2021年2月25日木曜日

NATOの「実行不可能な指令」

 その昔「Mission Impossible」と称されるテレビ番組があった。日本語では「スパイ大作戦」と訳され、その番組は人気を博していた。また、より忠実な和訳としては「実行不可能な指令」という訳もある。この投稿では後者を用いることにしよう。

テレビ番組ではその名称が示すように、東西間の冷戦下におけるスパイ行為が持つ特有な奇抜さや超現実的な過酷さに焦点が当てられ、一般大衆のための娯楽番組として提供されていた。それと同時に、今思うと、あれは東西冷戦が幅広く受け入れられ、その状況が揺るぎない地位を得ていた頃のことではあったが、冷戦の存在を一般庶民の考えの中に念を押すようにしっかりと植え付けておくための洗脳の道具でもあったとも言えよう。冷戦構造によって金儲けができた米国の産業は、今も、米軍そのものを始めとして巨大な兵器産業はさらに巨大化するばかりである。その影響力はわれわれ素人が考え得る水準を遥かに超えて、想像を絶する程に強力である。

ここに、「NATOの実行不可能な指令」と題された記事がある(注1)。218日付けの記事であるから、極めて最近のものだ。

冒頭に述べたテレビ番組は半世紀も前のものであった。さらには、かって英米を中心とした西側世界が敵国と見なしたソビエト連邦はとうの昔に崩壊し、あれから30年も経っている。旧ソ連邦がかって目指した社会主義体制は現在のロシア国内でさえもすでに忘却の彼方へと忘れ去られてしまった。しかしながら、西側トップの精神構造は不思議なことに当時と何も変わってはいないようである。米国政府の対外政策はロシアと中国を敵性国家に位置づけて公に進んでおり、その傾向は、最近、より顕著となっている。実に不思議な事態である。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

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NATO加盟国の国防相たちは既報のごとく自分たちの軍事同盟に関する目標を徹底的に議論し、新たに作成しようとしている。この同盟組織は、冷淡にも、同盟の存続を必要とする目標を見つけ出すことに躍起となっているのだ。

30ヵ国の加盟国から成るこの軍事ブロックは合計の年間予算が1兆ドルを超し、米国はその総額の4分の3を賄い、米国自身の軍事予算は約7400憶ドルにも達する。

今週開催されたビデオ会議は新たに発足したバイデン政権にとってはNATO加盟国との会議としては初仕事となった。米国防長官のロイド・オースティンは同盟国との関係を強化することに優先順位を置くバイデン大統領の意図を説明するためにこの会議で演説を行った。前トランプ政権の下ではこの優先項目は色褪せていたものだ。

しかし、そのメッセージ自体はワシントンの古くからの主張と極めて似ている。つまり、NATO加盟国はロシアや中国からの脅威と戦うためにはもっと多くの軍事費を計上しなければならないというものであって、まるで壊れたレコードを聴いているか、ぐるぐると回って来るデジタルのループを観ているかのような具合だ。

たったひとつの違いがあるのだが、それはその内容についてではなく、スタイルである。トランプはNATO加盟国に金を吐き出させるためには不愛想で辛辣であったが、バイデン政権の口調はもっと穏やかであり、大西洋パートナーシップの重要さについて優しく語りかけ、戦略的な意思決定においては同僚の立場をより大事にして臨むと約束している。

しかしながら、本質的には、ヨーロッパ諸国がより多くの金を使って、米国の軍産複合体を景気づけることが重要であり、米国のためには金になる商売であるという点については何の変わりもない。軍産複合体は今や機能障害を起こしている資本主義のための生命維持装置なのである。米国の資本主義が機能し続るにはヨーロッパ諸国が米国製の戦闘機やミサイルを買い続けることが必要なのだ。

経済の諸問題や幅広く見られる社会的挑戦に見舞われている現在の世界経済においてはこの米国からの売り込みを実現することは極めて困難である。非生産的な戦争マシーンのために毎年1兆ドルも浪費することを果たしてどのように正当化するのであろうか?

もちろん、NATOのチアリーダーは主として米国人であるが、彼らは中国やロシアといった敵国を改めて発明しなければならない。それはまさに金遣いの荒い軍国化された経済が存続することを正当化するためなのだ。さもなければ、国家の資源を浪費し、狂気の沙汰であると見なされかねないのである。

それでもなお、人さらいのジェスチャーゲームには非常に深刻な概念上の欠点があった。まず、概念自体が本当ではないのである。つまり、ロシアにしても中国にしても西側諸国を破壊することを狙っている敵国などでは決してない。二番目には、このジェスチャーゲームは論理とは相容れない。NATOの軍事費の総額はロシアと中国の総額の約4倍にもなる。しかしながら、これらのふたつの国はほんの僅かの予算しか軍事費に割り当ててはいないにもかかわらず、 われわれはこれらのふたつの国が30ヵ国から成る軍事ブロックを脅かしていると信じるよう期待されているのである。

NATOを売り込もうとする連中が見せているもうひとつの概念上の問題は冷戦が始まった約80年も前に誕生した。経済や政治および情報伝達における多極的な統合が進んだことを受けて、今日の世界は当時のそれとは著しく異なっている。

ちょうど今週のことであるが、新たに公表された貿易額によると、中国は米国を抜いて、EUの貿易相手国としてはNo.1の地位を獲得した。

中ロとユーラシア諸国との経済協力は世界経済の発展の要となる。

ワシントンとは時折意見の相違を見せるヨーロッパの連中はこのことをよくわきまえている。昨年の末、EUは中国との投資協定を締結した。これはワシントンからの反対に遭遇したが、それを押し切って陽の目を見ることになった。

確かに、敵国からの脅威を喧伝することによってNATO加盟諸国に対して威張り散らし、ゆすり取ろうとする米国に残された日々はすでに秒読みの段階に入っている。社会的に重要なニーズが数多く存在する中、世界はもはや今までのような資源の浪費を続ける余裕なんてない。NATOのバカ騒ぎを売り込み続けることは政治的にも不可能となりつつある。

アメリカの陰謀論者や政治家らによって描かれた「邪悪な世界」は他の人たちのほとんどが認識できる現実的な世界にはもはや当てはまらない。確かに、ダイハードな冷戦擁護者の考えは今もヨーロッパには潜在している。たとえば、NATOの事務総長を務めるイエンス・ストルテンベルグやポーランドやバルト諸国のロシア恐怖症に陥った連中だ。しかし、彼らは片隅に集まった、頭のおかしな少数派なのである。

市民たちの間に見られる常識的な認識においてはNATOは切羽詰まった社会的ニーズが山積する今日の世界には何の目的さえも持たない過去の遺物であることは明らかだ。ヨーロッパの経済を牽引する最強のドイツとフランスのワシントンに対する惚れ込みようは今やすっかり弱まっている。より友好的に振る舞おうとする民主党の大統領に代わった後においてさえもそうだ。

