2014年7月26日土曜日

新たな情報 - マレーシア航空MH17便は空対空ミサイルで撃墜された?


アムステルダムからクアラルンプールに向かっていたマレーシア航空MH17便は地対空ミサイルで撃墜されたとの見方が大勢を占めている。ただ、その地対空ミサイルを発射したのは誰だったのかは確定されていない。ウクライナ軍か、それとも、反政府派か? あるいは、ひょっとしてロシア軍の仕業であったのか… 

そこへ、まったく新たな情報が現れた。撃墜された航空機の右側のエンジンを見ると、「空対空ミサイル」でやられた様子が見られると言う。これが事実であるとすると、この一週間世界中のメデア、特に米国とその同盟国においてメデアが集中して取り上げて来た「地対空ミサイル説」は退場することになるかも知れない。 

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今日はこの空対空ミサイル説を掲載した記事 [1] を仮訳し、皆さんと共有したいと思う。 

著者のペペ・エスコバールは香港に本拠を置く「アジアタイムズ」のコラムニストであり、彼の評論は興味深い。本も書いている。
 

<引用開始> 

諜報や事実は政策を巡って解釈され、振り回されてきた。誰もが記憶にあるのは「ダウニング街メモ」ではないだろうか。このメモは2003年のイラクの爆撃・侵攻・占領に向けてブッシュとブレアが密かに抱いていた「政策」を見事に暴いてくれた。その「政策」は電撃戦によってサダム・フセインを片付けるというもので、その理由付けに使われたのが「テロリズム」と(実際には存在しなかった)大量破壊兵器だった。この大量破壊兵器はトラックに積み込まれて、シリアの奥深くへと「消えてなくなった」。諜報とか事実とかはもう忘れてしまおうではないか!

MH17便の悲劇 - たまたま大量破壊兵器となってしまったが、この事件はイラクにおける帝国主義政策の再演として見ることも可能だ。今回はメモなんてまったく必要ない。「カオスの帝国」の「政策」は明確であり、何本もの柱で構成されている。具体的に言うと、それはヨーロッパとロシアとの間の通商を破壊するためにウクライナに橋頭保を築くことによって「アジアへの回帰」を多様化する、NATO組織をウクライナにまで拡張する、露中間の戦略的提携を破壊する、独露間の提携から始まり中国とルール工業地帯とを結ぶ新シルクロード計画に至るまでユーラシア大陸における通商・経済の統合を防止し、ヨーロッパを米国の覇権の下に維持することにある。

ロシアのプーチン大統領が何故ウクライナ東部を「侵略」しなかったのかという点に関してもっとも重要な理由は、同大統領は、米国の軍事顧問団の手助けの下で行われている市民の虐殺を食い止めようとしてウクライナ東部への侵攻をするであろうとのワシントンやNATOからの勧誘あるいは期待があったものの、ロシアのもっとも大きな通商相手であるEUを敵に回したくはないことにある。

極めて重要な点は、「保護する責任」を行使するとしてコソヴォに対してワシントンが行った介入はロシアがドネツクやルガンスクに介入する際に適用しようと思えばまったく同じ理由で正当化することができることだ。今や、ドネツクやルガンスクへの介入の理由は完全に正当化し得る状況にある。ただ、モスクワ政府はそうしようとは思わない。何故かと言うと、クレムリンはかなり長期的な視点で行動しているからだ。

MH17便の悲劇は恐ろしい手違いだったのかも知れない。あるいは、「カオスの帝国」のキエフにおける手先たちによる捨て身の作戦だったのかも知れない。今はもう、ロシアの諜報当局は重要な事実をしっかりと掴んでいるに違いない。ワシントン政府がやりそうな手口は、考えもせずに衝動的に行動し、戦争を引き起こし、その戦争に勝ち、そして、ソーシャル・メデ
アから得た証拠で手が一杯の「高官たち」をお払い箱にすることによって倍賭けをする、といった展開だ。一方、モスクワは時間をかけてでもこの複雑なジグソー・パズルを組立てて、それが完成した時に初めてその情報を公にすることだろう。


失われた覇権:

全体像を見ると、「カオスの帝国」のエリートたちは今すっかり狼狽している。例えば、「グランド・チェスボード」の著者、ブレジンスキーだ。以前にも増して意気消沈しているホワイトハウスでは多くの高官たちが外交政策の前指導者としての彼の言葉を待っている。先週の日曜日、ブレジンスキーはCNNニュースに登場し、「プーチンに対して立ち上がれ!」とヨーロッパの指導者たちに向けて檄を飛ばした。彼は「ヨーロッパは衛星国になりたいと思っているのか」、もしそうだとすると「世界システムの将来にとっては決定的な影響を与えることになる」との懸念を示した。

そして、もちろん、これはすべてがプーチンの責任である。「われわれは冷戦を巻き起こそうとはしていない。彼(プーチン)が始めたのだ。彼は自分自身とてつもない泥沼の中に陥ってしまった。ロシアでは多くの人たちが、大統領から遠く離れているわけでもない人たちさえもが国際社会におけるロシアの立場は劇的に損なわれる、ロシア経済は低迷し始めるのではないか、ロシアが中国の衛星国家になってしまう可能性がある、あるいは、ロシアは自ら孤立の道を歩み自ら信用を落とそうとしている、と心配しているのではないか。」

ブレジンスキーは、明らかに、中露間の戦略的な提携関係が持つ素晴らしい点、ならびに、BRICSG20 および数多くの他の国際組織の内部で聞こえてくる声については知らぬが仏である。彼のトレードマークである「ロシア恐怖症」は、結局、何時も彼を圧倒してしまう。彼の最近の本「Strategic Vision (2012)」でそのことを考えてみると、ブレジンスキーにとってはトルコやロシアを併合した広大な「西側」こそが彼のお好みの構図であって、「カオスの帝国」をその拡大された「西側」の「推進者」あるいは「保護者」とし、東側の主要な国々の間では「均衡を保つ役割」や「調停者」として位置付けている。しかしながら、2012年以降のリビア、シリア、ウクライナ、ならびに、中国に対する包囲の記録を見ると、「カオスの帝国」はカオスを醸成しただけであって、他には何の役にも立ってはいない。

さて、恐怖におののいているブレジンスキーをイマヌエル・ワレルスタインと比べてみよう。彼は私が2007年に地政学的に歪んだ世界を描いた「
Globalistan」と題するトラベル・ブックでは大きな影響を与えてくれた。この書籍(スペイン語) では、ワレルスタインは「カオスの帝国」は地政学的な退廃を単純には受け入れることはできない。このことから、「カオスの帝国」は非常に危険な存在となった。世界システムにおける自分たちの覇権を再構築することこそが究極の執着となったのだ。そこにすべての「政策」が集中し、MH17便の惨劇の背景には本質的にこの「政策」が潜んでおり、ウクライナはやるかやられるかの戦場と化してしまった。

ヨーロッパではすべてがドイツと絡んで来る。特に、米国家安全保障局のスキャンダルとそれが引き起こした悪影響の後、ベルリンで交わされている重要な議論はどうしたら地政学的に米国を避けながらも自国の立つ位置を決めることができるかという点にある。そして、その答えはドイツの大企業のほとんどが後押しをしているロシアとの戦略的な提携である。


そのミサイルを見せてくれ:

大騒ぎもせず、歪曲もせずに、ロシアの軍部はじっくりと事の真相を伝えようとしている。
ここに情報源は「Vineyard of The Saker」というブログであるが、彼らがこれまでに公表した中でもっとも中心的な説明がある。「The Saker」が述べているように、ロシアは「レーダーによる正常な視力」を備えている。つまり、ウクライナで起こっていることのすべてに関して徹底した監視を行っている。そして、ほぼ間違いなく、NATOもそうしている。ロシア国防省が言っている内容は専門家たちのために提示した内容と同様に非常に重要だ。

