2019年12月20日金曜日

ジャーナリストの言: 「ニューズウィークはOPCWのスキャンダルに関する私の記事を没にし、告訴を仄めかして私を脅迫しようとした」


ダマスカス近郊にあるドーマ市における化学兵器攻撃を巡っては過去の1年半余りの間にさまざまな情報が駆け巡った。つまり、でっち上げ情報と真実を伝える情報との二種類だ。熾烈な情報戦争がシリア政府を倒したい西側とシリア政府を後押しシリアの政情安定を図っているロシアとの間に起こったのである。

昨年(2018年)の47日、シリアのドーマでは化学兵器攻撃が行われ、市民がパニック状態に陥っているとする動画がソーシャルメディア上でホワイトヘルメットの手によって流布された。その1週間後(414日)、証拠は十分に揃っているとして、米英仏はこの化学兵器攻撃を行ったとされるシリア政府を制裁するためにシリアに対する空爆を挙行した。

この201847日のドーマにおいて起こったとされる化学兵器攻撃に関してドーマの住民が詳しい証言を行ったことを読者の皆さんはご存知であろうか。

OPCW(化学兵器禁止機関)に駐在するシリアとロシアの代表はドーマから17人の目撃者をオランダのハーグに本拠を置くOPCWに送り込んだ。OPCW側は11歳の少年ハサン・ディアブや病院の従業員を含む6人を選び、彼らの証言を聴取した。

ここで、念のために、彼らの証言を簡単に復習しておこうと思う。西側の商業メディアはこの証言について必ずしも正確に報道してはいないと思われるからだ。ドーマからやって来た証言者らはOPCWでの証言の後に行われた記者会見で次のように語った:

場所:オランダのハーグに本拠を置くOPCWのオフィス
時: 2018426
証言者: 11歳の少年ハサン・ディアブや病院の従業員らを含む6
証言内容の概略: この記者会見の模様を伝えるRTの記事は「攻撃はなかった。犠牲者も出なかった。化学兵器は使われなかった - ハーグのOPCWでの記者会見でドーマからの目撃者らが語る」と題して、詳細を報じている(注1)。

要するに、47日にドーマで化学兵器攻撃があったというのはでっち上げであった。定石どおりにこのシリア空爆で「いったい誰が得をするのか」と問うてみると、その背景には米国の軍産複合体が現れて来る。彼らはどうしてもシリア空爆を行い、ミサイルを大量に消費し、新たに発注をして貰いたかったのである。そのためには、あらゆる手段を動員して、化学兵器攻撃が行われたとうそぶく必要があったのだ。その筋書きの第一歩はホワイトヘルメットによる動画の作成であり、それをソーシャルネットワークに掲載することであり、周りから援護射撃の役を演じたのは国連の下部機関であるOPCWであった。さらにその遥か外側からは西側の大手メディアが大挙してこの情報操作のお祭り騒ぎに加わった。

ここに「ジャーナリストの言: ニューズウィークはOPCWのスキャンダルに関する私の記事を没にし、告訴を仄めかして私を脅迫しようとした」と題された最近の記事がある(注2)。

本日はこの記事(注2)を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

OPCWの上層部は米国政府の意向を忖度して、OPCW内部の現地調査団が報告した報告書を改ざんし、それを公式の報告書として公表した。しかしながら、この記事に詳述されているように、このOPCW上層部の破廉恥な行為は内部告発によって暴かれたのである。

OPCWにおけるこのスキャンダルを報道しようとしたニューズウィークのある記者は自分が書いた記事が編集者によって取り上げては貰えなかったことから辞職した。そして、その事実が暴露されたのである。今、真実を伝えようとするジャーナリストは厳しい環境に置かれている。ウィキリークスのジュリアン・アサンジにしても、このニューズウィークの記者にしても、これらのジャーナリストは情報操作をブルドーザの如くゴリ押しする国家や商業メディアの犠牲者であると言えよう。

