2015年11月3日火曜日

ロシア的ユーモア、冗句



The Sakerのブログ・サイトで、最近、「ロシア的ユーモア、冗句」と題する記事が配信された。この一連の冗句集には長短合わせて57本もの冗句が掲載されている [1]

その昔、私はプラント建設工事のための一員としてルーマニアに派遣され、何年か過ごした。折しも、チャウシェスク政権の時代であった。職場の誰かの誕生日とか聖名祝日がやって来ると、午後の3時を過ぎると一室に集まって、皆で彼あるいは彼女のためにその日を祝ったものだ。当然、アルコールも登場する。しばらくすると、ルーマニア人の同僚らはさまざまな冗句を披露し合い、皆が興じ入る。これが結構続くのである。歴史や政治を色濃く反映した冗句が多いわけであるが、我々日本人にとっても分かり易い冗句があって、時が経つのを忘れさせてくれたものだ。

政治的弾圧が増せば増すほど、自分たちを取り巻く政治に関する風刺はその鋭さを増して行く。冷戦時代はまさにそういう環境をもたらした。そして、ひとつの新しい文化みたいなものが出来上がった。もっとも興味深い点はこれらの機知に富んだ冗句はほとんどが「詠み人知らず」だ。市井には鋭い感覚を持った人たちがたくさんいるんだということを改めて実感させられる。


<引用開始>

著者、スコットからの警告: The Sakerのブログ・サイトのために記事を書き始める前は、私は骨董品や美術品を蒐集していた。ブログを書き始めてからというもの、私は家族のことや自分の職場や仕事、睡眠をとること、シャワーを浴びること、その他さまざまな悪癖のすべてを放り出してしまった。ひげを剃ることもだ。蒐集癖を持つ私は、今、ロシア的なユーモアや冗句だけを蒐集している。第一に、これらはただで蒐集することができる。二番目に、これらはアルコールやヤクを一緒にしたよりも遥かに効き目があるのだ。

さあ、読者の皆さんには警告しましたよ!

[訳注: 原文には57本の冗句が掲載されているが、その中から私が個人的に面白いと感じたものを下記に仮訳してみようと思う。]

3. 人類が戦争もなしに丸1年間を過ごしたのは何時のことだっただろうか?確か、あれは紀元前2925年のことだった。

7. アルメニアのラジオ放送に関する質問:
Q. ポロシェンコに関する逸話は実に面白いけど、プーチンに関する逸話はまったく面白味がない。これはどうしてなんだい?
A: どうしてって、プーチンに関する逸話は英語から翻訳しているからさ。

12. – 昨晩、「猿の惑星」を見たよ。
気に入ったかい?
特に何もなかったなあ。あれは「ウクライナの夜のニュース」を編集して、調子をちょっと下げたようなもんだ。

13. – 抗うつ剤をもうちょっと欲しいんですが。
処方箋をお持ちですか?
え? ウクライナのパスポートを持っていますよ。これで十分では?

16. 2014年の1月、キエフの新政権はロシアの黒海艦隊はウクライナの領海内に停泊してはならないとの声明を発表した。
2014316日、ロシア政府は黒海艦隊はもはやウクライナの領海内には停泊しないと約束した。 

18. ウクライナの学者たちはプーチンのエージェントではない人が世界でたった一人だけいること、そして、それはプーチン自身であることを証明した。

22. クレムリンのエージェントになることは容易い。先ずは、真実について喋り始めることだ。

23. プーチンは政治家の器量を測定する際に必要な新たな原器である。

24. こんな乱痴気騒ぎは止めてくれ。プーチンはクリミアへロシア軍を送り込んだことなんて一度もないんだから。ロシア軍は1778年にアレクサンダー・スヴォロフによってクリミアへ派兵され、それ以降クリミアから離れたことはないんだ。

25. もしも何かを実行しなければならない時は、中国人に頼んでみたまえ。
もしも実行が不可能なことを始めなければならない時は、ロシア人に頼んでみたまえ。

34. ウクライナ史 - 2014年。愚か者らは自分たちの政府を転覆し、能無しの連中を選出した。彼らは偉業を成し遂げたと自慢する。しかし、その代償は愚か者らが自分たちで支払わなければならない。そして、それはみんなロシアのせいなんだ。

36. ウクライナ人からロシア人へ: 我々はもう兄弟ではないよ。
ロシア人からウクライナ人へ: オーケー、いいよ。分かったよ。
ウクライナ人からロシア人へ: ところで、あんたたちはロシアのローンを帳消しにしなければならない。
ロシア人: そんな積りは毛頭ないね!
ウクライナ人: こんちくしょう、あんたたちは俺たちの兄弟だと言っていただろうに! 

