2024年3月21日木曜日

米国がノルドストリーム・パイプラインを破壊工作したことに関する真実がNATOを崩壊させるかも

 

ロシア産天然ガスをドイツへ輸送するノルドストリーム・パイプラインの操業に関しては、破壊工作が行われた当日の状況は下記のようにウィキペディアに記述されている。もう一度おさらいをしておこう:

ガスの漏出の前にパイプラインはすでに天然ガスで満たされていたが、ロシアによるウクライナへの武力侵攻を受けて、天然ガスの輸送は開始されなかった。2022926日、現地時間の02:03CEST)、ノルドストリーム2の爆発が検知された。(2本の)パイプの1本で圧力低下が報告され、天然ガスがデンマークのボーンホルム島の南東の海面に流出し始めた。17時間後、ノルドストリーム12本のパイプにも同じことが起こり、ボーンホルム島の北東で3つの別々の漏水が発生した。これらの影響を受けた3本のパイプはすべてが動作不能になった。ノルドストリーム22本のパイプのうち1本は破壊から免れて、その稼働は可能であり、ロシア側はノルドストリーム2を通じてガスを供給する準備ができていることを確認した。これらのガス漏れは、ポーランドとノルウェーがノルド・ストリーム・パイプラインのようにロシアからではなく、北海からガスを運び込むために準備されたデンマーク経由のバルト海パイプラインを開通させる前日に起こった。漏出は公海で発生したが、デンマークとスウェーデンの経済水域内である。

「ノルドストリーム1」(第1ラインは2011118日に稼働し、第2ラインは2012108日に稼働)と「ノルドストリーム2」(20216月に第1ラインが完成し、20219月に第2ラインが完)のふたつのパイプラインには合計で4本のパイプがあるが、そのうちの1本は一連の破壊工作を免れ、無事であった。そして、ロシア側はその稼働は可能であることを認めてはいたが、ウクライナで進行していた米ロ間の代理戦争はこのパイプラインの操業を許さなかった。それだけではなく、対ロ経済制裁は何回にもわたって発動され、西側はロシア経済に打撃を与え、ロシアの国内世論を反プーチンに導くとする大義名分の下で嫌ロ政策が西側の中心的な政策として継続された。しかしながら、喧伝されていた2023年夏のウクライナ軍による対ロ大攻勢は失敗に終わった。そして、中東では、202310月、ハマス・イスラエル紛争が始まった。こうして、米国の戦争努力は2正面となった。ウクライナを支援してきた西側各国では「ウクライナ疲れ」が表面化した。そして、ウクライナにとって何よりも致命的な状況は米国がウクライナに対して支援を継続することが極めて困難であるとの認識が202411月の米大統領選との絡みから米国内政治の中心課題に据えられたことである。

ウクライナ側の軍事的敗北が濃厚になり、しかもロシア経済には打撃を与えることもなく、かえって西側はエネルギーコストの増大に見舞われて、インフレが進行、金利が上昇し、経済停滞に見舞われている。今になって思うと、皮肉な事には、西側による傲慢な自己評価や過剰な自己欺瞞とロシアに対する過小評価や無知がまたしても対ロ政策で大失敗を招いたと言えそうだ。

ここに「米国がノルドストリーム・パイプラインを破壊工作したことに関する真実がNATOを崩壊させるかも」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1© AP Photo / Armando Franca

NATOは常に米国が欧州の軍事政策を支配することを許してきた。今や、米国はエネルギー政策についても牛耳っている。

月曜日(226日)、デンマークはノルドストリーム・ガス・パイプラインの爆発に関する調査を公式に終了したが、欧州では2番目の国となった。この爆発はウクライナにおけるロシアに対する代理戦争のためだ。ダン・ラザールは米国のドナルド・トランプやフランスのマリーヌ・ルペン、オランダのヘルト・ワイルダース、イタリアのジョルジャ・メローニ、等、この状況から恩恵を受けている人物として多くの名前を挙げている。

20229月、ロシアとドイツを結ぶ二組の「ノルドストリーム」パイプラインは一連の爆発で使用不可となった。2012年に完成したひとつ目のパイプラインは、今までほぼ10年間、ロシアの天然ガスを西欧に供給してきた。米国はロシアと欧州の同盟国との協力行為に懸念を表明したが、ノルドストリームはドイツの産業を活性化し、欧州大陸全体に低コストのエネルギーを供給する上で重要な役割を果たしてきた。

観察者たちはロシアがウクライナのドンバス地域への攻撃に介入した場合には(ノルドストリーム)プロジェクトに「終止符を打つ」と言ったジョー・バイデン米大統領の当時としては不可解であった約束を直ちに指摘し、この破壊行為について米国を非難した。デンマークの調査によってこの爆発は「意図的な破壊工作」であったことが認定されたが、デンマーク当局は誰がその責任を負っているのかに関してはさらに究明することは拒んだ。

調査報道を専門とするダン・ラザールは、水曜日(227日)、スプートニクの番組「クリティカル・アワー」に出演し、この米国の同盟国の報告に関してコメントを述べた。

「これはまったくもって茶番だ」と、偶像破壊主義的な著者は述べている。「この調査がいつまで続くかは分からない。つまり、デンマークは調査を行い、結論を出したが、それが明らかに破壊工作であったことは誰もが知っている。ところが、(デンマークは)犯人と思われる人物を名指しすることを控えている」と言った。

「そして、その理由は、もちろん、最も可能性の高い犯人は米国であって、実際、米国こそが犯人であると私は100%確信している」と彼は主張した。「でも、デンマーク、スウェーデン、誰もがそのことを言うのを恐れている。極めて異常なことだ。」

