West and the Rest」ならびに「The Pity of War」を含め、一連の素晴らしい本を書いている。

ファーガソンの分析は一国の崩壊に関して通常指摘される特徴、すなわち、成長の鈍化や壊滅的な負債額、増大する不平等化、人口の老化、反社会的な振る舞い、等を超えて、彼の考えによれば米国における生活の仕方をうまく定義する四つの制度的な柱に焦点を当てようとしている。つまり、代議政府、自由市場、法の支配および市民社会である。彼は、地理的な、あるいは、気候的な利点からではなく、これらの制度こそが過去の5世紀にわたって西側の文明が歴史上比類のない興隆をし、他を圧倒することに成功したのだと説得力を持って主張する。そして、西側で起こっている加速度的な変質は西側の衰退を意味し、それは米国において視覚的にももっとも強く感知される。 

彼はわれわれの代議政府はわれわれの子孫に対して山のように借用証書を積み上げ、われわれの自由市場は大袈裟なほどに複雑な規制ならびに消耗性の高い経済や政治によってますます不自由となり、法の支配は弁護士による支配と化し、市民社会は個人の保護や自由は次第に政府によるコントロールに取って代わられている事などから、この状況は世代間の契約を破ったことになるとして説得力のある指摘をしている。

ファーガソンの本が執筆されてから10年程の間に彼が言及したネガティブな要因はますます悪化の一途を辿った。米国とEUの経済やそこで働く労働者たちの実収入が停滞する中、中国経済はなんと二桁もの成長率を継続的に叩き出して来たのである。

最終的な結果として、平均的な中国人の生活は最近の数十年間に劇的に改善され、そのことからも民主主義の経験を持ってはいない中国人が謝罪をする気なんて毛頭にもない専制的な中国政府がもたらした政策の失敗をしぶしぶ受け入れる気配を見せている。それだけではなく、ある証拠が示すところによれば、彼らはひとつの国民集団として国家主義的で愛国主義的なレンズを通して世界を観察し続けている。

これとは対照的に、平均的な米国の家庭にとっては目に見える程の改善はなく、それ故に米国人は彼らの政府や社会について観察される紛れもない欠陥を許容する姿勢はより少なくなる傾向にある。

衰退という言葉は相対的な表現ではあるが、優勢な計測の尺度によれば米国は衰退し、中国は隆盛していることが明らかである。最大の疑問点はこの衰退は終局的なものなのかどうかという点だ。あるいは、米国人は過去において難局に当たってそうして来たように機会を見て立ち上がり、現行の病を克服し、かってわれわれ市民が歴史上至る所で見せてきた精神や誇りを再び躍動させ、再生という国家的行為を生み出すことができるのかどうかである。

著者のプロフィール:ウィリアム・モロニーは博士号を有し、コロラドクリスチャン大学のセンテニアル・インスティテユートにて保守思想に関する特別研究員を務めている。オックスフォード大学とロンドン大学でも研究生活を送った。彼はコロラド州教育庁の前長官を務めた。

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これで全文の仮訳は終了した。

引用記事の著者は「ファーガソンの卓越したところは社会の崩壊に関して通常指摘される特徴、つまり、成長の鈍化、壊滅的な負債額、増大する不平等化、人口の老化や反社会的な振る舞い、等を超えて、米国における生活の仕方を定義する四つの制度的な柱に焦点を当てていることだ」と述べている。実に興味深い。

そして、その指摘が成されてからすでに10年が経過しているが、崩壊の傾向はさらに進展していると彼は付け加えている。

数多くの識者が米国社会の崩壊を論じているが、われわれ素人にとっても最近の数年間に米国社会で起こった出来事は不気味な感じがする。たとえば、トランプ前大統領に対する民主党による弾劾の動きや巨大なハイテック企業によるソーシャルネットワークからのトランプの締め出し、あるいは、デモ参加者に対する米議会への不法侵入というでっち上げは完全にやり過ぎであると思う。これらはどれもが帝国が病んでいる病気の末期的症状のひとつであると言えるのではないだろうか。

そして、もっとも重要な点は、歴史を紐解くと、帝国の崩壊は必ずやって来るという点だ。

上記のような考察を突き詰めていくと、日本の一般大衆が日米同盟を支持し、米国が推し進める中国封じ込め政策に同調することに同意していると報じた読売新聞の世論調査の結果は何の付帯条件もなしにそのまま受け入れることは出来そうにはないと私は言いたい。一般大衆は一部の集団によって世論の誘導をされているのにその事実には気が付いてはいないのではないか。

他にもさまざまな重要な議論が残されていると思う。できる限り広く、そして、深く分析を行い、バランスの取れた理解や対応策に漕ぎ着けたいと思う次第だ。率直に言って、我々の子供や孫の世代を考えると、今後中国との通商をどのように継続するのかは日本にとっては最たる政治課題である。この政治課題に対応するに当たって、米国の崩壊が幻想かそれとも空想かを見極めるためにわれわれは思考の停滞を何としてでも避けなければならない。

参照:

注1:American decline: Perception or reality?: By William Moloney, The Hill, Apr/05/2021






2021年5月14日金曜日

人類は何年かのうちに絶滅する?