バイデン政権は前政権のトランプに比べるとより賞賛され、穏やかであると思うかも知れない。しかし、他の同盟国に対して不必要な軍国主義にもっと多くの予算を注ぎ込み、必要不可欠な貿易相手国である中ロに敵対するようにという要求は米国主導のNATO諸国にとっては実行不可能な指令である。現実世界とは相容れないNATOの認知的不協和に見られる矛盾は容易に認めることが可能で、この同盟を信用することはもはや不可能で、組織として存続することはできそうにない。

著者のプロフィール: フィニアン・カニンガムは国際関係について数多く執筆し、彼の記事は幾つもの言語で出版されている。彼は農芸化学で修士号を取得し、新聞ジャーナリズムに身を投じる以前は英国のケンブリッジで英国王立化学会のために科学部門の編集者を務めていた。彼は音楽家であり、作詞家でもある。約20年間ほど、彼は主要なニュース・メディアで記者として、ならびに、編集者として働いてきた。たとえば、ミラーやアイリッシュ・タイムズおよびインデペンデント紙が含まれる。

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これで全文の仮訳が終了した。

旺盛な軍需を排除すると米国経済はマヒ状態に陥ると言われてすでに久しい。そして、米国経済は今まで以上に軍事費に依存する傾向が強まっている。

駐留米軍を海外から引き揚げると公言したトランプ前大統領は国内経済を好転させ、失業率を低下させることに貢献したものの、二期目の政権を実現するには至らなかった。最近の大統領選中に軍産複合体がいったいどのような役割を担ったのかについては素人の私には明確に総括できない難しいテーマであることから、それは専門家にお任せしようと思う。とは言え、ことNATOという軍事同盟について言えば、諸々の情報を繋ぎ合わせて判断すると、結局のところ、トランプ政権が推進しようとした中東からの米軍の引き揚げは中途で挫折し、今や元へ戻ってしまった感が強い。

ヨーロッパ各国にとってはNATO軍の存在は財政的にますます重荷になっている。トランプ前大統領はヨーロッパ諸国に軍事予算をもっと大きくするようにと求めた。しかも、極めて辛辣な口調で・・・。そして、バイデン新大統領に代わってからはその口調は友好的なものに変化したと報じられている。つまり、軍事費を増大せよというNATO諸国に対する米国の要請は優しい口調で今もなお求められているのである。「米国第一主義」とはこういうことであったのかと私には今になってようやく分かった次第だ。

日本にとってはヨーロッパの現状は決して対岸の火事ではない。大雑把に言えば、それは日本や韓国における駐留米軍の存在が日韓の国家財政に大きな影響を与えているという点ではまったく同様である。演ずる題目は同じだが、それを演じる舞台が違うだけだ。米国は日韓にも軍事費を増額せよと言う。どの国にとっても、仮想敵国の存在に対抗するための軍事費の増大と各国固有の喫緊の課題とは財政的には両立しにくいのが現実だ。つまり、これは限られた国家予算の中、ならびに、世界経済が低迷する中でどちらを優先するべきかという多分に政治的な問題である。われわれ選挙民は投票した政治家の動向に関して目を光らせていなければならない。

この引用記事の著者は冷戦はジェスチャーゲームであると言う。実体的な概念は何もないという意味である。しかし、その産物であるNATOを見ると、それは恐竜のような巨大組織に成長してしまった。今や、EUNATOに牛耳られているとさえ言われている。政治家がジェスチャーゲームにとらわれずに冷徹に物事を判断することができれば、新冷戦の渦中にある現行の東西間の国際政治はもっと単純明快に整理することが可能となるのではないか。

しかし、とんでもない落とし穴が待っている。ジェスチャーゲームが昂じるとジェスチャーを行っている本人自身が洗脳され、自分たちのジェスチャーは正しいのだと思い込んでしまう危険がいやましに高まる。ポーランドやバルト諸国が反ロ姿勢で大騒ぎをしていると、ロシア国境に配備されたNATO軍はロシア軍と小競り合いを始めるかも知れない。彼らにとってはそれは実に正当な判断であり、行動でもある。たとえ自分たちの主張が間違っていたことが分かったとしても、自分たちの組織の名誉を守り、自己満足を維持するためにはその嘘をかばおうとする。組織としての心理が働くのである。数年前、スウェーデン沖ではロシア海軍の潜水艦の目撃情報が公けに流された。しかしながら、それが間違いであったとスウェーデン海軍が認めるまでにはえらく長い時間がかかった。これはまさにジェスチャーゲーム依存症によってもたらされた視野狭窄だったのではないか。

23日、ペンタゴンの報道官は中国海警局の船による日本の領海への侵入を止めるよう中国を非難したという。この非難は従来の発言者である国務省ではなく、今回は米軍を直接指揮する国防省からの非難であることから内外に注目されることになった。米国は対中戦争というジェスチャーゲームを一歩前進させたとも読めるからだ。

尖閣諸島周辺では中国の艦艇と日本の艦艇がお互いの進路を譲らず、正面衝突となりかねない。そうなれば、日中交戦の現実味が高まる。ロシア国境付近であっても尖閣諸島周辺であっても、何れの場合でも米軍が背後で指揮をとっている。ポーランドやバルト諸国、あるいは、日本が単独行動をするとは考えられない。すなわち、ここで重要なことは米軍はロシア軍や中国軍とは直接の交戦をせずに、実際に起こるのはNATO軍や自衛隊による代理戦争になるという点だ。

米国の専門家筋は米ロ戦争や米中戦争は起こらないし、起こすこともないと言う。しかしながら、NATOが飽きることなくロシアとの国境に迫っている現実を彼らはどのように説明するのだろうか?彼らは「あれはジェスチャーゲームだよ」なんて言う筈はない。結局、この文言は米国の国内向けの発言であって、欧州や日韓に対してはまったく当てはまらないのではないか。米国は「中ロに対する日本による代理戦争は決して許さない」とは一言も言ってはいない。

「これは深読みのし過ぎだ」と言って、一笑にふすことができるような政治的環境を日中間に整えることはできないのだろうか?そうすることができれば、日中戦争を避けることは可能となるであろう。そうなれば、日中両国の一般庶民にとっては極めて幸いなことだ。


参照:

1NATO’s Mission Impossible: By Finian Cunningham, Information Clearing House, Feb/18/2021






2021年2月18日木曜日

羊症候群

 ここに「羊症候群」という表題をもった記事がある(注1)。この羊症候群という言葉はそれほど使用されてはいないと思うが、この文言が言わんとする意味は容易に伝わって来る。羊のように従順な一般大衆が示す行動パターンを指している。この記事の著者はこのブログで何回も登場している著名なピーター・ケーニッヒ。

