2022年2月24日木曜日

コロナ禍の筋書きにほころび

 

コロナ禍の展開の中でmRNAワクチンを世に送り出した米製薬会社の2社、ファイザーとモデルナの株価は一時の人気に比べて最近大きく下落している。この下落はコロナ禍の終焉を物語っていると言えそうだ。株式の値動きは、通常、6か月程の将来を読む先行指標であると言われている。

ファイザー:最近のピーク時(昨年1216日)の最高価格:$61.43

                   今年218日の終り値:$48.53(ピーク時の79%に下落。コロナ禍が始まった2020年の1月は$3540であった。)

モデルナ:  最近のピーク時(昨年89日)の最高価格:$484.47

                   今年218日の終り値:$145.74(ピーク時の30%に下落。20201月は$2030程度であった。)

変異株オミクロンは、昨年119日、南アで最初の感染サンプルが採取された。この変異株はその後1か月程度の間に世界中へ急速に広がって行った。しかし、感染の速度は非常に迅速ではあるものの、重篤な状態に陥ることは今までの事例に比して遥かに少ないことが判明した。普通の風邪のレベルであるとさえ言われている。

2年間にわたって続いたコロナ禍を総括するにはまだ時期尚早かも知れない。

しかしながら、ヨーロッパでは多くの政府(訳注:ナチ化したオーストリアやドイツを除いて、スウェーデンとスイスが規制を撤廃するとすでに宣言したデンマークやノルウェー、フィンランド、アイルランド、チェコ共和国、オランダ、イタリア、リトアニア、フランスおよび英国の戦列に最近加わった)が規制の撤廃を宣言している。この現状は、ワクチン接種を義務化し、ワクチンパスポートの取得を推奨していた23か月前のEU各国の動きとは様変わりである。

そして、もっとも大きな最近の変化はワクチン接種にはどのような問題点があったのかを指摘する声が一挙に増加し始めたことだ。今回のワクチン接種はコロナウィルスの蔓延を防ぐための「緊急時の使用」という名目で、長期に及ぶ副作用については十分な検証をせずに、集団接種を開始したという経緯が存在している。

長期間のワクチンによる負の影響は今後何年間にもわたって観察を続けて行かなければならない。今後の重要な課題である。

内部告発が抹消され、フェースブックが行ったファクトチェックは情報操作を可能にし、科学的な報告に対する著者を誹謗する、等のいかがわしい状況がわれわれの目の前で起こった。都市閉鎖の効能が疑問視されたが、ほとんどの政府はこれを強行した。嫌気を感じた人たちは政府の政策に対して抗議行動を起こした。たとえば、カナダで最近起こった大型トラックの車列による抗議行動は多くの市民の支持を得、この手法はオーストラリアやヨーロッパへも広がった。

今や、世間は総括の段階に入ったかのようである。さまざまな総括があり得る。ひとつは当局側による総括である。当局による総括のひとつは反政府行動を起こした人物を刑事告発すること。たとえば、上述のカナダの首都における大型トラックによる反政府抗議行動に関してはデモに参加したトラックの運転手を逮捕することが始まっている。このような状況は前トランプ大統領の支持者が米議会へ乱入したとしてバイデン政権の下で刑事告発を受けていることとまったく同質の光景に見える。

もうひとつは支配者層に対して不満や怒りを感じている側からの総括である。都市閉鎖によって職を失った人たちやビジネスを閉鎖せざるを得なかった人たちの不満は高まるばかり。政府に対する不信の念が高まった。例えば、米国におけるバイデン政権の支持率の低迷をもたらした要因のひとつとなっているようでさえある。この後者による総括は、今、急に増え始めたような印象を受けるが、こう感じるのは私だけであろうか。

ここに、「コロナ禍の筋書きにほころび」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。 

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コロナ禍の筋書きは著名な医学・医療分野の学者や解説者に対して情報検閲を掛け、彼らを失職の憂き目に曝し、軍人や医療関係者に対してはワクチン接種の義務を非合法的に強要し、学童らは政治的に腐敗した学校運営者からの影響を受け、家族のメンバーは恐怖感に駆られた、無知な親戚からの非難を受け、プロの運動選手たちは無能なチームオーナーやスポーツ関連の高官らによって誤導されるといった事態をもたらした。しかしながら、これらの筋書きは、今や、われわれの目の前で崩壊しようとしている。だが、闘いは終わったわけではない。オーストリアやオーストラリアといった国々はほとんど完全にナチ化した。西側諸国の政府はことごとくが誠実さに欠け、信頼を置くことができないことを示した。本日の投稿には良いニュースと悪いニュースとがある。良いニュースは皆に希望を与え、悪いニュースは闘う意欲をさらに高めさせるのではないか。支配者集団はどれもこれもが我々の敵であることを理解しておくことが重要である。勇気のある医学者は真実を語り続け、インターネットのウェブサイトは脅しに遭ってさえも屈服せず、カナダにおける大型トラックの車列デモは新型コロナにまつわる大嘘に亀裂をもたらした。まさに、ハンプティ・ダンプティ(訳注:英国の童話に登場する卵男のこと:ハンプティ・ダンプティ、壁の上に座って、ハンプティ・ダンプティ、ドシンと落ちた。王様の馬のみんなも王様の家来のみんなもハンプティを元には戻せなかった。〔マザーグース〕- ウィキペディアから)のように、これは元へ戻すことはできないのだということを確めておきたい。ファウチは大量殺人を犯した。彼の責任を追及しなければならない。ワクチンの製薬企業は責任を取らなければならない。そして、真実の情報を「人を混乱させるためのガセネタ」と主張した下劣極まりないメディアも責任を取らなければならない。これらの卑劣な輩が責任を取らされるまではわれわれは安全に過ごすことができないであろう。われわれは彼らを許したり、忘れたりしてはならない。彼らは再びわれわれの喉元を狙ってくるであろうからだ。

関連記事:

エリートたちが推進する独裁政治は抵抗を招いている:https://www.paulcraigroberts.org/2022/02/06/the-elites-imposition-of-tyranny-is-meeting-resistance/

◆ワクチン接種者の死亡が増加:https://www.paulcraigroberts.org/2022/02/06/deaths-of-vaccinated-people-rise/

◆米国防省の内部告発者がワクチン接種後に兵士らの間で疾病が爆発的に増加したことを示す証拠を提供:https://www.paulcraigroberts.org/2022/02/06/department-of-defense-whistleblowers-provide-proof-that-following-vaccination-military-illnesses-exploded/

◆証拠が入ってきた。

マスクの着用は防護具としては無用であって、多くの害を与える: https://www.paulcraigroberts.org/2022/02/06/the-proof-is-in-masks-are-useless-as-protective-devices-and-do-much-harm/

マスクを着用しない子供の親たちが「刑事告発」に脅かされている:
https://www.paulcraigroberts.org/2022/02/06/parents-of-unmasked-children-threatened-with-criminal-charges/

◆オーストラリアは全面的なナチ国家になった: https://www.paulcraigroberts.org/2022/02/06/australia-has-gone-total-nazi/

(注:著者またはその代理人の許可に基づいて、この記事をPaulCraigRoberts.org から転載)

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これで全文の仮訳が終了した。

今回のコロナ禍は社会を分断した。日本社会は最悪の事態をうまく免れたが、ワクチン接種が義務化された国々では、特に、欧米では接種者と非接種者との間に大きな亀裂が生まれた。この状況はやむを得ないことだとしてマイノリティーである非接種者に対する圧力を見過ごすには余りにも不条理であると言える。

冒頭にも書いたように、ワクチンがもたらす長期的な副作用の実態は、もしそういったものがあるとすれば、これから表面化して来る筈だ。最終的に評価を下せるのは何年後のことであろうか・・・。

参照:

1Cracks In the Covid Narrative: By Paul Craig Roberts, Feb/06/2022

 

 


2022年2月19日土曜日

ウクライナ危機の本命はウクライナではない。本命はドイツだ

 

米国政府は、11日、ロシアはウクライナへの侵攻を216日に行うとの予測を発表した。バイデン大統領が同盟国にも伝えたとのことだ。ウクライナに駐在する各国大使館の職員はキエフから退避し始めていると報じられている。日本の外務省は一部の館員を除いて14日から大使館員を退避させるという。とすると、この原稿を書き始めた時点では退避がすでに開始されている筈である。

しかし、問題はヨーロッパ各国の足並みが揃っているわけではないという点だ。

15日のキエフからの報道によると、「ウクライナ政府はロシアが16日に大規模な武力侵攻をするとは判断していない」と国家防衛安全保障委員会の長が月曜日(14日)に述べた。また、18日の情報によると、ウクライナの統合軍司令官が言うには、「状況は緊迫しているが、ロシア軍が侵攻する気配は今のところない」との見解である。

こういった状況を見ると、西側のニュースはフェークニュースであって、ウクライナ国内には恐怖を、そして、西側諸国にはロシアに対する憎しみを引き起こすためのキャンペーンであると言えよう。東部2州とウクライナ政府軍との間には停戦ラインがあるが、ウクライナ側からドネツクやルガンスクに向けて砲弾が撃ち込まれ、攻撃が始まっている。ロシアによる大規模な侵攻が近いと喧伝することによって本格的な偽旗作戦を展開するための舞台作りを行っていると私には見える。過去の戦争の歴史を見ると、さまざまな要素が酷似している。自作自演がうまく行けば、ロシア軍をついにウクライナ領内へおびき寄せることに成功し、西側のメディアはめでたくロシアを侵略者と呼ぶことができるのだ。

その場合、ドイツ政府は、今まで公言して来たように、ノルドストリーム2の稼働を永久にストップすることに追い込まれる。つまり、ロシアの侵攻が真近に迫っていると喧伝することは、思惑通りに事が進めば、ドイツがロシア産の安価な天然ガスを調達し続けることを阻止する。米国の最終的な目標はドイツが国際競争力を失い、経済的繁栄をすることができないようにして、ヨーロッパ全体を米国の影響圏に縛り付けておくことにある。

ウクライナ危機の深層を読み解く驚くような表題を持った記事が現れた。「ウクライナ危機の本命はウクライナではない。本命はドイツだ」と題されている(注1)。

正直に言うと、私自身はウクライナ危機はロシアと米国主導のNATOとの間の勢力争いという構図でしか見て来なかったので、米国とドイツとの二国間関係を中心的な柱としてウクライナ情勢の全体像を見ることは極めて新鮮であり、刺激的でもある。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。著者は米国ワシントン州に在住。著者の見解に耳を傾けてみよう。

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「米国の根源的な国益のためにわれわれは何世紀にもわたっていくつもの戦争を行って来た。第一次世界大戦や第二次世界大戦、冷戦、等はドイツとロシアとの間の関係であった。これらの二か国が団結すると、米国にとっては自分たちを脅かす唯一最強の存在となるのである。「ストラトフォー」シンクタンクのCEOを務めるジョージ・フリードマンは「そのような団結が起こらないようにしなければならない」とシカゴグローバル問題評議会で述べている。

ウクライナ危機はウクライナとは関係がない。問題の本質はドイツにある。特に、ノルドストリーム2と称されるロシアとドイツを直結するパイプラインにある。ワシントン政府はこのパイプラインは米国のヨーロッパにおける優位性にとっては脅威となると見なし、あらゆる場面でこのプロジェクトの邪魔をして来た。とは言え、ノルドストリームの施設工事は前進し、今や、操業を開始できるところまで漕ぎ着けている。ドイツの規制当局が最終的な認証を与えると、天然ガスの供給はすぐにでも始まる。ドイツの一般家庭や産業界はクリーンで安価なエネルギー源を安定して入手することができ、ロシアはガス収入で著しい増収を実現するであろう。ドイツとロシアの両国にとってはまさにウィン・ウィン・ゲームである。

