2020年8月31日月曜日

新型コロナをめぐる五つの謎がバレてしまった!世界中を捉えて離さない恐怖の扇動やプロパガンダ、真っ赤な嘘が見え見え

 新型コロナウィルスの大流行に関する大手メディアの報道には不可解な事柄が多い。

重症者の命を救うという最大級の使命は中国に対する米国の地政学的な対応によってハイジャックされてしまった。それ以降、これらの極めて不可解な事態は今も連綿と続いている。新型コロナウィルスによって世界をまたとない金儲けの場として捉えようとする大手製薬企業によって全世界が翻弄されている。少なくとも私にはそんな風に見えて仕方がない。

816日の報告で「新型コロナをめぐる五つの謎がバレてしまった!世界中を捉えて離さない恐怖の扇動やプロパガンダ、真っ赤な嘘が見え見え」と題された記事がここにある(注1)。日頃から私が感じてきたことをより詳細に掘り下げ、五つの項目について纏めて報告している。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。


科学者や政治家ならびに大手メディアが新型コロナに関して一般大衆に向けて喧伝して来た内容は実に衝撃的である。これは新型コロナ自身よりも遥かに大きな害をもたらした。不可思議で、矛盾だらけで、あからさまに滑稽とも言える数多くの謎を解き明かしてみようではないか。

事前の警告!もしもあなたが新型コロナの公的な説明に関して何の疑義をも挟まず、忠実な信奉者であって、マスクを付けて庭先へ出なければならないような事態が来るよりも先に新型コロナ用ワクチンが現れるのを臆病に待ちわびているのであれば、この記事は飛ばしていただきたい。

いや、むしろこの記事を読んで欲しいのだが、この記事を好きになることは期待しないで貰いたい。第一の原理から言えば、ここでだけ論理的な思考をするという想定には行き場所なって何処にもないからだ。私のただひとつの目標は大手メディアと政治家が拡散して来た巨大な謎をバラすことだ。

あなた方がもしも私が言うことを聞いてくれるならば、あなた方には心からのご挨拶をお送りしようと思う。開放的な精神を保有する人たちがわれわれの間にも何人かは残っているのだと言えるだろう。

1の謎:ウィルスの伝播を遅延させることはいいことだ

これは新型コロナに関する世界中の対応策の基本を成す命題であって、その他の策はすべてがこれを中心にして展開している。しかし、ウィルスの感染が急速に広がるのを遅延させなければならないという考えは、人命を救うという当面の狭い視野からの見解についてさえも実は確立されてはいないのである。

ウィルスの拡散を遅延させることは、当初、医療サービスを維持するための策として提示された。もしも誰もが一度に罹患すれば、病院は満杯となってパンクしてしまい、患者たちは駐車場で担架に乗ったまま死亡することになるだろう。「曲線を平坦化する」という言葉をご記憶だろうか?新型コロナの伝播は避けられないのであるから、長い時間にわたって平坦化することによって、酸素マスクや人工呼吸器を使った医療サービスを提供することにより人々を救うことが可能となる。

高貴な考え方である。しかし、実際には間違った方向へと導かれてしまった。ほとんどの病院では大流行の間何ヵ月にもわたって空だった。咳をし続ける新型コロナの患者が到来することに備えるために、新型コロナの患者以外のすべては一時待機とされた。結局、新型コロナ患者の襲来はついぞ起こらなかった。集中治療室が満杯になることは稀で、新型コロナによってもっともリスクが高い患者には人工呼吸器や集中治療室は必ずしも適切ではないことが速やかに判明した。実際の死亡例を見ると、集中治療室で死亡した人達は少数派であった。他の余病を持った老人たちには通常の病棟での治療がもっとも適切であった。

RT.COMからの関連記事:More evidence emerges of inflated Covid-19 fatality rates – are we being intimidated?

つまり、「曲線を平坦化する」という考えは救いようがない計画であった。しかし、コロナウィルスの伝播をとにかく遅延させようという考えは必ずしも理に適ってはいないのではないか?新型コロナに感染したならば死ぬかも知れないと考える人達の場合、それが意味を持つのはワクチンが開発されるまではウィルスを回避することが可能となる場合だけだ。もしもウィルスに感染してはいない高リスクの人たちが噂のワクチンを待ちたいとするならば、自分の意図に関してはより以上に率直であるべきだと思う。なぜならば、率直な態度を取り得ないならば、本件については何の意味もないからである。

加えるに、誰かにウィルスを伝播することは皆にとってはいいことだとする理論が少なくともひとつは存在する。ウィルスの進化理論によると、呼吸器系ウィルスが伝播すると、そのウィルスはだんだん毒性を失っていく。成功裏に生き残って行くウィルスは毒性が少ない種類である。将来の宿主へ伝播する前に現在の宿主を殺してしまっては元も子もないからだ。集団免疫はこのような文脈においてのみ機能する。これはウィルス自体の変化に関わるものなのだ。これとは対照的に、都市閉鎖を行った場合、ウィルスはその先へ行くことができなくなる。毒性が少なくなる代わりに、最強力の種類のウィルスのすべてが老人ホームや病院といった病人が多くいる場所に集まってしまう。このウィルスは伝染性を増していると報じるニュースを聞いた。これこそが私がこのニュースを喜んで受け入れた理由だ。つまり、このウィルスは少なくとも健康な人たちの間では自由に伝播させた方が良いのだ。

2の謎:都市閉鎖は伝播を遅延させる

しかしながら、当面は、その方が良いというわけではないとしておこう。なぜならば、感染の伝播は悪であるという基本的な前提を抜きにしては、議論が簡単に反転し兼ねないからだ。感染の急上昇は心配事ではなく、むしろ安堵感をもたらす。もしも、これらのことがうまく作用すれば、マスクは非生産的な存在となる。これはすべてが本当だと私は言っているわけではないけれども、少なくとも伝統的な理論から言えばこのような帰結になると考えられる。

しかし、もしもご自分の不審の念を投げ捨てて、ウィルスの伝播を阻止することは有用であると想像するならば、都市閉鎖こそがその目的を果たしてくれるものだと想定したとしても、それは仕方がない。でも、都市閉鎖がしたたかなウィルスに対して問題を引きおこしてくれると示唆するような事実は何もなく、ましてや証拠なんて何もないのだ。

