2020年7月8日水曜日

米兵を殺害するタリバンにはいったい誰が資金提供をしてきたのか


アフガニスタンではタリバンは有力な政治勢力である。アフガニスタンの将来を論じる際にはもはやタリバンの存在を無視することはできない。今年の229日、米国とタリバンは18年間も続いた戦争に終わりを告げる和平に合意した。米軍とNATOの同盟軍は14カ月以内に撤退を終了させることになった。それと共に、米軍とNATO軍の撤退を安全に進めるために条件を設定し、お互いに了承した。
アフガニスタンにおける米軍の作戦はタリバンによる攻撃の目標となることが多かった。米諜報機関の専門家(もちろん、匿名)はこれはロシアがタリバンに対して米兵の殺害に報奨金を秘密裏に支払っているからだとの結論を導いた。
627日付けのガーディアン紙によると(原題:Outrage mounts over report Russia offered bounties to Afghanistan militants for killing US soldiers: By Guardian staff, Jun/27/2020)、ニューヨークタイムズがこの考えを最初に報道したとのことだ。626日のことであった。それを受けて、ワシントンポストが後追い記事を流した。
ところで、「依然として続くタリバンとアルカイダの関係」と題された岡崎研究所の報告(去年の1030日付け)によれば、約半年前に下記のような状況が報告されていた。
 約300人のアルカイダの戦闘員がタリバンの部隊に属し、米国を標的にしている。アルカイダはタリバンに爆発物の作り方、特殊工作の計画、洗練された攻撃などを教え、タリバンを訓練している。
 アルカイダがタリバンの部隊にいることがタリバンの穏健派と強硬派の対立の重要な要素になっている。強硬派は戦争を終わらせる政治的解決に関心が無いようである。
 米国とタリバンの和平交渉中、タリバンによるテロ攻撃が何度となく行われている。タリバンがその総意として米国に揺さぶりをかけるためにテロ攻撃をしていたというよりも、強硬派の独走であった可能性がある。
これらの3項目を読むと、軍の組織ではこういった状況、つまり、強硬派の独走が起こり得ることはわれわれ日本人は満州事変の経緯からよく承知している。そして、歴史を紐解くと、他国でも大なり小なり同様のことが繰り返して起こっている。
ここに、「米兵を殺害するタリバンにはいったい誰が資金提供をしてきたのか」と題された記事がある(原題:Who REALLY funded the Taliban to kill Americans?: By Sreeram Chaulia, Jul/03/2020)。組織犯罪の捜査では資金の供給ルートを暴くことが鉄則であると言われているが、まさにその鉄則を髣髴とさせるような表題である。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
Photo-12017年の保存写真。アフガニタンのローガル州の空港で待ちうける米兵たち。© AP Photo/Rahmat Gul
米兵を殺害するためにロシアはタリバンに報奨金を支払ったとしてロシアを非難する一方で、米国の政治家はアフガニスタンでそもそもテロ組織を武装し、資金を提供して来たのはいったい誰であったのかという事実については、好都合にも、すっかり忘れてしまっている。
米兵を殺害するためにロシアはタリバンに報奨金を支払ったとの一部の米諜報組織の主張はワシントンでは党派間に怒りに満ちた論争を引き起こした。これはドナルド・トランプ大統領はロシアに対してあまりにも柔らか過ぎるとする民主党側の長広舌の非難演説をもたらし、ロシアには新たな経済制裁を要求させる始末となった。
米大統領選を真近に控えて、トランプは国家の安全保障については米軍の最高司令官として極めて無能な大統領であるとか、ロシアと結託して米軍に血を流させるとは破廉恥そのものであると描写することは政治攻撃のためには非常に手っ取り早い道具となっている。
米国の自由主義者陣営にとってはロシアやロシアが関与する邪悪な行為ほどにゾクッとするような感情や情熱を掻き立てる物は他にはないのだ。ロシアとタリバンの両者はそのような協力関係を否定し、トランプ政権の国家安全保障問題担当補佐官のロバート・オブライエンはタリバンに対するロシアからの報奨金については何の裏付けもないと明確に述べている。そして、ロシアがタリバンに対してインセンティブを与えたとするCIA情報は国家安全保障局(NSA)に疑惑の念をもたらしたが、ちょうど今はワシントンでは政治的ナイフを持ち出す季節でもある。 
この深刻な誤解は米国の国内政治から来たものであって、ロシアの対外政策とは何の関連性もない。トランプは無知だ、ナイーブだと言ってトランプを非難する米国の政治家たちは、多面的で複雑な社会を持ったアフガニスタンで2001年の米国の侵攻から始まった20年にも及ぶ戦争ではいったい誰がタリバンや他のいくつものテロ集団に武装を施し、資金提供を行ってきたのかに関しては諸々の事実を都合よく無視してしまっている。 
パキスタンを忘れたのか? 
何年間にもわたって米国の戦略専門家や諜報機関ならび軍司令官たちの間ではタリバンの聖域と資金源はパキスタン軍部と絡んでおり、パキスタンとアフガニスタンの国境をまたいで活動する同盟関係を持った聖戦戦士の集団によって維持されているとする見方が一様に行き渡っていた。
ジョージWブッシュ政権で国務副長官を務めたリチャード・アーミテージは「2002年から2004年にかけてパキスタン政府はタリバンに対して直接的な支援を与えたとする重要な情報」に関して喋っている。あの当時はタリバンが組織を再編成し、長期にわたる反米蜂起行動を再開した時期であった。
2011年、バラク・オバマ大統領の下でアメリカ統合参謀本部議長を務めたマイク・マレン提督は手強いハッカーニのテロリスト・ネットワークを「パキスタンの国内諜報機関の本物の支部である」と称した。同ネットワークは米軍に対していくつものテロ攻撃を行い、タリバンからは切っても切れない関係を維持していた。
2018年には、トランプ大統領の下で米陸軍参謀長であったマーク・ミリー将軍は「アフガニスタンにおける反政府活動を一掃することは実に困難である」と愚痴をこぼした。なぜかと言うと、「ハッカーニや他の武装集団はパキスタン国内の国境地域で安全地帯を享受していたからだ。」 
