2022年3月13日日曜日

ウクライナを売った男

 

ウクライナ情勢は刻々と変化している。情報戦争が展開されていることからもそれは当然の成り行きであるとも言えよう。ご多聞にもれず、さまざまなフェークニュースが混在する。

ここに、「ウクライナを売った男」という強烈な見出しを持った記事がある(注1)。著者はマイク・ウィットニ―だ。念のために付け加えておくと、「ウクライナ危機の本命はウクライナではない。本命はドイツだ」と題した投稿は最近の投稿の中では一番人気であったが、あれもマイク・ウィットニ―が書いた記事であった。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。ウクライナのお国の事情を学んでおこうではないか。

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軍事的展開は、今日、言葉では言い表せない程にまで達している。

ウクライナで今起こっていることは深刻な地政学的意味合いを持っている。この出来事はわれわれを第三次世界大戦に放り込んでしまうかも知れないのだ。軍事的な展開を阻止するためには和平プロセスを開始することが非常に重要である。グローバル・リサーチはロシアによるウクライナへの侵攻を非難する。二国間の和平合意が是非とも必要である。

ヴォロジミル・ゼレンスキーはウクライナの現大統領である。彼はロシアとの緊張を和らげ、ウクライナ東部のふたつの分離派共和国がもたらした危機を解決すると言って2019年の大統領選で地滑り的な勝利を収め、大統領となった。だが、これらふたつの公約を守るという意味では彼は何の行動さえも起こさなかった。それに代わって、彼はロシアに対する挑戦を執拗に繰り返し、ウクライナ国内の危機を悪化させて来た。

ゼレンスキーにはモスクワ政府との関係を繕い、敵意が爆発するのを防ぐ機会が数多くあった。それにもかかわらず、彼はワシントン政府の指令に盲目的に追従し、事態を常に悪化させて来たのである。

ゼレンスキーは西側では重要人物として扱われ、彼の個人的な勇敢さが称賛されている。しかし、実際的な面においては彼は国内の団結を達成し、ウクライナ国家を再興するのにもっとも基本的な経路となる筈の和平の実現をしなかった。ウクライナ大統領はいわゆる「ミンスク合意」を好きにはなれず、基本的な要件を満たすことを拒んだ。その結果、過去の8年間ウクライナ全土を巻き込み、民族的に緊迫した兄弟国間同士の戦争へと発展し、今日に至っている。それがいったい何時終わるのかは見えて来ない。ウラジミール・プーチン大統領は最近のクレムリンでの演説においてゼレンスキーの自制心を引用して、次のように述べた:

「昨日の出来事ではあるのだが、ウクライナの指導者は自分たちはこれらの(ミンスク)合意には従わないと公に宣言した。合意には従わないと。このことについていったい何をコメントすることができるのだろうか?」(ウラジミール・プーチン)

米国人のほとんどはゼレンスキーがミンスク合意を破棄したことは我慢の限界を越えるものであると理解することはできなかった。ロシアの高官らは当事者の皆がミンスク合意で受け入れられる条件を見い出すために8年間も仕事を継続して来た。そして、夜の11時になって、ゼレンスキーは腕を振り上げながらこの取り決めに関してくだらない話をした。どうしてなのだろうか?ゼレンスキーに対してミンスク合意を破棄するように指示したのはいったい誰なのか?ワシントン政府だろうか?

もちろん、そうだ。

ゼレンスキーがロシア語住民が居住する町や集落に臼砲を打ち込むことができる接触線を越した地域に6万人もの戦闘員を配備したのはどうしてなのか。明らかに、その地域の住民に送り出されたメッセージは「侵攻が真近に迫っている。直ちに自宅を放棄するか、地下室へ逃げ込むべきだ」というものだ。これらの地域住民が生き延びるために身を寄せ合わせなければならないところにまで追い込んだゼレンスキーの目的はいったい何か?これらの恐怖に満ちた展開を目にするモスクワの指導者たちに彼はいったどのようなメッセージを送ろうとしたのであろうか?


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彼は自分が取った行動がロシア側に警告を与え、プーチンが奇しくも大規模な民族浄化作戦が行われる可能性を予測し、これらの地域住民を防護するには軍事的介入を実行するしかないという判断を下すことを予知したのであろうか?

