2019年4月21日日曜日

もしもウィキリークスを失うならば、われわれはすべての自由を失う - ピルジャー

ロンドンのエクアドル大使館にて7年間も籠城して来たジュリアン・アサンジがついにロンドン警視庁によって逮捕された。この出来事を受けて、海外特派員、調査報道ジャーナリスト、あるいは、記録映画製作者として素晴らしい活躍をして来たジョン・ピルジャーがこの逮捕劇について強烈な批判を行っている。彼は「もしもウィキリークスを失うならば、われわれはすべての自由を失う」と言った(注1)。もちろん、ピルジャー以外にも数多くの識者が批判を寄せている。

ウィキリークスの創始者であるジュリアン・アサンジは何年間もロンドンにあるエクアドル大使館で亡命生活を余儀なくされてきた。アサンジは自分が置かれている状況は「恣意的な拘禁」であるとして国連に訴えていた。国連の人権に関する高等弁務官事務所の「恣意的拘禁に関する作業部会」はアサンジの主張を認める判断を下した。これは2015年の12月のことであった。そして、同作業部会は2016122日に英国とスウェーデンにその意見書を送付した。この作業部会はスウェーデンと英国に対してアサンジ氏の安全と健康を確実にするために彼が置かれている現状を吟味し、彼が自由に行動する権利を行使できるようにし、国際法によって保証されている拘禁時の人権を彼が十分に享受できるようにすることを求めた。また、同作業部会はアサンジの拘禁は終息させるべきであり、彼には補償の権利を与えるべきだとの意見を表明した。

あの時点からもう3年余りが経過した。

国連の国際法に詳しい専門家パネルが上記のような意見を表明していたにもかかわらず、米国に追従する英国とスウェーデンは意に介さなかった。西側の大国は「民主主義」と並んで「法の秩序」が重要な規範であると他国に対して説くのが常であるのだが、自国の行動については都合よく忘れてしまう。今日の国際政治が持つ偽善性が、またもや、恥も外聞もなく一般大衆の眼前で繰り広げられている。

本日はこの記事(注1)を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>


Photo-1: 2019412日、ベルリンの英国大使館の近くでジュリアン・アサンジの逮捕に抗議をするアサンジの支持者たち。©REUTERS / Fabrizio Bensch

·        米国によって押し進められているウィキリークスの創始者であるジュリアン・アサンジの訴追は一般大衆の自由に対する悪意に満ちた攻撃であり、これは米国の優位性を何とか維持しようとする老いた大国によって行われているものだ、と英国に本拠を置いて活動するジョン・ピルジャーがRTに語った。 

誰もがアサンジに起ころうとしていることを勘違いしてはならない。彼はワシントン政府が中東で行って来た残虐行為を一般大衆に暴露したことによって米政府に恥をかかせたのだ、と華々しい受賞歴を持ち、英国を拠点にして活躍するジャーナリスト、ジョン・ピルジャーがRTの「Going Underground」の番組で述べている。

「米国はわれわれに深い憤りをもたらした。われわれが今真っ只中に置かれている状況は、こともあろうに、その優位性を維持するために四苦八苦している、世界でももっとも強力な筈の大国によってもたらされたからだ。情報における優位性、最新技術における優位性、文化における優位性、等。これに対してウィキリークスは極めて手厳しいハードルを提示した」と、彼は主張する。

もしもアサンジを失うならば・・・ ところで、アサンジのような人物は多くはいない。多分、片手で数えられる程度であって、誰も彼には匹敵しない。もしもウィキリークスを失うならば、われわれは自由のすべてを失うことになるだろう。そうなったら、われわれは(政府の行動について)疑問を挟むことは止めざるを得ない。

エクアドル政府がアサンジの政治亡命を取り消し、英国警察がアサンジをロンドンのエクアドル大使館から引っ張り出すことを許容したことから、アサンジは木曜日(411日)に英官憲によって逮捕された。ウィキリークスの情報源となったチェルシー・マニングがイラクやアフガニスタンにおける米軍に関する機密情報をリークした際に彼女と共謀したとして米国はアサンジを非難している。

マニングのリークに基づいて成されたウィキリークスによる出版、特に、「巻き添え殺人」と称される動画は「米国の植民地戦争が有する虐殺的な性格」を隠蔽しようとする試みにとっては大打撃となった、とピルジャーは言う。(訳注:「巻き添え殺人」と称される動画はYouTubeにて「Collateral Murder - Wikileaks - Iraq」という表題で掲載されている。https://youtu.be/5rXPrfnU3G0 引き金を引きたがっている米兵の言葉が実に衝撃的だ。人を殺すことに躍起となっているかのようだ。しかも、相手は民間人である。ピルジャーは、下記に示すように、「米国の戦争がどのようなものであるかについてはすべてがあの動画で示されている」と言っているが、この動画を見るとその意味がよく分かる。興味のある方はご一覧ください。)

「米国の戦争がどのようなものであるかについてはすべてがあの動画で示されていたので、あの動画を見た人は誰でもがウィキリークスの暴露以外にはもう何も読む必要はないだろう。ところが、(米国には)われわれはこんなことはしない、われわれは永遠に無害な存在だというある種の合意のようなものが存在する。率直に言って、私は「洗脳」という言葉に代わるもっと優しい言葉を見つけようとしているのだが・・・」と、彼は説明した。

「われわれ」の側では、単純に言って、こんなことは起こらない・・・ 専制主義国家やならず者国家で起こるだけだ。中でも、米国が最大のならず者国家であることは明らかだ。

ウィキリークスに対する攻撃は西側の、あるいは、ジャーナリズムの現状を象徴するものだとピルジャーは言う。西側のジャーナリズムは公衆に代わって政府を監視するという役目を持っているが、それを放棄してしまったのだ。

われわれは全世界が基本的な民主主義を放棄することを手助けしてしまった。意見の相違を主張し、挑戦をすることによって、暴露することによって、説明責任を果たす権力を保持することによって、あるいは権力層に羞恥を感じさせることによってだ。些細な羞恥や奇妙なセレブの羞恥ではなく、これはまさに本物の羞恥だ。ウィキリークスはジャーナリズムが果たさなければならない公衆に対するサービスを提供したのだと彼は述べた


ピルジャーは次のように言った。アサンジは「政治の気まぐれ」によって逮捕され、彼は米国で起訴され、刑務所へぶち込まれる可能性がある。第二次世界大戦から生まれ、世界人権宣言の基礎となった根本原理そのものを衰退させる新たな章が始まっているのかも知れない。これはこれらの根本原理が如何に脆弱であるかを示すものだ。」  

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

「ウィキリークスはジャーナリズムが果たさなければならない公衆に対するサービスを提供したのだ」とピルジャーは指摘している。ジャーナリストとしてやるべきことをやって、アサンジは罪に問われているのである。これ以上の皮肉があるだろうか?