RT.COMの関連記事:The problem of false positives from Covid-19 tests means UK is inflating its numbers – and taking wrong decisions

もしも都市閉鎖が部分的にでも役目を果たしたとするならば、それぞれ違った形で各国によって実施されてきた都市閉鎖の間には何らかの相関性が観察されることであろう。さらには、死者数の曲線についても同様だ。しかし、実際には何の相関性も見られないのだ。ベルギーや英国およびニューヨークでは厳しい都市閉鎖が実施された。しかしながら、おびただしい数の死者が出た。スウェーデンや日本およびウルグアイでは軽度の都市閉鎖が実施されるか、都市閉鎖はまったく実施されなかった。それにもかかわらず、死者数は少なかった。まったく矛盾した事例を指摘することができるのだが、それはまさに重要な論点である。つまり、一貫性はまったくないのだ。そして、個々の国の事例に関して「文化の違い」や「より良好な試験の仕方」等で説明しようとしても、相関性は見当たらない。

簡単に言えば、ウィルスを阻止するために各国政府が採用した対応策が何らかの実効を示したと指摘する根拠は何も見当たらないのだ。都市閉鎖は物置の中に見い出せる最大の道具であるかも知れないが、この道具は依然として不完全極まりない。

3の謎:接触者を追跡することが解決策である

大流行の始めには、ドイツや韓国といった素晴らしい追跡能力を持った国々と大流行に対応する能力との間には何らかの繋がりがあると誰もが思った。もちろん、追跡能力そのものは新型コロナの患者を治癒する力を持ってはいない。包括的な試験を実施することに何らかの積極的な効果があると思われたのは何故なのかに関しては依然として誰にも分からない。

とは言え、それは西側の政府が接触者を追跡するアプリやプログラムを用いて東アジアの社会を模倣しようとする哀れな試みを止めさせるまでにはならなかった。かなりのプロパガンダが行われたにもかかわらず、これらはすべてが惨めな失敗に終わった。すでに最盛期から何ヵ月も過ぎていたことから、症状を持った患者はもう多くはなく、失敗に終わったのである。

接触者の追跡を強化しようとする8月の試みは馬が逃げ出した後になって納屋の戸を閉めるような状況であった。しかし、ただそれだけではなく、さらにその先にまでも及ぶ。この馬はもう大分前に逃げ出したが、今はその子孫らが地方で暴れまわっている。その一方で、ますます複雑になって、金がかかる戸閉まりの仕掛けに多くの資源を投入しようとして、農民たちは家計を台無しにしてしまう。

RT.COMからの関連記事: Trust the experts and take your pills, citizen! Meet the nerd who wants to force-feed you ‘morality pills’ to beat Covid

4の謎:黒人・アジア人・少数民族はリスクが高い

黒人・アジア人・少数民族にとっては、特定の民族や他の少数民族を統計に盛り込むことは新型コロナの大流行によって最悪の事態となった。もちろん、ウィルスは人種差別をする。何だってそうだ。感染者や死者を職業別に分け、次にその割合を全人口中の構成比率と比較する。疑いようもなく、黒人・アジア人・少数民族の人たちはそういった確率の議論では過剰に代表されてしまう。

しかし、そのリスクは母集団のレベルでの話であって、ほとんどの事例は肥満や糖尿病、その他の並存疾患、等の媒介因子によって説明がつき、ある母集団では他の母集団よりも多く蔓延する。もしもあなたが80歳代であって、肥満で、病気勝ちであれば、あなたがどんな人種に属するかには関係なく、あなたはウィルスへの感染を心配するべきだ。同様に、もしも60歳未満であって、健康体であるならば、人種には関係なく、ウィルスに感染して死亡するよりもむしろ雷に打たれて死亡する可能性の方が高い。次のような提言が現れた。これは単なる提言ではあるのだが、黒人の場合はビタミンDのレベルが低いが、このことが絡んでいると言う。しかし、それは人種による差異を説明するものではない。

統計の基本的な観点からは、何人かのプロスポーツ選手は自分のスポーツに復帰できるかどうかが懸念されるといった話は馬鹿馬鹿しい限りだ。実際問題として、私はトロイ・ディーニーのような選手を気の毒に思う。(ワトフォード・フットボールクラブによって格下げさせられたという理由からではなく、)科学的な知見に乏しかったことから、彼は恐怖にかられたのである。黒人・アジア人・少数民族であっても、健康な若者は彼自身が感染のリスクが高いと考える理由なんて何もありはしない。しかし、恐怖心が故にパワーを絞り出してしまう社会によって彼はそう思い込まされてしまったのである。

5の謎:学校は再開し、パブは閉じる

何とまあ腐りきっているのだろうか。この虚偽に満ちた交換条件を提案した人物は、たとえ公僕としての見返りはそれ程手にすることにはならないにしても、ボードゲームのデザインにおいては素晴らしい成果を築き上げることになるのではないか。端的に言って、これは作り話であって、しかも、捨て去るには難しい代物である。むしろ、目には見えない妖精が存在しているかのようでさえある。

その気になりさえすれば、パブを開き、学校も開くことができるのではないか?しかしながら、2週間後には死者の「第2波」が現れるかも知れないと考えてしまう。5月に警告が発せられた例の第2波のことだ。そして、6月にも。さらには、7月にも。最近の2週間になって初めて、WHOはついに自分たちの夢を諦めて、「ひとつの巨大な波」へとストーリーを変更した。これはもはや同じ競技ルールではない。しかしながら、第2波というフィクションは記憶から消え失せたわけではなく、これはわれわれの残された自由をさらに攻撃することによって必要に応じて威力を発揮するために登場させることが可能なのだ。

RT.COMからの関連記事:As Russia announces coronavirus vaccine, mainstream media suddenly discovers the meaning of skepticism

私が出来ることは死者が急増する第2波は決して起こらないであろうと推測することにあるが、4月以降私が言いたかったことは正しいことが実証されて来た。それとは対照的に、支配者層は繰り返して間違いを起こしている。だが、彼らは決して説明しようとはしない。彼らは予測を変更し、一週間前に自分たちが言ったことは誰もが忘れてくれることを願う始末である。マスクはするな。仕事場へは出かけるな。仕事に行け。でも、公共の交通機関は使うな。公共交通機関を使う場合は、マスクを使え。このような混乱は偶々起こったなんて考えないで貰いたい。

