2020年11月27日金曜日

アフガニスタンの運命は麻薬によって決まる。政治ではない

 

ここに「アフガニスタンの運命は麻薬によって決まる。政治ではない」と題されたアフガニスタンにおける米軍の駐留に関する新しい記事がある(注1)。実に衝撃的な表題だ。

米軍が駐留する国々が米軍あるいは米国の資本家にとってどんな利益を与えているのかを観察すると、「アフガニスタンの運命は麻薬によって決まる」という主張は素人のわれわれにとっても決して理解不能ではなく、実に分かりやすい。要するに、麻薬の密売から得られる収入は駐留米軍にとっては自分たちが予算と言う足枷から脱却することを可能とする手段であり、非常に魅力的な資金源であるに違いない。

歪められた国際政治、特に、意図的に政治的不安定さを引き起こされた国々をこの論理で眺めてみると、シリアやイラク、リビアについてはこれらの国々で産出される原油が米軍の駐留の主要な理由であることは明白だ。少なくとも、複数の主要な理由のひとつである。それはまさに非合法的に原油資源を略奪することに他ならない。独裁政治を排して、一般庶民のために民主的な社会を勝ち取ってやるという甘い言葉は実際には決して主要目的ではない。そういった文言は一般大衆の耳に心地よく響くのであろう。しかしながら、それはあくまでも大手メディアが自分たちの記事や番組を消費してくれる一般大衆に向けて喧伝するプロパガンダであり、詭弁でしかない。それ以上の何物でもないのである。特定の国の指導者を排することは、その国に政治的な不安定さを作り出して、米軍が侵攻し、資源を略奪し易い環境を整えるためのものだ。こうして、この帝国主義的なシナリオは何回も繰り返されてきた。まさに米国の対外政策の教科書となっている。

こういった状況を考えると、「アラブの春」の実態は何であったのかという問いかけに対する答えが明瞭に浮かび上がってくる。そして、今や、これらの実態の多くは数多くの献身的なフリーランスのジャーナリストによって詳細に検証され、報告されているのである。幸か不幸か、われわれは、今、そんな世界に住んでいるのだ。

本日はこの記事(注1)を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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CIAの著名な高官が航空機事故で死亡したという噂が流れているにもかかわらず、本日、アフガニスタンの消息筋は彼はパキスタンの統合情報局(ISI)によって確保されていると言った。

その報によると、当人はマイク・ダンドレアといって、イランの外交に従事していたソレイマニ将軍や他にも何百人ものイラク人を殺害した張本人である。

彼は生きており、大丈夫だと米国は主張しているものの、他の消息筋や諜報機関、パシユトン人の抵抗組織を抱えているアフガニスタンの現場の情報筋はそれとはまったく違った話を伝えているのである。

墜落した航空機は諜報活動に従事していたものであり、移動式指揮センターであった。死体が見つかった。しかし、それにも増して重要なことは生存者があって、彼らは捕虜となったという点だ。

アフガニスタンにおいてはあの地域で捕虜になるとタリバン(ロシアでは違法集団)に拘留されるよりも、むしろ、パキスタンのISIというスパイ組織の手に渡されることが多い。

ダンドレアは果たして帰国するのか?それとも、米国政府は何時も嘘をついてきたように今回もまた嘘をついて、彼は現地に残されてしまうのであろうか? 

結局のところ、米国は、ニクソン大統領の辞職後、米軍の何百人にものぼる捕虜をベトナムに置き去りにせざるを得なかった。これは誰であっても帰国させるといった嘘をつき、米国の市民に対して新たに一連の嘘を報じることを認める代わりに、むしろ、彼らは単に米国人が苦しみ、死んでいく様を見ることを選んだからに他ならない。

背景

ドナルド・トランプ米大統領はアフガニスタンから米軍を撤退させ、彼の個人的な資金提供を行う同盟者と関係を持つ民間請負業者に置き換えようとしている。トランプ政権では評価が大きく分かれる教育長官の兄弟であるエリック・プリンスは、消息筋の話によると、トランプのために非公式な「国務長官」の役を演じている。つまり、ポンぺオが行くことができないような場所へ赴き、トランプのために中国と個人的な約束を取り付け、サウジや湾岸諸国との間で武器に関する商談を纏めているが、彼にとっては特にアフガニスタンにおける利権が重要な関心事である。

ひとつのことだけは明白だ。米国は膨大なヘロインのビジネスが誰か安全な人物の手に納まるまではアフガニスタンから撤兵することはできない。仮にあなたが和平合意を導いたカタールを中心とした交渉の場に居合わせたとしよう。アフガニスタンで豊富に産出する希土類については何の言及もされないけれども、その会合では麻薬の商売を確保することに関しては延々と話が続くのである。

ブラックウオーターのような軍事サービス企業は今やプリンスによって再導入されつつあり、この取り組みにおいては彼は重要な役割を演じるのかも知れない。

戦争のごまかし


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米国は2001年にアフガニスタンへ武力侵攻し、オサマ・ビン・ラデンとアル・カエダを追い回し、彼らの24カ所もの大きな地下の基地を探しまわった。このために何千人もの米国の雇用兵が投入され、後にその数は何万人にも達した。 

