2016年7月25日月曜日

なぜNATOはロシアを最大の敵として見るのか?なぜイスラム国ではないのか?



日本ではいわゆる全国紙を購読することが当たり前のように受け止められている。全国紙が存在することによって、大都市や田舎の区別もなく、一般市民が同一の情報を共有できるということは素晴らしいことだと思う。

しかし、その全国紙が、読者には気付かれないような形で、強力なプロパガンダ・マシーンとしても使われているとしたらどうだろうか。一例を挙げると、「日本のメディアが誰にも喋って欲しくはないこと 」と題してある専門家の意見を711日に投稿した。そして、この投稿は思いがけない程多くの皆さんに読んでいただいている。

現実のさまざまな事象を見ると、実際には「この当たり前の事が必ずしも当たり前ではないんじゃないか」ということにうすうす気付いておられる方が決して少なくはないようだ。

このブログを読んでいただいている皆さんにはそれぞれの方々が購読している全国紙ではカバーし切れない部分を多かれ少なかれ補填してくれているものと期待する。日本の全国紙から見える世界の姿は海外の主要なメディアが描くそれ(つまり、米国の新資本主義、グローバリズム、等にとって都合のいい世界観)とほとんど変わりはないが、代替メディアが報じている実情とは大きく異なる。日本の全国紙では入手できないような情報を少しでも多くお届けすることによって、それらの情報が何らかのテーマを理解する上で読者の皆さんに有用であったり、何かの判断を下す際に中心的な、あるいは、補助的な役割を演じてくれるとするならば、当ブログを掲載する小生にとっては嬉しい限りだ。

本題に入ろう。

「ロシアの脅威」とか「ロシアの侵略」という言葉が毎日の様に聞こえてくる。なぜかと言うと、米国や西側の大手メディアが政府の方針に沿って、飽きることもなく、プロパガンダを繰り返しているからだ。

ロシアの国営企業のひとつで船舶業に従事するソブコムフロット社が、623日、75千万ドルの社債を無事に発行したことを受けて(社債発行を代行する企業として、ニューヨークのDTC,ブリュッセルのユーロクリアーならびにルクセンブルグのクリアーストリームが関与)、米国の対ロ経済政策が緩和され始めたのではないかとの観測が出ているが、これはまだほんの氷山の一角に過ぎない。米ロ間の情報戦争はしっかりと続いている。特に、米国から発せられる情報はそれこそあらゆる機会をとらえて、休むこともなく、毎日繰り広げられている。日本もその戦場のひとつだ。しかも、重要な戦場のひとつとなっているようだ。

前の投稿(719日の掲載分)では、最近ポーランドのワルシャワで開催されたNATOのサミットに関するロバート・パリーの意見をご紹介した。28ヶ国の首脳が集まったこのNATOサミットを評して、彼は「狂気か、それとも嘘の塊りか? NATOはロシアに関して偽りの物語を再び確認」と題してこのサミットを酷評している。

ロバート・パリーは、ウクライナ危機について当初から独自の詳しい報告を行い、調査報道に徹してきたジャーナリストのひとりだ。つまり、ワシントン政府が喧伝したいウクライナ情勢に関する公の筋書きからは完全に独立して、自分が調査し、詳しく分析して辿りついた結論を報道してきた。彼の報道の内容は政府が一般市民に信じて貰いたい筋書きとはまったく違う。これこそがジャーナリストに期待されるもっとも基本的な機能であることは言うまでもない。

ここに「なぜNATOはロシアを最大の敵として見るのか?なぜイスラム国ではないのか?」と題された最近の記事 [1] がある。著者はロシアに活動の本拠を置くアイルランド人のブライアン・マクドナルドだ。この指摘もNATOが一般大衆に信じて貰いたい内容とはまったく異なる、著者独自の意見を述べようとしたものだ。この著者の意見は先日ご紹介したワルシャワでのNATOサミットに関するロバート・パリーの意見とはその切り口がまったく異なるが、NATOについての論評としては重要な要素であると思う。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始> 

この週末ワルシャワで開催されたサミットで発表された声明によると、NATOはロシアをISISよりも大きな脅威であると見なしている。もちろん、この声明はひどく馬鹿げたものであるが、一皮剥いでみると、こういった偽りの言葉の使用は非常に歪んだ感覚を生み出す。

グレブはダブリンに住んでいるロシア人の学生である。最近、我々の共通の友人からの要請があって、彼の大学での論文の作成に支援をして欲しいと私は頼まれた。彼の論文はヨーロッパにおいてはNATOへの加盟に抵抗してきた数少ない国のひとつであるアイルランドの状況やその理由に焦点を当てようとするものだ。アイルランド人の殆んどは自国が周囲の国々とは違うんだということについて大層誇りに思っている。

私自身もアイルランド人の一人であるので、英国や欧州大陸の数多くのエリートたちがNATOを何か素晴らしいものであるかのように受け止めている様子を見ると、私は実に複雑な気持ちにさせられる。結局、我々自身の関心からは、多くの場合、程遠い事柄にしか関心を抱こうとはしない外部勢力(つまり、米国)が君臨することにいったいどれだけの栄光があると言うのだろうか?
西ヨーロッパが受けている脅威としては、現時点においては、イスラム原理主義や不安定化した中東がもたらす副次的な影響が最大級のものであることは明らかだ。しかしながら、米国はこれらの課題に関してはどちらかと言うと無関心のままであって、奇妙なことには、ロシアにその焦点を当てている。

ところで、グレブは先週ワルシャワで開催されたNATOサミットの後で私が何かを見落としていた事に気付かせてくれた。彼には借りができてしまった。土曜日(79日)の午後、NATOはふたつの重要な声明を発表した。最初の声明は「北米・欧州の安全保障に関するワルシャワ宣言」と題され、これはポーランドの首都で合意された中心的な事項を概説したものだ。不思議なことに、かつ、大変興味深いことには、この宣言はISILをたった一回言及しているだけであるにもかかわらず、ロシアについては4回も言及している。


実際の政策:

結局、あの宣言は前菜だった。2時間後にメインコースが登場した。「ワルシャワ・サミット・コミュニケ」と題されて139項目を網羅し、多くの項目は極めて長文である。全体として、加盟国が合意した内容の要約は驚くべき長さとなっている。何と16,000ワードだ。この長さはその内容の面白さでは抜群とも言えるロアルド・ダール著の「チョコレート工場の秘密」の半分以上にも相当する。この文書においては、ISILは12回言及されているが、それとは対照的に、ロシアという言葉は58回も現れる。

ということで、グレブからの電子メールの表題は「なぜNATOはロシアを最大の敵として見るのか?なぜイスラム国ではないのか?となっている。

私の答えは要約するとこうだ。

もちろんのこと、もっとも主要な理由は独自のスタイルを持ったイスラム国(IS、あるいはISISまたはISIL)を相手にして戦うということはまったく金にはならないという点にある。先ず第一に、NATOの目的は金を搾取することにある。NATOが存続することによって、非常に心地のよいライフスタイルを維持し、自家用ジェットで世界中を飛び回り、直接的にあるいはシンクタンク網を通じて高額の報酬を約束するような仕事を作り出す機会をエリートたちに提供する。

ここで、まずは物事をはっきりとさせておきたい。ISILと交戦するには潜水艦や核装備は要らないが、ロシアとの想定上の戦いを遂行するにはそれらの装備が必要となる。ひとたびそのような衝突が起こってしまうと、核弾頭が登場することによって人類の文明は終焉となるといった議論はNATOにとっては関係がない。なぜならば、NATOは、実際には、ロシアとの核戦争を望んではいないからだ。その代わりに彼らが何を狙っているのかと言うと、米国の軍事費を高レベルに維持するためにロシアを非常に好都合なならず者国家として使いたいのである。米国の軍事費は、「対テロ戦争」のさ中にあった2000年から2009年までの間、毎年9パーセントも増加し続けた。

このような非常に潤沢な軍事費の膨張は当初はオサマ・ビン・ラーデンを排除するため、また、暫くしてからはサダム・フセインを国際政治の舞台から抹殺するために正当化された。これらの二人が排除されてからは軍事費を散財することは止めて、寛大過ぎる程の予算は9/11以前のレベルに低減されるものと誰もが思ったことだろう。


金、金、金、・・・: 

問題は余りにも金びたりに依存し過ぎていることだ。軍事費は今や米国の裁量支出の54パーセントを占め、ワシントン政府の歳出17パーセントを占める。これが多くの人たちの収入源となり、広範な産業を維持している。それと同時に、ロシア は今年は軍事費に国家予算の約19パーセントを充当している。この状況は米国の状況と同様に浪費以外の何物でもなく、ばかばかしい限りである。しかしながら、大きな違いが存在する。ロシアはどの国が脅威であるとか、何が脅威であるとかに関してヨーロッパ諸国に対して処方箋を書くようなことはしていない。

もっとも単純な事実を挙げると、全世界における上位8位までの防衛産業における契約企業の内で6社が米国の企業である。これらの企業は、合計すると75万人を直接雇用している。それに加えて、他のさまざまなサービス業や供給産業では何百万人もの人たちがこれらの大手軍需企業からの恩恵に浴している。武器弾薬の出費が幾らかでも減少すると、これらの職場の多くが影響を受け、米国中の都市に失業をもたらすことになる。そして、失業者はすでに10年も20年も前から起こっている産業の空洞化に見舞われている、いわゆる「ブルーカラー」地域に集中する。これらの地域の多くは大統領選の度に勝利政党が民主党と共和党との間を変動する州に位置している。失業を是認するような政治家は誰であっても自分のキャリアーを犠牲にすることになるのが落ちだ。

NATOはヨーロッパの組織であることを念頭に置いて率直に考えて見ようではないか。今、ヨーロッパの安全保障にとっての最大級の危険性は中東に由来している。昨年、百万人を超す難民がドイツへやって来た。これはヨーロッパ大陸の全域に政治的ならびに社会的な不安定をもたらした。この出来事のほんの一部でさえもロシアのせいであるとは言えないのである。しかしながら、新たにやって来たこれらの人たちの多くは、イラクやリビアといった米国が破壊した国々からやって来た。また、最近パリやブリュッセルにおいて引き起こされたテロ行為に関してISISが犯行声明を出しているという事実についても留意しておきたい。言い換えれば、ISISはNATO圏の内部で殺人を行っている。ロシアはそのようなことはしていない。

それにもかかわらず、NATOは引き続きロシアに執着している。それは巨大な軍事予算を維持するためのものであり(その予算額はポーランドの名目GDPよりも大きい)、ワシントン政府は「値の張る」敵国を必要としているからだ。当面、ロシアがぴったりだ。

ISISとの戦いは高価な武器を必要とはしない。それに代わって、地上軍の投入が必要となる。これは国内政治のコストを高めこそすれ、財政的な見返りは非常に僅かだ。それとは対照的に、モスクワと四つに組むことは心地良い毛布に包まっているようなものだ。一般大衆には分かりきっていることではあろうが、実際の戦争にまで進むことはどう見てもあり得ない。それでも、このような状況は軍需企業にとってはとても儲かるのだ。 

ツイッターでブライアン・マクドナルドを追跡しよう: @27khv

免責条項: 上記の見解や意見はあくまでも著者のものであって、RTの見解や意見ではありません。

<引用終了>


米国の政治家や国防省は実際にはロシアとの戦争を望んではいないという見方はしばしば見かける。しかし、たとえそれが真の意図であったにしても、毎日続けられている情報戦争は当事国間の感情を損なうばかりである。火遊びを続けることは非常に危険だ。すべては人の行動であることから、誤解や計算ミスは何時でも、また、何処でも起こり得る。偶発的な軍事的接触が引き金になるとか、システムの誤作動から核ミサイルの応酬へとエスカレートする可能性が未解決のまま残されている。ノルウェーの沖合に潜む米原潜から発射される核ミサイルは15分程でモスクワに到達する。ミサイルが発射が確認されたならば、ロシアはその数分以内に報復攻撃をしなければならない。非常に切羽詰まった瞬間となる。米ロ間での軍事的緊張が続くと、両国は相手が先制攻撃を仕掛けてくるのではないかと疑心暗鬼にかられる。誤解や計算ミスに起因するミサイルの発射を全面的な核戦争には導かない何らかのハードウェア的な安全装置が米ロ間に設置されているわけではない。今我々は危険極まりない世界に住んでいるのである。