民主国家であると自他ともに認められている国の市民が「政治の気まぐれ」によって何年間も拘禁状態に置かれ、その挙句に逮捕されるとしたら、その国の市民にとってはこれ程大きな不幸はない。一国の政治において軍部が発言力を増すと、文民政治家を圧迫し始める。かっての日本はこのような事態を経験した。今の米国では、軍産複合体とそれを後押しする大手メデイアが国内政策や対外政策をブルドーザの如く押しまくっている。国際法なんて存在しないかのような振る舞いだ。法の支配はいったい何処へ行ってしまったのであろうか?言葉の定義からすれば、もはやそのような国は民主国家とは言えない。

テキサス州選出の共和党のロン・ポール元下院議員は、私の個人的な考えでは、米国の政治家の中ではもっともまともな政治家のひとりである。つまり、われわれ一般庶民の常識や倫理観、あるいは、伝統的な価値観にもっとも近い。彼はジュリアン・アサンジの逮捕について次のように述べている(注2)。

ウィキリークスの出版者であるジュリアン・アサンジが先週英国の官憲によって逮捕された。この英国の行動は米国からの強制送還の要請に基づくものだ。この一連の動きはわれわれすべてに対する攻撃であるとも言える。これは米国憲法に対する攻撃である。これは出版の自由に対する攻撃である。これは言論の自由に対する攻撃である。これはわれわれの政府がわれわれの名前を借りてわれわれが収めた税金を何のために使っているのかをわれわれが知ろうとする権利に対する攻撃でもある。ジュリアン・アサンジはハンガリーのミンドセンティ枢機卿または南アのネルソン・マンデラがそうであったようにあらゆる点で政治犯であると言える。

二人の著名な言論人や政治家の言を総合すると、アサンジはまさに「政治の気まぐれ」に翻弄されているということだ。われわれはこの点を明確に認識しておかなければならない。




参照:

1If we lose WikiLeaks, we lose a whole stratum of freedom – Pilger: By RT, Apr/13/2019, https://on.rt.com/9s60

2Julian Assange: Political Prisoner: By Ron Paul, Information Clearing House, Apr/16/2019








2019年4月15日月曜日

危険なプラスチックがわれわれの世代だけではなく次世代にも脅威を与える

プラスチックによる大洋の汚染が急速に進んでいる。そして、大洋だけではなく、河川や湖もまた同様である。

昨年10月の報道によると、ミクロン単位の微小なプラスチックの破片はすでに人の体内に到達していることが確認されている(注1)。その報告は次のような内容だ。

【ウィーン発、20181023日】 ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)、その他のプラスチックがマイクロプラスチックの形で人の食物の中に観察されている。これらのプラスチックは人の便の中に確認されたとウィーンで開催された「第26回欧州消化器病週間」(26th UEG Week)で研究結果が発表された。

ウィーン医科大学およびオーストリア環境局からの研究者らは世界各国からの参加者から成るグループについて調査を行った。これらの人たちはフィンランド、イタリア、日本、オランダ、ポーランド、英国およびオーストリアからの参加だ。その結果、便のサンプルは何れもがマイクロプラスチックを含んでおり、もっとも多く含むサンプルは9種類ものプラスチックを含んでいた。

大きなプラスチック材料から風化作用や品質の劣化、摩耗、破れ、等によって非意図的に小片が生成される。これらの破片も含めて、マイクロプラスチックとは大きさが5ミリ以下のプラスチックの小片を指す。本来、これらのプラスチックはさまざまな具体的な用途に用いられて来た。マイクロプラスチックは消化管を介して人の健康に影響を与える。つまり、消化管内で生物濃縮され、有毒な化学物質や病原性物質が移入されるので、消化管の許容性や免疫反応に影響を与えかねない。

この予備研究の実施に当たっては世界中から8人の参加者を募った。各参加者は、便のサンプルの採取に先立つ一週間、摂取した食物について毎日記録した。これらの日誌が示すところによれば、参加者は全員がプラスチックで包装された食品を食べ、プラスチック容器に入った飲み物を飲むことによってプラスチックに暴露されたことが明白であった。参加者たちは全員が菜食主義者ではなく、彼らの内で6人は海洋産の魚を消費した。

便のサンプルはオーストリア環境局が新たに開発された分析手法を用いて10種類のプラスチックに関して試験を行った。その結果、9種類のプラスチックが確認され、プラスチック片の大きさは50ミクロンから500ミクロンであった。もっとも頻繁に観察されたのはPPPETである。平均的に言うと、10グラムの便に20個ものマイクロプラスチック片が確認された。

これらの研究者たちを指導するフィリップ・シュワブル博士は第26回欧州消化器病週間で発表し、次のようにコメントした。「これはこの種の研究分野では初めての試みであって、長い間そうではないかと疑って来たことを確認することが可能となった。特に懸念されることはわれわれにとってこれがいったい何を意味するのかという点である。特に、消化器病の患者にとってはいったい何を意味するのかだ。動物の研究によるとプラスチックの濃度がもっとも高いのは消化管であり、もっとも微小なマイクロプラスチックは血流やリンパ液系に入り込み、肝臓に達する可能性がある。マイクロプラスチックが人の体内で発見されたという最初の証拠を手にした今、人の健康にとってこれがいったい何を意味するのかについて詳細に研究する必要がある。」

世界中で行われているプラスチックの製造は1950年代から急増し、今も毎年増え続けている。プラスチックにはさまざまな実用的な特性が与えられ、プラスチックは日常生活の中に広がり、人々はさまざまな形でプラスチックに暴露されている。推算によると、製造されたプラスチックの25パーセントは汚染源となって、最終的に海に到達する。大洋に達したプラスチックは海洋の動物によって消費され、食物連鎖に組み込まれる。そして、最終的に人によって消費される。たとえば、マグロやイセエビ、エビでは著しい量のマイクロプラスチックが検知されている。さらに先へ行くと、食品を加工するさまざまな過程で包装が施される結果、これらの食品はさらにプラスチックで汚染される。

上記の報道によって、プラスチックによる汚染はこれほどまでに深刻なのかと今さらながら思い知らされる。海岸に押し寄せる汚染物の写真は大きなプラスチックごみの実態を具体的に伝えてくれるが、マイクロプラスチックについては容易に見落としてしまう。要注意である。

ここに、「危険なプラスチックがわれわれの世代だけではなく次世代にも脅威を与える」と題された最新の記事がある(注2)。

本日はこの記事(注2)を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>

Photo-1


誰もが毎日何を食べるのかを決める。ある時は緑黄色野菜や果物を選択し、また、ある時にはベーコンの香りが無性に欲しくなる。結局は、誰もが自分の健康を管理しようとする。いったい何が注目に値するのかと言うと、それは今日食べた何かが将来生まれてくる子孫、つまり、子供や孫、ひ孫に至るまで影響を与えるかも知れないという懸念だ。新たな研究によると、ある種の特定の化学物質は世代を超えてわれわれに影響を及ぼす。われわれが今回心配する対象はベイコンではなく、プラスチックについてであり、プラスチックに含まれる毒物についてである。 

20年前、ワシントン州立大学の研究者らが今やすっかり悪者と化したビスフェノールABPA)がプラスチック製の籠から溶出し、その中で飼育されているマイスに害を与えていることを偶然にも発見した。この汚染はマイスの卵に異常を引き起こし、繁殖に影響を与えることが判明した。その後、数多くの研究が実施され、BPAへの暴露は、サルや魚類ならびに人間を含めて、横断的に数多くの生物種の繁殖や健康に影響を与えることが分かった。ラットでは精子の減少をもたらし、女性には乳癌を引き起こすことが明らかとなり、2012年に乳児用のボトルや蓋付きカップにおけるBPAの使用はFDAによって禁止された。しかしながら、BPAは数多くの製品で依然として用いられている。たとえば、缶詰の内表面のコーティングに用いられるエポキシ樹脂。2,517人を対象にして2004年に実施された研究によると、93パーセントもの人たちの尿が検出可能な量のBPA代謝物質を含んでいた。