<引用開始>

より大きな問題になりつつあるOPCWのスキャンダルを報じようとした自分の記事が、既報の如く、自分が勤める雑誌社によって没にされた後、ニューズウィークのそのジャーナリストは辞職した。非常に意味深な陰謀が暴露された事実は支配者層のシリアに関する筋書きの中に隠されており、読者の皆さんはこの7分だけの短い動画を見て、あるいは、こちらのもっと詳細な動画を見て、ご自分の理解を深めることが可能だ。

「リークされたOPCWの手紙について非常にニュース性の高い新事実を報じようとした私の試みがニューズウィークによって没にされた後、私は、昨日、ニューズウィークから退社した」とジャーナリストのタレク・ハッダードが本日ツイッター報告した。

「米国政府にとっては不都合となる情報が排除されることになった他の案件に関する証拠に加えて、私は、それらの情報が真実であったにもかかわらず、彼らがどのようにして私の記事を没にしたのかについての証拠を収集した」と、ハッダードは言う。「私は近い内にこれらの詳細情報を公開する積りだ。しかしながら、これはジャーナリストとしての慣習であるのだが、私は編集者にコメントを求めた。編集者からは私の契約書に記載されているように機密の保持を遵守せよという電子メールを受け取った。つまり、そうしなければ告訴するとの脅しを受けた。」

ハッダードはさらにこう付け加えた目下、彼は弁護士の支援を求め、内部告発に対する支援の可能性を模索しており、少なくとも自分が持っている情報は公開する積りであると言った。しかしながら、そうする場合、以前の雇用者によって自分が反撃に曝されることにつながるような情報は伏せざるを得ないとも言った。

「私は沈黙をし、自分の働き場所を確保することは可能であったが、自分の良心に傷をつけずにそうすることはできなかった」とハッダードは言った。「私にとっては、当面、不安定な状況が続くけれども、真実はもっともっと大事なんだ。」 

これは先日私が書いたOPCWのスキャンダルに関しては沈黙しようと決め込んでいる大手メディアの共謀論に関して内部から直接伝えたものとしては初めての報告であった。他のメディア企業の編集室では、告訴といった法的な脅かしも含めて、勇気もなく、退社するだけの器量もなく、公表することもできない従業員を相手にしていったいどれだけ多くの企業がこれとまったく同様な抑圧を加えているのであろうか? ハッダードが編集者から受けた抑圧は唯一の事例であると論理的に言い切れる理由は何もない。つまり、彼が編集者からの圧力を受け、そのことを暴露したのは彼だけに留まるとはとても言い切れないのである。

ニューズウィーク誌は長い間米国を中心とする大帝国の番犬を務め、そのために闘う闘犬でもあった。一例を挙げれば、こんな具合だ。同社の編集者は、この記事も含めて、実際には現職の軍事諜報オフィサーによって書かれた記事の出版を許した。その記事は米国政府がジュリアン・アサンジを訴追したことはいいことであると説明し、丹念に化粧を施したホワイトヘルメットに関する記事タルシ・ガッバードを中傷する卑劣な記事を褒めたたえてさえもいる。このメディア企業は、時には、反政府的な記事を掲載することもある。一例を挙げると、イアン・ウィルキーの記事で支配層が抱くシリアの筋書きを問いした記事であるのだが、その後すぐにも方向転換をして、エリオット・ヒギンスによるウィルキーの記事に対する攻撃を掲載した。ヒギンスは以前はアトランチック・カウンセルのフェローであり、彼はNED(米国民主主義基金)が資金を提供し、帝国の筋書きをあれこれと運営する企業である「べリングキャット」の共同設立者でもある。また、ニューズウィークは最近OPCWのスキャンダルを放映したタッカー・カールセンを攻撃する記事を出版し、奇しくも、その批判は私がその出版後に直ちに間違いを指摘した例のべリングキャットからのでっち上げ記事に基づいていたのである。

情報を流さないことによるフェークニュースの存在は至る所で見られるプロパガンダの戦術ではあるが、この戦術は一般大衆の世界観を大きく歪曲してしまう。その影響は連日でっち上げの記事を流し続けるのと同じ程度に甚大である。ただし、でっち上げ記事が出版された場合、彼らが嘘の記事を流したという事実を指摘することは遥かに容易であって、彼らの責任を追及し、彼らの信用を失墜させることは可能だ。