タリバンを支える外国からの支援ではパキスタンこそがもっとも重要であるということに関しては米国家安全保障機関によって山のように多くの証拠が収集されていたにもかかわらず、ワシントン政府はこの結びつきを破壊することには成功しなかった。現場で何が起こっているのかについては十分に知っていながらも、米国は、2002年から憤慨し切ったトランプ大統領がこの支援を断ち切り、アフガニスタンで米兵を殺害する「混沌の代理人」に安全な避難場所を提供するパキスタン政府を非難した2018年までの間に、パキスタンに対して330億ドルもの支援を提供した。
米国がパキスタンに軍事援助や民間に対する支援を与え、それらの資金はタリバンやハッカーニ・ネットワークへと流されたのであるが、封筒の裏面で簡単に計算してみると極めて率直な結論を導くことができる。つまり、複数の米国政府がアフガニスタンにおける米兵に対する凶暴な攻撃に対して間接的に資金援助をしていたのである。民主党員はロシアやタリバンに関してしゃがれ声で叫び声をあげているが、なぜか責任の本質をここまで詳しく分析しようとはしない。
米国の戦争経済
しかし、真実はパキスタンが単に隣国のアフガニスタンへ介入しているとか、米国はパキスタンを慎重に扱っているといった見方よりも遥かに複雑で曖昧でもある。タリバンを抑え、暴動に対処する策の一部として、アフガニスタンにおける米国の占領部隊はあらゆる種類の地方軍閥や民間警備勢力、民兵組織および個々の民族グループの起業家らを贔屓にしてきたが、彼らはすこぶる乱暴であって、口汚く、無法者揃いであった。
ワシントンポストが引用した法廷会計士によると、1060憶ドルにも相当する米国務省が与えた諸々の契約の「約40%の金は反政府派や犯罪組織または腐敗しきったアフガニスタン政府の要人のポケットへと消えて行った」。そして、「契約金額の18%がタリバンやハッカーニ、その他の反政府派組織へ流れた」と調査官はさらに詳細を述べている。 
米国には駆け出しのアフガニスタン政府を支援し、タリバンやアルカイダといった聖戦士集団からの脅威を回避しようと試みる外交官や軍人がいる。その一方では、アフガニスタンには戦争経済や頭を悩ませる汚職が横行している。そこでは、米国の国家構造のさまざまな要素が地方の軍閥を育て、中央政府を弱体化させ、国家全体を統治することはできないままだ。
アフガニスタン復興担当特別監察官(SIGAR)は2016年に「米政府は悪質な政治ブローカーとの協力関係を抑制し、これらの勢力が組織的な崩壊を招きかねないリスクに鑑みて、これらの勢力から得られる短期的利益は如何なるものもバランスよく調和させるべきである」と述べて、やんわりと批判した。
振り返ってみると、2,400人近くの米兵と救数の同盟国からの1,100人以上もの兵士を殺害することになった、この長期化したアフガニスタン戦争は大失敗である。その中核的な理由は米国の誤った政策と米国が採用した危険極まりない同盟関係である。この悲惨な米国の戦争の終わりに当たってロシアもしくはイラン(西側の諜報機関によってタリバンを秘密裏に支援しているとしてしばしば言及されている)を非難することはまったく筋が通らない。
トランプはすでにタリバンとの和平合意を実現し、米国のアフガニスタン戦争後の展望が用意されつつある折からも、地域の利害関係のある各国は何れも前もって計画を練り、タリバンならびにアフガニスタンにおける他の勢力との接触を図り、自国の安全保障のための緩衝地帯と救命ネットとを形成しようとしている。
しかしながら、米国人将兵を攻撃するためにロシアがタリバンへ金を払ったとして未確認の主張をかき集めることは極めて偽善的であり、これは歴代の米国政府の責任から世間の関心を逸らせるためのものである。これらの政府には民主党選出の大統領であったバラク・オバマも含まれる。彼らはアフガニスタン戦争で大きなヘマを仕出かして、何千人もの米兵の命を危険にさらした。もしもロシアがルール違反をしたとして大声を張り上げている批評家や党の幹部が自分自身の考えを熟考するならば、米国はこの長期の戦争において、結局、それほど自由主義的でもなく、高貴な振る舞いもしなかったことを彼らは自から認めることであろう。
著者のプロフィール:スリーラム・チョウリアはインドのソーニーパトに所在するジンダル・グローバル大学の教授で、国際関係学部長を務める。近著: Trumped: Emerging Powers in a Post-American World
注:この記事に述べられている主張や見解、意見は全面的に著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。
これで、全文の仮訳が終了した。
米ロ間の国際関係についてはその詳細を知れば知るほど米政治がもたらす不条理や偽善性に直面させられる。われわれ素人は辟易とさせられるのが落ちだ。特に米国においてはメディアが絡んで来て、多くの場合状況をさらに悪化させる。今回の「米兵を殺害するためにロシアはタリバンに報奨金を支払った」とする根拠のない主張は、またもや、ニューヨークタイムズが言い出したものであった。そして、ワシントンポストがそれに続いた。
米国のメディアはかっては言論の自由を標榜し、理想を追求するジャーナリストの世界観によって支配されていたものだ。ニクソン大統領を辞任に追い込んだウオーターゲート事件はその典型的な出来事であったと思う。われわれ素人は映画「大統領の陰謀」を思い出してしまう。盗聴事件に関してワシントンポストの二人の記者が次々と謎を解いていく姿が見事に描かれていた。ところが、今はフェークニュースに次ぐフェークニュースだ。大手メディアのジャーナリズム精神の劣化は見るに忍びないほどである。
メディア界もさることながら、基本的には、質の悪い素人政治家が多くなったということであろうか?日本でもまったく同様の課題をわれわれ自身が抱えているわけであるが、この政治家の質の問題はブーメランの如くわれわれ選挙民に跳ね返ってくることを忘れないでおこう。日本では政治の失敗は国民ひとりひとりにとっては12千万分の1に薄められて、個人としては痛痒も感じられないのが現実だ。だからこそ、そのような現実は国民という集合全体にとっては潜在的に非常に大きな危険性を孕んでいるのである。
この引用記事はそんなことを思わせてくれた。