 考古学の専門家に言わせると、人類の祖先は数百万年前にまで遡る。約1万年前に氷河期が終わると人類は農耕や牧畜を開始して、文明の時代に入った。約5000年前にエジプトで文明が起こった。他にもメソポタミア文明、インダス文明、黄河文明がこれに続いた。

そして、2021年の今、われわれの毎日の生活は大量生産システムによって供給される食料を消費し、文字を使った情報伝達によって海の向こうの人たちともコミュニケーションをしている。そして、そういった活動を可能にするには半導体技術を駆使したパソコンや高速度の通信技術が欠かせない。情報の伝達は広く地球を覆い、瞬時に行うことが可能となっている。また、農業生産だけではなく工業生産や医療技術が進歩して、人々の平均寿命は100年前に比べて大きく延びている。

国連の世界人口推計の2019年版によれば、現在の77億人から今後30年間に20億人も増加すると推測されている。そして、今世紀末頃には総人口が110億人となってピークに達し、それから減少に転ずると推測されている。人口について議論する場合の主要なテーマとしては国や地域による貧富の差、平均寿命、女性1人当たりの出生率、65歳以上の年齢層の急速な増大、人口が増加する国家と人口減少に悩む国家、移民の国際移動、等が挙げられる。


人口が増え続けていることに関しては今さまざまな議論が起こっている。ローマクラブが「成長の限界」を根拠に「人口爆発」について警鐘を鳴らしたのは半世紀も前の1972年のことであった。


ところで、ここに「人類は何年かのうちに絶滅する?」と題された記事がある(注1)。あまり議論をしたくはないような表題ではあるのだが、その内容は非常に重要なテーマである。


本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。


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 ビル・ゲイツや国連の「持続可能なアジェンダ2030」を推奨する連中は人類に優生学を適用しようとする熱心な推進者でもある。人間嫌いで知られている英国のプリンス・フィリップは、かって、「人間の群れを淘汰する」とさえ言った。環境問題の顧問としてローマ教皇にお仕えするヨアヒム・シュネルンフベルのような連中は「持続性のある」世界人口としては10億人以下が好ましいと大っぴらに喋っている。今や、極めて真剣な研究が出現し始めた。人口を減らすのにもっとも効果的な方法のひとつが、幸か不幸か、いわゆる「近代的な科学的農業」によって今世界中で広められているのではないか。いくつかの有毒な農業用化学品、たとえば、除草剤は使用しても安全であるとされてはいるものの、安全と言える代物ではない。

シャンナ・ショー博士の新著「カウントダウン」によると、EUや米国を含む西側の工業立国においては男性の精子数が今劇的に減少している。ショー博士は過去の40年間に精子数は平均で50%以上も減少したと推定している。換言すれば、家族を持とうとしている今日の若者は彼の祖父の世代に比べて半分のレベルの精子数しかなく、子供を持てるチャンスは半減している。農業や環境における有毒な化学品に対する暴露が劇的に変わることがない限り、ごく自然に子供をもうけるというわれわれの能力はそう長くは続かず、2050年頃には中国を含めた工業立国においては子供をもうけるのには医療的な支援を必要とするようになるだろう、とショー博士は推定している。

ショーの本は2017年に彼女と同僚らが共著者として著していた技術論文で専門家による査読を受けていた論文をさらに入念に掘り下げたものである。その論文では、ショーは1973年から2011年にかけて精子サンプルを提供した42,935人の男性に関する185個の研究論文から精子濃度と総精子数(TSC)に関する244例の推定値を取り上げ、それらを注意深く分析した。 彼女らが見出した内容は最高度の警告を発するに値するものであった。しかし、いくつかのメディアが見出しを飾ったものの、バイエル・モンサント、シンジェンタ、ダウ・デュポン(今はコーテヴァ)、等は規制当局に対してロビー活動を行い、当局は結果としてこれらの研究成果を無視した。 

ショーは「西側諸国からランダムに報告された研究結果から見ると、平均精子濃度は低下し、年ごとに平均で1.4%づつ低下し、1973年から2011年までの期間全体で52.4%の低下となる」ことを見出した。「TSCに関してはこの男性グループでは毎年平均で1.6%低下し、この期間全体では59.3%の低下が起こった。」つまり、約10年前の時点で、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの男性の精子数は、不妊症の有無を考慮に入れずに見ると、59%以上も低下したのである。そして、この趨勢は今も年々続いている。

本件に関しては新たな研究に対する真剣な支援が欠如していることから、その後の新たなデータの発表は限定的である。15年前、中国の湖南省では潜在的な精子提供者の半数以上は品質基準を満たしていた。しかし、今はたったの18%が満たすだけであって、ひとつの研究報告によるとこの低下は内分泌かく乱物質のせいである。同様の精子数の減少は台湾でも報告されている。そして、イスラエルでも同様の結果が報告されている。ショーは「男性の生殖上の健康度は精子の品質だけで決まるものではないが、極めて重要なことであり、これは早晩何らかの影響をもたらすであろう」と言う。「子供をもうけることができるかどうかだけではなく、この問題は人類全体の健康に大きく影響する」と結論付けている。彼女は、たとえば、「低精子数、不妊症、精巣癌、ならびに、そまざまな一般的欠陥を指摘している。それらの欠陥のひとつは降下しきらない精巣であり、もうひとつは尿道の開口部が本来あるべき場所にはないといった事例である。」

