2012年1月17日火曜日

TPPが納得できないいくつかの理由

TPPISD条項はどんな悪さをもたらすか?」と題して数日前に新たなブログを掲載したばかりである。

その後、さらに様々な情報を吟味していくうちに幾つかの事項を緊急にブログに追加して、TPP条約の不条理、あるいは、不適正さを指摘して、このブログを読んでくださる方々とその思いを共有することが基本的に最も大切だと痛感した。

何が不条理、あるいは、不適正であるかと言うと、それは米国がTPPをゴリ押しする姿勢についてである。それと並んで、日本政府が自国の国益をまったく考えず、米国の提案に盲目的に追従しているだけではないかと感じられるからだ。

下記に引用するウェブサイトを覗いていただけると容易に納得して貰えると思う。たとえ全面的に支持はできないとしても、そこには多くの有益な情報が含まれている。これらのブログは非常に真面目な内容のものであるので、安心して読み進めることができると思う。

それぞれの項目についてその一部を引用してご紹介したい。もう少し知りたいと思う方はそれぞのウェブサイトを覗いていただきたい。ここでは、「.....」で引用した部分の始まりとその終わりを示すことにする。


   予想的中:TPP参加承認を盾に大幅な譲歩を求めるアメリカ[1]: 

.....シャーリーン・バーシェフスキー元米通商代表は日本経済新聞に対し、日本はTPP(環太平洋経済連携協定)交渉の一環として、農業や自動車などの分野で譲歩する必要があると語った。19972000年に代表を務めたバーシェフスキー女史は、連邦議会は米韓自由貿易協定の一環として韓国に求めた以上の譲歩を求めるだろうと指摘した。
さらにアメリカが譲歩を求める分野として、農業、自動車、牛肉輸入、非関税障壁、簡易保険といった日本との長期にわたる問題を列挙した。.....
.....全米商工会議所のアジア担当副会頭、タミ・オバーバイ氏は、非関税障壁を撤廃して米国車輸入に一定の目標数量枠を設けるなど、日本は進んで自国の市場を開放する姿勢を示すために「厳しい決断をする」必要があると述べた。.....
.....日本とアメリカが同様の合意に至れば、日本のTPP交渉参加を承認する際にカギを握る米議会に対して「果断で明確なシグナルになる」という。
この発言は全米商工会議所の幹部から発せられたものだ。最近のメッセンジャー同様、これまでその発言が取り上げられることはなかった。これは日本に何をすべきか伝える際にアメリカが使うやり方だ。その一方で、問題に関して公式には静かにしているのだ。アメリカがまたしても日本から特別サービスを受けることに、国民が慣れてほしいと思っている日本政府と結託して行っている可能性もある.....
上記の引用の最後のパラグラフには「日本政府と結託して行っている可能性もある」と述べられている。政治の世界では「さもありなん」という感じだ。多分、その見方が正解だろう。過去を遡ってみると、歴代政府にはいくつもの秘密があった。現政府には秘密なんて何もない、と信じたいところだが、それを信じることは余りにもナイーブだ。
次に、「アメリカが日本から受ける特別サービス」とは何だろうか。識者からの批判があるかも知れないが、それを恐れずに思いつくままに挙げるとすれば、その最たるものは米軍駐留経費の一部を日本が肩代わりしている「思いやり予算」ではないだろうか。
思いやり予算は日本だけー金額、負担率もダントツー」と題した坂井定雄龍谷大学名誉教授のブログが目に付いた[2]。そこには、思いやり予算について下記のような興味深い纏めが記述されている。
.....米国防総省が、同盟国の米軍駐留経費負担に関する報告書を発表したのは2000年まで。計算根拠も詳細に説明してある。その後はなぜか発表されなくなったが、総額も負担率も、順位は変わっていないと思う。金額の大きい順に転載する。
同盟国の米軍cひゅう粒経費負担(2002年):
            国名         金額(億ドル)          負担率(%
            日本                44.1                             74.5
            ドイツ                15.6                             32.6
            韓国                 8.4                               40.4
            イタリア             3.6                               41.0 .....

