2017年1月22日日曜日

米国は実際には日本をどう見ているのか - 「屈服した敵国」としてか、それとも、「同盟国」としてか



この投稿の表題はわれわれ日本人にとっては非常に気にかかる。

この問い掛けに対する答えは三通りありそうだ。

敵国、同盟国、あるいは、中立・・・ そして、それらの三通りの答とは別に、そういった色分けをすること自体をできるだけ避けたい気持ちもある。何しろ、すべては相対的な価値観によって支配され、その種の議論は感情論に陥りやすい政治の世界の話であるからだ。さらには、さまざまな言い分はいくつかのサブグループに再分類することも可能であろう。世論をふたつに、あるいは、三つに分断してしまう可能性がある。

そういった状況を承知の上で、本日はひとつの見解 [1] をご紹介しておきたいと思う。

結局のところ、現在の日本が置かれている国際政治環境においては、この設問はわれわれ日本人にとっては避けては通れないし、かなり気になる事柄でもある。したがって、この問い掛けを直視する必要がある。少なくとも、私にはそう思える。


<引用開始>
Photo-1: © REUTERS/ Kevin Lamarque

日本の安倍晋三首相が真珠湾の戦艦アリゾナ記念館を訪問したことを受けて、日本は米国の同盟国であるとするさまざまな主張があるけれども、現実を見ると「米国は日本を屈服した敵国として扱っている」と、ロシアの政治学者であるイーゴル・プシェニチ二コフはスプートニク・ニュースに説明した。

12月末、日本の安倍晋三首相がホノルルへやって来て、真珠湾の戦艦アリゾナ記念館を訪問した。何人かの彼の前任者たちがかって訪問したことはあるが、1941年に日本軍が真珠湾を奇襲し、その結果、米国が第二次世界大戦に参戦することになった歴史的にも有名なこの地を日本の現役の首相が訪問するのは初めてのことである。


Photo-2: 日本の安倍晋三首相がホノルルのパンチボールに所在する国立太平洋記念墓地にて献花。20161226日。© AFP 2016/ STR / JAPAN POOL VIA JIJI PRESS

日本の安倍晋三首相は、20161226日、米国ハワイのホノルル、パンチボールにある国立太平洋記念墓地において献花した。

この訪問は先に米国のオバマ大統領が米国の現職大統領としては始めて原爆投下の被災地を訪問したことに対する答礼である。

スプートニク・ニュースはロシア戦略問題研究所(Russian Institute for Strategic Studies)所長の顧問役を務めるイーゴル・プシェニチニコフをインタビューし、これら二国が如何にして第二次世界大戦の遺産について折り合いを付けるべきかについて論じ合った。

「当時、疑いもなく日本に大成功をもたらした真珠湾の奇襲に米国は大きなショックを受けた」と、彼は言う。



Photo-3: © AFP 2016/ TOSHIFUMI KITAMURA. 2016527日、バラク・オバマ米大統領が阿部晋三首相と共に広島の平和記念公園の慰霊碑に献花。オバマ大統領は、昨年の527日、原爆犠牲者に向けて世界でも初の感動的な言葉を捧げた。

彼はさらに続けた。ソ連による前代未聞の努力によって、ならびに、ソ連が受けた甚大な被害を通じて均衡は崩れ、ヒトラーに対抗する同盟国の側に有利な展開となって行った。

その後、米国は真珠湾で自分たちが受けた屈辱を報復したのだ、と彼は言う。

すでに日本の軍部は疲弊し、ほとんど完敗の状況に追い込まれており、降伏するまで余すところ何日かとなっていた。したがって、広島や長崎へ原爆を投下することには戦略的な必然性は何もなかった。

しかしながら、この政治学者が言うには、原爆の投下はワシントン政府にとっては倫理的な課題ではなかった。つまり、真珠湾は原爆を使用するための道義的な言い訳となったのである。原爆の使用は長期的な目的を追求するのには絶好で、米国側にとっては最適の条件下で日本に対する勝利を実現したのである。

ワシントン政府が手にした恩恵は歴史が証明している。つまり、それはアジア・太平洋地域における軍事的優位性である。1945年の日本の降伏後、米国は日本へ数多くの部隊を配備して、同地域を軍事的に強化した。



Photo-4: 日本の安倍晋三首相 © REUTERS/ Toru Hanai. 日本の首相が1941年の真珠湾の奇襲によって生じた死者に対して哀悼の意を表した。

こうして、米国は日本を冷戦の真っただ中にあるソ連邦と対峙する橋頭保とした。そして、ソ連邦の崩壊後でさえも、米国はこの地域での軍事的存在を継続している、とプシェニチニコフは言う。 

彼によると、日本に配置されている米軍基地の数は現在94カ所あって [訳注: 米軍基地の総数は報告者によって異なる。つまり、米軍専用の施設だけを数えるのか、それとも、日米共同使用の施設も数えるのか、さらには、自衛隊の施設を米軍が一時的に使用することができる施設も含めて数えるのかによって総数は大きく異なる。注意が必要だ]、アジア・太平洋地域では最大規模となっている。「日米相互協力および安全保障条約」はペンタゴンが必要とする米軍部隊や武器を米国の裁量で配置することができるようにあらゆる権利を米国に与えている。

日本に配備されている米国の軍隊は日本を防衛するためのものであるという主張は純粋なフィクションである、と彼は言う。現実には、日本に駐留する米国の軍隊はすべてがロシアに対抗するものであって、それ故に、反撃するにはロシアは報復処置を取らざるを得ない。日本は米国の不平等なパートナーである。 

<引用終了>


ソ連邦はゴルバチョフ大統領が辞任したことによって、19911225日に崩壊した。あれから満25年が過ぎた。ソ連邦時代の共産主義が政治的イデオロギーとして国際的に拡大することを防ぐための橋頭保としての役割を担ってきた日米安全保障条約は冷戦の終結後も温存され、現在に至っている。

上記の引用記事の最後の文章は「日本に駐留する米国の軍隊はすべてがロシアに対抗するものであって、それ故に、反撃するにはロシアは報復処置を取らざるを得ない。日本は米国の不平等なパートナーである」と言っているが、これは何を言おうとしているのだろうか?