内分泌かく乱物質:

スワン [訳注:これは「ショー」の間違いだと思われる] は今はニューヨークのマウントサイナイ・アイカーン医科大学にいるが、この原因は最近数十年間に急速に増加した毒性化学物質、最近特に増えている「内分泌かく乱物質」別称ホルモンかく乱物質への暴露によるものであると彼女は考えている。彼女が指摘するのは「プラスチックの軟化剤であるフタル酸、プラスチックの硬化剤であるビスフェノールA、あるいは、テフロンに含まれる難燃剤、等、さらには、除草剤・・・。」[訳注:pesticideは、通常、殺虫剤と訳すが、米国では一部の人たちは除草剤もpesticideと呼ぶことが少なくない。あるいは、混用することがある。この引用記事の著者も除草剤をpesticideと記述している。この訳文では除草剤と訳すことにする]

上記で最後に言及された除草剤は地下水脈へ混入し、人が消費する食品連鎖に入り込むことからも、大きな警鐘を鳴らして然るべきである。今日世界でもっとも広く使用されている除草剤はバイエル・モンサント社製の恐らくは発がん性があるとされるグリホサートを主成分としたラウンドアップであり、シンジェンタ社(今のオーナーはChemChina)製のアザトリン [訳注:これは「アトラジン」の間違いだと思われる] である。

アトラジンの影響:

2010年、著名なカリフォルニア大学バークレイ校の科学者であり統合生物学の教授でもあるタイロン・B・ヘイスはカエルのアトラジンへの暴露に関してその影響を調査した。彼は米国ではトウモロコシやサトウキビの栽培に広く使用されているこの除草剤は雄のカエルのセックスライフに大きな影響を及ぼすことを見出した。3分の2を去勢せしめ、10個体中1個体の割合で雄を雌に変えてしまうのである。「これらの雄のカエルはテストステロンが欠如しており、精子も含めて、テストステロンが制御するものはすべてが欠如している」ことを彼は発見した。さらに、「カエルの10%が雄から雌に変わり、雄のカエルと交尾することが自然環境の中で両生類に起こるなんて誰にも知られてはいない現象である」と指摘している。「そもそも、これらの雌は遺伝的には雄であって、これらの雌の子孫はすべてが雄となる。」ヘイスは「証拠の優越性はアトラジンが野生生物や人間に対してリスクとなることを示していると考える」と宣言した。

アトラジンは強力な内分泌かく乱物質である。また、アトラジンは米国ではモンサントのグリホサート製品であるラウンドアップに次いで二番目に広く用いられている除草剤である。証拠があるにもかかわらず、異論が多い中での決定として、米環境庁は2007年に「アトラジンは両生類の性的発達には悪影響を与えず、追加的な試験を実施する必要性はない」との裁定を下した。これで話は終わりか?これで終わったわけではない。2004年、EU当局はシンジェンタ社は同社の製品の安全性を証明することを怠ったと述べて、アトラジンを禁止した。

内分泌かく乱物質であることが確認されているもうひとつの農薬はモンサントのグリホサートを主成分とするラウンドアップである。ラウンドアップは世界でもっとも広く用いられている除草剤であって、ロシアや中国も含めて140か国以上で使用されている。米国における遺伝子組み換え(GMO)作物での使用は、米国産トウモロコシの90%以上がGMOであり、大豆でも同程度のレベルにあることから、人への暴露は近年爆発的に増加した。モンサントのGMOトウモロコシとGMO大豆が米国で認可された1996年から2017年までの間、米国人に対する化学品の暴露はなんと500%も増大した。内分泌かく乱物質は飲料水や店頭に並ぶシリアル類ならびに妊婦の尿中にもその存在が確認されている。ほとんどすべての肉類や鶏肉は家畜用飼料に含まれるグリホサートによって飽和されている。

フリンダース大学の研究者らが最近行ったオーストラリアでの研究によると、ラウンドアップは女性の体内でプロジェステロンを生産する細胞を死滅させ、プロジェステロンのレベルの低下を引き起こすことが判明した。グリホサートとラウンドアップは「先天異常や生殖上の問題ならびに肝臓病と関係し、人の臍の緒や胎盤および胎児の細胞のDNAを損傷する可能性を持っていることが分かった。」

2015年、ナイジェリアの科学者らはグリホサートとアトラジンの両者のラットに対する同時暴露の影響を調査した。この組み合わせは精子やテストステロンの合成、雄の生殖器にさらに悪い影響を与えることが判明した。

2016年、中国の国営化学品企業である「ケムチャイナ」は430億ドルの巨額を払ってシンジェンタを買収した。と同時に、ケムチャイナは中国ならびに他のアジア諸国におけるモンサント製のラウンドアップの販売権を取得した。ケムチャイナのウェブサイトには同社が販売する他の除草剤と並んでアトラジンを「トウモロコシ畑に使える安全で効果的な除草剤」であるとして掲載している。また、ケムチャイナは中国の農業市場のためにグリホサートを生産する主要企業でもある。

