2016年6月9日木曜日

西側がコソボの前例を作ったことから、ウクライナ分離派の行動を合法化してしまった



米国の他国への軍事介入の歴史については、当ブログでも先に取り上げている。「法的帝国主義と国際法」と題した20121225日のブログでは、1890年から2011年までの121年間で146件の軍事介入があったという事実をご紹介した。

それらの成功事例に基づいて、米国のネオコン派の戦争計画者や政治家は今も気に入らない政権の排除には武力介入や「色の革命」を繰り返している。

ウクライナのマイダン革命(2014年)ではデモ参加者を教育し、動員する際に、エジプトで30年間もの長期政権を維持してきたホスニ・ムバラク大統領を退陣に追い込んだエジプト革命(2011年)の際に用いたパンフレットのひとつがウクライナ語に翻訳され、使用された。これはセルビアのベオグラードに本拠を置くNGOが提供したものだ。セルビアのNGOの名称はCANVASという。

このNGOは、それよりも何年も前(2000年)に、ユーゴスラビア連邦のスロボダン・ミロセヴィッチ大統領に反対する「色の革命」を演出し、初の成功を収めていた。その際、米国務省からは大量の資金援助を受けた。それ以降、このNGO組織は、見かけは「民主主義」を支える草の根運動的な組織として存在してはいたが、実際には米国のために「革命コンサルタント」の役割を果たすことに専従していたのである。セルビアに本拠を置いたNGOが実は米国政府の後押しを受け、さまざまな国で政権転覆の最前線の役割を担っているとは一体誰が想像できただろうか。(注: さらなる関連情報については、2014310日に掲載した「ウクライナでのNGO活動」を参照されたい。)

最近の政権交代のひとつにブラジルがある。ルセフ大統領を罷免するかどうかを決める弾劾裁判が行われることになった。これを受けて、同大統領は180日間の職務停止となった。それに代わって、テメル副大統領が代行業務を行うことになる。同国の経済運営ははかばかしくなく、最近は失業率が上昇して市民生活を圧迫していると報道されている。しかし、この政権交代は単なる政権交代ではなく、クーデターであったとも言われている。大統領代行となるテメル氏は米国寄りであると言われている [1]BRICsの一角であるブラジルが米国による政権転覆の対象となったということだろうか?明らかに、そういうシナリオはあり得ることだ。



そして、もうひとつの典型的な米国による他国への介入の手法は国連安保理の委任を受けずにNATOによって行われる軍事介入である。

これは完全に国際法に違反した行為である。米国が他国を非難する時には国際法の存在を言及するが、自分たちが行う軍事介入では、多くの場合、国際法はまったく無視してしまう。事例を挙げようとすると、長いリストとなる。これが米国が唱導する国際法の現実の姿である。

コソボ共和国の歴史を辿ってみよう。インターネットで入手できる外務省の纏めを拝借して、下記にその概要を列挙してみる(斜体で示す):

1314世紀: 中世セルビア王国及びセルビア正教会の中心地となった。多数のセルビア正教の教会や修道院が建立された

1389年: コソボの戦いでセルビアがオスマン・トルコに敗退。以後、イスラム教に改宗したアルバニア人がコソボに入植を開始した

1913年: バルカン戦争でトルコに勝利したセルビアがコソボを奪回。

1918年: ユーゴスラビア王国の一部となる。

1945年: ユーゴスラビア社会主義連邦共和国(6共和国で構成)が建国され。セルビア共和国の一部として「コソボ・メトヒヤ自治区」が設立された。1963年、「コソボ自治州」に改称。

1981年: コソボ自治州の共和国昇格を求めるアルバニア系住民による暴動が発生。ユーゴ政府は治安部隊の投入により暴動を抑える一方、コソボ向けの開発援助資金を増大してこれに対処。

1989年: アルバニア系住民とセルビア系住民の対立が深まる中、セルビアはコソボの自治権を大幅に縮小。

1990年: アルバニア系住民が「コソボ共和国」の樹立とセルビアからの独立を宣言。これに対し、セルビアは自治州議会及び政府の機能を停止し、直接統治を開始。アルバニア系住民は武装組織「コソボ解放軍」(KLA)を組織化し、武力闘争を開始。

1998年: セルビアがKLA掃討作戦を展開し、コソボの治安情勢と住民の人道状況が急速に悪化。OSCE(欧州安全保障協力機構)がコソボ検証ミッションを派遣。

19993月: 19992月、ランブイエ(仏)にて国際社会の仲介で和平交渉が開始されたが、セルビアがNATO軍のコソボ展開を受け入れず決裂。同年3 末、NATOはコソボにおける人道的危機が深まったとしてコソボを含むセルビア全域の軍事目標及び経済インフラに対し空爆による攻撃を開始。これに対し、セルビアがKLA掃討作戦を強化し、数十万のアルバニア系住民がコソボから流出し難民化(コソボ紛争)。

19996月: セルビア治安部隊のコソボ撤収によりNATO空爆終了。国連安保理決議1244号が採択され、国連(UNMIK)による暫定行政が開始され、ま た、NATO主体の国際安全保障部隊(KFOR)が展開。アルバニア系難民が帰還する一方、約26万人のセルビア人等非アルバニア系住民がコソボからセル ビアに避難。