もちろん、彼は知っていた。

ところで、これらの行動は国内の団結を図り、ウクライナの対ロ問題を平和裏に解決すると約束したゼレンスキーの選挙公約とは果たして一貫性があるのだろうか?一貫性はまったくない。彼の行動は真逆である。事実、ゼレンスキーはまったく違う台本を使って自分の役割を演じているようだ。たとえば、彼はロシアの安全保障に関する最低限の懸念にはまったく関心を寄せようとはしない点を取り上げてみよう。ウクライナがNATOへ加盟することはロシアにとっては「レッドライン」であるとプーチンが繰り返して述べていたことをゼレンスキーは知っていたのだろうか?プーチンがこのことを2014年以降何度も繰り返していたことを彼は知っていたのだろうか?もしもウクライナがNATOへの加盟について行動を起こしたならば、ロシアは安全保障を確保するために「軍事的な」対応策をとらなければならないとプーチンが警告していたことを彼は知っていたのだろうか? NATOはワシントン政府によって牛耳られている組織であって、今までに他の主権国家に対して何回も武力侵攻を行って来たという事実をゼレンスキーは知っているのだろうか。NATOの侵略行為について簡単なリストをここに掲載してみよう:

1.    ユーゴスラビアの破壊

2.    アフガニスタンの破壊

3.    リビアの破壊

4.    イラクの破壊

5.    シリアの破壊

ゼレンスキーはNATOがロシアに対して大っぴらに敵意を抱いており、NATO組織の拡大主義者にとってロシアは脅威であると見なしていることを知っているのだろうか。

もちろん、彼はこれらすべてのことを知っている。それでもなお、彼は核兵器の開発に関心を抱いていることを公言して憚らない。これはどういうことだろうか?ロシアにとってこれはどんな問題なのかを想像して貰いたい。米国に後押しされている操り人形、つまり、ゼレンスキーが核ミサイルの引き金に指を掛けている姿を想像して貰いたい。これはロシアの安全保障に大きな衝撃を与えるものではないとあなたは考えるだろうか?プーチンはこのような展開を無視してさえも、ロシア人市民を防護する自分の責務を果たすことができるとあなたはお思いであろうか?もしもゼレンスキーがロシアとの和平を心から望んでいたとするならば、彼はウクライナに向けて次々と出荷されてくる致死性の高い武器をどうして認めたのであろうか? プーチンは余りにも愚かで、自分の目と鼻の先で何が起こっているのかさえも理解できないと彼は思ったのだろうか?自分の戦力を増強し、自国民を脅かし、たとえそれが何であろうとも米国が彼のために誂えた輪をかいくぐってジャンプし続けることによって両国間の関係を改善することができるとでも彼は思ったのだろうか?

あるいは、プーチンが提案した安全保障に関する要求は適切ではないと彼は思ったのであろうか?これがすべてかな?もしも誰かが同じ靴を履いたとしたら、つまり、メキシコが米国の南側国境に沿って軍事基地や大砲を配備し、ミサイル基地を構築しようとしたならば、米国はそんなことを許すだろうか?プーチンがしたようなことをしなかった大統領は米国の歴史上にはたして居たのだろうか? そのようなメキシコ側の兵器に対して先制攻撃を行い、半径20マイル以内の生き物をことごとく蒸発させるようなことは絶対しないと宣言する米国大統領ははたして居ただろうか?

そんなことはあり得ない。プーチンの要求はどう見ても妥当なものである。だが、ゼレンスキーはそれらを跳ねのけた。何故か?

彼の政府や軍隊および安全保障部門には「ライトセクター」と称するネオナチが居ることをゼレンスキーは知っているのだろうか?彼らの仲間の数は少ないけれども、その数は正しく数えておくべきである。ロシア語住民に対する憎悪や迫害をもたらす強力な要因となっていることを彼は知っているのだろうか?これらの極右の連中はトーチを掲げたパレードに参加し、腕にはスワスティカやSSの入れ墨をし、アドルフ・ヒトラーの人種差別主義を崇拝していることを彼は知っているのだろうか? 2014年にオデッサで40人もの市民が労働組合ビルの中で焼き殺された事件を含めて、これらのネオナチの多くは残虐な犯罪行為に関与していたことを彼は認識しているのだろうか?これらの極右武装兵力に武器を与え、軍事訓練を施すCIAの秘密プログラムは彼らに自信を与えることを彼は知っているのだろうか?それは2700万人ものロシア人がドイツ国防軍によって 殺戮された前代未聞の戦争を髣髴とさせることを彼は知っているのだろうか?