今日中国は同国が自ら認めているように深刻な農業危機に直面しており、食料の安全保障を確保するために様々な方法を駆使している。報告によると、中国の特許を持ったGMO作物が果たす役目、ならびに、増大する一途にある役目は新5か年計画でその中核を成すことであろう。これは、疑いもなく、グリホサートやアトラジンを使用することだ。と同時に、中国政府は「一人っ子政策」を緩和したにもかかわらず減少し続けている出生率に関しては今まで以上に警戒している。中国の農家は収穫率を上げるために大量のグリホサートやアトラジンを使っている。彼らは悲惨な結果を追及していることになる。つまり、必ずしも食糧危機を解決することにはならず、89千万人にも及ぶ農村人口の大部分から、さらには、無数の都市住民から子供をもうける可能性を奪ってしまうのである。

官僚たちがグリホサートやアトラジンならびに他の内分泌かく乱物質が人間の生殖機能に及ぼす危険についてはまったく無知であることから、これらの危険極まりない内分泌かく乱物質は世界中でその使用を許可されたのであろうか?こういった化学物質が存在するのは企業が膨大な利益を追求する金儲け主義のせいなのであろうか?ニクソン・フォード時代の優生学の文書「NSSM-200」の著者であるヘンリー・キシンジャーの1975年の言葉を引用すると分かり易い。つまり、こうだ。「人口の低減は第三世界に対する外交政策においては最優先事項である。何故ならば、米国の経済は海外からの大量の鉱物資源を必要としており、特に低開発国からの資源が必要である。」そして、ビル・ゲーツの言葉を引用すると、「世界人口は68億人・・・そして90億人になろうとしている。もしもワクチンや健康管理、生殖機能に関するサービスで立派な仕事をしさえすれば、世界人口を1015%程低減することは可能であろう。」あるいは、優生学の曽祖父的存在であるプリンス・フィリップの言葉を借りると、「私は特に致死性の高いウィルスとして生まれ変わりたいという願いを持っており、このことを告白しなければならない。」これは英国のRobin Clark から1968年に発刊されたプリンス・フィリップ著「If I Were an Animal 」の前書きからの引用である。

これらの毒性物質が人間や他の生命体に及ぼす危険性を無視し続けることによってわれわれは人類の絶滅を今急速に出現させつつある。

著者のプロフィール:F・ウィリアム・エングダールは戦略的リスクに関するコンサルタントであり講師でもある。彼はプリンストン大学で政治学の博士号を取得し、石油と地政学に関してのベストセラー作家でもある。オンライン誌の「New Eastern Outlook」に特別寄稿をしている。

***

これで全文の仮訳が終了した。

除草剤やプラスチックの生産に用いられる硬化剤や軟化剤ならびにテフロンに用いられる難燃剤は内分泌かく乱物質であって、男性および女性の生殖機能に甚大な影響を与える。このような状況がこのまま放置されていると、人類は近いうちに絶滅してしまうのではないかという警告である。

最近亡くなった英国のプリンス・フィリップは既存のワクチンでは効かないようなスーパー・コロナウィルスとして生まれ変わって英国に出現してくるかも知れない(!?!)。皆さん、くれぐれもご用心を!

天文学者たちは彼ら自身の専門的な知識に基づいて太陽系はいつの日にか死滅すると推測している。その過程で地球は大きく膨らんだ太陽に呑み込まれ、その生涯は終りとなる。しかしながら、天文学者らが推測する地球の終焉の日よりも何十億年も前に人類はわれわれ自身の無知のせいで絶滅してしまうのかも知れない。政治家が、そして、政治家を選ぶわれわれ自身が無知でいる限りそのようなシナリオの可能性は膨らみ続ける・・・

参照:

1Will Mankind Be Extinct In a Few Years? By F. William Engdahl, NEO, Mar/09/2021

 




2021年5月8日土曜日

チェコの弾薬庫の爆発にロシアが関与していたというストーリーは米英の心理戦を打ちのめした ー 米専門家の弁

 

米ロ間の新冷戦はさまざまな情報戦争、心理戦争、あるいは、局地的な武力紛争を次々と引き起こしている。識者に言わせると、それらは旧ソ連邦の崩壊によって約30年前にNATOがその存在理由を失ったという現実が引き金となっている。この過程を眺めてみると、米国および西側諸国、主として米英はロシアを敵国として祭り上げることによってNATOの存在理由を誇示するために、ロシアを悪魔視し、プーチンの国内政策や出来事に関して悪口を言って、ロシア国内の世論を分断しようとしている。そういった場面は、実は、頻繁に観察される。トランプ前大統領は4年間の任期中ロシアの支援を受けて民主党候補のクリントンを破ったとしてさまざまな悪口や執拗な中傷、フェークニュース、等々に見舞われた。これも新冷戦絡みのロシア憎しという台本から演出されたひとつの大きな場面であったと言える。