以上がコソボ共和国の歴史の主要な部分である。

しかし、上記の歴史はもっともっと注意深く読まなければならない。19993月から6月までの78日間にもおよぶセルビアの首都ベオグラードや軍事拠点に対するNATO軍の空爆は国連の安保理決議もなくして実施されたものであった。しかしながら、上記に示すように、外務省のコソボの歴史にはこの事実は記述されてはいない。さらには、コソボはセルビアの自治州のひとつであり、コソボはNATOの加盟国ではない。このことから、なぜNATO軍がセルビアの内戦に出しゃばって来たのかという基本的な問い掛けに対してNATOは答えられない。

NATO憲章の第5条は集団防衛を次のように規定している(斜体で示す):

締約国は、ヨーロッパまたは北アメリカにおける1以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。・・そのような武力攻撃が行われたときは、各締約国が、国際連合憲章第51条の規定によって認められている個別または集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復しかつ維持するためにその必要と認める行動(兵力の使用を含む)を、個別的に及び他の締約国と共同して直ちにとることにより、その攻撃を受けた締約国を援助することに同意する

その種の問い掛けに対しては、NATOは「コソボ市民の人道的な救済」という言葉の綾に頼っている。このような目的だけではセルビアを空爆することを正当化することはできないということは十分に承知の上で、上記のように言明しているのである。要は、米国としてはセルビア国内に自分たちの息のかかった国を新たに作り、軍事基地を構築し、ロシア包囲網の一部にしたいという地政学的な戦略があったのである。

こうして、コソボ共和国が誕生した。その首都プリシュティナを訪れると、「ビル・クリントン大通り」では3メートルもある「ビル・クリントン像」が目の前に現れ、「ブッシュ通り」を歩くことにもなる。

セルビアの意志に反して米国はコソボの独立を可能にした。2008217日、コソボ議会がセルビアからの独立を宣言した。ウィキペディアの記述によると、20158月中旬の時点でコソボの独立を承認しているのは日本を含む国連加盟国193ヶ国のうち111ヶ国と台湾およびマルタ騎士団である。

しかしながら、決していいことばかりではない。米国主導のNATOの政策はさまざまな面で悪例を残し、その後の国際政治に大きな影を落とすことになった。米国がゴリ押しをしてコソボ共和国を作ったこと自体が、後になって、国際政治の舞台で米国に向かって跳ね返ってくるブーメラン現象をもたらしたのである。



ウクライナの一部であったクリミア自治共和国では住民投票が実施され(2014316日)、圧倒的多数の住民がウクライナから分離して、ロシアに編入することに賛成票を投じた(ウィキペデイアによると、投票率は83.1パーセント、賛成票は96.77パーセント。圧倒的な賛成を示した)。こうして、クリミアはかっての母国へ戻った。あれから、もう2年余りとなる。

ウクライナ紛争とシリア紛争は今や米ロ間の代理戦争となっている。両者共に後へは引けない。最新のニュース(66日)によると、米ロ間の対話を呼びかけているロシアのプーチン大統領に対して、オバマ米大統領は対話を拒絶した。このまま放置しておくと、米ロ間の緊張は高まるばかりで、核装備の軍拡競争が間違いなく進行する。偶発的な軍事衝突または単なる人的なミスから米ロ間の核戦争に発展する危険が高まるばかりである。

まさに愚の骨頂だ!

米ロ間で核戦争が始まると、地球上の何処に住んでいようとも、たとえ地下シェルターを準備していたとしても、人類は遅かれ早かれ滅亡することだろう。(詳細については、201475日に投稿した「核戦争による人類の絶滅」、ならびに、2014621日に掲載した「米国の核戦力の優位性は単なる誤謬に過ぎない」を参照されたい。)

このような現状を見ると、国際平和を維持するためにはロシアによるクリミアの併合をどのように理解するべきかが増々重要になってきている。西側の主要メディアが大合唱した「ロシア嫌い」に基づいた論理が果たして妥当であるのか(私には妥当であるとはとても思えない)、あるいは、正当化することができるのかどうかを真剣に検証しなければならない。単純に言って、人類が生き残れるかどうかが掛かっているからだ。これこそがウクライナ紛争の背後に見え隠れするリスクの中でも究極のリスクである。



ここに格好の記事 [2] がある。この記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

個人レベルで自分の身のまわりのことをあれこれと考えることも非常に重要なことではあるが、人類の将来についてもそれに劣らず真剣に考えなければならない時がついにやって来たのである。


<引用開始>

下記の文章を読んでみて欲しい。クリミアとドンバスの住民がキエフ政権を支持しようとはしなかったことにいったいどのような過誤があったというのだろうか?このことに関して皆さんにもじっくりと考えてみていただきたい。



Photo-1: 母なるロシアと子熊

著者はリトアニアの首都ビルニウスにあるミコラス・ロメリス大学の政策管理学部の教授である。本紙ロシア・インサイダーのためにこの記事を執筆した。

―――

ウクライナ東部のロシア語を喋る住民たちによる2014年の革命はついにクリミアがウクライナから分離するという結果をもたらした。ロシアへ帰属するという住民投票の結果を受けて、クリミアは独立を宣言した。また、これは1990年にバルト諸国がソ連邦からの独立を宣言した際の民族自決の権利に基づく行動とまったく同様であった。

この合法的な行為は国際法ならびに住民の民族自決権に基づいていることはクリミア半島の独立に関するクリミア最高評議会の公式宣言を見ると明白である。さらには、2008年に西側の手によってでっち上げられたいわゆる「コソボの前例」にも基づいている。つまり、6年後の今、「コソボの前例」がブーメランのごとくウクライナに舞い戻って来たのである。

