2024年3月30日土曜日

性転換治療に潮目の変化

 

性同一性障害に悩む人たちやLGBTの方々は社会的少数派として不当な扱いを受けることが多かった。歴史を見ると、近年だけでも、日本においても、そして、多様性が早くから議論されてきた米国においても悲惨な結末を招く事件があった。

日本で初めて性的少数派の権利が認められ、行政側に対して裁判所で勝利を勝ち取った事例は「府中青年の家事件」(1990)であったという。また、「一橋アウティング事件」(2015)においては、恋愛感情を告白した相手によって一方的に暴露された男子学生が投身自殺をするという極めて悲惨な展開となった。米国においては、性的少数派のための社会的運動の嚆矢となった出来事は「ストーンウォール事件」(1969)であった。当時、米国のほぼ全域で同性間性交渉を禁止する法律(通称:ソドミー法)が適用されていた。たとえ成人間の同意に基づいていようとも、性交渉を持ったことが明らかになった同性愛者らは罰金刑や自由刑を科せられ、解雇も違法ではないという時代であった。性的少数派に対する風当たりの強い社会情勢の中で、ゲイバー「ストーンウォール・イン」で事件が起きた。令状を手にしてストーンウォール・インを訪れた警察官が店員たちを逮捕したことに対し、同性愛者らが警察官に初めて抵抗したのである。(出典:【日本・アメリカ】LGBTの歴史を変えた事件 まとめ6選:著者: JobRainbow編集部、Jun/05/2021

最近の米国社会を始めとする西側諸国では、性同一性障害に悩まされている人たちにはホルモン療法だけではなく、性転換手術を行うことも選択肢として存在する。だが、問題は子供たちだ。親にも相談できず、毎日のように出口が見えない葛藤に悩まされている若年層の子共たちの場合だ。しかも、対応はまだ歴史が浅く、医学的にも手術の手法が確立されているとは限らない。しかも、数年後に気持ちが変わって後戻りをしたくても、そうすることは極めて困難な、新たな手術が必要となる。この新しい医療分野に参入する医師は少なくはないらしい。まだ腕が上達してはいない、若い医師に遭遇すると、患者はその後の人生を左右するようなとんでも健康被害に見舞われる可能性もある。そして、もっと大きな視野で観察すると、LGBT問題を社会問題として扱うことは人口低減策の一環としての役割も与えられているようでさえある。

こういった状況を受けて、米国のあるベテランの医師は次のように警告している。「心がまだ発達途上にある子供たちに、このような若い年齢で人生を変えるような決断をさせることは危険であり、しかも破壊的である。特に、自分は異なる性別に適合していると信じる子供たちの約90%は、医学的介入がなくても、身体が発達し、成長するのに任せておけば、大人に成人した頃には若い頃に抱いていた思いはもはや消えてしまう。」(出典:Protecting Minors from Gender Ideology: By Peter A. McCullough, MD, MPH, Jun/17/2023)

ここに「性転換治療に潮目の変化」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。身近に思春期のお子さんをお持ちの方々に少しでも参考になれば幸いである。

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昨年6月、私は保健省次官補のレイチェル・レヴィンを未成年者に対して大規模な暴力を幇助したとして非難したが、あれは同「提督」が「若者たちのために性同一性障害の治療を肯定することは文字通り自殺予防策でもある」と宣言した後だった。

だが、これは地獄からの宣告であり、親に子供を屠殺することに同意するよう促すものであって、最も暗黒で、感情的な恐喝でさえある。いったいどのような親がレヴィン提督から医学的、精神医学的、または性的な問題についてアドバイスを受けるのだろうかと疑問に駆られる次第だ。

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ついに、子供の虐殺を主張する精神病に冒された大人の犯罪組織に対して潮目が変わりつつある。昨日、テレグラフ紙が下記のように報じた:

フランスの上院議員は未成年者の性転換を「医学史上最大級の倫理的スキャンダルのひとつである」と報告し、18歳未満の性転換治療を禁止したいと考えている。

このニュースは英国のNHS(国民医療サービス)が臨床医に思春期遮断薬の定期的な処方をやめるように指示した直後に報じられた。BMJBritish Medical Journal)で報告されているように:

この決定は、NHSイングランドがイングランドで進められている子供の性別自認に関する対応策に対する全面的な見直しの一環として、312日に発表された。NHSイングランドは新しい指針で「現時点では、PSH(思春期抑制ホルモン)の安全性や臨床的有効性を裏付ける十分な証拠はないため、治療を日常的に利用できるようにすることはできないと結論付けた」と述べている。

私はこれをピュロスの勝利と特徴づけようと思う(訳注:「ピュロスの勝利」とはウィキペデイアによると、「損害が大きく、得るものが少ない勝利」、つまり「割に合わない」という意味の 慣用句)。なぜならば、それは未成年者の性別適合治療を完全に禁止するのではなく、その一歩手前で終わっているいるからだ。さらには、思春期を抑制するホルモンは恐ろしい薬であることは常識の観点からでさえも明らかであるからだ。

マッカロー博士の同僚でもあるスタンリー・ゴールドファーブ博士は何年も前からこの状況について警鐘を鳴らしてきた。20224月の設立以来、彼の組織「Do No Harm」は略奪的で、気が変な大人たちから未成年者を守ろうとしている。

ゴールドファーブ博士は公的資金で私腹を肥やしながら新型感染症用の「お注射」を人類に押し付けたバイオ医薬品複合体に反対をして来たけれども、「性同一性障害の治療」という子供をむさぼり食う怪物に対抗する戦場においても前進をしているようである。

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これで全文の仮訳は終了した。

フランスの上院議員たちはかなりまともな判断をしたと言えよう。また、英国のNHSが臨床医に思春期遮断薬の定期的な処方をやめるように指示したという。これらの決断を賞賛したいと思う。

思うに、西側におけるいわゆる「ポリコレ」の風潮は余りにも過激になり過ぎた。

西側各国の混乱振りはその頂点に達したようだ。そのような混乱の中でお金儲けとしての性同一性障害の治療はさまざまな新しい問題をもたらしている。

英国の医学論文によると、性転換を行った男女の死亡率は生まれつきの性を維持している男女よりも死亡率が高い。ジャクソンと彼の同僚らは男性として生まれたが女性になった人たち(1,951人。平均年齢は36.9歳で、白人が1,801[92.3%])、ならびに、女性から男性に性転換を行った人たち(1,364人。平均年齢は29.2歳)について、最近、調査を行った。性転換を行ってはいない通常の人たちから成る対照区は68,165人(白人が59,136[86.8%])の男性と68,004人の女性(白人が57,762[84.9%])で構成される。通常の成人男性の対照区と比べ、女性となった男性の総死亡率は増加した(平均相対リスクは1.3495%信頼区間は1.061.68)。通常の成人女性の対照区と比べると、男性となった女性の総死亡率も増加した(平均相対リスクは1.7595%信頼区間は1.082.83)。性別を変更した人の最も顕著な相対リスク要因は自殺と殺人である。これらのデータが示唆していることは、背景となる性別違和感、ならびに、性転換のプロセスから生じる精神医学的負担や行動的決定要因が生まれつきの生物学的性別から反対の性別への変更を選択した人たちが比較的若い年齢で死亡したことに寄与しているという点だ。(出典:Analysis of Mortality Among Transgender Individuals: By Peter A. McCullough, MD, MPH, Apr/09/2023