これは計画の一部でさえあるのだ。混乱した人々はコントロール下に置くのが容易いからだ。

より大きな嘘:

「とてつもなく大きな嘘をつき、それを繰り返して言えば、人々は最終的にそれを信じるようになる」と言ったのはジョセフ・ゲッベルスだったかと思う。これは決して陳腐化することがない言葉だ。つまり、嘘の大きさには際限がないようだし、嘘の数についても際限はないようだ。

仮説が予測を生み出し、それらの予測が正しいと実証されれば、それらは最終的にはひとつの理論となる。アインシュタインは世界中で歓迎されている。なぜならば、彼はブラックホールに関して予測をし、ブラックホールの存在はほぼ一世紀後に証明されたからである。今回の大流行の性格に関して予測を立てようとして、数多くの優れた人たちはエリートたちの取り巻きからヘドロを浴びせられ、中傷を受け、自ら危険な目に曝された。しかし、彼らの説が正しいことが判明すると、エリートの取り巻き連中の言い分はさっさと消えて行った。

それとは対照的に、ニール・ファーガソンが再び担ぎ出され、第二波を主張する連中は「もう二週間待ってみよう」と言い続けている。このような状況はいったい何時になった終わるのだろうか?決して終わることはないであろう。われわれが考えを完全に変えるまでは終わりそうもないのだ。論理および理性は機能しなかった。今や、新しいアプローチを試す時がやってきたと言えよう。

注:この記事で述べられている主張や見解および意見は全面的に著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見ではありません。

著者のプロフィール:ピーター・アンドリュースはアイルランド人の科学を専門とするジャーナリストであって、ロンドンに在住。彼は生命科学を専門とし、グラスゴー大学から遺伝学の学位を取得している。


これで全文の仮訳が終了した。

五つの謎を取り上げ、それぞれの謎に関して詳しく議論をしている著者に敬意を表したいと思う。新型コロナ危機はまだまだ続いているだけに、こうした議論は建設的である。積極的に継続して行かなければならない。

ここに六つ目の謎を追加してみたい。最近の記事によると、英国政府の保健部門の高官がマスクの効能を疑うと発言した(注2)。マスクの効能については新型コロナの大流行が始まった頃、つまり、半年ほど前、すでに同様の主張がある専門家から提言されていたのを今思い出す。しかしながら、メデイアの大合唱によってそれはかき消されてしまった。

要は、通常の季節性のインフルエンザは科学的に究明されてはいないが故に、マスクの効能自体についてさえも正確な議論を進めることができないままでいるのが現状であると言えよう。



参照:

1The five biggest coronavirus myths BUSTED! Exposing the fear mongering, propaganda and outright lies that are plaguing the world: By Peter Andrews, RT, Aug/16/2020, https://on.rt.com/ao9j

2Evidence that masks protect from Covid ‘not very strong in either direction,’ says UK’s deputy chief medical officer: By RT, Aug/29/2020, https://on.rt.com/apd1








2020年8月24日月曜日

最後通牒としての「ハル・ノート」

 私にとって8月は太平洋戦争に関する歴史を読み漁る時だ。今年も例外ではない。

米国民の多くは1941127日(現地時間)にハワイの真珠湾に停泊していた米艦隊に対して行われた日本軍の攻撃は宣戦を布告せずに行なわれたもので、破廉恥極まりない奇襲攻撃であったとして理解している。記憶の中にそう刷り込まれているのだ。

しかしながら、最近、歴史的な公文書や資料が公開されるにつれて、新たな事実太平洋を挟む両国の一般人にも理解されるようになってきた。これはいいことだと思う。

米国の戦史作家であるJohn Tolandの著書「Infamy: Perl Harbor and its aftermath(1986年刊)は今でも貴重な情報源である。彼は膨大な資料を駆使して、真珠湾の奇襲は「作られた奇襲」であったとはっきりと述べている。その背景を大雑把に要約すると、ルーズベルト大統領は日本海軍が真珠湾を攻撃してくることを事前に知っていながらも、ハワイの現地司令官にはそのことを伝えようとはしなかった。ルーズベルト大統領にとっては欧州への参戦が重要な政治課題であった。参戦について国民の民意を大幅に変え、参戦に向かわせるにはハワイに停泊する艦隊を犠牲にする価値は十分にあったのである。そして、それは図星であった。

今日、私はウィキペディアで米国が日本に示した最後通牒であると言われている「ハル・ノート」に関する記述を覗いてみた。「ハル・ノート」とは真珠湾の攻撃よりも11日も前(1126日)にハル米国務長官から野村駐米大使に手交された交渉文書のことである。この文書を受け取って、121日に開催された御前会議で日本政府はこれは最後通牒であるとして理解し、米国に対する開戦を決意した。

ウィキペディアには膨大な量の情報が収録されている。その中には上述のジョン・トーランドの言葉もあった。非常に興味深い内容であるので、その部分だけ下記に抜粋しておこうと思う:


ジョン・トーランド

「実はハル・ノートの内容については、日米間に悲劇的な誤解があった。ハルのいう『シナ』には満州は含まれず、だいいち彼は最初から日本による満州国の放棄など考えていなかったのである。ハル・ノートは、この点をもっと明瞭にしておくべきだった。満州国はそのままとさえわかれば、日本側はあれほど絶対に呑めぬと考えはしなかったであろう」[472][473]

「筆者は東郷外相に近かった数人に、ハル・ノートが『シナ』の定義をもっと厳密にしていたらどうだったかと質問してみた。・・・佐藤賢了は、ひたいを叩き『そうでしたか!あなたのほうが満州国を承認するとさえ言ってくれれば、ハル・ノートを受諾するところでしたよ』と言った。・・・賀屋(興宣)は、『ハル・ノートが満州国を除外していれば、開戦決断にはもっと長くかかったはずです。連絡会議では、共産主義の脅威を知りつつ北支から撤兵すべきかどうかで大激論になったでしょう』と答えた」[474]


つまり、ジョン・トーランドの指摘は日本側がハル・ノートをより厳密に理解していたならば、太平洋戦争は起こらなかったかも知れないということだ310万人もの兵士や民間人が死亡せずに済んだのかも知れない。しかし、日本にとって不幸なことには歴史はそのようには展開しなかった。日本は敗戦という結末を招いただけではなく、戦後75年が経過した今でさえも耐えがたいほど大きな負の遺産に苦しめられている。これは実に大きな歴史の皮肉である。

歴史を読むとき「もしもこうでなかったとしたら」という考え方はあり得ない、あるいは、無駄なことだと良く言われていることではあるが、人の勘違いと関係するひとつの要素が310万人もの死を招いたとすれば、その勘違いの代償はあまりにも大きいと認識しなければならない。

この指摘を現代の国際政治に適用したら、どんな意味を持っているのだろうか?