基本的には、「コソボの前例」は国連憲章やコソボに関する国連決議案1244号を含む国際法の目に余るような侵害であった。この前例は1999年のNATOによる軍事的侵害によって端を発した。国連安保理事会からの委任状もなしに、独立国家であり主権を有するユーゴスラビア連邦がNATOの武力侵攻を受けたのである。これに続いて、2008年の2月、コソボ議会はコソボの独立を一方的に宣言した。この独立宣言は一部の国々よって承認された。これが西側が「前例」を作り出した経緯であり、本質的にはこれは国際関係上での特例として取り扱われなければならない。理論的には、この前例は世界におけるこの種の状況に対してその基盤を提供したり、事例の役目を果たすものではない。

ところが、コソボの独立宣言は民族自決(独立)に関する国際法を侵害することにはならないとする2010年の国際裁判所の見解によって、この「前例」は法的に確立されたのである。それは確かにそうであるが、これは各国の領土の保全に関する国連憲章や各国の国内法を侵害する。国際裁判所の見解は公的にはあくまでもひとつの勧告に過ぎないが、現実には重要な言外の意味を持っており、容易ではない結果をもたらす。クリミア当局ならびにロシア政府の両者が明確に述べているように、その最初の事例が2014年のクリミアの独立である。

疑う余地もなく、「コソボの前例」は主として国連憲章やそれ以降の国連決議に基づいて構築されている国際法の基盤を揺るがしただけではなく、それらを破壊してしまった。こうして、クリミアのウクライナからの分離ならびにロシアへの編入に関しては「ブーメラン現象」を引き起こしたのである。クリミアは2008年の「コソボの前例」でアルバニア人が用いた公式の理由とまったく同じ理由を用いている。我々はこの事実を記憶しておかなければならない。そのような次第ではあるが、西側諸国はセルビアからのコソボの独立は承認したが、クリミアやドネツクおよびルガンスクのウクライナからの分離を承認しなかった。これらの事例のすべてが法的ならびに倫理的な議論においてはまったく同じであるのにもかかわらずである。さらに言えば、「コソボの前例」とは対照的に、ウクライナからの分離は住民投票の結果に基づいているのである。

二重基準を用いる西側の政策は下記に示すコソボの独立に関する2009417日付けの米国の声明文からも明白である。これは国連の国際裁判所へ提出されたものだ:

「独立宣言は国内法に違反するかも知れず、事実、多くの場合国内法に違反する。しかしながら、だからと言って独立宣言が国際法に違反することにはならない。」 

クライナ・セルビア共和国、スルプスカ共和国、沿ドニエスト共和国、アブハジア共和国、南オセチア共和国、ウクライナ東部で分離を求める三つの州およびクリミア、等の独立に関しては、米国からのこれに類するような声明は我々は何ら聞いてはいない。国連の国際裁判所は米国の声明文を受け取り、2010722日に「独立宣言に関する安保理での議論からは一般論的な差し止めを推論することはできない」と述べ、さらには、「一般的に国際法には独立宣言を差し止める条項は含まれてはいない」と述べている。上記に示した声明に従うと、クリミアのウクライナからの分離に関してモスクワ政府がとった行動が正しいことは明白である。しかも、決定的に重要な違いがあるのだ。ロシアはキエフに空爆を加えるようなことはしなかった!     

事実として、西側はセルビアとコソボとを連邦制にすることの可能性についてはベルグラードに対して何の打診もしなかった。つまり、コソボの独立は最適な解決策として唱導されたのである。しかし、モスクワ政府はウクライナ東部のロシア語を喋る州に関するウクライナ危機においては連邦制が最善の策であると唱導している。クリミアについては歴史的な背景や民族自決の論理に基づいてロシアに併合されなければならないとした。クリミア半島はその歴史の殆んどを通じてロシアの一部であった。ウクライナ連邦というシナリオは西側(NATOおよびEU)とロシアや中国およびイランを中心とするブロックとの間の「新冷戦」を緩和してくれる効果があるかも知れない。しかしながら、キエフのユーロマイダン政府に助言を与える西側の指導者がロシアの提案を拒否した場合には、ウクライナは自殺をすることになるのかも・・・ 何故かと言うと、ウクライナ東部の2州だけではなくオデッサ地域についても、西側の二重基準が引き続きブーメラン現象をもたらすだろうからである。

現行のウクライナ危機は1667年の29日にポーランド・リトアニアとロシアとの間で署名されたアンドルッソヴォ条約にしたがって解決することができる。同条約によって今日のウクライナの領土はふたつの国に分割されていた。つまり、ドニエプル川を境にして、ポーランド・リトアニア連合の領土とロシア帝国の領土である。ロシアはポーランド・リトアニア連合からドニエプル川の東側を受け取った。これにはザポロジエ地域(川の両側)も含まれていた。ドニエプル川が「ヨーロッパ」とロシアとの国境となって、ウクライナはふたつの国境地域に分割されていた。「ウクライナ」というスラブ語は英語では「国境地域」に相当する。ウクライナの最終的な宿命は同国の名称からさえも明白である。クライナ・セルビア共和国の事例が1990年代にこのことを証明した。即ち、国境地域は一国の辺境に位置する。たとえそれがどちら側の国であってもそれ自体は問題ではない。   

