2018年10月3日水曜日

米国は決して戦争には勝てない。その本当の理由は・・・

米国は朝鮮戦争では勝てなかった。ベトナムでも勝てなかった。

そして、最近では、米国は今もアフガニスタンから撤退できないままだ。イラクやリビアでも同様だ。その後、ソマリアはどうなったのだろうか。最近はニュースにさえも登場しなくなった。シリアでは、米国はアサド政権の転覆を諦めて、遅かれ早かれシリアから撤退せざるを得ないのではないか。それとも、公の目的であるイスラム国のテロリストが一掃された後でさえも、お得意の詭弁を駆使して米軍はシリアに居座り続けると説明するのだろうか?ウクライナでは米国の動向が今ひとつはっきりとしない。

大手メディアが詳しく報道しないとは言え、代替メディアが伝える情報を総合してみると、非常に明確な事柄がひとつある。それは夥しい数の一般市民の犠牲者が出ているという事実だ。

米帝国が推進して来た新資本主義やネオリベラリズム、グローバリズムはその名称が次々と替わったとは言え、一貫して観察される政治的目標は相手国に米国のルールに従うことを強要することにある。もしも従わなければ軍事力に訴えてでも政権を転覆し、米国の言いなりになる傀儡政権を擁立する。世界規模の覇権を維持するために米国はこの手法を世界中で採用して来た。

不幸なことには、こうして、戦争が必然的についてまわる。

ここに、「米国は決して戦争には勝てない。その本当の理由は・・・」と題された最近の記事がある [1]。この論評は現行の国際政治を総括的に把握する上で非常に有用だと私は思う。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

 
<引用開始>

 
 
 
 
 
 
 
 
Photo-1

注: この小論はジェームズ・ペトラス教授の記事によって触発されたものだ。その記事は「米国は戦争予算や軍事的優位性を維持するために何兆ドルもの金を注ぎ込んだけれども、戦争には勝てない」と述べている。
ぺトラス教授が述べていることは、もちろん、正しい。米国は、現在、血なまぐさい戦争を七ヶ所(アフガニスタン、イラク、パキスタン、シリア、イエメン、ソマリア、リビア)で行っており、第二次世界大戦も含めて、勝った戦争はひとつもない。それは何故か? 
これらの戦争には、青空刑務所とでも呼べるガザ地区で、何千人もの子供たちを含め、非武装の一般市民を殺戮するためのあの徹底的に破壊的で、人権を真っ向から否定した、イスラエルが米国のために遂行しているパレスチナに対する代理戦争も付け加えるべきだと皆さんは思うことだろう。さらには、イランやベネズエラ、北朝鮮に対する好戦的な挑発も然りだ。新しい様式の戦争、つまり、中国やEU、メキシコやカナダに対する経済戦争、並びに、ロシアを始めとして世界中に課せられる経済制裁の形で遂行される戦争も論を待たない。国際経済学の如何なる書物を取り上げてみても、経済戦争による領土の保全は明らかに違法である。
勝つことが決して意図されなかった戦争や紛争は他にもある。たとえば、1990年代にクリントン政権とNATO によって遂行されたユーゴスラビアの解体だ。いわゆる、ユーゴスラビアのバルカン化である。今や、「バルカン化」という用語は「分割・統治」様式を用いた帝国による世界支配を意味する言葉として使われている。ユーゴスラビア共和国の元加盟国の多くは、その後、国内が沈静化しないだけではなく、互いの国家間においても決して穏やかではない。毛沢東主義者であり、かつ、社会主義者でもあったチトー大統領はユーゴスラビアを国家として平和裏に統治し、1970年代から1980年代にかけては同国をヨーロッパではもっとも裕福な国のひとつにすることができた。社会主義国家において社会的、経済的に満足できる生活が達成されているなんて許しておけるのか?断じて許せない!こうして、ユーゴスラビアは破壊された。と同時に、NATO軍は自分たちの軍事基地をモスクワへ近づけて行った。しかし、戦争には勝てなかった。紛争は依然として続いている。こうして、ヨーロッパと米国の国家安全保障のためにNATOの存在が「正当化」されて来たのである。   
ニカラグアやホンジュラス、グアテマラといった中米諸国を忘れないでおこう。また、8年間にも及んだイラン・イラク戦争や他にもある数多くの戦争は破壊や無秩序をもたらし、何と言っても、数百万人もの市民を殺害し、これらの国々を弱体化した。国民を悲惨な状況に陥れ、恒常的な恐怖にさらした。そして、今日に至るまで国内の敵対関係や戦争、テロを維持するために皆が武器を求め続けている。 
これらの戦争はすべてが非合法的であり、如何なる国際法を取り上げてみても、これらは禁止されている。しかし、特別で例外的な存在である国家はこれらの禁止を遵守しようとはしない。トランプ大統領の下で国家安全保障を担当し、弱いもの虐めを行うジョン・ボルトンは最近国際刑事裁判所(ICC)とその判事らに対して脅しをかけた。イスラエルと米国の戦争犯罪者を訴追するならば、「制裁」措置を課すと言ったのだ。そして、このことについては、世界はまったく気にもかけてはいないようだ。恒常的に軍事力を見せつけられ、あるいは、世界に対する反対者として外へ放り出されることを恐れて、弱い者虐めのルールを受け入れる。15カ国のメンバーで成り立っている安全保障理事会も含め、国連さえもが弱い者虐めに反対して立ち上がることを恐れる有様だ。191カ国対2カ国(米国とイスラエル)の構図は国連が正常に機能しているとは言えないのではないか?
これらの戦争では、冷戦であろうと熱い戦争であろうと、決して勝ったことはない。勝とうという意図さえもなかった。そして、将来の米国主導の戦争では米国が勝つという兆候も見られない。つまり、それらの戦争に何兆ドルもの金を注ぎ込んだとしても、勝つこととは無関係なのだ。これらの戦争を維持し、新しい戦争を開始するために何兆ドルもの金が用意されたとしても、まったく無関係だ。もしも国連に参加している191カ国がこれらの戦争の継続を許容するならばの話だ。繰り返すが、それは何故か? 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Photo-2: ヴィクトリア・ヌーランド

