2018年9月20日木曜日

MH17便を撃墜したミサイルの製造番号によると、同ミサイルは1986年に製造され、ウクライナ軍の所有であったことが判明


マレーシア航空のMH17便を撃墜した「ブク」ミサイルはロシア軍が発射したものであるとオランダ当局はすでに結論付けている。ところが、9月17日にロシア国防省が発表した情報はオランダ当局の見解を真っ向から覆すものとなりそうだ。MH17便の残骸から見つかったミサイルの製造番号はふたつある。それらはエンジンとミサイルのノズルにマークされたものだという。それらを追跡したところ、この「ブク」ミサイルが特定されたのである。
問題のミサイルがいったいどの工場で製造されたのか、ならびに、何処へ納入されたのかを示す決定的な記録文書が発掘され、これらの情報が公開された [注1]。製造年は1986年だと言う。32年前の書類が見つかったのである。
ところで、MH17便撃墜事件は米ロ間での情報戦争の観点から言えば、ロシアを悪魔視するにはもっとも重要な最前線のひとつであると言えよう。ロシア側が発表したこの情報はウクライナ/米国側にとっては不利となる。そうした状況を反映して、ニューヨークタイムズはすかさずウクライナ側の肩を持った記事を発表し、今までの筋書きを踏襲しようとしている [注2]。
今まで展開されてきた米ロ間の情報戦争を観察すると、たとえば、シリアにおける反政府派武装集団からのアレッポ市の解放の場面、反政府派による化学兵器を用いた自作自演作戦、英国のソルズベリーで起こったスクリッパル父娘毒殺未遂事件、等の出来事で共通して見られたパターンを抽出すると、米ロの姿は相対的に次のように集約される。つまり、ロシアは事実に基づいた情報を提供し、米国やその同盟国は虚偽の情報やでっち上げを次から次へと流す。
今回のロシアからの新しい情報を巡る西側の反応として私が個人的にもっとも興味深く感じたのは「Silence on MH17 Data Released by Russia Proves Its Credibility - French Official」と題された9月18日付の記事(sptnkne.ws/j8MB)だ。この表題を仮訳すると、次のようになる: 「ロシアが発表したMH17便に関するデータ(つまり、「ブク」ミサイルの製造番号)については(西側は)皆が沈黙しているが、それはこの情報の信頼性が高いからだ ― フランス高官の言葉」
今まで西側は嘘やでっち上げの出来事、自作自演作戦、洪水のように流されるフェークニュースを駆使してロシアを押しまくって来たが、ロシアは事実を前面に出して防戦している。今後どのような展開が待っているのであろうか?
本日はこの記事 [注1] を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。

 
<引用開始>



 
 
 
 
 
 
 

Photo-1: 資料写真。2014年に起こったMH17便撃墜事件の現場におけるオランダ人専門家。© Aleksey Kudenko / Sputnik

ウクライナ東部でマレーシア航空MH17便を撃墜した「ブク」ミサイルの残骸の中から発見された部品の製造番号はミサイルが1986年に製造されたことを示している、とロシア軍部が説明した。さらに、この飛翔体はウクライナが所有していたものだと言う。
オランダが主導する国際調査団によると、2014年6月 [訳注:「6月」ではなく、正しくは「7月」] に旅客機を撃墜したミサイルの残骸からはふたつの製造番号が発見されている。これらの製造番号はエンジンとミサイルのノズルにマークされていたものだ。
ロシア軍は月曜日(9月17日)にこれらふたつの製造番号を持った部品は「8868720」の製造番号を持つミサイルに使用されたと述べた。
記者団を前にして、ニコライ・パルシン将軍は「ブク」ミサイルに関する一連の書類を示した。これらの書類によると、いくつかの情報はこの説明のために機密が解かれたばかりであるが、問題のミサイルは1986年にモスクワ近郊のドルゴプルドニの軍需工場で製造されたものである。

 

 
 
 
 
 
 
 
Photo-2: エンジンとミサイルのノズルにマークされた製造番号。

また、このミサイルは1986年12月29日に製造工場から出荷され、現在のウクライナ領土内に駐屯していた20152部隊へ配送された。この部隊は現在はウクライナ軍の223対空防衛部隊であると同報告書は述べている。この223対空防衛部隊は、2014年6月、ウクライナ東部の反政府派を掃討しようとしたキエフ政府の軍事行動の一翼を担ったと同将軍は述べた。
本証拠はロシアから密かに持ち込んだ発射台を使ってミサイルを発射したものであって、ロシアはMH17 便の撃墜に責任があると主張するウクライナやその他の当事国の非難を覆すものとなるとこのロシア軍の報告書は言っている。さらに、ロシア軍部はすべての関連資料をオランダの調査団へ送付したと付け加えた。

 


 
 
 
 
 
 