破壊されたMH17便の右側のジェット・エンジンは空対空ミサイルから受けたと推察される鋭い攻撃の跡を匂わせている。これは地対空の「ブク」のせいではない。これはロシア国防省が図解をしながらMH17便を追尾していたウクライナ軍のSU-25戦闘機の存在を説明してくれた内容と辻褄がよく合う。「カオスの帝国」が世界中に広めようとしてきた「ブク」のシナリオはこれで次第に捨てられることになるだろう。言うまでもなく、仮に「ブク」ミサイルが使用されていたとすれば、はっきりと見える筈のミサイルからの飛行雲が見えていた筈だ。しかし、誰も目撃してはいないのだ。

ウクライナ軍のSU-25 戦闘機がMH17機を追尾していたという事実とは別に、答えが得られてはいない疑問点はたくさん残っている。その内のひとつはアムステルダムのスキポール空港のセキュリテ
ーの手順は胡散臭いことこの上ないという点だ。同空港のセキュリテーはオランダに本拠を置いたイスラエルの企業、
ICTSによって運営されている。この会社はShin Betという諜報の専門会社の前役員によって設立された。その上、キエフの管制塔には「外国からの」アドバイザーたちがいるのだが、彼らについての説明は何もない。 

シリアのバシャル・アル・アサド大統領には自国の市民を化学兵器で殺戮する理由がまったくなかったことと同じように、ウクライナ東部の連邦派の住民には民間機を撃墜する理由はまったくない。そして、ワシントン政府はガザにおいて現在進行している住民の虐殺にはまったく関心を示さないのと同様に、ワシントン政府はMH17便での民間人の死亡にもまったく関心を示さない。たったひとつの彼らの執着はロシアに経済制裁を加え、ロシアを死に至らしめることにある。つまり、ヨーロッパとロシアとの間の通商や地政学的な統合を断ち切ることにある。

MH17便の惨劇の一週間前、ロシアの戦略問題研究所はすでに「カオスの帝国」が抱いている「政策」について、ならびに、彼らは「国際法の原理・原則ならびに現存する国際関係システムの精神に準拠することを拒んでいる」ことについて警鐘を鳴らしていた。

モスクワはMH17便の惨劇に関する証拠をそろえ、キエフ政府の主張が偽りであることを暴くために機をうかがい、自分たちの信頼性を最大限に高めることだろう。このゲームは今ブラックボックスへやコックピット・ボイス・レコーダへと移りつつある。依然として、ウクライナはやるかやられるかの戦場そのものである。チェスボードはすっかり血にまみれてしまった。

ペペ・エスコバールは
Globalistan: How the Globalized World is Dissolving into Liquid War (Nimble Books, 2007)Red Zone Blues: a snapshot of Baghdad during the surge (Nimble Books, 2007)、および、Obama does Globalistan (Nimble Books, 2009)の著者である。彼は pepeasia@yahoo.com のメールアドレスで連絡が取れます。

Copyright 2014 Asia Times Online (Holdings)
 

<引用終了>
 

世間の関心はこれからブラックボックスやコックピット・ボイス・レコーダに移って行く。 

しかし、この「カオスの帝国」が執着する覇権の維持を考えると、現在進行中のブラックボックスやコックピット・ボイス・レコーダの解読には大きな懸念がついてまわる。解読作業を行う場所は英国である。英国は盟主である「カオスの帝国」の懐刀だ。そのような英国の研究所で解析作業が行われるということは結果がもう予測できるということと同等だ。 

現時点では「ブラックボックスやコックピット・ボイス・レコーダは損傷がなく、毀損された形跡もない」と報じられている。ということは「これから行われる解析の結果が全てを物語ってくれるので、解析の結果は誤りようもない」とでも言っているように聞こえる。つまり、「俺たちの言うことを聞け。他の解釈はあり得ない」とでも言いいたいのではないかと勘繰ってしまう。 

地対空ミサイル説にせよ、空対空ミサイル説にせよ、あるいは、機内に爆弾が装着されたにせよ、政治によって全てが翻弄され、真実がことごとく歪曲されると、この惨劇で亡くなった乗員・乗客の皆さんの霊は行き場を失ってしまうのではないか。嫌な世の中になったものだ! 

さて、これからどのように展開するのだろうか?

 

参照: 

1The Tragedy of MH17 - A Chessboard Drenched in Blood: By Pepe Escobar, Asia Times, Jul/23/2014

 

 

 

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