2019年5月16日木曜日

アメリカよ、お前はクビだ!

ドミトリー・オルロフの再登場だ。ここに彼の最近の記事がある。「アメリカよ、お前はクビだ!」というドキッとするような表題が興味を引く(注1)。

トランプ大統領がかって「アプレンティス」というテレビ番組で司会役として出演していた頃(2004年~2012年)、番組の参加者の中で落伍者に対しては「君はクビだ!」と宣告した。繰り返して発せられたこのセリフはこの番組の代名詞となった。
トランプ大統領はロシアゲートを通じて、良いにつけ悪いにつけ、世界中から注目されて来た。また、当然ながら米国そのものも然りである。米国への信頼は国際社会で急速に失われ、換言すれば、米国の役割が曖昧になって、同盟国さえも含めて、各国から「君はクビだ!」と言わんばかりの批判を受けている。

このトランプ大統領にまつわるセリフを中心にドミトリー・オルロフが米国の現状を掘り下げようとしている。彼の時評はユーモアと洞察に富んでおり、さまざまな意味で実に興味深い。そして、何と言ってもわれわれ素人にも分かり易いことが素晴らしい。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

 
<引用開始>

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ある種の皮肉はそれを素通りしてしまうにはあまりにも惜しい。2016年の米大統領選からの贈り物はトランプ大統領であった。彼が出演していた「アプレンティス」という人気番組では「君はクビだ!」という名セリフによってトランプは有名になった。この名セリフに注目してみよう。とにかく、これは本日のブログには非常に重要なのだ。「トランプ撹乱不全症」(訳注: トランプ撹乱症候群とも称されている)に罹っている連中は賛成しないかも知れないが、それは彼らが何らかの誤解をしているからだ。どんな誤解かと言うと、たとえば、米国は民主国家であるとか、誰が大統領になるのかが重要であるといった類のものだ。米国は民主国家ではないし、誰が大統領になるかは大して重要でもない。現時点までについて言えば、波間に消えて行こうとしている船で演奏をし続ける楽団の指揮者を誰にするべきかという設問と同じ程度の重要さしかない。

私はトランプがホワイトハウス入りする前からこれらの点を指摘して来た。トランプが実際に選出されたのかどうかをあなたがあれこれと考えることとは無関係に、彼は何とかホワイトハウス入りを果たした。これには「君はクビだ!」という彼の痛快なセリフと何らかの関係があったと信じるに足る理由がある。彼に投票する動機は誰かを送り込んで、ワシントンDCやその周辺の地域に巣くっている悪党どもをクビにしたいという熱烈な願望にあったと推測することは実に適切だ。しかし、悲しいかな、彼はそれを実現することはできなかった。お飾りの指導者は自分をその座に据えてくれた政治の長老たちを排除する権限なんて与えられてはいないのである。しかしながら、私はそれはまったくあり得ないと言っている訳ではない。


その代わりに何が起こったのかと言うと、政治の長老たちはトランプに対して「君はクビだ!」と言う理由を探し出すために2年間ものたうちまわって来たが、結局、そのような理由を見つけることはできなかった。こうして、トランプはホワイトハウスに今も居残っている。しかしながら、彼が今も「権力の座に座っている」と言い切るには真の権力の座がどんな匂いを放つのかを熟知している者は苦笑せざるを得ないであろう。トランプは、彼の前任者らがそうであったように、ホワイトハウスにかくまわれた捕虜同然の身に過ぎない。トランプ大統領の弾劾は彼をクビにすることに関しては不成功に終わった訳だが、皮肉なことに、数多くの長老らをクビにするばかりか、多分、法務省の支援を受けて連中を刑務所に送り込むという彼の能力を強化してくれたという意味合いにおいてあの動きは大成功であった。そして、過剰なまでの敵意や悪意ならびに執念深さといった彼独自の性格はこの目標を実現するのにまさに最適であって、面白い見せ場を作り出してくれるだろう。彼の数多くの政敵や彼を中傷することにうつつを抜かしてきた連中は責任を問われることもなしに彼を厳しく非難していた日々を懐かしく思い出すことになるかも知れない。