1995年のことだ。ノルウェーの沖合から発射されたオーロラ観測用のロケットが米原潜から発射された核ミサイルではないかとしてロシア軍に緊張が走った。この状況は大統領に伝達され、仰撃用の核ミサイルの発射を指令するために用意されているブリーフケースに、史上初めて、電源が入れられた。幸いにも、飛行コースが北へ逸れていることが間もなく判明し、モスクワを狙った核ミサイルではないかとの疑念は急速に晴れたという。

この事例は、疑心暗鬼に襲われたまま毎日を過ごしているミサイル監視施設に勤務する将校や専門家たちがいとも簡単にとんでもない誤解に陥る可能性があることを示している。これは敵の核ミサイルではないとする確信が得られるまでは、依然として疑ってかからなければならないとする軍事的必然性によって支配された精神構造から導かれたごく当たり前の結果であろう。

米ロ両国の政治家やエリートたちにとって人為的な間違いや誤解の可能性を限りなくゼロに近づけることが現在ほど強く求められたことはない。問題は米国の好戦的な政策決定者や政治家、軍人、ならびに、エリートたちがこの問題に関してどの程度の自覚をもっているのかだ。常識的な理解に基づいて率直に言えば、残念なことには、多くを期待することは出来ない。現状では、核戦争の脅威は決してゼロではない。

米国とロシアの政治家の言動や行動には決定的に異なる相違点がひとつある。ロシアは国際間の問題を外交を通じて解決しようとする。一方、米国は軍事力を使おうとする。この違いは我々一般庶民の目の前でさまざまな形で毎日のように繰り返されている。


♞  ♞  ♞

米国はEU諸国や湾岸諸国に武器を売りつけることに余念がない。ロシア様様であろう。日本に対しても同じことだ。北朝鮮の核実験やミサイル実験は米国の軍産複合体にとっては非常に望ましい状況であるに違いない。高価な軍需品を韓国や日本へ売りつけるきっかけとなるからだ。
上記のブライアン・マクドナルドの記事が言いたいことを補填する意味から、一例を覗いてみよう。

たとえば、ここに「国務省:11ヶ月間でGCC諸国へ330憶ドルもの武器を売却」と題した今年3月の記事 [2] がある。その記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

この記事は米国務省が流した情報だ。要するに、国務省としては中東における軍事的な意味がどうであれ、「米国が引き起こした中東諸国の不安定化の成果として、これだけ儲けたよ。しかも序の口だよ」と言って、自慢しているかのように私の目には映る。皆さんはどう感じていらっしゃるだろうか?


<引用開始>

【ドバイおよびワシントン発】 米国務省発表の数値によると、同省は20155月以降アラブ湾岸諸国に対して330憶ドルに相当する武器の売却を促進した。

国務省の政治や軍事問題を担当する部門のスポークスマンであるデイビッド・マクキービーによると、湾岸アラブ諸国協力理事会(GCC)に加盟する6カ国は大陸間弾道弾防衛施設や攻撃用ヘリ、最新式のフリゲート艦、対機甲ミサイル、等を含むさまざまな武器を受け取った。

「昨年の5月に開催されたキャンプ・デービッドのサミットで湾岸諸国のパートナーと交わした約束に沿って、武器の輸出を促進するために、我々はあらゆる努力をしてきた。あれ以降、国務および国防の両省は330憶ドルを超す武器をGCC6カ国に向けて輸出することを承認した」と、マクキービーはディフェンス・ニュース紙に語った。

「これに加えて、米政府ならびに産業界は2015年に4,500発の精密誘導兵器をGCC諸国へ納入した。これには米軍の在庫から直接取り出された1,500発が含まれている。これは我が軍のニーズに基づいて採用された特別な計らいである」と、彼は付け加えた。

米政府としては武器の輸出やその他の安全保障関連の活動を通じてクウェートやカタールとの協調関係をさらに強化して行きたいと、マクキービーは強調した。

これらの湾岸二カ国は40機の40 F/A-18スーパー・ホーネット・ジェット戦闘機や72機のF-15サイレント・イーグル戦闘爆撃機の発注に対して承認待ちであった。これらのふたつの発注はその過程をクリアーするのに2年を要したが、主導的な議員たちにはオバマ政権がこの武器輸出を意図的に遅らせていたのではないかとの疑念を抱かせた。

それに応えて、国務省はこれら2カ国と米国との関係を強調し、カタールは米国にとっては2014年に米国製の武器を調達した諸国の中でも最大級の顧客であり、アパッチ・ヘリコプターやパトリオットミサイル防衛システム、ジャブリン・ミサイル、等を含めて最新式の武器を100憶ドル超も購入したと指摘した。また、同年、カタールは8機のC-17長距離輸送機や4機のC-130輸送機を直接商業契約の下で調達した。 

国務省トップの職員はディフェンス・ニュース紙にこう述べた。つまり、クウェートとカタールに対する戦闘機の輸出は、(同時並行の話し合いがされていた)武器に関する資金援助の合意が米国とイスラエルとの間で保留されていたことから影響を受けて、遅延したというわけではない、と言う。

これらの戦闘機の輸出はイスラエルとの合意が未決定であることから保留されて来たのではないかとの具体的な質問を受けて、武器のコントロールや国際安全保障を担当するローズ・ゴッテンメラー国務次官補はこう言った。「いいえ、関係はありません。連結してはいません。」 

「これらは同時に起こっただけのことです。しかし、お互いに連結しているわけではありません」と、彼女は付け加えた。 

彼女はそのメッセージをどのようにクウェートやカタールに伝えるのかとの質問に、「我々が出来ることは彼らとの話し合いを続けることだけです」と、ゴッテンメラーは言った。