カブールには巨大な「グリーン・ゾーン」施設が構築されている。これは地方軍閥のリーダーや大物の麻薬取引業者、米議会からの訪問者、等のために準備された何百万ドルもかけた居住地域である。麻薬問題はかっては皆無であった社会、アヘンの生産はまったく存在しなかった国家が米国国際開発庁(USAID)や米農務省の専門家らの手によって世界のアヘン生産の95%を生産する国家へと変貌したのである。

その2年以内にヘロインの生産設備が米国の監督下で構築され、まずはロシアを対象にその流通が開始された。しかし、供給過剰となり、安価で高品質のヘロインは米国やヨーロッパならびに至る所で何百万人もの中毒者を現出させたのである。

このプロセスにおいては、約9百万人にものぼるアフガニスタン人が麻薬依存症となり、その他にも何百万人もが売春に引きずり込まれた。これらの状況はすべてが米国の軍事サービス企業によるものである。

パキスタンの破壊

戦争が続く中で、安い麻薬が洪水のように北側(訳注:アフガニスタンの北側にはタジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンが位置している)へ流出し、隣接する国々は辛酸を舐めることのなったが、もっとも酷い状況に見舞われたのはパキスタンであった。

パキスタンは1970年代に米国と組んで、対ロ秘密戦争に関与した。このCIAとの合同の取り組みはパキスタンの軍部を何十年にも渡って安定化してくれるであろうと彼らは期待した。しかしながら、決してそうはならなかった。

それに代わって、パキスタンに敵対する勢力にとってはアフガニスタンでのテロ行為は自分たちの計画を先へ進めるのに好都合であったのである。インドとイスラエルはワシントンのブッシュ政権の庇護を受けて、パキスタンとの国境地帯にテロリストを訓練するキャンプを設け、今日でも継続しているテロ行動を開始した。単純に言って、カシミール紛争とは別のもうひとつの前線が作り出された。

この取り組みは米国との同盟関係がないパキスタンを破産せしめ、結局のところ、これはパキスタンを中国の影響圏へと追いやることになった。

繰り返しになるが、パキスタンにはタリバンが住む平地についてではなく、アフガニスタンから流れ出てくるヘロインにまつわる何十億ドルもの大金に目をやり、大仕事を待ち望んでいる連中がいる。

また、彼らはアフガニスタンへの米国の武力侵攻で自分たちが失った物事に対する見返りとして自分たちは米国から何らかの支払いを受け取る正当な理由があるのだとも考えている。

二番目の問題は、アフガニスタンで戦争を継続し、麻薬王国を樹立するには、米国はパキスタン経由で有用な兵站路を確保することを求めていたという事実である。これは政治的にも軍事的にもCIAをして長期的な隠密作戦を行うことを強いたが、イムラン・カーンが首相として選出されると本作戦は終止符を打った。彼は米国に逆らって立ち上がる力を持っていたのである。

今日、パキスタンにはヘロイン取引の一部を自分たちのために欲しいと考える連中がいる。これは単にテロ活動のために失った収入源の代わりにするということではなく、世界中で数多くの政治的ならびに軍事的な指導者たちが麻薬の取引に関与しているという理由からなのである。

すべては金だ。

真実は何か?

まずはこの話から始めよう。多くの場合がそうであるように、本物のジャーナリズムの作品はこんな感じなのだ。すなわち、どんな話であっても、それはある文脈の下に始まるのである。今日の世界においても、文脈の第一に重要な点は、本物のストーリーはそれが如何なるものであったとしても大分前には「陰謀論」というレッテルが付されていたような物語を典型的に含んでいる。

こうして、特定された情報源やしっかりとした背景を持ったストーリーを告げようとすると、内部情報を持っている人物や相違する意見を十分に把握している人物に辿り着くことになる。さあ、ここで本論へ入ろう。

2020年の1月へ遡る。米国の偵察機であり、移動式指揮センターであった航空機がアフガニスタンで墜落した。「ベテランズ・トデイ」から引用すると: 

「撃墜された航空機はイラク、イランおよびアフガニスタンでの作戦を指揮するCIAのマイケル・ダンドレア用の移動型指揮センターであって、米国ではもっとも最先端のスパイ・プラットフォームであり、移動可能な指揮センターであって、その機器や書類のすべてが今や敵の手中に陥った。」 
ベテランズ・トデイ・ダマスカス: 殉教者となったカセム・ソレイマニ将軍の暗殺に関する書類の中で責任を問われているマイク・ダンドレアはアフガニスタンで撃墜された航空機事故で死亡したと報じられた。彼はCIAの諜報分野においてはこの地域ではもっとも卓越した人物である。このCIA高官はアフガニスタンにおける航空機事故で死亡した。
2017年以降、ダンドレアは中東での偽旗作戦や暗殺計画を指揮し、ソレイマニ将軍だけではなく、他にも300人ものイラクのデモ参加者の殺害にも関与していた。

それでは、いったい何が真実なのだろうか?タリバンはCIAの高官が飛行機に乗っており、その航空機が墜落し、彼は死亡したと主張している。RTの報道によると: 

「タリバンの報道担当者は飛行機の乗組員と乗客は、CIAの高官と称される人物も含めて、皆が即死したと述べた。この未確認情報には米中央情報局(CIA)に属する高官がいるという件も含まれる。」
しかしながら、現場からの直接の電話によると捕虜が捕えられ、少なくとも一人は「人質」としてパキスタンに確保されていると伝えられている。

嘘をつく病

メディアが流血沙汰に関与することで起こる最悪の状況は、恐らくは、202084日にベイルートで起こった大爆発であろう。

あの事件に関する事実関係はいったいどのようなものであったのだろうか?

