2021年5月8日土曜日

チェコの弾薬庫の爆発にロシアが関与していたというストーリーは米英の心理戦を打ちのめした ー 米専門家の弁

 

米ロ間の新冷戦はさまざまな情報戦争、心理戦争、あるいは、局地的な武力紛争を次々と引き起こしている。識者に言わせると、それらは旧ソ連邦の崩壊によって約30年前にNATOがその存在理由を失ったという現実が引き金となっている。この過程を眺めてみると、米国および西側諸国、主として米英はロシアを敵国として祭り上げることによってNATOの存在理由を誇示するために、ロシアを悪魔視し、プーチンの国内政策や出来事に関して悪口を言って、ロシア国内の世論を分断しようとしている。そういった場面は、実は、頻繁に観察される。トランプ前大統領は4年間の任期中ロシアの支援を受けて民主党候補のクリントンを破ったとしてさまざまな悪口や執拗な中傷、フェークニュース、等々に見舞われた。これも新冷戦絡みのロシア憎しという台本から演出されたひとつの大きな場面であったと言える。

まず、米ロ新冷戦において対ロ心理戦のために米英側が都合よく取り挙げたり、プロパガンダのために引き起こしたりした主な出来事を挙げてみよう。

ー 女性ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤの殺害(2006年):彼女は第二次チェチェン紛争やプーチンに反対し、批判していたことで知られる。自宅アパートのエレベータ内で射殺体で発見された。2011年、モスクワ警察の元警視、ドミトリー・パブリュチェンコフが拘束された。彼は何者かから金を貰い、部下にポリトコフスカヤを殺害させたとして2012年に懲役11年の判決を受けた。実行犯の二人は終身刑、他の3人は懲役12年から20年の刑を受けた。しかし、パブリュチェンコフに金を渡した人物は特定されてはいない。十分な調査はまだ行われてはいないとの指摘がある所以である。この事件は西側のメディアではロシア政府を中傷する典型的な材料として頻繁に登場する。

ー 元スパイのアレクサンドル・リトビネンコの毒殺(2006年):KGBFSBの職員であったが、後に英国へ亡命し(2000年)、ロシアに対する反体制活動家となり、作家として活動。ロシア諜報機関員によって毒殺された。英国側はリトビネンコは毒殺されたとし、ロシア政府はこれを否定。両国の主張は並行状態が続いている。英内務省の公開調査委員会は20161月に調査結果を報告し、プーチン大統領が「恐らく」毒殺を承認したとしている。この事件も西側のメディアではロシア政府を中傷する典型的な材料として頻繁に登場する。

ー マレーシア航空MH17便のウクライナ上空での撃墜事件(2014年):これはアムステルダムからクアラルンプールへ向かう旅客機で、乗客の283人と乗員の15人全員が死亡するという痛ましい事件となった。オランダ政府の安全委員会が主導する国際事故調査員会が設定され、事故の調査を行い、報告書を提出した。それによると、MH17便はロシアからウクライナへ運び込まれたブクミサイルによって撃墜された。撃墜後、その部隊はウクライナからロシアへ帰った。しかしながら、国際事故調査委員会が公開したブクミサイルの残骸から取得されたふたつの部品の製造番号をロシア側が調査を行い、それらの部品番号を追跡した結果、それらの部品は「8868720 の製造番号を持つブクミサイルの製造に供されていたことが分かった。この製造番号を持つブクミサイルは1986年にロシアからウクライナの西部の部隊(223rd Anti-Aircraft Artillery regiment at Stryi, Lviv oblast. Buk-M1)へ納入されたものであることが判明。ウクライナの223対空防衛部隊は、20146月、ウクライナ東部の反政府武装勢力を掃討しようとしていたキエフ政府軍の軍事行動の一翼を担っていた。らには、ロシア側は新型のブクミサイルへの更新を行っており、そのような古い型式のミサイルはロシアではすでに使用されてはいない。また、ウクライナ東部の反政府武装勢力がウクライナ軍の基地からブクミサイルを盗み出したのではないかという疑惑に関しては、ウクライナ政府の高官がそのような出来事は起こらなかったと公に述べている事実をロシア側が指摘している。

