2023年4月28日金曜日

英国政府は新型コロナワクチンが記録的な数の労働年齢の市民を殺したことをそれとなく認める


現代医学には限界があると私は思う。それは厳密な科学的因果関係を追求するという姿勢から起こっている。明白な因果関係を実証できてはいない、あるいは、推論に説得力がないと見なされた場合、科学的な論文としては受け取られず、現在のシステムでは学術誌への発表はままならない。

しかしながら、疫学の領域には超過死亡と言う概念がある。ウィキペデイアによると、「疫学は、個人ではなく集団を対象として病気疾病)の発生原因や流行状態、予防などを研究する学問。元々は伝染病を研究対象として始まったが、その後、公害病や事故などの人災地震などの天災交通事故がんなど生活習慣病など、研究調査対象は多様化している。疫学は公衆衛生予防医学への基礎を提供する領域として、また、疾患への危険要因および最適な治療方針決定への実証的な根拠に基づく医療として評価されている。」たとえば、新型コロナワクチンが使用される以前の一国の年間死者数と比較して、使用開始後の同国の総死者数がどれだけ増加したかを統計的に比較する。有意な増加分はワクチンとの関連性が直接・間接的に影響したものとして判断される。

患者個人における直接的な因果関係を追求する現代医学と患者集団としての全体像を解析しようとする疫学的な研究結果は、時に、その結論に大きな差異をもたらす。

ここでちょっと寄り道をして行こう。

たとえば、チェルノブイリ原発事故による死者数の推定だ。死者数の推定においては原子力村という利益集団を代弁するIAEAはウクライナ、ベラルーシ、ロシアの汚染地域に居住する565万人を対象にして事故後90年間の推定死者数を4,000人と推定した。その一方で、疫学者らは同地域について1990年から2004までの15年間の死者数を237,500人と推算した。IAEAの数値は非常に小さい。率直に言って、IAEAの推算値は放射能被爆という原因と被爆者の死亡という結果との間に直接的な因果関係が存在する事例だけを集めて、辿り着いた結論であって、彼らにとっては極めて都合の良い数値である。疫学的な推算値の報告はいくつもあるが、上記の237,500人という数値はウクライナやベラルーシおよびロシアの現地からの報告を纏めた「Chernobyl – Consequences of the Catastrophe for People and Environment」と題された書籍(2009年刊)に報告されている数値である。これらのふたつの数値の間には59倍もの開きがある!しかも、この書籍が対象にした15年間をIAEAの報告と同様に90年間に延長した場合、このギャップはさらに拡大することは間違いない。一般庶民に放射能汚染の悲惨さを理解させたくはないIAEAには隠された意図があったと言えば、言い過ぎであろうか?詳しくは、当ブログで201263日に掲載した「チェルノブイリ原発事故での犠牲者数の推定」をご一覧いただきたいと思う。

本論へ戻ろう。

ここに、「英国政府は新型コロナワクチンが記録的な数の労働年齢の市民を殺したことをそれとなく認める」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

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副題:英国の超過死亡者数に関して彼ら(つまり、政府)が完全な沈黙を守っている現状はあなたが知りたいことのすべてを物語っていると言えよう。このような数値を引き起こした可能性のある要因は他には存在しない。その点こそが彼らが沈黙している理由なのだ。

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このジョン・キャンベルの動画は3か月前に投稿されたものであるが、超過死亡が4,700人から26,300人へと驚くほど増加していることを示している。5.6倍もの増加だ。これは統計上のノイズなどではない。何らかの要因がこれを引き起こしたのだ。しかし、英国当局はこれについては沈黙している。これを引き起こした可能性のある唯一のものは新型コロナワクチンだ。これは当局が沈黙している事実をよく物語っている。

概要:

ジョン・キャンベルによるこの動画、「若年成人の超過死亡、2022年のデータ」3か月前に掲載された。

いくつかの要点がある:

1.    2:463:11  2044歳の死亡率は高齢者(7584歳)が2.5%であるのに対して7.8%の増加である。ジョンは、若者は死ぬ確率が低く、死亡の増加が高齢者の増加の3倍にもなるというのは極めて珍しいため、「これは実に大きな差だ」と述べている。それから、彼は次のことも述べている。「政府はこれについて説明をしなければならない。信じられない!」まったくその通りだ!しかしながら、彼らは沈黙している。そして、それが問題なのである。

2.    3:504:45  2022年には31,000人の超過死亡があった。その分布は非常に奇妙なものであった。これらの死亡の大部分は新型コロナによるものではなかった。その分布は上半期に4,700人、下半期が26,300人であった。つまり、後半の死亡者は5.7倍も高かった。超過死亡数は巨大であり、何かによって引き起こされた筈だ。それは何か?当局は沈黙したままである。

3.    6:577:18 「これによって、2022年後半には、2010年以降のどの年の下半期よりも多くの超過死亡が発生した。」

4.    7:158:05 ジョンは、直近3週間における7,000人の超過死亡をテロ攻撃と比較している。英国で7,000人もの人々がテロ攻撃によって殺害された場合、メディアは何も報道しないだろうか?だが、なぜこの場合は違うのか?「単なる軋み音ではない筈だ!」と彼は言う。

本動画の投稿以降、英国当局や他の誰かによる説明はない。スーザン・オリバー(訳注:米国の女優のことか?それとも、誰か他の人物?)の犬シンディでさえもがこれについてはあえてコメントをしていないのでは。

この状況はあなたが知りたいことのすべてを物語っている。そうではないかい?

はじめに:

英国は、いったい何人の市民が殺されなければならないのかには関係なく、新型コロナワクチンを成功させるように設定されている。

英国のMHRA医薬品・医療製品規制庁)はかつては英国における薬物を規制する機関であった。

今日、彼らの役割はワクチン接種を実現することに移行しており、規制当局としての以前の役割とは真逆である。

彼らが英国のイエローカードシステム(米国のVAERSシステムに相当する)における膨大な数の報告を見ると、彼らは(薬物が安全ではないと思うのではなく)実際には報告システムが機能していると思うのではないか。

私が冗談を言っているとお思いだろうか?英国のノーマン・フェントン教授によるこの17分間の動画をご覧いただきたい(彼はこの動画を2時間前に投稿したばかりなので、あなたはこれを誰よりも早く見ることができる)。

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次に、「Ofcom」のサイトをチェックしていただきたい。彼らは英国のメディア企業を規制する政府の検閲組織であって、企業が筋書きに反した場合は多額の罰金を科すことができる。彼らがマーク・スタインに何をしたかをチェックしていただきたい。彼らはマーク・スタインを解雇するのに尽力した。彼らのメモの中で、彼らはスタインが間違っていたと言ったが、彼らは正しい数値を示さなかった。換言すると、彼らはあなたに正しい数値を示さずにあなたが間違っていると宣言することができるのである。実に便利だよね。

これこそがニール・オリバー(訳注:元BBCの司会者。2021年からはGB Newsへ移籍)が事実上沈黙させられている理由なのだ。ニール・オリバーはワクチンが突然安全になったと思っているわけではない。

もちろん、政府の説明に反するような場合であっても、オフコムは誤った情報を広めたということで罰せられることはない。明らかに誤りであり、誤解を招くこの動画をご覧いただきたい。この動画によると、アストラゼネカのワクチンを接種した場合、今後14日間に何らかの理由で死亡したり、入院したりすることはない。基本的には、それはあなたを不滅にする。次の14日間は死ぬことがないので、彼らはウクライナの兵士にアストラゼネカのワクチンを注射することを考えている。このような情報によってオフコムが制裁されることはないのである。