しかし、こういった展開については米国の外務に携わる高官らにとっては決して幸福な気分ではいられない。彼らはドイツがロシア産の天然ガスに今まで以上に依存することは望んではいないのだ。商売は相手に対する信頼感を醸成し、信頼感は交易の増大をもたらす。相互関係が温まるにつれて、貿易障壁は撤廃され、規制が緩められ、旅行や観光が拡大し、新しい安全保障の枠組みが構築される。ドイツとロシアが友人となり、交易のパートナーとなった世界においては米国の軍事基地は不要となる。米国製の高価な武器やミサイル・システムは不要となり、NATOは不要となる。また、エネルギー貿易を米ドルで決済する必要はなくなり、帳尻を合わせるために米財務省証券を購入する必要もなくなる。ビジネス当事者間での決済は自国通貨で行うことができる。これは米ドルの価値が急激に低下することにつながり、米国の経済力に劇的な変化をもたらすことになる。これこそがバイデン政権がノルドストリームに反対している理由なのだ。事は単にパイプラインだけではなく、将来のためのウィンドウでもあるのだ。つまり、将来ヨーロッパとアジアは一緒になって巨大な自由貿易圏を構築し、お互いに国力を強化し、繁栄する。その一方で、米国は圏外に置かれ、中を覗き込むだけ。ドイツとロシアとの間に暖かい関係が築かれると、それは米国が過去75年間にわたって君臨して来た単独覇権による世界秩序が終焉することを意味する。独ロ間の同盟は現在破局に向けて進行しつつある超大国の終焉を加速化させるであろう。これがワシントン政府がノルドストリームを邪魔し、ドイツを自国の影響圏内にとどめるためならば何でも行おうと決断するに至った理由だ。要するに、生きるか死ぬかの問題だ。

こうして、今起こっていることはウクライナがこの大きな絵の中に登場して来たひとつの場面なのである。ウクライナはノルドストリームを粉砕するために米国が選んだ武器であり、ドイツとロシアとの間に楔を打ち込むための道具である。この戦略は「分割統治」という表題を持つ米国の対外政策ハンドブックの第1頁目から持って来たものだ。ワシントン政府にはロシアはヨーロッパに対して安全保障上の脅威となるという概念を形成する必要があるのだ。それが目標なのだ。彼らはプーチンが血に飢えた侵略者であり、信頼には値しない、直ぐにかっとなる性格の持ち主であることを見せつける必要がある。この目標を達成するために、メディアには「ロシアはウクライナへ侵攻する計画だ」と繰り返す宿題を課した。だが、ここで敢えて付け加えようとはしない点がある。それは、ロシアはソ連邦の崩壊以降いかなる国へも侵攻してはいないこと、その一方で、米国は同期間中に50か国以上に侵攻したり、政権交代をもたらしているという事実であり、米国は世界中の多くの国で800カ所以上もの軍事基地を持っているという事実である。これらのことはどれについてもメディアによって報じられることはない。それに代わって、「悪魔のプーチン」に焦点が当てられ、彼はウクライナ国境に10万人もの兵力を集結し、ヨーロッパ全土が血腥い戦争に放り込まれる脅威に曝されているのだと彼らは喧伝する。

このヒステリックな戦争のプロパガンダはすべてがロシアを孤立させ、悪魔視して、最終的にはロシアをばらばらにする意図の下で構成され、指揮されている。しかしながら、本当の目標はロシアではなく、ドイツなのである。「ザ・ウンズ・レビュー」に掲載されているマイケル・ハドソン教授の記事を要約すると次のような具合だ。この要約を是非ともご確認願いたい:

「ヨーロッパの調達を邪魔するために米国の外交官に残されている唯一の方策はロシアを軍事的侵攻に煽り立て、その後で、このような軍事的侵攻に仕返しをすることは国家の純粋に経済的な関心の如何なる事柄よりも大事だとおもむろに主張することだ。これはまさに127日に国務省の記者会見において好戦派で、政治関連担当の国務副長官であるヴィクトリア・ヌーランドが説明した如くである:ロシアがウクライナへ何らかの形で侵攻した場合は、ノルドストリーム2を先へは進めさせない。」(原典:“America’s Real Adversaries Are Its European and Other Allies”, The Unz Review

黒か白かだ。残念ながら、そんな具合である。バイデン政権は「ロシアを煽り立てて、ウクライナへの軍事的侵攻に引きづり込み」、ノルドストリームを邪魔する。この筋書きはウクライナの東部においてロシア人住民を防護するためにプーチンが国境を越えてロシア軍を送り込むように仕向けるために何らかの挑発行為を行うことを意味する。プーチンがこの餌に飛びついた場合、それに対する反応は迅速で厳しいものとなるだろう。メディアはこの行為は全ヨーロッパに対する脅威であると厳しく非難し、世界中の指導者らがプーチンを「新ヒットラー」と呼んで、彼を糾弾することであろう。一言で言えば、これがワシントン政府の戦略である。これを実施するプロセスではすべてがひとつの目標に向けて連携行動を採る。つまり、ドイツ首相のオラフ・ショルツにとってノルドストリームを最終的に承認するプロセスにおいて旗振りを行うことが政治的には極めて困難になるように仕向けることだ。

ワシントン政府がノルドストリームに関して反対していることを知って、読者の皆さんは「今年の初めにバイデン政権はどうして議会に対してこのプロジェクトに関するさらなる制裁は控えるようにと行動したのだろう」と不振に思うかも知れない。答えは簡単だ。それは国内政治にある。ドイツは現在原子力発電所を停止し、エネルギー生産の低下を補うために天然ガスを必要としている。また、経済制裁は外国からの干渉であると見るドイツ人にとっては極めて「興覚め」なのである。平均的なドイツ人は「米国はどうして我が国のエネルギー問題に関する決断に介入して来るのか」との質問を発する。「ワシントン政府は自分自身の仕事に集中するべきであって、われわれの仕事になんか口出しをするな!」と。これはごく普通の人たちから聞えてくる典型的な反応である。