BPAの毒性が判明してから、それに代わって使用する何種類かの代替ビスフェノールが化学会社によって市場に供給され、それらが今広く用いられている。BPAの毒性が発見された時点から20年後、上述のワシントン州立大学の研究室が、またもや、マウスに何か不思議なことが起こっていることに気付いた。マウスは籠の中で飼育されるが、今回はその籠は代替ビスフェノールで製造されたものであって、BPAに関してはより安全であると広く受け止められていた。その後、研究者らは、BPAも含めて、代替用として広く使用されている代替ビスフェノールについて数種類を選び出して、比較研究を行った。

その結果、新しいビスフェノールはBPAと同様な挙動を示し、健康問題を引き起こすことが判明した。雄についても、雌についても有害な影響をもたらすのである。これらの研究結果は2018年の9月に「Cell Biology誌で発表された。科学者のセイラ―・ハントは次のように説明している。「本稿はわれわれの研究室で起こった、不思議ではあるが既に見たことがある出来事についての報告だ。」 かってBPAについて発見されたことがそのままこれらの代替物質でも起こることが確認されたのである。恐らく、もっとも心配を呼ぶ側面は毒性物質が長期間にわたって影響を及ぼすという点であろう。たとえ全種類のビスフェノールを今日奇跡的に排除することができたとしても、依然として、すでに暴露された人の生殖細胞系を介して将来の3世代にわたってこの毒性は継続する。これは今日体内に取り込まれたビスフェノールはひ孫の世代の生殖能力にさえも影響を与えるということを意味する。

このビスフェノールのケースはFDAによる禁止は必ずしも根本的な問題解決にはならないことを示している。化学会社は禁止された化学品と同様な代替化学品を市場に送り出すことが多い。何故かと言うと、この手法は市場へ少しでも早く製品を送り出すにはもっとも容易な近道であるからだ。しかし、化学品を市場に送り出す前にもっと多くの試験を実施する必要がある。数世代にまたがって引き起こされる不妊症や癌のリスクといった長期間に及ぶ影響は、多くの場合、臨床試験ではそう簡単に見極めることはできず、上市の前に環境影響を徹底的に検証することはほとんど不可能である。

また、ワシントン州立大学の研究では、損傷を受けた籠からはより多くの毒性物質が放出されたことから、損傷を受けた、あるいは、加熱されたプラスチックはより以上に有害であることが分かった。この情報は家族のためにプラスチック製の容器に食品を入れてマイクロウェーブで加熱する人たちに対する警告として提供するべきであろう。さらには、捨てられたプラスチック製ボトルは大洋や河川で劣化し、元へ戻すことはできない不妊症を引き起こすことを念頭に置かなければならない。

大洋に廃棄されたプラスチックの量を推算すると、約1億5千万トンとなる。スタンフォード大学の「Center for Ocean Solutions」にて共同ディレクターを務めるジム・リープによると、2050年までにその量は「魚類の全重量」を上回るであろうと言う。最近の研究はマイクロプラスチックが英国の川や湖のすべてにおいて観察されることを突き止めた。ワシントンDCの環境保護庁からニューヨークのトランプ・グリルに至るまでマイクロプラスチックは何処ででも飲料水中で検出される。五大陸から集めた159個の飲料水サンプルについて実施された調査によると、全サンプルの83パーセントが汚染されていた。プラスチックは至る場所で検出されるのである。地球上でもっとも高い山の頂上から深海や極地に至るまで・・・ 長さが50ナノメートル(訳注:1ナノメートルは1ミクロンの千分の一の長さ)未満のナノプラスチックがプランクトンの体内で発見されている。プランクトンは魚に捕食され、人は魚を食べる。


プラスチックは海洋性哺乳類の生殖機能を損なうことが確認されている。PCBやビスフェノールABPA)を含めて、プラスチックの多くは内分泌をかく乱する。つまり、哺乳類のホルモン系に影響を与えるのだ。「ルル」と名付けられている大人のシャチは、研究者らが最近発見したことによると、あたかも未成年のままであって、子供を産めない。分析の結果、彼女の脂質組織には高レベルのPCBが蓄積されていることが分かった。スコットランド沿岸に生息するシャチの小グループは25年間一頭の子供さえも産んだことがない。

PCB30年前に使用が禁止となったにもかかわらず、毒性物質はシャチの母親のミルクに含有され、母親から子供へと引き継がれる。サイエンス誌に発表された最近の研究によると、シャチの全世界における頭数はPCBの毒性によって数十年内に半減すると予測されている。ヨーロッパではPCBの使用が禁止されたにもかかわらず、PCBの汚染レベルは低下してはいないと研究者らが報告している。これは廃棄物の埋設場所からの漏出によるものであるかも知れないとの指摘がある。ホルモンかく乱物質は雄の蛙の生殖能力を損なうことが分かっており、オタマジャクシは睾丸よりもむしろ卵巣をより頻繁に発達させる。同様の問題が魚においても観察されている。内分泌かく乱作用を有する化学品がもたらす生殖能力のリスクは生物種の種類を超えて広範囲で見られる。ビスフェノールAは精子数を減少せしめ、多くの生物種に癌を引き起こすことが知られている。研究者らが最近発見した事実によると、代替プラスチック(いくつかの例を挙げると、BPS, BPF, BPAF, BPZ, BPP, BHPF、等)がより安全であるというわけではない。これらの汚染物質がすでに人に影響を与えているのかどうかについてはまだ推測の域を出ないが、プラスチックが大量に使用され始めた1960年代以降の統計数値を調べ、時間の経過と共に何らかの趨勢が顕著に現れているかどうかを確認することが賢明であろう。

事実、何かがあったと判断される。特に、2017年の研究によると、1973年から2011年の間にミリリッター当たりの精子数が50パーセント以上も減少し、総精子数は約60パーセントも低下している。他のふたつの研究によると、米国やヨーロッパにおいてはこの2030年間に精子数と運動性が明らかに低下している。

国連環境総会(UNEA)はプラスチック汚染に注意を向けるために法的な拘束について 最近提案した。提案された条約の目的は2025年までに単独目的で使用されるプラスチックの使用を2025年までに段階的に禁止するとしている。ノルウェーも海洋のプラスチック汚染に対処する世界的合意を提案した。悲しいことには、米国はこの提案された条約や廃棄物処理に関する国際計画にもっとも頑固に反論している。

当面、法的な拘束力を伴わない合意が成され、米国は「実質的な低減」という文言を緩め、2030年までとして、今から11年も先に延ばした。トランプ政権の代表はあらゆる目標や実施期限を排除しようとしていると国連への代表のひとりが述べている

ところで、米国は何年にもわたって大量のプラスチックを輸出しており、歴史的には中国向けがほとんどである。前年には70パーセントが中国と香港向けに輸出されたものであるが、2018年に中国はプラスチック廃棄物の輸入を禁じた。この禁輸以降、米国は海外でプラスチックを廃棄するために貧困国家を物色し始めている。 グリーンピースの調査グループによると、2018年の上半期には米国のプラスチック廃棄物の半分がタイとかマレーシア、ベトナムといった発展途上国に向けて送り出された。タイ向けの米国のプラスチック廃棄物の輸出は今年約2,000パーセントも増加した。