また、ジョン・キャンベルは現在までにユーチューブでふたつの違反をしている。もう一回違反すると、ユーチューブは彼がこれまでに投稿したすべての動画を抹消し、誤った情報を広めたとして彼を生涯にわたって禁止にすることができる。

なぜならば、これが言論の自由に関して米国のような憲法上の権利がない英国において科学が機能する方法なのである。

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これで全文の仮訳が終了した。

ジョン・キャンベル博士の指摘は単刀直入で、実に秀逸だ。「これで、英国政府が超過死亡について何の説明も行わず、沈黙を守っている理由が明白となった」という著者の指摘にも頷ける。新型コロナワクチンの接種を進めてきた各国の政府や厚生省、公衆衛生当局は自国における超過死亡の急増についてはまともに説明することができないのではないだろうか。最近増えている専門家たちの指摘を踏まえて言えば、新型コロナワクチンこそが超過死亡の急増の主要な理由であったことはほぼ間違いない。

ジョン・キャンベル博士の動画サイトは新型コロナに関して医学情報を平易な言葉で入手したい一般庶民にとっては極めて有用なサイトである。私も今までに何回か同博士の動画にアクセスした。だが、同博士はもう一回ポリシー違反を行うと、ユーチューブ動画から排除されるかも知れないという。国際政治を解説する日本のユーチューバーも言及できる文言を意識して、「これ以上詳しくは伝えられない」と言った上で、視聴者を他の動画サイトへ誘導したり、そのような制約がない講演会への出席を募ったりする場面をよく目にする。

ユーチューブという民間企業が動画の中で話し手の発言内容についてこうもあからさまに制約をかけることは新型コロナ禍以前にはほとんどなかったのではないかと思う。ソーシャルネットワーク企業は新型コロナ禍において急速に特定利益集団のための強力な武器と化した。福島原発で炉心融解事故が起こった際もこの種の状況にあったのかどうかについては、当時の私には十分な知識がなかったし、ここで詳しく掘り下げようとは思わない。以前は公序良俗を犯すような発言が規制の対象であった。少なくとも、言論の自由は最大限確保しておきたいものである。この新たな趨勢に対して何らかの改善策を設けなければ、これは今後大きな弊害をもたらすに違いない。

参照:

1UK government tacitly admits the COVID vaccines are killing working age people in the UK in record numbers: By Steve Kirsch, Apr/24/2023

 

 


2023年4月26日水曜日

イラン - 単独覇権の世界は死んだ、米国はもはや超大国ではない

 

フランスに次いでドイツもまた中国に対する敵対関係を解消しようとしているとの最近のニュースに皆さんはお気付きであろうか?つまり、両国は米国の一方的な中国に対する敵視政策に同調することを止め、独自の政策に戻ろうとの意欲を表明したようだ。フランスのマクロン大統領やドイツのベアボック外相の最近の言動がこの新しい動きを示している。言うまでもなく、ヨーロッパ諸国にとっては貿易相手国としての中国の存在は極めて大きい。そういった観点では日本もまったく同様である。西側による対ロ経済政策が推進されている中で、日本政府はサハリン2プロジェクトからは撤退しないと繰り返して述べている。広島におけるG7会議を控えているこの時期、西側諸国では米国と他の国々との間に分断が表面化してきたということであろうか?

また、米国の単独覇権を支えて来た米ドルの低迷はますます進行している。国際貿易の決済通貨として世界的に用いられてきた米ドルは今やその決定的な優位性を失いつつある。産油国大手のサウジアラビアは原油輸出の代金として米ドルではなく、輸入国の通貨を受け取ると公式に表明した。まず、サウジ原油の輸入大国の筆頭である中国はサウジとの間でユアンで決済することを両国は決めたのである。ロシア、サウジ、イランといった主要な産油国はドル決済から当事国の通貨による決済に移行し、数多くの非米諸国がこれに続いている。こうして、非米諸国は多くが今やBRICSや上海協力機構へと傾いている。

西側の専門家らと同様、ロシアの大富豪のひとりであるオレグ・デリパスカも米ドルは5年後には国際決済通貨の地位から外れるであろうと予測している。

ここに「イラン - 単独覇権の世界は死んだ、米国はもはや超大国ではない」と題された最近の記事がある(注1)。裏付けは取れないが、米国やイスラエルの覇権に立ち向かおうとしているイランのこの記事は日本の大手メディアでは報じられてはいないのではないかと思う。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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 Photo-1: イラン外務省のナセル・カナニ報道官 

イラン外務省の報道官は、新しい勢力が台頭するにつれて一極世界秩序は存在しなくなったと述べ、米国政府は勢力圏の縮小と権力の枯渇に直面していると強調した。

「一極世界はもはや存在せず、米国はもはや超大国として認識されてはいない。もちろん、同国は依然として大国であると見なすことはできる。しかし、実際には超大国としてではない」とナセル・カナニは、月曜日(417日)、テヘランで毎週行われる記者会見で記者団に語った。

「我がイスラム共和国の能力や地域レベルと国際レベルの両方での勢力均衡の変化に照らして、イラン政権はイラン国家の国益を確保し、共通の利益に向けた極めて包括的なアプローチとして地域の収束を促進し、地域紛争のエスカレーションを緩和するためにそのような可能性をすべて解き放とうとしてきた」と彼は述べた。

イランは外交政策を特定の地理的地域や特定の政治ブロックに限定しないことを何度も繰り返してきたと彼はさらに述べた。

「私たちは、相互尊重、互恵主義、共通の利益に基づいたアプローチを採用することを厭わない国々のすべてと友好関係を築き、その関係を強化し続ける。」

 

Photo-2: イラン曰く、米国の軍事行動は同国の世界的な大国としての地位の衰退を隠蔽するためだ

この地域全域で米国がとっている軍事的な動きは衰退しつつある世界的強国の実態を隠すことを目的としているとイランは言う。

「イランはIAEAとの前向きな協力が続くことを望んでいる」:

他の領域での発言として、イランはイスラム共和国と国際原子力機関(IAEA)の間の技術協力関係が継続され、同国の核計画における未解決の問題が解決されることを望んでいるともカナニは述べている。

イランのトップの外交官は、IAEAのラファエル・グロッシ事務局長が3月にテヘランを訪問し、その結果、技術代表団が交換された。国際原子力機関の代表者がイランを訪問し、双方の間で合意された枠組みの中で技術協議が行われ、公式に宣言されたと強調した。


Photo-3: イランとIAEAが協力関係を高め、未解決の問題を解決することで同意

イランとIAEAは協力関係を強化するための措置をとることで合意。

「協議は合意に従って進行中である。これは技術的な道筋だ。技術的な道筋が政治的な問題や立場に影を落とさず、イランとIAEAの間の協力プロセスが維持され、未解決の技術的問題の解決に向けた前向きな措置が取られることを希望する。」

イスラエルは地域諸国間の不和を助長しようとしている ― カナニの言:

イランと隣国アゼルバイジャンとの外交関係に触れて、イスラエル政権は2つのイスラム教徒の隣国間の関係にとっては執拗な敵であり、自分たちの利益を享受するために不和を助長しようとしているとカナニが述べた。


アゼルバイジャン政府はイランイスラム共和国との外交関係の重要性を強調し、テヘランはバクーにとっては「重要な隣国」であると言った。

「シオニスト政権のいわゆる国家安全保障と生存のための戦略は西アジア地域やイスラム世界全体において不安定さや不安を生み出し、扇動することに固執していることから、彼らの悪事はテヘランとバクーの関係のみに向けられているわけではない。」