まず、米ロ新冷戦において対ロ心理戦のために米英側が都合よく取り挙げたり、プロパガンダのために引き起こしたりした主な出来事を挙げてみよう。

ー 女性ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤの殺害(2006年):彼女は第二次チェチェン紛争やプーチンに反対し、批判していたことで知られる。自宅アパートのエレベータ内で射殺体で発見された。2011年、モスクワ警察の元警視、ドミトリー・パブリュチェンコフが拘束された。彼は何者かから金を貰い、部下にポリトコフスカヤを殺害させたとして2012年に懲役11年の判決を受けた。実行犯の二人は終身刑、他の3人は懲役12年から20年の刑を受けた。しかし、パブリュチェンコフに金を渡した人物は特定されてはいない。十分な調査はまだ行われてはいないとの指摘がある所以である。この事件は西側のメディアではロシア政府を中傷する典型的な材料として頻繁に登場する。

ー 元スパイのアレクサンドル・リトビネンコの毒殺(2006年):KGBFSBの職員であったが、後に英国へ亡命し(2000年)、ロシアに対する反体制活動家となり、作家として活動。ロシア諜報機関員によって毒殺された。英国側はリトビネンコは毒殺されたとし、ロシア政府はこれを否定。両国の主張は並行状態が続いている。英内務省の公開調査委員会は20161月に調査結果を報告し、プーチン大統領が「恐らく」毒殺を承認したとしている。この事件も西側のメディアではロシア政府を中傷する典型的な材料として頻繁に登場する。

ー マレーシア航空MH17便のウクライナ上空での撃墜事件(2014年):これはアムステルダムからクアラルンプールへ向かう旅客機で、乗客の283人と乗員の15人全員が死亡するという痛ましい事件となった。オランダ政府の安全委員会が主導する国際事故調査員会が設定され、事故の調査を行い、報告書を提出した。それによると、MH17便はロシアからウクライナへ運び込まれたブクミサイルによって撃墜された。撃墜後、その部隊はウクライナからロシアへ帰った。しかしながら、国際事故調査委員会が公開したブクミサイルの残骸から取得されたふたつの部品の製造番号をロシア側が調査を行い、それらの部品番号を追跡した結果、それらの部品は「8868720 の製造番号を持つブクミサイルの製造に供されていたことが分かった。この製造番号を持つブクミサイルは1986年にロシアからウクライナの西部の部隊(223rd Anti-Aircraft Artillery regiment at Stryi, Lviv oblast. Buk-M1)へ納入されたものであることが判明。ウクライナの223対空防衛部隊は、20146月、ウクライナ東部の反政府武装勢力を掃討しようとしていたキエフ政府軍の軍事行動の一翼を担っていた。らには、ロシア側は新型のブクミサイルへの更新を行っており、そのような古い型式のミサイルはロシアではすでに使用されてはいない。また、ウクライナ東部の反政府武装勢力がウクライナ軍の基地からブクミサイルを盗み出したのではないかという疑惑に関しては、ウクライナ政府の高官がそのような出来事は起こらなかったと公に述べている事実をロシア側が指摘している。

ー 反プーチンの指導者ボリス・ネムツフの暗殺(2015年):ネムツフは真夜中、近く結婚する女性とモスクワ市内の橋の上を歩いているところを射殺された。女性は無傷であった。犯人と思われる人物は車で逃走。20177月、チェチェン共和国ではネムツオフを襲撃した主犯のザウル・ダダイエフが20年の刑を宣告され、他の従犯者らも11年から19年の刑を受けた。なお、チェチェン共和国の大統領を務めるラムザン・カディロフは熱烈なプーチンの信奉者である。カディロフの単独の決定であったのか(つま、プーチンからの要請はなかったのか)、ダダイエフの個人的な犯行であったのかという疑問は解明されないまま残されている。

ー 英国のソールズベリーでのスクリッパル父娘殺害未遂事件(20183月):元二重スパイのスクリッパル氏と娘のユリアさんはソールズべり―の公園のベンチで意識不明となっているところを発見された。第一発見者はたまたまそこを通りかっかった英陸軍の看護師長であって、彼女に救助され、病院で手当てを受けた。二人とも昏睡状態から生還した。当時のメイ英国首相は、この事件は「かなりの確立で」ロシアの仕業であると断じた。「ノビチョク」と称される軍用の神経剤が用いられたという。因みに、その後の政治の舞台では証拠を挙げずに「かなりの確立で」という言い回しをすることが流行っている。二人は退院したと報じられたが、スクリッパル父娘の動向はその後絶えていた。しかしながら、事件の2年後、二人は別名を名乗ってニュージーランドへ移住した(させられた)そうである。そして、スクリッパル氏が住んでいた住宅は手入れを施した後に競売に付されることになった。英国当局は毒殺未遂の容疑者としてロシア人二人を特定した。アナトリー・チェピガとアレクサンダー・ミーシキン。英国政府がロシア政府に二人の身柄を引き渡すよう要求するも、ロシア憲法によって如何なるロシア市民も外国へ引き渡すことはできないとして、ロシア政府は英国の要求を拒否した。ところで、この事件は英国の諜報機関であるMI6が仕組んだものであるとの指摘があるが、そうだとすると見事な失敗である。