ー 反プーチンの指導者ボリス・ネムツフの暗殺(2015年):ネムツフは真夜中、近く結婚する女性とモスクワ市内の橋の上を歩いているところを射殺された。女性は無傷であった。犯人と思われる人物は車で逃走。20177月、チェチェン共和国ではネムツオフを襲撃した主犯のザウル・ダダイエフが20年の刑を宣告され、他の従犯者らも11年から19年の刑を受けた。なお、チェチェン共和国の大統領を務めるラムザン・カディロフは熱烈なプーチンの信奉者である。カディロフの単独の決定であったのか(つま、プーチンからの要請はなかったのか)、ダダイエフの個人的な犯行であったのかという疑問は解明されないまま残されている。

ー 英国のソールズベリーでのスクリッパル父娘殺害未遂事件(20183月):元二重スパイのスクリッパル氏と娘のユリアさんはソールズべり―の公園のベンチで意識不明となっているところを発見された。第一発見者はたまたまそこを通りかっかった英陸軍の看護師長であって、彼女に救助され、病院で手当てを受けた。二人とも昏睡状態から生還した。当時のメイ英国首相は、この事件は「かなりの確立で」ロシアの仕業であると断じた。「ノビチョク」と称される軍用の神経剤が用いられたという。因みに、その後の政治の舞台では証拠を挙げずに「かなりの確立で」という言い回しをすることが流行っている。二人は退院したと報じられたが、スクリッパル父娘の動向はその後絶えていた。しかしながら、事件の2年後、二人は別名を名乗ってニュージーランドへ移住した(させられた)そうである。そして、スクリッパル氏が住んでいた住宅は手入れを施した後に競売に付されることになった。英国当局は毒殺未遂の容疑者としてロシア人二人を特定した。アナトリー・チェピガとアレクサンダー・ミーシキン。英国政府がロシア政府に二人の身柄を引き渡すよう要求するも、ロシア憲法によって如何なるロシア市民も外国へ引き渡すことはできないとして、ロシア政府は英国の要求を拒否した。ところで、この事件は英国の諜報機関であるMI6が仕組んだものであるとの指摘があるが、そうだとすると見事な失敗である。

ー プーチンの政敵、ナヴァリヌイ毒殺未遂事件(20208月):2020820日、反プーチンの指導者であるナヴァリヌイはトムスクからモスクワへ向かう航空機の中で容体が悪化し、航空機はオムスクへ緊急着陸し、彼は病院へ運び込まれた。昏睡状態にされて人工呼吸器に繋がれた。そして、容体は安定した。二日後、ベルリンへ移送。OPCWの認証を受けているラボの分析によって、ナヴァリヌイには軍用の神経剤「ノビチョク」が使用された痕跡が認められた。今まで知られてはいない新型の「ノビチョク」だという。当初、オムスクの病院の医師は彼の体には有毒物質は認められず、彼の容体が急変した理由は血糖値が下がったことが原因であろうと指摘した。ナヴァリヌイのチームは彼がトムスク空港で飲んだ紅茶に有毒物質が投入されていたと主張。ナヴァりヌイは当日紅茶以外には何も食べたり、飲んだりはしていなかったという。その後、ベルリンへの移送後は事態は急速に政治的解釈へと急旋回して行った。ナヴァリヌイのチームの主張は彼が泊まったホテルの部屋で見つかったペットボトル入りの飲料水が毒物で汚染されていたという主張に変わった。米国は、20203月、ロシア連邦保安庁(FSB)の7人の高官に対する制裁を発表した。これはバイデン政権の発足後のロシアに対して発せられた初の挑戦となった。EUもこれに同調。

前置きが長くなったが、私としては米ロ間の新冷戦によってさまざまな出来事や紛争が起こっている現状を改めて俯瞰してみたかった。これら以外にもたくさんの事件が存在することは言うまでもない。この世の中に新冷戦という状況がまったく無かったとしたら、少なくとも、これらの事件はこんなに深刻な状況に発展したり、無残な結末を引き起こしたりすことはなかったであろう。MH17便の撃墜によって死亡した298人の犠牲者のことを考えると、新冷戦という国際政治ゲームが如何に残酷なものであるか、そして、如何に非人道的なものであるかが分かる。

ここに、「チェコの弾薬庫の爆発にロシアが関与していたというストーリーは米英の心理戦を打ちのめした ー 米専門家の弁」と題された記事がある(注1)。西側のメディアが大騒ぎを始めたもうひとつの愚行(!?!)についても詳しく学んでおきたいと思う。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しよう。

***

ヴルビェティツェで起こった弾薬庫の爆発事件から6年後、チェコ当局は、突然、その実行犯としてモスクワを名指しした。同国の安全保障部門はロシアの関与についてはまったく何の証拠も掴んではいなかったにもかかわらずそうしたのである。突然気が変わり、筋書きが変わった理由はいったい何なのだろうか?このロシアとチェコとの間の紛争ではいったい誰が得をするのだろうか?