その答えは簡単だ。戦争に勝つことは米国の関心事ではないのだ。
理由はいくつかある。戦争に勝つと、理論的には平和がもたらされる。武器はもう要らなくなるし、戦いもなく、破壊もない。テロや恐怖もない。武器産業にとっては正気とは思えないような馬鹿儲けはできなくなる。しかし、何と言っても、平和裏に過ごす国家は恒常的に紛争にさらされている国家よりもあれこれと懐柔し、兵糧攻めにして降伏させることはより困難となる。政権交代をしてさえも終わらない紛争をわれわれは世界中で数多く目にしている。典型的な最近の事例はウクライナだ。長い期間の準備を経て、米国・NATOEU20142月にマイダン革命を引き起こした後、当時米国務省の次官補であったヴィクトリア・ヌーランドはこう言った。「われわれは5年以上の時間を費やし、50億ドルも注ぎ込んで、政権交代を達成し、ウクライナに民主主義をもたらした。」 
今日、ウクライナの東部、つまり、ロシア側に傾くドンバス地区(約90パーセントがロシア語を喋り、約75パーセントはロシア人)では「内戦」が続いており、ワシントン政府が擁立したポロシェンコ・ナチ政権によってこの内戦にはさらに油が注がれている。米軍の軍事顧問や支援を受けたキエフ政府軍の冷血な行為によって何千人もが殺害され、2百万人以上もの住民がロシア国内へ避難した。ウクライナの総人口は約44百万人(2018年の推算)で、土地面積は604千平方キロである。その内で、ドンバス地区(ドネツク州)はもっとも人口密度が高く、総人口の10パーセントが約27千平方キロの土地に住んでいる。
このキエフ政府による侵攻は終焉するのだろうか?もちろん。もしも西側がドンバス地区を開放してやればの話だ。この地区は今後キエフ政府に従うことはないし、すでにロシアへの帰属を要請している。西側が主導するナチ・キエフ政府による市民の殺害や悲惨な状況、破壊は直ぐにでも終わることだろう。しかしながら、和平は西側・NATOEUの関心事ではない。特に、米国にとってはなおさらのことだ。無秩序や絶望は国民をより簡単に操ることを可能にしてくれ、この非常に豊かな国家を搾取することをより容易にする。ウクライナはかってはロシアの食糧生産基地と称され、天然資源も豊富である。さらには、モスクワの玄関口に着実に近づこうとするためでもある。実は、このことこそが彼らの意図なのだ。 
事実、ワシントンと西側の衛星国であるEU諸国はロシアがウクライナを干渉し、ミンスク合意を守ってはいないと執拗に非難している。彼らはロシアがミンスク合意(ウクライナ、ロシア、フランスおよびドイツがウクライナ頭部における内戦を回避する一連の措置について2015211日に合意した)を遵守してはいないとしてロシアに経済制裁を課した。実際には、完全にその逆が真の姿であるのだが・・・。この合意の中核的な要素は非干渉の原則である。しかし、西側はそれを無視している。そして、西側のプロパガンダと嘘つきメディアは西側の市民を洗脳し、ロシアは悪魔であると信じ込ませている。キエフのナチ政権に干渉し、武器を与え、「軍事顧問団」を提供しているのは西側なのである。 
現行の戦略は虚偽に満ちたプロパガンダを行うことにあって、西側の嘘偽りに酩酊しきっている一般大衆は「悪いのは何時もロシアだ」と信じ込んでいる。プーチン大統領に率いられたロシア人は悪党だと信じている。メディア戦争は西側の対ロ戦争の一部である。考え方としては、たとえ人命を失い、戦費がかかったとしても、進行中の紛争を決して解決させないことだ。単純そのものである。米国は戦争に勝つのではなく、負けてばかりいるとして数多くの分析が依然としてそのように取り繕っているが、本当の事実をどうして指摘しないのであろうか?これは西側の地政学のイロハであるのだが・・・。 