トランプを阻止するという動きは大統領選の大分前から始まっていた。オバマ前大統領やクリントン夫妻は互いに協力して、トランプの粗探しのために連邦政府の人員を使った。具体的に言うと「ロシアとの共謀」を示す証拠を見つけようとしたのだが、彼らは何も見出すことはできなかった。彼らは(フェースブックのクリックベイトの形で)何らかの「ロシアの介入」を発見しようとしたが、彼らが掘り出した証拠は裁判所へ提示するにはあまりにもお粗末であった。残念なことには、彼らはウクライナの共謀や介入には目もくれなかった。イスラエルの共謀や介入についても目もくれなかったし、サウジの共謀や介入についても同様であった。仮にそうしていたならば、たくさんの証拠を見つけ出すことができたであろう。それらの証拠はヒラリー・クリントンを選挙運動から締め出すばかりではなく、彼女を刑務所へ送り込むには十分であった筈だ。それはウクライナの政治的介入を調査するための建設的、かつ、有益な予行演習となったに違いないのだが、以前私が説明をしたように、米国の仕事のやり方はそれとはまったく逆方向に向かっていた。彼らをロシアに向かわせたのである。

何れにしても、トランプに対して何らかの証拠を発見することには完璧に失敗したミュラー特別検察官のチームは、結局、彼に藁をも掴む思いをさせ、彼が掴んだ一本の藁は18 U.S.C. § 1512(c)(2)に基づいてトランプを非難するという実に曖昧な可能性だけであった。これは次のような理由で誰かが有罪となることを示すものであった。つまり、これは「・・・公的な訴訟手続きを妨害し、それに影響を与え、あるいは、それを邪魔する者、もしくは、そうすることを試みる者」のことである。明らかに、自分が行っている調査は「公的な訴訟手続き」であると考えたミュラーの頭の中では一本の神経が音をたてて切れてしまった。この専門用語を調べてみると、通常、それは裁判所の中で行われ、一人またはそれ以上の裁判官が担当し、そのような訴訟手続きを行うには犯罪が起こったことを示す証拠を提出することが必要となる。もしも犯罪が無かったならば、訴訟手続きはあり得ない。ましてや、それを阻害し、それに悪影響を与え、それを邪魔する行為なんて何ら存在し得ないのである。

そこには結果として一種の官僚的な死の舞踏が起こった。普通は、そのような問題については司法長官が指針を与え、AG・ジェフ・セッションズはミュラーに対して18 U.S.C. § 1512(c)(2) は裁判所での訴訟手続きに関してのみ適用せよと指示する権限を有しており、それ以外はあり得なかった筈だ。しかし、セッションズは、不運にも、和やかでずんぐりしたロシア大使のセルゲイ・キシリャクとたまにお喋りをしていた。この些細なお喋りのせいで、 - ご存知のように、ロシア人と同じ空気を吸っただけであるのだが、ロシア人は政治的にはそれほどに危険な存在なのだ - セッションズは自分の貴重な体液を汚染してしまった。それが故に、彼はミュラーの調査からは身を引くことになった。トランプの司法チームは前に司法長官を務めたウィリアム・バーに接近した。バーはこの問題を明確にするメモをしたため、それを副司法長官のロッド・ローゼンシュタインに送付した。ローゼンシュタインはセッションズが辞任した後の司法省内では二番手の高官であり、彼はそのメモを読み、それを理解し、それに基づいて行動を起し、ミュラーの調査を中断させるべきであった。しかしながら、彼はなぜかそうしなかった。