2014年に起こったヴルビェティツェでの爆発事件の背景にある要因についてはチェコ政府の要人の見解は割れている。つまり、429日にNovinky.cz に対して述べているように、マリー・べネソヴァ司法相はこの事件に関してはいくつかの見方があり、彼女の見解はミロシュ・ゼマン大統領の見方に非常に近いと言っている。

まず、ゼマン大統領はアンドレイ・バビシュ首相がこの爆発事件の背景にはロシアのシークレット・サービスが存在すると言ったことに対して疑義を挟んだ。先週の日曜日、ゼマン大統領はテレビ演説でチェコ共和国の安全保障情報サービス部門は、過去6年間、ヴルビェティツェ事件へのロシアの関与については何の報告もしたことはないと強調したのである。

6年後にヴルビェティツェ事件が突如浮上:

「チェコ警察は過去の6年間に及ぶ調査の結果、民間企業のImex Groupによる無鉄砲なまでの危険な行為によるものであったと断定した。同企業はいかがわしいブルガリア人の武器業者が所有する弾薬を安全とは言えない状態で保管をしていた」と、米国の元軍人で国際関係や安全保障の分析専門家であるマーク・スレボダが述べている。

この分析専門家によると、弾薬庫の爆発はロシアの工作員のせいだとして、突如、ロシアの批判を開始したバビシュ首相はかっては弾薬を貯蔵していた企業のImex Group を批判していたものだ。爆発が起こった後、当時財務相を務めていたバビシュは公営放送局のチェコテレビ(CT)でImexは、禁輸品であるにもかかわらず、議論の多いコンゴへの武器輸出を行ったことやブルガリアへ弾薬を売り、そこでも爆発を引き起こしたことで窮地に陥っていると述べた。

Imex Groupはバビシュ首相が調査情報を開示し、情報を歪曲したと主張し、その結果、同社の評判が損なわれたとしてチェコ政府を相手に訴訟を起した。だが、これは無駄に終わった。

その一方で、弾薬庫の状態は極めていい加減なものであり、危険な状態にあることを示していたとスレボダは指摘している。

「ヴルビェティツェの弾薬庫についてはチェコの専門家による調査が実施され、第一次および第二次世界大戦当時の弾薬が保管されていることが発見された。また、現場の周囲に施されている防護柵には木材の伐採によって生じた穴があって、弾薬庫からの盗難が起こった」と彼は言う。「弾薬庫に出入りする人たちをチェックする警備態勢や書類確認は無かったようだ。」 この弾薬庫の安全性が低い状況や弾薬庫をリースしている会社を巡ってはさまざまな議論が起こっている中、最大の問題はチェコ政府が弾薬庫の爆発について今になっていったいどうしてロシア人の諜報部門を非難することにしたのかという点にあると述べ、スレボダは疑問視している。

べリングキャットやザ・インサイダーおよびRFEが炎を煽っている:

英国のジャーナリストであるエドワード・ルーカスは彼が書いたCEPAThe Center for European Policy Analysis)のオプ・エドの中でこの難題を解く手がかりを明快に提供している。つまり、「同盟国の諜報サービス(ほとんどの場合、米国と英国だけ)が介入する時には何事でも起こり得る」と彼は書いている。「今回もまさにその通りだ。」 彼が言うところによれば、ペトロフとボシロフがあの爆発に関与していたと「誰かがチェコ当局へほのめかしたのだ。」

特に、スレボダによれば、バビシュ首相は「インテグリティ・イニシアティブ」 [訳注:英国のディープ・ステーツのひとつの組織であって、Institute for Statecraftによって運営されている。この組織はロシアに対する新冷戦に従事しているとして知られている] と称される英国の国を挙げてのプロパガンダ作戦の一部を担っていると疑われていることから見ると、ルーカスのこの想定はどうやら的中しているようである。