人類の存続。世界に対する経済戦争:
 
ご存知ではなかった方々に言っておこう。米国務省は上院外交委員会で世界における米国の優越性を保証する計画を公表した。ウェス・ミッチェル国務次官補は、モスクワ政府はワシントン政府が全世界における優位性を確立することに対しては邪魔になることから、米国はロシアを罰すると宣言した。驚くほど単刀直入だ。米国はロシアと戦う理由を公に認め、ワシントン政府は中途半端な降伏は受け入れないと述べたのである。
 
世界に対する完全な優位性はユーラシア大陸を制覇することなくして実現することはできない。目下、彼ら、つまり、米国は同大陸を制覇してはいない。ミッチェルはさらに付け加えた。「アメリカ新世紀プロジェクト」(PNAC)を引用して、ロシアと中国は物質的にも思想的にも21世紀における米国の優位性を邪魔するもっとも危険な競争相手であると言明した。
 
さらに、ミッチェルは爆弾を落とした。 「敵国がユーラシア大陸を制覇しないように邪魔をすることは米国の安全保障にとっては非常に根源的な利益となる」と。これは米国はこの目標を達成するためには決して後へは引かないことを示するものだ。つまり、その目標を達成するためには、核戦争であれ、通常兵器による戦争であれ、全面的な戦争を意味し、夥しい数の死者をもたらし、徹底した破壊をすることもいとわないのだ。このことこそが現行の偽りに満ちた膨大な量の非難を率直に説明している。夢遊病者のようなニッキー・ヘイリーによる国連での徹底した非難から始まって、スクリッパル父娘毒殺未遂事件における決して終わりそうにもない物語の展開、2016年の米大統領選でロシアが干渉したとする主張に至るまで、ロシアをやっつけるという政治目標に合致するものでありさえすれば何でもありだ。そして、これらの作り話はほとんどがワシントン発やロンドン発だ。西側の他の衛星国は単にこれらの情報を鵜呑みにするだけである。
 

 

