クウェートやカタールの消息通はディフェンス・ニュース紙に「我々はイスラエルが米国との取り決めを保留しているせいだと思う」と言った。ベンジャミン・ネタニヤフ首相が率いるイスラエル政府はアラブ湾岸諸国に対する武器の輸出について懸念を表明しているが、この懸念は特にクウェートに対するF-15戦闘機の輸出に焦点が合わされている。

マクキービーは米国の法律の下ではこの地域に対する輸出では個々の案件はイスラエルの軍事的優位性のレンズを通して輸出が行われ、イスラエルの軍事的優位性を脅かすような輸出案件は承認されないと言った。 

「我々の観点から言うと、米国製の武器ならびに他国との間の我々の強力な相互協力関係は最終的には両方ともイスラエルの軍事的優位性を守ることにつながる」と、彼は言う。

Twitter: @Awadz | @AaronMehta

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

米国製の武器に関して超ド級の商談が超お金持ちのアラブ湾岸諸国との間で促進されている。米政府は公式にはテロとの闘いに必要なんだと言っている。それと並んで、イスラエルの軍事的優位性を維持しようとする米国の政策がアラブ湾岸諸国への武器輸出にも微妙に絡んで来るという現実を私は初めて知った。しかも、イスラエルの軍事的優位性を維持することが米国の国内法でも定めらているとのこと。これには驚いた!

米国の議会は地元の産業を維持したい議員、軍産複合体のために働こうとする議員、イスラエル・ロビーに逆らわずに次回の選挙を成功裏に進めようとする議員、等々、さまざまな思惑が渦巻いている場所だ。この記事はその一端を見せているような気がする。


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中近東における米国政府の最重要課題は時の変遷とともに大きく変化する。

中東に関しては、我々一般庶民の関心は「アラブの春」から始まったと言えるのではないだろうか。当時、アラブ諸国は専制的な政権から解放され、民主的な政治制度の恩恵を享受することになるだろうと多くの人たちが期待を抱いた。

しかし、実際にはそうはならなかった。

 「米国の最終的な目標はアフリカや中東の資源を軍事力の影響下に置くことによって、中国やロシアの経済成長を妨害することにある。そうすることにより、ユーラシア大陸全体を支配下に置くことだ。」 著者で歴史家のウィリアムF.エングダールはこう明かす。これは20111130日に「芳ちゃんのブログ」に掲載した「アラブの春と米国の思惑」からの抜粋だ。

中近東では10年足らずの間にさまざまなことが起こった。

最近の数年間だけでさえも、米国にとってはしばらく前までは経済制裁によってイランを国際社会から締め出しておくことが最重要課題であった。その後、核兵器製造計画の疑惑が晴れて、イランに対する経済制裁は解除された。表向きは経済制裁が解除されたかに見えたが、ヨーロッパ諸国の銀行には米財務省の職員が訪問して、イランに対する大型商談は避けるようにと要請していると言われている。これはイランに対する実質的な経済制裁である。現在のイランはロシアと並んでシリアのアサド政権を支援していることから、米国やイスラエル、サウジアラビア、ならびに、他のスンニ派イスラム諸国からは敵視されている。一方、イスラエルは米国との蜜月は終わって、ロシアに接近しつつあるとも言われている。数日前、トルコではエルドアン政権を打倒しようとする軍事クーデターが起こったが、これは未遂に終わった。トルコ政府はこの反政府クーデターを背後から指揮したとされる米国在住のギュレン師の身柄を引き渡すように米政府に要請した。しかし、米国はこの要求に応じようとはしていない。トルコと米国の間では溝が深まっている。このクーデターの可能性を数時間前にトルコに伝えてくれたのはロシアだった。一方、米国はギュレン師の身柄引き渡しには否定的で、しかも、諜報の世界では超大国の米国からはクーデターの可能性に関する情報は何ひとつ事前に提供されることはなかった。その結果、トルコは米国が黒幕であったのではないかとの疑惑を強めている。こうして、トルコは今やロシアへ傾斜し始めているとの報告がある。

まったく予断を許さないが、もしもトルコが米国主導のNATOから離れ、EUへの加盟要求を撤回し、ロシアや中国との連携を深める政策へと大転換をしつつあるとしたら、米国の中東政策は大打撃を受けるだろう。対シリア行動ではトルコはサウジアラビアと並んで急先鋒であった。ウクライナ紛争に関しては、トルコはロシア艦隊の母港であるセバストーポリを擁するクリミアの表玄関である黒海に面しており、その影響力は計り知れない。地中海と黒海を繋ぐダーダネルス海峡はトルコ領内にある。トルコはカスピ海を介してロシアの南西部に近接しており、コーカサス地域にも接している。これらだけを取り上げても、トルコは地政学的に非常に重要な位置を占めていることが分かる。

そのトルコが地殻変動を起こすかも知れないのだ。この地殻変動が起こったら、米国の中近東政策は激震に見舞われるだろう。

今後の展開に注目したいと思う。



参照:

1Why has NATO chosen Russia as its enemy instead of ISIS?  By Bryan MacDonald, Jul/14/2016, http://on.rt.com/7iuk

2State: $33 Billion in GCC Weapon Sales in 11 Months: By Awad Mustafa and Aaron Mehta, Mar/25/2016, www.defensenews.com/.../state-33-billion-gcc-weapon-sales-1...