また、米国においては奇妙な現象が起こっている。州知事が民主党系である州においては州法として子供の性別志向を両親には知らせず、秘密にすることが学校関係者に要求されることがある。それに対して、現場の教師や親たちが裁判所で争い、教育委員会に対して勝訴するといった事例が現れている。象徴的な事例を次に示そう。2023914日、連邦判事はカリフォルニア州のエスコンディード統一学区がカリフォルニア州教育省が発行した生徒の性別移行を親に秘密にしておくよう教育者に奨励する指針に従うことに拒否したふたりの教師を罰することを阻止した。ロジャー・T・ベニテス判事は州とエスコンディード統一学区に対してこの政策は違憲であるとして仮差し止め命令を発した。教師のエリザベス・ミラベリとロリ・アン・ウェストは州と学校区が憲法上および宗教的権利を侵害していると主張した。ふたりとも4月に訴訟を起した後、有給の休職へと移行されたが、教室での仕事に復帰するために学校区側との交渉をしている。これらの教師はエポックタイムズ紙に対し、中学校の女子生徒の性転換は「社会実験」であり、それが社会に伝染していると語った。少女たちが学校の相談員のところに行くと、「たくさんの賞賛や肯定」の言葉を受け、「勇敢」で「正直」だと称賛されるとウェスト教師は言う。(出典:Parents, Teachers Start Winning Court Battles Against Secret Gender Transition Policies: By Brad Jones, The Epoch Times, Oct/05/2023

一言で言えば、カリフォルニア州政府やエスコンディード学校区がとった行動は傲慢であり、やり過ぎがあったと言える。権力を行使する側に対して市民の側から歯止めをかけることは容易ではない。特に、メデイアが権力側に忖度している場合はなおさらのことである。だが、その揺り返しが今起こっているのである。

最後にもうひとつの重要な側面を付け加えておこう。性同一性障害に悩まされている子供たちに対するカリフォルニア州政府や学校区側の行動を見ると、子供たちの両親に対する配慮は見られず、学校側の指導や子供たちとのやり取りは両親には秘密にされ、彼らはつんぼ桟敷に置かれた。親権は剥奪され、性転換治療を施すことによって子供たちの将来が独善的に決定される。もしくは、そういった方向へ子供たちが誘導される。場合によっては、上にご紹介した英国のデータが示すように極めて不幸な活末をもたらす可能性さえもがあるというのに・・・ 奇しくも、全世界が新型感染症のお注射で最近観察し、自ら体験し、あれこれと苦労させられた状況とまさに瓜ふたつである。

このような状況は英国や米国に限ったことではない。ヨーロッパでは各国でさまざまな出来事が起こっている。まさに、これは過剰なポリコレが引き起こした社会現象だ。だが、英国や米国では潮目が変わった。

さて、日本ではLGBT法が昨年6月に成立し、623日に施行された。その結果、これからどのような新しい問題が生じるのかは国民一人一人が注視して行かなければならない。英米で起こったような悲惨な状況は絶対に再現させてはならないからだ。

参照:

1Tide Turns On "Gender-Affirming Care": By JOHN LEAKE, Courageous Discourse, Mar/24/2024





2024年3月26日火曜日

マクロンのウクライナへの派兵はオデッサへおしっこをひっかける犬みたいなものだ

 

フランスのマクロン大統領はウクライナへ派兵すると繰り返して述べている。

思うに、同大統領の判断は1月にウクライナで二番目に大きな都市であるハリコフで60人ものフランス人傭兵らがロシアの爆撃に見舞われて死亡したことに対する報復なのかも知れない。あるいは、アフリカの旧植民地からフランス軍が放逐され、それに代わって、ロシアがアフリカに進出してきたことに対する報復であるのかも知れない。あからさまな報復ではないとするならば、報復したいという潜在意識がこの決断をもたらしたのかも知れない。要するに、今のNATO軍の実力を見ると、ロシア軍には対抗できないのではいかとの懸念が高まる一方であるからだ。ましてや、フランス軍単独ではなおさらである。

フランスは他のNATO加盟国からの賛同を得たと公言しているが、実際には賛同はかなり限られているようだ。他の報道によると、NATO諸国はほとんどがウクライナへの派兵には反対だという。

ところで、118日のスコット・リッターの解説によると、ウクライナにおける外国人傭兵に対するロシア側の対応は下記のような具合だ:

ウクライナ軍の大攻勢作戦が失敗に終わった後、ウクライナが失った人的資源を補充するために外国人傭兵が採用された。117日、ウクライナ北東部の都市ハリコフが攻撃され、ひとつの建物が爆撃され、60人の外国人傭兵が殺害された。クライナ第二の都市に武装したフランス人がいたことから、彼らはいったい誰のために働いているのかという憶測が飛び交っていると、元米海兵隊情報将校で国連兵器査察官を務めたスコット・リッターはスプートニクに語った。これはNATOの対ロ代理戦争へのフランスの秘密裏の直接関与を暴露する可能性があると彼は述べている。「ウクライナ側のために戦っているならば、国籍が何であろうとも、今や、ロシア側の正当な標的となる」とリッターは指摘。リッターはこの攻撃についてふたつの重要な側面に焦点を当てた。ロシアの軍事計画立案者らは、もはや、外国人傭兵とウクライナ兵を差別してはいないことを示している。「ロシアは、ウクライナ軍のために戦っている外国人傭兵を排除することに何の躊躇も示していない」と彼は述べた。また、フランス軍がウクライナの対ロ紛争に直接関与している可能性も浮上している。(出典:Scott Ritter: Russia Won’t Hesitate to Eliminate Western Troops in Ukraine: By Sputnik, Jan/18/2024

ロシアの外務省は西側から送り込まれて来る武器に関して、それらはロシア軍の正当な攻撃目標になると繰り返して警告して来た。こうして、西側から投入された戦車や対空防衛システム、レーダー装置、等が、連日、ロシアの攻撃によって破壊されている。外国人傭兵も例外ではない。

フランスのマクロン大統領の主張に関して、ここに最近の記事がある(注1)。「マクロンのウクライナへの派兵はオデッサへおしっこをひっかける犬みたいなものだ」と題されている。

ウクライナへ送り込まれたフランスの正規軍は、遅かれ早かれ、ロシア軍からの攻撃を受け、死傷者が出る。NATO条約第5条に則ってフランスはその適用を提言し、NATO加盟国の軍隊を公にウクライナへ送り込ませることになる。この場合、問題ははたして他のNATO加盟国が積極的に第5条を適用し、自国軍をウクライナへ派遣するのだろうかという点だ。マクロンの行動は他のNATO加盟国に何らの影響をも与えない可能性が残る。もしもフランスの勇み足に終わったとすれば、マクロンはこの政治的賭けには失敗したこととなる。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1© AFP 2023 / Alain Jocard

ロシアのセルゲイ・ナルイシキン対外諜報局長官は、火曜日(319日)、フランスはウクライナのオデッサ地域に数千人のフランス軍を配備する準備をしていると警告した。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領がオデッサに約2,000人の兵士を配備する計画は「人間でできた導火線部隊」としてのみ機能し、それは「NATOがオデッサにおしっこをかけて、NATOの領土としてマーキングする犬に等しい」と、国際関係と安全保障の専門家であるマーク・スレボダは、水曜日(320日)、スプートニクの「クリティカル・アワー」に語った。さらに、彼はこの例えにおいてはフランスは「プードル」だと付け加えた。