    事件の数日前、イスラエルの首相と国防相は爆発が起こった場所にはヒズボラーのロケット貯蔵施設があると言い、そこを爆撃する計画であると言った。

    爆発の直前、イスラエルの航空機が爆発地点に急降下して来るのが見られた。関連ビデオはインターネットで検閲された。

    トランプ大統領はペンタゴンの消息筋を引用して、これは爆弾による攻撃、あるいは、それに類するものであろうと述べた。

ここで、小休止しよう。二つのインタビューで、トランプはベイルートでの出来事を攻撃だと言った。ペンタゴンの諜報筋を言及し、トランプがこれらの主張をした後に、メディアはこの事について誰一人も書かなかった。トランプ自身が「この話を作ったのだ」なんて問われることはなかったし、非難されることもなかったのである。トランプが言及することはほとんどすべてが何らかの反論や報復を受けている今日、この件に関してはまったく何も起こらなかった。実に不思議な展開である。何故だろうか?

それはそれとして、他の事実も次のような具合だ: 

    爆心地のクレーターは固い岩盤上に形成され、深さが50フィート、直径は500フィートもある。爆発によって引き起こされた同様のクレーターは米国のニューメキシコ州に存在するだけだ。それは2メガトン級の水爆の地上爆発で作られたものだ。

    農薬や花火の爆発が原因であったとするさまざまな解説があるが、それらは初歩的な科学によって簡単に退けられる。

硝酸アンモニウムは燃料油とのスラリー状混合物にし、高性能爆発物によって点火された場合には爆発を起す。しかしながら、十分な量のアルミ粉末を加えていなければ、これでさえも爆発力は大きくならない。

岩盤を爆破するために使用する場合は、深い穴を掘削し、その中に仕掛ける。通常の爆発物を表面で爆発させると岩盤にクレーターを形成する可能性はない。500フィートもあるクレーターの形成はなおさらのことだ。

どうしてこの話を持ち出さなければならないのか?

たとえ命令を受けたとしても、メディアがあり得ないストーリーを一般大衆に向けて報じることなんてあり得ないと考えることは子供じみているし、馬鹿げてもいる。もちろん、これはメディアの存在価値はまったく何もないということを意味している。

さらに悪いことには、毎日のようにさまざまな事例が現れる。たとえば、シリアにおける偽の化学兵器攻撃だ。あるいは、米国はアルカエダやISIS(これらはロシアでは両者共禁じられている)と共謀して中東ばかりではなく、アフリカにまでも彼らを送り込み、あたかも米国の「新しい特殊部隊」でもあるかのようにアジアの東の果てにまでも配置する。

結論

20年後の今日、カブールの偽物政府は依然として前と同様のままだ。米国の操り人形であり、ノーザン・アライアンス(訳注: より穏やかなイスラム教を信仰し、タリバンに反抗して連合するアフガニスタンの多民族的な同盟)のために麻薬ビジネスを推進する。何も変わってはいない。

それでは、和平合意の根底にはいったい何があるのか? 

はっきりしているのは次の点だ。つまり、米国の唯一の現実的な関心事はアフガニスタンで麻薬を生産することである。米国の軍事的存在を抜きにしても、今や、それは可能だ。

米国がアフガニスタンで米軍よりも数多くの民間雇用兵を維持してきたという紛れもない事実は世界を相手に極秘裏にされてきた最悪の事態の中のひとつである。ドナルド・トランプは雇用兵の数を3倍にした。これはオバマ政権以上にあの打ちひしがれた国家で運営されている「麻薬ビジネス」が重要視されていることを物語っている。「USニュース」は次のように報じている: 

「雇用兵にまつわる主要問題は、どれを取り上げても、彼らがいったい何をやっているのかという点に十分な関心が払われていない点にある。近年、誰にとっても満足できるような明快な形で報告されたことは一度もない」とブラウン大学のキャサリン・ルツ教授は言う。彼女は「戦争のコスト」プロジェクトのディレクターを務め、米国の紛争地帯に投入されている民間雇用兵について文書化を進めている。「ペンタゴンはわれわれ、つまり、米国の一般大衆に向けて十分に説明するべきだ。誰がこの費用を払っているのか、それは何を意味するのか、どうしてこのようなことが起こっているのか、等について。」

非常に単純な質問がいくつかある。これらのことを問いただすことはできるのだが、誰も質問をしようとはしない。なぜかと言うと、これらの質問を行うことができる完全に自由なメディアは存在しないからだ。ここで、ひとつふたつの要素に注目してみよう:

    米国は兵站部門に4000人の雇用兵を配置し、約5500人の米軍将兵を支援している。一人一人の将兵は個人的な運転手を必要とするのだろうか?それとも、彼らは「まったく別の業務」に携わっているのだろうか?