2016年7月19日火曜日

狂気か、それとも嘘の塊りか? NATOはロシアに関して偽りの物語を再び確認



かって全ヨーロッパを席巻したナポレオンは自身の周りにたむろする多くの政治家らを評して「彼らは愚鈍だ!」と言った、とどこかで読んだことがある。普通は4年前後の履修期間を必要とする陸軍士官学校ではたった11ヶ月の在籍で全課程を修了したというナポレオンのことであるから、彼の目には当時の政治家がえらく愚鈍に見えたとしても驚くには当たらない。

21世紀の世界ではインターネットであらゆる情報を手にすることが可能となっている。情報はあり余る程ある。しかしながら、情報を取り扱うことが専門ではない我々一般庶民は、多くの場合、その量に圧倒されるばかりだ。見出しを読んで、取捨選択を行う。最大の課題は個々の情報を手にする私やあなたが情報を選択する際の判断が果たして妥当であるのかどうかという点にある。何故ならば、好むと好まざるとにかかわらず、我々の知識は大手メディアが喧伝する情報によってすでに影響を受けており、何らかの先入観が形成されているからだ。

情報の流れを見た場合そのもっとも上流側にいる大手メディアは個々の情報を一般読者に流すのか、流さないのかを決めている。つまり、大手メディアは世論を操作するにはもっとも決定的な位置にあるわけだ。たとえば、国連安保理からの要請もなしに米国、ならびに、米国に賛同する有志国連合が2003年にイラクへ武力侵攻をした際、米国の大手メディアがどのように振る舞ったかは今でも記憶に新しい。大手メディアが武力侵攻の理由としてあれだけ大騒ぎをして報道したサダム・フセインの大量破壊兵器は、結局、見つからなかった。こうして、軍産複合体が旗を振り、大手メディアが後押しをしたイラク侵攻は大失敗に終わった。

ナポレオンがこの様子を見ることが出来たとしたならば、自説が今でも正しいことに改めて気を良くするに違いない。

そして、あの混乱は10年以上も経った今でさえも収束の目途がたってはいない。それどころか、昨年の夏は中東の戦禍に襲われた国々(イラク、リビア、シリア、等)を脱出した難民の波がヨーロッパを襲った。国境を解放する政策をとっているドイツを目指してやってきた。また、この難民の流入はEUからの離脱について賛否を問うために英国で行われた最近の国民投票では52パーセントもの賛成票をもたらした一因となったとも言われている。

米国がヨーロッパ諸国をコントロール下に維持する場面でさまざまな形で貢献してきた英国がEUを離脱することになった。これはヨーロッパに対する米国のコントロール能力を弱め、結果として、ヨーロッパとロシアとの経済的な連携を強化するのに役立つだろうとの観測がある。また、英国のEU離脱を切っ掛けにして、EU内部では溝が深まり、EU自体はジリ貧となり、米国が後押しをしてきたこのヨーロッパ統合プロジェクトは失敗に終わるだろうとの見方もある。

米国のネオコン政治家が判断し、大手メディアが支持し喧伝する米国の外交政策(つまり、覇権政策)が果たして彼らにとって成功をもたらすのか、それとも大失敗に終わるのかは、今や、サイコロを振るにも等しい有様である。

政治の世界ではなぜこのような大混乱が起こり、無軌道振りが横行するのだろうか?

この素朴な疑問を解く糸口としては、大手メディアがジャーナリストとしての自覚を持つことが必要だと、調査報道の大御所であるロバート・パリーは主張する。率直に言って、西側の大手メディアは政府の言いなりになってしまって、ジャーナリストとしての機能を果たしてはいないという指摘である。商業主義に徹する大手メディアは政府をチェックする批判精神をすっかり忘れ、反対意見には耳を貸そうともせず、ブルドーザーの如くに自分たちの計画を押し通そうとする軍産複合体やメガバンク、多国籍企業の独善的な考えや意思をなりふり構わず支援している。

大手の商業新聞やテレビ局のためではなく、真実を掘り出そうと独立して活動するジャーナリストらは多くがこのことを指摘をしている。問題はこれら独立心が旺盛なジャーナリストは少数派であるという点だ。

本日はロバート・パリーの最近の記事 [1] を覗いてみようと思う。これは最近(78~9日)ポーランドの首都ワルシャワで開催されたNATOサミットに関するものだ。この記事は「狂気か、それとも嘘の塊りか? NATOはロシアに関して偽りの物語を再び確認」と題されている。

これを仮訳して、読者の皆さんと下記に共有したいと思う。


<引用開始>

核戦力を含めて膨大な量の戦力を並べ、苛立ちを示すNATO加盟国は集団としての思考力をすっかり喪失してしまったかのように見え、まさにゾッとする感じである。極めて騙されやすい西側の市民にはNATOが今まで言って来た嘘八百は実は本当なんだと引き続き思い込んでいて貰うためにも、NATOは自分たちの欺瞞に満ちた戦略的な情報 を公にした方がより安心だと、多分、考えたのかも知れない。 

「ロシアの侵略行為」を非難するワルシャワ・サミットのコミュニケに署名するために、西側の主要な「民主主義国家」の指導者らが勢ぞろいした。しかし、この主張は各国の諜報機関によって必ずしも支持されているわけではないという事実を十分に承知していながらの話だ。

指導者らは、中でも主要国の指導者らはロシアのウラジミール・プーチン大統領が2014年にウクライナ紛争を引き起こしたのだと断定できるような信頼できる情報は存在してはいないことをよく承知している。それだけではなく、プーチン大統領はバルト諸国を侵略する計画を持っているとの推測についてもまったく同様だ。これらの事柄は、ワシントン政府や他の西側諸国のほとんどすべての「高官」らが実際にはそれとはまったく逆であると宣言しているにもかかわらずである。

しかし、真実がその姿を現す機会が何度かあった。たとえば、ワルシャワでのNATOサミットが終了に近づいた日、NATO軍事委員会の議長を務めるペートル・パヴェル将軍は秘密を漏らしてこう述べた。「バルト諸国へNATOの大隊を配備する理由は軍事的な行動というよりは、むしろ、政治的な配慮によるものだ・・・」と言った。  

「大規模なロシア軍の侵攻に対して軍事的障害物を構築することがNATOの目的ではない。なぜならば、そのような侵攻は計画にさえも登場してはいないし、諜報機関の評価結果にもそのような証拠は見当たらないからだ」と、パヴェルは記者会見で述べている

パヴェル将軍がうっかり喋ったことは過去2年余りの間私が諜報関係者から聞いていた内容ともよく一致する。つまり、西側のメデイアに見られる「ロシアの侵攻」という終わることのないドンチャン騒ぎはプーチンを悪魔視する悪賢いキャンペーンから由来したものであり、注意深い諜報分析の結果辿り着いた結論ではない。むしろ、これはワシントンにおける昔ながらの「集団思考」の賜である。 

