2017年5月11日木曜日

西側大手メディアの沈黙 - 最近の60日間にトップのロシア人外交官が4人も不可思議な死に方をしたというのに・・・



西側(米国およびその同盟国である英国やEU、オーストラリア、日本)の大手メディアの偏向振りは毎日のニュースの取り扱い方に明確に現れる。個々のニュースについては当初何も分からいが、日が経つにつれて周辺のさまざまな情報が入手できるようになると、否が応でもその実態が見えてくる。

新冷戦の構造の中で行われているロシアに対する情報戦争を例にして情報操作がどのように行われているかを分析してみると、その実態が具体的に見え始める。

大手メディアは事実を歪曲し、あるいは、情報を隠ぺいすることによって情報をあからさまにコントロールしようとする。一般庶民の認識をある特定の方向、つまり、米政府の背後に君臨するディープ・ステ―ツが目標として持っている筋書きに沿った方向へと誘導しようとする。その筋書きに合わないニュースは歪曲され、極端な場合には報道の対象から外されてしまう。ひと言で言えば、これは一般庶民に対する「洗脳」のプロセスに他ならない。こうして、ロシアに関する情報戦争は西側の大手メディアによって大っぴらに進められている。

民主主義の中核を成すものとして西側が長年にわたって喧伝し続けてきた「報道の自由」や「報道の公正さ」なんてとうの昔に屑籠の中へ破棄されてしまった。しかも、そうすることが当然であるかのような振舞いでさえある。米国が「報道の自由」や「報道の公正さ」の必要性を唱えれば唱える程、実際には「報道の自由」や「報道の公正さ」が無いからこそ、あるいは、許さないからこそそう言っているんだな、という逆説的な現実に気付かされるのが落ちだ。これは民主主義社会にとっては実に大きな不幸である。特に、ニューヨークの国際貿易センタービルへ旅客機が突っ込んで、ニューヨークのスカイラインでは象徴的な存在であったツイン・ビルが崩壊することになった同時多発テロが起こってからというもの、この潮流は顕著になり、大手を振って歩き始めたように感じられる。今や、フェークニュースが蔓延している。

あるいは、この現状認識は小生の単なる勘違いであろうか?現在の潮流は自作自演作戦を発端にして米国が推進したベトナム戦争で米軍が事実上敗北し、米軍をベトナムから全面的に撤退させるという政治的には受け入れ難い現実に見舞われた頃にまで遡るのだろうか?あるいは、ハワイを目指して飛来する日本軍戦闘機の行動を事前に知りながらも、現地司令官にはその情報を伝えずに、真珠湾への奇襲を成功させ、それによって米国世論を一気に第二次世界大戦への参戦に誘導するという作戦をとった当時の米国政府にまで遡るのかも知れない。実際には、情報操作は常に蔓延しているのだと言わざるを得ない。それが政治の世界の真の姿なのである。

そして、またもや、米国は伝統的な価値観や倫理観をかなぐり捨ててしまったのだ。そこには坂道を転げ落ち始めた米帝国を何としてでも食い止め、世界の覇権国としての地位を維持し、経済的繁栄を少しでも長く保とうとして躍起になっている姿がある。そのためならば、今まで金科玉条のごとく唱えてきた民主主義や人権の尊重はポイと捨ててしまう。国内政策においては米国は警察国家へと変身した。警察は今や軍隊のような重装備だ。異論を唱える市民は厳罰に処される。民間の刑務所ビジネスは大繁盛。諜報機関は一般市民の電話を盗聴し、インターネットにおけるお喋りを収録して、それらを分析する。その過程では、米諜報機関自身が行ったハッキングはあたかもロシアや中国が行ったかのように偽装を施すことさえも可能だという。われわれ素人にとっては驚くばかりの現状である。

古典的な定義での戦争の背後では今さまざまな抗争が繰り広げられている。貿易戦争、金融戦争、情報戦争、サイバー戦争、等とまったく切りがない。

そのような現状を物語る、少なくとも、示唆してくれる記事が最近目についた。「西側大手メディアの沈黙 - 最近の60日間にトップのロシア人外交官が4人も不可思議な死に方をしたというのに・・・」と題されたもので、今年の224日に出版されたものである [1]

本日はその記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>

【モスクワ発】 外交官として働くことが生命の危険を招き、非常に危険な職業だと考える人はいないだろうと思うが、これは、少なくとも、ロシアの外交官にとっては今急速に変貌しつつある。