フェークニュースが乱造され、大手メディアはそれらを執拗に喧伝し、ソーシャルネットワークを提供するハイテック企業は偏向した検索を行い、特定のアカウントを閉鎖し、一方的な政治路線を押し通そうとする。そんな姿勢が恥も外聞もなく横行する今日、羊症候群と言う言葉はそうした大手メデイアやハイテック企業の格好の獲物とされている一般大衆の姿を見事に言い表しているように思える。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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今日および最近の数日間、新たな「メッセージ」、つまり、「公衆衛生の安全を期す」ことを理由とし、一般大衆の自由を脅かす政府の規制策、つまり、新型コロナの感染を予防する策がヨーロッパ中で宣言され、緊張が走った。破廉恥極まりないこれらの政府は、文字通り、「われわれはネジをさらに締めなければならない」と言う。真面目くさってそう言うのである。何てことだ!彼らは自分たちをいったい何様だと思っているのだろうか?彼らは選挙を通じて一般市民によって選んで貰った立場にあり、税金から給与を受けとっている身分である。まさに、これは国家反逆罪ではないか。しかしながら、一般大衆は多くの質問を浴びせることもなく、この状況を受け入れる。幾人かは苦言を呈するが、十分に大きな声とはならない・・・ こうして、われわれは「羊症候群」が蔓延するど真ん中で生活をしているのである。

都市閉鎖を婉曲に表現するために、一般大衆とは友好的な関係を持たなければならない政府はこれらの策を「対策」と呼び、新たな策が次々と打ち出され、ますます抑圧的になって行く。しかしながら、そのような施策にうんざりした一般大衆の耳にはこの「対策」という言葉はより柔らかに聞こえてくるから不思議だ。国によっては三回目の都市閉鎖となるかも知れないが、二回目の都市閉鎖においてはさらに商業活動の閉鎖を招き、自宅勤務を強いる。規制はより厳しくなり、警察によって監視される。社会的距離の維持やマスクの着用が求められ、屋内でのグループ活動は禁止され、アパートで人が集まる場合は5人を限度とする、等の規制が含まれる。

たとえば、マスクの着用に関しては効力がないことについてだけではなく、マスクの着用がもたらす危険性をも含めて、75件プラスマイナス23件の研究報告が提出されている。これらの研究は特に子供たちや若い大人たちに対する危険性に注目したものだ。しかしながら、すっかり買収され、機能障害を起こし、一方的な姿勢を強要されている西側の政府は何れもそのような危険性には関心を払おうとしない。ましてや、プレスティチュートとして悪名の高い大手メディアも、当然のように、関心を払おうとはしない。彼らは以前からの筋書に従っている。つまり、「マスクを着用しなければならない」とか「人と人との間の距離は6フィートを維持しなければならない」と言い、これらの要件は警察の監視下で実践させられる。

また、人々は自宅で仕事をするようにと強要される。孤独で、同僚との接触はなく、出会いや相互関係があり得ないままでいることが個々人にとって如何に破壊的であるかに関しては真面目な心理学者や社会学者からの報告がある。さらに言えば、社会全体にとっても有害である。物理的な接触がなくしては社会は崩壊する。もちろん、これらはすべてが不埒だ。すべてのレストランが閉鎖される。人々が集い、意見交換を行うことができる催し物はすべてが禁じられる。

人々は不幸だと感じる。間違いなく不幸である。しかしながら、このような独裁政治を止めさせるには不十分だ!まあ、違った行動を起した方が良さそうだ。さもなければ、私は罰せられることになるかも。恐怖の念だ!この恐怖感が羊症候群をもたらすのである。これは、今日、われわれを悩まし、社会の奥深くに蔓延する病である。こうして、われわれをしばらくの間悩まし続けてきた。みんな聞いてくれ!われわれはこの症候群から脱却しなければならない。

しかし、皆が揃って立ち上がり、「もう飽き飽きした」、「これ以上はもう我慢できない」、「政府は独裁的だ」、「従順でいることはもう止める」と叫び声をあげるにはまだ不十分であるかのようにも見える。

さらには、独裁的な政府に何らかの新しい権力を与え、その信用を増加させるために、選りすぐりの学者で構成された「タスクフォース」または「委員会」が組織される。これは、特に今後権力を付与される連中によって立ち上げられ、政府が何をすべきであるかについて助言をするよう求められる。これは古くからある二重構造であり、政府が人気がないテーマに関して何らかの意思決定をしなければならない時やそうしようと思った時、政府はタスクフォースを組織し、意見の提出を求めるのである。しかしながら、タスクフォースは政府がいったい何を期待しているのかを知らされており、どのような意見を提出すべきかを十分に承知しているのである。つまり、これは事前に練り上げられた「やらせ」なのだ。

英国やフランスにおいては新しい都市閉鎖策が課されてからすでに何日にもなるが、オーストリアやスイスは二・三日前に宣言をしたばかりだ。EUとしては何も言わず、何の連携動作も行わない。これらの都市閉鎖は個々の国の経済を破壊し、EU全体が経済における自殺行為を行っているのをEUとしては見たくはないかのようである。EUはワシントンやNATOによって骨抜きにされているのだ。

新たな都市閉鎖、ならびに、今後の何回目かの波に襲われ、恐らくは、さらなる都市閉鎖策は全員がワクチンを接種され、彼や彼女の体にDNAを変える物質と一緒に「電子磁気ゲル」が注入されるまでは続くことであろう。当面、これらは時間的にはすべてが完全にコントロール可能である。すべてをデジタル化する目標は2030年だ。AIや人間のロボット・コントロール化、つまり超人間化することが国連のアジェンダ2130の目標なのである。それを達成するための道具はビル・ゲイツが作った「アジェンダID2020」だ(詳細についてはhttps://www.globalresearch.ca/coronavirus-causes-effects-real-danger-agenda-id2020/5706153を参照されたい)。

都市閉鎖を行えば行うほどより多くの小規模のビジネスや店舗、レストランが破壊される。小規模ビジネスの所有者に苦労を強いると、さらに多くの倒産を引き起こす。一般庶民やその家族に悲惨な状況をもたらし、人々は職を失う。

家庭学習のことをちょっと想像してみて欲しい。4人住まいで、両親は共働き。子供たちにはそれぞれが学校の先生との繋がりを維持するためにパソコンが必要であって、家庭学習を何とか続ける適度な技を習得しなければならない。そして、たとえ両親に時間があったとしても、誰もが自分の子供たちを支援するだけの技を持っているのだろうか?新型コロナの影響を受けてすでにかなりの苦労に曝されている社会において各家庭は子供たちが必要とする電子機器を購入するだけの余裕を持っているのだろうか?

