その帰路、凱旋門の隣にあるヘラストロウ公園内の日本庭園に立ち寄ってみた。日本からの桜が植わっていると聞いたからだ。入り口の大きな時計は12時を過ぎていた。中へ入って行くと、すぐ右側に目指す日本庭園があった。10本ほどの桜が満開となっているではないか。咲き振りから推測するに、これは間違いなく染井吉野だ。桜の木はまだ若いのだが、実に見事だ。
先客が何人もいる。それぞれがこの空間を楽しんでいるようだ。若い人たちや孫を連れた老夫婦。10人位の学生と思われるグループは皆で歌っている。少し距離を置いて一人で寝転がっている女性もいる。子供たちはおもちゃを散らかしたまま周りを跳ね回っている。
日本大使館のウェブサイトによると、「平成11年5月には凱旋門に近い一角に日本庭園が開園され、日ル文化交流協会より寄贈された200本のサクラの苗木が植えられている」とのこと。
今回小生が見とれることになった桜はその200本のほんの一部だということになる。
ブカレストでは約1週間前にスモモの白い花が満開となった。そして、それも束の間に散ってしまった。
当地では春の花はギオチェイ(日本では「スノードロップ」と呼ばれている)から始まる。昨年は遅すぎたが、この春はその開花時期にタイミングを合わせてギオチェイの花を観察することができた。あれはまだ雪が残っている3月14日のことだった。
ギオチェイの後にはクロッカスやヒナギクが続く。そして、タンポポやパンジー、水仙、ヒヤシンス、等。樹木ではレンギョウやコブシ、モクレンに始まって、スモモやリンゴの花へと移っていく。そして桜の花となった。
桜の花は日本人の心を躍らせる何かがある。しかし、常に心を躍らせてくれた訳ではない。暗い記憶につながる時期も日本にはあった。小生の世代にとっては、桜の花は春の入学式シーズンには欠かせない風景だ。6歳の子供たちが始めて経験する学校生活は満開の桜や花吹雪と重なって、忘れることのできない貴重な記憶となるに違いない。そんな平和な記憶となって欲しいと思う。
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