最近のメディアの関心はオーバル・オフィスに登場したドナルド・トランプ新大統領に集中している。新たに執務を始めたばかりの大統領の一挙手一投足を巡って賛否両論が湧き起る中、突然の出来事であり、かつ、不可思議にさえも見えるロシア人外交官の死に関しては大手メディアは注意深い分析を一切行わず、一般大衆の関心は喚起されないままだ。

少なくとも米国においては、これらの外交官の死に対する一般大衆の関心は最低のレベルである。それは時期的にはちょうどトランプとロシア政府との密接な関係が喧伝され、トランプがメディアから否定的な報道を集中的に受けていた時期と重なってしまったからでもある。そればかりではなく、何ヶ月も続いている反ロシアのプロパガンダをシリア紛争やロシアが米国の大統領選に介入したとする主張と何としてでも関連付けようとする動きの真最中にあったからでもある。

12月末以降にトップのロシア人外交官が4人も不明瞭な状況の中で死亡した。4人中の3人はロシアを代表する大使である。

この一連の死は1220日に始まった。トルコ駐在のアンドレイ・カルロフ・ロシア大使がアンカラで写真展を見学している際に銃撃を受けて死亡した。暗殺の下手人は22歳のトルコ人警官であって、その時彼は勤務外であった。犯行の際に彼は「アレッポのことを忘れるな!」と叫んだ。これは、かってはシリアで最大級の都市であったアレッポの街をシリア政府軍が米国の支援を受けたアルカエダのテロ集団から奪還しようとしていたが、その際にシリア側に手を貸していたロシアの役割を非難したものである。

カルロフの死はよりによってロシアとトルコの両国関係が非常に厳しい時にやって来た。2015年にトルコがロシア空軍のジェット戦闘機をシリア領内で撃墜し、両国の外交関係を損なうという出来事を受けて、両国はちょうど和解努力の真最中にあったからだ。

ロシアのウラジミール・プーチン大統領はカルロフの暗殺を明白な挑発であると評した。これはシリアの和平交渉を失敗させようとするものだと述べた。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はこの意見に同調して、「トルコとロシア両国はこのような自作自演作戦には惑わされない」と付け加えた。

しかしながら、この暗殺事件に対するメディアの関心はその同じ日にベルリンで起こった注目度の高いテロ事件によってすっかり弱められてしまった。この事件はイスラム国への支援を主張していたとされる亡命の意図を持ったチュニジア人によって引き起こされたものだ。

23週間後、別のロシア人外交官がギリシャのアテネで突然死亡した。

ギリシャの首都でロシア大使館に勤務する上級外交官であるアンドレイ・マラニンが、19日、彼のアパートの浴室で死亡しているのが発見された。彼の死体が発見されてから、ギリシャの警察は彼の死に関して調査を開始した。「当初の観察」によるとマラニンはごく当たり前の理由で死亡したとの声明があったにもかかわらず、マラニンの死因は未だ確定されてはおらず、この調査は今後何らかの結論を出さなければならない。

その後数週間の内に、もうふたりのロシア大使が死亡した。

駐インドのロシア大使、アレクサンダー・カダキンが126日にわけの分からない病気によって「短期間」の内にインドの病院で死亡した。  インドの指導者はインド・ロシア関係の推進に顕著な役目を担ってきたカダキンの死を悼んだ。彼の貢献振りは、昨年の10月、両国間で結ばれた防衛とエネルギーに関する重要な取引でその頂点に達したばかりであった。

最近の220日、駐国連ロシア大使を務めるヴィタリー・チュルキンがニューヨークで執務中に突然亡くなった。ロシア外務省の公式発表はチュルキンの死に関する状況については何の説明もせず彼の友人や親戚に向けて弔意を表明しただけであった。しかしながら、匿名の米政府や法の執行部門の高官らは彼の詳細な死因は不明ではあけれども、チュルキンは明らかに心臓発作で亡くなったようだとロイターに向けて述べている

チュルキンの副官であるピョートル・イリイチェフは故人となった外交官についてこう語った。「大使はロシアの国益を擁護するために彼の全生涯を捧げ、何時も最前線にあって、もっともストレスの高い役目を担っておられた。」 確かに、シリアのアレッポにおいてロシアが行った爆撃に対する彼の強力な擁護に関して、チュルキンは西側の同僚の何人かから非難を招いていた。しかしながら、彼は依然としてモスクワ政府の外交政策を擁護し続けた。