同火曜日、フランス陸軍参謀総長ピエール・シル大将はフランス軍は「最も厳しい交戦」に対応する準備ができているとオプエドで述べ、30日以内に2万人の部隊を手配することができると述べた。

「彼は間違っている。フランス軍は、間違いなく、そんな準備はできてはいない」とスレボダは将軍の主張についてコメントした。もし彼らが、キエフ政権が余儀なくされているように、ロシア軍より遥かに少ない砲弾を発射しなければならないような激しい戦闘に巻き込まれたならば、フランスはロシアとの交戦では4日間に相当する砲弾は持っていることになる。たった4日間だ」とスレボダは説明した。

それに比較すると、ロシアや西側の分析によれば、ロシアは特別軍事作戦地域に60万人以上の兵力を配備している。「もちろん、NATO条約第5条は適用されないが、フランス軍は制服を着ているので、NATO加盟国を攻撃することを恐れて、ロシア軍はこれらのフランス軍に対しては発砲しないとフランス側が信じている可能性がある」とスレボダは説明した。

スレボダは、もしもフランス軍兵士がロシア軍に殺されたならば、国内では紛争への支持が高まり、他のヨーロッパ諸国が戦闘に加わるよう「政治的に動員する」のを助けるであろうとマクロンは考えていると思うと付け加えた。

「もしマクロンがオデッサに軍隊を派遣したとしたら、明らかに、それは戦場でロシア軍と激戦を繰り広げることができるような部隊ではなく、人間でできた一種の導火線部隊としての役割だと思う。それは、NATOがあたかもオデッサにおしっこをひっかけて、そこをNATOの領土だとしてマーキングする犬みたいなものだ」とスレボダは述べた。

「もちろん、公式に軍服を着ているNATO軍兵士がウクライナで死亡するのであるから、それはわれわれをまったく別のレベルに連れて行くであろう」と彼は警告した。

スレボダは「非常に大きな情報戦ゲーム」になり、その標的はフランスの国民や他のNATO加盟国の国民であると予測する。フィンランドやチェコ共和国、バルト諸国、カナダがフランスに加わる可能性を「すでに示唆している」と彼は指摘している。

共同司会者のウィルマー・レオンが、マクロン大統領は「背後からの途方もない兆しは見えていない」と本気で信じているのかと尋ねると、スレボダはNATO特有の「サラミ切り戦術」とも言えるような漸進主義を描写して、答えた。

NATOの指導者たちは、今や、公然と認めている。そう、まったくその通りだ。われわれはウクライナ全土に軍隊を配備している。彼らは戦闘のあらゆる作戦に深く関与してきた」と彼はスペインの新聞を引用して語った。「ウクライナ以外で、つまり、この代理戦争のパラメーター以外ではロシアはNATOに対していまだに報復行動をとってはいない。だから、これは彼らが漸進主義を使って何とか乗り越えられると信じているもうひとつのエスカレーションだと思う。」

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これで全文の仮訳が終了した。

「ロシア軍より遥かに少ない砲弾を発射しなければならないような激しい戦闘に巻き込まれたならば、フランスはロシアとの交戦では4日間に相当する砲弾は持っていることになる。たった4日間だ」というスレボダの説明には驚いた。フランス軍は砲弾の備蓄は非常に少ない。それでも、マクロンはロシアに喧嘩を売るのか?彼の政治的な目標、あるいは、利益はいったい何なのだろうか?

米国の戦争屋はNATOに対ロ代理戦争をやらせたが、その目標は達成できずに終わりそうだ。肝心の米国の真意は、今や、この秋の米大統領選を控えて、選挙民には人気がなく、莫大な額の戦費を浪費しているこの戦争が長引くことは米国政府や民主党にとってはマイナスだと思う。ましてや、NATOとの戦争に発展すると核大国間の戦争に発展する危険性があり、米国としては米本土が核攻撃に曝されるような現実は間違いなく避けたい筈だ。そう判断するだけの正気は維持して欲しいものである。

 

参照:

注1:Macron Sending Troops to Ukraine ‘Like a Dog Urinating on Odessa’: By Ian DeMartino, Sputnik, Mar/20/2024

 

 


2024年3月21日木曜日

米国がノルドストリーム・パイプラインを破壊工作したことに関する真実がNATOを崩壊させるかも

 

ロシア産天然ガスをドイツへ輸送するノルドストリーム・パイプラインの操業に関しては、破壊工作が行われた当日の状況は下記のようにウィキペディアに記述されている。もう一度おさらいをしておこう:

ガスの漏出の前にパイプラインはすでに天然ガスで満たされていたが、ロシアによるウクライナへの武力侵攻を受けて、天然ガスの輸送は開始されなかった。2022926日、現地時間の02:03CEST)、ノルドストリーム2の爆発が検知された。(2本の)パイプの1本で圧力低下が報告され、天然ガスがデンマークのボーンホルム島の南東の海面に流出し始めた。17時間後、ノルドストリーム12本のパイプにも同じことが起こり、ボーンホルム島の北東で3つの別々の漏水が発生した。これらの影響を受けた3本のパイプはすべてが動作不能になった。ノルドストリーム22本のパイプのうち1本は破壊から免れて、その稼働は可能であり、ロシア側はノルドストリーム2を通じてガスを供給する準備ができていることを確認した。これらのガス漏れは、ポーランドとノルウェーがノルド・ストリーム・パイプラインのようにロシアからではなく、北海からガスを運び込むために準備されたデンマーク経由のバルト海パイプラインを開通させる前日に起こった。漏出は公海で発生したが、デンマークとスウェーデンの経済水域内である。

「ノルドストリーム1」(第1ラインは2011118日に稼働し、第2ラインは2012108日に稼働)と「ノルドストリーム2」(20216月に第1ラインが完成し、20219月に第2ラインが完)のふたつのパイプラインには合計で4本のパイプがあるが、そのうちの1本は一連の破壊工作を免れ、無事であった。そして、ロシア側はその稼働は可能であることを認めてはいたが、ウクライナで進行していた米ロ間の代理戦争はこのパイプラインの操業を許さなかった。それだけではなく、対ロ経済制裁は何回にもわたって発動され、西側はロシア経済に打撃を与え、ロシアの国内世論を反プーチンに導くとする大義名分の下で嫌ロ政策が西側の中心的な政策として継続された。しかしながら、喧伝されていた2023年夏のウクライナ軍による対ロ大攻勢は失敗に終わった。そして、中東では、202310月、ハマス・イスラエル紛争が始まった。こうして、米国の戦争努力は2正面となった。ウクライナを支援してきた西側各国では「ウクライナ疲れ」が表面化した。そして、ウクライナにとって何よりも致命的な状況は米国がウクライナに対して支援を継続することが極めて困難であるとの認識が202411月の米大統領選との絡みから米国内政治の中心課題に据えられたことである。

ウクライナ側の軍事的敗北が濃厚になり、しかもロシア経済には打撃を与えることもなく、かえって西側はエネルギーコストの増大に見舞われて、インフレが進行、金利が上昇し、経済停滞に見舞われている。今になって思うと、皮肉な事には、西側による傲慢な自己評価や過剰な自己欺瞞とロシアに対する過小評価や無知がまたしても対ロ政策で大失敗を招いたと言えそうだ。

ここに「米国がノルドストリーム・パイプラインを破壊工作したことに関する真実がNATOを崩壊させるかも」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1© AP Photo / Armando Franca

