2022年2月14日月曜日

「西側の長城」対「スノーニガー」

 

ここに現在の国際情勢を皮肉った興味深い記事がある。「西側の長城対スノーニガー」と題されている(注1)。私は著者の皮肉っぽさが痛快であるというよりも、むしろ、彼の洞察の深さに興味をそそられた。

ここで言うところの国際情勢とは数多くの嘘に基づいてでっち上げられた新型コロナの大流行、ウクライナをめぐる米ロ間の抗争、等によって翻弄されている現在の国際社会のことである。その場面では、好むと好まざるとにかかわらず、メディアが非常に重要な役割を演じている。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

***

万里の長城については誰もが知っている。ね、そうだろう?だが、「西側の長城」については聞いたことがあるかい?

それは過去の約1000年もの間に西側の人々の意識の中に構築されてきたとてつもなく大きな壁のことだ。特に際立っている事例を取り上げて私はこの件を説明しようと思うのだが、ここではっきりと言っておきたいことがある。これらの事例は単に私が選んだだけのものであって、実際には何百万もの事例が存在し、それらはある種の「精神における力の場」を形成しており、抜け穴はほとんどゼロだ。今までのところは・・・。しかしながら、この壁はいったいどのようなものなのであろうか。まずは、いくつかの事例を取り上げ、その中に囲い込まれている人々が何を考えているのかに関して話を進めてみよう:

  • あんたが言いたかろうが、黙っていたかろうが、いわゆる西側の文明(この話の流れにおいては西側の文明は中世から生まれたのではなく、古代に誕生した)は他のいかなる文明よりも優れているということは誰もが知っており、そう理解している。まったくその通りだ。われわれはルソーや「ウークな連中」の気違いじみた考えにリップサービスをしてやるだろうけれども、心の奥底では次のように思っている。われわれは最高の存在であって、いずれは世界を凌駕し、誰もわれわれと肩を並べることなんてできはしないだろう。ましてや、われわれを攻撃することなんてあり得ない。
  • ロシア人は人種的にも文化的にも劣っている。まったくその通りだ。彼らはほとんどが白人系ではあるのだが、モンゴル人のように行動する(モンゴル帝国のことはこれっぽっちも知らない平均的な西側の人たちの心の中ではモンゴルはとても恐ろしい存在なのだ。英国政府の大臣さえもがそんな具合だ!)。連中は自分たちの脳をすっかりウォッカに漬けているか、西側の平和的で気高い人々に向けて詐欺的で血なまぐさい闘いを計画しているかのどちらかだ。これらの連中について私が贈呈したい言葉として彼らを「スノーニガー」と呼びたい。
  • スノーニガーたちは余りにも広大な土地と資源とを支配下に収めている。われわれは彼らに本物の民主主義をもたらしてやる必要がある。
  • ロシア人は民主主義を知らない。だから、彼らは「自由」という概念も持ってはいない。本当だぜ。彼らは「svoboda(自由)」と「volia」との違いを使い分けているが、「pravda(真実)」と「istina」との違いを理解する以上には実際に理解していない。だが、そんなことは誰も気にしない。彼らはわれわれが思考するようには思考しないのだから。だから、彼らの概念なんて関係ない。
  • ロシア人は信用できない。決して。ロシア人の隣人がいたら誰でもいいから聞いてみて欲しい。ロシアの治世で生活することが如何に惨めであるかを彼らは話してくれることであろう。実際には、ロシアは(西側とは違って)大量虐殺を行ったことがなく、ロシアには193もの民族集団があり、100を超す言語が用いられているという事実は無関係なのである。ソ連時代の共和国は、ロシアを除いて、どの国も安定化し発展が可能となった国はない。この事実も、また、無関係である。ロシア人が行うのは虐殺、強姦、略奪であって、特に「同性愛者」の迫害だ!
  • ロシア人はいつも馬鹿らしい戦術を用い、貧弱な訓練しか受けてはいないが、動物的な執拗さや勇気を持った兵士をいつも大量に投入してきた。第二次世界大戦においては、ドイツ軍はソビエト軍よりも遥かに優れており、特に戦術や作戦に関してはドイツの将軍たちはソビエトの将軍たちの大分先を歩んでいた。しかし、ドイツは米国と英国ならびに彼らの卓越した士官学校のせいで第二次世界大戦で敗北した。ソビエトの勝利は、もちろん、「スターリンの恐怖」によって説明される。これらの残虐な連中は強姦に走り、巨大な収容所を建設した。その一方で、米軍は、ドイツ人に対する場合も含めて、貧しいヨーロッパ人にチョコレートを配り、かっこいい音楽をふるまった。それから、米国は西側ヨーロッパを気前よく再興した。こうして、この物語は終わる。
  • われわれは最高の武器を所有し、最高の訓練を受けた最高の軍隊を所有している。全世界の軍事予算以上にわれわれは国防予算を使っているという事実がこのことの証である。また、われわれは世界中でもっと優れた諜報機関を持っている。事実、他の国々はいくつかの組織(典型的には2~4個の組織)を持っているだけであるのに対して、われわれには17もの諜報組織があって、軍隊と諜報機関およびその請負業者のすべてを含んだ「平和予算」は年間1兆ドルを超す。
  • 全世界が我が国を羨んでいる。だからこそ、我が国は世界中の移民者が目指す目標国のNo.1であり続ける理由なんだ。われわれは世界で最大規模の刑務所ネットワークを持っており、もっとも残酷な刑務所のひとつに数えられるが、それでさえも我が国へやって来る移民者を抑制する気配はまったくない。世界は、明らかに、われわれを好んでいるんだ!