発展途上国のほとんどはプラスチック廃棄物を適切にリサイクルするのに十分なインフラ設備を所有しているわけではない。2018年の地球の日に、海洋への不適切なプラスチック投棄が廃棄物のトン数でランク付けされた。トップの中国を先頭にして、インドネシア、フィリピン、ベトナム、スリランカ、タイと続く。フィリピンの一地域がそうであるように、ある場合にはリサイクリングは人手で行われる。大量の廃棄物の中からボトルを拾い上げるのである。この作業は困難であって、時間がかかることから、大量のボトルは海洋や河川へと向かう。驚くには値しないかも知れないが、悲しいことには、フィリピンのパシグ川は約72,000トンものプラスチックを下流に向けて流し、この川は1990年以降「生物学的には死の川」と称されている。これらの国々に対してリサイクリング用インフラの整備について支援を行うのではなく、われわれはより多くの有害な廃棄物を送り届けているのである。

プラスチック廃棄物を海外に輸出することによって難題の解決を先送りすることができると考えるのかも知れないが、プラスチック廃棄物はハワイやカリフォルニアの海岸に打ち上げられる。海岸を散策する人たちは海岸に打ち上げられたプラスチックのゴミの山を目撃することができる。あるいは、死んだクジラの胃からもそれらを発見することだろう。でも、汚染の全貌については誰も気付かないかも知れない。次回食べるツナサンドイッチに含まれているマイクロプラスチックにはまったく気付かないであろう。東海岸では、ある者はニューヨークのトランプ・グリルのコップ一杯の水の中に存在するマイクロプラスチックに遭遇する。結局のところ、世界にはひとつの「流し」しかないのだ。流しの反対側に投棄された有害物質はしばらくの間その用を果たすかも知れないが、時間の経過と共に、やがては自分たちの海岸に打ち上げられる。そして、われわれの中の誰かが癌を発症した時、われわれはその原因を本当に理解することが果たしてできるのであろうか?

われわれと同じ哺乳類であるが、もはや卵を生成することができなくなった「ルル」という名のシャチのことを覚えておくことは極めて教訓的である。もしも精子数が今の割合で減少し続けると、これらのシャチは子供を持つことが非常に難しいレベルに到達する。その時点までには世界中の水の供給源は不可逆的に汚染されてしまい、拘束力のある条約の実践は余りにも遅すぎたという事態を招くことであろう。

法的に拘束力を持った条約を先送りすることはわれわれ人間もその半数の絶滅が避けられないような状況に直面している世界中のシャチが歩んで来た道をそのまま辿ることを意味する。さらには、「ターレクアー」という名前のシャチの悲劇を忘れることはできない。彼女は、昨年の夏、死んだシャチの子供17日間も連れ添っていた。記録的な日数である。実に、1000マイルもの移動距離を喪に服していたのだ。

11年も待つなんて、遅きに失するかも知れない。

著者のプロフィール: ミーナ・ミリアム・ヤストはイリノイ州シカゴに本拠を置く弁護士。ヴァッサル・カレッジおよびケース・ウェスターン・リザーブ大学法学部にて教育を受け、彼女はMigratory Insect Treaty」の草案ならびにコメントをケース・ウェスターン・リザーブの国際法ジャーナル上で発表した。

この記事の原典は「Common Dreams」。
Copyright © Meena Miriam Yust, Common Dreams, 2019

<引用終了>

これで全文の仮訳が終了した。

衝撃的な記事である。

願わくば、読者の皆さんの一人一人が周囲の人たちに向けて本情報を積極的に拡散して欲しいと思う。われわれは無知のまま長い時間を無為に過ごしてしまったようだ。ルルやターレクアーのことを思うと、万全を期す価値は十二分にあると言えるだろう。この間違いを挽回することができるのかどうかは必ずしも分からないが、挽回することが可能だと考えたい。

参照: 

1Microplastics discovered in human stools across the globe in 'first study of its kind': By EUREKA ALART – AAAS (American Association for the Advancement of Science), Oct/22/2018

2Dangerous Plastics Are a Threat to Us and Future Generations - Why a legally binding treaty cannot be postponed: By Meena Miriam Yust, Global Research, Apr/05/2019; Common Dreams, Apr/04/2019



2019年4月9日火曜日

米覇権の衰退と日本の選択

日本を取り巻く国際環境は大きく変わろうとしている。米国の覇権に追従しようとする現状維持だけでは米国の衰退がすでに始まっている国際秩序の変化に日本は対応しきれないだろうと私は思う。

米国社会の衰亡を予言したソルジェニーツィン:

40年前、世界は東西冷戦の真っただ中にあった。米国へ亡命中のソルジェニーツィンはハーバード大学で講演をし、西側における余りにも過剰な個人主義思想は社会の衰亡と退廃を招くだろうと述べた。

最近、マイケル・キンは「ソルジェニーツィンは40年も前に米国の退廃的な崩壊を予言していた」と題して次のような興味深い論考を発表した(注1)。

《米国社会はソルジェニーツィンが言った「終焉の兆候」を今われわれに見せているのだろうか?

彼は「分別を失うほどの優越性」や「勇気の喪失」は「終焉の兆候」であると言い、倫理的規範が必要であり、法的規制だけでは社会にとって十分に有効ではないと言った。


彼曰く、「私は全生涯を共産主義の下で過ごしてきた。客観的な法的規範を持たない社会は実に恐ろしいものであるとお伝えしておこう。しかし、法的規範を有するだけで他の規範を持たない社会は人間のためになるのかと言えば必ずしもそうではない。」

「われわれは人間生活や人間社会に関する基本的な定義を改訂せざるを得ないだろう。しかし、人間ははたして他のすべてを超越する存在なのだろうか?人間が超すことが出来ないような超越的な精神世界があるのではないだろうか?人間生活や社会活動を物的な追及の観点だけから決定してもいいのだろうか?われわれの魂の全体性を犠牲にしてまで物的な追及を行うことは許されるのだろうか?」

彼が発した疑問は当時の米国の知識層の心を揺さぶった。これらの言葉は非常に本質的であって、米国社会の矛盾を軽薄な美辞麗句で覆い隠すことはできなかった。米国では物的追及が国家全体の目標と化し、米国の対外政策は軍事的優位性を直接あるいは間接的に行使し、他国に脅しをかけ、海外の資源、特に、原油や天然ガスをただ同然で入手することを目標としている。米国に都合が良くない国家については、ふんだんな資金を有するNGOを使ってその国でカラー革命を起こし、政権交代を促す。国境の近くで軍事演習を行う。空母艦隊を派遣する。このような手法が衰えることもなく、繰り返されてきた。》

米政府内のふたつの報告書 - 軍事的環境:

「ふたつの報告書によると米国の衰退はさらに進行し、戦争のリスクが高まる」と題された記事がここにある(注2)。その要約を次に示そう。

《ふたつの報告書のひとつは201811月に米議会の諮問委員会によって発行された(注3)。

この報告書は「国内や海外における変化によって米国の軍事的優位性が低下している」ことを認め、この「優位性」の低下は「米国の極めて重要な国益」に脅威をもたらすと指摘している。

地域的な勢力関係に地政学的な変化が加わり、これが「敵国の抑止力あるいは米国の同盟国の自信を弱体化させ、その結果、軍事的紛争が起こる可能性を大きくしている。」 もしも軍事的紛争が起こると、米国は「受け入れ難い程の甚大な人的被害を受け、主要なインフラに大損害を被るであろう。」

さらに、本報告書はこう述べている。「米国は対空防衛や対ミサイル防衛、サイバー空間や宇宙における作戦、対艦や対潜水艦の戦闘能力、地上型長距離砲、電子戦、等の主要な分野で軍事的優位性を失いつつある。」 