「イランは善隣の原則を非常に重視しており、相互尊重と共通の利益に基づく友好関係に特に重点を置いている」と彼は述べた。


プレステレビのウェブサイトには次の代替アドレスからもアクセスが可能:

www.presstv.ir

www.presstv.co.uk

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これで全文の仮訳が終了した。

2015年から始まったイエメンの内戦を通じて敵対関係にあったイランとサウジアラビアの外交関係を中国が再開させたことから、中東地域はイスラム教の宗派に基づいた分裂から脱却し、新たな協調関係へと動き始めた感じがする。両国の国交再開が合意されたとの発表は310日のことだった。今回の引用記事はその後の出来事が地球規模のもっと大きな趨勢を具体的に示唆している好例だと思う。つまり、単独覇権の世界から多極化世界への移行を、今、われわれは実際に目にしているような思いがするのである。

このプロセスがさらに進行することはほぼ間違いない。しかしながら、それに伴ってわれわれ一般庶民はどのような影響を被るのかについて具体的に線を引くことは必ずしも容易い事ではなさそうだ。恐らく、われわれ一般庶民のほとんどは何らかの変化が起こった後でさえもかなりの時間が経って初めてそのことを実感し始めるのではないだろうか。まさに、それはかって大英帝国が崩壊した際に英国の一般庶民がそういった状況にあったことが今回も再現されるのかも知れない。あるいは、インターネットによる情報社会の深化によって、まったく違った経路を辿る可能性も大きい。

参照:

注1:Iran: Unipolar world is dead; US no longer known as superpower: By PRESSTV, Apr/17/2023

 



2023年4月22日土曜日

リスクに曝された世界

新型コロナ感染症の大流行とは何だったのか?これは多くの人の頭を過ぎる疑問だ。そして、今もあまり変わりはなく、全貌は実に捉えにくい。主流派が構築しようとしたシナリオとは違った意見や見解が現れると、直ちに主流メディアによって否定されてきた。このような状況が3年間も続いた。今でもそれが完全に終わったというわけではない。 

とは言え、新型コロナ感染症の流行が始まった当初とは違って、3年を経過した今、状況は変わって来た。新型コロナワクチンを推進し、全世界をコントール化に置こうとした筋書きは完結されずに終わりそうである。各国はさまざまな規制を廃止し、海外からの渡航者を受け入れ始めた。と同時に、さまざまな虚偽情報や意図的に行われた情報操作の実態が暴露され、解明されつつある。素人の観察ではあるが、今や、そんな風に見える。 

ここに「リスクに曝された世界」と題された最近の記事がある(注1)。 

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。 

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副題: 2019年9月のWHO報告書は致命的な呼吸器疾患の病原体が「偶発的または故意に放出された」と警告した。 

 バイオ医薬品複合施設内では、2019年の秋は呼吸器系ウィルスの大流行が迫って来るという脅威に関して誰もが「お喋り」に没頭する季節となった。2019年10月19日に「ジョンズ・ホプキンス公共安全センター」が「ビル&メリンダゲイツ財団」および「世界経済フォーラム」と共同で主催した「イベント201パンデミック・シミュレーション」の演習については本サブスタックの読者の皆さんはすでによく精通している。このシミュレーションは「山火事のように広がり、制御不能になっていたコロナウィルスの発生の真っ只中にその参加者たちを突き落とした」。 

あまり知られてはいない点がある。それは「世界銀行」グループと「世界保健機関」によって2018年に設立された「グローバル準備監視委員会」が2019年9月に発行した報告書(A World At Risk:リスクに曝された世界)のことだ。 

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この報告書の表紙にはコロナウィルスの画像が描かれており、その本文は呼吸器系感染症の大流行に対する備えとして世界は遥かに多くの投資をする必要性があることを緊急行動として呼びかけている。報告書の8ページ目にはこう述べられている: 


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本報告書で最も注目すべき点はバイオラボの安全性を強化するために投資をする必要性については何も触れてはいないことだ。それは「偶発的または故意に放出された」致命的な呼吸器系疾患の病原体の脅威については明示的に警告しているが、その行動の呼びかけは全体が病原体の放出を防ぐことについて行われているわけではなく、そのような病原体にどう対応するかについて大金を投資することに注がれているのである。 

これは世界のバイオラボの多くは適切に対処されてはいない重大な安全上の欠陥の歴史を持っているとしてラトガース大学の生物学教授であるリチャード・エブライト等から数多くの緊急警告があったにもかかわらずであった。2017年、エブライト教授は中国の武漢に開設されようとしている新しいBSL-4クラスの研究所について特に懸念を表明していた。 

新型コロナウィルスは2019年12月に公式に検出されたが、おそらく2019年9月には出現し、広がり始めていたことが分かっている。つまり、その頃、同時に「リスクに曝された世界」が発刊されたことも分かっているのである。数か月後の2020年2月1日、フランシス・コリンズ博士、アンソニー・ファウチ博士、その他11人の著名な科学者たちは電話会議を開催し、ウィルスの起源について話し合った。この電話会議中、彼らはウィルスが中国の武漢の研究所から漏れた可能性があり、さらには意図的に遺伝子操作が行われた可能性があることを知らされた。 

ファウチ博士らはこの強力な可能性(WHOが2019年9月に明示的に警告したこと)を認める代わりに、この証拠を隠し、それを言及した人を「陰謀論者」として中傷するという組織的なキャンペーンを開始した。

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これで全文の仮訳が終了した。 

個々の出来事を結んでみると、それらの背景には特定の利益集団の思惑が浮かんでくる。つまり、この記事を読むと、何十億人もが住む世界を相手にしてワクチン接種によって巨額の利益を挙げようとする医薬品業界の思惑が汲み取れるのである。 

誰が首謀者であるのかを特定することは必ずしも容易い作業ではないようであるが、ファウチ博士らを中心とした科学者らは、誰か(常識論的に言えば、「デイープステーツ」が医薬品業界のシナリオを取り上げた?)の指示に基づいて、一般庶民を洗脳する情報操作作戦を巧妙に展開していたという事実がこの記事によって浮かんでくる。新型コロナ感染症が世界を襲う前にさまざまな露払いの作業が行われ、報告書が発刊され、洗脳作戦は着々と進められ、展開されて行った事実がここに描かれている。これらの事象はそれぞれが‘独立したもののように見えるが、こういった個々の事象を結び付けてより大きな全体像を見せつけられると、われわれを今まで捉えていた理解は新事実の重さには耐えきれず、簡単に倒壊してしまいそうだ。だが、われわれはこの目が眩むような瞬間を持ちこたえ、たとえ大きな痛みが伴おうとも、これらの真実を正面から受け留めなければならないのではないか。今後も新たな情報がいくつも公開されることであろう。少なくとも、この記事の基本的な内容が覆されない限り、この記事の内容を認めざるを得ないであろう。 

大雑把に言うと、この記事に記載されている内容は、今や、一般大衆といえどもほとんどの方々がすでに何らかの形で感付き始めていた内容であると思う。だが、それを公然と口にすることは何となく憚れるものであった。それが現実であったと言えよう。 

さらに、同じ著者がもうひとつの記事を最近投稿した。それは「陰謀論とは何か?」と題されている(注2)。今の世界にとってはおおいに考えさせられる内容だ。この記事も併せて仮訳しておこう。 