     5500人の米兵の安全を維持するためにほぼ同数の武装した雇用兵がおり、彼らは米政府から給料を貰っている。米兵らは自分たちを十分に武装しているにもかかわらずだ。このことについて誰も不審には思わないのだろうか?少なくとも、メディアは不審に思ってはいないことは確かだ。


ここで、CIAの暗殺任務の黒幕であると言われているマイク・ダンドレアについて問うてみよう。彼は本当に死亡したのか?彼は何処かでわれわれ皆を笑っているのではないか?あるいは、彼はパキスタンの刑務所で朽ち果てつつあるのではないか?

真実が辺りを制するにしても、そのチャンスはごく僅かであり、ヘロインを全世界に供給している8000人もの民間雇用兵をアフガニスタンで監督するために何十憶ドルもする米国のスパイ専用機を飛行させている現実をいったいどのように説明することができるのか?

著者のプロフィール: ゴードン・ダフはベトナム戦争時は海兵隊戦闘員であった。彼は元米兵や戦争捕虜にかかわるさまざまな課題に何十年にもわたって取り組んできた。また、安全保障問題に悩まされている政府に対しては顧問役を引き受けた。彼は「ベテランズ・トデイ」の上級編集者であり、重役会の会長を務めている。オンライン誌である「ニュー・イースタン・アウトルック」に特別寄稿を行っている。

これで全文の仮訳が終了した。

もちろん、米国がアフガニスタンからの撤退を進めたがらない理由としては他にも有力なものがいくつもあることだろう。とは言え、この著者が主張する世界を相手にしたヘロインの商売を独占的に維持したいとする理由は実に説得力があると言える。すべては金だ。

かって、米陸軍のある将軍は米軍の役割は米国政府が他国の資源を略奪する際にその行動を支援することにあるのだと看破した。彼はそのことを本に書いた。この見方は生涯を陸軍で過ごした職業軍人が残した言葉であるだけに、彼の言葉には否定できない重さが感じられる。彼の発言はすでに大分前のことではあるのだが、物事の根底にはたとえ時代が変わったとしても依然として変わりようがない人間社会の特性が横たわっていると言えよう。


参照:

1Afghanistan’s Fate Decided by Narcotics, Not Politics: By Gordon Duff, Nov/12/2020







2020年11月20日金曜日

ゲイツ財団は、安全性と有効性についての懸念が残る中、第三世界で新型コロナワクチンを推進するためにさらに7千万ドルを投下


ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の活動は人道的なものであるという。しかしながら、地球上で生活する70億人が毎日を人間的な生活を続けることに果たして真の意味で貢献しているのだろうかと問うてみると、必ずしもそうではないという疑念が残る。それに答える情報は決して明確ではない。

107日、私は「ビル・ゲイツのワクチンがアフリカでポリオを広げている」と題して投稿した。アフリカでポリオを撲滅すると公言し、ポリオワクチンの集団接種を開始したものの、この接種によってポリオを引き起こすという本末転倒なケースが多発したのである。これは100年も前の話ではなく、ごく最近の話だ。

アフリカではポリオワクチンの集団接種でネガティブな結果が報告されているだけに、今回の新型コロナウィルスに対するワクチンの開発では安全性と有効性の確保は徹底的に追求しなければならないだろう。そうしなければならないことは常識的にも明白であり、当然である。ところが、現在臨床試験が実施されている新型コロナワクチンでは安全性や有効性が十分に説明されてはいないという指摘が出ている。つまり、これは大手製薬企業の金儲けの論理が優先されているのではないかという懸念だ。果たしてこれらの新ワクチンは製薬会社が説明しているように本当で安全であり、有効なであろうか?

ここに「ゲイツ財団は、安全性と有効性についての懸念が残る中、第三世界で新型コロナワクチンを推進するためにさらに7千万ドルを投下」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

ワクチン開発の推進者であり億万長者でもあるビルおよびメリンダ・ゲイツは、彼らが資金提供をしているファイザー社が開発したワクチンに関する臨床試験に関して、その試験結果が不明瞭であるとして何人かが疑義を挟んでいる中で、新型コロナウィルス用ワクチンの開発努力(影響力)においては世界でも最高の地位に達している。

同夫妻の財団はワクチンの開発とその配布にさらに7千万ドルを提供すると木曜日(1112日)にプレス・リリースで述べた。そして、「パリ平和フォーラム」ではメリンダ・ゲイツが公式発表を行うとも付け加えている。

夫妻は5千万ドルを「低・中所得の92ヵ国」が実験用ワクチンを確保することができるようにするための国際的な取り組み、つまり、COVAX(共同購入に関する枠組み)に割り当て、残りの2千万ドルを「もうひとつの有望なワクチンの開発に活を入れる」ことを狙う「感染症流行対策イノベーション連合」(CEPI)に割り当てた。

RT.COMからの関連記事: BoJo hosts Bill Gates & pharma bigwigs to plot Covid-19 vaccine deployment as UK military preps for ‘biggest effort since WWII’