「米国の強みは米国の軍事的優位性を支えてきた数多くの主要な先端技術にあったが、それらの優位性は今や低下しつつある。物によってはすでに消滅してしまった。」 

しかし、上記に引用した内容は西側の大手メディアではほとんど報道されなかった。先端技術や戦略的優位性の欠如を認めることは米国に対する脅威の排除を可能とする米国の「全能のイメージ」とはどうしても相容れない。同盟国は米国の「傘」という心地良い思い込みにどっぷりと浸っていたいのである。

米国の軍事費の規模は、今日、米国に続くトップ8ヵ国の合計に匹敵する。この軍事費をさらに増加させるということは、同報告書によると、年金や医療、社会保障、等の予算を削ることを意味する。崩れ落ちそうな橋梁の保全や学校の整備は据え置きとなるだろう。軍事費の増加は米国社会の凋落をさらに加速することになる。

二番目の報告書は米会計検査院によって201812月に発行されたものだ(注4)。この文書は一番目の文書に比べて一般大衆にはほとんど伝えられなかった。

大手メディアが報道したくなかった理由はこの米会計検査院の報告書は、米国にとっては最大の敵国であるロシアや中国に比べて、米国の軍事力がどの分野で見劣りするのかを具体的に報告しているからであろう。

相対的に軍事的弱点が存在することは今に始まったことではない。アンドレイ・マルティアノフは「軍事的優位性の喪失(原題: Losing Military Supremacy)と題した新刊書(2018)でロシア軍の軍事技術がいくつかの重要な分野で米国を上回っていると詳細に報告した。さらに、マルティアノフがロシアに関して述べたことは中国の軍事技術についてもあてはまる。 

マルティアノフが言わんとしたことは201831日にプーチン大統領がロシア議会で行った演説においても劇的に論じられている。米国側の当初の反応はプーチンの主張を無視することであった。しかし、数日後、軍産複合体はプーチンの演説で言及されたロシア軍の兵器の優位性に対抗するための予算処置を要求した。》

(注:プーチン大統領が言及したロシアの新兵器に関しては、2018316日に「芳ちゃんのブログ」に掲載した「ロシアの新兵器が意味すること」と題した拙文をご覧願いたい。いくつかの論点の中でもっとも驚異的なことはこれらのロシアの新兵器は米国の空母軍団を時代遅れで、まったく役に立たない代物に化してしまうだろうという指摘だ。それを示唆する事例をご紹介しておこう。2015年の1014日の記事(メキシコの日刊紙Le Jornada)に注目してみよう。この日刊紙のハリフェ・ラーメ記者はモスクワ在住の政治分析の専門家であるロスティスラフ・イシチェンコの見解を引用して、次のように報じた。「先週、カスピ小艦隊(排水量が949トンのコルベット艦4隻)から発射されたカリブル巡航ミサイルは1,500キロも離れたシリア国内のイスラム過激派の拠点を正確に攻撃した。これはワシントンの度肝を抜いたようだ。今回のロシア艦隊の行動は米国が今まで誇示してきた米海軍の優位性に終わりが来たことを告げた。ロシアが巡航ミサイルを発射した2日後、米空母セオドア・ルーズベルト(満載排水量は104,581トン)は突然ペルシャ湾を後にした。同空母はこの4月からペルシャ湾に配備されていた。多分、これは単なる偶然ではないと思う。」) 

《この米会計検査院の報告書はプーチンの演説が「はったり」ではないことを示した。

米国政府やディープステーツには一般的にある種の思いこみがあって、端的に言って正気の沙汰とは思えないが、ロシアまたは中国との核戦争では米国は「勝ち抜く」ことができるという考え方が支配的である。しかしながら、この米会計検査院の報告は連中のとっぴな思い込みや野心に水をさした。

これらふたつの米国内の報告書は先端技術や軍事面において米国がかって持っていたダントツの優位性が今や失われてしまったことを示している。米国は台頭するふたつの強国、ロシアと中国に取って代わられることを何としてでも防止したいという決意を示しているが、米国の決意が全世界を核兵器の応酬に巻き込むことになるのかどうかは2019年の最も中核的な議論のひとつとなるだろう。》

進行する「脱米ドル」化:

ここに「米ドル離れを選択したトップファイブの国々およびその決断の背景」と題された記事がある(注5)。RTは米ドルに依存することをやめると決断した国々を調べ、そのような決定の背後にある動機を探った。その要約を次に示す。
《中国:米中間で起こっている貿易摩擦は、米国が中国に課した経済制裁と相俟って、世界で二番目に大きな経済を有する中国を米ドルへの依存から脱却する方向へと追いやっている。
北京のお家芸であるソフトパワー・スタイルを保ちながら、中国政府は本件について声を荒げるようなことはしなかった。しかし、中国人民銀行は同国が保有する米財務省証券を定期的に減少させている。その保有量は20175月以降で最低水準に達した。

中国は自国通貨の「ユアン」を国際化させようともしている。ユアンはIMFの通貨バスケットに組み込まれて、米ドル、日本円、ユーロ、英ポンドと並んだ。北京政府はユアンを強化するために最近いくつかの策を講じた。たとえば、金の備蓄を増加、ユアン建ての原油先物市場の開始、国際取引では現地通貨を使用、等。
インド:世界で6番目に大きな経済を持つインドは最大級の商品輸入国のひとつである。同国は地球規模の地政学的紛争から直接の影響を受けやすい。もしも貿易相手国が経済制裁を課されたならば、インドは甚大な影響を被る。

モスクワ政府に対して米国が経済制裁を課したことから、今年の始め、デリー政府はロシア製のS-400対空ミサイルシステムの決済には「ルーブル」を使うことにした。また、米国がイランに再度経済制裁を課したことから、インドはイラン産原油の輸入に当たっては「ルピー」を使用する。昨年12月、インドとアラブ首長国連邦は通貨のスワップ取引に合意し、第三国の通貨を使用せずに貿易や投資を促進することにした。
トルコ:今年の始め、トルコのエルドアン大統領は同国の貿易相手国との間で米ドル以外の通貨を使用するという新政策を採用し、米ドルの独占を終焉させるとの計画を発表した。その後、アンカラ政府は中国やロシアおよびウクライナとの貿易ではそれぞれの自国通貨を使用するよう準備をしている。また、トルコはイランとの決済については米ドルの代わりにそれぞれの自国通貨を使用することを検討している。

これらの動きは政治的な理由からだ。2016年に起こったエルドアン大統領の失脚を狙ったクーデター未遂事件以降、アンカラとワシントンの関係は悪化した。エルドアンはこの反乱に米国が関与したと疑っており、米国に亡命中であるギュレン師をかくまっているとしてワシントン政府を非難。アンカラ政府は彼がこのクーデターを陰で操っていたとして非難した。
イラン:国際通商の場に戻って来たイランは盛大に迎えられたが、お祭り気分は長くは続かなかった。トランプ米大統領は2015年に締結されたイラン合意を破棄。この合意はテヘラン政府と英、米、仏、独、露、中およびEUから成るグループとの間で締結されていたものだ。

イランはワシントンが再開した厳しい経済制裁の攻撃目標となっている。米国は禁輸措置を破った国に対しては如何なる国であっても罰金を課すとして脅しをかけている。厳罰主義によるこの制裁措置はイランとのビジネス関係を禁じ、特に、同国の原油産業とのビジネスについては厳重に取り締まるという。

テヘラン政府は原油輸出の決済には米ドルに代わる代替通貨を模索することとなった。インドへの原油輸出では「ルピー」を使い、イラクとの間では物々交換取引を検討中である。
ロシア:プーチン大統領は「米国は米ドルに対する信頼感を揺るがし、重大な戦略的過ちを引き起こしている」と述べた。彼は米ドルによる決済を制限せよとか、米ドルの使用を禁止せよと指示したことはない。しかし、ロシアのアントン・シルアノフ財務相は、今年の始め、同国は米財務省証券の保有を減らし、ルーブルやユーロ、貴金属といったより安全な資産に移行すると述べた。

2014年以降に導入された米経済制裁によってロシアの負担は大きくなるばかりであり、同国はロシア経済の米ドル離れのためにいくつかの策を採用している。米国がロシアの金融システムを狙い撃ちにする厳しい制裁を新たに発動したことから、ロシアはSWIFTやビザ、マスターカードを代替する支払いシステムを開発した。

当面、ロシアは輸出業務ではその一部で米ドルからの脱却に成功し、中国、インドおよびイランを含む数多くの国々との間で通過スワップ協定を締結している。最近、ロシアはEUとの貿易では米ドルに代わってユーロの使用を提案した。》

私が思うには・・・:

このような環境下で日本が選択し得る選択肢は何か?