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副題:軽蔑的なラベルを精査する。 

「新型コロナに直面する勇気:バイオ医薬品複合体と戦いながら、入院や死を予防する」と題されたわれわれの書籍において、マッカロー博士と私はさまざまな公共政策問題について一般的な正統性に疑問を呈する人(著名な資格のある科学者や研究者であってさえも)は誰でもが「陰謀論者」とのレッテルを付けられる可能性が高いことを列挙した。JFKの暗殺事件以降、「陰謀論者」は「人種差別主義者」や「性差別主義者」といった軽蔑的な非難をする言葉へと変貌して来た。一般的な使用を通じて、こういったレッテル付けは証拠もなしに誰かを完全に中傷し、瞬時に葬り去ってしまうようなパワーを秘めている。 

強力な利益集団がこれまでに牽引してきた最大のトリックは彼らの活動内容を検出し、それを報告しようとする者は誰でもが陰謀論者であるということを世界中に納得させることであった。主流メディアからのニュース報道を消費する最も素朴な一般庶民だけは軍事や金融、バイオ医薬品の複合体から成る強力な利益集団が自分たちの利益を追求するために協力合っていることを認識することはなさそうだ。彼らの活動は彼らが自分たちの利益を促進するために詐欺やその他の犯罪を犯す時、一線を越え、陰謀の領域へと入り込む。「陰謀論」という用語は狂気じみた精神による熱狂的な想像を示唆している。これは米国政府が常に共謀罪を起訴するという事実を無視している。ある著名な弁護士はこの現実を次のように説明する: 

2人以上の個人が同じ犯罪を犯すための共通の合意があったと主張することができると政府が信じると、彼らはいつでも起訴内容に共謀罪を含める。陰謀に関わるすべてのメンバーがお互いについて知っている、あるいは、お互いを個人的に知っているということは必要条件ではない。 

人は、犯罪に関してその詳細のすべてを知らなくても、犯罪を犯すための陰謀で起訴される可能性がある。歴史を見ると、十分に文書化された陰謀事件でいっぱいである!エリザベス1世の治世中、彼女を殺害し、スコットランドのメアリー女王に置き換えようとする主要な陰謀事件がみっつあった。それらはすべてが探知され、失敗に終わった。最後の「バビントンの陰謀」はエリザベスの秘書であるフランシス・ウォルシンガム卿(敏腕な情報収集家であった)によって発見され、メアリーは反逆罪で処刑された。 


 Photo-3:共謀者は注意せよ:情け容赦のないフランシス・ウォルシンガム卿 

より大きな権力や富を獲得するために共謀しようとする、権力に飢えた男性はもはや存在しないとわれわれは本当に信じるべきであろうか? 

「理論」に関する限り、検察官は誰もが犯罪について理論を展開する。そして、それを陪審員に提示する。あなたが懸念する市民のひとりであり、あなたの政府関係者やメディアは非常に重要な問題について真実を語ってはいないと感じるならば、あなたには何がいったい起こっているのかについての理論を定式化する以外に選択肢はない。確認可能な事実のパターンを説明するための理論を展開することは、犯罪行為を検出し、それを明らかにするには極めて合理的な試みとなる。確かに、いくつかの理論は他の理論よりももっともらしく、いくつかは論理的で首尾一貫している。そして、他の理論はあまりにも突飛で、矛盾している。 

アイゼンハワー大統領が1961年に辞任した際、彼は「軍産複合体がわれわれの自由と民主的プロセスを危険にさらす」可能性のある「不当な影響力」を獲得するであろうことについて明確に警告した。新型コロナがやって来た時、バイオ医薬品複合体は初期治療という解決策ではなく、ワクチン接種を精力的、かつ、独占的に追求した。それと同時に、彼らの野心を実現するために、複数の当事者らはヒドロキシクロロキンやイベルメクチン、および、他の転用可能な薬物には反対する宣伝キャンペーンを行った。 

これらの関係者の内で、ジェネリック医薬品であって、再利用された薬物について不正な主張をしていることを知っており、不正な主張に基づいてこれらの薬物へのアクセスを妨げる行動をとっていることについても理解している人たちは比較的少数であった可能性がある。これらの当事者は陰謀論者であった。無数の一般大衆は彼ら自身がプロパガンダを信じ込んでいたので、無意識のうちにも陰謀論のひとつの役割を演じることになった。 

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これで全文の仮訳が終了した。 

著者は「強力な利益集団がこれまでに牽引してきた最大のトリックは彼らの活動内容を検出し、それを報告しようとする者は誰でもが陰謀論者であるということを世界中に納得させることであった。」と述べている。秀逸である!それこそが新型コロナ禍でわれわれ一般大衆がおぼろ気ながらも観察して来たことだ。 

連中が主張する筋書きに対して反論を唱える者は陰謀論者であるとのレッテルが貼られ、まともな医学論争が行われることはなかった。新型コロナ感染症についての初期治療はないがしろにされ、安価で安全性がすでに確立されているヒドロキシクロロキンやイベルメクチンの効能は主流メディアによって無視された。しかしながら、3年を経過した今、科学的な論争の相手に陰謀論者のレッテルを貼り、正直な科学者をキャンセルし、学会から排除しようとした当人たちこそが実はバイオ医薬品複合体の利益を誘導し、確保しようとした正真正銘の陰謀論者であったとしたらどうであろうか? 

これからもさまざまな情報が掘り起こされるであろう。引き続き、関心を寄せて行きたいと思う。 

参照:

注1:"A World At Risk": By John Leake, PETER A. MCCULLOUGH, MD, MPH™, Apr/18/2023 

注2:What Is A Conspiracy Theory?: By John Leake, PETER A. MCCULLOUGH, MD, MPH™, Apr/20/2023





2023年4月18日火曜日

「ウクライナにおけるNATO軍に壊滅的な被害」 ― 秘密の地下壕にロシアが与えた「ダガー」ミサイルによる一撃によって、ウクライナ軍の大反撃は延期

 

ここに西側の主要メディアにとっては一般大衆に知って欲しくはないと思っていた出来事に関する総括的な報告がある(注1)。それは「ウクライナにおけるNATO軍に壊滅的な被害 ― 秘密の地下壕にロシアが与えた「ダガー」ミサイルによる一撃によって、ウクライナ軍の大反撃は延期」と題されている。

この出来事は3月上旬にウクライナ西部のリヴィウ近郊で起こった。これはロシア軍に対して先にウクライナ側が行ったテロ攻撃に対する報復攻撃であるとロシア側は説明していた。当時、ロシア側は極超音速ミサイルを使用して地下壕を破壊したという事実は報じたが、詳細な成果について詳しくは報じなかった。もちろん、西側も口を閉ざしていた。

しかしながら、さまざまな情報があちらこちらから流され、ついにこの出来事の全貌が見えて来たとこの記事の著者は述べている。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

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副題:ロシアの極超音速ミサイル「ダガー」はNATOとウクライナ軍の200人の将校がいる秘密の掩蔽壕を破壊

Photo-1:「キンジャール」ミサイルを搭載したMiG-31K戦闘迎撃機  写真提供:Vladimir Velengurin

3月上旬にリヴィウの近くでいったい何が起こったのかについては、米国や英国、ポーランド、ならびに、他のいくつかのNATO諸国の軍事部門は一言も話したくはないようだ。そして、この悲惨な緊急事態について嗅ぎつけてやって来る迷惑千万なジャーナリストらが将軍や政治家に本件について質問すると、彼らからは何が起こったのかについては「ノーコメント」、あるいは、「何も知らない」といったずる賢い反応が返ってくる。それにもかかわらず、「袋の中の千枚通し」は流出しようとしている。西側やウクライナのマスコミ、および、さまざまな分野のソーシャルネットワークからの情報がますます多く漏れ、それらは詳細にわたって非常によく辻褄が合い、NATOとその同盟国にとっては大きな苦痛となったドラマ(悲劇でさえある)に関して信頼できる報道をすることが今や可能だ。