ゼレンスキーが行って来たことはすべてがロシアを挑発するためのものであったという事実をあなたは認識することができるだろうか?

NATO 加盟に関すること、核兵器を開発すること、致死的兵器を絶えず備蓄していること、兵力を東部へ移動させていること、ミンスク協定の実行を拒んでいること、そして、プーチンの安全保障に関する要求を拒んでいること、これらはすべてが意図的な挑戦そのものであるのだ。だが、どうしてか?どうして、「クマに餌を?」そこが問題なのだ!

なぜならば、ワシントン政府はロシアを戦争に引っ張り込んで、プーチンをさらに悪魔視し、ロシアを孤立させ、ロシア軍には対暴動作戦を行わせ、ロシア経済には厳しい経済制裁を課して、ロシアに最大限の損害を与えようという魂胆なのである。一言で言えば、それがワシントン政府の戦略であって、ゼレンスキーはワシントン政府がその目標を達成するよう援護射撃を行っているのだ。彼は自分自身をワシントン政府の道具にしたのである。彼は米国の関心事を先へ進めるために自国を犠牲にしようとしている。

これらはすべてがメデイアが考えもしなかったことを強調することに役立つであろう。評論家やケーブルニュースが何の議論もしなかった事柄、つまり、ウクライナが戦争に負けることをゼレンスキーが知っていることを示すものである。彼はウクライナ軍はロシア軍にはとてもじゃないが対応できないということを知っている。それはハエを叩き潰す巨人みたいなものだ。ウクライナはハエに過ぎない。一般大衆はこのことを聞きいれる必要があるのだが、聞こうともしない。その代わり、彼らはロシアからの侵入者と闘う英雄的なウクライナ人に関するお喋りをしており、よく聞く話だ。しかし、これはナンセンスであり、あまりにも危険だ。完全に見失ってしまった目標のために人々が自分の命を失うことになるのだから。この紛争の展開に関しては疑問の余地は何も無かった。つまり、ウクライナは戦争に負ける。これは確定的だった。そして、さらに行間を読むとすれば、ロシアはこの戦争に容易に勝利するであろうとあなたは予見することができる。ロシア軍はあらゆる作戦でウクライナ軍を敗走させ、ウクライナ軍はついに降参する。タッカー・カールソンの番組で行われたダグラス・マクレガー大佐とのインタビューを覗いてみよう。実際に何が起こっているのかをあなたは理解することだろう:

タッカー:「今晩の時点で戦争はどんな具合だろうか?」(31日)

マックレガー大佐:「最初の5日間はウクライナへ侵攻したロシア軍の動きは極めて遅かった・・・。ロシア軍は民間人の犠牲者を最低限に抑えようとし、かつ、ウクライナ軍が降伏する機会を与えようとして、ゆっくりと注意深く進軍した。それは今や終わって、今われわれが目にしているのは次の段階だ。ロシア軍は残っているウクライナ軍を包囲し、ロケット砲や砲撃、空爆を行い、遅いながらも確実に距離を縮めており、残ったウクライナ軍の兵力を一掃しようとしている。つまり、ウクライナ側の抵抗の終焉が始まったということだ。」

タッカー:「さて、プーチンの目標はいったい何だろうか?」

マックレガー大佐:「プーチンは2007年のミュンヘン安全保障会議で述べた自分の言葉に名誉を与えようとしている。あの会議で彼はNATOがわれわれの国境に触れるまで拡大することは決して許さないと言った。具体的に言えば、ウクライナとジョージアのことだ。われわれの目にはこれらの国々はNATOの軍事力や米国の影響力を行使するトロイの木馬として見える。プーチンはこの警告を何度も繰り返して述べた。ウクライナ東部における反対派武装勢力を実質的に一掃する作戦を実行することや自国軍をNATOと対峙させ、米国や西側の武力をロシアに投影するためのプラットフォームとしてウクライナを位置付けるためにウクライナに影響を与え、何らかの変化を引き起こすことについてわれわれがそれを阻止するといった事態は何としても避けたいという希望を抱きながら、彼はこの警告を繰り返して来たのだ。

今日現在の彼の目標はウクライナ東部(ドニエプル川から東側の領域)を押さえることだ。そして、彼はこの川を越して、キエフ市を全面的に押さえようとしている。

その時点でプーチンは他に何を実現したいのかについて決断しなければならない。彼はさらに西へ向けて進軍しようとは考えてはいないと私には思える。しかし、これらのすべてからウクライナが蘇生してくる形態は中立の立場だけであって、何処とも同盟関係が無く、望むらくはモスクワ政府とは友好的な新国家であって欲しい。そうであれば、プーチンは受け入れる。この条件が満たされなかった場合、彼の戦争は時間の無駄であったということになる。」(ダグラス・マックレガー大佐のタッカー・カールセンとのインタビュー。ランブル。)