2020年7月3日金曜日

MH17便撃墜事件に関する裁判 - 西側司法システムのごまかしを露呈


マレーシア航空のMH17便がウクライナ上空で撃墜され、298人の乗客・乗員が殺害されてからこの717日で満6年となる。
この6年間にこの悲惨な事故の原因が事実に基づいて解明されたのかと言うと、この事故で亡くなった298人ばかりではなく全世界にとって極めて不幸なことには、事故原因は正当に解明されはしなかった。事故原因の正当な解明に代わって、オランダ政府の安全委員会が主導する共同調査団(JIT)は結論を下したものの、その結論は米国が後押しする米ロ間の地政学的綱引きによって全面的にハイジャックされてしまった。つまり、共同調査団が下した結論はある特定の政治的思惑を満たすだけのものであって、入手した事実に基づいて公正に推論されたものではないのである。
読者の皆さんもこのことはすでに十分にお気付きであると思う。
ここに「MH17便撃墜事件に関する裁判 - 西側司法システムのごまかしを露呈」と題された記事がある(原題:The MH17 Trial Makes a Mockery of the Western Legal System: By James Oneill, NEO, June/03/2020)。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。



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2014717日にオランダを発って、マレーシアの首都クアラルンプールへ向かうマレーシア航空のMH17便はウクライナ上空で撃墜された。196人を占めるオランダ人乗客と38人のオーストラリア人の乗客の他には、マレーシア航空の乗務員を除いては幾つかの国々からの少数の乗客が含まれていた。
この旅客機はウクライナの上空で撃墜され、乗務員と乗客の全員が殺害された。この悲劇が起こった現場はウクライナのドンバス地域であって、住民の大多数はロシア語を日常言語としている。選挙によって民主的に選出されていた当時のウクライナ大統領に対して、米国の後押しを受け、米国から活動資金を供給されたクーデターが暫く前に、つまり、あの年の2月に起こっていた。こうして、米国が後押しをするキエフ政府とロシア語を喋り、ロシアからの後押しを受けるドンバス地方との間に内戦が勃発した。この内戦はMH17便撃墜事件が起こった当時も延々と続いていた(そして、今も続いている)。
キエフで起こった政変やそれに続いて勃発した東部での内戦を受けて、あの時点で極めて関連性の高かった事項としてはクリミア地域の住民がウクライナとは決別すると宣言したことだ。クリミアは住民投票を実施し、彼らの圧倒的多数がロシアへの復帰に賛成票を投じた。この地域がウクライナの一部になった歴史的経緯を含めて、同地域の歴史が非常に関連深い事実であることからも、「復帰」という言葉が慎重に用いられている。ところが、西側のメディアは関連性のある歴史に関しては誤った解釈をしている。ここで、大雑把な歴史的概要を再確認しておく必要があろう。
クリミアはオスマン帝国から割譲され、18世紀にロシア領となった。1950年、ソ連邦の指導者であるニキータ・フルシチョフ(彼はウクライナ出身であった)がソ連邦議会やウクライナ住民への相談もせずにクリミアをウクライナへ贈呈した。当時は広大なソ連邦内の一部であり、同盟関係にあったことからも、このことによって実質的な悪影響が現れることはなかった。
ソ連邦は1991年に崩壊した。この出来事がもたらした歴史的負担の一部はウクライナ東部では大多数がロシア語を喋っていることであった。もちろん、かってはロシア領の一部であったクリミアも同じことだ。ウクライナ語を喋るウクライナ西部と、クリミアを含めて、ロシア語を喋るウクライナ東部との間の関係は好意的に見てもそう単純ではなかった。2014年のクーデターはそう単純ではない関係にある種の終わりを告げた。
この関連性のある歴史的事実は西側のメディアやウクライナの現状に関する記述や議論からはほぼ全面的に欠落している。MH17便撃墜事件はその最たるものである。その代わりに、西側のメディアはこれらの歴史的事実を無視し、あるいは、歪曲して、ロシアによるクリミアの「併合」という言葉を用いることが多い。
MH17便の撃墜はこの文脈の真っただ中で起こったのである。またしても、あの悲劇の後遺症の中でもっとも重要な点は、不幸にも、西側のメディアによって徹底的に無視されるか、歪曲された。しかしながら、マレーシア政府の努力の結果、彼らが事故直後に調査チームを事故現場へ派遣し、ドンバスの反政府派勢力の支援を受けて、MH17便のブラックボックスを見つけ出し、分析を行うためにマレーシアへ持ち帰った事実を、今のわれわれは知っている。