これに実によく似たプロパガンダ・キャンペーンが如何にしてあの大失敗に終わったイラク戦争を全世界にもたらしたか、また、如何にして致死的な結末が今もなお非安定化した中東に悪影響を与え続け、ヨーロッパをひどく狼狽させているのかに関して、皮肉にも、英国ではイラク戦争に関してチルコット報告書が作成され、公表されたばかりだ。公表の日からたった数日の内に、NATOはあの以前の大失敗を再演しようとしている。しかし、違う点がひとつだけある。今回は掛け金をつり上げて、核装備をしているロシアが相手だ。 

このワルシャワ・コミュニケはバラク・オバマ大統領やドイツのアンゲラ・メルケル首相、フランスのフランソワ・オランド大統領、ならびに、英国のデイビッド・キャメロン首相らを含めて、各国の指導者によって署名された。しかしながら、これは2013年末から2014年の始めにかけてウクライナで起こった現実を完全に無視している。その結果、この物語はすっかりあべこべに仕上がっているのだ。 

西側の空虚なプロパガンダを繰り返す代わりに、オバマや他の指導者らは何かもっと新鮮な事柄を推進し、真実を伝えることが可能であった筈であるのだが、それは明らかに彼らの政治能力の枠外であったようだ。こうして、彼らは皆が危険極まりない嘘に署名をしたのである。


実際に起こったことは・・・:

事実に基づいた実際の物語はどうであったかと言えば、事実はウクライナ危機を引き起こしたのはロシアではなく、西側であったということを認めざるを得ない。西側は選挙で選出されていたヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領を暴力的に政権の座から追い出すことを画策・実行し、モスクワ政府やウクライナ東部のロシア語を喋る市民に敵対する西側志向の政権を樹立した。

2013年の終り頃、ウクライナとの経済連携協定を迫っていたのはEUであった。この協定にはIMFの要求が含まれており、すでに苦境にあるウクライナ市民に対してさらに厳しい緊縮経済を課そうとするものであった。政治的ならびにプロパガンダによる支援活動を行うことによってEUの計画を支えるために、米国民主主義基金やアメリカ合衆国国際開発庁といった米国政府の下部機関が動員され、資金援助を行っていた。

ヤヌコヴィッチ大統領がIMFの条件に尻込みをし、プーチンから提示されたもっと寛大な150憶ドルの融資枠を選択した時、米国政府は大衆デモの背後に米国の支援策を放り込んだ。それはヤヌコヴィッチを追い出して、EUとの協定に署名し、IMFの要求を受け入れさせるためにヤヌコヴィッチに代わって新政権を樹立しようとするものであった。

2014年の始め、危機が深まっていった頃、プーチンはソチ冬季オリンピックに全力を注いでいた。特に、大会期間中のテロ攻撃の脅威に備えようとしていた。プーチンがウクライナ危機を密かに醸成しようとしていたという証拠は何処にもない。すべての証拠が物語っているのは、実際にはプーチンは現状を維持しようとして、選挙で選出された大統領に支援策を提示し、事態が悪化することを避けようとしていたのである。

ウクライナをEUとの連携協定に引きずり込むためにプーチンが例のEUの非安定化策を何とか指揮し、マイダン革命の抗議デモを反ヤヌコヴィッチの暴力沙汰に仕上げるためにその舞台監督を務め、ウクライナの警察官を殺害し、ヤヌコヴィッチ大統領をキエフから逃走させるためにネオナチやその他の極端に国家主義的な武装勢力らと協力し、ついには、ヤヌコヴィッチの代わりに恐ろしく反ロシア的な政権を樹立したと言い含めようとするなんて、まさに狂気の沙汰だ。すべてはまったく逆である。

現実の世界はこの物語とはまったく違う。つまり、モスクワ政府は政治的な妥協点を見い出そうとするヤヌコヴィッチを助けようとしていたのである。これにはEUが仲立ちをした総選挙の早期実施や大統領権限の縮小さえもが含まれていた。しかしながら、こうした妥協を示したにもかかわらず、2014222日、ネオナチの武装勢力が米国によって後押しされた抗議デモの先頭に躍り出て来た。ヤヌコヴィッチ大統領や彼の側近らは命からがら逃げだした。米国務省は素早くこのクーデター政権を「正当な政権」であるとして認め、他のNATO諸国もそれにならった。

私の個人的な注釈を述べると、私は時々陰謀論者らによって批判されることがある。米国の高官らが夢見ている悪辣な筋書きについて彼らが喧伝する事実無根の主張は、率直に言って、でたらめな話と同様に何らの根拠もないことから、私がそれを決して認めようとはしないからだ。それでも、プーチンがウクライナのクーデターの振付をしたとする西側の馬鹿げた陰謀論と比較すると、彼らはむしろまともに聞こえる程だ。

ところが、この根拠のない陰謀論はニューヨークタイムズのポール・クルグマンといった本来ならば真面目な思索家をも誘い込んできた。プーチンは領土をつかみ取ろうとしている、あるいは、国内の経済問題から国民の関心を逸らそうとしてこのウクライナ危機を掻きまわしているといった考えを彼はまさに魔法のように捻り出したのである。

「容易い勝利を妄想」と題して、クルグマンは2014年にあるコラムを書いた。「単なる推測に過ぎないが、ウラジミール・プーチンはウクライナ政府を転覆させることができると考えたようだ。少なくとも、ほんの少しでも反乱分子に支援をしてやることで、ウクライナの領土の大部分を実に安く手に入れることが出来そうだと・・・」

最近、ハーバード・ビジネス・レビューのジャスティン・フォックスがウクライナ危機の根幹は調子が良くはないロシア経済に起因していると提唱した。「プーチン氏が権力の座にあるのはひとつには急速な経済成長が続いていたからだ」と彼は言う。「しかし、ロシアの経済成長のエンジンは今や止まりそうで、プーチン政権は国民の気を逸らす必要があるのだと言えよう。」 


危機の誕生に一役買う: 

