2021年2月3日水曜日

米国の優位性を維持するために継続される終わりのない戦争

 

注:フォントサイズが統一できてはいないので、読みにくいかと思います。今までにも何回となく起こっている現象ではありますが、ご不便をおかけします。悪しからず!


202011月の米大統領選の結末はいったい何を意味するのだろうか?

もっとも直接的な答えは民主党候補のジョー・バイデンが不正選挙を駆使して、共和党のドナルド・トランプに勝ったという見方である。そして、もうひとつの切り口は軍産複合体を主体とする好戦派が戦争を嫌がる一般大衆に支持されたトランプに勝ったという見方である。なぜこのような結末に至ったのかを説明する要素はいくつもある。幸か不幸か、ある識者は「好戦派と和平派との政争では常に好戦派が勝つ」とさえ言った。また、例外があるのだろうけれども、軍産複合体がバイデン候補を後押した事実にも見られるように、選挙では財政的に豊かな陣営が常に勝つのだとも言える。財政的に豊かな側とは米大統領選では隠然たる影響力を持っている、いわゆる「ディープステーツ」と称される影の集団でもある。

世界の覇権国の地位を堅持しようとするバイデン政権は今後どのような方向へ進むのであろうか?まずは、ふたつの具体的な最近の出来事を見てみよう。

バイデン新大統領の就任の二日後、122日、大きな米軍部隊がイラクの国境を越えて、シリア北部へ入って来た。この部隊はヘリコプターに援護され、40数台のトラックと装甲車両とで構成されているとシリアのSANA国営ニュース局が報じた。この報道は現地の情報源であるイスラエルのi24Newsを引用していた。目撃されたと推定されるこのニュースは201910月に前トランプ大統領が命じた北部シリアからの米軍の撤退バイデンが押し戻したものと観測されている。・・・シリアにおける戦争は昨年襲った新型コロナの大流行によって実質的には棚上げされていた。もしも戦争の再発がシリア北東部で真近に迫っているとするならば、線引きがどのように実施されるのかは依然として不確実である。バイデンは米軍によってシリア領内でペテンにかけ、略奪を図るのに最適となる地域をコントロール下に収め、軍事的資源を配備しようとしているのかも知れない。(原典:US forces sent back in to northern Syria?: By Bill Weinberg, Jan/28/2021

米空軍の4機のB-52「ストラトフォートレス」爆撃機が3年振りにグアム島に戻って来た。アンダーセン空軍基地の報道によると、この動きはインド・太平洋地域で戦争抑止作戦を行うことを目的にしたものであるという。(原典:US B-52 Bombers Return to Indo-Pacific After 3 Years for 'Deterrence' Missions: By Sputnik, Jan/30/2021)

これらの出来事はバイデン政権の今後の方向性を示すものであると言えるのではないか。

ここに「米国の優位性を維持するために継続される終わりのない戦争」と題された記事がある(注1)。相も変わらずぶっそうな表題ではあるが、バイデン政権を性格付けするとすれば、それはオバマ政権時代の政策の継続だという。つまり、気に食わない国家に対しては米軍を派遣して、武力行使も辞さずに政権の転覆を図るというペンタゴンやCIAの教科書的な手法である。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。バイデン政権への移行にともなって、戦争を起さなかったトランプ政権時代から世界はどのように変わるのかを推測してみよう。

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海外で勝利を収めることはできず、国内では諸々の危機が積み重なるばかりで、米国は打ちのめされている。これらのふたつの事柄はお互いに関連し合っている。

今までの約20年間、自国の優位性を維持するために米国は戦争行為を継続してきた。もちろん、これは公にされた言葉ではないが、たとえそう認知されてはいなくても、これこそが戦争の実際の理由である。多くは新バイデン政権が戦争の見込みをどのように評価するか次第である。とっくの昔に終結していても決しておかしくはないような戦争を大統領としての彼の命運が改めて鼓舞することになるのかも知れない。

共産主義の崩壊に続く目まぐるしい日々の中、米国の政治エリートたちは米国は単独での超大国であり、なくてはならない国家であるとして自国を誇りに思える状況に極めてご満悦であった。歴史を牽引する機関車は米国であり、最後尾の車掌車にいる他の国々はすべての命令を従順に受け入れるだけである。1990年代、将来が辿るべき道筋は明白であった。

911同時多発テロ攻撃は米国の優位性に関して内外に向けて放たれていた主張に大きな風穴を開けた。あの時、ジョージ・W・ブッシュ大統領は自国を再興するためにすかさず戦争の道を選択した。それ以降さまざま場でさまざまな手法が試みられたが、それらを受けて採用された軍事行動はほとんどが不成功に終わった。

2009年、米国の優位性を維持するためにバラク・オバマ大統領が伝統的な戦争政策を継承した時、米国はブッシュが唱えた「フリーダム・アジェンダ」を全うさせるために必要な「やる気」には欠けていることが明白となった。彼は「テロリストの憎しみの思想に代わって、偉大なる自由を広めること」として描いたのである。しかし、戦争を止め、唯一の超大国としての米国の自負心を破棄することはオバマにとっては自分が奮い起こすことができるレベル以上のとてつもない政治的勇気を必要としていた。こうして、戦争は継続されたのである。