また、マレーシアはMH17便の撃墜に関して調査を行う4カ国の調査団からは除外された。たとえ中立的な立場でコメントをするにしても、この調査団には当該旅客機を撃墜した張本人の可能性を持つウクライナさえもが含まれていた。これは大きな驚きであった。続いて起こった諸々の出来事の観点から言えば、ウクライナを調査団に含めたという事実はもはや驚くには値しなくなって行った。と言うのは、この悲劇的な事故の理由を調査する上で要求される正直で、かつ、透明性のある姿勢からは程遠く、ごまかしを実行するすべての理由は一般論的にはウクライナの分離派勢力に責任を負わせることであり、さらに具体的に言えば、ロシアの責任を追求することにあるという背景が速やかに露呈したからである。
今や、あの悲劇からすでに6年になろうとしている。「事故調査」の目的のすべてはあからさまにロシアを攻撃することにあって、それ以外の何物でもないという仮説に対する反論は西側の大手メディアからは何も現れなかった。この論点に対して合理的な疑いを掛けることができないことは極めて単純ないくつかの要素を取り上げてみると実に明白である。 
当時の米国務長官であったジョン・ケリーは直ちに次のように公言した。「ちょうどあの時米国の偵察衛星がウクライナ上空にあったので、米国は何が起こったのかを熟知している。」 そういった説明を行う価値のある事柄を精査しなければならない現実の事故調査において同衛星の証拠を活用しようと思えば十分に活用できた筈である。そうすれば、あらゆる方面から沸き起こるさまざまな代替理論は何でも沈静化することが可能となる。しかしながら、今までの6年間、米国は衛生データの活用に関しては拒否し続けてきた。彼らが拒否する理由は何ら提示されてはいない。 
あの当時極めて重要と見られた二番目の要素として、MH17便が通過した時刻と位置に二機のウクライナ空軍機を見たと言う複数の民間人の証言がある。この事実の証言に関しては、ウクライナ政府があの日はウクライナ空軍機は一機も飛んではいなかったとして民間人の証言を否定したことから、この事実の重要性はことさらに浮き彫りにされた。ここでも、もしもそんなことはなかったと何の罪の意識もなく、単純に説明できるものであったならば、複数の民間人が証言した事実についてどうして嘘をつかなければならなかったのだろうか? 
基本的に重要な関連性を持つ三番目の要素は機体が受けた損傷がどのような特徴を持っていたのかという点だ。地対空ミサイルが引き起こす損傷とジェット戦闘機の機銃による連続射撃が引き起こす損傷との間には特別の差異は見当たらない。この点においても、証拠は圧倒的である。MH17便はジェット戦闘機に据えられている機銃によって破壊されたのである。一言で言えば、MH17便は戦闘機からの射撃によって撃墜されたのだ。あの時点に近傍の空域に居たのはウクライナの空軍機である。
実際の出来事が次々と暴露されたことから、これらの出来事に注目していた人たちにとっては上記に述べた内容は必ずしも新事実という訳ではないであろう。民間旅客機を撃墜し、その後6年間も嘘をつき続ける動機を抱いてきた複数の組織あるいは団体はロシア政府の信用を失墜させ、台無しにすることに異常なほどに強い関心を持っていたいくつかの政府や組織である。
オランダおよびオーストラリアを含む調査団の参加国による「NH17便撃墜事件の調査という茶番劇」は終わったわけではない。この原稿を書いている時点でも、「司法システムの茶番劇」とでも称すべき事態がアムステルダムの裁判所で進行している。三人のロシア人と一人のウクライナ人がMH17便を撃墜し、その結果、乗員と乗客を殺害した廉で訴えられているのだ。
オーストラリアの国籍を有し、モスクワに在住する調査報道ジャーナリストのジョン・ヘルマーはこの悲劇を追跡し、いわゆる「事故調査」に見受けられた複数の過ちを暴露した数少ないジャーナリストの一人である。
アムステルダムの裁判所で進行しているごまかしの裁判が何の罪も犯してはいなかったMH17便の犠牲者のために正義と呼べるような成果を挙げてくれるという保証は何もない。それに代わって、彼らは目下繰り広げられている広大な地政学的ゲームでの単なる歩の役目に甘んじている。
司法の初歩的な原則である公平な裁判および証拠に基づいた判決はすべてが遥かに広大な地政学的ゲームの前に犠牲となった。このごまかしのせいでわれわれは誰もが人間的により貧しくなる。
著者のプロフィール:ジェームズ・オニールはオーストラリアを本拠にした弁護士であって、「New Eastern Outlook」のオンライン誌にて健筆を振るっている。