上記のデータは少し古く、2002年のものであるが、日本の負担率は74.5%だという。莫大な金額であることは簡単に予想できる。2010年度の「思いやり予算」は1,881億円。2010年度までの10年間の平均年間負担額は2,274億円となる。

仮に、韓国やイタリアと横並びにして、負担率を74.5%(負担率そのものはこの10年間変化がなかったとの前提で)から40%に下げると、この年間平均負担金額は2,274億円から1,221億円に低下する。差額は1,053億円。

この差額こそが、日本が米国に与えている最大の「特別サービス」ではないだろうか。過去10年間に日本が米国政府に与えた(あるいは、日本の対外政策の貧困からむしり取られたとでも言うべきか...)この「特別サービス」の合計金額は1530億円にもなる。

これに続くのは、米軍基地にかかわる日米地位協定だろう。こちらは金の問題ではなく、一国の主権の問題だ。日本の主権を犠牲にして、米兵や軍属に治外法権的な待遇を与えている。そして、それは条約で明記された「有事の際」ばかりではなくて、平時の際についても同様だ。「有事」とは、本来、日本が外国からの軍事侵攻に遭った時のこと、「戦時」を指すのではないのか。

2008年に沖縄でおこった駐留米兵による女子中学生暴行事件は基地外に居住する米兵による犯罪防止の重要性を浮き彫りにした。しかし、地方自治体は米軍基地外にどれほどの数の米兵が住んでいるのかを把握できないという。何故かと言うと、日米地位協定によって米兵や軍属に関して外国人登録が免除されているからだ。さらには、基地外での犯罪であっても、公務中の米兵や軍属の一次裁判権は米国側にある。

条文とは異なり、実際の運用面では条文を超えた扱いになっていると指摘されている。そういった運用を長年にわたって許容してきた。これは米国に対する「特別なサービス」ではないか。

「特別なサービス」の範疇に入ると思われる件は他にも数多くあるだろう。

例えば、次期戦闘機の機種が、先月、1220日に米国ロッキード·マーチン社製のF35に野田内閣によって決定された[3]。向こう20年間に42機購入するとのことだ。来年度分4機は1機あたり99億円で、防衛省は来年度予算案に盛り込む方針だという。向こう20年間の購入・維持費は総額1.6兆円。しかし、F35の決定に際しては試乗も行わず、書類審査だけで判断した。先方の提案をうのみにしたに過ぎないと報道されている。先方の提案をうのみにするとは大変なサービス振りである。

このように、日本は米国に対して様々な形で何重にもなる「特別なサービス」を提供しているということになる。

そして、今、TPPがさらに追加されようとしている。


   TPPの懸念: 遺伝子組み換え食品を大量に承認するアメリカ[4]

.....日本ではアメリカ主導のTPP(環太平洋経済連携協定)参加に関して議論が続いているため、我々はアメリカが日本に何をもたらすのか、情報を提供し続けるのがよいだろうと考えた。いまだにこの協定が日本にもたらす恩恵を探しているが、アメリカとその企業パートナーの利益を見つける方がずっとたやすい。
下記は、オバマ政権がモンサント社の遺伝子操作された「乾燥耐性」コーンを承認したという記事だ。
休暇中、米農務省はモンサント社によって開発された、「乾燥耐性」を備えているという遺伝子組み換えトウモロコシの新株を承認したと発表した。この遺伝子組み換え(GE:genetically engineered)トウモロコシ品種に反対する意見が一般から45000件近く寄せられたにもかかわらず(賛成はわずか23件)、オバマ政権はモンサント社に最新のGEトウモロコシ品種を自然環境とアメリカの食糧供給に自由に放出する許可を与えた。政府の監視や安全性追跡調査なしで、である。

Cornucopia Instituteのシニア農業政策アナリスト、マーク・A・カステル氏は「オバマ大統領とビルサック農務長官は、遺伝子組み換え食品に対する我々の懸念、疑わしい安全性、環境へのマイナスの影響、農家、とくに有機栽培農家への悪影響など気に掛けないとアメリカ国民にはっきりメッセージを送ったのだ」と語った。
さらに「これは一連の遺伝子組み換え作物の最も新しい承認に過ぎない。オバマは選挙で変化を公約したにもかかわらず、強力なアグリビジネスやバイオテクノロジーの圧力団体に断固とした態度を取る勇気がなかった」と指摘した。
農務省はモンサント社の最新GEコーン品種の承認を発表するとともに、さらに2件の申請に対し60日間の公衆意見聴取期間も設けた。1つは、より高濃度のオメガ3脂肪酸を含有するモンサント社のGE大豆である。高濃度のオメガ3脂肪酸は本来大豆には存在しない。もう1つは有毒な除草剤2,4-Dに耐性のある、ダウ・アグロサイエンス社のGEトウモロコシである.....