そして、アルジャジーラからは次のような報告がある:

「ドイツ人は大部分が本プロジェクトを支持しており、エリート層の一部とメディアだけがパイプラインには反対なのだ・・・。」

「米国が制裁について騒げば騒ぐほど、また、本プロジェクトを批判すればするほど、本プロジェクトはドイツ社会においては人気を高める」とロシアと東欧の専門家であるステファン・マイスターが「ドイツ外交評議会」において語っている。(原典:“Nord Stream 2: Why Russia’s pipeline to Europe divides the West”, AlJazeera

ノルドストリームに対する世論の支持は固く、ワシントン政府は新しい取り組み方に落ち着いたのかどうかについての説明が可能だ。経済制裁は成功するとは思えず、アンクル・サムは代替え案へ乗り換えたのだ。つまり、ドイツがパイプラインを稼働するのを邪魔し得るような大きな外圧をかけることにした。率直に言って、この戦略にはやけくそな感じがあるけれども、皆さんはワシントン政府の辛抱強さに驚いているに違いない。9回の裏で5点差も負けているのだが、彼らはまだタオルを投げ込もうなんてしてはいない(負けを認めてはいない)。彼らは最後の一撃を加えて、事がうまく前進するかどうかを見極めようとしているところなのだ。

月曜日(27日)に、バイデン大統領はホワイトハウスでドイツ首相のオラフ・ショルツとの初の共同記者会見に臨んだ。この記者会見を巡って展開されたお祭り騒ぎは、単純に言って、前代未聞であった。ドイツの首相を米国の政策の方向へなびかせるのに必要となる「危機的雰囲気」を醸し出すためにあらゆるものが結集された。今週の始め、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は「ロシアの侵攻は真近に迫っている」と言った。彼女のコメントは国務省では指折りの批判者であるニック・プライスに引き継がれ、彼は、諜報当局からの推測情報として、ウクライナ東部では近い将来ロシア主導の自作自演作戦が起こるとの見解を示した。プライスの警告は、日曜日(26日)の朝、さらに国家安全保障担当補佐官のジェイク・サリバンによって引き継がれ、彼はロシアの侵攻は何時でも起こり得る、「明日かも知れない」とさえ言った。これはブルームバーグ・ニュースが「ロシアが侵攻した」という扇動的で、酷く嘘に満ちた表題を流した日からたった数日後のことであった。

あなた方はここにはある種のパターンが存在することを感じ取ることができるだろうか?何の疑いも持ってはおらず、彼自身を目標にして展開されているキャンペーンに関してはややもすれば忘れ勝ちなドイツ首相はこれらの何の根拠もない主張が自分に向かって圧力を加えるために用いられていることを果たして理解できているのであろうか?

誰かが予期しているように、最後の一撃は米国大統領自身からのものであった。記者会見で彼はきっぱりとこう述べたのである。「もしもロシアが侵攻して来たら、ノルドストリーム2はもはや存在しない。われわれはこのプロジェクトを葬り去る。」

こんな風にして、ワシントン政府はドイツのための政策を設定しようとしているのだろうか???

なんとまあ、鼻持ちならない程の傲慢さであろうか!

ドイツ首相はオリジナルの原稿には無かったバイデンのコメントによって後ろへ引き戻された。そんな状況にありながらも、ショルツはノルドストリームをキャンセルすることには同意せず、パイプラインの名前を口にすることさえもしなかったのである。もしもバイデンが世界でも3番目に大きな経済力を有する国家の指導者を公衆の面前で隅に追い詰めて、サンドバック代わりに叩きのめすことができると考えていたとするならば、彼の考えは大間違いであった。ドイツは遥か遠くのウクライナで戦火が広がったとしてもそれには関係なくノルドストリームを立ち上げる決意である。しかし、その決意は何時でも変化し得る。結局のところ、ワシントン政府が近い将来に何を仕出かそうとしているのかが分かるような人物はどこかにいるのだろうか?ドイツとロシアの間に楔を打ち込むに当たっていったい何人の犠牲者を許容するのかに関して誰かが分かっているのだろうか? 米国の衰退を遅らせ、新たな「多極的」世界秩序の出現を防止するためにバイデンはどのようなリスクを抱いているのかに関して誰かが理解しているのであろうか?今後の数週間、何でも起こりそうな気配である。 まさに、何でも。

当面、ドイツが有利な立場にいる。事態をどのように決着させるかはショルツの決断次第である。彼はドイツ国民の関心を満たす政策を採用するのか、それとも、彼はバイデンの執拗なゴリ押しに屈服するのか?彼は 活気に満ちたユーラシア回廊における新たな同盟を強化する航路を辿り始めるのであろうか、あるいは、ワシントン政府の気が狂ったような地政学的野望を支持するのであろうか?彼は新世界秩序におけるドイツの決定的な役割をがっちりと受け止めることができるのだろうか?この新世界秩序においては数多くのパワーセンターが現れ、それらのセンター国家は世界の統御においては平等を分かち合い、指導者たちはひるまずに多国間協調主義を追い求め、平和裏に開発を進め、発展し、全国家のための安全保障を追求する、あるいは、彼は完全に賞味期限切れとなった、ぼろぼろの戦後システムにテコ入れをしようとするのだろうか?