NATO の将官たちの掩蔽壕:

このシナリオは次のような具合だ。リヴィウの近く、地下100メートルに旧プレカルパティア軍管区の予備指揮所があった。十分な防護が施され、最新の通信システムを備えたこの施設は秘密の施設であり、ドンバス地域に対するウクライナ軍による敵対行為の発生(2014年)に伴い、キエフの同盟国に助言し、彼らと一緒に作戦計画を立てるのに便利なウクライナの後方地域に移動することが決定された際に、NATOの将軍や大佐らはこの地を選定した。また、この秘密の地下拠点は、特別軍事作戦の開始とともにウクライナ側の意思決定拠点を攻撃することをモスクワ側が約束した後でさえも、「コンサルタント」らには安心感を与えていた。事実、これはNATOの代表者たちやウクライナ国防省の将校、および、ウクライナ軍の参謀本部で構成された合同指令本部であった。さらに付け加えると、この本部は防空システムによって非常にしっかりとカバーされていたため、「住民たち」の安全性に関する自信はさらに高まっていた。さらには、数メートルにも及ぶ鉄筋コンクリート製の覆いの下で彼らは自分たちは完全に無敵だとさえ考えていた。

警戒感が失われたのは、おそらくは、これが理由であった。時には、何十台もの車が白昼に本部の入り口に集まったりした。3月の初めまでには、ロシアの参謀本部は「地下壕」とキエフの両地でウクライナ軍の攻撃計画の策定が本格化していることをすでに知っていた。リヴィウ地域のNATO「支部」の隠れ家を攻撃し、極超音速の「ダガー」ミサイルを発射する作業を注意深く終了させるには最も好ましいタイミングを決定することだけが残されていた。そして、もちろん、ダガーの搭載機(MiG-31戦闘機)、これらのミサイルの発射ライン(敵の防空識別圏には入らない)、および、目標物の破壊の「瞬間」を計算する作業は徹底して行われた。

「ダガー」(複数)は仕事をやり遂げた:

なぜ「ダガー」が選定されたのか?それは、この種の掩蔽壕は従来のミサイルに対しては無敵であったからだ。たとえ1トン半または5トンの爆弾を使ったとしても、攻撃のために爆撃機を発進させることは意味がなかった。ウクライナ軍は飛行機を撃墜することができるので、「杭の内側」に入ることはほとんど上手くは行かなかったであろう。そして、2000キロも離れた距離からでも発射される「ダガー」(弾頭は500 キロ!)は狂ったような速度(音速の10倍から15倍)で目標に到達する。だから、それを迎撃することができる対空ミサイルシステムは世界にひとつも存在しない。また、「ダガー」(高精度の武器であって、狙撃兵みたいだ)は、目標の中心からのずれがわずか1メートルの範囲内に着弾する!数十メートルにもわたっていくつもの入り口が散在する中、最初のダガーは中心的な「井戸」に向かい、次のダガーもさらにその後を追う。これは大量の爆発物だ!

「ウクライナにおけるNATO軍の大失敗」:

地下要塞の「先生と生徒」たちの中で生き残った者は一人もいなかった。総数は200人以上。何人かは西側の「聡明な」ジャーナリストたちで、何人かは米国の将軍や上級将校である。さらには、英国やポーランド、ウクライナからの連中だ。

そして、これこそがすでに述べた「袋の中の千枚通し」である。ギリシャのポータル「Pronews」は同国の国防省に近く、「ウクライナとNATOの合同指揮通信センターでの「キンジャール」極超音速ミサイルによる攻撃によって数十人の外国人将校たちが殺害された」と報じた。これは「ウクライナのNATO軍にとっては大災害」であった。

それだけではない。いくつかのキエフのサイトはすでに非難している。この緊急事態の後、国防省とウクライナ軍参謀本部の代表は米国大使館の絨毯が敷かれた部屋に導かれ、彼らは「統合指令本部の不適切な安全性」に関して叱責された。それと同時に、死んだ米国人上級将校のリストが手渡され、「少なくとも地中から遺体を確保する」ように命じられた。爆撃で殺害され、狂乱の中で窒息死した人々の死体は今掘り起こされている・・・

これまでのところ、ウクライナのソーシャルネットワークからの「リーク」によると、破壊された統合指令本部の廃墟の下から回収された遺体は40体だけである。

公式には:

ここで、39日、ロシア国防省がテレグラムチャンネルにおいてブリャンスク地域でキエフ政権が組織し、32日に実行したテロ行為に対してロシア軍は大規模な「報復攻撃」を加えたという控えめなメッセージを発表した事実を思い出さずにはいられない。同省はキンジャール極超音速ミサイルが使用されたことを強調した。

ところで、「国家危機研究所」の所長であるニコライ・ソローキンによると、この「報復爆撃」は他の結果ももたらした。この「シンクタンク」の破壊の結果、ウクライナ軍の次の攻撃はかなり遅延する可能性があると彼は考えている。この考えには独自の理由がある。攻撃は今も延期されている。儀式の慣習によれば、たぶん、彼らは死の日から40日間は待つことになるのかも・・・?

しかし、NATO諸国の首都はこの悲惨な非常事態についてなぜ沈黙しているのであろうか。おそらく、彼らはモスクワによって彼らの顔に喰わされたピンタを認めることを「恥じている」からであろう。あるいは、ロシアに対する敵対行為にNATO軍が積極的に参画していることを公然と認めることになる可能性があるからだ。

関連記事:

― "A very important victory awaits us": Alexander Kots told what he saw in Artemovsk with his own eyes (more)

― Leak of super-secret US data on the "spring offensive" of Ukraine: Is it true or "duck" to lull vigilance

― The US Department of Defense is investigating the leak of secret military documents on the offensive of Ukraine (more)

― Why Russia deploys nuclear weapons in Belarus: Let's get to any NATO country in Europe

― Military observer Viktor Baranets said that Russian nuclear weapons in Belarus can "reach" all NATO countries (more)

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これで全文の仮訳が終了した。

ここに報じられているロシアの極超音速ミサイルには二通りの名称がある。「キンジャール」と「ダガー」。この記事では両名称が混在している。

音速の10倍で飛行するミサイルの運動エネルギーは非常に大きい。たとえば500キロの弾頭がマッハ1で飛行している場合と比較すると、マッハ10のダガーミサイルの運動エネルギーは100倍になる。0.5トンの爆薬は50トンに相当する。マッハ15だと、225倍となり、0.5トンの爆薬は112トンに相当する。大雑把に言って、それだけ破壊力が増す。それが何発も同一カ所に撃ち込まれたならば、非常に大きな破壊力となる。数メートルの厚さの鉄筋コンクリートや地下100メートルの掩蔽壕も破壊されてしまう。

この引用記事では「袋の中の千枚通し」といった聞き慣れない表現が出てきた。文脈から判断すると、これは「隠蔽された情報」といった意味合いで使われているようだ。

参照:

1"The Catastrophe of NATO Forces in Ukraine": Russia with one blow of the "Dagger" on the secret bunker postponed the counteroffensive of the Armed Forces of Ukraine: By Victor Baranets, Komsomolskaya Pravda, Apr/15/2023

 




2023年4月16日日曜日

大破局に向かって夢遊病者のごとく歩いている

 