私を信用してもいいよ。こういった内容は何ページでも続けることが可能だ。私は若い頃は西側で過ごした。私は中部ヨーロッパ(スイス)で生まれ、私の生涯の約半分はヨーロッパで過ごし、残りの半分は米国で過ごした。西側の5カ国語を話し、さらにいくつかの関連語を理解することができる。米国でふたつの大学院の学位を取得した。西側のことはよく理解している。私と出会った西側の人たちの大部分は私の出自を知らず、私がロシア人のルーツを持っていることを話すまでは彼らは私を「仲間内」として扱ってくれた。でも、その時点以降彼らの態度は急変し、彼らの顔にはありありと「注意しよう。彼は奴らの仲間だ」と書かれていた。

もちろん、上述した傾向に関しては例外がある。しかし、それらの例外は決して多いわけではなく、何らかの違いをもたらすほどの影響力もない。つまり、西側の国々はいつも決まったように悪意に満ちたロシア人恐怖症を選択するのである。彼らは誰もがロシアを憎み、恐れるのだが、彼らはそれぞれが違った仕方で感情を表現する。「西側の長城」の背後で暮らしているわけではない人々であってさえも大きな違いはない。これが、少なくとも、われわれ、つまり、アジア的なスノーニガーから見た場合の西側の姿だ。

このような概念は1000年近くにもわたって続いて来たのであるが、最近、何かが変わり始め、変化が現れ始めた:

Photo-1

ところで、こう言ったからと言って、F-35 戦闘機が空母への着艦に失敗して、海へ飛び込んでしまったことを私は敢えて声高に喋ろうとしているわけではない。そういうことではなく、あのF-35の事故は西側文明全体を完璧に象徴してくれているのである:

  • 公的な説明:F-35戦闘機は今まで設計された戦闘機の中ではもっとも驚異的と言える程の航空機である。
  • 本当の説明: F-35は世界の歴史においてもっとも過剰な値札が付けられているが、何とか空中を飛べるだけの代物に過ぎない。

この物語では汚職が主要な役割を演じていることに注目していただきたい。

自分が言いたいことは喋ろうではないか。F-16F-5A-10 、ならびに、あの素晴らしいボーイング747を作り出した国家であるならば、素晴らしい航空機を製造することはもちろん可能だ。そして、米国の「ステルス」戦闘機はどれもが過剰な価格が付けられ、過剰に喧伝され、F-35 はまさに汚職による最高傑作なのだ。桁外れに有能な米国の科学者やエンジニアにとってはこの地球上でもっとも汚職に長けた連中、つまり、米国のエリート層を潰そうとしても何もできはしない。後者にとってはF-35 は全面的に、完璧な成功例なのである。大勝利だとさえ言う。

ここで、個人的な思い出を付け加えておきたい。米国で学生であった頃、私は気鋭の米空軍大佐(ノースロップのYF-23プログラムにも関与していた)が教鞭をとっている戦力計画に関するクラスに出席していた。彼のクラスは何時も傑作中の傑作であった。ある日、面白いことが起こった。われわれはグラフを作成したり、新型の米戦闘機のそれぞれの平均コストを算出し、調達費用を計算した。そして、これらについて曲線を描いてみると、実に面白い結果が得られた。それだけではなく、忘れ難いものでもあった。つまり、たった1機種の戦闘機を生産することに米国の軍事予算の総額を割り当てなければならないような時がやがてやって来ることをわれわれはそのグラフの中に認めたのである。それは銀河系の歴史の中で最高中の最高とも言える超一流の機種なのだ!1機種だけ!悲しいことには、われわれが見出した日付については私には記憶がないのだが、F-35 こそがわれわれのグラフがからかい半分に示した例の超一流の機種であって、現実世界を投影していたのではないかと今は思う(ところで、ロッキードのYF-22はノースロップのYF-23よりも劣ってはいたが、ロッキードの選択は政治的基盤の賜であったと言える。基本的には、報酬のすべてをノースロップへは与えないための決断であった。)