NATOは常に米国が欧州の軍事政策を支配することを許してきた。今や、米国はエネルギー政策についても牛耳っている。

月曜日(226日)、デンマークはノルドストリーム・ガス・パイプラインの爆発に関する調査を公式に終了したが、欧州では2番目の国となった。この爆発はウクライナにおけるロシアに対する代理戦争のためだ。ダン・ラザールは米国のドナルド・トランプやフランスのマリーヌ・ルペン、オランダのヘルト・ワイルダース、イタリアのジョルジャ・メローニ、等、この状況から恩恵を受けている人物として多くの名前を挙げている。

20229月、ロシアとドイツを結ぶ二組の「ノルドストリーム」パイプラインは一連の爆発で使用不可となった。2012年に完成したひとつ目のパイプラインは、今までほぼ10年間、ロシアの天然ガスを西欧に供給してきた。米国はロシアと欧州の同盟国との協力行為に懸念を表明したが、ノルドストリームはドイツの産業を活性化し、欧州大陸全体に低コストのエネルギーを供給する上で重要な役割を果たしてきた。

観察者たちはロシアがウクライナのドンバス地域への攻撃に介入した場合には(ノルドストリーム)プロジェクトに「終止符を打つ」と言ったジョー・バイデン米大統領の当時としては不可解であった約束を直ちに指摘し、この破壊行為について米国を非難した。デンマークの調査によってこの爆発は「意図的な破壊工作」であったことが認定されたが、デンマーク当局は誰がその責任を負っているのかに関してはさらに究明することは拒んだ。

調査報道を専門とするダン・ラザールは、水曜日(227日)、スプートニクの番組「クリティカル・アワー」に出演し、この米国の同盟国の報告に関してコメントを述べた。

「これはまったくもって茶番だ」と、偶像破壊主義的な著者は述べている。「この調査がいつまで続くかは分からない。つまり、デンマークは調査を行い、結論を出したが、それが明らかに破壊工作であったことは誰もが知っている。ところが、(デンマークは)犯人と思われる人物を名指しすることを控えている」と言った。

「そして、その理由は、もちろん、最も可能性の高い犯人は米国であって、実際、米国こそが犯人であると私は100%確信している」と彼は主張した。「でも、デンマーク、スウェーデン、誰もがそのことを言うのを恐れている。極めて異常なことだ。」

同様に米国の同盟国であるスウェーデンも、今月初め、ノルド・ストリームの惨事に関する独自の調査を打ち切ったが、同国もこの破壊工作の犯人については言及してはいない。ラザールは米国の罪は明らかではあるのだが、米国と欧州の関係を守るためにそのことは何度も無視されて来たと述べている。ラザールによれば、この破壊工作における米国の役割を公然と認めようとしているのは欧州の極右政党だけであり、この政治力学は彼らに利益をもたらしているのである。

「街頭を行き交う男性や女性はいったい誰がこんなことをしでかしたのかを完璧に理解しているのだが、リベラルな中道政党はそのことを瓶に詰め込んで、現実を否定しようとしている」と彼は説明した。「つまり、このことについて語っているのは彼ら以外の政党であって、ドイツでは「ドイツのための選択肢」党(AfD)のような極右のポピュリスト政党だけだ。実際、AfDはこの問題にかなり懸命に取り組んでいる」と述べた。

Photo-3:関連記事:Hersh: West's Hesitance to Conclude Nord Stream Probe Implicates Culprits: By Sputnik, Feb/07/2024

「だから、もしAfDが世論調査で人気度を上昇させているならば、ジョー・バイデンがパイプラインを爆破したからであるので、AfDはジョー・バイデンに感謝しなければならない。だが、誰もがその事実を認めることを恐れている」とラザールは結論付けた。

「ドイツのための選択肢」党は経済的困難やウクライナの対ロ代理戦争に絡んで既成政党に対する支持がますます不人気となる中で、現在、西側で支持層を拡大している多くの右翼勢力のひとつである。ラザールは米国のドナルド・トランプやフランスのマリーヌ・ルペン、オランダのヘルト・ワイルダース、イタリアのジョルジャ・メローニ、等、この現象から恩恵を浴している人物を多数挙げている。

「中枢部は自滅し、事実上、今や、極右派がその座に就く先駆けとなっている」と彼は言い、「既成のエリート議員たちはこのノルドストリームの破壊工作を隠蔽するために、酷い、かなり酷い代償を払うことになるだろう」と主張している。

しかし、ラザールはノルドストリームの惨事という爆発的な現実によって損傷を受けやすいのはリベラルな政党だけではないと主張している。

「米国は仲間である筈のNATO加盟国に対して戦争行為をした」と彼は率直に主張。「NATO加盟国はお互いの間で戦争を引き起こしてはならない。部外者からの攻撃に対して防護するためのものであるからだ。」

ラザールは、もし指導者たちがノルドストリームの破壊工作に対する米国の責任を公に認めたとしたならば、「その政治的な影響は大地を揺るがす程のものになっていたであろう」と主張した。

「いったん人々が何が実際に起こったのかを認識すれば、本質的にNATOは消滅する。なぜならば、同盟というものはある加盟国が他の加盟国を攻撃するための体制ではないからだ」と彼は主張する。「これは相互防衛協定であるが、米国はあっけなくそれを破った。このノルドストリーム・パイプラインの破壊工作は何十年にもわたって共鳴し続けるような出来事だ。まさに、それは西側同盟の心臓部が爆発したようなものであり、西側の同盟を完全に破壊するだろう。これが無視できないほど大きくなれば、NATOにはその打撃を生き延びる術はない」と言った。

同盟が東欧に拡大するにつれて、NATOはすでにさまざまな緊張に苦しんでおり、最近ではトルコとハンガリーがスウェーデンのNATO加盟を遅延させた。スロバキアのロベルト・フィコ首相も、先週、ドンバスのウクライナを支援するために欧州軍を派遣すべきだというフランスのエマニュエル・マクロン大統領の提案を批判し、同盟の方向性に疑問を呈した。

しかし、NATOは常に米国によって支配されており、その現実はNATOの連合軍最高司令官は全員が米国人であるという事実によって実証されている。国家主義者であったフランスのシャルル・ド・ゴール大統領はかってフランス軍をNATO軍の指揮下に置くことを拒否したことで有名である。

欧州の指導者たちは歴史的に米国からの軍事的保護を受けることを約束する代わりに、NATOの取り決めを容認することに満足してきた。しかし、米国はついに欧州大陸のエネルギー政策について過剰な程に君臨した。これはやり過ぎだったのかも知れない。欧州各国が自国の独立を宣言する意志を持った指導者を最終的に輩出することができるかどうかは時が経てば分かるだろう。

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これで全文の仮訳は終了した。

この記事を読むと、欧州が徹底的に米国に牛耳られており、それが欧州を直接・間接的に影響して、欧州は分断されていることが手に取るように分かる。

ノルドストリーム・パイプラインの破壊工作をやったのは米国だといち早く報じたのは米国の調査報道ジャーナリストの第一人者であるシーモア・ハーシュであったが、彼は、最近、欧州の指導者は誰が破壊工作を行ったのかを知っていながらも、名指ししたがらないことを見ると、誰が真犯人かは容易に察しが付くと皮肉たっぷりの解説を行っている。

さらに、彼はノルドストリームを破壊したことによって、ロシア国内ではプーチンに対する支持をより確かなものとしたと、ハーシュは指摘している。今回の大統領選でプーチンは87%という高い支持率を達成した。ロシア経済に打撃を与え、プーチン政権を内部から崩壊させるとしてロシアに課した経済制裁、ならびに、ウクライナに対する軍事支援が失敗に終わったことを、またもや、改めて明確に示した。

さて、ウクライナにおける米国の対ロ代理戦争はこれからどのように、そして、何処へ向かうのだろうか?

