昨日、3月14日は快晴となった。明るい日差しが眩しいほどであった。
ブカレスト市にある日本人学校での卒業式に出かけ、2名の児童が小学校を卒業する式典に参列することができた。在ブカレストの日本大使館からは大使が来られ、お祝いの言葉を述べられた。また、日本から赴任されている先生方の内でお二人の先生が任期を終えて近いうちに帰国されることから、これらの先生方の離任式も行われた。この日本人学校では、児童生徒たちは君が代を歌い、校歌を歌う。他にも皆でいくつかの歌を合唱してくれた。
この校歌の冒頭は「マルチショールの声きけば、きぼうの春がやってくる」と始まる。ブカレスト市にある日本人学校としてその地方色を見事に表現したものと言えよう。
マルチショール(ルーマニア語ではMărțișorとつづり、mərtsiʃorと発音)はやって来た春を祝うルーマニアやお隣のモルドヴァ共和国の伝統的な行事である。3月1日にこれを祝う。この日、赤と白の糸または細い紐を結びつけた小さな飾り物が人々に、特に、女性に贈られる。春には大地に生命が戻ってくる。このこととの連想から、人々の健康、多産、豊穣を願うもので、マルチショールはかってはお守りとして使われたとのこと。しかしながら、この伝統も今日の都市生活においては大きく変貌し、愛、尊敬、感謝を象徴するものとなった。
この時期はちょうど日本の春の到来を象徴する節分とかひな祭りみたいな感じだ。早春の季節感が非常に強い。早春と言えば、我が故郷の北信州では猫柳が柔らかな芽を膨らませ、壇香梅が楚々とした黄色い花を開き、まだ灰色の木々の間でこぶしが白い花を咲かせ、蕗のとうがあちこちに顔を見せる。そして、庭先では福寿草が春を謳歌する。そんな頃の季節感と見事に一致する。
凱旋門の側にある公園を覗いてみることにした。実はこの公園にギオチェイ(日本ではスノードロップと呼ばれている)が芽を出す一角がある。大きな屋外時計が設置されている入り口を入る。この地点からせいぜい5分くらいの距離だ。エミネスクの胸像がある周辺がギオチェイの自生地。
昨年始めてこの自生地を訪れたのだが、時期が遅すぎた。そんなこともあって、今回は10日ほど早目にやってきた。数多くのギオチェイが白い花をつけているではないか!周りにはまだ雪が残っており、緑はまだまだ先の話だ。今は、ギオチェイだけの世界だ。
冒頭で述べた日本人学校の校歌に出て来るマルチショールは新しい季節の到来に夢や希望を託す、ごく一般的に見られる人間行動と言えるだろう。1年の周期は古来春に始まったのではないか。その時期になると寒さも去って、暖かさが増し、人々はこれから始まる農耕が稔り多いものになって欲しいと願ったことだろう。
希望に胸を膨らませる季節である。
今でも日本人学校の子供たちが歌っていた校歌が聞こえてくるような思いだ。
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