1990年はYF-22/YF-23が初飛行を行った年である。その年、スノーニガーはソビエト製のSu-27の改良版、つまり、SU-34を初めて飛行させた。私の極めて個人的な意見としては、Su-34はロシアのみならず世界中で製造された航空機の中でさえももっとも優れた全天候型の超音速中距離戦闘機・爆撃機・攻撃機である。この設計(原型はソビエト時代のSu-27迎撃機から始まった)はロシアが「民主的国家」となったゾッとするような90年代を生き抜いてきたというでけではなく、今や完璧に驚かされるようなSu-34M型として成長したという事実はソビエト時代の設計者やエンジニアがブレジネフらの指導層の下で「共産主義による沈滞」が続いた歳月の中でありながらも如何に優れていたかを如実に示している。ここにこの本物の最高傑作がどんな風に見えるのかを示しておこう:

Photo-2: Su-34のオリジナル版

その性能についてはこちらで読むことが可能。あるいは、この動画を観た方がいいかも知れない。実際の特性をチェックしてみたまえ。それらは君の度肝を抜くことであろう!

いや、この機種は「ステルス機」ではないけれども、それが持っている素晴らしい電子兵器、航空電子機器、ミサイル、および、レーダーはF-22のようなレーダー断面を必要とはしないのだ。同機は確かに大型の航空機である(航続距離を考えてみたまえ。最大積載量はこちら)。だが、その性能は完全に凄い。他の航空機を寄せ付けない。現行の第5世代の航空機さえをも寄せ付けないのである。特に(多くの改良を施した)現行のSu-34M型機(依然として第4世代ではあるが)はその使命を果たすのに全面的に第5世代である必要なんてさらさらないのだ。そのような場面では第4++世代のSu-30M2Su-35S型機が用いられ、必要とあれば第5世代のSu-57が投入される。

私はこの投稿でYF-22/YF-23/F-35Su-34または他の航空機と比較する意図はまったくない。

しかし、私は修辞学的な質問をしてみる。世界で唯一の超大国であり(特に1991年以降、ソ連邦が崩壊してからの米国)、何を取り上げても世界の指導者である米国は、ウォッカに漬かっているアジア的なスノーニガーたちが90年代(チェチェンでは二回の内戦が起こり、93年にはモスクワで内戦があった)に本当の意味で世紀末的な日々を過ごしていた中であってさえもSu-34のような傑作機を制作していた頃、F-35のようなガラクタ(別称、「空を飛ぶレンガ」)をいったいどうして制作したのだろうか?

そして、ここでわれわれは西側の長城によるとんでもない力を見ることとなる!例の修辞学的な質問は次のような形で取り扱われる: 

  • 「プーチンのプロパガンダ」として片付けられてしまう
  • 事実としては不正確であると片づけられてしまう(正確な表現:われわれの航空機の方が遥かに優秀だ)
  • 単に無視され、誰の関心からも排除される
  • われわれが本物を発明する中で、「ロシア人はわれわれの秘密のすべてを盗み出す」といった説明が行われる(F-35 は実際にはその多くを遥かに立派なロシアのYak-141に基づいて制作された。これは極めて愉快な議論である)。
  • 「専門家」たちはSu-34は幼稚で古めかしい技術に基づいて制作されているが、F-35は最新の航空力学を駆使して制作されていると宣言することであろう(だが、これは大嘘だ。もしもこれが真実であるとするならば、これらの馬鹿な連中は余りにも愚かである。このような主張は実際の兵器に関する各当事者の知性や経験についていったい何を示唆するのかを正しく認識することがまるでできていない!)。
  • 同疑似専門家たちは米国の軍産複合体があの吐き気を催すようなF-35を開発した一方で、ロシア人はほぼ同じような航空機であるSu-75を開発したが、後者はF-35が見せたような欠陥は何もなく、広範囲にわたって同様な性能を発揮し、F-35の犯罪的とも言える値札の何分の一かの費用で開発されたことを認識できないでいる(あるいは、少なくとも承認できない)。

西側の子供たちは「主人の人種」の一部であり、ハイパー兵器を持った「キャプテン・メリカ」風のハイパー戦士によって防護されており、必要とあればハイパー戦士がスノーニガーのけつを蹴とばしてくれることを知って、平和裏に夜の眠りに就くことができるのだ。イエ―イ!甘い夢である。

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しかし、真面目な話として、わたしはいったいどうして米国製航空機対ソビエト・ロシア製航空機に関してこのような話を掲載したいのだろうか?