「ウクライナ問題」の最終的解決策においては人道的介入という側面を忘れてはならない。一般的に言って、「介入」とは攻撃を受ける側の同意も取り付けずにその国家に対して他国が行使する力づくの行為を指す。したがって、「人道的介入」とは(通常は少数派の)人権を保護するために実施される軍事的介入を言う。倫理的な観点から述べると、人道的介入は公的な口実として(間違って)用いられている。そもそも「人道的」という言葉の意味するところは苦痛を和らげることによって人々の関心や利益を追求することにある。 

人道的介入の概念は、特に冷戦後、(間違って)用いられてきた。さまざまな事例がある。たとえば、イラク(1991年、クルド人のために「避難場所」を形成するために飛行禁止区域が設定され、NATO加盟国の米、英、仏3カ国によって監視が行われた)、ソマリア(1992年、保護地域が設定された)、ハイチ(1994年、文官当局による秩序を回復するため)、ルワンダ(1994年、フツ族避難民のための「安全地帯」を設けるため)、コソボ(1999年、セルビアの軍隊や警察の弾圧からアルバニア人を保護するため)、東チモール(1999年、インドネシアの治安部隊によって引き起こされるかも知れない民族洗浄を事前に防止するため)、シエラレオネ(2000年、内戦に巻き込まれた英国人市民を保護するため)、等。 

上記の事例における人道的介入は議論の余地が多い戦争であって、これらの場合は西側の戦力だけが参画し、人道的介入という根拠の下で公に正当化されてきた。しかしながら、多くの場合、コソボやシエラレオネの事例に明白に見られるごとく、これらの介入には政治的あるいは地政学的な背景があった。

コソボの事例においては、民族洗浄の心配があるという口実のもとに介入が実施された。78日間におよぶNATOによる空爆は国連安保理からの要請もなしに行われ、最終的にはセルビア軍と警察をコソボから追い出した。コソボはNATO軍によって占領され、巨大な米軍基地が建設され、最終的には独立宣言や各国の承認によってセルビアから分離した。実際には、これこそが1999年に開始された「人道的介入」における地政学的な最終目標であったのである。

シエラレオネでは、長く続いた内戦の後、英国政府は公式には英国市民を保護することを目的に同国へ英国軍を派遣することにした。しかし、実際には、民間人に対して流血沙汰をもたらしたと伝えられている反政府軍から選挙で選出されている政府を保護することが最終的な目標であった。

さて、ここで、我々は現行のウクライナ危機や「ウクライナ問題」という難問へ戻ることにしよう。

ロシアのウラジミール・プーチン大統領は1999年のNATOによるコソボへの人道的介入はロシアに重大な屈辱を与えたとしてこの出来事に気を奪われていたことは周知の通りである。キエフのユーロマイダン政権はドンバスで恐ろしい程の戦争犯罪を犯したことも良く知られており、何千人ものドンバスの住民(この中には約200人の子供たちが含まれる)が残虐に殺害されたことからこの行為は民族洗浄として、あるいは、大量虐殺としての分類が可能である。また、約百万人もの住民が難民としてロシアへ逃れた。

モスクワ政府にとっては、キエフ政権がドンバスで犯した戦争犯罪を「証明」することは容易い。これは1999年にNATOの介入を行う前にセルビア軍がコソボで犯した戦争犯罪を公式に「証明」することがワシントン政府にとっては非常に容易かったこととまったく同様である。結果として、ウクライナ東部でモスクワ政府が人道的介入を開始することが可能となるだろう。これは最終的にキエフからの分離をもたらす。「コソボの前例」はここでも依然として有効であるのだと言えよう。     

<引用終了>


これで引用記事の仮訳は終了した。

リトアニアを含むバルト3国とポーランドはロシアとの国境へNATO軍を招じ入れて、7月にポーランドで開催されるNATOサミットに向けて過去最大級の軍事演習を実施している。そのような政治的・軍事的な環境にありながらも、ここに引用した記事の見解はロシアの研究者によって発せられたものではなく、リトアニアの研究者が述べているものであるという点が実に素晴らしい。この著者の旺盛な独立心や研究者としての客観的な観察姿勢に敬意を表したい。真実を探求する研究者の姿勢はポピュリズムに流れやすい政治家や商業主義に走るメデイアとは所詮違うのだとも言えよう。

著者は冒頭から客観的な観察をしている。たとえば、次のようなくだりだ:

「ウクライナ東部のロシア語を喋る住民たちによる2014年の革命はついにクリミアがウクライナから分離するという結果をもたらした。ロシアへ帰属するという住民投票の結果、クリミアは独立を宣言した。また、これは1990年にバルト諸国がソ連邦からの独立を宣言した際の民族自決の権利に基づく行動と同様であった。」

著者は実に率直に述べている。クリミアが2014年にとった行動は自分たちが1990年にとった行動と同じではないかと言っているのである。

そして、コソボへの人道的介入と、もしかするとロシアがウクライナ東部の州に対して行うかも知れない人道的介入との相似性についても詳しく説明している。素人のわれわれにも非常に分かりやすく、説得力がある点が実にいい。

この「コソボの前例」に関してはロシアは研究しつくしているのではないかと推測する。それだけに、クリミアのロシアへの編入のプロセスは非常に迅速であった。あたかもロシア政府にとっては2手も3手もの先がはっきりと見えていたかのようだ。さらには、ロシアの対応を見ると、クリミアとウクライナ東部2州との間にはその取扱い方に明確な違いがある。この違い自体も現行のチェスゲームの重要な作戦であるのかも知れない。

今後はウクライナ東部のドネツクとルガンスクの2州、ならびに、オデッサ地域の行く末がどこに収束するのかが焦点となる。果たして、リトアニアのビルニウスに住む著者が言うように、ウクライナはドニエプル川を境にして分断されるのであろうか?