参照:

1Explosive Truth of US’ Nord Stream Sabotage Could ‘Destroy’ NATO: John Miles,  Sputnik, Feb/29/2024

 

 


2024年3月18日月曜日

アヴァンギャルド ― 米ミサイル防衛システムを使い物にならなくしたとプーチンが豪語する極超音速ミサイル

 

314日の投稿で「ロシア側は極超音速ミサイルを有しており、西側の対空防衛システムはこれに対応できない」と簡単に記述したが、これについてもっと詳しい情報を探ってみよう。

丁度、ここに「アヴァンギャルド ― 米ミサイル防衛システムを使い物にならなくしたとプーチンが豪語する極超音速ミサイル」と題された最新の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1: © Photo : Russian Defense Ministry

水曜日(313日)のロシアのメディアとのインタビューで、ロシアの大統領は同国の核の三本柱は他のどの国よりも「近代的」であると断言し、モスクワはその国家としての地位が脅かされない限りはそのような恐ろしい兵器を決して使用しないと繰り返して述べた。

ロシアが開発した核搭載可能な極超音速滑空体「アヴァギャルド」はミサイル防衛システム構築のために米国が行った巨額の投資を無意味にしたとウラジーミル・プーチン大統領は公に述べた。

プーチン大統領に対する「ロシア・セヴォードニャ」のドミトリー・キセレフ事務局長のインタビューの全文はこちらからご覧いただきたい。

「よく知られている米国のミサイル防衛にはいったいどれだけの費用がかかったのかを計算すると、これらのミサイル防衛を克服するためにわれわれが所有する主要な構成要素のひとつは大陸間滑空装置を備えた大陸間弾道ミサイルであるアヴァンギャルドだ。まあ、予算を比較することは必ずしもできそうにはないが、基本的には、われわれは連中がやったこと、つまり、連中がこのミサイル防衛システムに投資したことのすべてを無にした」と、プーチンはスプートニクの親会社であるメディア・グループのロシア・セヴォ―ドニャのドミトリー・キセレフ会長に語り、米防衛産業の気前の良さと莫大な浪費に言及した。

プーチン大統領によると、アヴァンギャルドの開発経験はロシアが戦略兵器の分野で堅持し続けるべき道を示しているという。

アヴァンギャルドとはいったい何か?:

2018年にプーチン大統領がロシアの国会議員に向けた演説で初めて発表され、2019年後半に就役したアヴァンギャルドは、既存の、ならびに、将来のすべてのミサイル防衛システムを突破するように設計されており、機動性が高く、超高速で、核搭載可能な極超音速滑空体である。

重量級のR-36およびRS-28サルマト大陸間弾道ミサイルに搭載されて、軌道に投入され、ミサイルの弾頭である多重再突入機(MIRV)の一部として展開されるアヴァンギャルドは近宇宙空間では最大マッハ2732,200 km/時)の速度まで加速でき、降下中は大気抵抗によって推定でマッハ15-2018,500-23,000 km/時)まで低下する。

滑空機の独立航続距離は6,000km以上で、爆発力は0.82メガトンと報告されている(訳注:広島や長崎へ投下された原爆の爆発力はTNT火薬換算で2022キロトン相当であるから、約40100倍の威力がある。201912月から実戦配備されている)。また、通常兵器モードでも利用可能で、ターゲットを攻撃する高速によって生成される巨大な運動エネルギーを活用して、さまざまな戦略的目標を破壊することができる。

Photo-3: Characteristics of Russia's Avangard hypersonic glide vehicle. © Sputnik

機動性と速度に加えて、飛行特性、特に摂氏2,000Cまでの高温度に耐えられる本ミサイルの能力はアヴァンギャルドに対する防御を本質的に不可能にしているもう一つの要因である。

「アヴァンギャルドは(飛行中は)実質的にプラズマで覆われる。プラズマは電磁波を吸収することから、この極超音速滑空体はレーダーからは見えない。高い運動エネルギーを持つ結果として、アヴァンギャルドは核兵器を使用しないでも標的を破壊することができる。これはユニークなツールであって、今日まで世界の他のどの国もそのようなものを生み出してはいない」と、軍事史家であり、国防評論家でもあり、ミサイルおよび防空の専門家であるユーリ・クヌートフは、最近、スプートニクに語った。

打ち上げ用のサルマト・ミサイルは15,200kmから18,000kmの航続距離を有することから、アヴァンギャルドは地球上のあらゆる地点を攻撃することができる。

1発のサルマト・ミサイルには最大で24個のアヴァンギャルドを搭載でき、他のMIRVや、敵のミサイル防衛を欺いて分散させるように設計されたダミー弾頭を搭載することも可能。

アヴァンギャルドはロシアの兵器庫に待機する6種の新型戦略兵器のひとつであり、たとえ敵が核攻撃や通常攻撃でロシアの不意を突いたとしても、これらの兵器は敵の戦争計画立案者が侵略を開始する前に考え直さざるを得ないほど厳しい対応を保証するように設計されている。

ロシアのNPO法人「マシノストロイェニア・ロケット設計局」がアヴァンギャルドの開発を主導した。その伝説的な名誉総裁であり、デザイナーでもあるゲルベルト・エフレモフを称賛したプーチン大統領は、彼の2020年の誕生日に、アヴァンギャルドの製作におけるマシノストロイェニアの成功を1949年にソ連が初めて核爆弾を製造したことになぞらえた程である。

エフレモフの指導の下でNPOのマシノストロイェニアは1980年代にアヴァンギャルド計画の前身を創設し、ロナルド・レーガンの「スター・ウォーズ」ミサイル防衛構想への直接的な対応として1987年に「プロジェクト4202」として知られる極秘プロジェクト、後には「アルバトロス」というコードネームの下で開発が承認された。この計画はワシントンとの関係が改善した1990年代初頭に、そして、その後はソビエト連邦の崩壊に伴う財政難のために保留となった。

2000年代初頭、米国が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)条約から一方的に離脱し、ヨーロッパにミサイル防衛網を配備し始めた後、ロシアは独自のミサイル防衛プロジェクトを再開した。

2002年に米国がABM条約から離脱したことで、ロシアは極超音速兵器の開発に着手せざるを得なくなった」と、プーチン大統領はエフレモフとの会話で回想している。「われわれは米国の戦略ミサイル防衛システムの配備に対応して、これらの兵器を作らなければならなかった。同防衛システムはわれわれの核の可能性全体を無力化し、時代遅れにすることさえできたであろう・・・現代ロシアの歴史上初めて、ロシアは最も近代的なタイプの兵器を保有している。その威力、速度、そして、非常に重要なこととしてはそれ以前に存在し、現在も存在するすべてのものと比較しても、精度の点で遥かに優れている」とプーチンは述べている。

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これで全文の仮訳が終了した。

極超音速ミサイルの開発にロシアが成功したという事実は確かに驚くべき成果である。だが、歴史的背景を考えると冷戦下にあった当時の米ソ両国の思考や行動は実に興味深い。

米国は常にソ連に対して軍事的脅威を与え続けてきた。そして、ソ連は常に米国からの脅威に反応し続けてきた。この引用記事が報じているように、ロナルド・レーガン米大統領のスターウオーズミサイル防衛構想に反応して、ソ連はアヴァンギャルド・プロジェクトを立ち上げた。2000年代初頭、米国がABM条約から一方的に離脱し、欧州にミサイル防衛網を配備し始めた後、ロシアは独自のミサイル防衛プロジェクトを再開した。