リングキャットは、最近、英外務連邦省(FCO)の支援を受けてアノニマスのハッカーを使ってロシアを貶める作戦の一翼を担っていることが発覚したが、ここでもまた一枚加わっている。420日、ザ・インサイダーと共にべリングキャットは、ペトロフとボシロフを含むロシアからのスパイ・グループがモラヴィア北部で大きな弾薬庫の爆発が起こった頃偽名を使ってチェコ国内に居たことを突き止めたと主張した。

セルゲイ・スクリッパルを毒殺することに失敗した英国によって起訴されているこれら二人のロシアの「ならず者」、つまり、ペトロフとボシロフが「カムバック」したわけであるが、彼らの主張は極めて滑稽であり、まるで古いマンガの「ロッキーとブルウィンクル」に現れるボリスとナターシャのことを思い起させるとスレボダは揶揄している。しかし、それだけには終わらない。

「彼らは今このドタバタ喜劇の二人組のロシア人を非難しようとしている。チェコにおける弾薬庫の爆発だけではなく、後に起こったブルガリアでの爆発に関してもだ [訳注:他の情報を見ると、ブルガリアでは2011年に1回、2015年に2回、さらに、2020年にも1回起こった]。そして、ブルガリア人武器商人 [訳注:名前はエミリアン・ゲブレフ] の毒殺未遂事件が起こった」と安全保障の分析専門家は述べている。「西側のメディアならびに諜報当局はこれら二人を大馬鹿者のスーパーマンと形容しようとしている。彼らは必要とされる技量が多岐にわたるさまざまな仕事、つまり、いくつかの毒殺未遂事件から始まって民間弾薬庫の爆発に至るまでの数多くの仕事を世界中で遂行するよう、恐らく、ロシア政府によって要請されたのだ。そして、彼らはそこいら中でヘマを仕出かしている。」

しかしながら、これこれのロシア人が中欧の何処かの国に居たとする説明は弾薬庫の爆発を引き起こす役目を担っていたことを必ずしも実証するものではない。ましてや、クレムリンやロシアの諜報当局がこの事件に関与していたことを実証するものではないとスレボダは言う。

加えるに、ロシア人には弾薬庫を爆破するという明確な動機がない。モスクワがこの事件に関与したという理由をあれこれと説明した後、べリングキャットの仮説は今やこんなことを言っている。「ロシアはソ連邦時代の弾薬が何時の日にか、恐らくは、ウクライナへ輸出されることを恐れて、先手を打ったのだ」と、米国の軍事専門家が述べている。けれども、彼は「だが、これは起こりそうにもない筋書きだ」と付け加えた。[訳注:ウクライナ内戦との絡みで見ると、ここで議論されている弾薬とは120ミリ砲や152ミリ砲に使用される砲弾である。ウクライナ軍は旧ソ連邦時代の大砲を使用している。これらの大砲に使われる砲弾はどこからでも入手可能というわけではなく、供給できる業者は限られている。そういう意味ではべリングキャットの仮説は興味深いとも言える。]

その一方で、422日、米国政府から資金が提供されている「ラジオ・フリー・ヨーロッパ」(RFE)局はロシアの諜報当局(GRU)と2015年のブルガリアにおける爆発事件との関係を見い出したと報じた。

安全保障分析専門家によれば、いくつかのメディア組織が「ロシアがやった」というストーリーを国際社会に向かって報じたことは米英の諜報部門が背景に居て、チェコ政府や諜報サービス部門をその話に乗せたことを示すものであって、それ以外の何物でもない。

チェコ・ロシア間の騒ぎではいったい誰が得をするのか?