ひとつだけ確かなことがある。ドイツがどのような決断を下そうとも、その決断はわれわれ全員に影響を与えることになる。

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これで全文の仮訳が終了した。

ここに記述された内容は言われてみると非常に分かり易い。すべてが実に巧妙に仕組まれている。この解説がなかったら、全世界は、少なくとも、われわれのような一般大衆はウクライナ危機の深層を理解できないままに終わっているのではないかとさえ思える。

はたして、ショルツ首相はどのような決断を下すことになるのであろうか。彼の言葉に全世界が注目することになる。ドイツ経済ならびにEUの発展を目指すならば、米国の圧力を振り切って、ノルドストリーム2を稼働することになる。3党連立による彼のドイツ新政権はノルドストリームをめぐって結束を維持することができるのか、それとも、どこかで空中分解するのか?今後の展開から目が離せない。

参照:

1The Crisis in Ukraine Is Not About Ukraine. It’s About Germany: By Mike Whitney, The Unz Review, Feb/11/2022

 

 



2022年2月14日月曜日

「西側の長城」対「スノーニガー」

 

ここに現在の国際情勢を皮肉った興味深い記事がある。「西側の長城対スノーニガー」と題されている(注1)。私は著者の皮肉っぽさが痛快であるというよりも、むしろ、彼の洞察の深さに興味をそそられた。

ここで言うところの国際情勢とは数多くの嘘に基づいてでっち上げられた新型コロナの大流行、ウクライナをめぐる米ロ間の抗争、等によって翻弄されている現在の国際社会のことである。その場面では、好むと好まざるとにかかわらず、メディアが非常に重要な役割を演じている。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

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万里の長城については誰もが知っている。ね、そうだろう?だが、「西側の長城」については聞いたことがあるかい?

それは過去の約1000年もの間に西側の人々の意識の中に構築されてきたとてつもなく大きな壁のことだ。特に際立っている事例を取り上げて私はこの件を説明しようと思うのだが、ここではっきりと言っておきたいことがある。これらの事例は単に私が選んだだけのものであって、実際には何百万もの事例が存在し、それらはある種の「精神における力の場」を形成しており、抜け穴はほとんどゼロだ。今までのところは・・・。しかしながら、この壁はいったいどのようなものなのであろうか。まずは、いくつかの事例を取り上げ、その中に囲い込まれている人々が何を考えているのかに関して話を進めてみよう:

  • あんたが言いたかろうが、黙っていたかろうが、いわゆる西側の文明(この話の流れにおいては西側の文明は中世から生まれたのではなく、古代に誕生した)は他のいかなる文明よりも優れているということは誰もが知っており、そう理解している。まったくその通りだ。われわれはルソーや「ウークな連中」の気違いじみた考えにリップサービスをしてやるだろうけれども、心の奥底では次のように思っている。われわれは最高の存在であって、いずれは世界を凌駕し、誰もわれわれと肩を並べることなんてできはしないだろう。ましてや、われわれを攻撃することなんてあり得ない。
  • ロシア人は人種的にも文化的にも劣っている。まったくその通りだ。彼らはほとんどが白人系ではあるのだが、モンゴル人のように行動する(モンゴル帝国のことはこれっぽっちも知らない平均的な西側の人たちの心の中ではモンゴルはとても恐ろしい存在なのだ。英国政府の大臣さえもがそんな具合だ!)。連中は自分たちの脳をすっかりウォッカに漬けているか、西側の平和的で気高い人々に向けて詐欺的で血なまぐさい闘いを計画しているかのどちらかだ。これらの連中について私が贈呈したい言葉として彼らを「スノーニガー」と呼びたい。
  • スノーニガーたちは余りにも広大な土地と資源とを支配下に収めている。われわれは彼らに本物の民主主義をもたらしてやる必要がある。
  • ロシア人は民主主義を知らない。だから、彼らは「自由」という概念も持ってはいない。本当だぜ。彼らは「svoboda(自由)」と「volia」との違いを使い分けているが、「pravda(真実)」と「istina」との違いを理解する以上には実際に理解していない。だが、そんなことは誰も気にしない。彼らはわれわれが思考するようには思考しないのだから。だから、彼らの概念なんて関係ない。
  • ロシア人は信用できない。決して。ロシア人の隣人がいたら誰でもいいから聞いてみて欲しい。ロシアの治世で生活することが如何に惨めであるかを彼らは話してくれることであろう。実際には、ロシアは(西側とは違って)大量虐殺を行ったことがなく、ロシアには193もの民族集団があり、100を超す言語が用いられているという事実は無関係なのである。ソ連時代の共和国は、ロシアを除いて、どの国も安定化し発展が可能となった国はない。この事実も、また、無関係である。ロシア人が行うのは虐殺、強姦、略奪であって、特に「同性愛者」の迫害だ!
  • ロシア人はいつも馬鹿らしい戦術を用い、貧弱な訓練しか受けてはいないが、動物的な執拗さや勇気を持った兵士をいつも大量に投入してきた。第二次世界大戦においては、ドイツ軍はソビエト軍よりも遥かに優れており、特に戦術や作戦に関してはドイツの将軍たちはソビエトの将軍たちの大分先を歩んでいた。しかし、ドイツは米国と英国ならびに彼らの卓越した士官学校のせいで第二次世界大戦で敗北した。ソビエトの勝利は、もちろん、「スターリンの恐怖」によって説明される。これらの残虐な連中は強姦に走り、巨大な収容所を建設した。その一方で、米軍は、ドイツ人に対する場合も含めて、貧しいヨーロッパ人にチョコレートを配り、かっこいい音楽をふるまった。それから、米国は西側ヨーロッパを気前よく再興した。こうして、この物語は終わる。
  • われわれは最高の武器を所有し、最高の訓練を受けた最高の軍隊を所有している。全世界の軍事予算以上にわれわれは国防予算を使っているという事実がこのことの証である。また、われわれは世界中でもっと優れた諜報機関を持っている。事実、他の国々はいくつかの組織(典型的には2~4個の組織)を持っているだけであるのに対して、われわれには17もの諜報組織があって、軍隊と諜報機関およびその請負業者のすべてを含んだ「平和予算」は年間1兆ドルを超す。
  • 全世界が我が国を羨んでいる。だからこそ、我が国は世界中の移民者が目指す目標国のNo.1であり続ける理由なんだ。われわれは世界で最大規模の刑務所ネットワークを持っており、もっとも残酷な刑務所のひとつに数えられるが、それでさえも我が国へやって来る移民者を抑制する気配はまったくない。世界は、明らかに、われわれを好んでいるんだ!