しかしながら、米国が旧ソ連に対して一人勝ちしたとして有頂天になって浮かれている間(1990年代以降)にロシア側は次世代戦略兵器の開発に注力した。それは1990年代にイエルツィン政権の下で米国の経済専門家たちの手でロシア経済が食い物にされるという苦い経験がロシアの政治家を目覚めさせたからであろう。西側の資本家にロシアを売って、巨万の富を自分のポケットに収めようとした数多くの新興財閥たちはロシアから追放された。

核を搭載することができる極超音速ミサイルをロシアが実戦配備したことによって米ロ間の軍事バランスは崩れた。べいこくにとっては一方的に不利になった。

だが、自分たちが相対的に弱体化したという米国を取り巻く現実は、ある意味で、新しい脅威を招く可能性が出て来た。一部の専門家によると、自暴自棄になった米国の戦争屋は自分たちが所有する核兵器を最後の頼りとするのではないかという心理的側面を新たな脅威として取り上げているのである。極めて不気味な洞察である。


参照:

1Avangard: Hypersonic Glide Vehicle Putin Credits With ‘Nullifying’ US Missile Defenses: By Ilya Tsukanov, Sputnik, Mar/14/2024

 

 



2024年3月14日木曜日

スコット・リッター:ペンタゴンによるウクライナの妄想は潰えた

 

スコット・リッターはロシア・ウクライナ戦争に関するトップ級の解説者のひとりである。代替メデイアにおいては、最近、毎日のように何らかの形で彼の見解が報じられている。これはウクライナ紛争の終焉が真近に迫っているということだ。

ここに、「スコット・リッター:ペンタゴンによるウクライナの妄想は潰えた」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1: © AFP 2023 / MANDEL NGAN

フランスのステファン・セジュルネ外相は、金曜日(38日)にリトアニアでバルト三国とウクライナの外相らと会談した。この訪問は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領がフランス軍をウクライナに投入する可能性を提起したことから欧州のより強力な同盟国のいくつかを怒らせてしまった数日後に行われた。

ウクライナにおける米国防総省の幻想は崩壊しつつあると、元国連兵器査察官であって、現在は軍事問題の解説者でもあるスコット・リッターは、月曜日(311日)、スプートニクの「断層線」に語った。

ペンタゴンからの戦術的助言にウクライナが耳を傾けなかったことから、キエフとワシントンの間では緊張が高まっているとの米メディアの報道について、リッターはその主張は現実に基づいてはおらず、米国から責任を転嫁するように仕組まれたものであると思うと述べている。

「ウクライナに対する巨大な幻想が崩壊しつつあるため、ペンタゴンは間違いなく自らの責任を政治的に隠蔽しようとしている」とリッターは断言し、ウクライナはアウデーエフカの背後に防衛線を構築できるように、できるだけ長く同拠点を保持する以外に選択肢はほとんどなかったと説明した。だが、ロシアの空軍力はその目標を達成することさえをも許さなかったと指摘。

「肘掛け椅子に座ったクォーターバックを演じて、そこに座り込んで、こき下ろすのは簡単なことだ。しかし、現実には、ウクライナ人には彼らが持っていた最後の防御可能な地位を何とか維持しようとする以外に、他にどのような選択肢があったのだろうか?」

キエフ政権は「いわゆる友人や同盟国が自分たちを見捨て、ウクライナを自らの運命に任せているという現実に目覚めつつあるところだ」と、リッターはフランス軍がウクライナに配備されるかも知れないというマクロンの最近のコメントを議論しながら、説明した。

「マクロン大統領がなぜこのようなことを言うのかを理解するには、現在のウクライナの状況がどれほど悲惨であるかを理解する必要がある。彼らは軍事的崩壊に直面しており、今まさにわれわれが話しているように、ウクライナ軍の最後の予備兵力がオルロフカ村の周辺で戦闘に投入されている」とリッターは説明した。「これは奇跡が起きる時間を稼ぐためであり、フランスの戦闘集団がやって来ることは奇跡だが、ウクライナはそれを望んでいる」と述べた。

しかしながら、この「奇跡」の可能性が戦場の見通しを変えることはないとリッターは主張し、マクロン大統領が求めているとされるバルト三国の同盟国からの兵力の派遣の有無にかかわらず、「ウクライナに軍事的に意味のある部隊を配備する能力は非常に低い」と述べた。

一方、選挙シーズンは米国に軍事紛争からの撤退を余儀なくさせるとリッターは主張する。「バイデンは大統領選挙のサイクルに入っており、11月の最終的な追い上げに近づいている。バイデンは政治的な露出を最小限に抑えるために必要なことは何でもするだろう」と述べた。

「ウクライナに関する政策の立案者であるビクトリア・ヌーランド(政治担当国務次官)を解雇し、一歩後退した。」

その結果、欧州は「ウクライナに居座っても、率直に言って、米国の資金なしでは何も成し得ないことに気付いた。これは飲み込むのが困難な薬であり、その間、戦場ではウクライナ軍は極めて絶望的な窮地に立たされる。

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これで全文の仮訳が終了した。

ロシア経済を疲弊させ、ロシアが内部から崩壊し、プーチンを政権の座から引きずり下ろすという西側が2年前に公言した目論見は見事に失敗した。ロシア側は軍需生産を強化し、武器や弾薬、ミサイルの生産を大きく引き上げた。これは西側が武器や弾薬を思うようには増産できないでいるのとは好対照である。西側は武器や弾薬の在庫が自国の防衛をとってさえも危険なレベルに近づき、この状況を解決するにはある特定な部門では10年もかかると言われている。材料の手当だけでも7年はかかるのだそうだ。一夜にして回復することなんてできない話なのである。しかも、ロシア側の最新鋭・最強の武器は温存されている。最強の持ち札は核兵器であろう。ロシアの大統領選は31517日に行われる。プーチン支持率は80%だと言われている。このような現状では、どう考えても、ウクライナにおける対ロ代理戦争は終わったと考えざるを得ない。ペンタゴンによるウクライナの妄想は潰えたのである。

フランスのマクロン大統領が最近提言した欧州の軍隊をウクライナへ送り込むことに関しては、NATO加盟国の間では意見が分裂している。ポーランドの外相はウクライナへ欧州の兵力を送り込むことはあり得ると言い、英国の外相はあり得ないと言った。この6月には欧州議会の選挙が控えており、この議論は熱を帯びて来るだろうと思う。過去の歴史を見ると、国内景気の悪化から国民の関心を逸らせるためには外部に敵を求めることがよく起こった。つまり、国内の政治的危機を逃れるために指導者らは外部との戦争に向かうことが多い。

現時点では、特に西欧では「ウクライナ疲れ」によって生活の質が低下する一方であることから既存の政治エリートたちは人気を失い、極右勢力が票を伸ばすだろうと言われている。生活の質を取り戻すにはウクライナ紛争を収束させるしかない。この単純明快な論理をどれだけ主張し、選挙民の関心をどれだけ集結させることができるのかが鍵だ。