私が言うところの「ゾーンA」と「ゾーンB」との間には巨大で、とてつもなく大きな、まさに息を呑むような違いがある。このことを描写するために、私は記念碑的なプロパガンダ志向の連中が作った傑作ともいえる西側の長城を取り上げてみることにした。この長城は世界を、少なくとも今までは、ふたつのゾーンを分けて来た(これらのゾーンは元々は地理的な範疇であったのだが、今やそれは大きく変化してしまった。ということで、精神的な範疇として考えてみようではないか)。

(分かり切った警告!!われわれはインターネット時代に生きており、何処でも使えるスマートフォン(優れた性能を持ったカメラが付いている!)やソーシャルメディアを駆使し、西側の長城を含めて、立ちはだかる如何なる壁に対しても数多くの接続の仕方がある!現実には、今や、精神上の長城の真下や真上、あるいは、壁のど真ん中を突き破ってゆっくりと漏洩が起こっており、ふたつの主要な結果がもたらされている:

  1. 西側の支配者層を全面的に絶望的なパニックモードに陥れた
  2. 西側市民の頭の中には西側のプロパガンダ・マシーンが常に真実を述べているという正直さに関して新たな疑念をもたらした(これは西側の指導者階級が感じているパニックを2倍も大きくする)

最近カブールで起こった出来事は西側の長城がわれわれの目の前で如何に崩壊するのかを完璧に描写してくれたのである。

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これらの背景の中、プーチンと彼の最後通牒はいったい何を意味するのであろうか?

本当のことを言うと、ロシアの最後通牒の主な目標は西側の主人の人種が酔っ払っているスノーニガーと交渉することに同意して貰うことにあるのではなく、西側の長城を構成する主要要素を取り払うことにあるのだ。つまり、まさに公理のように繰り返して喧伝される軍事的優位性と自己陶酔的な刑事免責とから成る西側の傲慢さを取り払うことにある。何十年にもわたってわれわれは米国とNATOの軍事力は如何に素晴らしいものであるか(ここではイラクやアフガニスタンのことは忘れよう!)、そして、如何にロシアの熊は張り子の虎に過ぎないかといった決まり文句を提供されて来た。まさにF-35は「最高の中の最高」の機種であって、Su-34は「昔ながら」の機種であるという見方のように(われわれだって制作できるのだが、ただ制作をしようとはしないだけの話だ)。

それから、スノーニガーはどうしてわれわれが課した「地獄の制裁」あるいは「世界でも最強力な軍事力」を怖がらないのであろうか??

どうしてわれわれの親愛なる(それ程愛されてはいないのかも知れないが)指導者たちはそんなに恐怖に震え、何をすべきかについては何の考えも持たないのであろうか?

これはそのような現実が西側の支配者たちや彼らが支配する農奴との間に学者たちが言うところの「最初の接触」を次第に実現してくれるということであろうか?

最後に一つの質問をしておこうと思う:西側の長城を完全に崩壊させるにはいったい何が必要なのか?

間違いなく、Su-34はそれには奏効しなかった。

もしお望みならば、たとえば、ロシアの軍事力全体にいったい何が起こったのかに関しては、Su-34は単に巨大な氷山の一角にしか過ぎないのだとしておこうか?

いや、そうではない。西側に住む 99%の人たちは米国とNATOがたとえ一緒になって攻撃して来たとしてもロシアは両者を反撃することができるなんてこれっぽっちも考えてはいない。そして、中国が驚異的な速度で追い上げて来ている事実に関してもまったく同様だ。

「成長の余地」がなくなった西側の経済が完全に崩壊するというのはどうだろうか?(これが意味するところは自衛できそうもない国家を占領し、その国の天然資源を何の用も足さないプラスチック製のビーズと交換するということだ)

いいや。まだそこまでは行っていない。世界の多くの国々が依然として米ドルを調達している限り、そうはならない。

では、EUのエネルギー幻覚が完全に崩壊する(別称、グレタ・ターンベルグ)というのはどうだろうか?

いいや!あなた方をからかいたいわけではないけれども、EUの高官らはえらく活発に経済的自殺を遂げることによって「ロシア」に制裁を課そうと思っている。ロシアでは、われわれはこれを「素っ裸でハリネズミを怖がらせようとしている」と言う。

では、ロシア人がよく言う「ラブロフと話をしたくないならば、ショイグと話をするべきだ」というのはどうかな。

誰もが関心を払い、いったい今何が起こっているのかを理解することができるようにになるのだろうか?