ビデオリンク

この短いインタビューから言えることは次のような点である:

1.    ロシアが優勢で、ウクライナは敗退する。

2.    ウクライナは分割される。プーチンは自国の安全保障のために必要な緩衝地帯を設ける。

3.    ウクライナ西部を統治する者が誰であろうとも、その統治者は「中立性」の宣言をすることが求められ(書き物で)、NATOの加盟国となることは拒否する。もしもこの約束を破った場合、彼らは武力によって排除される。

しかし、ここに重要な点がある。この混乱の当事者たちは誰もがウクライナにはロシア軍に勝つ可能性はないことは初めから分かっていた。それは既定の結論であった。ここでわれわれが知りたいことは「どうしてゼレンスキーは悲劇が起こる前にこのような悲劇を回避しようとしかったのであろうか?」 

この疑問に対する答えは「ゼレンスキーとはいったいどんな人物であるのか」を明確に示してくれるに違いない。

次のことを自問自答して貰いたい。ゼレンスキーにはいくつもの機会があったのに、どうして彼はプーチンと交渉をしなかったのだろうか? どうして6万人の兵力を東部から引き揚げなかったのだろうか?どうして彼はワシントン政府からの武器の出荷を停止しなかったのだろうか? どうして彼はミンスク合意を履行しなかったのだろうか?どうして彼はNATO加入の呼びかけを拒まなかったのだろうか?

最後に、どうして彼はモスクワ政府に怒りをもたらし、戦争の勃発の危険性があることを知りながらも、これらの挑発行為を行って来たのだろうか?

これらの疑問に答えることは難しくはない。

ゼレンスキーは最初からワシントン政府の命令に沿って行動して来た。われわれはそのことを知っている。また、彼はワシントン政府のシナリオを実行して来た。それは彼自身のシナリオでもなければ、ウクライナのシナリオでもない。われわれはこのことについても知っている。しかし、だからと言って彼を無罪放免にすることはできない。結局のところ、彼は善悪を区別することができるれっきとした大人である。彼は自分が行っていることをわきまえているし、それは悪いことであることを知っている。単に悪いと言うよりもさらに性質が悪い。まさに言い訳のしようが無い程だ。彼は勝ち目のない戦争に男たちを送り出している。つまり、彼は何の理由もなしに自国の市民にたとえようもないような苦難をもたらし、傷を負わせているのである。そして、もっとも醜悪なことには、彼が防護すると宣誓した国家、つまり、ウクライナが解体するような道筋を辿ろうとしている。同国はロシアとの最終的な和解のためにいくつかに分断されるであろう。ゼレンスキーはその責任の大部分を背負うことになろう。

このような人物は自分自身とどのように折り合いをつけるのだろうか?

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著者のプロフィール:マイク・ウィットニ―はワシントン州在住で地政学的ならびに社会的な分析でよく知られている。彼のキャリヤは2002年に独立した市民ジャーナリストとして始まり、率直なジャーナリストの姿勢に徹し、社会正義や世界平和に関心を寄せている。彼は「Centre for Research on Globalization」の研究員を務めている。本記事の初出は「The Unz Review」。Copyright © Mike WhitneyThe Unz Review, 2022

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これで全文の仮訳が終了した。

ワシントン政府はロシアを戦争に引っ張り込んで、プーチンをさらに悪魔視し、ロシアを孤立させ、ロシア軍には対暴動作戦を行わせ、ロシア経済には厳しい経済制裁を課して、ロシアに最大限の損害を与えようという魂胆なのである。一言で言えば、それがワシントン政府の戦略であって、ゼレンスキーはワシントン政府がその目標を達成するよう援護射撃を行っているのだ。彼は自分自身をワシントン政府の道具にしたのである。彼は米国の関心事を先へ進めるために自国を犠牲にしようとしている」という著者の言葉はウクライナ・ロシア戦争のすべてを物語っているように私には思える。

ゼレンスキーは最近のEUの動きについては不満なようである。つまり、ウクライナとしてはEUへの加盟を速やかに実現したいと提言したが、EU圏内の政治家の動きはひとつに団結しているとは言えそうにない。ゼレンスキーにはその点が気に食わないようだ。