ところで、プーチンはロシアの核兵器は何時でも使える状態にあると述べ、最近、西側に対して警告を出した。日頃の彼の発言はハッタリではなく、常に率直な発言であることを考えると、NATOがロシアに向かって同国の脅威となるような軍事行動を起こすならば、ロシア側は何時でも核兵器を使うと言っているのである。これは今に始まったことではない。これはロシアの軍事ドクトリンであるとして前々から公表されていることだ。核兵器の悲惨さを直接わきまえている人たちは、今や、欧州には殆ど居ないとは言え、NATO側は一部の交戦派が主張するように安易にロシアへ武力侵攻することなどはできない。ロシア側からは核兵器による反撃があり得るからだ。しかも、ロシア側は極超音速ミサイルを有しており、西側の対空防衛システムはこれに対応できない。ブリュッセルやパリ、ロンドン、ベルリンは一瞬にして蒸発する。自分たちが実行しようとしたことを2倍返し、3倍返しで報復されるのが落ちだ。そんなことは誰も望んではいない。

ただ、米国には先制核攻撃を信じる政治家がいることが最大の懸念材料だ。彼らは近視眼的であって、本質を理解しようとはせず、目先の利益、つまり、次回の選挙結果しか眼中になく、人気取りに走る。広大な国土を有するロシアを相手にして先制核攻撃を行い、報復攻撃を行うことができなくなるまでロシア全土を一方的に叩くことなんて不可能だと私は考える。移動型のミサイル発射装置をどうやって一気に壊滅させることができるのか。それだけではなく、核搭載の潜水艦が常に外洋をパトロールしており、第一波の攻撃によってこれらの潜水艦を壊滅することは技術的には不可能だ。こうして、ロシアの潜水艦や移動型ミサイル発射装置からの報復核攻撃は間違いなく行われる。報復核攻撃にはさらに報復が行われる。こうして、世界規模の核戦争になる。

一言で言えば、ロシアとウクライナが一日でも早く停戦合意に漕ぎ着け、和平協議を始めることを祈るばかりである。

 

参照:

1Scott Ritter: Pentagon’s ‘Ukrainian Fantasy’ Is Falling Apart: By Ian DeMartino, Sputnik, Mar/12/2024

 

 


2024年3月10日日曜日

ウクライナにおけるCIAの活動がリークされたことはキエフ政権にとっては終焉が真近になったことを示すものだ


 私のような素人にとってはロシア・ウクライナ戦争はかなり前に既に終わっている。だが、この代理戦争を計画し、実行して来た連中にとってはそう簡単に「止ーめた!」とは言えない状況があるようだ。利害関係者にとっては軍事的な観点と政治的な観点がうまく一致することは稀なのだろう。常にどちらかが固執し、他方は譲歩することになるのだ。

ここに、「ウクライナにおけるCIAの活動がリークされたことはキエフ政権にとっては終焉が真近になったことを示すものだ」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1© Sputnik / Stringer

ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は、日曜日(225日)、ウクライナにおける中央情報局(CIA)の作戦に関して大規模な暴露記事を掲載し、ロシア国境近くに12カ所もの秘密情報前線作戦基地を設立したことの詳細を報じた。スプートニクは元CIA職員のラリー・ジョンソンに連絡を取り、この報道の内容を精査するのを手伝ってもらった。

ロシア外務省はウクライナにおけるCIAの作戦に関して報じたNYTの日曜日の記事を分析し、欧米諜報機関のウクライナへの積極的な関与は20142月のユーロマイダン・クーデター後に始まったという同紙の主張に異議を唱えた。

CIAはキエフ政府がスパイを訓練するのを助けてきたが、スパイだけではなく、あからさまな武闘派や過激派、テロリスト、凶悪犯さえをも訓練した。誰もかれもだ。そして、この連鎖行動が動き出した最も顕著な例のひとつは2013年から2014年にかけて起こった。」ニューヨーク・タイムズの報道に反応して、外務省のマリア・ザハロワ報道官はこう述べた。「民主的な勢力や民間人を装って、マイダンに参加した人々は主にポーランドやバルト諸国の基地で訓練を受けた。そして、われわれはこのことについては話したことがある。」

NATO諸国の諜報機関は、2022年に起こった展開のずっと前から、ロシアとの国境だけではなくウクライナ全土に基地やその他のインフラを設置するために働いていたと同報道官は述べている。

「ここで疑問が湧いてくる点がある。それは、なぜ今になってようやくNYTはこのことについて懸念を表明したのかという点だ。われわれはすべての情報を公開して来た。なぜ米国のメディアは何年も沈黙を守っていたのだろうか?」と彼女は疑問を投げかけている。

タイムズの記事によれば、CIAは、2016年にまで遡って8年間にわたって、ロシアに近いウクライナで12カ所の秘密スパイ基地を創設し、諜報「パートナーシップ」は、マイダン革命時に任命されたスパイ長官のヴァレンティン・ナリヴァイチェンコが当時のCIA長官ジョン・ブレナンやMI6に接触し、ウクライナ保安庁(ウクライナの頭字語SBU)を「ゼロから」再建するのを手伝うよう依頼したことから、「10年前に根をおろした」と見られている。

筋書きを構築するための嘘:

「彼らは初期段階での米国の役割については嘘をついている」と、元CIA分析官であり、国務省テロ対策室の専門家であるラリー・ジョンソンは言う。

『彼らは、クーデターの実現に米国と英国が果たした役割やマイダンで起こったことについては嘘をついている。彼らは「ああ、マイダン革命が起こって、それからCIAは事後的に連絡を受けたんだ」というふうに演技をしている。まあ、それは本当の話じゃない』とジョンソンはスプートニクに語った。NYTはマイダン革命、マレーシア航空MH17便撃墜事件、2014年に始まったドンバス地域でのウクライナ政府による懲罰的「対テロ作戦」を無視した「侵略者ロシア」の物語についての筋書きを作ろうとしていることを示唆した。

この観察者によると、このストーリーにおいて「誰もが次から次へと偽情報を受け取ることになった。」

『そして、彼らは、米国はウクライナがこれらすべてのテロ行為を実行するのを抑え込もうとしていたと言っている。つまり、「ロシアに対するこれらの攻撃は米国のせいではなく、ウクライナ人が独自に行動したのだ」というメッセージを送ろうとしているようなものだ』とジョンソンは述べている。

「われわれは1955年に遡って、(ウクライナの反ソビエト・反ロシア分子との)繋がりを持っていた。つまり、バンデラ主義者たちに対処する上でのCIAの役割は1940年代後半から1950年代初頭にまで遡る。彼らは、これを新しい関係のようなもの、つまり、過去1015年間に展開したものであったかのように描こうとしている。これはまったくのナンセンスだ!」と元CIA分析官は強調した。

沈没しかけた船から逃げ出すネズミ:

ロシアがドンバス地域へ進軍し、キエフ政府に対する米国とヨーロッパの武力支援が脅かされている中で、ウクライナでの代理戦争の現段階において暴露情報を公表する動機について質問を受け、これはワシントン政府がウクライナ・プロジェクトを終わらせることを決めた兆候かも知れないとジョンソンは示唆したのである。

「これはウクライナの終焉が近いことの表れだと思う。それこそが彼らが今この情報を漏らしている唯一の理由だ。なぜならば、ウクライナ人自身がその情報を発信しているからだ」とジョンソンは述べた。『これは、沈みつつある船をネズミが離れ始めている兆候なのだ。これは米国のせいではないと主張する彼らの何時ものやり方だ。「われわれがやれることは全部やった。クレイジーなウクライナ人!」って。これは「ウクライナを非難する」(筋書き)の一部だ』と同観察者は指摘する。