アラン・マックライドによるFAIRに掲載された最近の記事は、(香港での)デモ参加者の間には警備陣の暴力による死者は一人も出てはいないにもかかわらず、また、そればかりではなく、帝国に歩調を合わせている国々、たとえば、ハイチやチリ、エクアドルでは大規模なデモ集団が酷い暴力に曝されているにもかかわらず、如何にして香港のデモだけがメディアの前面へ押し出され、大手メディアの意識のど真ん中に据えられたのかをまざまざと描写している。これらの国々で起こったデモはそのメディア企業によってほとんど完全に無視されたのである。この徹底した情報の無視は大手メディアのニュースだけを聴取する一般大衆の世界観を歪め、一般大衆は反政府デモは米国を中心とした権力同盟の圏外にある国々においてのみ起こっているのだと勘違いする始末だ。ドナルド・トランプは「ロシアに優しい」という筋書きをマスメディアが後押しその一方では、それとはまったく別の方向を示す証拠が山のように存在するにもかかわらず、彼らはそういった情報に関しては沈黙し続ける姿が観察される。われわれはこれとまったく同種で、情報の無視によって一般大衆の世界観を徹底して歪曲させようとする態度を、今、目にしているのだ。

今は誰もがOPCWのスキャンダルについてドラムを鳴らす時である。なぜならば、さまざまな兆候が指し示すところによれば、リークの大洪水によって引き起こされたこの組織の出血は大きくなるばかりである。ところが、大手メディアにおけるプロパガンダの専門家らはそのことは報じようとしない。したがって、もしもより大きな代替メディアが大手メディアと一緒に見られ、その信用が失墜してしまうことは何としてでも避けたいと思うならば、このことについて今議論を始めることが肝要だ。沈黙を守ろうとするメディアはどの企業にとってもますます居心地が悪くなって行くであろう。一方、本件について発言をする企業の存在価値はますます高まって行く。

著者のプロフィール: ケイトリンの記事は全面的に読者の皆さんからの支援に依存しています。もしもこの記事にご興味を感じたならば、周囲の方々とこの記事をシェアーしていただきたい。フェースブック上では彼女に「いいね」のクリックをし、ツイッターで彼女の行動を追跡し、ポッドキャストを確認し、パトレオンまたはペイパルで彼女の帽子にいくらかのお金を投げ入れていただきたい。あるいは、彼女の書籍(Woke: A Field Guide for Utopia Preppers)を購入していただきたい。(https://caitlinjohnstone.com

注: この記事に記述されている見解は全面的に著者のものであって、必ずしもInformation Clearing Houseの意見を反映するものではありません。

<引用終了>

これで全文の仮訳が終了した。

この引用記事の本命はOPCWのお偉方と実際にシリアのドーマで調査を行った技術スタッフとの間で行われた真理を巡る闘いである。この内部抗争は内部告発によって公にされた。OPCWの指導層にとっては非常に不都合なスキャンダルとなった。

OPCWのスキャンダルを報告しようとしたニューズウィークの記者も編集者から圧力をかけられ、彼が書いた記事は没となった。不幸なことには、商業メディアの現場ではジャーナリズムの神髄を無視してまでも政府の意向に従おうとする場面が方々で観察される。

「戦争においては真実が最初の犠牲者となる」と言われる。まさに、今、それが繰り返されているのだ。

このような構図はシリア紛争が報道され始めた当初から8年間にもわたって観察されてきたことである。しかしながら、われわれ一般庶民がシリア紛争の実情や深層を具体的に理解し始めたのはそれほど古い訳ではなく、比較的最近の事だ。

ところで、OPCWでいったい何が起こったのかに関しては今年の523日に掲載したリークされた化学兵器禁止機関の内部メモによる ... - 芳ちゃんのブログyocchan31.blogspot.com/2019/05/blog-post_23.htmlをご参照ください。



参照:

1No attack, no victims, no chem weapons: Douma witnesses speak at OPCW briefing at The Hague (VIDEO)By RT, Apr/26/2018, https://on.rt.com/9448

2 Journalist: Newsweek Suppressed OPCW Scandal And Threatened Me With Legal Action: By Caitlin Johnstone, Information Clearing House, Dec/09/2019










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