私を信用してもいいよ。こういった内容は何ページでも続けることが可能だ。私は若い頃は西側で過ごした。私は中部ヨーロッパ(スイス)で生まれ、私の生涯の約半分はヨーロッパで過ごし、残りの半分は米国で過ごした。西側の5カ国語を話し、さらにいくつかの関連語を理解することができる。米国でふたつの大学院の学位を取得した。西側のことはよく理解している。私と出会った西側の人たちの大部分は私の出自を知らず、私がロシア人のルーツを持っていることを話すまでは彼らは私を「仲間内」として扱ってくれた。でも、その時点以降彼らの態度は急変し、彼らの顔にはありありと「注意しよう。彼は奴らの仲間だ」と書かれていた。

もちろん、上述した傾向に関しては例外がある。しかし、それらの例外は決して多いわけではなく、何らかの違いをもたらすほどの影響力もない。つまり、西側の国々はいつも決まったように悪意に満ちたロシア人恐怖症を選択するのである。彼らは誰もがロシアを憎み、恐れるのだが、彼らはそれぞれが違った仕方で感情を表現する。「西側の長城」の背後で暮らしているわけではない人々であってさえも大きな違いはない。これが、少なくとも、われわれ、つまり、アジア的なスノーニガーから見た場合の西側の姿だ。

このような概念は1000年近くにもわたって続いて来たのであるが、最近、何かが変わり始め、変化が現れ始めた:

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ところで、こう言ったからと言って、F-35 戦闘機が空母への着艦に失敗して、海へ飛び込んでしまったことを私は敢えて声高に喋ろうとしているわけではない。そういうことではなく、あのF-35の事故は西側文明全体を完璧に象徴してくれているのである:

  • 公的な説明:F-35戦闘機は今まで設計された戦闘機の中ではもっとも驚異的と言える程の航空機である。
  • 本当の説明: F-35は世界の歴史においてもっとも過剰な値札が付けられているが、何とか空中を飛べるだけの代物に過ぎない。

この物語では汚職が主要な役割を演じていることに注目していただきたい。

自分が言いたいことは喋ろうではないか。F-16F-5A-10 、ならびに、あの素晴らしいボーイング747を作り出した国家であるならば、素晴らしい航空機を製造することはもちろん可能だ。そして、米国の「ステルス」戦闘機はどれもが過剰な価格が付けられ、過剰に喧伝され、F-35 はまさに汚職による最高傑作なのだ。桁外れに有能な米国の科学者やエンジニアにとってはこの地球上でもっとも汚職に長けた連中、つまり、米国のエリート層を潰そうとしても何もできはしない。後者にとってはF-35 は全面的に、完璧な成功例なのである。大勝利だとさえ言う。

ここで、個人的な思い出を付け加えておきたい。米国で学生であった頃、私は気鋭の米空軍大佐(ノースロップのYF-23プログラムにも関与していた)が教鞭をとっている戦力計画に関するクラスに出席していた。彼のクラスは何時も傑作中の傑作であった。ある日、面白いことが起こった。われわれはグラフを作成したり、新型の米戦闘機のそれぞれの平均コストを算出し、調達費用を計算した。そして、これらについて曲線を描いてみると、実に面白い結果が得られた。それだけではなく、忘れ難いものでもあった。つまり、たった1機種の戦闘機を生産することに米国の軍事予算の総額を割り当てなければならないような時がやがてやって来ることをわれわれはそのグラフの中に認めたのである。それは銀河系の歴史の中で最高中の最高とも言える超一流の機種なのだ!1機種だけ!悲しいことには、われわれが見出した日付については私には記憶がないのだが、F-35 こそがわれわれのグラフがからかい半分に示した例の超一流の機種であって、現実世界を投影していたのではないかと今は思う(ところで、ロッキードのYF-22はノースロップのYF-23よりも劣ってはいたが、ロッキードの選択は政治的基盤の賜であったと言える。基本的には、報酬のすべてをノースロップへは与えないための決断であった。)

1990年はYF-22/YF-23が初飛行を行った年である。その年、スノーニガーはソビエト製のSu-27の改良版、つまり、SU-34を初めて飛行させた。私の極めて個人的な意見としては、Su-34はロシアのみならず世界中で製造された航空機の中でさえももっとも優れた全天候型の超音速中距離戦闘機・爆撃機・攻撃機である。この設計(原型はソビエト時代のSu-27迎撃機から始まった)はロシアが「民主的国家」となったゾッとするような90年代を生き抜いてきたというでけではなく、今や完璧に驚かされるようなSu-34M型として成長したという事実はソビエト時代の設計者やエンジニアがブレジネフらの指導層の下で「共産主義による沈滞」が続いた歳月の中でありながらも如何に優れていたかを如実に示している。ここにこの本物の最高傑作がどんな風に見えるのかを示しておこう:

Photo-2: Su-34のオリジナル版

その性能についてはこちらで読むことが可能。あるいは、この動画を観た方がいいかも知れない。実際の特性をチェックしてみたまえ。それらは君の度肝を抜くことであろう!