スレボダは「CIAMI6が引き起こしたと推測されるこの心理戦」で意図された目標は下記に示す事項であろうと言う:

 第一に、ロシアを悪魔視することをさらに押し進め、そうすることによって東欧諸国に対するロシアの影響力や関係を低下させる。

 二番目には、一番目の項目から由来することではあるが、ヨーロッパを政治的にも経済的にもロシアからさらに引き離すこと。

チェコ共和国に関しては、次のような要素が明らかに絡んでいる:

 チェコのドコバニ原発の拡張工事に関する入札からロシアの国営企業であるロスアトムを追い出す。そうすることによって米国のウェスティングハウス社はコスト的には遥かに高価なものとなるにしても入札で最有力となり得る。

 チェコ政府によるロシア産の「スプートニクV」ワクチンの調達を中断させる。ワクチンの不足に見舞われながらも、チェコ政府はもはやロシア産のスプートニクVワクチンを購入する気はない。

と同時に、チェコの著名な政治家の間では緊張が高まっている。スレボダによると、ひとつには、このスキャンダルはアンドレイ・バビシュ首相や彼が新たに指名した反ロ的なヤクブ・クルハーネク外相、チェコのカウンター諜報部門SISの長官であるミカル・コウデルカ、チェコ内務相のヤン・ハマーチェク等によって推し進められているからである。

そして、反対側にはチェコ大統領のミロシュ・ゼマン、前大統領のヴァクルヴァヴ・クラウスやこれら二人を支持する他の政治家らが居る。

バビシュの首相としての地位は汚職調査や欧州委員会の監査によって窮地に陥った。億万長者であり農業・化学品の多国籍企業「Agrofert」の所有者であるこの人物にとっては彼が占める政治的地位とは利害が一致しない。それに加えて、チェコ首相はパンデミックの取扱いにおいては彼が見せた「混乱振り」が長い間批判されて来た。彼に対する信認の度合いが低下するにつれて、202110月の議会選挙におけるバビシュの勝算は決して高くはない。

その上に、バビシュ首相が率いる少数党の連携による政府は脆弱で、最近、「チェコ共産党」が脱退したことから、このことは不信任投票が起こり得ることを示唆している。彼の内閣は早めに、秋の選挙前にさえも、崩壊するかも知れないとスレボダは指摘している。

「もしもこういった事態が起こるとすれば、ゼマン大統領は政府を維持するためにも代行内閣を指名する権限を行使することになり、選挙が始まる前に彼の権力をさらに強化することとなろう」とこの安全保障分析専門家は言う。「ロシアに対する新たな批判が出たことでゼマン大統領をより防御的にさせ、彼の政治的地位を弱めたことからも、チェコ議会の反対派はバビシュ政権の崩壊をもたらし、ゼマンに忠実な代行内閣を現出させることになるかも知れない不信任投票を行うことは、恐らく、差し控えるであろう。このように、これらのロシアに対する新たな批判はそういった政治的シナリオが展開することを阻止する効果がある。」

***

これで全文の仮訳が終了した。

この記事はまたもや「ロシアがやった!」という内容である。

この記事によると、チェコの国内政治のドタバタがチェコ・ロシア間の国際関係に飛び火したようだ。つまり、結局誰が得をするのかと言えば、国内政治の面では6年前の弾薬庫の爆発事件の容疑者としてロシア人スパイをでっち上げることによってバビシュ首相は今年秋の選挙でゼマン大統領派を出し抜こうとしているのだと読める。バビシュ首相が英国の「インテグリティ・イニシアティブ」と称されるプロジェクトでどのような役割を担っているのかがキーポイントとなりそうだが、その詳細情報には素人の手は届かない。洋の東西を問わず、政治家にとっては選挙対策が最大の関心事であって、そこには決まったルールはなく、何でも起こり得る。

経済面では誰が得をするのかと言うと、ロシアを貶めることがうまく行けばチェコにおける原発の拡張工事の入札ではウェスチングハウス社が入札を勝ち取る勝算が増す。そして、チェコ政府による新型コロナ用のワクチンの調達では西側のワクチンの競争相手となるロシア産ワクチンを蹴落とすことができるだろうと言う。金儲けのためのロビー活動が行われていた模様だ。

ところで、この事件でも英国のべリングキャットが登場して来る。この組織は民間の調査報道ウェブサイトであるが、その資金源は英国政府と繋がっていると言われている。べリングキャットはマレーシア航空のMH17便撃墜事件やスクリッパル父娘毒殺未遂事件でも登場して来ることは読者の皆さんのご記憶にもあるだろうと思う。