ー プーチンの政敵、ナヴァリヌイ毒殺未遂事件(20208月):2020820日、反プーチンの指導者であるナヴァリヌイはトムスクからモスクワへ向かう航空機の中で容体が悪化し、航空機はオムスクへ緊急着陸し、彼は病院へ運び込まれた。昏睡状態にされて人工呼吸器に繋がれた。そして、容体は安定した。二日後、ベルリンへ移送。OPCWの認証を受けているラボの分析によって、ナヴァリヌイには軍用の神経剤「ノビチョク」が使用された痕跡が認められた。今まで知られてはいない新型の「ノビチョク」だという。当初、オムスクの病院の医師は彼の体には有毒物質は認められず、彼の容体が急変した理由は血糖値が下がったことが原因であろうと指摘した。ナヴァリヌイのチームは彼がトムスク空港で飲んだ紅茶に有毒物質が投入されていたと主張。ナヴァりヌイは当日紅茶以外には何も食べたり、飲んだりはしていなかったという。その後、ベルリンへの移送後は事態は急速に政治的解釈へと急旋回して行った。ナヴァリヌイのチームの主張は彼が泊まったホテルの部屋で見つかったペットボトル入りの飲料水が毒物で汚染されていたという主張に変わった。米国は、20203月、ロシア連邦保安庁(FSB)の7人の高官に対する制裁を発表した。これはバイデン政権の発足後のロシアに対して発せられた初の挑戦となった。EUもこれに同調。

前置きが長くなったが、私としては米ロ間の新冷戦によってさまざまな出来事や紛争が起こっている現状を改めて俯瞰してみたかった。これら以外にもたくさんの事件が存在することは言うまでもない。この世の中に新冷戦という状況がまったく無かったとしたら、少なくとも、これらの事件はこんなに深刻な状況に発展したり、無残な結末を引き起こしたりすことはなかったであろう。MH17便の撃墜によって死亡した298人の犠牲者のことを考えると、新冷戦という国際政治ゲームが如何に残酷なものであるか、そして、如何に非人道的なものであるかが分かる。

ここに、「チェコの弾薬庫の爆発にロシアが関与していたというストーリーは米英の心理戦を打ちのめした ー 米専門家の弁」と題された記事がある(注1)。西側のメディアが大騒ぎを始めたもうひとつの愚行(!?!)についても詳しく学んでおきたいと思う。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しよう。

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ヴルビェティツェで起こった弾薬庫の爆発事件から6年後、チェコ当局は、突然、その実行犯としてモスクワを名指しした。同国の安全保障部門はロシアの関与についてはまったく何の証拠も掴んではいなかったにもかかわらずそうしたのである。突然気が変わり、筋書きが変わった理由はいったい何なのだろうか?このロシアとチェコとの間の紛争ではいったい誰が得をするのだろうか?

2014年に起こったヴルビェティツェでの爆発事件の背景にある要因についてはチェコ政府の要人の見解は割れている。つまり、429日にNovinky.cz に対して述べているように、マリー・べネソヴァ司法相はこの事件に関してはいくつかの見方があり、彼女の見解はミロシュ・ゼマン大統領の見方に非常に近いと言っている。

まず、ゼマン大統領はアンドレイ・バビシュ首相がこの爆発事件の背景にはロシアのシークレット・サービスが存在すると言ったことに対して疑義を挟んだ。先週の日曜日、ゼマン大統領はテレビ演説でチェコ共和国の安全保障情報サービス部門は、過去6年間、ヴルビェティツェ事件へのロシアの関与については何の報告もしたことはないと強調したのである。

6年後にヴルビェティツェ事件が突如浮上:

「チェコ警察は過去の6年間に及ぶ調査の結果、民間企業のImex Groupによる無鉄砲なまでの危険な行為によるものであったと断定した。同企業はいかがわしいブルガリア人の武器業者が所有する弾薬を安全とは言えない状態で保管をしていた」と、米国の元軍人で国際関係や安全保障の分析専門家であるマーク・スレボダが述べている。

この分析専門家によると、弾薬庫の爆発はロシアの工作員のせいだとして、突如、ロシアの批判を開始したバビシュ首相はかっては弾薬を貯蔵していた企業のImex Group を批判していたものだ。爆発が起こった後、当時財務相を務めていたバビシュは公営放送局のチェコテレビ(CT)でImexは、禁輸品であるにもかかわらず、議論の多いコンゴへの武器輸出を行ったことやブルガリアへ弾薬を売り、そこでも爆発を引き起こしたことで窮地に陥っていると述べた。

Imex Groupはバビシュ首相が調査情報を開示し、情報を歪曲したと主張し、その結果、同社の評判が損なわれたとしてチェコ政府を相手に訴訟を起した。だが、これは無駄に終わった。

その一方で、弾薬庫の状態は極めていい加減なものであり、危険な状態にあることを示していたとスレボダは指摘している。

「ヴルビェティツェの弾薬庫についてはチェコの専門家による調査が実施され、第一次および第二次世界大戦当時の弾薬が保管されていることが発見された。また、現場の周囲に施されている防護柵には木材の伐採によって生じた穴があって、弾薬庫からの盗難が起こった」と彼は言う。「弾薬庫に出入りする人たちをチェックする警備態勢や書類確認は無かったようだ。」 この弾薬庫の安全性が低い状況や弾薬庫をリースしている会社を巡ってはさまざまな議論が起こっている中、最大の問題はチェコ政府が弾薬庫の爆発について今になっていったいどうしてロシア人の諜報部門を非難することにしたのかという点にあると述べ、スレボダは疑問視している。