同様に米国の同盟国であるスウェーデンも、今月初め、ノルド・ストリームの惨事に関する独自の調査を打ち切ったが、同国もこの破壊工作の犯人については言及してはいない。ラザールは米国の罪は明らかではあるのだが、米国と欧州の関係を守るためにそのことは何度も無視されて来たと述べている。ラザールによれば、この破壊工作における米国の役割を公然と認めようとしているのは欧州の極右政党だけであり、この政治力学は彼らに利益をもたらしているのである。

「街頭を行き交う男性や女性はいったい誰がこんなことをしでかしたのかを完璧に理解しているのだが、リベラルな中道政党はそのことを瓶に詰め込んで、現実を否定しようとしている」と彼は説明した。「つまり、このことについて語っているのは彼ら以外の政党であって、ドイツでは「ドイツのための選択肢」党(AfD)のような極右のポピュリスト政党だけだ。実際、AfDはこの問題にかなり懸命に取り組んでいる」と述べた。

Photo-3:関連記事:Hersh: West's Hesitance to Conclude Nord Stream Probe Implicates Culprits: By Sputnik, Feb/07/2024

「だから、もしAfDが世論調査で人気度を上昇させているならば、ジョー・バイデンがパイプラインを爆破したからであるので、AfDはジョー・バイデンに感謝しなければならない。だが、誰もがその事実を認めることを恐れている」とラザールは結論付けた。

「ドイツのための選択肢」党は経済的困難やウクライナの対ロ代理戦争に絡んで既成政党に対する支持がますます不人気となる中で、現在、西側で支持層を拡大している多くの右翼勢力のひとつである。ラザールは米国のドナルド・トランプやフランスのマリーヌ・ルペン、オランダのヘルト・ワイルダース、イタリアのジョルジャ・メローニ、等、この現象から恩恵を浴している人物を多数挙げている。

「中枢部は自滅し、事実上、今や、極右派がその座に就く先駆けとなっている」と彼は言い、「既成のエリート議員たちはこのノルドストリームの破壊工作を隠蔽するために、酷い、かなり酷い代償を払うことになるだろう」と主張している。

しかし、ラザールはノルドストリームの惨事という爆発的な現実によって損傷を受けやすいのはリベラルな政党だけではないと主張している。

「米国は仲間である筈のNATO加盟国に対して戦争行為をした」と彼は率直に主張。「NATO加盟国はお互いの間で戦争を引き起こしてはならない。部外者からの攻撃に対して防護するためのものであるからだ。」

ラザールは、もし指導者たちがノルドストリームの破壊工作に対する米国の責任を公に認めたとしたならば、「その政治的な影響は大地を揺るがす程のものになっていたであろう」と主張した。

「いったん人々が何が実際に起こったのかを認識すれば、本質的にNATOは消滅する。なぜならば、同盟というものはある加盟国が他の加盟国を攻撃するための体制ではないからだ」と彼は主張する。「これは相互防衛協定であるが、米国はあっけなくそれを破った。このノルドストリーム・パイプラインの破壊工作は何十年にもわたって共鳴し続けるような出来事だ。まさに、それは西側同盟の心臓部が爆発したようなものであり、西側の同盟を完全に破壊するだろう。これが無視できないほど大きくなれば、NATOにはその打撃を生き延びる術はない」と言った。

同盟が東欧に拡大するにつれて、NATOはすでにさまざまな緊張に苦しんでおり、最近ではトルコとハンガリーがスウェーデンのNATO加盟を遅延させた。スロバキアのロベルト・フィコ首相も、先週、ドンバスのウクライナを支援するために欧州軍を派遣すべきだというフランスのエマニュエル・マクロン大統領の提案を批判し、同盟の方向性に疑問を呈した。

しかし、NATOは常に米国によって支配されており、その現実はNATOの連合軍最高司令官は全員が米国人であるという事実によって実証されている。国家主義者であったフランスのシャルル・ド・ゴール大統領はかってフランス軍をNATO軍の指揮下に置くことを拒否したことで有名である。

欧州の指導者たちは歴史的に米国からの軍事的保護を受けることを約束する代わりに、NATOの取り決めを容認することに満足してきた。しかし、米国はついに欧州大陸のエネルギー政策について過剰な程に君臨した。これはやり過ぎだったのかも知れない。欧州各国が自国の独立を宣言する意志を持った指導者を最終的に輩出することができるかどうかは時が経てば分かるだろう。

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これで全文の仮訳は終了した。

この記事を読むと、欧州が徹底的に米国に牛耳られており、それが欧州を直接・間接的に影響して、欧州は分断されていることが手に取るように分かる。

ノルドストリーム・パイプラインの破壊工作をやったのは米国だといち早く報じたのは米国の調査報道ジャーナリストの第一人者であるシーモア・ハーシュであったが、彼は、最近、欧州の指導者は誰が破壊工作を行ったのかを知っていながらも、名指ししたがらないことを見ると、誰が真犯人かは容易に察しが付くと皮肉たっぷりの解説を行っている。

さらに、彼はノルドストリームを破壊したことによって、ロシア国内ではプーチンに対する支持をより確かなものとしたと、ハーシュは指摘している。今回の大統領選でプーチンは87%という高い支持率を達成した。ロシア経済に打撃を与え、プーチン政権を内部から崩壊させるとしてロシアに課した経済制裁、ならびに、ウクライナに対する軍事支援が失敗に終わったことを、またもや、改めて明確に示した。

さて、ウクライナにおける米国の対ロ代理戦争はこれからどのように、そして、何処へ向かうのだろうか?

参照:

1Explosive Truth of US’ Nord Stream Sabotage Could ‘Destroy’ NATO: John Miles,  Sputnik, Feb/29/2024

 

 


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