単なる「推測」ではなくて、むしろ、クルグマンは事実にこそ目をこらすことが出来ただろうに、そうはしなかったのである。たとえば、ヨーロッパ地域を担当するネオコン派の国務次官補のヴィクトリア・ヌーランドがやったことに注視できた筈だ。彼女は自分たちが選んだウクライナ人らをロシアの隣国の面倒を見ることが出来るようにさせようとしてクーデターを企んだ。この反乱の数週間前、ヌーランドが駐ウクライナ米国大使のジオフリー・パイアットと交わした電話が盗聴され、まさに「政権の転覆」を画策している様子が発覚した。

ヤヌコヴィッチをいったい誰に代わらせるかに関しては、ヌーランドが選んだ相手は彼女が「ヤッツこそが適任だ!」と評した人物で、彼の名前はアルセニー・ヤツニュク。この電話はさらに延々と続き、いったいどうやって「これを確実に実行するか」とか、「どのようにしてこれに一役買うか」といったことに関して二人はあれこれと熟考した。2014222日、このクーデターが実行され、二人が一役買った後、ヤツニュクが一躍首相として現れ、IMFの緊縮財政計画を通じてウクライナの面倒をみることになったのである。

議会はロシア語を公用語として使用することを禁じることに投票し、ネオナチに対してクーデターに抗議をするロシア語系の市民を殺害することを許容するといった策をキエフ暫定政権が採用したことから、ウクライナの東部や南部においてはロシア語を喋る住民の間に抵抗運動が起こった。ウクライナの東部はヤヌコヴィッチの政治的な地盤であり、ウクライナ経済がヨーロッパに志向するとすれば殆んどすべてを失うかも知れず、ロシアとの経済的な繋がりは低下するばかりとなるだろうから、抵抗の動きが起こること自体はそれ程の驚きではない。

ウクライナ東部の住民が抱く懸念を認識しようとする代わりに、西側のメディアはロシア語を喋る市民らを自分の考えを持たないプーチンの手先として描写した。米国に後押しされたキエフ政権は彼らに対していわゆる「反テロ作戦」を開始した。ネオナチの武装勢力が先頭に立った。

ロシア語人口が非常に多く、ロシアとの繋がりに長い歴史を持っているクリミアでは住民投票が実施され、投票者総数の96パーセントがウクライナからの離脱とロシアへの帰属を選択した。この投票プロセスはウクライナ政府との間で以前から合意されている協定の下でクリミア半島に駐留しているロシア軍の支援を受けた。

ニューヨークタイムズやその他の米国の主要なメディアによって喧伝されている「ロシアの侵攻」はなかった。ロシア軍はすでにクリミアに駐留していたのである。つまり、ロシア軍はセバストーポリにあるロシアの歴史的な黒海艦隊の基地に派遣されていた。プーチンは、クリミアの併合は、ひとつの理由としては、ロシアの海軍基地がNATOの手中に陥り、ロシアに戦略的脅威をもたらすのではないかとの恐れによるものであったことを認めている。

しかし、プーチンは領土の拡大を意図し、国内の経済不振から市民の関心を逸らすためにウクライナ危機を引き起こしたのだとする西側の狂気じみた陰謀論に対する主要な反論は、ヤヌコヴィッチ大統領が政権から追い出され、ロシアを憎む政権がキエフに据えられたからこそクリミアを併合したという事実にある。もしもヤヌコヴィッチが政権から追い出されることがなかったとしたら、プーチンがクリミアを併合したり、ウクライナについて何かをすると考えなければならない理由は何も見当たらない。

虚偽の物語がひとたび回り始めると、それを止める術はない。ニューヨークタイムズやワシントンポストおよび他の西側の主要なメディアは米国政府のプロパガンダを事実として受け入れ、その流れに敢えて逆らおうとする少数のジャーナリストを脇に追いやり、イラク侵攻の直前に演じたことをまたもや再演したのである。

オバマやメルケルおよび他の主だった指導者らは西側のプロパガンダが如何に虚偽に満ちていたかを承知していたが、彼らは自分たちの政府が喧伝する虚偽の虜となってしまった。彼らにとっては公式の物語から大きく逸脱することは自分自身が強力なネオコン勢力や仲間であるメディアからの厳しい批判に晒されることを意味する。

NATOの「戦略的な情報」と僅かに矛盾する場合であってさえもだ。ドイツのフランク・ウォルター・シュタインマイヤー外相が「今我々がしてはならないことは武力を見せびらかし、戦争を挑発することによって状況をさらに悪化させることだ。・・・同盟ブロックの東の国境で象徴的にタンクのパレードを行う事が安全保障をもたらすと誰かが考えているとすれば、それは間違いだ」と言った時、厳しい批判が彼を見舞った。


ロシアに対する厳しい批判:

こうして、ワルシャワ・サミットではNATOとしては自分たちの虚偽の物語を再度確認する必要があった。事実、虚偽の物語があらためて確認されたのである。そのコミュニケはこう宣言した。「ロシアの侵略行為は、NATO圏の周辺地域における軍事的挑発行為、ならびに、武力による脅威やその使用によって政治的目標を達成しようとする意欲も含めて、地域が非安定化する根源となり、本同盟に対して基本的に挑戦するものであって、ヨーロッパ・大西洋圏の安全保障を損ない、ヨーロッパがその全体を維持し、自由を享受し、平和に過ごそうとする我々の長期目標を脅かすものである・・・」 

「ロシアによる非安定化の行為や政策には次の事柄が含まれる。非合法的で不正なクリミアの併合 - これは我々としては決して容認することは出来ないし、ロシアがこれを元へ戻すよう要求する。主権国家の国境の武力による侵害。ウクライナ東部の非安定化。ウィーン文書の精神に反する大規模な軍事演習、ならびに、バルト諸国やバルト海さらには地中海東部を含むNATO圏の国境に隣接する地域での挑発的な軍事演習。無責任で挑発的な核戦争を言及した言い回し、軍事的な考え、それらに内在する態度。ならびに、NATO同盟国の領空への侵犯。」

「それらに加えて、ロシアによる武力介入、シリアにおけるロシア軍の存在ならびにシリア政府への支援、さらには、地中海東部に軍事的影響を及ぼす黒海におけるロシア軍の存在とその活用は同盟国やその他の諸国の安全保障に新たな脅威と挑戦をもたらしている。」