ところで、「田中宇の国際ニュース解説」というサイトがある。このサイトはマクロな世界の動きを知りたい場合、私にとっては是非ともチェックしておきたい必須のサイトである。有料記事と無料記事の二本立てで公開されている。311日掲載の「ロシアは中国と結束して延命し、米欧はQE終了で金融破綻」という有料記事の要約は下記のように述べている:

「ウクライナ戦争が長引くほど、中露は結束し、米国は中露への制裁を強め、世界経済は中露側と米欧側に分裂していく。石油ガスなど資源の多くは中露側が持っている。大消費地帯である中国もインドも中露側だ。米欧側の強みは債券金融システムの巨大な資金力だが、その力は、今、米連銀がインフレ対策としてQEを停止するので破綻寸前だ。QEをやめたら債券金融システムはバブル崩壊する。米欧側は強みを喪失し、生活必需品である石油ガス鉱物を中露側に握られ、経済破綻して敗北していく。中露側も経済難は続くが、地下資源と実体経済の成長構造があるので米欧をしのいで台頭していく。混乱の中、世界が多極型に転換する。」

ロシアがウクライナへ侵攻したことによってヨーロッパではすでにエネルギー不安が急速に高まっている。電気代が高騰しているのだ。電気を大量に消費する化学品、セメント、鉄鋼を製造する企業は強烈な衝撃を受けているらしい。310日の報道によると、ドイツのババリアに所在する製鋼メーカー「Lech-Stahlwerke」社は電気代の高騰によって生産を中止すると宣言した(原典:UPDATE 2: Steelmaker Lech-Stahlwerke halts production as power prices soar: By Tom KäckenhoffAyhan Uyanik, Mar/10/2022 3:47 PM)。

ロシアがヨーロッパへの天然ガスの供給をストップしたわけでもないのに、供給不安がヨーロッパ市場にこのような混乱を引き起こしたのである。あくまでも私の素人考えによる推測に過ぎないけれども、実際にロシア産天然ガスのヨーロッパへの供給がゼロとなった暁にはどれだけの衝撃が現れるのだろうか?ヨーロッパの製造業は国際競争力を失い、ほとんど壊滅してしまうかも。そうなると、まさに米国が狙った状況が出現する。米国自身が弱くなっても、輸出競争力が低下したEU諸国を依然として衛星国として残しておくことができるのだ。米国の覇権にぶら下がっていたいEU諸国や日本を含むその他の国々は安眠を貪っている。それが、逆に、米国を傲慢な対外政策に走らせている。このまま行くと、沈むはずがないと思っていたタイタニック号と運命を共にせざるを得ない。今や影響力が弱まる一方にある覇権国による果てしなく続く傲慢さの犠牲となることであろう。


参照:

注1:The Man Who Sold Ukraine: By Mike Whitney, Global Research, Mar/05/2022

 

 


2022年3月6日日曜日

「ノルドストリーム2」にはおさらばし、「シベリア2」に乗り換え

 

たとえ完成したばかりのノルドストリーム2の運用が開始できなくても、ロシアの天然ガス輸出にとってはそれ程大きな痛手にはならないだろうと識者らは言う。もしもそれが本当だとしたら、西側の対ロ経済制裁はまたしても掛け声ばかりで実質を伴わないものとなるのかも知れない。

セイカ―・ブログに「ノルドストリーム2にはおさらばし、シベリア2に乗り換え」と題された記事がある(注1)。著者は地政学的分析で興味深い記事を数多く世に送り出しているペペ・エスコバーである。2か月以上も前の記事ではあるが、内容の性格から言って今でも十分に賞味期限内であることに変わりはない。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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副題:軍事大国のロシアは米国・NATOから十分な程のいじめを受けて来たが、今や、新たな取り決めを指図しようとしている。

プーチン大統領が直接言及したもので、それはこう言っている:

「米国は自国にとっては関心が薄れてしまった国際条約からは頻繁に脱退することから、彼らを信用することができないことはわれわれ自身がよく知っている。だが、われわれは法的拘束力がある長期的な保証を必要とする。これは単なる口約束ではなく、もっとしっかりしたものでなければならない。」