どちらが正で、どちらが邪であるかを見分けることは私ら素人にとってはそう簡単ではない。しかしながら、個々の事件に関する判断は当面避けて、過去のさまざまな事例を辿ってみると、ひとつの典型的なパターンが浮き上がって来る。一言で言えば、「ロシアがやった!」という言葉に象徴される。つまり、その言葉には新冷戦を推進する西側のエリートたちの考え方が色濃く反映されている。この記事の著者が記述している「同盟国の諜報サービス(ほとんどの場合、米国と英国だけ)が介入する時には何事でも起こり得る」という見方は言い得て妙である。

個々の事件の真相は依然として闇の中に置き去りにされているが、私は冒頭にいくつかの事例を列挙することによってこういった典型的なパターンを示してみたかった。見えて来るのはひどく荒廃した風景である。

今後もチェコにおける秋の総選挙に向けて紆余曲折があるものと思われるが、真相に少しでも近づけるような新たな情報を期待したいものだ。

参照:

1Story of Russia's Alleged Role in Czech Arms Depot Blast Smacks of UK-US Psyop, US Vet Says: By Ekaterina Blinova, May/02/2021, https://sptnkne.ws/GfBe





5 件のコメント:

  1.  チェコの総選挙や動向に関する記事を有難うございました。チェコにはゼマン大統領という,小生からみると立派な方がいると認識していたのですが,最近ロシア外交官を18人追放したという記事をみて可笑しいなと思っていたところです。お返しにロシアは20人のチェコ人外交官を追放したという記事も現れ,何かが起きているなと推測はしていましたが,現首相らが悪漢だとは知りませんでした。
     かつてゼマン大統領は,シリア難民の青年に「銃をとれ。」と訴えました。祖国を護らずして難民となる姿にゼマン大統領は我慢できなかったのかもしれません。哲学的な非戦論者もいるでしょうが,とことん考えて非戦論者になった青年よりも戦火を逃れたい一心の青年が多い状況があったのだと思います。
     もちろんCIAやMI6のプロパガンダによりシリア政府は悪者にされてきましたが,世論調査では現政府支持派が圧倒的多数なのでシリアの青年もみるべきほどのことは見ているものと推測します。
     次に「典型的なパターン」についてですが,米英は政権転覆を謀るとき,あるいは悪事を謀るとき、初めに(1)NGOなどを使って反政府運動を起こさせます。資金も提供します(2)デモを全国各地に広げます。と同時に(3)反政府指導者を一人または複数祭り上げます。(4)どこかで大きな事件を起こし,露中の仕業とします。(5)デモを繰り返す中で傭兵を使って破壊活動を推進します。そうして(6)結末を迎えます。
     例えば香港では黄之鋒氏。ベネスエラではクワイド氏。ロシアではナヴァリヌイ氏など米英のやり口は同じです。なお英国の場合は「毒」が鍵となります。
     小生の仮説は当てになりませんが,この記事の作者のように事件一つ一つを大きく取り上げるのではなく,どういうパターンが現れるかに注目するのが事件を見る眼を養うことができると思います。故・加藤周一は1999年成立の日米新ガイドラインに注目し,これ以降,戦争をできにくさせる法律は1本も成立しなかったと述べています。加藤は2008年に亡くなりましたが,集団的自衛権を認める安保関連法案をみることなくあの世に立たれたのは幸せであったのかもしれません。
     すなわち,現在,デモクラシー・タイムズという日本的知識人が映像(YouTube)を流して4年たちますが,出演者の多くは左翼に属する知識人で,一つの事件をいろいろな角度から議論して我々に提供してくれます。それはそれで有難いのですが細かな議論に陥って「ひとつの典型的なパターン」を示しません。おそらく左翼的知識人の限界だと思われます。