最大の問題点は日本は今まで通りの外交政策を継続することが出来るのかという点であろう。米国の優位性が弱まる中、日本は米国の覇権の傘の下で何時までも心地よい思い込みに浸っていてもいいのか?

201810月、安倍首相は7年ぶりに中国を公式訪問し、対中政策について競争から協調へと大きく舵を切った。

今回の日中首脳会談では日中新三原則が謳われた。「競争から協調へ」、「パートナーとなって、脅威にならない」ならびに「自由で公正な貿易体制を発展させていく」という方針が安倍首相から提示され、習近平国家主席がそれを承諾するという形になった。尖閣諸島・東シナ海問題を事実上棚上げし、東シナ海ガス田の共同開発について日中交渉を再開することで両首脳は合意した。(注6)》

長期政権を自慢する安倍政権はこれはと言えるような成果を挙げては来なかったが、安倍首相が選択したこの中国との和解は正解だ。日本にはそれ以外の選択肢はあり得ないのではないか。現時点の日本の一般大衆の間では「日本は米国追従を続け、米国の対中新冷戦に歩調を合わせる」という現状維持の考えが多数派かも知れない。しかし、その方向性は日本にとっては政治的にも、経済的にも、軍事的にも自殺行為に等しいと言わざるを得ない。さまざまな困難が待ち受けているとは思うが、日中間の和解は進めなければならない。

米国が破棄するといったINF条約はヨーロッパを舞台とした条約であるが、米国がINF条約を破棄する真の目的はロシアだけが条約の相手ではなく、中国をも含めた新条約を締結することにあると言われている。

もしも新条約の締結に至らなかった場合はどうなるのか?:

愚かにも米国が敵国とみなす中国との間で戦争を始めた場合、中国軍にとっては日本の各地に存在する米軍基地は第一級の軍事的攻撃目標となる。沖縄ばかりではなく、本州から北海道までだ。東京近辺には横田、厚木、座間、横須賀、等に主要な米軍基地がある。専門家に言わせると、日本は壊滅する。中国の技術革新は目覚ましく、重要な分野で米軍の軍事的優位性が揺らいでいることはすでに述べた通りである。

世界が戦争と平和の岐路に立たされている今、あなたはどちらを選択するのだろうか?日本は東アジアを舞台にした米ロ中三ヵ国間の新INF条約の締結に貢献すべきだ。(2019214日脱稿)



参照:

1 Solzhenitsyn Correctly Predicted the Decadent Collapse of America 40 Years Ago - Russian TV News: By Michael Quinn, RUSSIA INSIDER, Jan/06/2019

2Two New Reports Point to Further US Decline and Higher Risk of War: By James O’Neill, Dec/22/2018

3Providing for the Common Defence - The Assessment and Recommendations of the National Defense Strategy Commission: By the Commission on the National Defense Strategy for the United States, Nov/13/2018

4National Security: Long Range Emerging Threats Facing the United States as Identified by Federal Agencies: By US GAO, Dec/13/2018

5Top 5 countries opting to ditch US dollar and the reasons behind their moveBy RT, Jan/02/2019

6: 7年ぶりの日中首脳会談で得したのは誰?日本と中国、双方に成果はあったのか:日経ビジネス、福島香織、20181031



初出:季刊「日本主義」No.452019年春号(2019325日発行)








2019年4月7日日曜日

フアウェイやノルドストリーム2を攻撃するギャング経済

中国のフアウェイ社に対して米国は同社の第5世代スマートフォンの米国市場での販売を禁じた。そればかりではなく、EUや他の同盟諸国に対しても同政策を強要しようとしている。その背景にはスマートフォン市場におけるフアウェイ対アップルという企業間の競争がある。最近、アップルの販売が不振であると言う。一方、フアウェイのスマートフォンは2018年に2億個以上が出荷され、これは前年比で30パーセントの増加だ。国際市場でサムスンに続き、2番手の座を占めているアップルに窮迫している。今年の221日の報道によると、2018年の第4四半期にフアウェイは前年同期比で売り上げシェアーを4ポイント伸ばし、15パーセントに達した。サムスンとアップルはポイントを失い、それぞれ17パーセント、15パーセントとなった。消費者は割高なサムスンとアップルの製品を嫌い、割安ながらも急速に性能を高めたフアウェイを選択したからだ(注1)。
また、米国と中国との間の貿易戦争のさ中、対イラン経済制裁に違反したとの理由でフアウェイの財務担当重役がカナダで逮捕され、米国へ移送される気配だ。逮捕された重役はフアウェイの創業者の娘である。どう見ても、この財務担当重役の逮捕は政治的圧力をかけるためのものだ。
また、ロシア産の天然ガスをドイツに輸送するノルドストリーム2の建設についても米国は反対の意を表明し、米国産のLPGを輸入せよとドイツに迫り、この海底パイプラインの建設に協力している企業に対しては経済制裁を発動すると脅かしをかけている。しかしながら、ドイツにとっては安価なロシア産の天然ガスの選択は経済的なエネルギー源を確保するという国益の問題であって、この方針を覆すことはできない。ドイツ政府は米国に対してドイツの国内政策に口を挟むなと反論している。こうして、ドイツと米国の2国関係は急速に冷却した。このノルドストリーム2に関する圧力だけではなく、米国政府はドイツに軍事費をもっと多く拠出せよと迫っている。つまり、米国製の武器をもっと買えという意味だ。
ここに、「フアウェイやノルドストリーム2を攻撃するギャング経済」と題された記事がある(注2)。米国経済はいよいよ「ギャング経済」と称されるようになった。
本日はこの記事(注2)を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。
<引用開始>

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多くの米国人は自分の世界観や米国の他の国家に対する関係についての理解は大学レベルの「Economics 101」の授業で学んだ内容に根ざしている。彼らは世界市場を自由競争の場として見る。そこでは違った国々やいくつもの国際企業が「競争」する。そして、消費者や一般社会ならびに各国は最高の製品やサービスに対して「ドルによる投票」をするのである。

ジョージ・ソロスやアンネ・マリー・スローターといった人物で代表されるこの妄想的な空想世界においては、米国や西側の国々は理想的な「開かれた国際市場」として独占的な地位を占る。単純に言って、彼らは最高であるからだ。西側の金融機関や国際企業によって提供される製品やサービスは他の国や他の企業によって提供されるものよりも優れている。この妄想は西側の金融機関のエリートたちに対して世界を指導し、助言するよう鼓舞する。彼らは世界中の国々の開発を支援し、多分、何時の日にか西側世界のような優れた社会が到来するだろうと言う。