新型コロナウィルス用のワクチンに関して過去の9か月間執拗に遊説して回り、地球上に住む70億人の全員に接種したいとする自分の希望を表明してきたにもかかわらず、マイクロソフトの創始者であるビル・ゲイツは、第2世代のワクチンは「大量生産性性や環境温度に対する安定性、低コスト生産、等に関してより大きな潜在性」を有していると述べ、彼自身の関心は現在進めているワクチン候補から次の目標に移行しているかのように見える。

例のワクチンの開発計画表では何と言っても「通常の生活」に戻ることが求められて来たが、開発は明らかにさらに先へと見送られ、裕福な国々は2021年の末までに新型コロナの大流行以前の生活に戻れるだろうと先月言ったばかりであるにもかかわらず、ゲイツは木曜日(1112日)に「われわれの道のりは長い」と述べている。ますます多くの統計情報が伝えているように、新型コロナはゲーツが資金提供するメディアによって当初喧伝されていた程には致死性が高くはないという事実が判明している今でも、ゲーツ財団のCEOを務めるマーク・サズマンは「この大流行を終息させるには歴史的に最大級となる公衆衛生の取り組みが必要だ」と主張しており、この筋書に完全に同意しているようである。

マイクロソフトの大物には「挑戦」に打って出る用意が十分にあるが、ボリス・ジョンソン英首相が英国の保健政策において(ゲーツの)スローガンを大規模に取り入れたこと、さらには英国が2021年にはG7の議長国となり、その間に世界規模の「健康安全保障」制度を公開するようだ。これによってWHOに対して最大の寄付金をすでに提供しているゲーツ夫妻はさらに大きな影響力を持つに至るであろう。こうして、これらのことについて彼らは最近お祝いをしたばかりである。

ゲーツの反対者らはゲーツ夫妻の財団が第三世界の住民を実験用のワクチンのために「動物試験用ラット」として使っている現状について批判し、南アではゲーツが後押しする「世界ワクチン予防接種同盟」(GAVI)によって実施されたワクチンの試用に反対する地区が出現した。因みに、GAVIが表明している目標は貧しい国々でワクチン接種を受ける国をより多く増やすことにある。

RT.COMの関連記事: Round up the ‘anti-vaxxers’? Enlist religious leaders? Bill Gates warns US needs to brainstorm ways to reduce ‘vaccine hesitancy’

製薬大手のファイザーは、今週の始めに、同社が開発した新型コロナワクチン(ゲーツによって大量の資金提供がされている)は90%の有効性を持っていると宣言した(訳注:これは中間報告であって、最終報告ではない)。しかしながら、同社はその臨床試験の結果を公表せず、何人かの医療専門家は統計サンプルのサイズが小さいこと、この臨床試験が成功であったと言いながらも詳細を公開してはいないこと、等から懐疑的である。当の億万長者自身は9月に次のことを仄めかした。「ファイザー社はワクチンに関してFDAの緊急使用の認可を受ける最初の製薬会社となるのではないか。」 同社の開発はBioNTech社との連携によるものであった。ファイザーのワクチンは免疫反応を起こすのにmRNA のメカニズムに依存しており、この特殊な開発モデルは人類史上でワクチンとして使われたことは一度もないのだ。

英国の国民医療サービスは軍隊がファイザーのワクチンを配送することをすでに準備しており、米国も年末までにワクチンを配布するための助っ人として軍を待機させるとのことではあるが、西側では新型コロナワクチンを認可した国はまだない。その一方で、ロシアのスプートニクVワクチンは緊急使用許可を得ており、製薬企業はロシア以外からの注文に応え始めた。中国では複数のワクチンが緊急使用許可を得ている。

RT.COMからの関連記事: Plans on ice: Freezers & logistics are the reasons Pfizer's vaccine is all hype, and won’t be a magic bullet

これで全文の仮訳が終了した。

今までの歴史ではワクチン開発には最短でも5年はかかっていた。通常は10年だという。たとえば、エイズの最初の症例が報告されたのは1980年代の始めであったが、ワクチン開発は困難を極めている。そういう極端な事例と比べると、新型コロナワクチンの開発ではmRNAを使った開発で非常に短期間のうちに開発を進行させることができたことは大きな成果であると言えよう。

ただ、一番に名乗りを挙げたファイザーのワクチンについては不明な点も多い。上記の引用記事とは別の記事(注2)を調べた内容を参考のために下記に概略する:

米国FDAが製薬会社に求めているワクチンの有効性は50%以上であることから、ファイザーが報告した90%の有効性はそれよりも遥かに高い(50%というレベルはインフルエンザ用ワクチンの水準であるらしい。一方、麻疹のワクチンの有効性は遥かに高く、接種を受けた人たちの95%程度が免疫を確立すると言われている)。もっと詳細を見ると、ファイザーの当初の試験計画ではこの臨床試験では164人の新型コロナ感染者を必要としているが、今回の中間報告での感染者数は94人である。今後何週間かの間に新たに感染するボランティアも加えて、感染者合計が164人となるまでは最終報告は出てこないと予測される。

ところで、90%超の有効性が得られたとファイザーは言うが、果たしてこれは信じられるのか?答えは「否」だ。なぜならば、ファイザーは詳細データを開示してはいないからだ。何人のボランティアが実際に感染したのかというデータはわれわれには不明であって、何人が症状を見せたかという情報だけが公表されているからだ。