また、上記のような「ブーメラン現象」に対して西側はどのような反論を用意するのであろうか?興味津々である。ただし、西側の発言は論理を逸脱することが多く、言葉の綾に依存することが多いから、まったく予断を許さない。



参照:

1Wikileaks Confirms: Brazil’s New President Is a US Asset: By Enrico Braun, May/13/2016, http://russia-insider.com/en/node/14332

2The West Made Ukraine Secessionism Legal by Establishing the Kosovo Precedent: By Vladislav Sotirović, May/26/2016, http://russia-insider.com/en/node/14537







2016年6月1日水曜日

ギリシャの降伏 - 新たな戦争の手段としての国際金融



米ミズーリ大学のマイケル・ハドソン教授はこのブログでもすでに何回か登場して貰っている。

同教授は国際金融に関して、たとえば、なかなか分かりにくいIMFに関しても門外漢である私のような素人にさえも分かるような解説をしてくれている。好感が持てる学者である。ここで念を押しておきたいことがある。投資家や多国籍企業の立場から見た経済ではなく、草の根的な一般大衆の視点から経済を分析し、解説をしてくれている点が非常に頼もしい。これは他の多くの専門家や評論家とは完全に違うということを確認しておきたい。

ギリシャ危機に関してはギリシャ、IMF、ユーログループとの間での交渉によって突破口が開かれたと報じられている。525日にロイターが報道 [1] した内容の一部を参照すると、下記のような具合だ(斜体で示す):

債務の減免に関してユーロ圏はギリシャに対して今までには見られなかったようなもっとも確固とした提案を行った。各国の蔵相らはこれを突破口と位置付け、IMFがアテネ政府の救済に再び参画するという約束をついに取り付けたのである。

水曜日の夜明け近くまで続いた話し合いの後、ユーロ圏の蔵相らは、たとえ何らかの技術的な微調整が必要となる点があるにしても、アレクシス・ツィプラス首相が率いる左翼系連立内閣によって推進される苦痛を伴う財政改革を評価して、ギリシャに対して103憶ユーロ(80憶ポンド)の新たな救済策を講じることに承認を与えた。 

しかし、話を先へ進めるさまざまなステップの中でもより大きなステップとなるのは次の策だ。つまり、合意された支払い基準を満たすために救済が必要となった場合には、ユーロ圏はギリシャ政府に対する債務の減免に関する提案を2018年に示すことに同意したのである。これがギリシャを救済する資金提供を行うにあたってはIMFが再び参画することに関する合意を取り付ける鍵となった。

「我々はギリシャに関する突破口を見い出した。これによって、我々はギリシャへの財政支援プログラムにおいて新たな段階に進むことが可能となる」と、オランダの財務大臣であり、ユーログループの議長を務めるイエルーン・ダイセルブルームが記者会見で述べた。「これはそれ程遠くはない過去において可能になるかも知れないと思っていたことが今になるまで引き延ばされていたものだ。」

「政治資金」に同意して、ヨーロッパの閣僚はこの取引を成立させるために投資したのである。これは債務の減免に対しては強い反対を示すドイツに賛意を示すことになる。イエルーン・ダイセルブルームはこの動きをギリシャの財政が安定化するまでに6年間も要した本ドラマにおける「新たな段階」と称した。このギリシャ危機は発足から16年を経過しているユーロ圏を崩壊の瀬戸際にまで追いやっていたのである。

ツイプラス首相が緊縮財政政策に反対してからというものほぼ1年にもなるが、ギリシャ政府はユーロ圏からの離脱にまで追い込まれていたが、話し合いの場にはついに相互信頼が戻って来た、と彼は言う。

・・・

「楽観視することができる基盤が形成されたと思う。これによってギリシャは景気後退・緊縮政策・景気後退という悪循環から脱する機会が与えられ、投資家がギリシャへ投資するための助走路を提供することになるだろう」と、ツイプラス政権の蔵相を務めるユークリッド・ツアカロトスがブリュッセルでの会合を後にする際に記者団に述べた。 

IMFは、ギリシャの公共財政を持続可能とするためにはヨーロッパ各国が自ら打撃を受け止めて、アテネ政府の債務の一部を削減するべきだと長い間主張していた。ドイツや他の国々はこれに反対し、何ヶ月にもわたってIMFとの口論が続き、この交渉の間、ギリシャはあたかも観覧席に居るかのような有様であった。

ヨーロッパ各国は直ちに債務の減免に応じるとか、ギリシャの支払いを無条件に減額することは避けた。しかし、彼らは債務の減免に応じる際の基準を提示した。アテネ政府が必要とする資金の総額は中期的にはGDP15%以下、長期的には20%以下に維持しなければならないとしたのである。

・・・

こうして、ギリシャ危機については当面の決着がついた模様である。

この話し合いの結果、ギリシャは当面103億ユーロの融資を受けることになった。

上記に引用した記事は大銀行や投資家の目から見たギリシャ危機について述べてはいるけれども、庶民の生活に与える影響については何も言及してはいない。今後、2018年にどのような判断が必要となるのかが関心の的となりそうだ。