ロシアのニュース社の報道によると、プーチンはチュルキンの死亡のニュースを聞き、動揺を隠せなかった。 

これら4人のトップクラスのロシア外交官の死はまさに米ロ関係が不安定となった時期にやって来たのである。トランプ政権のマイケル・フリン安全保障担当補佐官と駐米ロシア大使との間の関係に国際的な関心が集まって、電話の内容が問題視され、最終的にはフリン退役中将の辞任が現実のものとなった。

フリンを巡る議論は結果的にトランプ政権とロシア政府との間の関係にまで関心が及んだことから、この一連のロシア人外交官の死は外交的なニュアンスや専門知識が特に求められる時期に起こったとも言えよう。

<引用終了>


これで、仮訳は終了した。

ここに報告されている4人のトップクラスのロシア外交官のうち、駐トルコ大使の死は白昼に起こった暗殺事件である。そして、残りの3件についてはその真相が今でさえも究明されたとは言えない。

そんな中で私自身が一番不可思議に感じるのは執務中に亡くなったヴィタリー・チュルキン駐国連大使の死だ。そう思わせる最大の理由はチュルキン大使が死亡してから3週間後の314日に報道された小さな記事 [2] にある。その全文を下記にご紹介しておこう。


♞  ♞  ♞

<引用開始>

【ニューヨーク発】 1ヶ月足らず前、国連はヴィタリー・チュルキン駐国連ロシア大使が執務中に突然亡くなったとの報を聞き、大きな衝撃に襲われた。ロシア外務省はチュルキン大使の死を巡る状況に関して詳細を報じることはなかったが、米政府や法の執行機関からの匿名の高官らはこの外交官は明らかに心臓発作で亡くなったようだとロイターに向けて述べ、死亡時には何らの不正行為も無かったと言っている。

ロシアの駐国連ウラジミール・サフロンコフ副大使はチュルキン大使は病に倒れ、病院へ担ぎ込まれたが、その後亡くなったとAP電に対して述べた。チュルキン大使の死は余りにも急な出来事であり、衝撃的でもあり、謎に包まれているとも述べている。

チュルキン大使の時期を逸した死は、米政府からの圧力によって、さらに長い間秘密のままに放置されることになりそうだ。ニューヨークタイムズのマイケル・グリンバウム記者によると、米国務省は、ニューヨーク市の法務局と共に、同市の検死局に対して駐国連ロシア大使の死因に関しては情報を明かさないように要請しているからだ。

グリンバウムは自分のツイートで検死長官事務所の報道官を務めるジュリー・ボルサーの声明を引用して、こう言った: 

「国際法ならびに外交儀礼に準拠するために、ニューヨーク市法務局は検死長官事務所に対してヴィタリー・チュルキン駐国連ロシア大使の死因と死の状況に関しては公表しないようにと指示しました。国務省からの公式の要請の中で概略されているように、チュルキン大使の外交官特権は同大使の死後についても有効となります。本件に関するさらなるご質問は米国務省宛てに質問してください。」 

チュルキンの死はそれ自体が疑義を引き起こすことはないのかも知れないけれども、60日以内に5人ものトップのロシア外交官が死亡したという事実は、チュルキンの死に関する情報は公開させないとした米国務省の指示の理由に疑問を感じさせるのには十分であろう。

米政府は秘密裏に暗殺を遂行するための武器を開発しており、この武器は暗殺の犠牲者に瞬時に心臓発作を引き起こすという。この事実はソーシャル・メデイア上で陰謀説を拡散させることに役立ったようだ。

ミント・プレスが先に報道しているように、12月末以降に何人もの外交官が不可解な状況で死亡している。駐トルコ・ロシア大使のアンドレイ・カルロフ、ロシア外務省の南アメリカ局の高官であるピーター・ポルシコフ、駐インド大使のアレクサンダー・カダキン、および、アテネにおけるロシア領事であったアンドレイ・マラニンの面々が死亡した。

チュルキンを含めて、これら外交官の死は米ロ間の関係が非常に不安定になった時に起こった。クレムリンは二国間の外交関係は冷戦時以降で最低になっていると最近コメントした。

特に、シリア政府に対する経済制裁ならびに同国での軍事的展開を通じてシリア政府を封じ込める動きを西側が強めているが、これはまさにチュルキンがロシアを代表するトップの外交官として対抗してきた外交案件でもあり、チュルキンの死はロシア側に手ひどい損失を招くこととなろう。