安全性に関しては提携先のBioNTech社の研究指導者であるウグル・シャヒン氏によると、今回の臨床試験で得られた安全性はワクチン開発を開始した頃のデータと同じ水準であると言う。つまり、20種のワクチン候補の中から初期の試験で最終的に2種類が残り、それら2種類の中から特に年配者に副作用を起こすことがもっとも少ないワクチンが選定され、今回の臨床試験に供された。しかしながら、公開されている情報は決して多くはない。つまり、初期試験では72人にこのワクチンが接種され、臨床試験のボランティアが接種された量と同じ量を接種されたのはその内の24人だけであった。これらの24人には「深刻な副作用」は観察されなかったという。ここで、「深刻な副作用」とは入院を必要とする副作用のことを指し、場合によっては生命に危険を及ぼし、死に至るケースも含まれる。

安全性に関しては、「ファイザーのワクチンは免疫反応を起こすのにmRNA のメカニズムに依存しており、この特殊な開発モデルは人類史上でワクチンとして使われたことは一度もない」という事実が長期的な影響に何らかの影響があるのかという点に関して製薬会社は十分に説明しなければならないと思う。完全に安全だと言い切れる程に新型コロナウィルスの挙動、ならびに、mRNAを使うという手法が何の悪さをしないことが科学的に分かっているのだろうか。非常に短期間の内に行われたワクチン開発であるだけに、素人の杞憂に終わってくれればそれは幸運中の幸運である。

ビルおよびメリンダ・ゲーツ財団が進めている新型コロナ用ワクチンは、率直に言って、現時点ではいかがわしい印象を払拭できない。なぜそうなのかと言えば、まず、新型コロナの大流行が始まった頃、一般大衆の恐怖感を煽るために大手メディアが総動員された。あたかも、この大流行はもっと大きな世界的なレベルでの新秩序へ移行するための踏み台として演出されたかのようであった(英国首相のボリス・ジョンソンの演説を思い出していただきたい)。あちらこちらで表明されるビル・ゲーツの言動(たとえば、TEDや世界経済フォーラム)や製薬業界における組織作り、WHOを始めとした国際機関やG7を舞台にしたさまざまなプログラム、等を総合的に俯瞰するとこのような印象に辿りつくのだ。悩ましい限りである。

巷ではこの種の懸念を表明すると、特に大手メディアやSNSプラットフォームでは陰謀論として片づけられてしまうことが多いのだが、私の否定的な印象が杞憂に終わってくれれば、それほど嬉しいことはない。

また、世の中には論争の末に、論争相手を個人的に攻撃を始める人たちがいることは非常に残念なことである。相手を個人的に中傷し、悪口を言うことは極力控えて、辛抱強い議論を続けることが基本的に重要である。相手の意見を聞く寛容さを持ち、お互いの意見の相違を浮き彫りにさせ、さらなる議論の展開に役立てたいと願う次第だ。


参照:

1Gates Foundation pours another $70mn into pushing Covid-19 vaccines on 3rd world countries as safety & efficacy questions remain: By RT, Nov/13/2020, https://on.rt.com/auur

2: The Latest Covid Vaccine Results, Deciphered: By Wired, Nov/10/2020






2020年11月10日火曜日

投票を数えられない米国は国家として恥ずかしい。そして、危険だ

 

米大統領選の開票が進んでいる。ところが、共和党員の投票監視人を締め出してしまったこと、郵便投票に不審な状況があったこと、等が報告されている。これらの多くは州議会では共和党が多数を占め、知事は民主党といった「捻じれ」現象がある州で起こっている。いくつかの州では開票作業そのものの信頼性に疑惑がもたれている。このままでは、場合によっては、投票そのものの有効性が裁判所によって裁定されることになるのかも知れない。事実、118日現在、ペンシルバニア、ミシガン、アリゾナの諸州では選挙にまつわる疑惑について裁判所での係争が始まった。また、ウィスコンシンとジョージアでは再集計が行われる。つまり、大統領選はまだ終わってはいないのである。

つまり、第2幕が始まったばかりである。

このような現状を受けて、メキシコの大統領やプーチン大統領は民間のメディアが主張するバイデンの「当選確実」の状態では祝辞を述べることはできないとして祝辞を控えている。

現行の混乱振りを憂えるかのように、ここに、「投票を数えられない米国は国家として恥ずかしい。そして、危険だ」と題された記事がある(注1)。これは定評の高いジャーナリストであるグレン・グリーンワルドが書いたものだ。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

地球上でもっとも裕福であり、もっとも強力であると見られている国家は、たとえそれが愚劣さや選択肢、あるいは、それらの組み合わせのせいであるとしても、票を数えるという単純な仕事を最低限の効率を発揮し、自信を与えてくれるようなやり方で達成する能力なんて、今や、これっぽっちも持ち合わせてはいない。その結果、選挙制度に対する信頼感はひどく損なわれ、幸運な受益者に民主主義を「広める」という博愛精神を米国が主張する際のために残されているそれ以外の権威はすべてがほぼ消滅してしまったか、ほぼそれに近い状態である。