要するに、もしもこのような人為ミスが今起こったとしたら世界はいったいどうなるのかという点だ。

たとえば、核戦争において核大国のひとつが非常に基本的な部分で勘違いをしてしまったと仮定してみよう。最悪の場合、それは一国の敗戦には留まらず、全人類、地球上の全生命の滅亡にまで進展してしまう可能性が出て来ることだ。

素人の私が思いつく典型的な勘違いはペンタゴンが主張した先制核攻撃にある。仮に、ペンタゴンの意図は北朝鮮とかイランに対するメッセージであったとしても、そのような先制攻撃が実行された暁には、地域が限定的な核攻撃が何らかの形で核大国間の応酬に発展する可能性は捨てきれない。そういった展開はいったいどうやって阻止するのであろうか?そもそも、阻止することは可能なのだろうか?阻止するメカニズムは実在するのか?

先制攻撃のシナリオを核大国間の紛争に移してみよう。先制攻撃による一撃で相手を壊滅させ、自国は報復攻撃を受けないという考えは、基本的には成立しない。非常に大きな勘違いであると言わざるを得ない。大量の核弾頭を搭載した潜水艦が24時間大洋に潜んでおり、何時でも報復核攻撃を実施することが可能だ。その現状を考慮すると、先制攻撃によって相手国を一方的に壊滅させて、二国間の武力紛争がめでたく終了するというシナリオはあり得ない。国際的に核兵器を監視し、将来的にはそれらを撤廃することの重要性を改めて痛感する次第である。

もうひとつ挙げてみよう。最近の米国の政策を見ると、米国は核兵器における軍拡競争を抑止する国際条約から撤退し(たとえば、米国は2018年にINFから脱退)、小型の戦術核を開発する方向へと動いているようだ。ここでも、新たに、地域的な紛争における戦術核の使用が世界規模の核戦争へと発展する種を蒔くことになる。

核戦争による人類の滅亡はさまざまな形で現実味を帯びて来る。

何百万年にもわたって進化してきたと言われる人類は科学技術の進歩の恩恵を享受し、今、豊かな物質生活を送っている。しかしながら、まさにその科学技術の進歩によって、極めて不幸なことには、一握りの戦争計画者の近視眼的で、偏った考えが何らかの勘違いを誘発し、人類を自滅の道に招いてしまうのではないかと思えてならない。

こんな陰鬱なことを考えるのは8月だからこその年中行事ではあるのだが、読者の皆さんと上述したような情報や思いを共有することを通じて、核兵器によって人類が曝されている脅威を一日でも早く無くすことに繋がって行って欲しいと思う次第だ。日本人の8月の思いである。






2020年8月22日土曜日

ベラルーシ:帝国主義者たちは毎日のように疲労困憊した、古めかしい台本を展開する

 

今、ベラルーシでは何が起こっているのだろうか?

89日の大統領選では現職のルカシェンコ大統領が80%もの得票を得て6期目の当選を確実にした。しかしながら、この選挙結果を不服とする反政府デモが拡大している。

外から見ていると、さまざまな懸念が脳裏をかすめる。この反政府デモは2014年にウクライナで起こったマイダン革命のような展開となるのだろうか?それとも、ルカシェンコ政権は1989年にルーマニアでチャウシェスク政権が子飼いの秘密警察の反乱に遭って失脚したように、ベラルーシの秘密警察であるKGBの反乱に遭遇するのであろうか?

何れの方向へ進んでも大きな混乱となる。あるいは、それらのふたつの軌跡とはまったく違った展開となるのかも知れない。

現状を分析しようとする試みはすでに幾つも公表されているのだが、当然ながら、現時点では何も確かなことは言えない。しかしながら、ロシア周辺の諸国を巡る反政府デモには常にひとつのパターンがついて回る。国によってさまざまな展開があるが、多くの場合、その底流には同一の動きを観察することができる。

ここで言う同一の動きとはいったい何かについて答えようとする一つの記事がある。この記事は「ベラルーシ:帝国主義者たちは毎日のように疲れ切った、古めかしい台本を展開する」と題されている(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

ベラルーシにおける騒動を巡って国際政治の深層を学んでおきたい。

西側の指導者層に仕える台本作成マネジャーは何時も同一のパターンを踏襲する。米国の同盟国であるフランスやイスラエルにおける反政府デモについては完全に無視する一方で、香港における反政府デモにはひどく固執して、報道をした。それと同じように、今、彼らはベラルーシの反政府デモに声援を送っている。

帝国主義派の評論家であって、オバマ政権下で新冷戦における戦士の役を演じたマイケル・マックフォールは最近下記のようなツイートを発信した(訳注:マイケル・マックフォールは米国の政治学者で、オバマ大統領の下で2012年~2014年に駐ロ米国大使を務めた):

「ベラルーシの国内あるいは国外に住んでいようとそれには関係なく、自分たちが勇敢に民主主義のために闘っているのに西側はどうして無関心のままでいられるのだろうかとベラルーシの人たちが今週私に問い掛けて来た。私には説明できない。皆さんは説明できる?」

(誰もがマイケル・マックフォールに訴えて来ると主張するなんて実に怪しげなことではあるが、その点を除けば)私はこのツイートが素晴らしいからこのツイートを参照しているわけではない。このツイートがまったく人の注意を引かないからこそ私は引用しているのだ。

2か月前、政治や経済、哲学を論じるウェブサイトである「ムーン・オブ・アラバマ」が「ベラルーシでは米国が後押しするカラー革命が進行中」と題した記事を配信し、モスクワ寄りのこの国家は間もなくソビエトスタイルの国内政治を行っている現政権に反対する反政府派によって大騒動に見舞われるかも知れないとして、その兆候を伝えていた。616日の記事からの抜粋をここに示してみよう:

89日にはベラルーシでは大統領選が行われる。ルカシェンコは勝利を収めるために全力を尽くすであろう。

カラー革命は、通常、議論を呼ぶ選挙に向けて導入される。選挙結果については、通常、選挙が始まる前から大っぴらに疑義の念が持たれる。ついに選挙結果が公表されると、西側のメディアは自分たちが予測した数値とは大きく異なっており、この相違は票を操作したからに違いないと主張する。こうして、一般大衆が反政府デモに狩り出される。この混乱を助長するために、ウクライナで実際に起こったように警察とデモ隊の両者に向けて発砲する狙撃者が配置されるかも知れない。現大統領がこてんぱんにやっつけられるか、米国が推す候補者が当選すると、この反政府デモは収束する。

昨年、「米国民主主義基金」(NED)はベラルーシで少なくとも34のプロジェクトや団体に対して資金を提供した。米国は慈善のためにそうするするのではなく、その国に手をかけるためにそうするのである。

通常見られる帝国主義的な台本を遂行する作戦のほとんどはこの国で今月行われた大統領選の前にすでに勢揃いしており、今われわれはCIAのスパイ網のための連絡係であるラジオ・フリー・ヨーロッパやラジオ・リバティーならびにNED米国務省と調子を合わせて反政府運動に喝采を送り、ベラルーシ政府を批判するのを目にする。

「われわれは反政府デモを支持し、デモ参加者に対する政府側の暴力的な取り締まりに抗議する」と自覚とか何かをまったく持ち合わせてはいない政府が述べている。

つまり、すべては何時もの通りの古いパターンのままに展開しているのである。すっかり疲れ切った公式が繰り返し使用されており、地面に耳を当てるとそれが目の前に現れる前にさえも予測することが出来る程だ。

繰り返すが、マックフォールのツイッターが異常であるからといってそれを参照しているわけではない。映画の「ブロブ」を連想させるような帝国(帝国は自分たちと同盟関係を組まない国家については常にそれらの国家を吸収、あるいは、破壊しようとする)によって統治されているわれわれのこの狂気じみた世界においては、それは完全に正常であり、ありふれたことではある。あのツイッターは支配者層の台本マネジャーがわれわれの世界で起こっている出来事を米国を中心とする帝国の都合に合わせて、それと同時にゼラチンのような帝国に吸収されまいとして頑張っている国家には極めて不利な形で、物事を如何に歪曲するのかを示す事例として私は引用したのだ。あれはほぼ無限に存在し引用可能なツイッターや記事、TVクリップのひとつである。

実際にマックフォールが発信したツイッターをオリジナルのテンプレート型式に翻訳して、物事を単純化してみようではないか:


© Caitlin Johnstone

ほら、これはもっと正直だ。

私は自分の職業が大好きだ。本当にそう思っている。しかし、西側の帝国主義の悪ふざけについてコメントする仕事は読者の皆さんが想像することができる仕事の中では極めて退屈で、単なる反復作業である。

何か新しいことなんて実際には何もない。まったく同一の邪悪な帝国主義者が毎日のようにさまざまな国々を次々と帝国からの攻撃の目標に設定し、まったく同一の台本をとうとうと喋りまくるのだが、それらはすべてがまったく同一の公式なのである。この仕事ではさらに飽き飽きさせられることがある。「何という事だ!米国からまだ何の影響も受けてはいないこの政府に対しては絶対に反対しなければならない」といった新たな国家が現れると、あたかもそれはまったく新しい案件であって、他の事例とは違っているかのようにそれを受け取るよう誰もが期待される始末だ。

しかし、これは何も新しいものでもなく、何かが異なっているわけでもない。そして、ついには毎日のようにまったく同じような国際政治のニュースに遭遇するようになるのである。そして、そのニュースは次のような具合だ:

「米国を中心とする帝国は自国の軍事力や金融、経済、あるいは、資源について主権を守ろうとする国家を呑み込んで、さらに強大になろうとする」のである。 

そうなんだ!それこそが誰もが目にする国際政治のニュースの本質であって、それがすべてを物語っている。それ以外はただ単にその上に載せられている無用の飾りものに過ぎない。それが故に、まったく同じ戯言が毎日のように報道されていることにはあなた方は気が付かないのだ。

億万長者が経営するニュースメディアは常にそういった戯言と共に行進している。なぜならば、これらの億万長者らは自分たちの王国を築き上げた現状を維持するのに必要な台本をさらに強化するために存在するもろもろのシステムを自分たちの手中に収めているからだ。そういった巨大なメディアで働く記者たちは真理や事実に対する忠誠心なんてこれっぽちも持ち合わせてはいない。帝国の拡大を促進することだけだ。

私の言うことは信じられないって?昨年の報道であるが、平等と正確さに関して報じたこの記事を読んでもらいたい。これは大手メディアは中国政府に反対する香港におけるデモだけを報じることに集中し、フランスやイスラエル、チリ、ハイチといった米国の同盟国における反政府デモは無視していたのである。あるいは、2002年のこの記事を読んでもらいたい。当時、ワシントンポストの論説陣はサダム・フセインは化学兵器を所有しているかも知れないからイラク政府を転覆させなければならないと常に金切り声を挙げていた。その一方で、リーガン政権の最中にリーガンが実際に化学兵器を使用した際には極めて簡単で穏やかに指摘をするだけに留まった。

彼らはこれっぽっちの原則さえも持ってはいない。真実には何の関心もないのだ。

もしもサウジアラビアが米国に対する忠誠を中国に鞍替えしたならば、われわれは直ぐにでもイエメンにおける血なまぐさい行動に関する報道を毎日のように目にすることになるであろう。そういった出来事についてはわれわれは常に関心を払わなければならないとでも言うかのように。

もしもイスラエルがワシントンからモスクワに鞍替えしたならば、われわれは直ぐにでもパレスチナ人の窮状やネタニヤフの腐敗した政治に抗議する反政府運動についてのニュースで埋め尽くされてしまうであろう。

もしもオーストラリアが「ブロブ」から離れ、自国の主権を主張し始めたならば、世界中が突然アボリジニの人権や沖合に設けられた拘置所に暮らす難民について遥かに多くのニュース報道を毎日のように聴かされることになるであろう。

もしも帝国の「ブロブ」から離脱した政府が非難されるような人権問題を何も抱えてはいないならば、西側の諜報機関は何かをでっち上げ、西側のメディアは無批判にそれを事実であるかのように報じることであろう。

