2014年2月9日日曜日

地球温暖化説のリーダー、英国気象庁の最近の説明


この前の26日付けのブログでは、温室効果ガスの大気中への放出が継続しており、むしろ、より強まっていたにもかかわらず最近の10数年間は地球温暖化の度合いが止んで平坦になってしまったという事実に関しては、地球温暖化説を唱導し、国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の活動において指導的な役割を演じてきた英国の気象庁がついに最近の新たな傾向を認めたとの記事を紹介した。 

英国気象庁の言葉を借りると、地球の温暖化は目下「一時的な休止」の状態にある。地球温暖化が人為的な要因によるものだとする「人為的地球温暖化説」に懐疑的な人たちは英国の気象庁がついに嫌々ながらも最近の新たな状況を認めることになったと皮肉を込めて解説している。 

そこで、今日のブログでは、英国の気象庁が過去10数年間の気候の推移(つまり、地球の温暖化が止まってしまったという現状)に関してどのような見解を示しているのかを確認してみたいと思う。 

英国気象庁は3部作の報告書の最初のふたつを昨年7月にインターネット上で公開した。みっつ目は現時点では未刊である。 

それぞれの報告書の表題を仮訳すると、下記の通りである。 

地球の温暖化における最近の一時的な停止(1):気候システムの知見はわれわれに何を告げているのか?[1] 

地球の温暖化における最近の一時的な停止(2):潜在的な理由としてはどのような理由があるのか?[2]

 

         
 

それでは英国気象庁のひとつ目の文書の要旨を仮訳し、それを下記に示してみよう。
 

<引用開始>
 

地球の温暖化における最近の一時的な停止(1):気候システムの知見はわれわれに何を告げているのか?
 

要旨 

気候に関しては幅広い指標について観測が行われているが、それら指標の変動は地球の温暖化と気候システムがどのように挙動するのかに関するわれわれの理解との間で整合性を示している。 

全球平均地表面温度は1970年代以降急速に上昇したが、2013年までの最近の15年間は比較的平坦となった。この事実が、人為的な地球温暖化はもはや進行していないのではないか、あるいは、少なくとも予測値よりも遥かに小さいのではないかとの指摘がなされている。これは一時的な休止であって、温度は予測された通りにまた上昇を再開するという見方もある。 

本紙は気象庁のハドリー・センターからの三部作の報告書の中の最初のもので、地球の温暖化現象における最近の一時的休止について言及し、次の疑問に答えようと意図している。つまり、この期間における他の指標は最近どのような傾向を示しているのか、今起こっている一時的な休止をもたらした潜在的な要因は何か、さらには、予測される将来の気候に対してはどのような影響を及ぼすのか?  

気象と気候の科学は複雑で常に変化する環境をよく観察し、それらをよく理解することにその基礎を置いている。地球系に関する基礎物理学は数値モデルの開発のための基盤を提供する。こういった数値モデルは気候システム全体(つまり、大気、海洋、陸地および氷圏)をカプセル化し[訳注:カプセル化とはオブジェクト指向プログラミングが持つ特徴の一つカプセル化を進めることによりオブジェクト内部の仕様変更が外部に影響しなくなり、ソフトウェアの保守性や開発効率が高まり、プログラムの部分的な再利用が容易になると言われている]、気候システムがどのように展開するのかに関するわれわれの予測を可能にする。 

したがって、気候科学者が現時点の気候の状態やその歴史的な文脈について入手可能な最良の情報を取得できることが固有の必要条件となる。この作業には非常に正確で、かつ、世界中に配置された観測や監視のシステムもしくはネットワークを必要とする。これは大量のデータを合成することができる強力なデータ処理や解析能力に依存することになる。そして、測定の限界や観測上のギャップに由来する不確実性を空間的にも時間的にも適切に考慮しなければならない。勤勉さを十分に発揮し、厳密で偏向のない科学的評価を適用することによって始めて、気候科学者は気候システムの数多くの変数や現象についてその状態や趨勢ならびに変動性の実態をもっとも完成した一枚の絵として提供することができる。これこそが気候科学が十分な証拠や利用者が待ち望んでいる助言を提示する際に必要な基礎となる。 

本紙では今日現在得られる全体図がどのように構成されているのかを手短かに示したい。より詳細な背景説明は数多くの科学者の協力の下で毎年作成され、米国気象学会の機関誌(BAMS)に掲載される(BlundenおよびArndt2013年)。その知見によると、下記の事項が重要だ。 

● 気候に関する物理量は広範囲に及ぶが、それらは変動をし続けている。たとえば、われわれの観測によると、北極海の氷は減少しており、海水面は上昇し続けている。これらの変動は気候システムが大気中の温室効果ガスの増加に対してどのように反応するかに関するわれわれの理解とよく一致する。 

● 全球平均地表面温度は高いままであり、過去10年間は記録上もっとも高かった。    

● 地表面温度の上昇速度は最近の10年間に大きく減速したように見えるが、10年間程度の期間にわたるこのような鈍化は過去においても観測されており、いくつかの気候モデルにおいてシミュレーションされている。これらは一時的な現象である。
 

<引用終了>
 

最近の報告によると、衛星データは2013年の10月には北極海の氷の量が前年の同時期の量に比べて約50%ほど増加したことを示しているそうである。しかしながら、過去30年間の推移を見ると氷の総量は依然として最低のレベルにあり、喜ぶのは早すぎると専門家は述べている。 

 

         
 

次に、ふたつめの文書に移ろう。仮訳を下記に示す。
 

<引用開始>
 

地球の温暖化における最近の一時的な停止(2):潜在的な理由としてはどのような理由があるのか?
 