これで全文の仮訳が終了した。
この引用記事を読むと、MH17便撃墜事件は何も収束してはいないことが明白だ。
この悲惨な事故に関して国際社会が今求められているもっとも妥当な策は第三国の航空機事故の専門家によって構成された共同調査団による再調査を実施することであろう。しかしながら、現実には真相の究明は未解決のままに放置されることになりそうだ。まさに、911同時多発テロ事件の真相究明が放置されているように・・・  
本日の投稿を補完する意味で、私はMH17便関連で掲載した過去の投稿13点を下記に列記しておこうと思う。このリストによって読者の皆さんが改めて情報検索する際に時間の浪費を少しでも低減できれば幸いだ。特に、昨年88日の投稿はオランダが主導したMH17便撃墜事件に関する裁判が如何に杜撰なものであるか、如何に事実を歪曲したものであるかを具体的に示しているので、本件にご興味がある方々にはお勧めである。


(1)201988日:「MH17便撃墜事件の証拠の隠滅についてマレーシアが暴露 - オランダは偽の録音テープを隠蔽し、ウクライナはレーダー記録を隠蔽」 https://yocchan31.blogspot.com/2019/08/mh17.html


(2)2019624:「MH17便の撃墜はロシア人の仕業ではない」とマレーシアのマハティール首相は言う。米国およびその同盟国はたくさんの事柄について回答しなければならない」 https://yocchan31.blogspot.com/2019/06/mh17.html

(3)2018920日:「MH17便を撃墜したミサイルの製造番号によると、同ミサイルは1986年に製造され、ウクライナ軍の所有であったことが判明」 https://yocchan31.blogspot.com/2018/09/mh171986.html

(4)20151026日:「MH17便の撃墜、答えられてはいない疑問点 - ロバート・パリー」 https://yocchan31.blogspot.com/2015/10/mh17.html

(5)201563日:「MH17便撃墜事件を再訪 - ロシアの軍需産業技術者からの詳細報告書」 https://yocchan31.blogspot.com/2015/06/mh17.html

(6)2014927日:「MH17便に関するオランダの報告書は米国からの情報に欠けている - これはいったい何を意味するのか?」 https://yocchan31.blogspot.com/2014/09/mh17.html

