2023年4月26日水曜日

イラン - 単独覇権の世界は死んだ、米国はもはや超大国ではない

 

フランスに次いでドイツもまた中国に対する敵対関係を解消しようとしているとの最近のニュースに皆さんはお気付きであろうか?つまり、両国は米国の一方的な中国に対する敵視政策に同調することを止め、独自の政策に戻ろうとの意欲を表明したようだ。フランスのマクロン大統領やドイツのベアボック外相の最近の言動がこの新しい動きを示している。言うまでもなく、ヨーロッパ諸国にとっては貿易相手国としての中国の存在は極めて大きい。そういった観点では日本もまったく同様である。西側による対ロ経済政策が推進されている中で、日本政府はサハリン2プロジェクトからは撤退しないと繰り返して述べている。広島におけるG7会議を控えているこの時期、西側諸国では米国と他の国々との間に分断が表面化してきたということであろうか?

また、米国の単独覇権を支えて来た米ドルの低迷はますます進行している。国際貿易の決済通貨として世界的に用いられてきた米ドルは今やその決定的な優位性を失いつつある。産油国大手のサウジアラビアは原油輸出の代金として米ドルではなく、輸入国の通貨を受け取ると公式に表明した。まず、サウジ原油の輸入大国の筆頭である中国はサウジとの間でユアンで決済することを両国は決めたのである。ロシア、サウジ、イランといった主要な産油国はドル決済から当事国の通貨による決済に移行し、数多くの非米諸国がこれに続いている。こうして、非米諸国は多くが今やBRICSや上海協力機構へと傾いている。

西側の専門家らと同様、ロシアの大富豪のひとりであるオレグ・デリパスカも米ドルは5年後には国際決済通貨の地位から外れるであろうと予測している。

ここに「イラン - 単独覇権の世界は死んだ、米国はもはや超大国ではない」と題された最近の記事がある(注1)。裏付けは取れないが、米国やイスラエルの覇権に立ち向かおうとしているイランのこの記事は日本の大手メディアでは報じられてはいないのではないかと思う。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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 Photo-1: イラン外務省のナセル・カナニ報道官 

イラン外務省の報道官は、新しい勢力が台頭するにつれて一極世界秩序は存在しなくなったと述べ、米国政府は勢力圏の縮小と権力の枯渇に直面していると強調した。

「一極世界はもはや存在せず、米国はもはや超大国として認識されてはいない。もちろん、同国は依然として大国であると見なすことはできる。しかし、実際には超大国としてではない」とナセル・カナニは、月曜日(417日)、テヘランで毎週行われる記者会見で記者団に語った。

「我がイスラム共和国の能力や地域レベルと国際レベルの両方での勢力均衡の変化に照らして、イラン政権はイラン国家の国益を確保し、共通の利益に向けた極めて包括的なアプローチとして地域の収束を促進し、地域紛争のエスカレーションを緩和するためにそのような可能性をすべて解き放とうとしてきた」と彼は述べた。

イランは外交政策を特定の地理的地域や特定の政治ブロックに限定しないことを何度も繰り返してきたと彼はさらに述べた。

「私たちは、相互尊重、互恵主義、共通の利益に基づいたアプローチを採用することを厭わない国々のすべてと友好関係を築き、その関係を強化し続ける。」

 

Photo-2: イラン曰く、米国の軍事行動は同国の世界的な大国としての地位の衰退を隠蔽するためだ

この地域全域で米国がとっている軍事的な動きは衰退しつつある世界的強国の実態を隠すことを目的としているとイランは言う。

「イランはIAEAとの前向きな協力が続くことを望んでいる」:

他の領域での発言として、イランはイスラム共和国と国際原子力機関(IAEA)の間の技術協力関係が継続され、同国の核計画における未解決の問題が解決されることを望んでいるともカナニは述べている。

イランのトップの外交官は、IAEAのラファエル・グロッシ事務局長が3月にテヘランを訪問し、その結果、技術代表団が交換された。国際原子力機関の代表者がイランを訪問し、双方の間で合意された枠組みの中で技術協議が行われ、公式に宣言されたと強調した。


Photo-3: イランとIAEAが協力関係を高め、未解決の問題を解決することで同意

イランとIAEAは協力関係を強化するための措置をとることで合意。

「協議は合意に従って進行中である。これは技術的な道筋だ。技術的な道筋が政治的な問題や立場に影を落とさず、イランとIAEAの間の協力プロセスが維持され、未解決の技術的問題の解決に向けた前向きな措置が取られることを希望する。」

イスラエルは地域諸国間の不和を助長しようとしている ― カナニの言:

イランと隣国アゼルバイジャンとの外交関係に触れて、イスラエル政権は2つのイスラム教徒の隣国間の関係にとっては執拗な敵であり、自分たちの利益を享受するために不和を助長しようとしているとカナニが述べた。


アゼルバイジャン政府はイランイスラム共和国との外交関係の重要性を強調し、テヘランはバクーにとっては「重要な隣国」であると言った。

「シオニスト政権のいわゆる国家安全保障と生存のための戦略は西アジア地域やイスラム世界全体において不安定さや不安を生み出し、扇動することに固執していることから、彼らの悪事はテヘランとバクーの関係のみに向けられているわけではない。」

「イランは善隣の原則を非常に重視しており、相互尊重と共通の利益に基づく友好関係に特に重点を置いている」と彼は述べた。


プレステレビのウェブサイトには次の代替アドレスからもアクセスが可能:

www.presstv.ir

www.presstv.co.uk

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これで全文の仮訳が終了した。

2015年から始まったイエメンの内戦を通じて敵対関係にあったイランとサウジアラビアの外交関係を中国が再開させたことから、中東地域はイスラム教の宗派に基づいた分裂から脱却し、新たな協調関係へと動き始めた感じがする。両国の国交再開が合意されたとの発表は310日のことだった。今回の引用記事はその後の出来事が地球規模のもっと大きな趨勢を具体的に示唆している好例だと思う。つまり、単独覇権の世界から多極化世界への移行を、今、われわれは実際に目にしているような思いがするのである。

このプロセスがさらに進行することはほぼ間違いない。しかしながら、それに伴ってわれわれ一般庶民はどのような影響を被るのかについて具体的に線を引くことは必ずしも容易い事ではなさそうだ。恐らく、われわれ一般庶民のほとんどは何らかの変化が起こった後でさえもかなりの時間が経って初めてそのことを実感し始めるのではないだろうか。まさに、それはかって大英帝国が崩壊した際に英国の一般庶民がそういった状況にあったことが今回も再現されるのかも知れない。あるいは、インターネットによる情報社会の深化によって、まったく違った経路を辿る可能性も大きい。

参照:

注1:Iran: Unipolar world is dead; US no longer known as superpower: By PRESSTV, Apr/17/2023

 



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