事態は壊滅的だ。またもや理不尽な事態である。この状況は結果として西側の世界に教育を十分に受けなかった、あるいは、教育がまったくない子供たちをもたらすことであろう。教育のない子供たちは容易く操縦し得る大人に成長することとなる。まあ、彼らは自分たちの親の羊症候群と歩調を合わせることになるかも。だが、果たして彼らは本当にそうなるのだろうか?ここには動的な状況が出現し得るからだ。エリートたちの直線的な思考や期待には沿わないかも知れない。

ところで、北側では上記のような状況が起こっている。国の全人口の三分の二以上が蔓延する貧困や困窮、飢餓に襲われ、社会全体が過酷な状況に陥っている南側ではどんなであるかを想像していただきたい。こういった国々では子供たちはどのような遠隔授業を受けているのだろうか?はっきり言って、遠隔授業なんて受けてはいない。つまり、子供たちは学校へ通うこともなく、南側では教育のない子供たちを生み出している。われわれはそういった状況を許しているのだ。これらの子供たちの大部分は貧しいままであって、エリートたちにとっては格好の労働提供者となる。あるいは、裕福な国々が自分たちの金儲けのために戦争を引き起すと彼らはその餌食となる。ところで、忘れないでいただきたい。戦争というのは儲かる。結局のところ、膨大な権力と果てしのない金儲けに対する喉の渇きが戦争を引き起こすのだ。

通りを行き交う人たちや小さな商売の経営者たちの話を聞き、彼らと喋ってみると、誰もが動転しており、政府から補助金を支給して貰ったとしても、彼らはこの状況を生き長らえ、商売を再開することなんて到底出来そうもないと多くの者が言う。スイスでは、「ガストロノミー・スイス」のトップは都市閉鎖をもう一回実施すればレストランの50%は生き残れないかも知れないと言った。ドイツやオーストリアでも同じような数値が予測され、状況はまったく同じである。何処も壊滅的な状態にある。

ここまでわれわれは主として西側について喋ってきた。東側では、つまり、ロシアや中国、上海協力機構(SCO)の参加国では新型コロナの撲滅対策においては人々に優しい政策が採用され、様相はまったく異なる。

西側では、まったく何の用にもならない、純粋に抑圧的な規制が採用され、それによって一生の間に蓄えた財産の全てや一生かけて成し遂げたファミリー・ビジネスが台無しにされてしまうことがある。この規制の目的は病気を撲滅することではなく、新型コロナに対する恐怖心を植え付け、今後やってくるであろうより厳しい時代に対してわれわれを従順にさせることである。なぜならば、あなた方が何を考えようとしても、2021年またはその翌年の2022年の夏にはわれわれの正常な生活が戻って来るだろうと思うかも知れない。しかしながら、われわれの以前の生活は戻っては来ない。もしも彼らが今やろうとしていることをわれわれが許してしまうと、戻って来ることなんて決してないだろう。

グローバリストから成るこの小さな徒党は超大金持ちたち(シリコンバレーの二桁か三桁の数の億万長者)の側近を介してマトリックスに反対する者は誰であっても検閲する力を持っており、そればかりではなく彼らは揃いも揃って米国の大統領さえをも検閲するのである。そのような状況にあって、我々が住んでいる国家は果たしてどのように見えるのであろうか?われわれは自分たちの社会を「民主主義的」であると言うのだが・・・

あなたの大統領が自分の好みであるか、それとも、嫌いであるかには関係なく、これはまさに言論の自由があなたから剥奪されたことに等しい。そんな風に思わないだろうか?とは言え、われわれはまたもや何もしない。われわれは単にその様子を眺め、不平を言うが、何もしない。何かが起こることを許容する。もしかしたら、今こそすべてのソーシャル・メディア・プラットフォームを破壊し、それらをボイコットする最高の機会なのではないか?それに尽きる。どうかお願いだから、ソーシャル・メディア・プラットフォームなんて無しで生きようではないか。2030年前にはそんなものが存在することすらも知らなかったし、これ程までに依存することになるなんてわれわれは誰も予想しなかった。

われわれが今何の影響も受けずに独立した思考をすることができるならば、フェースブックやツイッター、インスタグラム、ならびに、その他のすべてのプラットフォームから今こそ縁を切る時だ。これらはもう使わないことにしよう。ごく普通の対人コミュニケーションを行い、対話に戻り、お互いに会い、電話で話をするとしよう。もし可能ならば、固定電話を使おう。もちろん、私は真面目にこれらを提案している。

言論の自由は剥奪され、あなたがソーシャルプラットフォームを通じて送り込んだデータを駆使して作成されるアルゴリズムによってどんどんAI化が進められ、あなたは隷属化されて行く。そのような動きがもたらす影響を少しでも考えて欲しい。今まで以上にロボット化やデジタル化が進行する。われわれの脳はDARPAが開発したスーパーコンピュータに連結され、乗っ取られてしまうが、あなたはそんなことには気付かないし、われわれは命令を信じ、従順にそれに従う。われわれの体には何かが埋め込まれ、そのようなスーパーコンピュータによって管理される。いったい誰がそんなことをするのだろうか?それはまさに上記のグローバリストの徒党たちだ。この時点でわれわれは「羊症候群」を具現化し、逆戻りすることなんてもうできない。DARPA (Defense Advanced Research Projects Agency)はペンタゴンのひとつの研究開発部門である。

このような状況を望む者なんていったいいるのであろうか?

とてもじゃないが、そうは思えない。

われわれは今何らかの行動を起こさなければならない。私には解決策は無い。しかし、皆が集まって、お互いに霊的に連結し合うことによって解決策を見出すことができるかも知れない。あるいは、解決策を表面化させることが可能となるかも知れない。

極めて虐待的な環境を意識的に、そして、霊的な思考によって変革するということは実に高貴な動きとなるであろう。われわれ自身の集団的な運命に影響をもたらすような高周波を発信させるのだ。われわれはそうすることを信じ、確固たる同志としての自分を信じなければならない。

もしもわれわれが人間としてわれわれ自身の権利や公民の権利を取り戻し、それらを堅持することに失敗するならば、やがては母なる大地が自らを清めようとするであろう。彼女は非人間的な泥沼を排水するだろう。多分、それには一回か二回かの巨大で長く続く大災害を必要とする。壊滅的な津波を伴う巨大地震、何週間にもわたって空を真っ暗にするような巨大な噴火、いくつもの巨大噴火、あるいは、文明の一部を破壊し、完全にマヒ状態にしてしまうような巨大ハリケーンや暴風雪、太陽の巨大な爆発による全世界の電子システムや送電網の破壊(これはデジタル社会を一瞬の内に終焉させる)。これらはどれもが新型コロナがこれまでにもたらした困難やそれを企んだ連中よりも比べようがないほどに破壊的である。

そのような壊滅的な出来事の後に生き残った人達のほとんどはゼロから再出発をしなければならない。ほとんどゼロからのスタートである。そして、デジタル化は間違いなく皆無だ。しかしながら、今や自由を喪失してはいるが、われわれの必要に応じて何もかも新たに出発させることが可能で、それらを自由に発展させ、主権を取り戻すことができるのである。

何十年にもわたって、グローバリストの徒党らはわれわれに自らを美化するような嘘をつき、満足できる生活について心地良い約束をし、協力よりは競争がむしろ救いとなるであろうと喧伝してきた。これらの巧妙な嘘は自我中心の精神病質的な社会をもたらした。それだけではなく、社会の動向を左右する、つまり、反ユートピア的な生活をもたらすのにも十分であった。われわれは嫌々ながらも次第に社会の趨勢に従い、今や文明の崩壊にさえも加担している。ここに至っては後戻りすることはできない。