べリングキャットやザ・インサイダーおよびRFEが炎を煽っている:

英国のジャーナリストであるエドワード・ルーカスは彼が書いたCEPAThe Center for European Policy Analysis)のオプ・エドの中でこの難題を解く手がかりを明快に提供している。つまり、「同盟国の諜報サービス(ほとんどの場合、米国と英国だけ)が介入する時には何事でも起こり得る」と彼は書いている。「今回もまさにその通りだ。」 彼が言うところによれば、ペトロフとボシロフがあの爆発に関与していたと「誰かがチェコ当局へほのめかしたのだ。」

特に、スレボダによれば、バビシュ首相は「インテグリティ・イニシアティブ」 [訳注:英国のディープ・ステーツのひとつの組織であって、Institute for Statecraftによって運営されている。この組織はロシアに対する新冷戦に従事しているとして知られている] と称される英国の国を挙げてのプロパガンダ作戦の一部を担っていると疑われていることから見ると、ルーカスのこの想定はどうやら的中しているようである。

リングキャットは、最近、英外務連邦省(FCO)の支援を受けてアノニマスのハッカーを使ってロシアを貶める作戦の一翼を担っていることが発覚したが、ここでもまた一枚加わっている。420日、ザ・インサイダーと共にべリングキャットは、ペトロフとボシロフを含むロシアからのスパイ・グループがモラヴィア北部で大きな弾薬庫の爆発が起こった頃偽名を使ってチェコ国内に居たことを突き止めたと主張した。

セルゲイ・スクリッパルを毒殺することに失敗した英国によって起訴されているこれら二人のロシアの「ならず者」、つまり、ペトロフとボシロフが「カムバック」したわけであるが、彼らの主張は極めて滑稽であり、まるで古いマンガの「ロッキーとブルウィンクル」に現れるボリスとナターシャのことを思い起させるとスレボダは揶揄している。しかし、それだけには終わらない。

「彼らは今このドタバタ喜劇の二人組のロシア人を非難しようとしている。チェコにおける弾薬庫の爆発だけではなく、後に起こったブルガリアでの爆発に関してもだ [訳注:他の情報を見ると、ブルガリアでは2011年に1回、2015年に2回、さらに、2020年にも1回起こった]。そして、ブルガリア人武器商人 [訳注:名前はエミリアン・ゲブレフ] の毒殺未遂事件が起こった」と安全保障の分析専門家は述べている。「西側のメディアならびに諜報当局はこれら二人を大馬鹿者のスーパーマンと形容しようとしている。彼らは必要とされる技量が多岐にわたるさまざまな仕事、つまり、いくつかの毒殺未遂事件から始まって民間弾薬庫の爆発に至るまでの数多くの仕事を世界中で遂行するよう、恐らく、ロシア政府によって要請されたのだ。そして、彼らはそこいら中でヘマを仕出かしている。」

しかしながら、これこれのロシア人が中欧の何処かの国に居たとする説明は弾薬庫の爆発を引き起こす役目を担っていたことを必ずしも実証するものではない。ましてや、クレムリンやロシアの諜報当局がこの事件に関与していたことを実証するものではないとスレボダは言う。

加えるに、ロシア人には弾薬庫を爆破するという明確な動機がない。モスクワがこの事件に関与したという理由をあれこれと説明した後、べリングキャットの仮説は今やこんなことを言っている。「ロシアはソ連邦時代の弾薬が何時の日にか、恐らくは、ウクライナへ輸出されることを恐れて、先手を打ったのだ」と、米国の軍事専門家が述べている。けれども、彼は「だが、これは起こりそうにもない筋書きだ」と付け加えた。[訳注:ウクライナ内戦との絡みで見ると、ここで議論されている弾薬とは120ミリ砲や152ミリ砲に使用される砲弾である。ウクライナ軍は旧ソ連邦時代の大砲を使用している。これらの大砲に使われる砲弾はどこからでも入手可能というわけではなく、供給できる業者は限られている。そういう意味ではべリングキャットの仮説は興味深いとも言える。]

その一方で、422日、米国政府から資金が提供されている「ラジオ・フリー・ヨーロッパ」(RFE)局はロシアの諜報当局(GRU)と2015年のブルガリアにおける爆発事件との関係を見い出したと報じた。

安全保障分析専門家によれば、いくつかのメディア組織が「ロシアがやった」というストーリーを国際社会に向かって報じたことは米英の諜報部門が背景に居て、チェコ政府や諜報サービス部門をその話に乗せたことを示すものであって、それ以外の何物でもない。

チェコ・ロシア間の騒ぎではいったい誰が得をするのか?