2020年の米大統領選の投票日の翌日、つまり、水曜日(114日)の東部時間の午前730分、大統領選の結果は、上院ではどの党が優勢となるのかという点と並んで、懐疑心に満ち溢れ、大混乱の最中にある。帝国としての最強国をいったい誰が統治することになるのかによって世界は大きな影響を受ける訳であるが、全世界から注目される中、米国は数えきれないほど多くのより貧しく、国力がより小さな他の国々が完璧にマスターした開票という単純な仕事を達成するために悪戦苦闘し、つまずいたり、よろめいている始末だ。いくつもの州では今週の末、あるいは、その先にならないと開票作業は終了しない。

まったく同じようなデータが現れ。ヒラリー・クリントンが90%以上の信頼性で2016年の大統領選で勝利すると発表した時と同じ顔ぶれの世論調査の専門家たちがいる。そして、2020年の選挙では民主党候補者については以前よりも確実だと言って最近の3カ月を過ごして来た連中は、今、バイデンが多くの重要な州で後れをとっているにもかかわらず、バイデンは選挙の大勢を決定する州においては民主党が多い郡での未開票の部分がまだあることから依然として優勢だと言う。[今ではすっかり評判が悪くなったニューヨークタイムズのネート・コーン(時計の針で当落を示す信奉者)が開票率が80%のジョージア州は80%以上の確率でトランプが勝利すると言ったのを聞いて誰もが眠りについた。しかし、数時間後の翌朝、時計の針はまったく別の結果を示していることに皆が気が付いた。皮肉にも、これはコーンが彼の時計は今回は以前よりも遥かに「スマート」になっていると皆に吹聴したばかりのことであった。]

114日: 「ニューヨークタイムズの針」がトランプ候補が71%の確率でノースカロライナで勝利、82%の確率でジョージアで勝利を予測。

114日: 「ニューヨークタイムズの針」がジョージアでは「恐らく、トランプが勝利」、ノースカロライナでは「トランプに傾いている」と予測。ジョージアでは84%の確率でトランプの勝利、ノースカロライナでは56%の確率でトランプの勝利を予測。


Photo-1: 東部時間で火曜日の午後840分における

「ニューヨークタイムズの針」


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4日: 「ニューヨークタイムズの針」はジョージアで40ポイントもトランプからバイデンへ移行した!


Photo-2: 4時間後の水曜日の早朝、1212分における

ジョージアに関する「ニューヨークタイムズの針」


彼らが素早く編集した失敗や屈辱の記録を見せられて、彼らが述べる事について理性のある人たちはこの時点でいったい何を信じることができるのだろうか?電話帳からひとりの市民を無作為に選んだ場合、予測数値を共有することについてはそれ程の信頼は期待できないとしても、彼は同じくらいに信頼が置けることであろう。世論調査の業界とそれに寄生するデータ・オタクたちが国政選挙において二回も続けて起こした記念碑的な大失敗は選挙制度にさらなる不信感を募らせ、混乱を招くばかりである。

開票作業は完璧なほどに信頼感を失ってしまったが、そのような状況は今や標準的な状況となっているのである。ニューヨーク州では6月下旬に予備選挙が行われた。その2カ月後になっても、これらのふたつの選挙戦は未決定のままであった。ニューヨークタイムズはこう言った。「郵送されて来た40万票の洪水に曝されたことやそれ以外の問題にも見舞われたことから大遅延となってしまった。」 特に: 

都市部の何千通もの投票用紙が選挙管理委員会の職員によって間違って捨てられてしまったり、予備選挙の前日まで投票用紙が投票者に配布されなかったりして、投票用紙を期限内に返送することは不可能となった。

ニューヨーク州はふたつの議会議員の予備選挙での勝者を最終的に宣言するまでに何と6週間も必要としたのである。

コロナウィルスの大流行と都市閉鎖、ならびに、それに伴って新たに導入された投票規則がこのプロセスをより複雑なものにしたのは明らかであるが、米国は最低限の効率で、このプロセスに最低限の自信を感じさせるようなやり方で簡単に票を数えることにさえも大失敗したのである。しかし、この大失敗は20203月に全米規模で行われた都市閉鎖以前にまで遡る。2000年に行われた大統領選は長期化し、裁判所による裁定によって決着がついたが、開票結果は依然として信用できず、常軌を逸したものであるとしてあの選挙(国政選挙のサイクルとしては4サイクル前)は無効にしたとしても、米国の投票はシステム的な大失敗に見舞われ、不審の念をもたらす効率の低さに遭遇する。これはひとつの絶望的な選択肢であるとか、崩壊しつつある帝国が反映されたものであるとして説明することさえも可能だ。

1月に起こったことを思い起してみよう。アイオワ州で行われた民主党の最初の予備選挙では新しいアプリが民主党の誠意がない作戦専門家の一団によって作成され、収益化されたが、これが大きな遅延と混乱をもたらし、信用ができない結果を招いた。このプロセスの後半においては、カリフォルニアを含めて数多くのスーパーチューズデイの州においては選挙後何週間にもわたって開票作業が続けられた。(民主党の予備選挙後1週間以上経っても、カリフォルニアは投票総数の約75%を数えただけであって、バーニー・サンダースには投票の夜に談話的な勝利宣言さえをもさせなかった。) 