そして、ロシアには警察による非常事態警報をさんざん発令させてきたものではあるが、今回は米ロ関係に決定的な危機をもたらした。

外交的に微妙な点は旧ソ連邦の崩壊以降帝国によってその品位が下げられ、米国はもはや頼りになる「パートナー」ではないという判断をしてはいたが、プーチンとしては改めて1975年にヘルシンキで採択された原則、「不可分で、公正な安全保障を希求すること」を具体的に指摘せざるを得なかった。

「条約から頻繁に脱退する」という文言はブッシュ(ジュニア)政権の下でワシントン政府が1972年に米ロ間で署名され、発効していた弾道弾迎撃ミサイル制限条約から2002年に脱退した事実を指していることが容易に分かる。あるいは、これはトランプ政権の下で米国がイランと共に署名し、国連が保証していたJCPOAを反故にした事実を指しているのかも知れない。 

プーチンはここでセルゲイ・ラブロフ外相に典型的に見られる道教的な辛抱強さを実践した。つまり、彼はロシア人に向けてばかりではなく、世界中の聴衆に向けて自明の理を説いたのである。南側諸国は次のような引用を正当に理解する:「国際法や国連憲章と衝突すると、米国は決まってそれらはもう古くて使い物にはならないと宣言する。」

それよりも以前に、外務省の副大臣であるアレクサンダー・グルシコは非常に自信に満ちた態度を保ち、何事についても想像に任せるようなことはしなかった:

「われわれは軍事的あるいは軍事技術的なシナリオからOCSEやユーロ・アトランティックおよびユーラシアの全加盟国の安全保障を強化する政治プロセスへと移行して行くことについて話し合いを開始する用意がある。もしもこの試みが功を奏しなかった場合は、われわれはNATO側に対してわれわれも報復に移行することを告げておくが、われわれがどうしてそのような決断をしたのか、どうしてそのようなシステムを配備したのかとわれわれに問うて来たとしても、それはもう完全に遅過ぎる。」

こうして、欧州は「欧州大陸が戦場となる見込み」に最終的に直面する。このような状況は実際にはワシントン政府によって下されたNATOの「決断」がもたらすものであって、回避不可能な結末なのである。

ところで、将来の可能な「報復」は何であってもロシアと中国との間で互いに調整が行われるであろう。

「閣下、Zirconが使用可能です」:

大西洋沿岸から始まってユーラシア大陸の草原地帯に至るまで知覚を有する者は誰でもが米国に向けて提示されたロシア作成の安全保障に関する保証の草案内容を知っている。セルゲイ・リアブコフ外務副大臣によってその詳細が語られているからである。

主要な条項としてはNATOの拡大をしないこと、ウクライナのNATO加盟は許さないこと、NATOはウクライナや東欧、トランスコーカシア(訳注:ジョージア、アゼルバイジャン、アルメニアの3国を指す)ならびに中央アジアで火遊びをしないこと、ロシアとNATOは短・中距離ミサイルを相手国の領土内へ打ち込めるような周辺地域には配備しないことに同意すること、ホットラインの設置、「NATO・ロシア協議会」が紛争の解決に積極的に取り組むこと、等が含まれる。

ロシア外務省は米国側には「ロシアの取り組みに関してはその論理を詳細に説明している」ことからも、ボールはワシントン政府の側にあると繰り返して述べている。

ここで、国家安全保障担当補佐官のジェイク・サリバンが、記録に残されているように、プーチンはウクライナへ「侵攻する」気は無さそうだと判断した際、彼がこのボールを最初に蹴ったようだ。

それから、ぶつぶつと不平や不満を言う声が上がった。米国は、事実上NATOの子分たちのために原稿を書き、イェンス・ストルテンベルグ事務総長がえらくへたくそなやり方でそれを伝えた後に、自分たちが作成した「具体的な安全保障提案」を携えて今週はモスクワへの対応をしなければならないのだ。

ウクライナを巡る筋書きは1インチでも変わりがなかった:もしもロシアがウクライナにおいてさらなる侵攻を果たした場合に備えて経済面および資金調達面にその特徴を持った「厳しい対策」が準備された。

モスクワ側は騙されなかった。リアブコフはあらためてロシア側の提案は二国間をベースにして作られていることを明確に述べなければならなかった。つまりはこうだ。われわれは決断力を持った連中と話をするだけであって、子分たちとは話をしない。他の国々を含めると、「彼らからは彼らが持つ意味を取り上げてしまう」ことになりかねないとリアブコフは説明した。