スレボダは「CIAMI6が引き起こしたと推測されるこの心理戦」で意図された目標は下記に示す事項であろうと言う:

 第一に、ロシアを悪魔視することをさらに押し進め、そうすることによって東欧諸国に対するロシアの影響力や関係を低下させる。

 二番目には、一番目の項目から由来することではあるが、ヨーロッパを政治的にも経済的にもロシアからさらに引き離すこと。

チェコ共和国に関しては、次のような要素が明らかに絡んでいる:

 チェコのドコバニ原発の拡張工事に関する入札からロシアの国営企業であるロスアトムを追い出す。そうすることによって米国のウェスティングハウス社はコスト的には遥かに高価なものとなるにしても入札で最有力となり得る。

 チェコ政府によるロシア産の「スプートニクV」ワクチンの調達を中断させる。ワクチンの不足に見舞われながらも、チェコ政府はもはやロシア産のスプートニクVワクチンを購入する気はない。

と同時に、チェコの著名な政治家の間では緊張が高まっている。スレボダによると、ひとつには、このスキャンダルはアンドレイ・バビシュ首相や彼が新たに指名した反ロ的なヤクブ・クルハーネク外相、チェコのカウンター諜報部門SISの長官であるミカル・コウデルカ、チェコ内務相のヤン・ハマーチェク等によって推し進められているからである。

そして、反対側にはチェコ大統領のミロシュ・ゼマン、前大統領のヴァクルヴァヴ・クラウスやこれら二人を支持する他の政治家らが居る。

バビシュの首相としての地位は汚職調査や欧州委員会の監査によって窮地に陥った。億万長者であり農業・化学品の多国籍企業「Agrofert」の所有者であるこの人物にとっては彼が占める政治的地位とは利害が一致しない。それに加えて、チェコ首相はパンデミックの取扱いにおいては彼が見せた「混乱振り」が長い間批判されて来た。彼に対する信認の度合いが低下するにつれて、202110月の議会選挙におけるバビシュの勝算は決して高くはない。

その上に、バビシュ首相が率いる少数党の連携による政府は脆弱で、最近、「チェコ共産党」が脱退したことから、このことは不信任投票が起こり得ることを示唆している。彼の内閣は早めに、秋の選挙前にさえも、崩壊するかも知れないとスレボダは指摘している。

「もしもこういった事態が起こるとすれば、ゼマン大統領は政府を維持するためにも代行内閣を指名する権限を行使することになり、選挙が始まる前に彼の権力をさらに強化することとなろう」とこの安全保障分析専門家は言う。「ロシアに対する新たな批判が出たことでゼマン大統領をより防御的にさせ、彼の政治的地位を弱めたことからも、チェコ議会の反対派はバビシュ政権の崩壊をもたらし、ゼマンに忠実な代行内閣を現出させることになるかも知れない不信任投票を行うことは、恐らく、差し控えるであろう。このように、これらのロシアに対する新たな批判はそういった政治的シナリオが展開することを阻止する効果がある。」

***

これで全文の仮訳が終了した。

この記事はまたもや「ロシアがやった!」という内容である。

この記事によると、チェコの国内政治のドタバタがチェコ・ロシア間の国際関係に飛び火したようだ。つまり、結局誰が得をするのかと言えば、国内政治の面では6年前の弾薬庫の爆発事件の容疑者としてロシア人スパイをでっち上げることによってバビシュ首相は今年秋の選挙でゼマン大統領派を出し抜こうとしているのだと読める。バビシュ首相が英国の「インテグリティ・イニシアティブ」と称されるプロジェクトでどのような役割を担っているのかがキーポイントとなりそうだが、その詳細情報には素人の手は届かない。洋の東西を問わず、政治家にとっては選挙対策が最大の関心事であって、そこには決まったルールはなく、何でも起こり得る。

経済面では誰が得をするのかと言うと、ロシアを貶めることがうまく行けばチェコにおける原発の拡張工事の入札ではウェスチングハウス社が入札を勝ち取る勝算が増す。そして、チェコ政府による新型コロナ用のワクチンの調達では西側のワクチンの競争相手となるロシア産ワクチンを蹴落とすことができるだろうと言う。金儲けのためのロビー活動が行われていた模様だ。

ところで、この事件でも英国のべリングキャットが登場して来る。この組織は民間の調査報道ウェブサイトであるが、その資金源は英国政府と繋がっていると言われている。べリングキャットはマレーシア航空のMH17便撃墜事件やスクリッパル父娘毒殺未遂事件でも登場して来ることは読者の皆さんのご記憶にもあるだろうと思う。

どちらが正で、どちらが邪であるかを見分けることは私ら素人にとってはそう簡単ではない。しかしながら、個々の事件に関する判断は当面避けて、過去のさまざまな事例を辿ってみると、ひとつの典型的なパターンが浮き上がって来る。一言で言えば、「ロシアがやった!」という言葉に象徴される。つまり、その言葉には新冷戦を推進する西側のエリートたちの考え方が色濃く反映されている。この記事の著者が記述している「同盟国の諜報サービス(ほとんどの場合、米国と英国だけ)が介入する時には何事でも起こり得る」という見方は言い得て妙である。

個々の事件の真相は依然として闇の中に置き去りにされているが、私は冒頭にいくつかの事例を列挙することによってこういった典型的なパターンを示してみたかった。見えて来るのはひどく荒廃した風景である。

今後もチェコにおける秋の総選挙に向けて紆余曲折があるものと思われるが、真相に少しでも近づけるような新たな情報を期待したいものだ。

参照:

1Story of Russia's Alleged Role in Czech Arms Depot Blast Smacks of UK-US Psyop, US Vet Says: By Ekaterina Blinova, May/02/2021, https://sptnkne.ws/GfBe