NATOやその他の西側の機構が存在し、今や上下がまったく逆さまになったこの世界においては、ロシアの国境沿いで行われるNATOの軍事行動に反応して自国の国境内で遂行するロシア側の軍事的行動は「挑発的である」と言う。国際的に認められている国家であって、イスラム国のテロリストだけではなく、サウジアラビアやカタールおよびNATOの加盟国であるトルコを含む西側の中東同盟国によって資金援助を受けるその他の反政府武装勢力によっても攻撃を受けているシリア政府に対して延べられたロシアの支援さえもが同一視される始末だ。 

換言すると、NATOやその加盟国にとっては、まさに好きな時に、イラクやリビアおよびシリアといった国々へ侵攻し、ウクライナのように政権を転覆し、シリアでも同じことを引き起こそうとすることは完全に許容できるのである。しかし、NATO外の政府がそういった事態に対応し、自国を防衛することは許されない。そのようなことをすると、NATOに対する挑戦として受けとめられる。しかし、このような偽善が世界のあるべき姿として西側の主要紙によって受け入れられているのである。

2003年にイラクの大量破壊兵器について疑問を投げかけた際には我々が「サダムの擁護者」としてレッテルを貼られたように、これらの虚偽性や二重基準を大胆にも指摘しようとする我々はほとんどが「モスクワのぼけ役」に違いないと言われる始末である。 

調査報道を専門とするロバート・パリーのプロフィール: 1980年代、AP通信社やニューズウィークのためにイラン・コントラに関して数多くの記事を発表した。最近の著書としてはAmerica’s Stolen Narrative。同書は書籍としてはこちらで、電子書籍としてはAmazonあるいはbarnesandnoble.comから入手可。

<引用終了>


これで仮訳は終了した。

著者はこう言っている。「プーチンは領土の拡大を意図し、国内の経済不振から市民の関心を逸らすためにウクライナ危機を引き起こしたのだとする西側の狂気じみた陰謀論に対する主要な反論は、ヤヌコヴィッチ大統領が政権から追い出され、ロシアを憎む政権がキエフに据えられたからこそクリミアを併合したという事実にある。もしもヤヌコヴィッチが政権から追い出されることがなかったとしたら、プーチンがクリミアを併合したり、ウクライナについて何かをすると考えなければならない理由は何ら見当たらない。」 

これは非常に興味深い論点であると思う。一連の出来事を詳しく検証すると、素人の私でさえもロバート・パリーが主張する事実関係に辿りつくことになる。要するに、クリミアの併合が何の前後関係もなく突然始まったというわけではない。そんなことはあり得ない。クリミアの併合をもたらした主因はヤヌコヴィッチ大統領が政権から追い出され、ロシアを憎む政権がキエフに据えられたという事実にある。要するに、西側の後押しを得て起こした政権転覆とロシア語系住民に対する敵意が主因である。クリミアの併合はそれらに対する反応として起こったものである。

それでも、依然として西側はこれは「ロシアの侵略」だと言い続けている。

世界に君臨しようとする「帝国」の偽善性や二重基準はさまざまな機会にさまざまな形で観察され、報告されている。それらを感知し、分析し、それがもたらすかも知れない弊害に関して政府や政治家に警告を出し、一般庶民にも丁寧に伝えることがメディアの一義的な使命である筈だ。これはどこにでも書かれていることだ。しかしながら、多くの場合、実践はまったく別の話となっている。しかも、理想と現実との間の隔たりは今や途方もなく大きい。

著者は2003年にイラクの大量破壊兵器について疑問を投げかけた際には我々が「サダムの擁護者」としてレッテルを貼られたように、虚偽性や二重基準を大胆にも指摘しようとする我々はほとんどが「モスクワのぼけ役」に違いないと言われる始末であると述べている。これは調査報道を専門とするジャーナリストとして生涯を捧げて来たロバート・パリー自身の体験を率直に語った言葉である。現実を伝える貴重な言葉であると言えよう。

事実、西側のメデイアによって連日行われているロシア・バッシングは大失敗に終わったイラク戦争の開戦当時の状況に酷似していると私は常日頃感じていた。対ロ経済制裁はイラクへの軍事侵攻そのものだ。相違点は軍事行動と経済制裁との違いだけである。

ニューヨークタイムズやワシントンポストといった米国の大手メディアがもたらす弊害は計り知れない。言うまでもなく、これらの弊害はお膝元の米国だけに限られるわけではない。ヨーロッパやアジアにもアッと言う間に波及して来る。そして、場合によっては、弊害の程度は米国本土のそれよりもヨーロッパや日本における弊害の方が遥かに大きいかも知れないのだ。

この著者はメディアに関して世界が直面している厳しい現実を一般読者に伝えようとしているのだ。そして、その根幹にはどこかで戦争が行われ、大きな軍需が継続して存在することが米国経済を維持する基本条件とさえなっているというとんでもない現実がある。帝国の戦争の場はアフガニスタン、イラク、リビア、シリアと続き、さらには、ウクライナへもやって来た。NATOは、今、核装備をしたロシアとの戦争を準備している。ロシアとしては傍観しているわけにはいかないだろう。軍備を徹底的に整備して、受けて立つしかない。

最悪の場合、下記のような事態になるのかも知れない。

たとえ地下壕を作って核シェルターを準備し、1年あるいは2年間の食糧や燃料を備蓄したとしても、米国の政治や経済を牛耳る指導者らの家族が核の冬を生きながらえることは不可能だ。要するに、世界に名だたる億万長者といえども、金で解決できるような状況ではない。米ロ間の核戦争が始まると、地球上の戦争はこれが最後の戦争となる。そして、その事実を語れる後世の歴史家はこの地球上には一人として生き残ってはいないだろう。



参照:

1Insanity or Lies? NATO Reaffirms Its Bogus Russia Narrative: By Robert Parry, Information Clearing House / Consortium News, Jul/12/2016, consortiumnews.com/.../nato-reaffirms-its-bogus-russia-...