Photo-3: ロシアで見つかったミサイルの出荷記録。

ロシア軍部は、英国に本拠を置き、市民によるジャーナリズム組織であると自称する「ベリングキャット」グループが提示したビデオ映像についても反論している。このビデオはミサイル発射台はロシアから持ち込まれたとの主張を支えるものである。ロシア国防省はこのビデオの一部を示し、辻褄が合わないことを強調した。つまり、このビデオは背景の中にオリジナルにはなかった発射台の画像を嵌め込み、合成したものであることが証明されたと述べている。
このべリングキャットの調査内容はMH17便の調査に従事しているオランダの検察官が最近報じた最新情報の中で言及されていたことから、ロシア軍としては急遽この調査内容を詳細に検証することになったと述べている。ロシア側のビデオはウクライナの通りでアブラム戦車が同様の手法でトレーラーで輸送される場合実際にはどのように見えるのかに関してひとつの事例を示すものとなっている。
 


 
 
 
 
 
 
 

Photo-4: べリングキャットの画像をロシアの専門家が検証。

この発表の3点目はウクライナの職員の通話を2016年に傍受した記録である。この記録によると、ウクライナの職員は飛行制限が設けられたウクライナ上空を航空機が通過する際のリスクを論じ合っていた。一連の不平不満の中にはひとつの文言があって、それは飛行制限を守らないと「われわれはマレーシア航空のもうひとつのボーイングを****するぞ」と言っている。
これはロシア人将校のルスラン・グリンチャク大佐から寄せられたものである。彼はウクライナ空域のレーダーコントロールの任に当っている部隊で勤務をしている。彼の部隊は2014年のMH17 便を追跡していたので、彼はこの悲惨な事件に関して一般大衆はまったく知らない情報を所有しているのかも知れない。

 


 
 
 
 
 
 
 

Photo-5: ルスラン・グリンチャク大佐からの情報がロシア軍部によって紹介された。

この記者会見でホスト役を演じたイーゴル・コナシェンコフ将軍はウクライナは自国のレーダー網から入手したデータをオランダの調査団へ提出することを怠ったと言った。また、彼は1986年に「ブク」ミサイルを受け取ったウクライナの部隊から入手可能な記録書類が、キエフ政府がこれらの記録はもはや入手できないと宣言しない限りは、この調査には有益であろうと述べた。彼はこの種の記録書類は今でも保管されている筈であり、関連規則は今でも生きている筈だと強調した。

 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


Photo-6: モスクワ政府は「根拠のない結論」を受け入れる積もりは毛頭ないと駐国連ロシア大使が言った。

ロシア軍部はウクライナの反政府派がウクライナ軍からミサイルを盗み出したというシナリオを反証する証拠は持ってはいないと言った。しかしながら、それと同時に、彼らはウクライナ政府の高官がそのような出来事はついぞ起こらなかったと公に述べた事実を指摘してもいる。
マレーシア航空MH17便は2014年7月17日にウクライナ東部の上空で撃墜され、同国の反政府派によって支配されている地域に落下した。この撃墜によって283名の乗客と15名の搭乗員の全員が死亡し、乗客のほとんどはオランダ国籍であった。現場から何の証拠も回収されてはいないにも拘わらず、この悲劇が起こった初日からロシアは西側のメディアによって非難される始末であった。

オランダが主導する合同調査団(JIT)にはロシアは含まれず、ウクライナをそのメンバーとして含めている。この調査は中立ではなく、偏見を持っており、ウクライナからすべての証拠を収集することには失敗し、不審な情報源に依存したり、キエフ政府好みの筋書きに合わないロシアからの情報は無視しようとしているとロシア側は見ている。
<引用終了>

 
これで全文の仮訳は終了した。
ロシアがオランダのJITに送付した記録情報に関しては、現時点ではJITの反応はまだ報じられてはいないようだ。関係各国や西側メディアは沈黙を守っている。この情報はJITが今まで推し進めてきた結論を根底から覆すものとなりそうなだけに、面目を保つためにも、その取り扱いは極めて困難なものとなるに違いない。

JITは真実に背を向け続け、今までの政治的な結論を踏襲するのか、それとも、この機会に事実に基づいた結論へと方向転換をするのか、実に見ものである。どちらになるのかは私には分からない。
この撃墜事件で犠牲となった398名の乗員・乗客の多くはオランダ国籍である。オランダ政府が主導するJITは自国民の悲惨な死を嘘で固め続けるのであろうか?民主主義を高らかに唄い続けてきた西欧にとって、倫理的にも、政治的にも、そして、人道的にも自国民が求める真実に背を向けることが果たして許されるのだろうか?

新冷戦という現行の米ロ戦争においては、何十年にもわたって米国の盟友であるヨーロッパ諸国の政治環境では真実が最初の犠牲者となり、新冷戦はそのまま続くのかも知れない。最悪の場合、オランダの市民は自国の政府が腐敗しているという現実を改めて認めざるを得ないことになる。それとも、ここでオランダの市民が目を覚まし、自国の政治を新しい方向へと動かすのだろうか?



参照:

注1: Serial numbers of missile that downed MH17 show it was produced in 1986, owned by Ukraine – Russia: By RT, Sep/17/2018,  https://on.rt.com/9ef8

注2: Russia Missile That Shot Down Flight MH17 Was Ukrainian: By The Associated Press/The New York Times, Sep/17/2018

 

 

 

 

 

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