37. 「ヨーロッパ」という名のカジノ: その門口でギリシャはウクライナと出合う。
どちらへお出かけですか?
「ヨーロッパ」でちょっと賭博でもしようかと思いまして。
私は今ちょうど終わったところです。
如何でしたか?
ご覧の通りです。私は何もかも失って、パンツ一枚になってしまいました。
おや、まあ、私はその手のパンツを身に付けてみたいと常々思っていたんですよ!

41. 記念物や遺跡を破壊し、捕まえた市民や兵士を処刑し、それでもなお米国から資金を得ている国をふたつ挙げよ。(答:ウクライナとイスラム国) 

42. どうしてウクライナ人が急遽レーニン像を取り壊したのか知っているかい? それはね、「どれかのレーニン像の台座の下には渦巻きがあって、それはヨーロッパへの自由な入国を許可するビザである」と、米国が言ったからだよ。

45. 当面、イスラエルでは:
ウクライナではいったい何が起こっているんだい?
ウクライナはロシアとの戦争を始めたんだ。
何てこった!で、その戦争はどんな具合なんだい? 
ウクライナは2百万の市民を失い、クリミア半島や何機ものジェット戦闘機、ヘリコプター、何千人もの兵隊、何百台もの戦車や大砲を失い、750万人もの市民がいるふたつの州は今やロシアとの再統合を望んでいる始末さ。
ロシア人は?
こんなことって信じられるかい、ベニー? ロシア人はこの戦争ではついぞ表に出て来ることなんてなかったんだ。

46. ムカチェヴォ出身のラビが亡くなり、彼は創造主と会いに出かけた。
どこで生まれたのかね、と神様が訊ねた。
オーストリア・ハンガリー帝国です、とラビは言った。
何処の学校へ行ったのかね?
チェコスロバキアです。
何処で結婚したのかね?
ハンガリーです。
第一子は何処で生まれたのかね? 
第三帝国です。
あんたの孫は何処で生まれたのかね?
ソ連邦です。
で、あんたは何処で亡くなったのかね?
ウクライナです。
善良なる私のラビよ、と神様は言った。生前、あんたは世界中を旅行していたんだね。
いいえ、とラビは返答した。私は故郷の街から一歩も外へ出ることはなかったんです。

54. セルゲイ・ショイグ国防大臣からプーチン大統領へ: 「イスラム国の誰かが電話をしてきまして、大統領が信じる宗教は何かと尋ねています。そして、その宗教へ改心するにはどうしたらいいのかと。」 

56. 「ロシアのやっていることはまったく理解できない。あんたたちは自分がやっていることを自分でも分かっているのかい?シリアでイスラム国の武器庫を空爆するなんてどうしてなんだ!温存しておけば、ヨーロッパへやってきた貧しい難民たちへ分けてやることができるじゃないか?」 

57. 「我々の仕事はテロリストが米国の手によって訓練を受けるよりもずっと速やかにテロリストを潰すことだ」とプーチン。 

<引用終了>


気に入った冗句がひとつでもあったでしょうか?

ウォッカあるいはサマゴン [注:サマゴンはロシアやウクライナの自家製蒸留酒。ルーマニアではツイカみたいに庶民的な酒] でもチビりながら楽しんでいただければ、現地にいるような雰囲気が多少は出るかも。7番、12番、13番は面白いですね!37番も実に面白い。46番は陸続きのヨーロッパではこんなことが現実に起こり得るんだと巧妙に教えてくれています。

去年から今年にかけてウクライナ東部で進行していた内戦は米国とロシアとの間の代理戦争になっていました。これらの冗句の多くはそうした現状を非常にうまく風刺しています。もちろん、米国に対する痛烈な批判も含まれています。

このウクライナ内戦、一日でも早く政治的解決に漕ぎつけて欲しいものです。



参照:

1Scott’s Collection of Russian Humor (Hilarious – MUST READ!!): By The Saker, Oct/22/2015, thesaker.is/scotts-collection-of-russian-humor-hilarious-must-r...




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