この官僚的な死の舞踏の結末は次のように展開した。中間選挙後、トランプはジェフ・セッションズに「君はクビだ!」と言った。それから、ウィリアム・バー司法長官は容赦できないほどに鈍感なロッド・ローゼンシュタインとロバート・ミュラーに対して「君はクビだ!」と言った。また、バー司法長官は職員の誤用や検事として許せない不正行為に関する調査においてはあらゆる手段を尽くすと明確に述べている。あなたには注目すべき重要なことなんて何もないとするならば、これは眺めているだけでも面白いことであろう。「君はクビだ!」というセリフがゴム製の手りゅう弾のようにワシントンのホール内を長い間跳ね回るのではないかと推察している。しかしながら、もっともっと重要で、注目しなければならない事柄がある。

世界中で今たくさんのことが同時に起こっている。全世界が急速に再編しようとしている。世界はポスト資本主義、あるいは、ポスト産業社会の新たな秩序を模索しようとしているが、前回の革命では豊富にあった資源(たとえば、蒸気機関時代の石炭や現代における原油)は、端的に言って、もはや存在しない。残されている選択肢のすべては今までの秩序を最適化し、それを強化し、それを再編すること、あるいは、もっとも危険でもっとも機能不全な物事を排除することでしかない。この目標に関しては西側のヨーロッパ諸国は米国やEUに譲り渡した主権を取り戻そうとしており、ユーラシア諸国は中国とロシアを中心に集合し、経済と安全保障の分野で強大な同盟関係を形成しようとしている。通商や金融の流れを米国から他所に振り替えることは並大抵のプロセスではないことから、両者とも十分な時間をかけなければならない。

世界各国の中央銀行は準備金としての米ドルを吐き出して、金を買い込もうとしている。4月現在、金はリスクが無い金融資産であると見なされている。その結果、多くの人たちは金は値上がりすると予測しているが、その予測は勘違いに根ざしたものでしかない。沈みつつある船にとっては金は灯台であり、まさに不換通貨の灯台であると考えてみよう。その船に乗船している人たちは辺りを見回して、この灯台は値上がりするだろうと考えるのだろうが、それは単に視覚的な勘違いでしかない。不換通貨の購買力は間違いなく低下する(ある通貨は他の通貨に比べて大幅に低下するだろう)。金の購買力は増大するように見えるが、これもまた勘違いでしかない。つまり、市場や固定資産、特に、物理的な工場の生産設備の崩壊を背景にして金は値上がりするように思えることだろう。しかしながら、結局のところ、金の購買力もまた低下するだろう。なぜならば、如何なる金融資産を取り上げてみても、将来の購買力はたったひとつの要件によって決定されてしまうからだ。それはエネルギー、特に、化石燃料だ。とどのつまり、それは原油だ。家畜用の飼料と動物の筋力に全面的に頼る農業経済を除けば、経済はエネルギー無しには動かない。

金にまつわる出来事の中で特に興味深い点は米国に蓄えられていた筈の金が実際には何処にも見当たらないことだ。ニクソンが「金の窓」を閉じて、米ドルを金と交換する可能性が失われてから最近に至るまで、米ドルは金融的な浮上効果によって世界中で準備通貨としての地位を維持し続けることができたが、実際には、あれは手品だった。米国の最大級の債権者に秘密裏に金が売られていたのである。さまざまな国が米国へ預託した金を取り戻そうとした。特に、ドイツ(訳注:1350トン、あるいは、1236トン。どの報告書を取り上げるかによってトン数が異なる。ドイツへの返還は2013年に開始され、20178月に完了)が金を取り戻そうとした時、その要請は拒絶され、ようやく話が通じて返還されて来た金はドイツ側が預託した金ではなかった。また、非常に長い時間がかかった。米国の金に対する需要はあり得そうもない強奪さえももたらした。つまり、イラク(訳注:シリアからも含めて、合計で40トン)、リビア(訳注:144トン)およびウクライナ(訳注:33トン)から準備通貨として蓄えられていた金を盗んだのである。こうして、自国通貨を支えるために米国自身が蓄えの金を使う時が来た時には、米国は戸棚が空っぽであることに気付くであろう。