(7)2014811日:「MH17便はウクライナ軍の戦闘機によって撃墜された」 https://yocchan31.blogspot.com/2014/08/mh17.html

(8)201489日:「MH17便の撃墜:米国・キエフは失敗した自作自演工作を隠ぺい ― 必読(その4 – 最終章)」 https://yocchan31.blogspot.com/2014/08/mh17-4.html

(9)201488日:「Mh17便の撃墜:米国・キエフは自作自演工作の隠ぺいに
失敗 ― 必読(その3」 https://yocchan31.blogspot.com/2014/08/mh17-3.html

(10)201486:「MH17便の撃墜:米国・キエフは失敗した自作自演工作を隠ぺい ― 必読(その2」 https://yocchan31.blogspot.com/2014/08/mh17-2.html

(11)201484:「MH17便の撃墜:米国・キエフは失敗した自作自演工作を隠ぺい ― 必読(その1」 https://yocchan31.blogspot.com/2014/08/mh17-1.html

(12)2014728:「キエフ国際空港の管制塔で勤務していたスペイン人航空管制官の言」 https://yocchan31.blogspot.com/2014/07/blog-post_28.html

(13)2014726:「新たな情報 - マレーシア航空MH17便は空対空ミサイルで撃墜された?」 https://yocchan31.blogspot.com/2014/07/mh17.html




2020年6月28日日曜日

戦争屋のジョン・ボルトンの新著はトランプ大統領が米国を大きな戦争に導こうとしなかったことに対する不満が呼び水

国家安全保障問題を担当した米大統領補佐官のジョン・ボルトンはトランプ大統領とは反りが合わなかった。2019910日に大統領補佐官を辞任するまでの1年半の間(ボルトンは自分から辞めたのだと言い、トランプはボルトンに辞任を勧めたのだと言うが)、ボルトンは北朝鮮やイラン、ベネズエラに対する外交あるいは軍事的戦略においては大統領と意見が合わなかったようだ。単純に言えば、ボルトンは北朝鮮やイラン、ベネズエラとの戦争を推進し、トランプ大統領は戦争を回避するというお互いにまったく相反する動きをとったと言われている。

トランプ政権の外交について中心的な役割を担ってきたボルトン前補佐官は米政権の要職を辞してからは回顧録を書いていると前々から報じられていた。トランプ大統領や現政権にとって機密事項が記載されており、これらの内容は米国の安全保障にとって有害であるとして米司法省は連邦裁判所に回顧録の発刊を差し止めるよう求めていた。しかしながら、620日、ワシントン連邦地裁のロイス・ランバース判事はボルトン前大統領補佐官の回顧録の差し止めに関する司法省からの訴えを棄却した。こうして、暴露本は発刊されることになった。

私が興味深く感じたのは、米政府のお膝元にあるワシントン連邦地裁が、何処かの国のように国家指導者の意向を忖度することはまったくなく、米政府の意向に反して暴露本の発刊の差し止めを棄却したことだ。

単にこれは連邦地裁の判事が野党の民主党贔屓であったということであろうか、それとも、まったく別の理由からであろうか。少なくとも、すでに報道されている内容によれば、ロイス・ランバース判事は、米政府が「出版差し止めによって、回復不可能な損害を防げるとは立証できなかった」と述べたという。一方でボルトンについては、米国の国家安全保障を「存亡にかけ」、すでに「国家を危険にさらしているとした。結局、同判事の裁定は告訴側に有利でもなく、被告側にも有利ではない。どちらかと言うと、非常に曖昧な印象が残る。

ここに、「戦争屋のジョン・ボルトンの新著はトランプ大統領が米国を大きな戦争に導こうとしなかったことに対する不満が呼び水」と題された記事がある(原題:Bloodthirsty John Bolton’s book on Trump is fueled by frustration that the president hasn’t led the US into a major war: By George Gallaway, RT, Jun/22/2020, https://on.rt.com/ak3q)。

著者のプロフィール:ジョージ・ギャラウェーは30年近く英国議会の議員を務めた(労働党、リスペクト党、インデペンデント党に所属)。彼はイラク戦争に反対したことで良く知られている。テレビやラジオでの司会者役を担い(RTを含む)、映画製作、著作に従事してきた。また雄弁家であることでも知られている。ツイッター:@georgegalloway

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。



Photo-1© AFP / Logan Cyrus; © REUTERS/Leah Millis

「それが起こった部屋」(原題:The Room Where It Happened)と題されたジョン・ボルトンの暴露本はドナルド・トランプのことは何ほども記述してはおらず、この本は米国がベネズエラやイラン、北朝鮮に戦争を仕掛けなかったことに対する怒りによって動機付けされたもののようだ。