多分ね。

しかしながら、酔っ払いのスノーニガーたちこそがあの西側の長城を崩壊させなければならないだろう。レンガを一枚ずつ剥がし、1ドル毎にドルを廃棄し、弾丸を一発ずつ打ち込んで(ミサイルを一発ずつ打ち込むと言った方がより正確かもね)。

しかし、心配しないで貰いたい。酔っ払いのスノーニガーたちはあなた方を集団虐殺することはない。そんなことを仕出かすには彼らは余りにも「未開」であり、余りにも「アジア的」なのである。

しかし、1000年間にもわたって抱いて来た、人殺しを許容するイデオロギーや暴力に根差した自己妄想から彼ら自身が最終的に目覚めるまで、彼らはどのような問題に対しても関心を払わないだろうし、彼らは真剣にもならないであろう。

ロシアの将来は南方(コーカサス、中央アジア、中東、インド)や東方(東アジア)ならびに北方(北極地域)にある。

西側に関しては彼らの将来はいったい何処にあるのか私にはまったく見当がつかない。

あなたには分かるかい? 

アンドレイ(訳注:著者の名前。つまり、これは彼の署名)

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これで全文の仮訳が終了した。

ところで、ニガーとは英語圏では黒人を指す蔑称であって、スラングである。現在、米国の新聞や雑誌ではニガーという単語をフルスペルで印刷することはない。いくつかのアルファベットをアスターリスクで置き換えて印刷する程だ(たとえば、snowni**er)。スノーニガーとは一般的にはヨーロッパ人に対して用いられる差別語のようである。さらには、スノーニガーとはアラスカに住むイヌイット人を指す用例もある。

ロシア人に対して恐怖を抱き、蔑む感覚は西側の政界やメディアでは、少なくとも、第二次世界大戦以降継続されており、最近はさらに強まっている感が強い。

米国大統領選挙でトランプ前大統領をロシアと共謀しているとして根も葉もない中傷をしたヒラリー・クリントンの選挙参謀たちの計略も「西側の長城」という虚構の反映であったと言えよう。トランプ前大統領に対する根も葉もない中傷に関する米国政府の調査についてはダーラム特別検察官による新しい調査結果が報告されている。たとえば、「Durham: Clinton Campaign Funded Efforts to ‚Establish Inference, Narrative’ Tying Trump to Russia: By Sputnik, Feb/13/2022」と題された記事はまさにこのスキャンダルに関する調査結果の集大成だ。

また、北京冬季オリンピックではロシアの15歳の女子フィギュアスケート選手、カミーラ・ワリエワが4回転ジャンプを成功させて金メダルをさらった。冬季オリンピックでの女子の競技では初の偉業であった。だが、カナダに本拠を置く世界アンチ・ドーピング機関(WADA)は彼女に関してドーピング疑惑をそれとなく持ち出して来た。彼女のサンプルを分析したのはスウェーデンのラボだそうである。ただし、分析されたサンプルは今回の冬季オリンピック期間中に採取されたものではないらしい。今、このサンプルのタイミングに関してロシア政府との間でひとつの議論が沸き起こっている模様だ。そして、この競技に関しては表彰式が延期された。こうして、嫌がおうにも世間の関心を集めている。そもそも16歳未満の未成年者についてはプライバシーの保護が求められており、当事者の名前も公表しないことが関係者の義務とされているのであるが。

われわれ一般大衆にはこれがロシアに対する「西側の長城」という構図の中で意図的に仕組まれたものなのか、あるいは、本当にドーピング違反であったのかは分かりにくい。ただ、現行の国際政治の大きな趨勢を考えると、ロシアに対する嫌がらせの一部ではないのかと勘繰る理由は十分に存在すると言わざるを得ない。マレーシア航空のMH-17便撃墜事件や英国で起こったスクリッパル親娘毒殺未遂事件、さらには、現行のウクライナのNATO加盟問題、等を引き合いに出すまでもなく、現実の世界は傾きかけた覇権を何とか維持することに全力を注ぐあまりもっとも重要な政治的課題が完全に無視されている。それは人々の生命や健康である。何という腐敗振りであろうか。

誰もがこのような現実を改善したいと思うであろう。しかし、引用記事の著者が指摘しているように、「1000年間にもわたって抱いて来た、人殺しを許容するイデオロギーや暴力に根差した自己妄想から彼ら自身が最終的に目覚めるまでは、西側世界はどのような問題に対しても関心を払わないであろうし、彼らは真剣にもならないであろう。」

参照:

1 The Great Western Wall vs Snow Niggers: By The Saker, Jan/29/2022

 



14 件のコメント:

  1. 翻訳ありがとうございます.以前原文を読みましたが,分かりにくい文章だと感じました.この翻訳で納得できた箇所がいくつかあったのです.свобода воля の対比ですが,研究社露和辞典にはсвобода(1一般に人間的自由)」とволя (1意思,2意欲3一存,4自由,無拘束)とあり,第一義で既に異なっております.一方,правдаと истинаについては,同辞書にはправда (1ありのままの(本当の)こと),истина(1真理,真実=правда,真相,事実)とあり,ほぼ同義語とされております.セイカー氏は「彼らは「svoboda(自由)」と「volia」との違いを使い分けているが、「pravda(真実)」と「istina」との違いを理解する以上には実際に理解していない」で何を言いたかったのでしょう.否定語を使って論理的文章を書く場合,「否定の投影領域」をできるだけ狭くするべきですが,彼のあの文章は実に曖昧です.ところで受動分詞単数男性形Свободенは検察官が面前の被疑者に”帰ってよろしい”や,上官が配下の兵士に”下がってよろしい”の意味で発します.一方副詞Вольноは,上官の接近を知り,”気を付け”の姿勢をとる兵士たちに”休め,楽な姿勢で”の意味で使います."snow-nig**"や"モンゴル"はいただけませんね.もっとsophiscatedな造語もできたでしょうに.1938年ころから始まった,ナチによる所謂安楽死政策の指示文書には,「不具者,精神病者,ユダヤ人,不具幼児,医療資源を食うもの,モンゴロイド民族」と出てきます.蒙古症(モンゴリズム)も嫌な言葉ですね.セイカー氏は軍事分析の記事が秀逸と思います.

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    1. シモムラさま
      コメントをお寄せいただき、有難うございます。ご指摘のように、セイカ―氏は軍事分析が飛びぬけて素晴らしいですよね。特に、ロシア語が堪能で、ロシア語世界には何の恐怖さえも持ってはいないことが、彼の専門領域をさらに広く、強力にし、その結果、読者から敬意を集めているように思えます。国際政治の分析にいいては貴重な存在であると言えそうです。

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    2. シモムラさま、ならびに、読者の皆さま
      Moon of Alabamaと称するブログサイトに「The Big White House Plans Behind Its 'Russian Invasion' Scam」と題された記事があります。昨日の日付です。このブログサイトはThe Sakerと並んで私が毎日のようにチェックするサイトです。
      今日、16日はロシアがウクライナへ武力侵攻するとの予告があったその当日です。いまのところ(当地、ルーマニアはウクライナと同じ時間帯に属し、今、正午を37分過ぎたところ)、何のニュースもありません。おそらく、このまま16日は過ぎて行くのかも・・・。
      しかし、そういった出来事と並んでもうひとつの大事な点は誰がどうしてこういった状況を作り出したのかという点です。この予告を流した米政府が抱いている目標を推測する見方がここに纏められており、「作られたウクライナ情勢」という見方がさらに信ぴょう性を帯びて来ます。
      まだお読みになっていないならば、お勧めです。

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  2. И.Симомураです.情報ありがとうございます.早速読みました.セイカー氏の文章より読みやすいものと感じております.話者の心的態度表明の助動詞canが,可能性の低い過去形で書かれていることに,注意しておりました.アリバイ工作を指摘しているのですね.昨日「デモクラシータイムス」を見ておりました.半田滋氏と山口二郎氏がウクライナ問題について分析を披露しておりましたが,半田氏は所謂バルト三国の名前を知らなく,アルバニアの名前まで出しておりました.山口氏に至っては,クリミヤの合法的ロシア復帰を「併合」と言っておりました.半田氏は軍事専門家,山口氏は国際政治学者であります.日本の所謂専門家はこの程度なのです.おそらくエストニア人,ハンガリー人,フィンランド人がアジア系であることも知らないのではないでしょうか.