大手メディアの批評家や記者らは胸をドキッとさせることもなしにこういった豹変をするであろう。彼らはいつでもそうすることが自分たちの立ち位置であると装うことであろう。そして、その夜ベッドに身を横たえると、彼らは赤ん坊のように眠り込んでしまう。

いったい私はこんなことをどうして知っているのだろうか?それは彼らの最近の行動を観察したからに他ならない。

支配者層の台本を維持するマネジャーらが「邪悪で米国にはなびかない今週の国家」について喚き始めると、人々は決まったように私に向かって今度ばかりは何時もとはまったく異なっており、この件についてはポンぺオがすべての真実を語ってくれていると言う。彼らはまるでディズニー映画を何千回も観て、一日のうちに何回でも観る3歳児のようだ。何かの違いがあるとすれば、3歳児たちは間違いなく何かを学びとっていることだ。

台本のコントロールがもっと希薄になると、われわれはこの操り人形のショウから目覚め始めるに違いない。その時が来るまでは、一般庶民がプロパガンダによってもたらされたから目覚めるのを手助けするには、はっきりとした自覚を維持し、反対意見を有する人たちがやるべきことはこの退屈で、繰り返して報じられるニュースのマトリックスが現実から如何にかけ離れているかについてさまざまな形で指摘し続けることだ。

著者のプロフィール:ケイトリンの記事は全面的に読者からの支援に頼っている。もしもあなたがこの記事を楽しく読んでいただいたとするならば、この記事を共有し、彼女のフェースブックでは「いいね」をクリックし、ツイッターで彼女の行動をフォローし、彼女のポッドキャストをチェックし、パトレオンあるいはペイパルで彼女の帽子へ幾らかのお金を放り込んでいただきたい。あるいは、彼女の著作、Woke: A Field Guide for Utopia Preppersを購入していただきたい。https://caitlinjohnstone.com - "Source" -

注:この記事に表明されている見解は全面的に著者のものであって、必ずしも「Information Clearing Houseの意見を反映するものではありません。

これで全文の仮訳が終了した。

米国がカラー革命で他国を干渉する手口ついては、著者が記述した「昨年、米国民主主義基金(NED)はベラルーシで少なくとも34のプロジェクトや団体に対して資金を提供した。米国は慈善のためにそうするするのではなく、その国に手をかけるためにそうするのである」という文言がすべてを語っている。この種のカラー革命のやり口はセルビアでの反ミロシェビッチ闘争(1998年~2000年)に端を発しており、その後、この手法が定番として繰り返して使用されている。

旧ソ連邦が崩壊した後、ロシアの周辺では多くの国でそれまでの政権が崩壊し、ユ-ゴスラビアに対するNATOの介入を経て、方々で親米路線の政権が誕生した。その結果、旧ワルシャワ条約機構加盟国からのNATOへの新規加盟は1999年のハンガリーやポーランドおよびチェコの加盟から始まって、新規加盟国が増えていった。このプロセスはつい最近まで続き、2020年には北マケドニアが加盟した。

そして、2020年の今日、直ぐにはNATOへの加盟には結びつかないかも知れないが、新冷戦の最前線の舞台は今やベラルーシでの大統領選である。これこそが著者が述べている帝国の拡大を示す兆候なのである。

この引用記事の著者の洞察は鋭く、帝国主義の非人間性を指摘する彼女の見解は論理的で、伝統的な一般常識や行動原則に忠実であって、著者は大多数の読者に受け入れられる価値観を持っている。実に興味深い。

参照:

1Belarus: Imperialists run the same tired old script day after day: By Caitlin Johnstone, Information Clearing House, Aug/15/2020





2020年8月16日日曜日

西側の大手メディアにおけるジャーナリズム精神の欠如 - 2題

最近の大手メディアの挙動にはまさになりふり構わずになってしまった観が強い。

たとえば、最近の事例を挙げてみよう。

「ロシアが新型コロナに対するワクチンを市場へ供給すると発表した途端、西側の大手メディアは突然懐疑的な姿勢を見せ始めた」と題された記事を覗いてみよう(原題:As Russia announces coronavirus vaccine, mainstream media suddenly discovers the meaning of skepticism: By Graham Dockery, Aug/11/2020)。米国政府が推し進める新冷戦という政治的シナリオを反映して、西側の大手メディアはジャーナリズム精神はあたかも無用の長物であるかのように脇へ押しやってしまって、誰も関心を示さない。

さっそくだが、本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


Photo-1:ロシアのモスクワにあるガマレヤ研究所のラボで働いている科学者。202086日。© Reuters / The Russian Direct Investment Fund


ロシアが臨床試験の完了を待たずに、新型コロナに対する新ワクチンを市場に展開すると発表をしたことを受けて、西側のメディアは突然ワクチンの話へ戻ってきた。それはあたかもロシアが癌を治療することが出来て、まさにそれが故にプーチンを責める口実を新たに見つけたかのような振る舞いである。

ロシアは世界で初の新型コロナに対するワクチンを登録した。ロシア大統領のウラジミール・プーチンは火曜日(811日)にこの快挙を公表した。そして、彼の娘さんも接種を受けたことを付け加えた。医師や教師たちはこのワクチンの接種を受ける最初のグループとなり、一般大衆への接種は2021年の1月から開始するという。

RT.COMからの関連記事: Putin says Russia’s Health Ministry has approved world’s FIRST Covid-19 vaccine, his own daughter has been vaccinated

ロシアの科学者らは新型コロナと同種のウィルスと対抗するためにすでに何十年もの月日を投入して来たけれども、このワクチンは今も試験の真最中である。本ワクチンは猿と人を使った最初のふたつの試用段階をすでに通過し、プラシーボを使った第三段階をこれから通過しなければならない。この三段階目の試用試験は市場からの希望者への接種によって実施される。

この事実を批判する口実として、西側のメディアは警鐘を鳴らし始めた。ニューヨークタイムズは「近道を採用して、プロパガンダのための得点を上げようとしている」と言って、クレムリンを非難し、この新ワクチンの安全性試験は部分的に終わっただけであるとして安全性に関して警鐘を鳴らしたのである。また、ガーディアンもこの大急ぎの展開に警鐘を鳴らしている。そして、試験を終了した後でさえも「ワクチンは部分的にしか効き目を示さないかも知れない」とさえ付け加えた。これらと同様に、ワシントンポストは「この接種は危険この上なく、自分たちの免疫性に関して間違った安心感を人々に与えかねない」と警告した。