2016年、これらすべての取り組みは間違ったものであったとして非難することはドナルド・トランプが大統領選に勝利する手助けとなった。しかしながら、ホワイトハウスへ登場すると戦争を中断するどころではなかった。単にトランプはそれをうまく説明することはできなかった。トランプは「米国第一」を唱えることを約束していた。それに代わって、彼の一貫性のない振る舞いは世界中に「米国の気まぐれ」という印象を植え付けた。指導者の欠如から、戦争はそれ自体の協約通りに展開して行った。

今後の数週間、バイデン新大統領は、歴史を軌道に戻すという期待感を抱いて、アクセル弁を調整する第4番目のエンジニアとなることであろう。執務室に入る初日から、バイデンは一連の緊急課題に直面するだろう。とは言え、米国の優位性を維持するための戦争に別れを告げることこそを第一優先とすべきであると私は提案したい。 

もっとも根源的な事柄に煮詰めるとすれば、手の内の選択肢は非常に厳しいものとなろう。つまり、アフガニスタンやイラク、中東やアフリカにおける米国の軍事行動を継続するのか、それとも、失敗を認めて米軍を帰国させるのかのどちらかである。

換言すると、次のどちらかを米国民に納得させなければならない。米国の優位性を維持するために戦争を行うということは国際舞台における米国の立ち位置を強化することであり、その地位を継続することである。あるいは、この辺りでわれわれの莫大な損失を食い止め、米国はもはや歴史を牽引するエンジンではないことを自認しなければならない。

当初の兆候はバイデンがこの問題を巧みに解決するであろうことを示唆している。「米国に今までになかったような死者数と富の流失を招いた永遠に続く戦争には終止符を打つ」ことを約束する一方、彼はそれに代わってこの目標を再定義することであろう。空爆や特殊部隊による作戦、現地の武装勢力と一緒になって作戦を展開する米国の軍事顧問、等々に頼りながらも、彼はアルカエダやISISとの戦いを継続し、そうすることによって政治的な急場しのぎの座を何とか取り戻す戦略を追求することであろう。

実際には、20年間にもわたる軍事的な失敗や欲求不満、妄想に変貌してしまう表面的な諸々の成功、等が現実にはいったい何を意味するのかを考慮に入れることを嫌って、バイデンは恐らく回避する政策を追い求めるであろう。回避策は多少遅れるかも知れないが、このような計算を避けて通ることはできない。最終的には、真実が表面化してくる。唯一の課題は米国人はいったいどれ程の損害を今後許容することができるのかという点だ。

本当のことを言うと次のような具合だ。米国の優位性を強化するどころではなく、米国の優位性を維持するための戦争は米国の低迷を加速している。海外で勝利を収めることはできず、驚異的な量の資源をふんだんに使ってきたにもかかわらず米国内の危機的状況は高まるばかりである。これらふたつの事象は相互に関連し合っている。

戦争がだらだらと続く中、米国社会に以前から存在していた分断がさらに深くなった。地域特有の人種差別、経済格差、政治機能の停止、現代的な特徴として最近現れてきた疎外感、等が観察されるが、これらの何れをとっても最近の現象を説明するには至らない。しかしながら、米国を歴史が選んだ代理人として見なす幻想が存在し続ける限り、米国の世界的指導力を筋力(つまり、軍事力)を用いて主張することが最終的に物事を妥当に解決するであろうとする妄想もまた存続することであろう。

米国の優位性を維持するための戦争が2001年以降戦争の永続化を正当化するために提言された無数の目標を達成するだろうという可能性は今やまったくなくなった。事実こそが我が国において破壊された物事のすべてを修復する ための必要条件である。修復作業が始まるのが早ければ早いほどいい。

;戦争を開始する段になると、冷戦終結後の米国の指導者らは目に余るほどの尊大さを露わにし、慎重な姿勢は窓の外へ何もかも放り出してしまった。しかしながら、戦争を終結する時がやって来ると、彼らには警戒心が新たに台頭する。責任をもって戦争を終結することが何もしないままで過ごすことの格好の理由となるのである。

それにもかかわらず、われわれの今の状況は不必要で無益な戦争を止めることにおいては大胆さを求めており、米国が最近何年にもわたって耐え忍んできた損害を修復することにおいても強靭な勇気が求められている。ジョー・バイデンが新たな進路を取る上で必要となる大胆さと勇気を持っているのかどうかについてはこれからじっくりと観察することになる。

著者のプロフィール:アンドリュー・ベースヴィッチはQuincy Institute for Responsible Statecraftの所長である。

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これで全文の仮訳が終了した。

米帝国の終焉を論じる記事は決して少なくはない。この主題についてはあちらこちらでさまざまな見解が提出されている。米国の内政や海外諸国に対する国際関係に関する不確実性が増大する中、そして、中国の経済力の台頭が目に見えて勢いを増してきた今、この議論はますます多くなり、深化することだろう。