エネルギ-における優位性」の構図:

この西側の筋書きは間違いであると論じる者にとっては最近の米国の動きほど確信を与える物はない。ノルドストリーム2のパイプライン建設やフアウェイの革新技術に対する米国の対応振りは同国は国際企業間の自由競争にはこれっぽっちの関心も持ってはいないと映る。

ノルドストリーム2は現在建設が進められている天然ガスを輸送するパイプラインであって、今年の末には建設が完了する予定だ。このパイプラインはロシアの国営エネルギー企業がEU圏内の国々へ天然ガスを売ることを可能にする。EU各国の市民はノルドストリーム2の建設に賛成である。ロシア産の天然ガスを入手する上で多いに利便性を拡大し、追加してくれるからだ。

しかしながら、米国においては、トランプ政権は反対勢力である民主党の指導者らと共にドイツや他のヨーロッパ諸国の市民はロシアの天然ガスを調達するなと要求。愚かにも、米国産の天然ガスを大西洋を横断して輸入し、調達するよう求めている。

地球の反対側から遥々と天然ガスを輸入することは中央ヨーロッパの国々にとってはロシアから国境を越して輸入する場合よりも遥かに高くつくことは常識的にも明白である。しかしながら、ヒステリーに満ち満ちた政治環境においては、ロシア政府に対してはあらゆる種類の無関係な課題や言いがかりを持ち出して、米国の政治指導者は経済制裁をちらつかせ、米国産の天然ガスを購入するようヨーロッパの市民に強要している。

米指導者がロシア政府に対して人権問題をベースにした批判を持ち出す場合、その偽善性は明白である。サウジアラビア王国は残酷な専制国家であり、斬首をしたり、拷問をかける国ではあるが、エネルギーと武器の市場としては米国の最大級のビジネス・パートナーである。ジャーナリストのジャマル・カショーギの残酷な殺害が起こったが、これは二国間のビジネス関係には何の差異をももたらすことはなく、トランプ大統領は財政上の観点からサウジ政府を大っぴらに援護した。

米国のエネルギー企業のために金を儲け、競争相手であるロシアのエネルギー企業を弱体化するという目標は注意深く隠しておこうとする気配さえも見えない。ホワイトハウスは「エネルギー分野における優位性」はその政策の根幹であると大ぴらに喋り、米国の原油・天然ガス企業の利益を如何に保護するのかを開陳する。しかし、政府の試みは見え透いている。

中国に対するスマートフォン戦争:

ドイツ人やベルギー人、さらには、他のヨーロッパの人たちは「自分たちのドルを使って投票」し、原油や天然ガスを何処から調達するかを選択するという自由を持たないのだろうか?ウール街に対抗する地政学的な競争相手が登場してくると、明らかに、「国際的に開かれたシステム」はもはやそれほどは開かれていないのである。

他国にちょっかいを出し、何かを強要するためにはこれとまったく同様の美辞麗句や手法が用いられる。たとえば、中国のフアウェイの携帯電話技術を買うなと彼らは要求する。フアウェイは世界で最大級の電話機製造企業である。同社は小平によって開発され、今は習近平によって推進されている社会主義市場モデルの不可欠な構成要素である。

フアウェイの携帯電話は電池の寿命がより長く、優れたカメラを内蔵し、耐久性が高く、米国製の電話機よりも長持ちがする。世界中で、たとえば、インドや南米、アフリカ諸国では一般大衆はこれらの安価で高品質の電話機を選択して来た。フアウェイの製品が中国国内を含めて世界中で一般大衆の選択の対象となったことから、アップルの利益は最近低下している。

しかしながら、米指導者は世界中の一般大衆が「自分たちのドルでの投票」は行わず、高級な電話機を買えと要求している。もしも自由市場の論理を適用するならば、米指導者は米国の製造業各社にもっと競争力を付けろと要求することであろう。それに代わって、米指導者はポーランドやブルガリアといった国々に対してフアウェイとのビジネス関係を中断するよう要求している。

米国内においては、中国のメーカーが市場に投入した最新型の「P20」モデルについて「自分たちのドルで投票」することは絶たれてしまった。彼らはこのモデルを調達することはできない。国家的な安全保障上のリスクを理由に中国製の携帯電話はすべてが販売禁止となった。

米指導者は中国企業によって製造されたスマートフォンは米国の安全保障にとっては脅威になると主張する。何故ならば、これらの企業は中国の軍部や政府と協力関係にあるからだと言う。アップルやAT&T、ベライゾン、ならびに、電話通信分野における他の米企業は米国の諜報部門と分かち合っている関係は隠そうともしないことを考慮すると、彼らの主張は実に偽善的である。

米国製の電話機は中国製の電話機と比べ「軍部」または「諜報部門」にとっての脅威は少ないと言いたいようだ。本質的には、フアウェイを設立した中国共産党がこの電話通信分野の大企業との関係を維持しないよう要求すること自体が馬鹿げている。

紳士的なビジネスではなく、ギャングのようだ:

「自由競争」や「開かれた国際市場」を擁護する以上に、米指導者はマフィアのようなギャング組織の経済哲学を採用しているようである。あたかも保証金をゆすり取る犯罪行為のように、米指導者は幾つかの特定の国々は自分たちの「縄張り」であると主張する。彼らは自分たちの競争相手を締め出すよう要求し、自分たちを邪魔する相手には「その結果としての制裁」を急いで課そうとする。

米指導者は彼らが世界中で広げて来たイデオロギーそのものの信頼性を自分たちの手で傷つけようとしている。彼らは、「自由競争」は、事実、妄想であり、政府というものは金持ちの給与支払者のために物事を不正処理し、彼らの命令に従う傾向がある。「自由競争」という持説は開発途上国や潜在的な競争相手を抑制するために活用してきたものであるが、米指導者は今それを無視し、ウール街やシリコンバレーの占有者らの縄張りを喜んで保護しようとしている。

真実を述べるとすれば、米国のもっとも富裕な連中は自分たちの個人的な犠牲や優秀さによって富を手にしたわけではない。また、西側世界は世界における自分たちの地位を紳士的なビジネス慣行を通じて築いたわけでもない。

21世紀においては、世界の国々はこれらの自由市場という妄想を拒み、政府を通じて国家がコントロールする経済を確立し、その結果貧困を一掃し、生活水準を高めるて来た。フアウェイは、ロシアのガズプロムやロスネフトと同じく、経済革新の申し子である。経済革新の中で、冷戦後の各国政府は国民に代わって経済をコントロールする行動をとって来た。

西側の国々の労働者階級の極めて多くの人々とは異なり、ロシアや中国の国民はこれらの超ド級の企業を築き上げる過程で後れを取ったわけではない。20世紀のユーラシアにふたつの大国が頭角を現すにつれて、自由市場のせいではなく、社会主義的な中央政府の計画によって何百万人もが貧困から解放されたのである。

著者のプロフィール: カレブ・モーピンは政治分析を専門とし、ニューヨークに本拠を置く活動家でもある。彼はボールドウィン・ウレス大学で政治学を学び、ウオール街の占拠に触発され、それに関与した。オンラインマガジンである「ニューイースタンアウトルック」に特別寄稿をしている。



<引用終了>

これで全文の仮訳が終了した。

米国の他国とのビジネス慣行は、同盟国に対するそれも含めて、ギャングのようだとする著者の見方は多くの賛同を得ることであろう。近い内に「ギャング経済」という新語が定着するかも知れない。世間を見回すと、この主張を真っ向から否定できるような事例は簡単には見当たらず、むしろ肯定する材料ばかりが思い浮かぶ。今や、それが現実である。