.....日本にとっての問題は、TPPに参加すると、日本の食用作物に関する規制をアメリカが手掛けることになるということだ。TPPの規定には、遺伝子組み換えであることを食品に表示しないというものがある。遺伝子組み換え食品は、非遺伝子組み換え食品と同様の表示で、同様の容器に入れられ一般に販売されることになるのだ。さらに、TPPの表示ルールでは、食品の原産地を消費者に知らせることが禁じられている。福島産などの放射能汚染された食品が心配な日本の多くの家庭にとって、いくらか気掛かりな話である.....
TPPに参加すると、消費者の安全のために必要な日本の食用作物に関する規制がアメリカの企業によって左右されてしまうことになる」というこの指摘は非常に重要だ。

日本は世界最大のトウモロコシの輸入国であり、日本の輸入量の90%は米国に頼っている。また、日本は大豆についてもほとんど輸入に依存している(全消費量の95%)。輸入品の4分の3は米国からの輸入だ。
日本人の家庭で毎日食卓にのぼる味噌汁や醤油、あるいは、納豆や豆腐用の大豆は、いつの日にか、遺伝子組み換え大豆に入れ替わっているかも知れない。でも、消費者はその事実さえも知る術がない。そういった国内での流通の仕組みさえもがTPPの中には組み込まれていることになる。すべてが非関税障壁であるとして撤廃を迫られることになる。恐ろしい話である。

米国の穀物メジャーや種子産業の巨大企業によるビジネス戦略のために、一言で言えば、彼らの金儲けのために、日本の消費者が振り回される。安全性に関する規制を維持することができなくなる。こうして、日本で生まれてくる子供たちの健康や生命を代償に、米企業は毎年好業績を計上することになる。日本にとっては、これは「グローバル化」あるいは「自由貿易主義」の最大の負の遺産となることだろう。理不尽なことだ。

   米国とTPPの真実 - 日本とアジアは騙されている[5]:

.....今日の自由貿易協定というものは、二国間にせよ多国間(二国以上全部の国未満)にせよ差別が根底にあることは良く知られている。そのために経済学者は優先貿易条約(PTA)と呼ぶのだ。そしてその理由で米国政府の広報マシンは差別的多国間自由貿易協定を「パートナーシップ」と呼び、協力と世界主義の偽のオーラの力を借りようとしている。
諸国はTPPに自由に参加できる。日本と中国は参加する意思を表明している。しかしよく見ると、中国は招かれざる客だ。TPPは中国の新しい侵攻性に対する反応であり、したがって政治的対立と抑制の精神で構築されているのだ。決して協力の精神ではない。

米国は貿易と関係のない事柄を含むPTAのひな形をいくつも作ってきた。だからTPPのひな形に、労働基準、資本勘定管理といった貿易と関係ない数多くの事柄が織り込まれているのは驚くにはあたらない。これらの多くは中国が協定に参加できないようにするためのものだ。
日本政府さえもTPPの目的は中国をコントロールすることだと認めている。これはあたかも日本人は中国からの保護の代償として日本の主権を引き渡すことへの言い訳であるかのように聞こえる。

最初から、TPPの見せかけの開放性は偽りだった。その目的で、TPPはベトナム、シンガポール、ニュージーランドといった弱い国から交渉が進められたのだ。これらの諸国は条件に容易く丸め込められるからだ。それから、日本の様な大国はオール・オア・ナッシングの前提でメンバーシップを提供されているのだ。
広報マシンは本質と無関係な条件の包括がTPPを21世紀向けの「高品質の」貿易協定にすると自慢をしているが、実際は国内の数個の圧力団体による搾取に他ならない。.....