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しかし、この決着によって非常に過酷な緊縮財政に見舞われる一般庶民の生活はさらに大きな痛みに直面することになる。年金の支払いが一部カットされることや新たな課税が導入されることがこの5月にギリシャ議会を僅差で通過したのだ。この新法案の詳細を見てみよう(注2)(斜体で示す):

この新法によると、2,000ユーロおよび3,000ユーロを超す年金はカットされ、企業年金基金は暫時排除するとしている。

免税となる所得限度額は9,100ユーロから8,600ユーロに引き下げる。加えて、71日から消費税率を13パーセントから14パーセントに引き上げる。これらの措置は諸々の製品やサービスのコストを増加させるものと見られる。61日から、タバコ、ガソリンやディーゼル燃料、ならびに、天然ガス、等の物品税や消費税も増税となる。

201711日には、コーヒー、電子タバコ、2個以上のスターにランクされるホテルでの旅行者の宿泊も初めて課税の対象となる。

インターネットでのブロードバンド接続には5パーセントの課税、有料テレビには10パーセントの課税が今年71日に開始される。

投資物件にも課税され、これには不動産会社や資産運用管理会社も含まれる。財産税(ENFIA)の徴収が新法によって拡張される。 

政府支出、特に国防費や公営企業に対する費用は今年の6月には減額される。

中小企業に対する課税は年間所得が50,000ユーロまでの場合は26パーセントから29パーセントに引き上げられる。50,000ユーロ以上の所得に対しては33パーセントが課税される。

ギリシャ政府による増税策は以上のような具合だ。2011年に強化された財産税(ENFIA)は今までのところ立派な成績をあげていると報じられている。この実績に基づいて、政府としては徴収の対象をさらに拡大したいようだ。

しかしながら、緊縮財政政策の影響を受けて経済が疲弊し、失業率が高まると、今後もこの成績が続くとは限らないとも指摘されている。ギリシャの返済能力は減少の一途を辿るのではないだろうか。


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ここで、ギリシャ危機を巡るIMFやユーログループの最近の動きについてマイケル・ハドソン教授の見解 [3] を確認してみたいと思う。仮訳を下記に示す。


<引用開始>

こちらはリアル・ニュース・ネットワークです。私はバルチモアからシャ―ミニ・ペリーズです。

ギリシャの経済危機は恐らくヨーロッパの難民問題やテロ攻撃、英国のEUからの離脱に関して近い内に実施される住民投票、等、によって影が薄くなっているかも知れません。しかし、これが解決されたわけではありません。ギリシャのシリザ連立内閣は、先週、街頭デモや3日間も続くゼネストに見舞われ、ギリシャの多くの地域は麻痺状態に陥りました。こうした抗議があったにもかかわらず、アレクシス・ツィプラス政府は議会で153人の議員の賛成を受けて、同国の税制や年金制度の改革に関する法律を改正しました。この動きは債務に関する交渉を継続するために融資団から求められていたものです。300議席を擁する議会で演説を行い、アレックス・ツィプラス首相は「我々はどのようなコストを支払ってでも自立しなければならない」と述べました。

これらの展開について議論をするために、私はマイケル・ハドソン教授をお招きしています。同教授はニューヨークからの参加です。マイケルはキャンサス・シティーのミズーリ大学で経済学を研究している著名な教授です。彼の最近の著書に「Killing the Host」があって、この本は金融における寄生者や国際金融が如何に世界経済を蝕んでいるのかを記述したものです。マイケル、本日はお越しいただいきどうも有難うございます。

マイケル・ハドソン: 再び参加できて嬉しいです。

ペリーズ: マイケル、IMFはギリシャの債務問題と取り組むための総合的施策をゴリ押ししています。彼らは融資団が債務の帳消しに関して工夫するように求めており、彼らが提案した策は融資団が喋っている内容に比べるとかなり前進しているようです。IMFの提案に関して、ならびに、融資団はどのようにしてその提案内容に漕ぎつけたのかに関してもっと話をしてくれませんか?

ハドソン: IMFはギリシャへの融資額は一銭も減額しないと言っています。融資額はそのままにしておこうということ。問題はユーロッパの中央銀行がバランスシートを何とか保とうとしている点です。もしもIMFへの支払い義務があるギリシャの債務に関して交渉が決裂したとすれば、その場合には救済すべき銀行を抱えているドイツやフランスならびに他の国々は損失を計上しなければなりません。彼らはたとえ一銭でも失いたくはないという立場です。IMFの提案には工夫の跡は特にありません。IMF1年前に言っていたことを一言も変えずに繰り返しています。こう言っているのです。「OK、融資額はそのままにしておきますが、我々はいまいましい数値をあなた方に贈呈することにします。金利だけを変更して、1.5%としましょう。さらに、25年間の据え置きとします。つまり、債務の一部減免は行いませんが、金利の支払いは25年間の猶予とします。こうして、我々は僅かな金利の支払いだけを要求することにします。」 

意外な結末がひとつあります。ギリシャは年金をキャンセル、あるいは、引き下げて、緊縮財政を適用し、政府の資産を私有化しなければなりません。こうして、経済は委縮することになります。経済は年率で1%、2%あるいは3%も委縮することでしょう。我々が課す1.5%の金利はギリシャが達成する所得の伸びをすべて吸い取ってしまうかも知れません。今後25年間の所得の伸びはたとえ1銭であってもドイツの銀行へ支払う返済に充当しなければならないでしょう。