数多くの報道各社を通じて行われたそれぞれの警告はまったく同じ内容であった。ロシア製ワクチンは信用するべきではないという主張はプロパガンダ以外の何物でもなく、クレムリンは悪辣だと言わんばかりであるが、この西側の言い分は、逆に、試験が終わってはいない自分たちのワクチンを西側が計画に先立って使用することを中止に追い込むことになるかも知れない。


ロシアのせいで、報道各社は突然ワクチンの安全性の問題を喋り出した

 pic.twitter.com/eP5DWGMOHu
Ben Br@ddock (@AutistLvsMatter) August 11, 2020

ロシアにとってはワクチンの競争は国の威信がかかった課題であろうことには疑いの余地がない。このワクチンの名称は「スプートニクV」とされており、これは世界で初めて宇宙軌道に打ち上げられた衛星を引用したものであって、スプートニクは当時のソ連邦にとっては宇宙開発競争における強力なプロパガンダであり、クーデターでさえもあった。当時の状況と同様に、新聞各社がワクチンの安全性について警鐘を鳴らすことには一理ある。ガーディアンが指摘しているように、たとえもっとも厳密な試験を実施したワクチンであっても、最良の結果であっても効能を発揮せず、最悪のシナリオでは恐ろしい副作用をもたらすかも知れないのだ。
しかしながら、ロシアがその快挙を宣言する前はこれらの報道各社は正真正銘のワクチンの信奉者であった。「ワクチン接種は人命を救い、われわれの子供たちを防護し、公衆衛生上の偉大な成果である」と、この3月、ニューヨークタイムズ紙の論説ページ述べていた。執筆者には米公衆衛生局長官も含まれており、彼らは副作用に関する懸念をくだらないことだと一蹴し、一般大衆に政府のワクチン接種プログラムに参加し、皆が支えるようにと求めた。この7月にも「新型コロナワクチンに対する信用の欠如」は免疫を広く確保することを台無しにしかねないと同紙が書いたばかりである。

公平を期して言えば、後者の記事は、今回はプーチンではなく、ドナルド・トランプ大統領と彼の「ワープスピード作戦」と名付けられた開発プロジェクトを槍玉にあげて、西側の余りにも前のめりのワクチン開発には危惧の念を起こさせた。しかし、そのたった2カ月前にタイムズは「記録的な迅速さ」で開発を行う西側の取り組みは新型コロナの大流行の中で「希望」を与えるものであるとさえ言っていたばかりだ。

ガーディアンもまったく同様だ。同紙のジャーナリストは先週ワクチンに関する陰謀説を信じる「白人で、中流クラスのピンタレストを愛好する母親たち」をからかった。その1カ月前、彼らはたとえ不完全なワクチンであっても「成功だ」として賞賛されるだろうと言う専門家の意見を特集していたのである。

RT.COMからの関連記事:Safe & effective’ over ‘first’: US throws shade at Russia’s first-to-market Covid-19 vaccine

成功裏に開発された英国のワクチンは危険なほどに愛国心を煽ることになるのではないかとの懸念を述べたオックスフォード大学の教授が指摘したように、西側のメディアはロシア製のワクチンが大流行の流れを変えるのを目にすることはまったく耐えられないように見える。諸君は想像できる?大統領選挙に介入し、スパイが市民に毒薬を飲ませ、自由主義の秩序ある世界に対してトランプを通じて苦痛の種をばら撒いたプーチンのロシアが恐ろしい疫病から世界を救い出すワクチンを世界に先駆けて市場に送り出すなんて許せるか?

言うまでもなく、ロンドンのフリート街やニューヨークの八番街については多くの言葉が鵜呑みにされるであろう。もちろん、これらの話は昔の話である。可能性を秘めたワクチンはどれでもギャンブルのようなものであるのは何時ものことだ。限定的な使用と並行して試験を継続し、スプートニクVの有効性はこれから実証しなければならない。ロシアの努力は結局失敗に終わるかも知れない。もしそうなったら、少なくともロンドンとニューヨークにおける時事問題の批評家や解説者たちはほくそ笑むことであろうが、大流行は呪われる。

注:この記事に表明された見解や意見は全面的に著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。

これで全文の仮訳が終了した。

次に、ふたつ二つ目の記事として、「病気そのものよりも質が悪い治癒:われわれは聖書を燃やしているBLMデモの参加者の実際の姿を撮影した。ニューヨークタイムズはフェークニュースを使ってそれを潰そうとした」と題された記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う(原題:Cure worse than disease: We filmed REAL BLM protesters burning a Bible. NY Times tried to ‘debunk’ it with actual FAKE NEWS: By RT, Aug/12/2020)

この記事も最近のものであって、私に言わせると、これは大手メディアの凋落振りを示す数多くの事例の中のひとつである。


Photo-2: 所蔵の写真 - オレゴン州ポートランド市での警察の暴力に抗議してデモの参加者が米国旗に火をつける © Reuters / Caitlin Ochs


大手メデイアはポーtpランドでデモ参加者らが聖書を燃やしている様子を伝えたRuptlyの動画を「ロシア側の虚偽報道」であるとして非難した。しかし、これは何の修正も加えてはいない動画であって、幅広く閲覧されている情報に対して、いわば不都合な情報を伝えた相手に対して襲撃を加えるためにフェークニュースを繰り返して流し、対抗しようとしたものである。

(訳注:RuptlyRTの子会社で、ドイツのベルリンに本拠を置いている。国際的な動画ニュースを扱い、オンデマンドでのニュース配信を専門としている。)

デモの参加者たちは先ずは炎の上を国旗で丁寧に覆い、燃えている聖書の周りに集まって、「トランプ、くたばれ!」と叫んでいる。この情景は90秒足らずで記録された。何人かのデモ参加者は小さな火の上に手をかざして暖を取ろうとするも、聖書が燃え尽きるにつれて体を温める素振りだけとなった。