ロシア・ウクライナ戦争は実質的には米ロ代理戦争であると言われている。

旧ソ連邦の崩壊とともに東側の軍事同盟であったワルシャワ条約機構軍が解体され、東西冷戦構造は終結した。それにもかかわらず、米国は西側のNATOという軍事同盟を温存し続けた。旧ソ連邦が崩壊した直後の1990年代、NATOはその存在理由を明確には打ち出せず、方向性を失っていた。だが、2001年に起こった(あるいは、自作自演によって引き起こされた)911同時多発テロを受けて、国際規模の対テロ戦争が宣言された際には米国のある将軍は「これで今後50年間は米軍は安泰だ」と言った。彼らを取り巻いていた当時の状況を考えると、あれは、恐らく、偽らざる本音であったのではないかと思える。

軍の高位高官たちにとっては軍の存続は非常に大事だ。退役後に回想録を書いて印税収入を確保することと並んで、退役後の天下り先を含めて自分たちに約束されていた権益をしっかりと擁護することは極めて重要なのである。

大量破壊兵器の存在をでっち上げて、イラクへの米軍侵攻が始まった。しかしながら、大量破壊兵器はイラクの地で発見することはできなかった。この事実は米国の権威を大きく失墜させた。歴史を振り返ってみると、米国の権威失墜はあの時から始まり、今に続いている。腕力で自分たちの言い分や目標を押し通そうとする試みがあれこれと繰り返されたが、多くは失敗に終わった。対外政策だけではなく、国内政策においても同様だ。

ロシア・ウクライナ戦争はそういった米国による間違った政策の延長線上に構築された。この戦争も大失敗に終わるのではないだろうか?少なくとも、西側諸国では戦争疲れが高まっているように見える。

ここに、「大破局に向かって夢遊病者のごとく歩いている」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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副題:(心理学者の)ジョーダン・ピーターソンとマイク・リー上院議員がウクライナにおける米ロ代理戦争について語る。

昨年(2022年)の2月、米国政府はロシア・ウクライナ間の危機を和らげるために何の努力もしなかったことが明らかになった時、それに代わって、カマラ・ハリスがミュンヘン安全保障会議に送り込まれ、彼女は到底理解できないような、わざと曖昧にしたメッセージを伝えた。

1998年に議会がNATOの拡大を決議した際、ジョージ・ケナンは次のように述べた。『これによって新たな冷戦が始まるだろう。ロシア人は徐々に否定的な反応を見せ、それは彼らの政策に影響を与えると思う。悲劇的な間違いだと思う。これには理由がまったく見当たらない。他の誰かを脅かしている者なんて誰もいなかった。このNATO拡大は当国の建国の父たちを墓の中で七転八倒させていることだろう・・・ もちろん、ロシアからは否定的な反応があるだろう。そうすると、NATO拡大論者たちは「ロシア人はいつもこうなんだと私たちはあなた方にいつも言ってきただろう」と言うに違いない ― しかし、これはまったく間違っている。』

私たちは歴史上のひとつの段階に入っていると思う。われわれはひとつの危機から次の危機へとよろめきながら渡り歩く運命にあると思う。おそらく、これは支配階級によって意図的に引き起こされた最後の危機をわれわれ一般市民がすぐにも忘れさせるためなのである。ウクライナの中立協定はなぜ試みられなかったのだろうか?冷戦中、スウェーデン、フィンランド、オーストリアに関して中立協定が結ばれ、それは何十年にもわたって維持されてきた。プーチンがそのような中立協定に違反したであろうという当然の結論にはいったいどのようにして到達したのだろうか?人類にとって壊滅的な結果をもたらしかねないこの戦争を回避するための努力はまったく成されなかったように私には思える。

もしもウラジーミル・プーチンが存在してはいなかったとしたら、(アイゼンハワー大統領が別れの挨拶で彼らをそう名付け、警告したように)米国の軍産複合体は、年間7500億ドルもの国防予算の大部分を維持するためには、プーチンを発明しなければならなかったであろう。数多くのアナリストは米国の政策が最終的にウクライナでの戦争につながることを理解し、何年にもわたって警告をしてきた。われわれの国家や他の国々を運営している連中は彼らの市民については誰も何とも思ってはいない。ましてや、彼らは彼らの政策によって破壊してしまった国についてはなおさらのことである(最近のアフガニスタンでの大失敗が示しているように)。人々はいったい何時になったらこの恐ろしい現実から目を覚ますのか私は疑問に思っている。だが、そんなことは決して起こらないように思え、これはプロパガンダの威力を純粋に示す証であると言えよう。

米国またはNATOはウクライナでの戦争をどのように終結させることができるのかについて計画を持っているのだろうか?ウクライナの勇敢な連中にはアフガニスタン人が1980年代にしたように持ちこたえ、ロシア軍を出血させるだろうという漠然とした想定が成されているようだ。これは極めて非現実的であり、いずれにしても、数ヶ月前の米国の混沌とした撤退に続いて、現在、アフガニスタンは大規模な人道危機の真っ只中にある。アフガニスタンにとっては物事はうまく進展しなかった。いざという時には米軍が彼らの援助に駆け付けるという保証に基づいて、リンゼイ・グラハムのような連中はウクライナ人にロシアに対して厳しい姿勢をとるように長い間奨励してきたが、そのような軍事紛争をどのように解決できるのかについての計画は何も提供してはいない。窮地に立たされたプーチンが戦術核兵器を使用した場合、NATOはどのように反応するのだろうか?ミュンヘン安全保障会議でのハリス副大統領の声明には一貫性がなかった。賢明な人たちはこの種のその場凌ぎの政策が10億人もの死をもたらす可能性があることを考える必要がある。

私の投稿はアフガニスタンやイラク、リビア、シリアでの米国の戦争(および代理戦争)に疑問を呈する人たちに対して何時ものように向けられる無意味な批判に遭遇した。

一年以上を経て、この紛争における米国の政策に関する私の懸念はことごとく現実のものとなり、以前よりも強化された。ジョーダン・ピーターソンがユタ州上院議員マイク・リーとの会話(昨日の公開)で指摘しているように、米国政府はこの戦争に勝つ方法については何の概念も持ってはいない。インタビュー全体を見ることを強くお勧めしたい。

Photo-1

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これで、全文の仮訳が終了した。

ジョージ・ケナンの洞察は素晴らしい。残念なことには、このような彼の長期的な見通しは大多数の政治家に支持されることはなかった。彼らは多くが極めて短期的な目標に囚われているからだ。

ロシア・ウクライナ戦争を巧妙に引き起こした米国はこの戦争についての出口戦略を持ってはいないと著者は述べている。米国、あるいは、NATOは夢遊病者のように歩き回っているだけだと言う。この戦争は米国の軍産複合体に金を落とすことが主な目的であったのだから、このような結果を招いたのは当然の結末ではないかとさえ思える。

軍産複合体に金を落とすには軍需品を世界的な規模で新たに調達させる状況を作り出さなければならない。つまり、武力抗争を引き起こし、手持ちの戦車や弾薬、ミサイルを消耗させ、新たな調達に導かねばならないのである。EUもこの短期的な目標に賛同した。平和な世界が続いていては軍事産業の利益目標を達成することはできないし、金儲けの野心は膨らむ。米国に対する敵国が存在しなければ、敵国を作り出し、プロパガンダマシーンを駆使し、その敵国がいかに悪党であるかについて喧伝しなければならない。こうして、一般庶民に対する洗脳作戦が展開される。ネオコンのシナリオを持ち出すまでもなく、イラクが好例であった。イランもそうだ。シリアもだ。そして、ロシアや中国もまったく同様だ。