われわれは「羊症候群」におさらばしようではないか!今こそその時だ。

著者のプロフィール:ピーター・ケーニッヒは地政学的な現象を解析し、以前は世界銀行やWHOにて30年以上にわたって水や環境について専門的に研究をする上級経済学者であった。彼は米国、ヨーロッパおよび南アの大学で講義を行っている。彼はオンライン雑誌に寄稿し、「Implosion – An Economic Thriller about War, Environmental Destruction and Corporate Greed」の著者であり、シンシア・マッキニーの「When China Sneezes: From the Coronavirus Lockdown to the Global Politico-Economic Crisis(Clarity Press – November 1, 2020)の共著者でもある。彼はCentre for Research on Globalizationの研究員を務めている。

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これで全文の仮訳が終了した。

この記事はわれわれ一般大衆が陥っている羊症候群から脱却するにはソーシャルメディアとおさらばしなければならないと言う。われわれ一般大衆の日常からは余りにもかけ離れ過ぎているようにも思えるが、政治世界における行き過ぎた歪を考えると非現実的であるとして一蹴してしまうことはできそうにない。そんなに簡単ではない。それが私の実感だ。

しかしながら、もしもわれわれがこの機会を積極的に活用することを逸するとすれば、やがて母なる大地が自ずから非人間的な泥沼を排水するだろうと著者は言う。母なる大地が何時の日にか牙をむくであろう。それは巨大な津波を伴う大地震かも知れないし、前代未聞の大規模なハリケーンや暴風雪、あるいは、太陽の大爆発によって地球上の電子機器はすべてが破壊され、送電システムがダウンするのかも知れない。そうなったら、今われわれが享受しているテクノロジーの恩恵はゼロとなる。間違いなく、石器時代へ戻ることになる。

あり得ないこととしてこの記事を捨て去る前に、羊症候群と称される現実のわれわれ自身の姿に関してこの記事が言わんとしている内容は率直に噛み締めなければならないと思う。もしも「アジェンダID2020」という言葉が初耳であるとすれば、あなたは羊症候群に冒されていると言えよう。

今日的に言えば、ソーシャル・メディア・プラットフォームを巡ってハイテック企業が開始した情報の検閲や特定のアカウントの閉鎖は目に余る程に傲岸であり、不条理である。明らかに、民主主義の根幹である言論の自由とは相容れない。この事実を今後の議論の出発点にしなければならないと私は思う。民主主義に代わる政治制度が見つからない今、これは誰にとっても背負いきれない程に重いテーマである。


参照:

1The Sheep Syndrome: by Peter Koenig, The Saker, Jan/15/2021




2021年2月11日木曜日

米中戦争に関する専門家の解析

 

最近米国の大統領執務室の新たな住人となったジョー・バイデンは好戦派に属するようだ。トランプ前大統領とは異なり、少なくとも、戦争を回避するような姿勢は見えない。とすると、世界の覇権国を巡って起こるかも知れない米中戦争はどのような結果を招くのかという設問は専門家にとっても、素人であるわれわれ一般庶民にとっても極めて現実味を帯びたテーマとなる。

今後の世界はどう展開するのか?世界秩序の大リセットが起こると方々で言われているが、もっとも興味をそそられる具体的な側面のひとつは米国が有する世界最強の軍事力が台頭する中国に対してどのように使用されるのかという点であろう。米国以外の世界にとっては非常に不幸なことではあるが、今や、「ツキジデスの罠」にすっかり陥っている米政府を始めとした好戦派は中国に対して武力を行使することを当然のことのように考えているようである。

ここに「米中戦争に関する専門家の解析」と題された記事がある(注1)。昨年12月の記事であるから、これはまだトランプ政権がホワイトハウスにいた頃の議論である。しかしながら、その賞味期限は決して過ぎてはいない。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有してみたいと思う。

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軍事力の相関性:物資やサービスに関する米国の対中貿易は2019年には6348億ドルに達したと推測される。輸出が1630億ドルで、輸入は4718憶ドル。物資やサービスに関する米国の対中貿易赤字は差し引きで2019年に3088憶ドルに達した。サービスに関する中国との貿易(輸出入合計)は2019年に767憶ドルを記録した。サービスの輸出は565憶ドルで、サービスの輸入は201憶ドルであった。サービスに関する対中輸出超過は2019年に364憶ドルとなった。

ワシントン子の間では対中戦争の可能性に関する話がもちきりである。スティーブ・バノンは子供の頃に転倒して頭を打ったのではないかということがほぼ間違いないようであるのだが、実際に彼はそういった話には好感を抱いているようだ。中国人が如何に驚異的なことを行っているか、そして、われわれは気持ちを引き締めて米国の価値観を守り、ワンと吠えるのは何のためなのかを彼らに示してやらなければならないと言う。こうして、女どもを追いかけ回す時のようなお決まりの警告を耳にするのである。アジアの海域において臆病心に駆られ、いったいどちら側が早く瞬きをするかといった軍事ゲームを続けるのは危険極まりないことだ。実際に撃ち合いを誘発しかねないからだ。次のような状況に関してはあなた方もよくご存知であろう。つまり、戦艦が他国の戦艦の航路から逸れようとはしない。まさに正面衝突のコースである。棄権証書に署名している筈ではあるが、頭の回転が鈍い少佐が発砲を命じ、そして、われわれはその場にはおらず、急いで現場に駆けつけることになるだろう。子供たちに火遊びを許すのは決していい考えではない。

この戦争については馬鹿者たちの間では感情的な言葉がやり取りされ、そういった物事に精通している筈の連中の間では純粋に海軍用語を用いた議論がされたりするので、われわれは「第一列島線」とか「第二列島線」と言った言葉を耳にし、誰のミサイルに対して誰のミサイルが云々といった議論を聞くことになる。この種の議論はわれわれが再び第二次世界大戦を戦うとするならばまことに妥当であるのかも知れない。だが、現代の戦争はそんな戦いにはならない。ここで、上述の戦争がどのようなものとなるかに関して手短に推測をしてみよう。

戦争を開始するに当たっては、米国は自分たちの軍事力を過大評価し、中国の軍事力を過小評価する。これはペンタゴンの基本的な姿勢である。恐らく、マニュアルが存在するのであろう。とりとめのないワシントンDCの空想においては、インテリアとして緑をあしらったバーにたむろす将軍たちはこの戦争は短期戦で終わるとわれわれに言う。この戦争は容易く、数日あるいは数週間で終わると言う。だが、ベトナムやラオス、カンボジア、アフガニスタン、イラク、シリアといった事例がある。彼らの考えには降伏することなんてまったく存在せず、何ヵ月にも長引き、中国人はまったく違った考えを持っていることがやがて判明する。きっと、さまざまな奇抜な出来事が起こるに違いない。

シンクタンクのランド研究所は少なくとも心情的にはペンタゴンの所有であると言えようが、彼らは台湾海峡と南シナ海のふたつの仮想戦域に関してシミュレーションを行い、どちらのケースにおいても戦争は長びき、米国は敗北するとの結論に至った。われわれはもはや1960年代に生きているわけではないのである。