46日の報道によると、フアウェイの第5世代の電話機をボイコットせよとの米国の要求については、ドイツばかりではなく英国も反対である。さらには、米国にはフアウェイの技術に対抗できるような第5世代の電話技術を提供するメーカーがないという(注3)。このことが米国をこれほどまでに無分別な振る舞いをさせたようだ。これらの事実を考えると、フアウェイ問題はひとつのエピソードでしかないが、米国全体を見回すと米国経済の凋落が現実のものとなって来ている兆候かも知れない。



参照:

1Samsung and Apple are losing ground to Huawei because their phones are too expensive research shows: By Ryan Browne, CNBC, Feb/21/2019

2Gangster Economics Against Huawei and Nordstream 2: By Caleb Maupin,

NEO, Apr/04/2019

3Is America losing its grip on world economy? 5 big defeats for US financial interests abroad: By RT, Apr/06/2019, https://on.rt.com/9rmz 









2019年4月2日火曜日

最近のグリフォサート由来の癌の訴訟に関して米陪審員はバイエルに対して8千百万ドルの損害賠償を裁定

昨年の829日、「モンサントの有罪判決は始まったばかり」と題して世界中で使用されているグリフォサートを主成分とするバイエル(モンサント)製の除草剤「ラウンドアップ」による健康被害に関する損害賠償訴訟第1号をこのブログでご紹介した。
そして、つい最近の326日、グリフォサートが癌を引き起こしたとして製造者を訴える史上ふたつ目の損害賠償訴訟がサンフランシスコ地裁で裁定された。その結果、この訴訟でバイエル社は二度目の敗訴を喫した。バイエル社は上告すると言っている。
目下、この種の訴訟は11,000件以上もが待機しており、バイエルが敗訴したこれら2件の損害賠償訴訟は今後の訴訟にとってはいい見本になるだろうと言われている。
ふたつ目の訴訟ではバイエルのラウンドアップ除草剤が原告であるエドウィン・ハーディマン氏の非ホジキンリンパ腫の発症に重大な役割を演じたことが判明し、この裁定が言い渡された。バイエル社は75百万ドルの懲罰的損害賠償と590万ドルの補償的損害賠償、および、20万ドルの医療費を支払うよう命じられた。バイエルは、昨年の6月、本除草剤を製造販売するモンサント社を630憶ドルで買収したばかりである。
ここに、「最近のグリフォサート由来の癌の訴訟に関して米陪審員はバイエルに対して8千百万ドルの損害賠償を裁定」と題された2件目の損害賠償訴訟に関する最新の記事がある(注1)。
本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

<引用開始>
米陪審員は、ふたつ目の事例として、バイエル(モンサント)のグリフォサートを主成分とした除草剤「ラウンドアップ」が癌を引き起こしたとして、原告のエドウィン・ハーディマンに8千百万ドルの損害賠償を支払うよう裁定した。
サンフランシスコ連邦裁(訳注:記事によっては「連邦裁」であったり「地裁」であったりする。どちらが正解かについては、私自身にとってもまだ決着がついてはいない・・・)の陪審員はバイエル(モンサント)社は原告のエドウィン・ハーディマンの非ホジキンリンパ腫の発症に関して法的な責任を有すると述べた。
ラウンドアップの製品設計には欠陥があり、モンサントは本除草剤が癌を引き起こす可能性について警告を発することを怠り、同社の行動は軽率であったという事実を見い出し、米陪審員は560万ドルの補償的損害賠償と75百万ドルの懲罰的損害賠償、ならびに、20万ドルの医療費をハーディマン氏に支払うよう裁定した。
陪審員の評決後、ハーディマンは記者らに向かって「圧倒された思いだ。まだ信じられない感じだ」と言った。
ハーディマンの訴訟は今後の裁判の指標として見なされ、損害の範囲を決定し、決着の選択肢を定義する上で大きな助けとなろう。同地方裁判所のヴィンス・チハブリア判事の手元にはこの判決の他に760件以上もの訴訟案件が待っている。
ハーディマンの弁護士を務めるアンドラス・ワグスタッフ法律事務所のエイミー・ワグスタッフとムーア法律事務所のジェニファー・ムーアは声明文で下記のように述べた:
「ハーディマン氏は陪審員全員がモンサントは彼の非ホジキンリンパ腫の発症に責任を負うとの裁定を下したことに非常に喜んでいる。裁判の間中われわれが主張して来たように、40年以上も前のラウンドアップの販売開始以降、モンサントは責任を持って行動することを怠って来た。モンサントの行動に関してはっきり言えることは同社はラウンドアップが癌を引き起こしても気に掛けず、その代わりに公衆の意見を誘導し、ラウンドアップに関して純粋、かつ、正当な懸念を抱く者に対しては、それが誰であっても、卑劣な手段で攻撃をして来た。モンサントの従業員でラウンドアップの安全性やモンサントの行動に関して弁護しようと裁判所へやって来る者は一人もいないという事実は実に多くを物語っている」と弁護士らは述べている。 
「本日、陪審員はモンサントが過去40年間にわたって行って来た企業としての不正行為について責任を負わなければならないと明確に裁定を下し、モンサントに対して彼らのビジネスの在り方は変える必要があるとするメッセージを送りつけた」と弁護士らは付け加えた。
この訴訟は全米で裁判を待っている11,200件の訴訟の内でまだ2番目でしかない。
次の裁判はピリオド対モンサントの訴訟であって、これは3月28日頃にオークランドにある州裁判所で開始の予定で、広域係属訴訟において指標となるこの二つ目の裁判は5月に開始の予定である。しかしながら、今月の始めに行われた公聴会でチハブリア判事は、両当事者が示談の交渉を配慮することができるように、ピリオド裁判に関する陪審員の評決が終了後、連邦訴訟については「休憩のボタンを押す」積りだと述べた。

昨年の夏、かって学校の校庭管理者であって、何年にもわたって5カ所の校庭で、最低限の保護具を付けただけで、150ガロンもの「レンジャープロ」を散布していた原告からの同様の訴訟において、州裁判所の陪審員はバイエル(モンサント)に対して2億8千9百万ドルの損害賠償を裁定した。後に、その額は78百万ドルに減額されたものの、次のハーディマン裁判がやって来た。この最初の裁定についてはモンサントは上訴している。

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

329日の別の記事(注2)によると、フランクフルトでは木曜日(328日)にバイエルの株価がGMT830分までに1.14パーセント下落し、55.69ユーロとなった。モンサントの買収以降、同社の市場価格は46パーセントも下落した。

今回報道された陪審員の裁定はバイエルに対してどれ程の影響を与えるのであろうか?この引用記事で報じられた数値を基にして考えてみよう。仮に78百万ドルとか8千百万ドルといった裁定が今後も続いたとしたら、莫大な額となる。バイエルの負担は単純計算すると1万件では7800憶ドルに達する。バイエルがモンサントを買収した金額が630億ドルだというから、これは買収金額の約12倍に相当。今後、個々の案件に関する裁定や示談交渉がどの辺りで落ち着くのかが見ものである。



参照:

1US Jury Punishes Bayer with 81 Million Dollar Damages Ruling in Latest Glyphosate Cancer Trial: By Sustainable Puls, Mar/28/2019

2MONSANTO ORDERED TO PAY 80 MILLION DOLLARS IN ROUNDUP CANCER TRIAL: By Staff, Afp.com, Mar/29/2019