そんな国際政治環境の中で、アラブの春の余波を受けて、2015年以降イエメンでは代理戦争が行われてきた。そんな戦争遂行者であるサウジアラビアとイランとの国交が再開されることになった。これを仲介した中国の影響力は無視できない程に大きい。中国は中東における同国の存在感をはっきりと見せつけた。それに引き換え、この中国の動きによって、米国は中東諸国にとってはもはや同地域に居ても居なくても、どうでもいいという新しい現状認識が現出している。西側諸国が夢遊病者のように歩き回っているウクライナの舞台においてもこのような和平の動きが一日でも早くやって来て欲しいものだ!何と言っても、戦争で最も大きな損害を被るのは常に一般庶民であるからだ。イエメンでは200万人もの国内避難民が発生している。ウクライナを逃れ、ヨーロッパ諸国へ流れ込んだ避難民は何百万人にも達した。

参照:

1"Sleepwalking Virtuously Toward the Abyss": By John Leake, PETER A. CCULLOUGH, MD, MPH™, Apr/07/2023




2023年4月12日水曜日

世界のほとんどの国がウクライナを支援?それには程遠い

 

ウクライナ・ロシア戦争はどこまで続くのか?何時かは終わるのだろうが、果たしてどちらが勝つのだろうか?

皆がこういった問い掛けをするが、誰も確かな答えを出すことはできない。見方は二つに分かれる。尋ねた相手次第である。「多分、ウクライナが勝つ」あるいは「恐らくは、ロシアが勝つ」という言葉が跳ね返って来る。これが現状である。確信はないが、希望的観測ならば誰でもが答えられる。

ここに、「世界のほとんどの国がウクライナを支援?それには程遠い」と題された記事がある(注1)。約1か月半前の記事であるのだが、この記事は今も十分に賞味期限内である。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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ベアボック独外相やバイデン米大統領といった高貴な人たちの声明の背後には平和主義活動家や経済制裁の反対者、ウクライナの筋金入りの政敵が住む広大な国に広がっている。ウクライナとの連帯は侵食されているのであろうか?

昨日(223日)の夕刻、ニューヨークでは 国連総会においてロシア軍の撤退が大多数によって議決された。193議席の内で141カ国が賛成票を投じたのである。われわれ(訳注:ドイツ)の外務大臣は感情的なスピーチを行って、自由のために戦っているウクライナへの支援を呼びかけた。「今日ここにいるわれわれ一人一人にはこの和平計画に貢献する絶好の機会に恵まれている。それは侵略者に対して侵略を止めなければならないと主張することによってだ。」

ほんの数日前、ジョー・バイデンは個人的には危険な仕事のために電車でキエフを訪れ、ゼレンスキー大統領に連帯を保証した。「彼らはわれわれに自由が貴重であることを思い出させる。大統領、われわれは必要な限りあなたと一緒だよ。」

だが、不都合な真実は次のような状況だ。つまり、ウクライナとその戦争を遂行する大統領は今や孤独になっているという点だ。

EU委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長はロシアに対する新たな制裁政策を提示した時、「われわれは皆でロシアの封じ込めを強化する」と好戦的であった。

言葉は世界を変えることができるとよく言われる。しかし、言葉は現代の証人が言葉の背後にある権力関係を見通すことを困難にする煙幕を形成する可能性をも持っている。したがって、ロシアの侵略の記念日に当たる今日、願いや現実は言葉の霧の中で見えにくくなる。「初めに言葉があり、最後に文章があった」と、かつて、ポーランドの詩人スタニスワフ・イェルジー・レックは言った。

不愉快な真実とは次のような状況だ。つまり、ウクライナとその戦争を遂行する大統領の周辺では物事が孤独になって来ている。ベアボック、バイデンなどの高貴な連中の声明の背後においては、平和主義活動家や対ロ経済制裁に反対する勢力、筋金入りのウクライナの政敵たちが住む広大な国が広がっている。しかも、この展開をウクライナにとって極めて危険なものにするこれらみっつのグループはすべてがこの世界の民主主義国家で自由気ままに過ごしている。

1. 利益への貪欲さ

制裁品をも含めて、経済的な理由からロシアで調達する国家や企業はまだまだ存在する。

石油禁輸後でさえも、ポーランドはロシアの石油を購入し続けている。2月初旬、ポーランドは輸入石油の10%(月間20,000トン)をロシアから調達し続けていることを国有資産省のマチェイ・マウェツキ長官が認めた。ロシアのガス生産者「タトネフチ」との契約は終了させることはできなかったのだ。終了させたならば、補償金の支払いが発生するのである。特定分野に応じた連帯。

Photo-2:「ヨーロッパは買い続けている。」パイオニアから 

インターネットで情報を漁るためのヒントMore money for war - Russia Exports 2022: How gas and oil revenues increased

パイプライン:ヨーロッパは引き続き購入

EUによる天然ガス禁輸はまだ実現してはいない。ノルドストリーム 1 2 を経由する天然ガスの輸出はできなくなったが、ロシアは別のルートでガスを供給している。 「トランスガス」と「トルコストリーム」の両パイプラインは依然として活発に稼働しており、ロシアは液化天然ガスにも積極的に取り組んでいる。現在、EU は週に約 5 億立方メートルのパイプライン 経由の天然ガスと、月に 1,500 立方メートル(訳注:原文通りではあるが、これは15億立方メートルの間違いではないか?つまり、「百万」が脱落しているようだ)の 液化天然ガスを輸入している。 価格情報サービスのICSによると、フランス、スペイン、ベルギーが上位にランクされている。

Photo-3:ノルドストリーム2パイプラインの敷設

 セメントやキャビア、金、プラスチック、木材、等のロシアからの制裁品目は、ドイツ向けを含めて、引き続き配送されている。ドイツのロベルト・ハーベック経済相は現行の経済制裁は国家や企業によって活用されている多くの抜け穴を提供していることを初めて認めた。「これらの抜け穴を通じて経済制裁が迂回されていることは明白である」と。

Photo-4:「ヨーロッパはロシア産天然ガスを買っている。」パイオニアから

ヨーロッパはロシア産天然ガスを購入:

世界で最大の民主主義国家であるインドは欧米の拘束によって放出された大量のロシア産原油と天然ガスを安く輸入する絶好の機会を掴んだことから、インドは典型的な受益者となっている。ポーランドとは異なり、インドはウクライナ戦争を明確に非難することさえも決心することはできない。同国はこの紛争を利用しようとしているのだ。

2. 平和主義志向

世界中で平和主義的なムードが広がり、これは表面上は戦争を迅速に、かつ、非暴力的に終結することを促進するものではあるが、ウクライナの降伏や自由の欠如を促進している。

Photo-5:「ドイツ:意見の相違。」パイオニアから

         西側諸国はウクライナを軍事的に保護する必要があるか・・・

         強力な支援を:32

         今すぐ支援を続行:40

         控えめな支援:23

         分からない:5

サーラ・ワーゲンクネヒトとアリス・シュヴァルツァーによって始められた平和宣言はアンティエ・フォルマーやマルゴット・ケスマンのような人々だけではなく、ペーター・ガウヴァイラーのような保守的な政治家さえをも含めて一堂に集合させている。これらの人たちはウクライナにこれ以上の武器を供給したくはないので、ロシアの侵略に対してはウクライナを無防備のままにする。つまり、「われわれはドイツ首相に武器の供給をさらに展開することは止めるよう呼びかけたい」と言う。