これは扇動的な画像である(駄じゃれではない)。ある方面からはこれらのデモ参加者は多くの市民に好かれている国家的な象徴や宗教的な象徴に攻撃目標を定めているとしてすでに避難されているが、Ruptlyはこの動画については抗議デモの65日目に連邦政府のエージェントが連邦裁判所から立ち去った後に起こった出来事を説明しただけであって、この動画からそれ以上のことを導き出す積りなんてなかった。これらの映像はその事実を良く物語っている。

https://youtu.be/TZ7_grbfla0


しかし、ニューヨークタイムズによると、この動画がソーシャルメディアや保守的な世界規模の情報通信ネットワークで急速に拡散したのはそのコンテンツに自分たちの政治的信条を支えるようなニュース性があったからというわけではなく、それはクレムリン政府の必死のプロパガンダであったからだと主張する。「これは2020年の大統領選では初のロシア側からの情報操作のひとつだ。」 

タイムズはRuptlyの撮影者を明確に非難しているわけではないが、同紙はこの動画の信憑性について疑義を挟めることは何でも行おうとしている。同紙は「事実」は動画の劇的な見出しが読者に信じ込ませるであろうものよりも「遥かにありふれたものであった」と言う。

動画が見せてくれる内容からも明らかなように、聖書や国旗を燃やすことは「デモの主要な行動からは程遠いもの」であったとタイムズは書いたけれども、その行動そのものは動画によって示されている程には衝撃的なものではないと主張した。「何千人ものデモ参加者の中の数人が一冊の聖書を燃やした。もっと大きな火にするためには二冊目も燃やしたかも。」

彼らが言うには、そこから先はすべてがロシア側の情報操作であって、「その餌に飛びつき」、このストーリーをさらに拡散した保守派の批評家らは国家を分断する種を撒き散らているが、バカだが役に立つ連中だと見なされた。これで一件落着か?

RT.COMの関連記事: Portland mayor blasts rioters for 'attempted MURDER'...because it could help re-erect Trump?

この単純化された倫理劇はそれが答えてくれるよりもはるかに多くの新しい質問をもたらしている。まずは、「平和的なデモで聖書を燃やしても、いったい何冊だったらこの行為を許容できるのか?」という点だ。

Ruptlyの動画には何の修正も加えられてはいない。そのオリジナルの表題は「ポートランドのデモ参加者は抗議デモの65日目の夜、聖書と米国旗を燃やした」というものであるが、これは動画の内容を率直に記述したものだ。動画の記述内容はこの表題を超すような推測の賜物であるというわけでは決してない。

「左翼の活動家」がポートランドの裁判所の前で行う宗教的なテーマの焚火のために「何冊もの聖書」を運んできたと主張したのは保守派のソーシャルメディア工作員であるイアン・マイルズ・チョングであった。そして、彼の主張は共和党上院議員のテッド・クルスから始まってドナルド・トランプ・ジュニアに至るまで誰もが取り上げた。しかし、このことはタイムズにとっては重要ではなかった。その後の報道はすべてが毒(ロシア)樹の果物であった。(訳注:「毒樹の果実」は米国の法律用語であって、違法な手段で収集した証拠を出発点としてそこから二次的に収集された証拠。その場合証拠能力の有無が問題となる。)

この出来事を撮影したのはRuptlyだけではなかった。ニューヨークポストは聖書と国旗を燃やしている様子を自社で撮影し、cbsの地元の系列会社もRuptlyがその動画を配信する前にデモ隊の実況を伝えるニュースフィードで聖書を燃やしたことについてすでに書いていた。

アンティ―ファのデモ参加者たちがはた迷惑な行動を取った時大手メディアがそれに干渉する記事を流すのを見ることはもはや稀でも何でもない。バズフィードはニューヨーク州トロイにおけるBLMによるグレース・バプティスト教会に対する攻勢に関して防御をするための長い記事を書き、牧師の「頑固一徹な」見解を詳細に説明し、彼らは騒ぎ立てるデモ参加者が礼拝堂を焼き払うことの正当性を暗に示した程である。そうそう、RTは動画を再ツイートした。つまり、あのストーリーは虚偽情報であるのだ。

自己流スタイルのプロパガンダ専門家や学者らは学術論文での間違った言葉の使い方や倫理的な破綻を通じて目立たないながらもロビー活動を行い、「虚偽情報」という言葉を政府や米国が好まない「ある目的のために都合良く構築された事実」として再定義し、大手メディアはこの新たな定義を喜んで受け入れた。その結果、何が起こったか。米国の選挙を真近に控えて、メッセージというものは日に日にその重要性を失っているのである。何かを信頼することが出来るかどうかはメッセンジャー次第となった。

RT.COMの関連記事:Fashion icon? Lionizing the people who've turned Portland into a battleground shames the proud history of the Washington Post

これで、二番目の記事の仮訳が終了した。

西側の大手メディアが患っている「ジャーナリズム欠乏症」は末期的な段階に至ってしまったと言っても過言ではない。幸か不幸か、その病状を端的に示す逸話にはこと欠かないのである。ここに挙げた事例は数多くある逸話の中のほんの二例に過ぎなく、読者の皆さんもさまざまな状況の中でこれらに似た実例に数多く遭遇し、これからいったいどうなるのだろうかという思いや憂いを抱かれているのではないだろうか。

この事実を自覚し、ジャーナリズムの回生を図るにはわれわれ一般人には当面ひとつだけの選択肢が与えられている。それは代替メディアを読み漁り、その記事や著者が自分が求めている報道姿勢を持っているかどうかを見極めることだ。

私が代替メディアの重要性に気が付いたきっかけはシリアの内戦であった。私は2013217日に「乗っとられたシリア革命」と題してシリア市民の声を投稿した。シリアの内戦については大手メディアはいわゆる大国の思惑にしたがって解説し、多くの事実を歪曲して報道した。そういった歪曲報道の積み重ねによって、「シリア民間防衛隊」(別称「ホワイトヘルメット」)という反政府派の宣伝部隊には、後に、アカデミー賞の短編ドキュメンタリー部門で受賞するというおまけまでが付くに至った。そして、シリアの内戦に関する情報の歪曲は次のような極めつけを世界中に知らしめた。国連組織のひとつである化学兵器禁止機関(OPCW)がシリアの現地で検証を行った検査官の報告書を歪曲して、西側大国のシナリオに沿った報告書に改ざんし、それを公式の報告書として公開するという極めて破廉恥な出来事までが一般大衆に知れ渡ることになったのである。

具体的な事例を挙げようとすると数多くの出来事があって、実は、どれを取り上げようかと惑うほどである。

好むと好まざるとかかわらず、われわれは今そのような世界に住んでいるのだということをしっかりと認識しておきたいと私は思う。