要旨 

地表温度の上昇が最近なくなったことを地球が受け取ったエネルギー総量の減少(つまり、地球系に入ってきた太陽エネルギーと地球から逃げて行った熱エネルギーとの差)だけで説明することはできない。海洋の熱含有量や海水面の上昇の観測によると、大気中の炭酸ガス濃度のさらなる上昇によって追加された熱量は海洋によって吸収され、地表面温度の上昇には寄与しなかったことを示唆している。海水の表層と深海部との間の熱交換の変動が地表面温度の上昇の一時的な休止のひとつの原因となっており、太平洋が重要な役割を演じていることが観測された。
全球平均地表面温度は1970年代から急速に上昇したが、2013年までの最近の10年から15年間ではさらなる温暖化は見られなかった。このことは人為的な地球温暖化はもう進行してはいないのではないか、あるいは、少なくとも温暖化は予測された度合いよりもはるかに小さいのではないかとの憶測を生んだ。一方、他の専門家はこれはあくまでも一時的な休止であって、温度は再び上昇し始めるだろうとの見解を示している。
本紙は気象庁のハドリー・センターからの三部作の報告書の中のふたつ目のもので、地球の温暖化現象における最近の一時的休止について言及し、次の疑問に答えようと意図している。この期間における他の指標は最近どのような傾向を示しているか、今起こっている一時的な休止をもたらした潜在的な要因は何か、さらには、予測されている将来の気候に対してはどのような影響を及ぼすのか?
本報告書の目的は現行の一時的休止が持つ意味ならびにその潜在的要因を観測や最先端の気候モデルによるシミュレーションを用いて評価することにある。1970年から2000年の期間では、観測から得られた平均地表温度の傾向は0.17±0.02°Cであった。自然の変動に関するシミュレーションの分析によると、10年間当たりの温暖化の率が0.2°Cであるとしても、平均的な1世紀の期間中にはまったく温暖化が起こらない10年の期間が少なくとも二回はあることを示している。全球地表面温度の上昇が一時的に休止している現在の状況は最近実施したモデル・シミュレーションによると例外的なものではない。
現行の一時的な休止を説明するには可能性としてはふたつのメカニズムが挙げられる。そのひとつは地球が受け取った総エネルギー量が変動すること(放射強制力)。そして、ふたつ目は海洋には低周波変動があり、その変動を介して海洋が熱を吸収し海面下に(可能性としては深海部)熱を蓄積する。これらのふたつのメカニズムが同時に起こった結果、地球の温暖化が一時的に休止したとする説明は可能である。
地球が受け取った総エネルギー量だけで最近の地球温暖化の一時的な休止を説明することはできない。温室効果ガスによる放射強制力は衰えずに継続していた。つまり、熱はシステム内に保持されているが、全球平均地表面温度の上昇を一目瞭然に説明する程にはなっていない。
海洋の熱含有量および海水面の上昇に関する観測結果はこの追加的な熱は海洋によって吸収されたことを示している。海洋の表層と深海部との間の熱交換が温暖化の一時休止を部分的に引き起こしたものと推測され、観測値は太平洋が重要な役割を演じていることを示している。
地球温暖化が一時的に休止しているという事実によって巻き起こされた科学的な疑問は地球系へ流れ込むエネルギー、地球系が失うエネルギー、ならびに、系内でのエネルギーの移動に関してわれわれが現在よりもはるかに詳細に理解することを求めている。現在の理解は十分に詳細であるというわけではなく、長期間にわたって十分に観測が行われてきたわけでもない。それ故、われわれはエネルギー収支を完成することができないでいる。これらは科学における主要な挑戦でもあり、研究に携わる科学者グループは理論やモデルならびに観測を組み合わせた探査ならびに実験を総動員して、積極的に取り組んでいる。

<引用終了>

このふたつ目の報告の要旨を読んだ結果、海洋の役割が非常に大きいことが分かった。しかし、その挙動は現時点では十分には解明されてはいないという現状についても分かった。
最近の海洋の熱含有量の調査は急速に進んでいるようだ。特に、海中の深部にまでも調査が行われ垂直温度分布についての理解が深まってきている。最近の報告のひとつ[3]1958年から2009年までのデータを再度解析した結果を報告している。最近の10年間の温暖化について言うと、温暖化の約30%は水深700メートル以下の海水によって吸収されているとのことだ。
海洋の役割を正確に理解することができるのかどうかは素人にとっては何も言えないが、少なくともかなり困難な作業であろうということは想像に難くない。
今後公表される予定となっている三番目の報告では、英国の気象庁が温暖化現象の「一時的な休止」をどのように説明するか、今までの理論との整合性をどのように説明するかが焦点になるのではないかと思う。 

 

参照: 

1: The recent pause in global warming (1):  What do observations of  the climate system tell us?: By Met Office, July 2013, www.metoffice.gov.uk/.../Paper1_Observing_changes_in_the...  

2: The recent pause in global warming (2): What are the potential causes?: By Met Office, July 2013, www.metoffice.gov.uk/.../Paper2_recent_pause_in_global_wa...

3: Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content: By Magdalena A. Balmaseda et al., Geophysical Research Letters, May/16/2013, onlinelibrary.wiley.com > ... > Vol 40 Issue 9

 

 

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