さて、戦争についてだ。第一日目、中国全土に広がっている米国のさまざまな工場が閉鎖される。たとえば、アップルは自社の工場や製品、ならびに、14億人もの消費者を有する中国市場を失う。店舗が閉鎖される。(アップルの最高経営責任者である)ティム・クックは自分の感謝の気持ちには何の限界もないことを知るであろう(訳注:補足の文言がないので理解しにくいかも知れませんが、私の理解では、これはこのようにネガティブなことさえもが起こり得るという最大級の皮肉を込めた言い回しではないかと推測します)。米国の自動車メーカーは何百万台もの車を中国で販売しているが、ほとんどは中国で生産したものだ。一晩のうちに彼らは工場や生産した自動車、中国の顧客を失う。全体として見ると、中国は米国が買うよりも遥かに多くの自動車を買っている。これ程に明白な物事を整理して考えることが解析と称されるならば、この種の解析は他のさまざまな産業に関しても次々と行うことが出来よう。産業界からの投票は「おさらば」となる。

数週間の内にウオールマートの商品棚は空っぽになる。店内の通路を歩いて、「生産国」の表示ラベルを読んでみたまえ。われわれはプラスチック製のバケツやモップについて話をしているだけではなく、この状況はチェーンソーや医薬品、オートバイ、血圧計にまで至る。こうして、ほとんどの労働者の票が影響を被る。米国は中国から年間4720億ドルもの物品を輸入し、これらにはハイテック品やローテック品、消費者物資、産業用部品、等が含まれる。しかし、もう輸入はできない。

中国は年間1630億ドルにもなる米国製品を購入する。原油、半導体、航空機エンジン、大豆、航空機、等々。今後はもう買ってはくれない。このような状況が指導的な企業の重役会に与えるであろう影響は決して過小評価することができない。そして、もちろん、中国のためにこれらの製品を製造する筈であった米国の労働者は解雇される。選挙区に対する政策としては、対中戦争はどう見ても最適とは言えない。

中国は電子部品、たとえば、半導体を製造する上では不可欠となる希土類のほとんどを生産している。速やかに代替策を見つけることはできそうにはない。米国では何から何まで希土類が使用されている。たとえば、自動車の電気系統を統御するコンピュータもそうだ。私は詳細に調べたわけではないが、コンピュータ自体が中国で製造されていることはあり得ることだ。「敵国の」という言葉に関して新たな理解やもっと深い意味を見い出したいならば、半導体が無くなってから二日目を迎えた指導的企業のCEOの思いをじっくりと推測してみたまえ。

実際の戦争においては、先に述べた事柄を考えた後に中国は(賢明にも)台湾の半導体工場を破壊することだろう。TSMCの工場や他のメーカーの電子部品工場が破壊目標となる。台湾海峡は約100マイルばかりであることから、この破壊作戦は決して難しいわけではない。米国が輸入する高品質の半導体は台湾から輸入されることから、これらの工場を失うことは米国にとっては大きな痛手となろう。米国が国内でこれらを補う能力を確保するには何年もかかる。必要となる設備のいくつかは米国内で製造されてはいない。たとえば、紫外線リソグラフィー装置は国内で製造されてはおらず、どう見ても、ビール缶のように簡単に製造することはできそうもない。

米国は誰かが考えるよりも遥かに多くを中国に依存していることは容易に分かる。一例を挙げると、自動車産業においては彼らが使うスパークプラグは中国から輸入されている。米国はスパークプラグを製造することができることは確かであるが、10年ほど以前に米産業界は中国で製造すれば40%も低価格で製造することが可能であることを発見した。 協力体制に順応していたトランプ政権以前の当時のビジネス世界においてはこれは難題ではなかった。しかし、今は違う。国内での自動車の販売が重要であり、自動車を生産する労働者のために職場を確保することが重要なのである。

もしもあなたが、たとえば、ボーイングの航空機の部品供給企業のリストを詳しく調べてみさえすれば、多くの部品は中国で製造されていることに気がつくであろう。私はそのことに南アフリカにあるダイアモンド鉱山やアルゼンチンにある牛の大牧場を賭けてもいい程だ。間違いなく、ほとんどの部品はいつの日にか米国で製造することが可能だ。だが、ボーイング社はいつの日にかではなく、今直ぐにでもこれらの部品を必要としているのである。

中国との大規模な戦争が引き起こす他の国々に対する影響はことさらに酷いというわけではないとしても、その状況は壊滅的なものとなろう。他の国々も中国や台湾から半導体など数多くの物品を輸入している。「X国の最大の貿易相手国」をグーグル検索していただきたい。非常に強力なパターンが直ぐに浮かび上がって来るであろう。実際問題として、どの国にとっても中国が最大の貿易相手国なのである。まさにすべての国々がそうであって、ドイツや日本、オーストラリア、ロシア、南米全域がこの範疇に含まれる。世界経済は全域にわたって崩壊することであろう。

何とまあスマートな考えであろうか?通貨価値の急速な下落、中産階級の没落、新型コロナによるビジネスの倒産、仕事場の海外への移転、その日暮らしの庶民、社会的な不幸による暴動騒ぎの急増、等々によって米国はすでに全米規模の深刻な問題を抱えている。あなたは深刻で殺人的な経済恐慌を引き起こし、捉えどころがない程に愚かな戦争を一般大衆が支持するとでもお考えだろうか?もしそうお考えならば、あなたはその仲立ちとなるような何かを数多くお持ちだからではないのか。

これは無用の長物となった議会からの制約を何も受けないホワイトハウスの内外にいる何人かの愚か者たちによって全世界に対して引き起こされかねないのである。6人の愚か者たち。私が知っている限りでは、トランプについては、たとえそれが宣伝行為でしかないとしても、第三次世界大戦を引き起こす気配は感じられない。また、ペンタゴンの将軍たちも根っきりの愚か者であるというわけではない(戦争を開始するには議会の宣言が必要であると言って、彼らは戦争を拒否するであろう)。問題は、すでに何年間にもわたってそうであったように、米国が戦争を引き起こしたいならば、他の国々にその戦争を開始させようとすることにある。たとえば、イランの高官を暗殺し、軍縮条約からは脱退し、NATO軍をロシア国境の近くへ張り付け、貿易戦争の枠から大きく逸脱した経済制裁を他国に課し、南シナ海では中国を相手に軍事的脅しの外交を行っている。このような状況においては、あえて戦争を見い出そうとしなくても、新たな戦争を巧妙に引き起こすことは可能なのである。

著者のプロフィール:フレッド・リードに対するメールは jet.possum@gmail.comに宛てて書いてください。自動的な消去の対象にならないためには、題名にPDQ(大至急の意)の文字を挿入してください。新型コロナを予防し、ハゲを治療し、異性の前でもっと魅力的になるためにも、フレッドの素晴らしい著書を購入してください!