金はますます重要になっているが、エネルギーはもっと重要であり、今後もより重要であり続けるだろう。何年間か背景に押しやられてはいたが、エネルギー供給に関する課題はふたたび正面に返り咲き、今や舞台の中央に位置している。ピークオイルの議論は、結局のところ、それが消えうせた訳ではなく、シェールオイルの開発を続ける間に膨大な量の退職年金基金を使い尽くす米国のお陰で何年間か先延べされていただけである。しかし、今や、もっとも利益のあがりそうな地域は開発し尽くされ、すさまじい勢いで継続されている掘削によって利益は相殺されつつある。この新しい状況はシェールオイルの開発業界が今まで恒常的に晒されて来た惨めな財務状況に新たな不安材料を付け加えようとしている。その一方で、ロシアは天然ガスの液化プラントをいくつか立ち上げ、中国への新たな原油供給用パイプラインやトルコおよびドイツへの、さらには、その先のEU各国へ向けて天然ガスを供給するパイプラインが建設されつつある。後者のパイプラインはウクライナを避けており、このことはウクライナの地政学的価値をゼロにしかねない。

ベネズエラの油田を自分のコントロール下に収めようとする米国の必死の試みはもっとも恥ずべき形で跳ね返ってきた。ベネズエラでは、最近の展開が非常に重要な課題を浮き彫りにした。つまり、仮に米国がカラー革命を打ち出したとしても、誰もそれに賛同しなかったとしたら?私が「崩壊の5段階」(原題:The Five Stages of Collapseと題した私の書籍の中で数年前に予測したように、カラー革命の組織は徐々にその魅力を失おうとしている。何人ものワシントンの外交経験者があらゆる種類の脅かしを唱導したとは言え、ベネズエラに対する米国の軍事介入なんて考えられないことだ。ベネズエラが所有するロシア製のS-300対空防御システムが米国の軍用機に対して飛行禁止区域を効果的に形成しているからだ。その一方、米国はベネズエラに対して自分たちが課した経済制裁によってベネズエラ産原油を排除してしまったことから、今やロシア産原油を輸入せざるを得なくなった。(それほど長くは続かないだろうけれども、当面、米国はフラッキングから得られる低品質の軽質原油を産出するが、皮肉なことには、重質原油を輸入し、それを混入しない限り、ジーゼル油やその他の留分を生産するには用を成さない。)

ところで、ロシアとベラルーシの両国はロシアからヨーロッパへ輸出される原油に関して愛人同士間のやかましい言い争いを演じているが、その原油輸出の多くはベラルーシのパイプラインを経由する。ロシアとベラルーシは殆どの点において互いをはっきりと区別することが可能ではなく、彼らが口論をしている際には傍観者は彼らの無礼な言語は無視し、その代わりに、空中を飛び交う壷や刃物類に注意すべきであろう。この内輪同士の喧嘩の結末はベラルーシはロシア産原油から精製された石油製品はウクライナには供給しないというものだ。他にも奇妙な展開があった。それはロシア産原油はベラルーシにパイプ輸送され、そこからさらにEUへ輸送されるのだが、不思議なことに輸送された原油に汚染が発見され、その状況が解決されるまで原油輸送が中断された。この出来事はヨーロッパに大きな危機感をもたらした。不足量を補うために、米国は自国用の戦略備蓄原油の提供を申し出たが、さらにもうひとつの摩訶不思議な展開が表面化して来た。この原油の一部が汚染されていることが判明したのである。さらに不正もあった。米国はイランに対して一方的な経済制裁を課し、イラン原油を輸入する者は誰であっても処罰するという脅しをかけた。これはまた別の重要な議論を引き起こした。つまり、米国は世界中の国々に対して経済制裁を課しているが、多くの者があくびをしている。この状況はいったい何だろうか? 