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

国際法ならびに外交儀礼からチュルキン大使の死因は公表できないと米国務省は言う。そのような国際法や外交儀礼が存在する理由とはいったい何だろうか?私たちのような素人にはまったく分からない。専門家からの説明を待つしかない。

しかし、たとえそうであったとしても、米国政府がチュルキン大使の死因を秘密にしておきたい理由は実際に存在するのではないか。火のない所に煙は立たないという。間違いなく、隠しておきたい何かがあるのだと言えそうだ。あるいは、ロシア政府に心理的な圧力を加え、恐怖感を生じさせるための単なる情報コントロールのテクニックなのかも知れない。果たしてどちらなのかは私には分からない。

国連の安保理で活躍していたチュルキン大使の仕事振りを考えてみると、同大使をなき者にしようという陰謀説は現実味を帯びて来る。その陰謀が成功裏に実施された場合の受益者は米国のネオコンや軍産複合体であると言わざるを得ない。これは素人であっても容易に想像できることだ。

インターネット上で陰謀説を拡散することになったと言われる米政府が開発した暗殺用秘密兵器とはいったいどのようなものであろうか。それに関しても下記にご紹介しておこう [3]。記事の題名は「心臓発作を引き起こすCIAの極秘銃」。


♞  ♞  ♞

<引用開始>

暗殺に使われるCIAの秘密兵器は心臓発作を引き起こす毒物を塗った小さな矢を発射する装置だ。この情報は議会に対する説明用ビデオによって詳述されている。このCIAの秘密兵器から発射された矢は衣服を貫通することが可能で、皮膚に小さな赤い斑点を残す。この命取りになる矢が突き刺さって、暗殺の目標となった人物はあたかも蚊に刺されたかのように感じる。あるいは、まったく何も感じないかも知れない。この毒矢は目標に突き刺さった後には完全に分解してしまう。致死的な毒が血流に入り、心臓麻痺を引き起こす。致命的な被害を与えた後、毒は急速に変性し、たとえ死体解剖が行われたとしても、ごく自然な要因以外の理由によって心臓麻痺がもたらされたという事実に辿りつくことはできない。まさに完璧なジェームズ・ボンド流の兵器だ。これはすべてが議会証言の資料によって検証可能だ。このCIA の秘密兵器に関する驚くべき情報はCIA によるならず者的な活動に関して1975年に米上院で行われた証言に由来する。この秘密兵器はチャーチ委員会(政府の諜報活動に関して調査をする特別調査員会)の公聴会で公にされた数多くのジェームズ・ボンド的な事柄のひとつである。

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

短い記事である。この情報に基づいて言えば、この記事の内容とチュルキン大使の死とを関連付けることができる人は、法医学の専門家を含めても、皆無だ。しかしながら、そのような憶測を生み出すエネルギーは現在進行しているロシア・バッシングや新冷戦から十二分に供給されていると判断することは可能だ。非常に不気味である。何がいったい不気味かと言うと、それは米国の諜報機関が秘密裏に行っているさまざまな行動や作戦のことだ。

映画「007は殺しの番号」が日本で初公開されたのは1963年。もう50年も前の話である。当時は冷戦の真っ只中であって、英国の諜報機関「MI6」のスパイが大活躍をする映画である。そこには意表をついた大小の秘密兵器がこれでもか、これでもかと登場して、われわれ観客を楽しませてくれた。しかしながら、それらはあくまでもフィクションの世界での話であった。

その一方、上記の引用記事が示す内容は現実の話だ。米国の諜報機関が科学の粋を込めて作り上げた極秘銃である。「毒は急速に変性し、たとえ死体解剖が行われたとしても、ごく自然な要因以外の理由によって心臓麻痺がもたらされたという事実に辿りつくことはない」とのことだ。この秘密兵器はまさに悪魔的な完璧さであると言えよう。


結局、チュルキン大使の死亡原因に関する情報は20年も30年も待たなければ公開されないのであろう。



参照:

1Media Silent As 4 Top Russian Diplomats Die Mysteriously In Last 60 Days: By Whitney Webb, Mint Press News, Feb/24/2017, www.mintpressnews.com/media-silent-4-top-russian-diplomats...

2State Department Lobbied to Keep Russian Ambassador’s Cause of Death Secret: By MintPress, Mar/14/2017

3The CIA’s Secret Heart Attack Gun: By GunFun, Jul/19/2013, www.military.com > ... > Guns > Pistols






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