いや、この機種は「ステルス機」ではないけれども、それが持っている素晴らしい電子兵器、航空電子機器、ミサイル、および、レーダーはF-22のようなレーダー断面を必要とはしないのだ。同機は確かに大型の航空機である(航続距離を考えてみたまえ。最大積載量はこちら)。だが、その性能は完全に凄い。他の航空機を寄せ付けない。現行の第5世代の航空機さえをも寄せ付けないのである。特に(多くの改良を施した)現行のSu-34M型機(依然として第4世代ではあるが)はその使命を果たすのに全面的に第5世代である必要なんてさらさらないのだ。そのような場面では第4++世代のSu-30M2Su-35S型機が用いられ、必要とあれば第5世代のSu-57が投入される。

私はこの投稿でYF-22/YF-23/F-35Su-34または他の航空機と比較する意図はまったくない。

しかし、私は修辞学的な質問をしてみる。世界で唯一の超大国であり(特に1991年以降、ソ連邦が崩壊してからの米国)、何を取り上げても世界の指導者である米国は、ウォッカに漬かっているアジア的なスノーニガーたちが90年代(チェチェンでは二回の内戦が起こり、93年にはモスクワで内戦があった)に本当の意味で世紀末的な日々を過ごしていた中であってさえもSu-34のような傑作機を制作していた頃、F-35のようなガラクタ(別称、「空を飛ぶレンガ」)をいったいどうして制作したのだろうか?

そして、ここでわれわれは西側の長城によるとんでもない力を見ることとなる!例の修辞学的な質問は次のような形で取り扱われる: 

  • 「プーチンのプロパガンダ」として片付けられてしまう
  • 事実としては不正確であると片づけられてしまう(正確な表現:われわれの航空機の方が遥かに優秀だ)
  • 単に無視され、誰の関心からも排除される
  • われわれが本物を発明する中で、「ロシア人はわれわれの秘密のすべてを盗み出す」といった説明が行われる(F-35 は実際にはその多くを遥かに立派なロシアのYak-141に基づいて制作された。これは極めて愉快な議論である)。
  • 「専門家」たちはSu-34は幼稚で古めかしい技術に基づいて制作されているが、F-35は最新の航空力学を駆使して制作されていると宣言することであろう(だが、これは大嘘だ。もしもこれが真実であるとするならば、これらの馬鹿な連中は余りにも愚かである。このような主張は実際の兵器に関する各当事者の知性や経験についていったい何を示唆するのかを正しく認識することがまるでできていない!)。
  • 同疑似専門家たちは米国の軍産複合体があの吐き気を催すようなF-35を開発した一方で、ロシア人はほぼ同じような航空機であるSu-75を開発したが、後者はF-35が見せたような欠陥は何もなく、広範囲にわたって同様な性能を発揮し、F-35の犯罪的とも言える値札の何分の一かの費用で開発されたことを認識できないでいる(あるいは、少なくとも承認できない)。

西側の子供たちは「主人の人種」の一部であり、ハイパー兵器を持った「キャプテン・メリカ」風のハイパー戦士によって防護されており、必要とあればハイパー戦士がスノーニガーのけつを蹴とばしてくれることを知って、平和裏に夜の眠りに就くことができるのだ。イエ―イ!甘い夢である。

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しかし、真面目な話として、わたしはいったいどうして米国製航空機対ソビエト・ロシア製航空機に関してこのような話を掲載したいのだろうか?

私が言うところの「ゾーンA」と「ゾーンB」との間には巨大で、とてつもなく大きな、まさに息を呑むような違いがある。このことを描写するために、私は記念碑的なプロパガンダ志向の連中が作った傑作ともいえる西側の長城を取り上げてみることにした。この長城は世界を、少なくとも今までは、ふたつのゾーンを分けて来た(これらのゾーンは元々は地理的な範疇であったのだが、今やそれは大きく変化してしまった。ということで、精神的な範疇として考えてみようではないか)。

(分かり切った警告!!われわれはインターネット時代に生きており、何処でも使えるスマートフォン(優れた性能を持ったカメラが付いている!)やソーシャルメディアを駆使し、西側の長城を含めて、立ちはだかる如何なる壁に対しても数多くの接続の仕方がある!現実には、今や、精神上の長城の真下や真上、あるいは、壁のど真ん中を突き破ってゆっくりと漏洩が起こっており、ふたつの主要な結果がもたらされている:

  1. 西側の支配者層を全面的に絶望的なパニックモードに陥れた
  2. 西側市民の頭の中には西側のプロパガンダ・マシーンが常に真実を述べているという正直さに関して新たな疑念をもたらした(これは西側の指導者階級が感じているパニックを2倍も大きくする)

最近カブールで起こった出来事は西側の長城がわれわれの目の前で如何に崩壊するのかを完璧に描写してくれたのである。

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これらの背景の中、プーチンと彼の最後通牒はいったい何を意味するのであろうか?

本当のことを言うと、ロシアの最後通牒の主な目標は西側の主人の人種が酔っ払っているスノーニガーと交渉することに同意して貰うことにあるのではなく、西側の長城を構成する主要要素を取り払うことにあるのだ。つまり、まさに公理のように繰り返して喧伝される軍事的優位性と自己陶酔的な刑事免責とから成る西側の傲慢さを取り払うことにある。何十年にもわたってわれわれは米国とNATOの軍事力は如何に素晴らしいものであるか(ここではイラクやアフガニスタンのことは忘れよう!)、そして、如何にロシアの熊は張り子の虎に過ぎないかといった決まり文句を提供されて来た。まさにF-35は「最高の中の最高」の機種であって、Su-34は「昔ながら」の機種であるという見方のように(われわれだって制作できるのだが、ただ制作をしようとはしないだけの話だ)。

それから、スノーニガーはどうしてわれわれが課した「地獄の制裁」あるいは「世界でも最強力な軍事力」を怖がらないのであろうか??

どうしてわれわれの親愛なる(それ程愛されてはいないのかも知れないが)指導者たちはそんなに恐怖に震え、何をすべきかについては何の考えも持たないのであろうか?

これはそのような現実が西側の支配者たちや彼らが支配する農奴との間に学者たちが言うところの「最初の接触」を次第に実現してくれるということであろうか?

最後に一つの質問をしておこうと思う:西側の長城を完全に崩壊させるにはいったい何が必要なのか?

間違いなく、Su-34はそれには奏効しなかった。

もしお望みならば、たとえば、ロシアの軍事力全体にいったい何が起こったのかに関しては、Su-34は単に巨大な氷山の一角にしか過ぎないのだとしておこうか?