セイウチのような髭をたくわえたジョン・ボルトンならびにドナルドトランプと大筋では同じ意見をもっていた政治生活を回想する彼の暴露本は熱気がこもった米大統領選前の雰囲気の中ですでにベストセラーだ、とタブロイド紙のナショナル・エンクワイアラーがハードカバー版で持ち上げている。

彼が直ちに米国の自由主義的なお喋り屋のひとりとして語られることは驚くほどのことではない。ジョージ・W・ブッシュや故ジョン・マケイン、コリン・パウェルのように、ボルトンは血に染まった最新の戦争犯罪者だ。ドナルド・トランプに対する抵抗勢力である進歩主義者らからは「プシーハット」が贈呈されよう。(訳注:「プシーハット」という新語は女性を蔑視するような発言を繰り返したトランプ大統領を批判する女性のデモ参加者らがピンク色のニット帽を被ったことに由来し、反トランプのシンボルと見做されるまでになった。帽子には猫の耳を思わせるような形がついていて、「プシーキャット」をもじっている。)

米国が累々たる犠牲者の屍で埋まることを回避することはトランプ大統領を愚かにも選出した米国においては唯一の人物を告発するという新しい役割りを引き受けることに比べたらその重要性は小さなものだ。今や、レイチェル・マドーは何時でもボルトンが自由主義者的な理由から示した自己犠牲を見て涙にむせぶことであろう。彼らにとっては何人かの命だけが重要であり、いくらかの時間だけが重要なのである。

私はリークされた部分をいくつか読んだだけであって、彼の新著を購入して著者の金庫を太らせる積りなんて毛頭ない。メディアは大騒ぎをしているが、あれは何の価値もない。


トランプが「米国産の農産物を買ってくれ」と中国の習近平主席に頼み込んだことは明らかである。ところで、これは世間では間違いなく彼を傷つけるであろう。世界中の指導者は誰もが自分の対話相手に「英国産」、あるいは、「米国産」のこれこれを買ってくれと頼み込むのが落ちだ。しかし、(不思議なことには)このような振る舞いは「選挙干渉」とは同一視されない。

トランプはどうもテレサ・メイ英首相に「英国は核大国か」と尋ねたようだ。彼女は、恐らく、その通りだと答えたに違いない。しかし、彼は核エネルギーのことを言おうとしていたのかも知れない(訳注:nuclear-powerという用語は、文脈次第で、核兵器とも核エネルギーとも受け取れる)。発電の話になると米国の炭鉱は水没に見舞われており、核エネルギーに反対するロビー活動は後退し、風力発電が今日では大量に活用されていることからも彼の質問は妥当なものであったとさえ思われる。

あるいは、彼は厳しい現実に関して非常に正確に喋っていたのかも知れない。英国は、われわれの核兵器に比べると、真に独立した形で核兵器の能力を米国から与えられたことは一度もない。新たに整備された英国のトライデント原潜攻撃部隊は星条旗のバッジをつけているかのようでさえある。


トランプは北朝鮮の指導者である金正恩との歴史的会談が一般大衆にはどう映るのか、そして、それがどのように大統領再選の助けになるのかに関してより多くの関心を抱いていたようだ。神が禁じたまわんことを!政治家というものは再選に全力を注ぐものではあるが、いったい誰がこのことを考えただろうか?

彼は北京政府の言い分には同意しているようだ。つまり、「米国では選挙が多すぎる」と。感覚的に言えば、これとは違った風に考える者がいるであろうか?米憲法は危機に見舞われ、何世紀も時代遅れで、永遠に選挙モードに浸りっきりだ。その選挙では有権者が大統領を指名するのではなく、選挙人団が指名する。この選挙ではワイオミングは州のひとつではあるが、ワシントンDCはそうではない。上院ではバーモント州はカリフォルニア州と同等の代表権を持っている。いったい誰が米国憲法を現代的な統治における極致であると考えるであろうか?

もしもトランプが三期目を夢見ているとしたらどうだろうか?それはないだろうし、二期目さえもが怪しい話だ。


「フィンランドはロシアの一部だ」と考えることはフィンランド人の多くがまさにそうだと考えいぇいるなんて私にはとてもじゃないが想像もできない。現時点ではロシアの隣国であることに甘んじなければならない。

疑いようもなく、都会育ちの田舎者であって、あざを隠すことさえも知らないドナルド・トランプに比べるとジョン・ボルトンは世界についてより多くのことを知っている。結局のところ、ボルトンは何十年にもわたって多くの国々を侵略する計画を練ってきたのだ。とどのつまりは、ベネズエラを侵略することは格好がいいと考えたのはトランプではない。ジョン・ボルトンからは「執拗に頼み込まれた」にもかかわらず、トランプは実際に侵略をすることが格好がいいなんて考えもしなかったのだ。