原典:The Unz Review, Dec/13/2020

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これで全文の仮訳が終了した。

台湾海峡を挟んで米中戦争が開始された場合のシミュレーションによると、台湾のコンピュータ生産工場や半導体工場が真っ先に破壊される。台湾経済の中枢に打撃を与えるという観点からは実に的を射たシミュレーションであると思う。

このことを尖閣諸島をめぐる日中戦争に当てはめてみたら果たしてどうなるのだろうかとふと思った。日本においても日中戦争のシミュレーションは自衛隊によって実施されているのかも知れないが、素人の私には知る術はない。

私が考える日中戦争は次のように始まる。

日本経済の中枢は東京に集まっている。素人考えではあるが、最悪のシナリオは日中戦争の初日に次のような出来事が展開するのではないか。中国は東京上空の高高度で原爆を炸裂させる。強烈な電磁波エネルギーに曝されて、関東圏のコンピュータは一瞬のうちに全てが破壊され、使い物にならなくなる。インフラを制御するコンピュータシステムが破壊され、交通機関はすべてが停止する。銀行システムは稼働せず、送電系統がダウンし、全停電となる。通信システムはマヒ状態となり、電話は通じず、インターネット接続もできない。しかも、このような全面的なマヒ状態を短期間のうちに回復させる可能性はほとんどない。原発は電源を失い、10年前にメルトダウンを起した福島第一原発事故の二の舞を演じるのではないだろうか?最大規模の悪夢が現実となる。それでもなお、仮に中国に対して日本が反撃することができたとしても、あの広大で奥が深い中国を攻撃し、経済活動を破壊するという報復行為は日本側にとっては至難の技だ。要するに、日中戦争という選択肢は日本にとってはあり得ないシナリオであることは明白だ。

軍事力の議論においては日本の優れた軍事的能力のひとつに潜水艦の戦闘能力があると言われている。しかしながら、日本の潜水艦はあくまでも日本周辺での防衛のための戦力であって、補給もなしに何ヵ月にもわたって長期作戦を展開するような代物ではない。私は楽観的にはなれない。

上記のような状況は、日本が主張する尖閣諸島の帰属とは関係無しに、台湾の軍事力と台湾を支える米軍だけでは足りずに、日米軍事同盟を根拠として日本が台湾を巡る米中戦争のために駆り出され、米国・台湾のためにその第一線に立たされた場合にも、最悪の場合は、そっくりそのまま当てはまるのではないか。


参照:

1An Expert Military Analysis of War with China: By Fred Reed, Information Clearing House, Dec/21/2020






2021年2月3日水曜日

米国の優位性を維持するために継続される終わりのない戦争

 

注:フォントサイズが統一できてはいないので、読みにくいかと思います。今までにも何回となく起こっている現象ではありますが、ご不便をおかけします。悪しからず!


202011月の米大統領選の結末はいったい何を意味するのだろうか?

もっとも直接的な答えは民主党候補のジョー・バイデンが不正選挙を駆使して、共和党のドナルド・トランプに勝ったという見方である。そして、もうひとつの切り口は軍産複合体を主体とする好戦派が戦争を嫌がる一般大衆に支持されたトランプに勝ったという見方である。なぜこのような結末に至ったのかを説明する要素はいくつもある。幸か不幸か、ある識者は「好戦派と和平派との政争では常に好戦派が勝つ」とさえ言った。また、例外があるのだろうけれども、軍産複合体がバイデン候補を後押した事実にも見られるように、選挙では財政的に豊かな陣営が常に勝つのだとも言える。財政的に豊かな側とは米大統領選では隠然たる影響力を持っている、いわゆる「ディープステーツ」と称される影の集団でもある。

世界の覇権国の地位を堅持しようとするバイデン政権は今後どのような方向へ進むのであろうか?まずは、ふたつの具体的な最近の出来事を見てみよう。

バイデン新大統領の就任の二日後、122日、大きな米軍部隊がイラクの国境を越えて、シリア北部へ入って来た。この部隊はヘリコプターに援護され、40数台のトラックと装甲車両とで構成されているとシリアのSANA国営ニュース局が報じた。この報道は現地の情報源であるイスラエルのi24Newsを引用していた。目撃されたと推定されるこのニュースは201910月に前トランプ大統領が命じた北部シリアからの米軍の撤退バイデンが押し戻したものと観測されている。・・・シリアにおける戦争は昨年襲った新型コロナの大流行によって実質的には棚上げされていた。もしも戦争の再発がシリア北東部で真近に迫っているとするならば、線引きがどのように実施されるのかは依然として不確実である。バイデンは米軍によってシリア領内でペテンにかけ、略奪を図るのに最適となる地域をコントロール下に収め、軍事的資源を配備しようとしているのかも知れない。(原典:US forces sent back in to northern Syria?: By Bill Weinberg, Jan/28/2021

米空軍の4機のB-52「ストラトフォートレス」爆撃機が3年振りにグアム島に戻って来た。アンダーセン空軍基地の報道によると、この動きはインド・太平洋地域で戦争抑止作戦を行うことを目的にしたものであるという。(原典:US B-52 Bombers Return to Indo-Pacific After 3 Years for 'Deterrence' Missions: By Sputnik, Jan/30/2021)

これらの出来事はバイデン政権の今後の方向性を示すものであると言えるのではないか。

ここに「米国の優位性を維持するために継続される終わりのない戦争」と題された記事がある(注1)。相も変わらずぶっそうな表題ではあるが、バイデン政権を性格付けするとすれば、それはオバマ政権時代の政策の継続だという。つまり、気に食わない国家に対しては米軍を派遣して、武力行使も辞さずに政権の転覆を図るというペンタゴンやCIAの教科書的な手法である。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。バイデン政権への移行にともなって、戦争を起さなかったトランプ政権時代から世界はどのように変わるのかを推測してみよう。

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海外で勝利を収めることはできず、国内では諸々の危機が積み重なるばかりで、米国は打ちのめされている。これらのふたつの事柄はお互いに関連し合っている。

今までの約20年間、自国の優位性を維持するために米国は戦争行為を継続してきた。もちろん、これは公にされた言葉ではないが、たとえそう認知されてはいなくても、これこそが戦争の実際の理由である。多くは新バイデン政権が戦争の見込みをどのように評価するか次第である。とっくの昔に終結していても決しておかしくはないような戦争を大統領としての彼の命運が改めて鼓舞することになるのかも知れない。

共産主義の崩壊に続く目まぐるしい日々の中、米国の政治エリートたちは米国は単独での超大国であり、なくてはならない国家であるとして自国を誇りに思える状況に極めてご満悦であった。歴史を牽引する機関車は米国であり、最後尾の車掌車にいる他の国々はすべての命令を従順に受け入れるだけである。1990年代、将来が辿るべき道筋は明白であった。

911同時多発テロ攻撃は米国の優位性に関して内外に向けて放たれていた主張に大きな風穴を開けた。あの時、ジョージ・W・ブッシュ大統領は自国を再興するためにすかさず戦争の道を選択した。それ以降さまざま場でさまざまな手法が試みられたが、それらを受けて採用された軍事行動はほとんどが不成功に終わった。