2018年の中間選挙でも不正は蔓延した。ワシントンポストは「全米で何千件もの不正事件が報告されている。投票者は装置の故障や長い行列、訓練が行き届いてはいない世論調査の担当者が米国人の選挙の権利に挑戦してくる」と訴えていると指摘した。

クリントンとサンダースとの間で繰り広げられた2016年の予備選挙戦において繰り広げられた民主党全国委員会による「不正」と破廉恥な誤魔化しの全貌は、メディアが親クリントン路線であることからも、全面的に評価されることは一度もなかった。一例を挙げると、「ニューヨーク市の20万票」(多くはサンダース派であった)は選挙人名簿から非合法的に抹殺され、大統領選の予備選へ投票することを妨害された(こういった不正が如何に蔓延していたかを物語る例としては、2016年の民主党予備選挙では悪戯や誤魔化しが数多くの重要な州で観察されている。このTrueAnonのエピソードを聴いていただきたい)。

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これらすべてに関する動機はいったい何であるのかを推測したいと誰もが思うであろう。そのひとつは極めて明白である。つまり、このような状況をもたらす必要性は何もないのである。この事実に関する疑惑の全てを排除したいと思うならば、ブラジルの例を見て貰うだけでいい。

2018年の中間選挙で投票の問題が蔓延した後に私はブラジル人の同僚であるヴィクトル・プジと共同してひとつの記事を書いた。開票の速度や効率に関しては必ずしも定評がある訳ではないブラジルが素晴らしい迅速さと効率を発揮して、開票を終わらせたことについて書いたのである。

ブラジルはけっして小さな国ではない。同国は地球上で5番目に大きな人口を有している。ブラジルの総人口は米国の人口に比べてやや小さい(33千万に比べて21千万)けれども、選挙義務と選挙権の自動登録、16歳で投票権を得ること、等からも数えるべき票数には大きな差はない(2018年のブラジル大統領選での投票総数は15百万票で、米国の2016年の大統領選での投票総数は1億3千万票であった)。そして、国政選挙の日に27の州で州知事や議会議員の選挙も同時に行われたのである。

とは言え、ブラジルは米国に比べると遥かに貧困であり、技術水準も低く、民主主義の歴史も短い。だが、同国は滞りのない、速やかな開票を行い、開票作業に関して何らの疑いを抱いた人達はごく少数でしかない。可能な限り多くの有権者が投票に出かけるのを妨げられることがないように投票は日曜日に行われ、午後6時に終了する。

ジャイール・ボルソナーロの勝利をもたらした2018年の大統領選では、投票数の90%が集計されて、投票結果は選挙当日の午後6時に発表された。つまり、それは最後の州が投票を閉めた時刻だ。その2~3時間後には全集計が完了した。3週間前に行われた第1ラウンドでも同様であった。その時は全州の州知事や上院議員および下院議員の投票も行われた。投票が締め切られた直後全ての集計結果がコンピュータで集計、発表され、それらの集計の精度や正当性を疑う者はほとんどいなかった。

大統領選が行われた火曜日の夜、何億人もの米国人はトランプが重要な州で優勢のままでいるのを見て、眠りに就いた。主要なメディアのデータ専門家たちはそれらの重要な州の多くで彼が勝利する可能性が高いと予想していた。皆は目を覚まし、前夜とはまったく違った状況を目にすることになった。つまり、重要な州の全てにおいてという訳ではないが、いくつかの州ではバイデンが僅差でリードしているのだ。しかし、現時点で明白なことは全ての投票が集計されるまでには数日はかかるということだ。さらには、法廷闘争が間違いなく起こりそうであって、そうなるとさらに日数がかかる。

最終結果がどちらに転んでも、どちらの候補者にとっても、恐らくは両者の何れにとってもその正当性については大きな疑念が残ることであろう。精神錯乱した陰謀論者的な思考なんて何ら必要とはしないのである。このように多くの混乱や間違い、長引く開票作業、説明が不可能とも思えるような情勢の変化はもっとも理性的な市民にとってさえも疑惑や不信感を招くことであろう。

戦争や侵攻、爆撃、あるいは、CIAによるその他の隠密行動を通じて他国へ民主主義を強いる必要があるといった文言を米国民が次回自分たちの政府から聞いた暁には、米国民は民主主義はまずは米国国内で実践しなければならないと主張すべきであろう。すでに疲れ果て、ひどく二極化した市民間のお互いに対する敵意は増加するばかりで、地球上でもっとも裕福であり、技術的にももっとも進んでいる筈の国家において、今回、われわれは最低限の自信さえも感じさせてはくれないもうひとつの選挙に直面しなければならなくなった。

これで全文の仮訳が終了した。

米国の選挙にからむ混乱は目を覆うばかりである。米大統領選における不正に関して少しでも代替メディアが報告しているエピソードを読んだ方々は、恐らく、米国の現状にすっかり呆れているに違いない。気が滅入るばかりである。不幸なことには、民主主義は死んだと言う見解は決して大袈裟ではないようだ。

最新のジョークに「民主主義が死ぬことはない。なぜならば、とうに死んでいるからだ」というのがある。言い得て妙である。


参照:

1The U.S. Inability To Count Votes is a National Disgrace. And Dangerous: By Glenn Greenwald, Information Clearing House, Nov/04/2020