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  3. シモムラさま
    仰る通りです。Moon of Alabamaの英文の質はSakerのそれよりも遥かに高いですよね。Sakerの英文はかなり話言葉に傾いていますから、分かりにくい点がしばしば出て来ます。
    いわゆる専門家あるいは学者の方々が意外と一般教養に欠けていることが露呈することはよくあります。ヨーロッパのある外相がロシアの南西部にある二つの大きな都市をウクライナ領内にあるものとして最近話をしたことが話題になっています。もちろん、自分自身を含めて、われわれ一般大衆がすべてを知り尽くしているなんて言えませんが、一国を代表する政治家に見られる無知や傲慢さには辟易とさせられますよね。米国では地図の上でウクライナの場所を指すことができる人は非常に少ないと報じられていますが、彼らの多くはアメフトやバスケットボールチームの成績は詳しく知っているのでしょう。
    ところで、そういった米国においても、世論調査によると、ウクライナでの戦争を支持しない人が増えて、過半数を越すそうです。戦争を支持するのは15%前後だとか。残りの約30%は白黒の判断ができない。この現状は国内経済が疲弊し、インフレの進行によって将来不安が高まり、米国内が二分している中、バイデン政権の支持率が低空飛行を続けている現実と何処かで繋がっていると。今年の秋に行われる米中間選挙では与党が大敗すると見られています。前回の選挙と同様に選挙不正を行ってさえも追いつけないであろうとさえ言われています。このような認識があるからこそ、米政府は一般大衆の関心を国内問題から外へ向けさせるために、「ロシア軍は近い内にウクライナへ侵攻する」とのガセネタを喧伝する必要があった。民主党左派の政治家と彼らを支持する大手メデイアの多くはガセネタを流すことには何のためらいもなく、一言で言えば、前トランプ大統領に対する「ロシアゲート」以降も連綿と続いています。
    シモムラさまは既に読まれた内容ですが、他の読者の皆さんのためにもMoon of Alabamaの記事に敢えて触れてみました。

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  4. И.Симомураです.日本の友人より興味深い情報を得ました.キエフから米国大使館がリヴォフに移りましたが,これはかなり長く続くものとなりそうです.大使館の建物と文書,装置,一切合切を焼却したとのこと.テロ支援活動の証拠隠滅行為ですね.あのあたりは旧ポーランド領です.西ウクライナ共和国,または「辺境州」を意味するウクライナを止めて,ガリーチア共和国にするのかな.

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  5. シモムラさま
    米大使館がキエフからリヴォフへ引っ越したという情報はありましたが、引っ越すに当たって文書や装置、一切合切を償却したというのは映画のような話ですね。つまり、キエフの大使館には2014年のクーデターを含めて、過去10年、20年間の情報がいっぱい詰まっていたのでしょうね。

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  6. F-35は空飛ぶダンプカーとも言われていますね。アメリカの戦闘機はドブネズミみたいなイメージがあります。それと比べてスホーイを始めとしたロシアのデザインと塗装は洗練されています。欧米とロシアの思想の違いがここにも表れている気がします。それにしてもロシア嫌いの根底には何があるのでしょうか? 名前は忘れましたが、マッキンレー?、大昔のイギリスの戦略、ロシアを西と東から、東は日本を使って、挟み撃ちにするという戦略があることは知っていますが、第二次大戦でヨーロッパを解放したのが実はロシアだったというのがいまだに気にくわないのでしょうか?

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    1. Kiyoさま
      コメントをお寄せいただき、有難うございます。
      「空飛ぶダンプカー」も現実をうまく描写していますよね。
      仰るとおり、西側のロシア嫌いは相当なものです。そこには共産主義に対する恐怖、ヨーロッパを解放したことに対する妬み、自己中心的な思考、過去の栄光への執着、国際政治の中心に居座りたいとする自惚れ、等のさまざまな要素が関連しているのだと思います。しかも、旧ソ連邦が壊滅して30年以上にもなった現在も続いているという現実は実に馬鹿らしいと思います。一般大衆の意識に関する統計データですが、第二次世界大戦でナチスドイツに占領されていたフランス国民の世論調査によると、フランスを解放したのはロシアだと認識する人たちの割合は戦後まもなくは圧倒的過半数であったが、それから20~30年が経過してからは過半数を割り、数十年が過ぎた今ではさらに低下していると報じられています。
      これはハリウッド映画の「史上最大の作戦」が1960年代に西側で公開され、それ以降も各種の戦争映画やテレビ映画が米軍の活躍を描いたことが一因であろうと指摘する識者がいます。さらには、戦争を経験してはいない現在のEUの指導者たちさえもが歴史を書き換えようとする流れに沿っていることは明らかです。活字を読むことからビジュアル系に変わって、一般大衆の洗脳は間違いなく進行したようです。ハリウッド映画は思いもよらない手法で米国の優位性を形成し、支援して来たことになります。しかも、大成功だった。
      つい最近の話ですが、「ロシア人がウクライナへ侵攻する」とされていた2月15/16日は何のエピソードもなしに過ぎてしまいましたが、ロシア恐怖症に陥っているオオカミ少年たちの合唱はいろいろと形を変えて、今後も続いて行くことでしょう。これらの騒ぎはすべてが滑稽、あるいは、軽薄に見え、時には哀れにさえ感じられますよね。