2009年、米国の優位性を維持するためにバラク・オバマ大統領が伝統的な戦争政策を継承した時、米国はブッシュが唱えた「フリーダム・アジェンダ」を全うさせるために必要な「やる気」には欠けていることが明白となった。彼は「テロリストの憎しみの思想に代わって、偉大なる自由を広めること」として描いたのである。しかし、戦争を止め、唯一の超大国としての米国の自負心を破棄することはオバマにとっては自分が奮い起こすことができるレベル以上のとてつもない政治的勇気を必要としていた。こうして、戦争は継続されたのである。

2016年、これらすべての取り組みは間違ったものであったとして非難することはドナルド・トランプが大統領選に勝利する手助けとなった。しかしながら、ホワイトハウスへ登場すると戦争を中断するどころではなかった。単にトランプはそれをうまく説明することはできなかった。トランプは「米国第一」を唱えることを約束していた。それに代わって、彼の一貫性のない振る舞いは世界中に「米国の気まぐれ」という印象を植え付けた。指導者の欠如から、戦争はそれ自体の協約通りに展開して行った。

今後の数週間、バイデン新大統領は、歴史を軌道に戻すという期待感を抱いて、アクセル弁を調整する第4番目のエンジニアとなることであろう。執務室に入る初日から、バイデンは一連の緊急課題に直面するだろう。とは言え、米国の優位性を維持するための戦争に別れを告げることこそを第一優先とすべきであると私は提案したい。 

もっとも根源的な事柄に煮詰めるとすれば、手の内の選択肢は非常に厳しいものとなろう。つまり、アフガニスタンやイラク、中東やアフリカにおける米国の軍事行動を継続するのか、それとも、失敗を認めて米軍を帰国させるのかのどちらかである。

換言すると、次のどちらかを米国民に納得させなければならない。米国の優位性を維持するために戦争を行うということは国際舞台における米国の立ち位置を強化することであり、その地位を継続することである。あるいは、この辺りでわれわれの莫大な損失を食い止め、米国はもはや歴史を牽引するエンジンではないことを自認しなければならない。

当初の兆候はバイデンがこの問題を巧みに解決するであろうことを示唆している。「米国に今までになかったような死者数と富の流失を招いた永遠に続く戦争には終止符を打つ」ことを約束する一方、彼はそれに代わってこの目標を再定義することであろう。空爆や特殊部隊による作戦、現地の武装勢力と一緒になって作戦を展開する米国の軍事顧問、等々に頼りながらも、彼はアルカエダやISISとの戦いを継続し、そうすることによって政治的な急場しのぎの座を何とか取り戻す戦略を追求することであろう。

実際には、20年間にもわたる軍事的な失敗や欲求不満、妄想に変貌してしまう表面的な諸々の成功、等が現実にはいったい何を意味するのかを考慮に入れることを嫌って、バイデンは恐らく回避する政策を追い求めるであろう。回避策は多少遅れるかも知れないが、このような計算を避けて通ることはできない。最終的には、真実が表面化してくる。唯一の課題は米国人はいったいどれ程の損害を今後許容することができるのかという点だ。

本当のことを言うと次のような具合だ。米国の優位性を強化するどころではなく、米国の優位性を維持するための戦争は米国の低迷を加速している。海外で勝利を収めることはできず、驚異的な量の資源をふんだんに使ってきたにもかかわらず米国内の危機的状況は高まるばかりである。これらふたつの事象は相互に関連し合っている。

戦争がだらだらと続く中、米国社会に以前から存在していた分断がさらに深くなった。地域特有の人種差別、経済格差、政治機能の停止、現代的な特徴として最近現れてきた疎外感、等が観察されるが、これらの何れをとっても最近の現象を説明するには至らない。しかしながら、米国を歴史が選んだ代理人として見なす幻想が存在し続ける限り、米国の世界的指導力を筋力(つまり、軍事力)を用いて主張することが最終的に物事を妥当に解決するであろうとする妄想もまた存続することであろう。

米国の優位性を維持するための戦争が2001年以降戦争の永続化を正当化するために提言された無数の目標を達成するだろうという可能性は今やまったくなくなった。事実こそが我が国において破壊された物事のすべてを修復する ための必要条件である。修復作業が始まるのが早ければ早いほどいい。

;戦争を開始する段になると、冷戦終結後の米国の指導者らは目に余るほどの尊大さを露わにし、慎重な姿勢は窓の外へ何もかも放り出してしまった。しかしながら、戦争を終結する時がやって来ると、彼らには警戒心が新たに台頭する。責任をもって戦争を終結することが何もしないままで過ごすことの格好の理由となるのである。

それにもかかわらず、われわれの今の状況は不必要で無益な戦争を止めることにおいては大胆さを求めており、米国が最近何年にもわたって耐え忍んできた損害を修復することにおいても強靭な勇気が求められている。ジョー・バイデンが新たな進路を取る上で必要となる大胆さと勇気を持っているのかどうかについてはこれからじっくりと観察することになる。

著者のプロフィール:アンドリュー・ベースヴィッチはQuincy Institute for Responsible Statecraftの所長である。

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これで全文の仮訳が終了した。

米帝国の終焉を論じる記事は決して少なくはない。この主題についてはあちらこちらでさまざまな見解が提出されている。米国の内政や海外諸国に対する国際関係に関する不確実性が増大する中、そして、中国の経済力の台頭が目に見えて勢いを増してきた今、この議論はますます多くなり、深化することだろう。

現時点でより重要なことは米帝国は果たして崩壊するのかという点ではなく、いったい何時崩壊が起こるのかという命題こそが大方の関心事であると思う。しかし、素人である私には何も言えない。歴史的にもっとも直近の事例である大英帝国の崩壊の様子を見ると、第一次世界大戦以降、大英帝国の崩壊のプロセスはかなり長い年数にわたって進行して行ったと言われている。英仏の資本によって建設され、膨大な利益をもたらしていたスエズ運河からの英軍の撤退(1956年)は大英帝国の崩壊を内外に示した象徴的な出来事であったと言う。

この大英帝国の事例を参考にすると、米国が中東から米軍を撤退しようとはしない最大の理由が透けて見える。つまり、米国の優位性を何としてでも維持したい軍産複合体にとっては米軍の海外からの撤退は最後の最後に残された選択肢なのである。つまり、戦争をしたくはなかったトランプからバイデンに米政権が交代した今、ペンタゴンとウールストリートおよび産業界との複合体はオバマ政権時代の好戦的な対外政策を継続して行く公算が非常に高いと見るのが当面は妥当であろう。

米国がまたもや終わりのない戦争を継続する政策へ逆戻りするということは読者の皆さんや私が住んでいる周囲の世界にとっては極めて不幸なことである。


参照:

注1:The Endless War to Preserve American Primacy: By Andrew Bacevich, Information Clearing House, Dec/21/2020