3. 政治上の反対者たち

このグループはウクライナの主要なスポンサーであるワシントン政府を攻撃し、特に米国で活動していることから、ウクライナにとっては最も危険な存在である。

ドナルド・トランプの保守陣営における挑戦者であるフロリダ州知事のロン・デサンティスはジョー・バイデン政権が行っている軍事援助には明確に反対している。「受取人が指定されてはいない小切手であるからという理由だけでは、それを認めるわけにはいかない」と。

「彼は世界の反対側の国の国境を非常に心配しているが、国内ではわれわれの国家の国境を確保するために彼は何もしなかったと私や数多くの米国人は考える。」

Photo-6: 「共和党:ウクライナへの援助はこれ以上はない。」パイオニアから

         米国のウクライナ支援は・・・

         大量に行われている:40

         もっと支援を行え:24

         十分ではない:17

         何とも言えない:19

ドナルド・トランプはこの列車に乗り遅れたくはない。この列車は高速でワシントン政府との正面衝突のコースを進んでいる。彼の選挙運動への資金提供の呼び掛けにおいて、彼はゼレンスキー政府へのさらなる軍事支援に関しては激しい反対者としての自分を立場を表明している。

彼は、「インフレが米国市民に厳しい打撃を与えている経済状態の中で、バイデンはウクライナの年金生活者に資金提供をするために米国の納税者のお金をキエフに送り込んでいる」と書いた。

「彼はわれわれの納税者のお金を海外に送るのが大好きだ。こうして、外国で他国の人々の国境を確保することができるのである。」彼の結論:「バイデンは自国民よりも、むしろ他国の人々を優先している。」

それは単に正義のためというのではなく、利益のためだ:

結論:ウクライナに対する米国民の支持は侵食されている。米国の支持者たちはこれまで十分には行っていなかった物事を今行わなければならない。つまり、彼ら自身と彼らの動機について説明しなければならないのである。米政府は納税者のためだけではなく、軍関係者に対してもウクライナで行っている投資や取るべきリスクに関しても説明する責任がある。

このような説得が成されないならば、ウクライナ戦争は、ベトナム戦争と同じように、この戦争に資金を提供している西側の国々において支援の欠如に見舞われ、失敗に終わる可能性がある。

ウクライナ人の自由のための闘争は自明であるという信念は子供じみている。それは単に正義のためと言うのではなく、利益のためなのである。西洋は超自然的な場所であるというわけではない。ポーランドの詩人スタニスワフ・イェルジー・レックをもう一度引用すると、「地上で天国を求める連中は誰もが地理の授業では眠っていた」。

著者のプロフィール:

ガボール・スタインガルトはドイツで最も有名なジャーナリストの一人。彼はニュースレターとして「パイオニア・ブリーフィング」を発行している。同名のポッドキャストは政治やビジネスに関してドイツにおいて毎日アクセスができる主要なポッドキャストである。20205月以降、スタインガルトは「パイオニア・ワン」号の船上で編集スタッフと一緒に働いている。「メディア・パイオニア」を設立する以前は、いくつもの責務を果たした中で、ハンデルスブラット・メディア・グループ(訳注:ハンデルスブラット紙はドイツにおいては最大の経済紙)の取締役会会長を務めた。彼の無料ニュースレターの購読がこちらで可能。

インターネットで情報を漁るためのヒント: Geo-politics - Sovereign state? How China and the majority of countries stand by Taiwan

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これで全文の仮訳が終了した。

ドイツで著名なジャーナリストのひとりとして知られている著者は事実を示すデータに基づいてロシア・ウクライナ戦争の将来を見極めようとしている。彼の結論はウクライナを支持してきた西側の意欲が今や侵食されつつあるという点を指摘。この指摘は他の識者たちの意見ともよく一致している。

つい最近(410日)、前回のブログへの投稿のコメント欄へ下記のような捕捉情報を追記したが、改めてここでも掲載しておこうと思う。その内容との関連で言えば、ドイツの著名なジャーナリストであるガボール・スタインガルトがこの引用記事で指摘した内容は極めて重要であると言えるようだ。いずれは、時が判断してくれることであろう:

バフムートが陥落?
ロシア・ウクライナ戦争に関する48日のインタビュー(UGETube)で、元米海兵隊の諜報専門家であり、現在はロシア・ウクライナ戦争に関して常に事実に基づいた情報発信を続けてきたスコット・リッターはバフムートでは8万人のウクライナ兵が排除されたと述べた。バフムートの戦いは多くの専門家がこの戦争の帰趨を決めることになるであろうと言っていた。もしもバフムートが実質的にロシア軍の手に陥落したとするならば、次の展開は何か?停戦へと繋がるのだろうか?

バフムートが実際に陥落したのかどうかは別にしても、少なくとも、西側がロシアに課した経済制裁は効いてはいないことが明白である。たとえば、「Russia Exports 2022: How Gas and Oil Revenues Increased」(By Oliver Völkl, Mar/01/2023)と題された記事の要点を抜粋すると、次のような具合だ:

モスクワ政府の統計によると、ロシアの天然ガスと石油の販売からの収入は、西側の経済制裁にもかかわらず、前年比でほぼ3分の1増加した。

インタファクス通信によると、予算に対応する2022年度の収入は前年と比較して28%または2.5兆ルーブル(2022年末には約316億ユーロ)増加したと、ロシアのアレクサンドル・ノバク副首相が2023116日に述べた。

ロシアのウクライナに対する侵略戦争の過程において、バルト海のノルドストリーム1パイプラインを介してはヨーロッパに対するガスは何ヶ月も汲み上げられておらず、ノルドストリーム2パイプラインは稼働したことさえもない。両パイプラインはともに破壊句作された。

このような背景から、従来の天然ガスの輸出は減少しているとノバク氏は述べた。その一方、液化天然ガスの輸出は8%増の460億立方メートルとなった。

原油の輸出は7%増加した。

202325日以降、ロシアからの石油製品は欧州連合に輸入されなくなった。この輸入制限は、ロシアのウクライナ侵略戦争のために27の加盟国が昨年6月に採択した制裁規則に基づいている。これは決定の直後に発効していたが、石油製品の禁輸には長い移行期間を必要とした。

ロシア原油のEUへの輸入は昨年12月から大部分が禁止となった。石油製品の禁輸措置の唯一の例外はクロアチア。

将来、ロシアに石油製品を市場価格以下で他の国の顧客に販売することを強制することを目的とした規制もあり得る。ディーゼルなどの製品では1バレル(159リッター)あたり100米ドル(約92ユーロ)の価格上限を規定し、灯油などの高品質ではない石油製品の場合はバレルあたり45ドル(約41ユーロ)となる。

比較のために言うと、国際商品取引所ではヨーロッパに配達されるディーゼル油は、最近、バレル当たりで約100から120ユーロに相当する価格で取引されている。

どちらの措置もロシアの貿易の利益を抑制し、そうすることによってロシアの戦争能力を制限することを目的としている。

かねてから予測されていた通りに、西側の経済制裁はロシア側には何の痛痒さえをも与えてはいないようだ。ロシア産の天然ガスや原油の輸出によってロシアは2022年に前年比で28%増の収益を実現したのである。西側による調達は減少したが、インドや中国を代表とする非米諸国はロシア産天然ガスや原油を変え支えた。さらには、西側ではエネルギー危機が顕著となって、国際市場価格が高めに推移したこともロシア側には有利に働いた。

他には、半導体の対ロ禁輸がある。ロシアでは家電製品から半導体を取り出して軍需用に振り向けていると報じられた。西側による半導体の禁輸はロシアにとってはかなりの痛手になっているのかも知れない。

参照:

1Almost the whole world is behind Ukraine? Far from it: By Gabor Steingart, Focus online, Feb/25/2023