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  7. И.Симомураです.「そこには共産主義に対する恐怖、ヨーロッパを解放したことに対する妬み、自己中心的な思考、過去の栄光への執着、国際政治の中心に居座りたいとする自惚れ、等のさまざまな要素が関連しているのだと思います」に,私も同感です.話は逸れます.私はユジノサハリンスクの芸術大学の女性教員と共同研究をしております.お父さんは1921年生まれで内務省軍の兵士で,同年代の男子の死亡率はなんと90%だったといいます.お母さんは彼より三歳若く,1947年の飢餓-戦後のほうが飢餓がひどかったらしい.兵士が復員してきますから-を逃れるために,ヴォロネジから四週間かけて列車と船を乗り継ぎ,サハリンのウグレゴルスク(日本名 恵須取エストル)に上陸し,炭鉱の経理係の職を得たといいます.生まれて初めて,赤身の姿の美しい魚ゴルブーシャとその魚卵を食べ,その美味しさに驚いた.日本語でカラフトマス,通称セッパリマス.毎日三度の食事にこの魚と赤イクラを食べ続け,痩せた体はみるみるふっくらとしてきた.職場のダンスパーティで同世代一割の青年に出会い,ほどなく結婚した.とにかく男子が不足していた.1960年に自分ナターシャが生まれた.幼稚園で初めてピアノを弾けた.お父さんが迎えにきてもなかなかやめなかった.ある時彼がピアノを欲しいかと訊いてきた.欲しいと答えた.何日か経ったころ,彼は上等の上着に多くの武功章を飾り,退役時の階級と兵科を示すリボンを着け,ある役所へと向かった.応対する係官は,すぐさま恐怖の内務省軍の元下士官であること,一割の超幸運者であることを素早く計算したようだ.数十ページにおよぶピアノを購入するための書類を渡してくれた.そして数年後,小学校二年の年にエストニアというブランド名のアップライトピアノが到着した.一年遅れで芸術学校に転学し,同校の一年生とともに本格的音楽教育を受けた.成績優秀だったので,一年飛び級した結果,卒業は同年代の生徒と同じだった.ブログ主様,ソ連やロシアでよく見かける,勲章を飾り付けた姿は,この国特有の官僚主義冷笑主義を潜り抜ける手段なのでした.2700万人の死者を出してまで,欧州を解放してくれたソ連・ロシアに,この酷い扱いです.そろそろ欧米に代償を払わせましょう.

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    1. シモムラさま
      コメントをお寄せいあただき、有難うございます。
      共同研究をされているユジノサハリンスクの女性研究者の方の話はロシアの現代史を正確に反映していますよね。興味深いエピソードをご紹介していただき、感謝です。
      「レニングラードの900日の包囲」に関する本を何年か前に読んだことがあります。モスクワ近郊のある町のある年代の男性はクラスメートの全員が出征し、ほとんど全員が戦死し、生きて戻ったのはたった一人であったとのこと、今、思い起こしています。軍人や一般市民を合わせて2700万人が死亡したという事実は、歴史を書き換えることなく、正当に語り継いで行かなければなりませんね。
      当然のことを当然のこととして実行するべきだと強調しなければならない現代社会は何か重要なものを忘れているのだと感じます。異常です。

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  8. まさにその通りだと思います。肌で感じているわけではないので、実感が伴わないということもあるのだと思います。欧米の傲慢さにはあきれるばかりです。傲慢にはつける薬がありません。私は報道と言われるものは、映画などのエンターテインメントも含めて支配層のコマーシャルだと思っているので、ろくな商品しか売らないなと思ってみています。しかし、このコマーシャルの威力は絶大です。それらが作るパラダイムほど強力なものはありません。人はマスメディアで報じられないと信用しません。メディアが「真実」を作る時代だったのだと思います。そこらへんのことを最近アップしたアインシュタインの記事で書きました。

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    1. Kiyoさま
      コメントをお寄せいただき、有難うございます。
      「人はマスメディアで報じられないと信用しません」という認識は、残念ながら、まさにその通りだと思います。
      今回の新型コロナの大流行ではワクチンパスポートによって各国政府はワクチン接種を強要しましたが、ワクチンそのものが変異種であるオミクロン株には奏功しないことが判明し、さらには、このオミクロン株は感染力は強いが、毒性はかなり低くなったことが伝えられ、当局のワクチン接種を強要するシナリオは内部から崩れて行きました。こういった状況を観て、当局に対する一般大衆の信頼の念は大きく揺らいだのではないでしょうか。少なくとも、そう考えざるを得ない現実がわれわれの面前で、今、展開しました。このことをしっかりと認識しておきたいと思います。
      そして、ウクライナ危機。ここでも、少なくとも、米国の覇権国としての崩壊を如何に食い止めるかという米国のお家の事情を考えてウクライナを巡る出来事を分析しますと、ウクライナ危機のすべての事象が読めてくるように思います。

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