最初から、NATOの回答は予想されたように明らかであった:つまり、ロシアはウクライナとの国境で途方もなく大規模で、いわれのない、正当性を欠いた軍事力の増強を行っていると。これは「ウクライナとNATOへの挑発」をもたらすといった偽りの主張を招じ入れることになった。

それはストルテンベルグのようなキャンキャン吠えるチワワとの話し合いに貴重な時間を浪費するだけであることを示していた。彼にとっては「NATOの拡大は継続し、ロシアがそのことを好むか否かには関係がない」のである。

事実、米国やNATOの職員が好むか好まないかには関係なく、リアルポリティックスの世界で現実に起こっていることはロシアが大きな力を備えた立場から新たな条件を規定するという新しい状況が到来したのである。極めて簡単に言えば、街の新しいゲームの仕方については平和的で教養のある対話から学び取ることができる。あるいは、イスカンダール氏やカリブル氏、キンザール氏、ならびに、ジルコン氏との対話を通じて極めて過酷なやり方で学び取ることも可能だ。

計り知れない程に貴重なアンドレイ・マルティアノフの情報が極超音速についてであろうとなかろうと、ロシアの軍事力がヨーロッパの空間で所有する優位性に関して今までの何年かを掛けて高度な分析作業を行い、もしも米国とNATOの子分たちが「馬鹿げた火遊びを続けたいと決断した」場合にもたらされるであろう悲惨な結末に関しても彼は予測結果を示した。

また、「西側との亀裂について理解しており、貿易がすでに減少を見せ、縮小していることやEUに対するハイドロカーボンの供給が減少していることを含め、その結果起こることについてロシアはしっかりと受け留める用意ができている」ことをマルティアノフは特に指摘した。

これが安全保障の保証を巡るバレー劇の全体がパイプライン設置国の関心事と深く交錯し合う場なのである。全体を要約すると、こうだ。「ノルドストリーム2」におさらばをし、「パワー・オブ・サイベリア2」に乗り換える。

これからヨーロッパにやって来るエネルギー政策の大失敗はロシアには何の痛痒ももたらさないのはどうしてかという点についても再訪しておこう。

シベリアの夜のダンス:

先週開催されたプーチン・習による戦略ビデオ会議においてもっとも重要な点のひとつは「パワー・オブ・サイベリア2」の近い将来に関する事柄である。これはモンゴルを横断して、年間500億立方メートルの天然ガスを中国へ供給する。

つまり、プーチンが習との会談の2日後にモンゴルのウフナーギーン・フレルスフ大統領をクレムリンへ招じ入れ、「パワー・オブ・サイベリア2」について話し合ったのは偶然の出来事ではない。このパイプラインの主要パラメータは既に設定され、実現可能性の調査は2022年の始めには完了の予定である。そして、この取引は、最終的な値段を除いては、実質的に決着がついている。

「パワー・オブ・サイベリア2」は、東シベリアと中国北部とを繋ぐために2019年に立ち上げられ、全長2,200キロに及ぶ「パワー・オブ・サイベリア1」に沿って設置され、4000億ドルの取引がガズプロムと中国のCNPCとの間で合意された。「パワー・オブ・サイベリア1」の最大供給能力は2025年に達成される予定で、年間供給量は380億立方メートルとなる。

「パワー・オブ・サイベリア2」は遥かに大規模な事業となるが、これは数年前に計画されたものの、最終的な設置ルートに関する合意にかなりの時間を要した。ガズプロムはシベリア西部からアルタイ山脈を越して新疆と結ぶ案を示した。中国側はモンゴルを横断して中国の中央部と直接結ぶ案を押した。結局、中国案で決着した。モンゴルを経由するという最終的なルートはたった2か月前に決定されたばかりだ。建設工事は2024年に着工となる。

これは大規模な地理経済学的な状況を逆転させてしまうような出来事であって、ますます進化するロシア・中国間の戦略的パートナーシップに全面的に沿うものである。また、地政学的にも極めて重要だ(ロシアの「中核的な戦略」を中国は支援すると言った習の言葉を皆さんはご記憶だろうと思う)。

「パワー・オブ・サイベリア2」を経て出荷される天然ガスは現在ヨーロッパ市場へ供給しているものと同じガス田から来る。EUならびにドイツ新政府がノルドストリーム2の運転開始に対して如何に認知症的な策謀を巡らそうとしても、ガズプロムの主要な関心事はあくまでも中国なのである。