タールサンドやシェールオイル、あるいは、産業規模での太陽光発電や風力発電および電気自動車に見られるような経済的には破滅的で一般論的にも無意味な構想は、エネルギーに関して各国を持てる国と持たざる国とに分断し、持たざる国は急速に破産してしまうであろう。空想的で概念的でしかない数多くの構想(たとえば、核融合や宇宙鏡、等)は別として、すでに存在している技術に限って言えば、産業文明を維持する手法はひとつしかない。それはウラン235(希少資源)や高速中性子炉を使ってプルトニウム239(何千年も使える)から取り出される核エネルギーだ。もしもこの選択肢は好きになれないと言うならば、他の選択肢は農業に専念し、人口密度を極端に減らし、大小を問わず都市における生活なんて諦めることしかない。

もしもこの選択肢があなたのお好みならば、核エネルギー技術(VVERシリーズ軽水炉、BNシリーズ高速中性子増殖炉および閉回路核燃料技術、等)を提供する世界でも指折りの業者の門を叩く以外には有効な選択肢はほとんどない。偶然にも、この業者はロシアの国営企業であるロスアトムだ。同社は世界の核エネルギー市場の三分の一以上を押さえ、今後の遠い将来も含めて建設予定となっている国際原子炉プロジェクトの80パーセントを網羅する。米国は過去何十年にもわたって新プロジェクトを完成することはできなかったし、ヨーロッパはどうにかこうにかたったひとつの新プロジェクトを(中国で)稼動させただけだ。その一方、日本は福島原発の炉心融解事故ならびに金銭的には大失敗となった東芝によるウェスチングハウス社の買収劇以降、核エネルギー計画は無秩序状態に陥っている。最後に残る競争相手は韓国と中国だ。重ねて言うが、どういう理由であろうとも、核エネルギーは好きにはなれないという人は、ある程度の牧草地を買い入れて、そこでロバを飼うことをお勧めしたい。

米国や英語圏あるいはEUにお住まいで、マスメディアだけにしか接してはいない人たちにとってはここまでの話は衝撃的であろうかと思う。これはたしかに衝撃的であるかも知れないが、どう見てもこれはニュースではない。これらの展開はどれも特に新しいものではなく、予想もされなかったという訳ではない。ワシントンではこれらの事柄はすべてが強く否定され、このことは非現実性が大爆発を起こす爆心地となったが、一般的にいえば西側のメディアでは驚愕を与えるほどの出来事ではなかった。また、何らかの助けになるものでもない。これらの事柄を自分で探し当てた時、あなたは屋根の上からそれに関して大声で喋りたいという衝動に駆られたかも知れない。私に言わせると、そんなことはお薦めしない。否定し続ける人たちに対して行うべき妥当な策は、彼らがあなたと四つに組みたいと願っているゲームでは時間切れに導くためにも彼らと調子を合わせることだ。それから、彼らに向かって丁重にサヨナラと言う。たしかに、これはわれわれが常日頃目にして来たことだ。米政府の高官を相手に具体的に交渉をしたいという人はいないだろうが、彼らはどっちみちそうするだろう。なぜならば、危機的な場面で交渉を行う連中は誰もが知っているように、話を継続することこそがもっとも重要なのだ。単純に言って、たとえ時間切れとなるにせよ、非常に重要である。彼らが話をしている間に人質(それがウ
ール街やペンタゴンでの人質、あるいは、米財務省証券や連邦準備金に絡んだ人質であろうとも)は密かに救出されるのだ(訳注:この辺の話の展開はハリウッド映画そのものだ)。米国にとっては時間が過ぎようとしている。時間切れとなった暁には、もっとも凄い皮肉として、世界中が米国に向かって「お前はクビだ!」と宣告することだろう。
<引用終了>

 
これで全文の仮訳が終了した。
「君はクビだ!」というセリフで有名なトランプ大統領を巡って展開されるこの記事は実に興味深い。著者特有の底の深い知識や見解、ならびに、彼独特の説得力のある話の進め方はこの記事を読む読者をどんどんと引っ張ってくれる。