ギリシャは今そんなことは実行できないことを承知しています。年金をキャンセルしたら、経済が委縮してしまうことは分かりきっています。労組はストライキをするでしょうし、多くの市民が他所へ移民することでしょう。

しかし、出口がひとつだけあります。ギリシャは港湾や土地、公共の上下水道施設、空港、等、所有している物は何でもドイツへ売却し、結局、最後には売却できる物はひとつもなくなってしまいます。最後に我々がギリシャに頼むことは、もうこの国のすべてを我々が所有しているのだから、皆この国から出て行ってくれということです。以上がIMFが言っていることのすべてです。何の工夫もありませんし、非常に残酷です。これこそがギリシャの市民が通りへ出て抗議行動を起こしている背景なんです。

ペリーズ: それでは、融資団はどうして今回のような行動をとったのでしょうか?

ハドソン: どうしてかと言うと、彼らは国際金融を新たな戦争の手段として用いているからです。ヨーロッパでは戦争が進行していますが、この戦争はもはや軍事的な戦争ではありません。軍事的な戦争に代わって、連中は金融を使っているのです。金融を使って、あんた方の国を乗っ取ることができるぞと脅かしているのです。我々はあんた方を失業に追い込み、あんた方をコントロール下に置くことだってできる。あんた方を殺す必要はない。年金を打ち切り、あんた方の金をすべて奪って、あんた方を何処かへ移民させるだけだ。土地の収奪もある。ギリシャの港湾や鉄道を収奪し、他にもあらゆる物を収奪しようとする侵略のようなものです。これはまさに戦争です。 

ペリーズ: さて、国際メディアは月曜日 [訳注:523] に行われた各国の財務大臣の間で行われた会合は成功裏に終わったかの如く報じています。アレクシス・ツィプラス首相と財務大臣は笑顔を見せながらこの会合から出て来ました。あれは何故でしょうか? 

ハドソン: 何故かと言いますと、彼らは売ってしまったからです。カメラの前では笑顔を見せることになっています。単純なことです。自分の選挙民を何とか防護したかの如く笑顔を見せるのです。オバマ大統領もウオールストリートに対してさらにもうひとつの贈呈品をあげた時には何時も笑顔を見せます。しかし、これはそのような笑顔が必ずしも国民のためにはいいことだということを示すものではありません。明らかに、国民にはそのことが分かっています。これは国民の政治的反応を見ると分かるのです。

ペリーズ: そして、これらの攻撃的な改革や年金改革は今やギリシャの国民が鵜呑みにしなければならないわけですが、これは市民にとってはいったい何を意味するのでしょうか?

ハドソン: 改革は今まで意味していたものとはまったく反対のことを意味します。過去の100年間、改革と言えばすべての動きが政府に対してより大きな権限を与えることにありました。経済成長にはより大きな重点が置かれました。改革は経済をより良好にすることを意味していたものです。ところが、今日では、ギリシャが第二次世界大戦後に行った改革を今実行するということは、逆に、改革を一掃することを意味するのです。我々はまさにオーウェルが描いた二重思考的な世界に住んでいるのです。年金改革を一掃し、税制制度改革を一掃してしまいます。これはネオ封建主義とでも呼べるような世の中へ逆戻りすることを意味します。改革の動きとは正反対です。ですから、メディアが改革という言葉を使っていても、実質はまったく逆方向です。 

ペリーズ: 分かりました。それでは、左翼やシリザ党についてですが、我々皆が聞いていることに関しては彼らはどう言ってるのでしょうか? 

ハドソン: 彼らは愕然としています。ご存知の通り、あなたのショウに登場したことがあるヤニス・ヴァロウファキスはギリシャに緊縮財政を課すことを避けようとして閣僚の座から辞任しました。単純に言って、彼らは愕然としており、最悪の事態であることを認識しています。彼らはフランスやスペインおよびポルトガルの左翼の動きによって支持を受けることを期待していたことでしょう。しかし、債権者に対する債務者の、あるいは、債務者に対する債権者の苦い階級闘争がヨーロッパで進行しており、今彼らが出来ることは何かと言えば、せいぜいIMFの偽善を暴くこと位しかありません。もしもギリシャのことを議論したいのでしたら、泥棒政治家たちによってまったく一文無しとなっているウクライナの経済を並列に置いて論じてみましょう。

IMFは「ロシア政府からの債務や米国が嫌いな国の政府からの債務は返済をしなくてもいいよ」と言って、ウクライナを救済しようとしています。ウクライナはジョージ・ソロスや米国好みの投資家に国土を売り出さなければなりません。IMFがギリシャに課した対決の基準をIMFがウクライナ政府に対して行っていることと対比してみてください。そこに見えてくるものはIMFは今や「新冷戦」のための道具になっているという現実です。シリザ政権の連中やギリシャの人々が出来ることはこのことが如何に不公平であるかを指摘することであり、実際に起こっているのは政治的志向からはまったく右翼的であることを世界中の人々に知って貰い、国際金融はまさに戦争を引き起こしていると言う事実を理解して貰うことです。

ペリーズ: マイケル、最終的には、ギリシャ政府にはどんな選択肢があるのでしょうか?いったい何が可能なのでしょうか? 