中国は顧客として近い将来ヨーロッパの全市場に完全に置き換わるわけではないという指摘はガズプロムにとっては重要な問題ではない。ここで重要なことは定常的なビジネスの流れであり、子供じみた政治的火遊びはしないという点だ。中国にとってはもうひとつの重要な点はより以上に特別な性格を帯びている。陸上を介した天然ガス輸送は「マラッカ海峡の隘路から逃げ出さなければならない」という戦略を現実のものとしてくれる。つまり、冷戦2.0が熱戦争に変化した場合、米海軍は南東アジアを経由して中国へと輸送されてくるエネルギー源をブロックしてしまう可能性がある。このような可能性を見事に排除してくれるのだ。

中国がロシア産の天然ガスを買い付ける際には北京政府は、もちろん、どこへでも顔を突っ込む。中国は270億ドルのヤマル・プロジェクトへ30%の資本を投下し、210億ドルの北海プロジェクトでは20%の資本を投下している。

2022年へようこそ!いちかばちかの新しいリアルポリティックス・ゲームがお待ちかねだ。

米国のエリートたちは中国に対抗してロシア・カードを弄ぶことには戦々恐々としていた。何と言っても、これはドイツをロシア・中国側へ追いやってしまい、大混乱の帝国はのけ者にされるかも知れないからであった。

そして、これはウクライナ紛争の全表情を覆う「ミステリ―」へと繋がって行くのである。EUがロシア産天然資源の恩恵に浴することから排除することにこれを使うのである。

ロシアはこのシヨウ全体を完全に逆さまにした。エネルギー大国としてのロシアはその関心のほとんどをNATOによって振り回され、すっかり腐敗しているEUに対してではなく、アジアの顧客に向けることにした。

それと並んで、軍事大国であるロシアは米国・NATOからは十分ないじめに遭っており、今や、新しい取り組み方を自分たちで書きおろしている。ラブロフ外相は安全保障の保証に関する米ロ間の1回目の会談は2022年の始めに開催されることを確認した。

これらは最後通牒なのであろうか?とんでもない。リアブコフはまたもや説明を繰り返さなければならないようだ。「われわれは誰かを相手に最後通牒の話をしているわけではない。われわれは自国の安全保障に関して責任のある態度を取り、他国に対してもまったく同様だ。重要な点はわれわれが最後通牒を持ち出したということではない。そんなことではなく、われわれが発した警告は真剣なものであって、そのことを過小評価してはならない。」

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これで全文の仮訳が終了した。

欧州の経済的凋落の趨勢は明らかになった。ドイツ政府がノルドストリーム2の操業開始を葬ったことによって、ロシア産の安価な天然ガスはヨーロッパへは供給されず、中国へ向かう。ヨーロッパの冬は文字通り厳しいが、今後この寒い冬をどのようにして過ごすのであろうか?

しかも、その経緯を見るとまったく腑に落ちない。ウクライナ情勢は2014年のマイダン革命においてEUへの接近というウクライナの夢が頂点に達した。もちろん、これは西側のさまざまなNGO活動がもたらした成果なのである。デモ参加者らは代償として何十ドルかの支払いを受けた。資金を出した西側はカラー革命によって民主的に選出されていた当時のヤヌコビッチ大統領を政権の座から暴力的に追い出すことに成功した。今振り返って見ると、ウクライナ国内には2014年に政府レベルで暴力が根をおろしたのである。国粋主義者やネオナチが政府内を牛耳っている。あの革命以降、ドネツク・ルガンスク両共和国では連日の砲撃や狙撃によって13,000人もの死者を記録した。数多くの民間人や子供が含まれている。また、2百五十万人もの人たちが家を追われ、国内、あるいは、国外へ移住せざるを得なくなった(原典:OSCE Mission Confirms Violation of Humanitarian Law by Ukrainian Troops in LPR, Lugansk Says: By Sputnik, Feb/22/2022。元コメディアンのゼレンスキー大統領はウクライナ東部に和平をもたらすことを約束して、地滑り的な大勝を果たして大統領に就任した(20195月)。しかしながら、大統領の座について間もなく彼は右傾化した。つまり、彼に投票してくれた選挙民の総意を裏切って、ウクライナを対ロ強硬派へと導いた。

結局のところ、ウクライナを自分の陣営に引き込もうとしたEUは軒を貸してやって、母屋を傾かせてしまうという皮肉な結果に今見舞われようとしている。何と言う歴史の展開であろうか?


参照

1Exit Nord Stream 2, Enter Power of Siberia 2: By Pepe Escobar, The Saker, Dec/25/2022