福島原発での炉心融解事故以降、私は個人的には核エネルギーの安全性に信頼を寄せる者ではないけれども、著者が述べているVVERシリーズ軽水炉、BNシリーズ高速中性子増殖炉および閉回路核燃料技術、等については詳細な情報を漁ってみる必要がありそうだ。
しかしながら、核エネルギーに関して未だに適切な答えが見つかってはいない最大の課題は使用済み核燃料の取り扱いである。広大な土地を有する米国やロシアとは異なり、国土が狭い日本は何処をとっても人口密度が高く、地震の頻度が桁違いに高く、雨量も多い環境にあることから、放射性廃棄物を金属製カニスターに封入して、地層処分を実施し、何千年も、あるいは、何万年にもわたってカニスターの腐食の心配もなく、安定して地下に保管できるような技術や立地が存在するとはとても思えない。日本にはそういった安全性を宣言できる専門家が存在するのだろうか?恐らく、誰も宣言はできないであろう。

参考までに具体的な議論をご紹介しておこう。地層が安定していると言われている北欧での話である。スウェーデンの国土環境裁判所は地層処分の手法について疑問を呈し、その意見書を公開した(注2)。これは昨年の123日のことだ。その骨子は無酸素水に曝される銅製カニスターの腐食の挙動には不確実性があり、関連企業はカニスターの有効性を実証しなければならないという指摘だ。こうして、スウェーデンでは使用済み核燃料の地層処分に待ったがかけられている。

話を本論に戻そう。
ール街やペンタゴンでの人質とはいったい何のことを言っているのだろうか?私が思うには、ウール街の人質とは、たとえば、ギリシャのことではないか。国全体が借金で首が回らなくなって、いや、もっと正確に言えば首が回らなくさせられて、ギリシャはIMFの言いなりに国内経済の引き締め策を採用し、公共インフラを民営化せざるを得なくなった。こういう国はまさにウール街に居並ぶ大銀行の人質であると言える。次に、ペンタゴンの人質とは韓国とか日本のことではないか。韓国は北朝鮮の核実験やミサイル発射実験に伴う脅威が最高潮に高まった時、米国製のTHAADミサイル迎撃システムを調達することにした。識者の指摘によると、このTHAADミサイル迎撃システムは必ずしも北朝鮮の脅威に対抗するものではなく、むしろ、中国を意識したものであると言う。韓国は米国の軍産複合体によって手玉に取られた格好である。そして、紆余曲折を経ながらも朝鮮半島は今や南北間の和平へと進んでいる。いったい、あの騒ぎは何だったのだろうか?そして、日本も高額な軍需品を大量に購入させられ、その挙句に最新のF-35ステルス戦闘機が故障して海へ墜落、欠陥機としての現状が国民に広く知られることになった。それでもなお、自衛隊幹部はF-35戦闘機の購入計画に変更はないと言う。また、大量に米財務省証券を購入してきた日本は米財務省証券に絡む人質であるとも言えよう。本日の引用記事によると、ドイツは連邦準備金に絡んだ人質であったと言える。米国に預託した金塊を戻して貰ったものの、預託した金塊とはまったく別物の金塊が戻ってきたという。

最後は「アメリカよ、お前はクビだ!」と、この記事はユーモアを交えて締めくくられている。しかしながら、この記事のメッセージの内容は実に深刻である。特に、日頃大手メディアにしか接していない一般大衆にとってはこの記事は衝撃的であろう。歴史を振り返ってみると、大英帝国がその覇権の座から転がり落ちた時大英帝国の政治家や一般庶民がそれに気付いたのは何年も経ってからのことであったとある歴史家が指摘している。今、米国ではそれとまったく同じ過程が進行しようとしているようだ。

 
参照:
1America, You Are Fired!: By CLUB ORLOV, May/07/2019, cluborlov.blogspot.com/2019/05/america-you-are-fired.html

2: The Swedish Environmental Court’s no to the final repository for spent nuclear fuel – a victory for the environmental movement and the science (23 January 2018) → Summary of the court's decision (translation), 180123 >> (MKG's unofficial translation into English 

 

 

 

 

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