この記事で言及されている12の秘密基地については、ジョンソンはロシアがこれらの施設についてはすでに知っていたことであり、それらを除去するための行動をとったか、あるいは、行動を取る可能性が高いと個人的な自信を表明している。

「もし私がロシアの諜報機関員ならば、それらの基地を爆破するだろう」と彼は言った。「基地はロシア領土にそれほど近くはない。なぜなら、ロシアに近ければロシア側はそれらの基地をいとも簡単に排除できるからだ。そして、彼らは収集された情報の種類をほとんど誇張している。繰り返しになるが、もしも彼らが想定されているような形でCIAが本当に活動していたのであれば、CIASBU内の人員を訓練していたであろうと想定される。情報を受け取り、受領確認をせずに彼らに情報を渡していたことであろう。だが、それは実際に起こっていたことではない。これは彼らが言うところのオープンな連絡サービスなのであって、情報は自由に受け渡しされている。」

ロシア側にとっては何の驚きでもない基地:

CIAは「あらゆる友好地域に基地を設置する。これらは技術的、作戦的、人的な諜報を含むCIAの活動を促進するための基地であるとロシアの予備役大佐であり、「ロシアの英雄」であり、軍事諜報機関のベテランでもあるリュステム・クルポフは言う。

「諜報と防諜の分野の軍事専門家にとってウクライナでの12カ所のCIA秘密基地に関する情報はセンセーショナルでもなければ、信じられないようなニュースでもない」とクルポフはスプートニクに語り、グルジアや他の旧ソ連内の共和国にも同様の施設があり、そこには米国のスパイが招かれていると指摘した。「基地には研究所や技術諜報機器が配置され、工作員や特殊諜報部隊を駐留させる施設を設置することも必要だ」とし、そうすれば、海を越えてこうしたインフラを引きずり回す必要はなくなる。

CIAはスパイ組織であり、その主な目的は米国のソフト・パワーにとって有利な条件を作り出すこと、あるいは、特殊なスパイ活動や破壊工作を含む特殊作戦の助けを借りてそういった条件を作り出すことである。このため、CIAの痕跡が見つかるところであるならば、それがどこであっても腐敗し、悪臭を放つ活動や出来事がいろいろと起こるのである」とこの観察者は指摘する。

2011年のいわゆる「アラブの春」と称される抗議行動に先立って、同様の基地が作られたとロシアのベテラン将校は述べた。CIAは東欧での来るべき紛争に備えて「アラブ人を相手に自分たち自身を訓練した」と言う。後者のプロジェクトの目的は隣国と兄弟国の間にくさびを打ち込むことを含んでいた。

米国人は長期戦を演じる:

「米国は長期戦を演じる」とクルポフは強調し、ワシントン政府はヨーロッパにおける第一次世界大戦の頃にまで遡って、「まず、彼らに武器を供給し、次に配当を受け取る」ことなどをやってきたと述べた。彼らはすべての戦場で長期戦を演じ、すぐに権力を掌握することができないところでは長期的なプロジェクトを生み出した。そして、ソ連の一部であるウクライやソ連邦全体はそういった長期戦を演じるプログラムだったのである。」

「ウクライナ軍の将校がCIAに気に入られようとしてソ連時代からソ連崩壊後に至るまで、ロシアとウクライナの平和的な交流の時期まで、ありとあらゆる機密文書をCIAに提供したことは想像に難くない。これが公式に言及されるのは今になってだけだ」と同退役将校はNYTの記事とその「暴露内容」に言及した。

「主な目標はロシアの崩壊である。彼らに必要なのはロシアそのものではなく、ロシアが保有する天然資源だ」とクルポフは強調し、ウクライナでの代理戦争は現代のあらゆる紛争と同様に経済をその中核に据えていると指摘した。

「ソビエト時代にはわれわれは政治的対立や階級的対立を最前線に置いた。今や、われわれはこれらの米国との階級的対立は乗り越えた。しかしながら、矛盾は残っている」と言う。つまり、今や、それは「地政学」として改めて定式化されているのである。

結局のところ、もしもロシアが2年前にウクライナでの特殊軍事作戦を開始していなかったならば、ロシアは「ドンバス地域のロシア系住民が踏みにじられ、この地域は焦土と化すのを目の当たりにせざるを得なかったであろうとクルポフは考える。そして、そこには最新兵器の全てを備えた米軍の基地が設置され、それらは我々のすぐ隣に接して存在することになったであろう。」


Photo-6: 関連記事:A Fateful Error: History of NATO's Expansion: By Sputnik, Mar/20/2023

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これで全文の仮訳は終了した。

私は10年前にマイダン革命が起こった頃から、ロシア系ウクライナ人に対する敵意に満ちたキエフ政府の弾圧については批判的であった。このクーデターにおいては米国のNGOの活動が極めて大きな役割を担っていたことについてもブログに投稿した(注:詳細については、Mar/10/2024tに投稿した「ウクライナでのNGO活動」を覗いていただきたい)。20145月、オデッサにおいてフットボール・ファンのグループの間で抗争が起こり、親ロ系ファンの若者たちが何十人も焼き殺されるという実に悲惨な出来事があった。この事件によってウクライナにおけるロシア語圏地域の住民たちの反政府行動は後戻りができない決定的な段階に至ったと言える。

つまし、最大の要点は、ロシア軍が2022224日にウクライナへ侵攻したことによって、ロシア・ウクライナ戦争が突然始まったというわけではない。

2022224日の前には長い歴史があった。こういった歴史を無視し、ロシアが突然ウクライナへ侵攻したとする西側メディアによる単純極まりない大合唱は西側のプロパガンダであったことは、今や、多くの人達が認め、理解している通りだ。ウクライナ紛争は10年も前から米国が関与し、ウクライナにおける対ロ嫌悪感情を煽り、政治的に、そして、軍事的に主導し続けてきた米国による勝手気ままな対外政策の賜なのである。さらに過去の歴史を紐解けば、30年以上も前にソ連邦が崩壊し、旧冷戦時代からの負の遺産、つまり、対ロ嫌悪感や憎悪感情によって支配されていた西側の精神構造がワルシャワ条約機構軍が解体された後でさえもNATO軍を存続させ、西側はNATOを東方へ拡大し続けた。

怠惰が故にそうなったのか、あるいは、他の理由によるものなのかは判断が難しいが、結果としては新しい世界の動向について誤判断をしてしまった西側の政治家や軍人たちの責任は極めて大きい。だが、ここでひとつだけ記憶に留めておきたい件がある。マイダン革命が起こった2014年、米国ではジョン・ミアシャイマー教授が米国における一般的な論調に抗して孤軍奮闘していたことだ。その詳細については201491日に投稿した「ウクライナ危機を招いたのは西側であり、プーチンではない ― 米外交問題評議会」をご覧いただきたい。そして、その後の10年間に実際に起こったことを見れば、当時の彼の主張はその後ほぼ実証されたと言ってもいいのではないか。

人類が長い年月をかけて培ってきた道徳とか価値観を踏み外して、妄想的で新奇なポリコレ政策に走ると、そういった政治家や指導者は最終的には人の世から見放される。これは歴史上で繰り返して起こってきたことだ。

参照:

1Leaked Details on CIA Ops in Ukraine Signal ‘End is Near’ for Kiev: Agency Vet: By Ilya Tsukanov, Sputnik, Feb/26/2024