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    1. 箒側兵庫助様

      コメントをお寄せいただき有難うございます。
      私もチェコのゼマン大統領はEU内でさまざまな加盟国がロシアを過度に敵視する英米路線に傾く潮流の中にありながらも結構バランスがとれている政治家で他を抜きんでているなと感じています。今秋のチェコの総選挙では彼の陣営がバビシュ首相の陣営に対抗して何処まで勢力を拡大することが出来るのかに注目したいと思っています。「絶えられない存在の軽さ」を書いたチェコ人亡命作家ミラン・クンデラの祖国は今までヨーロッパの中では輝いて見えていましたが、あれはこの小説を通して見ていただけだったという気がします。つまり、チェコのことについては、地球の反対側にあることから、チェコ国内の政治の動きなどは私は何も分かってはいなかったのだと、今回の報道をきっかけにして改めて感じました。
      デモクラシー・タイムズの件、有難うございます。今、ネットで調べてみました。その中に古賀茂明と佐高信の対談「官僚と国家」という最近の動画に目が止まりました。これからこの動画を観るところです。
      ところで、「ひとつの典型的なパターン」を見せてはくれず、細かな議論に陥ってしまう日本的知識人という箒側様の辛口の批判に私は全面的に賛成です。内外の政治を見ますと、特に米国の政治を見ますと、トランプ前政権の4年間、野党に下った米民主党はまさにこの細かい議論に陥ってしまいました。特に、民主党左派が大きな影響力を発揮していました。今のハリス副大統領を代表とする連中です。トランプの弱点や文言のひとつを取り上げて、トランプの全人格を否定すると言う議論上の戦術(政治的正しさという理念に乗っかった議論の進め方)を駆使し、結局、見事にトランプの再選を阻止してしまいました。民主党による不正選挙が暴かれながらも、米国の市民は多くが騙されてしまったのだと感じられました。今後大きな弊害または反動が表面化するのではないかと危惧しています。つまり、方向性としては米国の終焉が早まるのではないかという懸念です。
      今日もいい一日をお過ごし願いたいと思います。

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  2. 登録読者のИ.Симомураです。昨日のソビエト連邦大祖国戦争勝利の祝賀行進をお終いまで見ました。「鶴」が演奏されましたよ。この曲はやはり歌われるものなのでしょう。楽隊の演奏は調子も外れて悲しかった。国歌も「勝利の日」も微妙に旋律が変えられておりました。カリーニングラード市での演奏でも変えられており、こちらの方は喜劇的に聞こえました。飛行機事故で亡くなった前任者を引き継いだ新任指揮者が実験を試みたのでしょうか。映画「鶴」では、ヒロインの恋人の兵士が負傷した戦友を安全地帯にまで担架し横たえたとき、おそらくは流れ弾にあたって斃れ、白樺の聳える空を見上げて死ぬ有名な場面があります。ロシア映画にはいつも感動させられます。祝典のプーチン大統領の挨拶には怒りがこもっていました。ポーランド批判、チェコ批判が出るのではないかとさえ思わせました。そうそう、時間軸37:58で性格俳優のウラヂーミルマシュコフが黒マスクで映っていました。1997年のあの悲惨な時代で「こそ泥」(Вор)で高く評価された俳優です。ロシア人皆が「こそ泥」になりそうな時代でしたね。プーチンはロシアの本物のペレストロイカを成し遂げた男です。

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    1. シモムラさま
      コメントをお寄せいただき有難うございます。
      ロシアの戦勝記念日のパレードはロシアにとっては最大の行事ですよね。政治家や軍人および一般市民が肩を並べて祖国のために倒れた父親や兄弟姉妹、夫や妻、親族並びに知人を偲ぶ機会です。昨年はパレードを観ましたが、今年は観ずに終わってしまいました。ある識者がコメントしていましたが、この戦勝記念日の式典からはスターリンの影はすっかり薄れ、一般市民のための式典になっていると言っています。プーチンの演説にはスターリンの名前が言及されていたでしょうか?つまり、これは西側のメデイアが言い張るプーチンに対する悪口、何時までも冷戦時代の考え方をする連中からの中傷を封じる率直なコメントだと言えるのではないでしょうか。国民の大多数から信任を受けているプーチンはどう見ても大変な人物であり、彼と肩を並べ得る政治家は殆どいないように思います。
      「鶴」の歌は戦勝記念日にはなくてはならない歌でしょうね。ホロストフスキーが歌う「鶴」は圧巻です。映画の「鶴」は冒頭で若いカップルが通りで散水車の水でずぶ濡れになってしまうシーンが今も印象に残っています。あの日常性と主人公の兵士が派手な戦闘ではなく、流れ弾に当たって斃れてしまう場面のコントラストは実に秀逸です。
      結局のところ、全人類を何回でも殺戮できる程に大量の核兵器を抱えている核大国は核戦争を避けるための英知を発揮することを祈って止みません。失敗した時に米国人がよく口にする「Woops!」は許されません。これこそが本ブログの最終的な祈願です。

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