ハドソン: ツィプラス首相は選択肢はもう何もないと言っています。選択肢は降伏することだけだと言っています。事実、ギリシャとIMFとの間では議論はもう行われてはいません。ギリシャとドイツとの、あるいは、ギリシャとヨーロッパとの間での議論でもなく、今も続けられている議論はIMFとドイツとの間で行われています。その内容はIMFがその伝統的な規則を破るのかどうか、IMFのあらゆる基本原則に反してさらに融資を行うのかどうかという点です。IMFの合意書の条項によると、融資を返済出来ない政府に対してはIMFが融資に応じることは禁じられています。IMFの融資条件や基本条件がギリシャ経済を委縮させ、返済を不可能にしてしまうことから、ギリシャは返済することができないだろうという予測はIMF職員らの間では何の異論もなく、誰もがそのように理解しています。

そこで、IMFはこう言っているのです。我々はIMFの規定を破って、特に米国からの要請があることからも、融資を行うことにします。ギリシャは返済をしなければなりません。これは、スペインが立ち上がって、市民に対して年金を支払おうとした場合、フランスが自国の労働者に支払いをする場合、あるいは、イタリアが自国の労働者に支払いをする場合には、我々はそれらの国の経済を破壊し、彼らの労組を潰してしまうでしょう。これはちょうどギリシャに対して行っていることとまったく同じです。ギリシャは示威行動を示すためのいい見本の場となっています。ナチがスペインを爆撃した時と同様です。あの状況はかの有名なピカソの絵に描かれています。言わば、これはナチが行ったスペイン爆撃のIMF版に相当するものです。降伏をしない国ではこういった状況がヨーロッパ中で起こることでしょう。

ペリーズ: 何時ものことですが、マイケル、良く分かりました。あなたをこの番組にお招きできて本当に良かったと思います。これからもギリシャに関する番組でお会いしたいと思います。

ハドソン: こちらこそ。シャ―ミニ、どうも有難う。

ペリーズ: そして、リアル・ニュース・ネットワークの視聴者の皆さん、どうも有難うございました。

<引用終了>


これで、全文の仮訳が終了した。

マイケル・ハドソン教授の解説は明快で、分かり易い。

たとえば、「しかし、出口がひとつだけあります。ギリシャは港湾や土地、公共の上下水道施設、空港、等、所有している物は何でもドイツへ売却し、結局、最後には売却できる物はひとつもなくなってしまいます。最後に我々がギリシャに頼むことは、もうこの国のすべてを我々が所有しているのだから、皆この国から出て行ってくれということです。以上がIMFが言っていることのすべてです。何の工夫もありませんし、非常に残酷です。これこそがギリシャの市民が通りへ出て抗議行動を起こしている背景なんです。という解説はその典型的な例だ。


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日本に対する米国のネオリベラリズムやネオキャピタリズムを考えてみよう。私の個人的な理解に基づいて言うと、日本の富を収奪しようとする彼らの手口はTPPに集大成されている。そして、日米の指導者はこのTPPを早く成立させたいと言っている。

日本では多くの人たちはTPPを通じて彼らがやろうとしていることの本当の理由について、ならびに、結果として日本経済がどのような状況に追い込まれるのかについてはほとんど何も知らないまま、あるいは、知ろうともしないまま毎日を過ごしているように見えるが、どうだろうか?非常に残念なことである。しかし、もっとも重要な点としては、この状況は現在を生きる我々の世代が今享受している繁栄から一歩でも退きたくはないと思う利己心から、あるいは、米国のTPP交渉代理人からの脅し(米国市場への日本の自動車輸出を減らしたくないならば「ああしろ」、「こうしろ」といった類いの代案)を受け、甘い言葉に言いくるめられて、我々の子供や孫の世代の富の一部を先取りしていることに他ならない。

次世代にとっては非常に残酷な話である。我々の世代は次世代に対して本当に申し訳ないことをしていると私は思う。

あるひとつの選択肢を選ぶと、他の多くの選択肢を捨てることを意味する。

TPPの是非に関する議論が華やかだった2012年頃には、「日本では人口が減少していることから、日本は国内市場の縮小を補う意味でもTPP条約に参加することによって大きな市場を確保しなければならない」とする意見があった。たとえ日本の自動車産業や医薬品業界のために大きな市場を確保することには成功したとしても、国内の農業は壊滅し、一国の安全保障の根幹である食糧の自給率は10パーセント代にまで低下するという無残な結末が待っている。ある試算によると、14パーセントまで低下するという。(さらなる詳細については、2012112日に投稿した「TPPISD条項はどんな悪さをもたらすか?」を参照されたい。)

TPP条約への加盟は日本人自らが自分たちの主権を放棄したことに等しいのではないか。果たして、この選択が日本にとっては正解であったのかどうかについては、将来の歴史家が適切に指摘してくれることだろう。

本日のブログではギリシャがついに西側のネオキャピタリズムに降伏したという最近の状況をご紹介した。ギリシャの今日の姿は日本の明日の姿であるのかも知れない。



参照:

1Eurozone hails ‘breakthrough’ with Greece, IMF debt deal: By Jan Strupczewski, Francesco Guarascio & Alastair MacDonald, Reuters, May/25/2016, www.reuters.com/article/eurozone-greece-idUSL5N18M01I

2Greek Parliament Approves Pension, Tax Reforms Against Mass Protests: By Sputnik, May/09/2016, sputniknews.com/.../greek-parliament-approves-unpopular-ref...

3The Greek Surrender - Finance As A New Means Of War: By Sharmini Peries - Michael Hudson, By Real News Network / Information Clearing House, May/24/2016