「不平等なパートナー」とは「軍事的に不平等なパートナー」という意味であろう。米ロ戦争が起こった場合、ロシアが報復せざるを得ない相手は西太平洋では日本と韓国だ。米国の本土は何千キロも離れている。この地理的な条件が軍事的には日本と米国との間に非常に大きな非対称性を生み出している。それ故、ロシアを相手にした場合、日米両国はお互いに軍事的にはとても平等にはなり得ないのだ。

この記事を読んで明らかに理解することができることは米ロ戦争が起こった暁には日本国内の米軍基地は当然ロシアからの報復の対象となる。それが核弾頭なのか、通常兵器なのかはここでは問題ではなく、ロシア側が行う反撃の戦略としては日本国内の米軍基地は疑いもなく報復攻撃の対象となるのだ。94カ所の基地のすべてが対象なのか、その一部だけが対象となるのかは素人の私には分からない。大量の米軍戦闘機が配備されている三沢、横田、厚木、岩国や嘉手納の基地、ならびに、海軍基地である横須賀や佐世保は真っ先に報復を受けることだろう。さらには、司令部やレーダー施設、燃料・弾薬の貯蔵施設の所在地も同様だろう。

また、このロシアの政治学者の見解によると、米国は日本を「屈服した敵国」として位置付け、対等な「同盟国」として扱っては来なかった、と言う。

そう言われてみると、たとえば、沖縄の米軍基地周辺で起こるさまざまな暴力事件に対する米国側の対応には、歴史が教えているように、対等な同盟国間に求められる真摯な態度はまったく見られない。その不平等さは目を覆うばかりだ。同じような事件が何度となく繰り返して起こっているのに、対応策は変わらず、基本的な構造は変わらない。これらの状況を見ると、この政治学者の結論は容易に理解することが可能だ。

次に、一国の指導者のレベルでは日米間で何が起こっているのだろうか?

昨年の12月末、安倍首相は真珠湾を訪れ、戦艦アリゾナ記念館で米兵の犠牲者のために献花した。これは、昨年、オバマ大統領が広島で原爆投下の犠牲者に献花したことと並んで、日米間の和解を象徴するものだとして広く受け止められている。また、阿部首相はハワイでクリスマス休暇を送っていたオバマ大統領とも会談した。安倍首相は日本の国民に向けては日米間の同盟の強化を喧伝している。

しかし、日米間の外交の深層はどうかというと、綺麗ごとだけでは終わらない。月刊誌「エルネオス」1月号の巻頭リポート「パワーポリティクスの2017年、外交で躓いた安倍首相の正念場」には興味深い記述が見られる。この記事は、一言で言えば、安倍首相はクリスマス休暇でハワイに滞在していた「オバマ大統領に呼びつけられて」ハワイを訪問したのだとして、日米間の政治の現実を暴露している。

安倍首相は近いうちにホワイトハウスから去って行くオバマ大統領自身のレガシー作りの一翼を担わされたのである。残念ながら、日米二国間に対等な外交姿勢は見られない。

この見方が真実であるとすれば、やっぱり、米国にとっては日本の安倍首相は「屈服した敵国」の首相でしかないのだと言えよう。


♞  ♞  ♞

ここで、一点だけ付け加えておきたいことがある。

中国のある高官はこう言った。「尖閣諸島をめぐって日中間で武力衝突が起こり、米軍が参戦した場合、中国が報復する対象は日本の米軍基地だ」と。

ロシアと中国とが日本を叩くために口裏を合わせたのであろうか。これは、多分、そういった次元の低い話ではない。すべては日米間の安全保障条約の存在がそう言わせているのだと考えられる。

太平洋戦争で完璧な敗戦を経験し「不戦」を誓った筈の日本で軍備が拡張され、米軍と一緒になって地球の裏側にまで自衛隊を送り込もうとする政治的環境や法律による裏付けが日本で着々と進められている。まるで悪夢を見ているようだ。「日本はこうするんだ」、「日本はこうしたいんだ」という日本独自の選択肢は日米同盟の存在によって歪められ、狭められている。具体的な例を挙げるまでもなく、米国は自国の利益のためには他国の主権や尊厳にはお構いなしだ。

やはり、米国にとっては日本は「屈服した敵国」でしかないのだろう。

しかし、米国が今や世界における覇権を失っていく過程にあるとはいえ、「従順」を基調とした対米政策しか持とうとはしない日本は米国にとっては貴重な存在であろう。戦闘機だ、イージス艦だ、対空ミサイルだと言って、日本は超高価な米国製の武器をあれこれと買わされる。しかも、その機能たるや実際には不完全なものも多く、日本側には無駄遣いとなってしまう。そして、日本は莫大な額となる米軍の駐留経費の一部までも支払っている。

国際政治に対してはコントロールをする術を持たないわれわれ一般庶民はせめて最悪の事態(つまり、米ロ戦争)が起こらないようにと祈るだけである。



参照:

1: How the US Really Views Japan Prostrate Enemy or Ally?By Sputnik, Jan/05/2017,https://sputniknews.com/world/201701051049294503-us-japan-asia-pacific/






0 件のコメント:

コメントを投稿