いや、そうではない。西側に住む 99%の人たちは米国とNATOがたとえ一緒になって攻撃して来たとしてもロシアは両者を反撃することができるなんてこれっぽっちも考えてはいない。そして、中国が驚異的な速度で追い上げて来ている事実に関してもまったく同様だ。

「成長の余地」がなくなった西側の経済が完全に崩壊するというのはどうだろうか?(これが意味するところは自衛できそうもない国家を占領し、その国の天然資源を何の用も足さないプラスチック製のビーズと交換するということだ)

いいや。まだそこまでは行っていない。世界の多くの国々が依然として米ドルを調達している限り、そうはならない。

では、EUのエネルギー幻覚が完全に崩壊する(別称、グレタ・ターンベルグ)というのはどうだろうか?

いいや!あなた方をからかいたいわけではないけれども、EUの高官らはえらく活発に経済的自殺を遂げることによって「ロシア」に制裁を課そうと思っている。ロシアでは、われわれはこれを「素っ裸でハリネズミを怖がらせようとしている」と言う。

では、ロシア人がよく言う「ラブロフと話をしたくないならば、ショイグと話をするべきだ」というのはどうかな。

誰もが関心を払い、いったい今何が起こっているのかを理解することができるようにになるのだろうか?

多分ね。

しかしながら、酔っ払いのスノーニガーたちこそがあの西側の長城を崩壊させなければならないだろう。レンガを一枚ずつ剥がし、1ドル毎にドルを廃棄し、弾丸を一発ずつ打ち込んで(ミサイルを一発ずつ打ち込むと言った方がより正確かもね)。

しかし、心配しないで貰いたい。酔っ払いのスノーニガーたちはあなた方を集団虐殺することはない。そんなことを仕出かすには彼らは余りにも「未開」であり、余りにも「アジア的」なのである。

しかし、1000年間にもわたって抱いて来た、人殺しを許容するイデオロギーや暴力に根差した自己妄想から彼ら自身が最終的に目覚めるまで、彼らはどのような問題に対しても関心を払わないだろうし、彼らは真剣にもならないであろう。

ロシアの将来は南方(コーカサス、中央アジア、中東、インド)や東方(東アジア)ならびに北方(北極地域)にある。

西側に関しては彼らの将来はいったい何処にあるのか私にはまったく見当がつかない。

あなたには分かるかい? 

アンドレイ(訳注:著者の名前。つまり、これは彼の署名)

***

これで全文の仮訳が終了した。

ところで、ニガーとは英語圏では黒人を指す蔑称であって、スラングである。現在、米国の新聞や雑誌ではニガーという単語をフルスペルで印刷することはない。いくつかのアルファベットをアスターリスクで置き換えて印刷する程だ(たとえば、snowni**er)。スノーニガーとは一般的にはヨーロッパ人に対して用いられる差別語のようである。さらには、スノーニガーとはアラスカに住むイヌイット人を指す用例もある。

ロシア人に対して恐怖を抱き、蔑む感覚は西側の政界やメディアでは、少なくとも、第二次世界大戦以降継続されており、最近はさらに強まっている感が強い。

米国大統領選挙でトランプ前大統領をロシアと共謀しているとして根も葉もない中傷をしたヒラリー・クリントンの選挙参謀たちの計略も「西側の長城」という虚構の反映であったと言えよう。トランプ前大統領に対する根も葉もない中傷に関する米国政府の調査についてはダーラム特別検察官による新しい調査結果が報告されている。たとえば、「Durham: Clinton Campaign Funded Efforts to ‚Establish Inference, Narrative’ Tying Trump to Russia: By Sputnik, Feb/13/2022」と題された記事はまさにこのスキャンダルに関する調査結果の集大成だ。

また、北京冬季オリンピックではロシアの15歳の女子フィギュアスケート選手、カミーラ・ワリエワが4回転ジャンプを成功させて金メダルをさらった。冬季オリンピックでの女子の競技では初の偉業であった。だが、カナダに本拠を置く世界アンチ・ドーピング機関(WADA)は彼女に関してドーピング疑惑をそれとなく持ち出して来た。彼女のサンプルを分析したのはスウェーデンのラボだそうである。ただし、分析されたサンプルは今回の冬季オリンピック期間中に採取されたものではないらしい。今、このサンプルのタイミングに関してロシア政府との間でひとつの議論が沸き起こっている模様だ。そして、この競技に関しては表彰式が延期された。こうして、嫌がおうにも世間の関心を集めている。そもそも16歳未満の未成年者についてはプライバシーの保護が求められており、当事者の名前も公表しないことが関係者の義務とされているのであるが。

われわれ一般大衆にはこれがロシアに対する「西側の長城」という構図の中で意図的に仕組まれたものなのか、あるいは、本当にドーピング違反であったのかは分かりにくい。ただ、現行の国際政治の大きな趨勢を考えると、ロシアに対する嫌がらせの一部ではないのかと勘繰る理由は十分に存在すると言わざるを得ない。マレーシア航空のMH-17便撃墜事件や英国で起こったスクリッパル親娘毒殺未遂事件、さらには、現行のウクライナのNATO加盟問題、等を引き合いに出すまでもなく、現実の世界は傾きかけた覇権を何とか維持することに全力を注ぐあまりもっとも重要な政治的課題が完全に無視されている。それは人々の生命や健康である。何という腐敗振りであろうか。

誰もがこのような現実を改善したいと思うであろう。しかし、引用記事の著者が指摘しているように、「1000年間にもわたって抱いて来た、人殺しを許容するイデオロギーや暴力に根差した自己妄想から彼ら自身が最終的に目覚めるまでは、西側世界はどのような問題に対しても関心を払わないであろうし、彼らは真剣にもならないであろう。」

参照:

1 The Great Western Wall vs Snow Niggers: By The Saker, Jan/29/2022