トランプはジョン・ボルトンを失望させた。なぜならば、トランプはベネズエラやイランに侵攻しようとはせず、北朝鮮にも侵攻しようとはしなかったからだ。新たに何処かの国を侵略しようとはしなかった。 こうして、ボルトンは不満たらたらだった。今から11月までの間に何も起こらないとすれば、トランプは任期中に新たな戦争を開始することは一度もなく、国外に駐留する米兵を撤退させ、ロケットを発射した数は前任者の誰よりも少ないことになる。その一方で、新たにプシーハットを被せられた(つまり、反トランプ色が鮮明になった)ボルトンは依然としてアルブカーキーで野犬捕獲者として選挙に勝つことなんてできそうにはないのである。

注:この記事に記載されている見解や意見は全面的に著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。


これで、全文の仮訳が終了した。

この記事には著者の英国人らしい皮肉を込めた表現が次々と現れてくる。

著者はボルトンは「ドナルドトランプと大筋では同じ意見をもっていた」と記述しているが、その主題が何であるかについては詳述がない。思うに、これは中国に対する貿易戦争のことであろうか。軍産複合体の意を汲んで戦争を始めようとしたボルトンにとっては中国との友好関係は破棄し、同国を仮想敵国として維持し、中国の近海では米海軍に航行の自由と称して示威行為をやらせて、新彊ウィグル自治区における反政府デモについては、香港でのデモと同様に、デモ参加者に友好的な論説を書いて、軍産複合体に巨大な予算を振り向ける理由をあからさまに見せつけることが非常に重要なのだ。

著者のジョージ・ギャラウェーはトランプが新たな戦争を行おうとはしなかったことを重要視している。そのことを考えると、トランプがいくら中国との経済戦争や情報戦争を進めようとも、結局、トランプは熱い戦争に踏み込もうとはしない。中国とはどこかの時点で和平に転じるしかない。一方、ボルトンを始めとする戦争屋はどのように考えているのだろうか。ある将軍は極めてタカ派的は発言をするが、他の将軍は米将兵にもたらされる損害を考えると通常兵器による対中戦争なんてあり得ないと言う。朝鮮戦争では米国は中国に勝つことができなかったという悪夢が今でも蘇って来るのかも知れない。それに加えて、ベトナム戦争も大きなトラウマとして残っている。そして、アフガニスタンでもイラクでも、さらには、シリアでも戦争に勝った言えるような状況ではない。

世界の覇権国である米国の政治家や軍のエリートがどんな世界観を抱いているのかについては常に観察し、分析し続けなければならない。

ところで、トランプ大統領の弾劾の動きが進行していた頃のことであるが、議会での証言を求められた際、ボルトンはその役目を受け入れなかった。トランプ大統領の行為が彼にとっては真の意味で許せるものではなかったとするならば、議会と言う大きな後ろ盾を活用することによって彼は自分の名を歴史に刻む大役を担うことができたのではないか。しかしながら、これは私的な見方ではあるが、彼は暴露本の発行を目の前にして、彼にとっては本の売れ行きを損なうかも知れない議会証言は二の次であったようだ。彼にとっては1冊でも多くの本を売ることが大事だった。そんな風に思える。

しかしながら、逆説的になるけれども、この暴露本はひとつのことに貢献しているとも言えよう。つまり、先代の大統領らとは違って、トランプは米国を新たな戦争に引っ張り込もうとはしなかったということを浮き彫りにしている。米ロ新冷戦、米中新冷戦が大っぴらに囁かれている今、そして、これらの核大国には地球上の生命を何回でも繰り返して殺戮することが可能な膨大な量の核兵器が蓄えられている今、人類の存続を考えると核戦争に転じるかも知れない通常兵器による戦争を回避することは基本的に極めて重要なことだと私は言いたい。他の政治課題に比べると、戦争の回避は圧倒的に重要である。願わくば、このトランプ大統領の政策が短命に終わらず、米国で今後も長く続いて欲しいものだ。世界の覇権国である米国がその気にならない限り、世界平和は絵に描いた餅に過ぎない。具体的に言うと、あなたや私の子孫は生きる場を完全に失うことになるのだ。

ところが、最近、世界にはまったく新しい局面が現れた。それは新型コロナウィルスの大流行だ。これによって、米国を中心として進められてきたグローバル経済体制は完全に逆方向へ歩き始めた。つまり、各国は自国民の健康と安全を期すために国境を閉鎖し、人や物の往来を停止させた。経済は沈滞した。米国もその例外ではない。むしろ、国内の治安状態の悪化や世論の分断を見ると、もっとも大きな損害を被ったのは米国ではないかとさえ思われる。もしもこの閉塞状態が今後2年も3年も続くとすれば、米経済が被る損害は甚大なものになり兼ねない。そして、他の国々も同じことだ。

将来の世界は何処へ向かおうとしているのであろうか?