この纏め「米国とTPPの真実 - 日本とアジアは騙されている」は、とくに、我々素人がTPPの政治的な本質を理解し、どこにどのような理不全な要求が含まれているかを知り、将来どういった問題が派生するかを見極め、全体像をバランス良く理解することに非常に役立つのではないかと思う。

TPPは中国が参加できないように設計されている」という指摘は重要だ。

中国は昨年日本を抜いて世界で二番目に大きい経済大国となった。そして、中国は日本にとっては輸出入でトップを占める国だ。中国は今や急速に富を築き上げている。労働者の賃金も上昇している。つまり、国全体としての購買力が急上昇しているのだ。近い将来、非常に大きな市場になることは疑う余地もない。国内市場が小さくなる一方の日本において、日本の産業界は中国市場に今まで以上にアクセスする必要がある。当初から中国が参加できないように意図されたPTTに日本が参加することは基本的に間違いだと思う。

米国政府の広報マシーンがこのTPPTrans-Pacific Partnership)という差別的多国間自由貿易協定をなぜ「パートナーシップ」と呼んで、その背後にある戦略を隠さなければならないのかについての解説は実に秀逸だ。米国政府が日本政府に迫っているこのTPPの偽善性と差別性とを良く物語っていると思う。

是非、ここに引用したブログを読んでいただきたいと思う。

そこに見られる記述の多くは、必ずしも大手メディア(新聞やテレビ)によって十分に報道されているわけではない。むしろ、日本政府によって情報がコントロールされている可能性が大きい。ただ単に外部から与えられる情報だけではなく、今や個人個人の立場から情報を発掘し、泥を洗い落とし、TPPの真の姿を理解して行く努力が求められていると思う。インターネットには膨大な情報があって、貴方の訪問を待っているとも言ってもいい。

円高ドル安への誘導に成功した米国は、これから輸出に一層注力するだろう。米国が輸出できる産業分野は農産物、自動車、防衛産業、サービス産業だ。狙った市場へのアクセスをさらに強化することだろう。

20101113日、オバマ大統領は横浜市で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)最高経営者サミットで講演し、同地域の自由貿易圏構想を推進する決意をあらためて示した[6]。それによると、「国外に10億ドル(約825億円)輸出するたびに、国内に5000人の職が維持される」とのことだ。

「ウォールストリートの占拠」に象徴される米国国内の反格差デモ、高止まりしている失業率、今年の秋に行われる大統領選挙、イラクから帰還した兵士たちのための職場の創造、等、どれをとっても国内景気を押し上げなければならない理由が米国にはたくさんある。米国のゴリ押しも一段と高まるに違いない。

TPPへの参加に関してその内容も十分に議論しないまま、参加することに方針を固めた日本政府は米国にとっては何と御しやすい同盟国だろうか。大統領選挙を控えたオバマ大統領にとってはタイミングはピッタリだ。米国の政界や経済界の指導者は、多分、にんまりと笑っているのではないか。

私はたまたま米国で17年間仕事をし、生活した。米国の良さ、素晴らしさは十分に理解している積もりだ。例えば、1980年代、仕事上のことでカリフォルニア州立大学のサンディエゴ分校の図書館を何回も訪ね、技術文献を漁ったものだ。開架式で、外国人の小生であっても何ら差別されることもなくアクセスすることができた。非常に開放的であるという印象を抱いている。

残念なことではあるが、米国の対外政策にはまったくの失望である。今回の米国のTPPへの参加要請の進め方やその背景にある戦術はことさらにそうだ。政治的には非常に不健全だ。

皆さんはどう思いますか?



出典:

[1] 予想的中 TPP参加承認を盾に大幅な譲歩を求めるアメリカ:201214日。http://seetell.jp/24458

[2] 思いやり予算は日本だけー金額、負担率もダントツー:坂井定雄龍谷大学名誉教授のブログ。http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-1152.html

[3] 次期戦闘機F35に正式決定  野田内閣:Asahi.com20111220日。www.asahi.com/.../TKY201112200167.html

[4] TPPの懸念: 遺伝子組み換え食品を大量に承認するアメリカ:20120108日。
http://seetell.jp/24574

[5] 米国とTPPの真実 - 日本とアジアは騙されている: 20120110日。
http://seetell.jp/24621

[6] オバマ大統領TPP推進の決意を示す APEC最高経営者サミットで講演:20101113日。www.afpbb.com/article/politics/2775213/6453354



 

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