現時点でより重要なことは米帝国は果たして崩壊するのかという点ではなく、いったい何時崩壊が起こるのかという命題こそが大方の関心事であると思う。しかし、素人である私には何も言えない。歴史的にもっとも直近の事例である大英帝国の崩壊の様子を見ると、第一次世界大戦以降、大英帝国の崩壊のプロセスはかなり長い年数にわたって進行して行ったと言われている。英仏の資本によって建設され、膨大な利益をもたらしていたスエズ運河からの英軍の撤退(1956年)は大英帝国の崩壊を内外に示した象徴的な出来事であったと言う。

この大英帝国の事例を参考にすると、米国が中東から米軍を撤退しようとはしない最大の理由が透けて見える。つまり、米国の優位性を何としてでも維持したい軍産複合体にとっては米軍の海外からの撤退は最後の最後に残された選択肢なのである。つまり、戦争をしたくはなかったトランプからバイデンに米政権が交代した今、ペンタゴンとウールストリートおよび産業界との複合体はオバマ政権時代の好戦的な対外政策を継続して行く公算が非常に高いと見るのが当面は妥当であろう。

米国がまたもや終わりのない戦争を継続する政策へ逆戻りするということは読者の皆さんや私が住んでいる周囲の世界にとっては極めて不幸なことである。


参照:

注1:The Endless War to Preserve American Primacy: By Andrew Bacevich, Information Clearing House, Dec/21/2020






2 件のコメント:

  1. 読みやすい翻訳ありがとうございます.米国と市民は,1941年の参戦以来,今日に至るまで,他国での戦争を食い物にして生きてきたった国であり,民族であることが良く分かります.つまり八十年近くを他人の血を吸って生きてきた新人種なのです.今更止めるなら自殺したいほどでしょう.大金を枕にして餓死した人の話を聞きますが,ここまで続けてきた戦争を止めるのは,自殺よりも辛い決心なのでしょう.日本国の自滅ももう間近のようです.原稿の締め切りが迫り,料理の時間が惜しくてビーフカレーを買ってきました.袋を開けようにも接着が強固で指で開くことができません.鋏をいれたところ,プッと空気が放出されました.内容量を誤魔化すために,ほぼ全ての食品包装は空気充填に耐えるよう,包装袋は強固に接着させられているのです.ラベルには不要な説明が書かれています.「繊維がほぐれるほどに煮込んであります」というものです.カレーやシチュウの肉は煮込んであるのが当たり前でしょうに.その言葉が悲しいものです.中の牛肉は三ミリ四方のほぐれた繊維なのです.これほどまで偽装して,買わせようとしています.果物など食べていません.ポーランドでは林檎1キロが二倍になったと騒いでますが,四ズヲチ約120円です.林檎一つは200円もするのです.フクシマが全ての元凶です.そしてこの疫病禍.単一世界政府のターゲットはロシアではなく日本です.娘は京都で勉強しておるのですが,食事の粗末さ,アパートの狭さ劣悪さに驚いています.冬なのにストーブ暖房が殆ど使われないのだそうです.原発が暴走するのではないかと,留学には反対だった.欧州の生活に慣れると,日本での生活は惨めそのものです.愚痴になりました.お赦しください.

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    1. シモムラさま
      コメントをお寄せいただき、有難うございます。
      シモムラさまは今原稿を書いている最中のようですね。締め切りが迫って来るとストレスにはなりますが、多くの人たちは適度なストレスがあった方が仕事が捗るといいますよね。頑張っていただきたいと思います。
      欧州で育った人たちにとっては日本の冬はかなり厄介です。京都にいらっしゃるお嬢様のご苦労がよく分かります。日本での暖房はコタツだけで、部屋全体が温まる集中暖房とは違って、冬の数か月を過ごすことになり、これは過酷です。私の家内も初めて日本の冬を過ごした際には集中暖房がなく、コタツで暖を取る方式に驚いていたものです。ブカレストでは私は今アパートに住んでいますが、集中暖房によって部屋の温度は25度C前後で維持することができます。キチンや風呂場も然りです。通常、靴下もはかずに過ごしています。必要に応じて、26度、27度に調節することができます。年間で一番寒く感じるのは集中暖房が開始される直前の1~2週間です。私はエアコンを稼働させたり、電気ストーブを使ったりします。
      米国の対外政策によって多くの国々の一般庶民が甚大な影響を被っています。2001年以降米国が採用した対テロ戦争に巻き添えとなり、殺害された一般庶民の数は何百万人にもなりますが、米国やイスラエルによる戦争犯罪を戦争犯罪として公に告発することができない国際刑事裁判所にも新たな動きが出てきているようですね。(ICC rules it can investigate alleged war crimes in Palestine despite Israeli objections: By The Guardian, Feb/05/2021) 少しずつですが、世界は変貌しつつあるようです。

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