Photo-3: ピンクフロイドの共同創始者であるロジャー・ウオーターズ。 

「戦争は実に巨大な利益をもたらす。戦争では大量の金を素早く費やすので、大きな利益を産み出す。大儲けをする機会があるのだ。戦争を鼓舞し、戦争を続ける動機が常に存在し、合法的に戦争を仕掛けるべきよそ者、つまり、戦争相手のことを識別しようとするのだ」と、ロックバンドの「ピンクフロイド」の共同創始者のひとりであるロジャー・ウオーターズは言う。 
ロシアは、今、経済ならびに通商上の「制裁」によって攻撃されている。旅行が制約され、西側にあるロシアの資産が没収された。全世界にとってはソ連邦の侵略を受ける恐れがあるとして喧伝されて来た冷戦は始めから最後まで真っ赤な嘘であった。第二次世界大戦中にヨーロッパをヒトラーの手から救出することによってロシアは極貧に陥った。そう、ヒトラーの軍隊を打ち負かしたのはアメリカ合衆国と西側の同盟国ではなく、ソ連であった。25百万人から3千万人もの人々を失った!想像してみて欲しい!ヨーロッパを救いながらも、ソ連自身は想像も出来ないような打撃を受け、極貧に陥ったのである。
米国のプロパガンダは「鉄のカーテン」という概念を作り上げ、基本的にはこの鉄のカーテンが想像上の盾の向こう側に存在するソ連が第二次世界大戦後どのような国であったのかを西側が正しく理解することを妨げてしまったのである。ソ連は第二次世界大戦によって極貧にさらされていた。しかしながら、この冷戦と鉄のカーテンを巡るプロパガンダによって西側は「自分たちはソ連軍の侵攻という脅威に毎日のようにさらされているんだ」と信じ込まされていたのである。さらに、ヨーロッパはソ連からの想像上の侵攻に対してNATOと共に防衛をする準備をしなければならないと信じ込んだ。ソ連は西側からの侵攻に備えて労働者が蓄積して来た資本を自国の防衛のために注ぎ込み、国家の再建、つまり、経済や社会の機構を改善するために充当すべき経済資源は何程もなかった。嘘をついて来たのは西側だ。西側は自分たちの市民を恒常的に徹底して騙して来たのだ。みんな、もう目を覚まそうぜ!!! 
ここにウェス・ミッチェルによって確認された事柄がある。米国は敗北し、その目標を達成せずに、むしろ、軍事力を使って底なしの悲惨な状況へ全世界を引きずり込もうとするのかも知れない。これはディープステーツの容赦のない決定である。彼らは過去200年間米大統領を背後から操ってきたのだ。世界の半分の人口を擁し、世界経済の3分の1を産出するSCOBRICS、ユーラシア経済同盟といった東側の新たな同盟関係が米国を経済面で押さえ込むことが出来ない限り、われわれもまた運の尽きとなるであろう。

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現在進行中の7カ国での戦争は無秩序振りを物語っている。戦争は終わる気配を示さず、まさに意図した通りである。決して終わることがなかった他の23の例についても反芻してみたいと思う。意識的に勝とうとはしなかったのはもちろんだ。第二次世界大戦とその局地戦争、経済戦争、紛争、等をもう一度おさらいしておこう。第二次世界大戦の立案は1928年から1933年までの大恐慌、あるいは、それ以前から進められていた。ヒトラーは好都合なカモだった。戦争は大儲けをするためだけではなく、あらゆる経済領域を活発にし、経済を支えてくれるのだ。当時の米国にとっては主要な目的はボルシェビイキ共産党、つまり、ソ連の脅威を排除することだった。今は、米国はプーチン大統領を悪魔視して、もしも可能であるならばロシアの政権交代を実現しようとしている。これこそがワシントンの願い事リストでは一番上にランクされている事柄だ。
大恐慌の最中、1931年に、米国はスイスのバーゼルに国際決済銀行(BIS)を設立した。ドイツとの国境に近く、好都合な立地である。BISは完全に民間の銀行であって、ロスチャイルド家によって支配され、公にはドイツが履行すべき賠償の支払いを決済するためのものであった。ほとんどの人たちにとってはまったく知られてはいないことではあるが、ドイツは第一次世界大戦についても、第二次世界大戦についても賠償としてはほとんど何も支払ってはいない。ほとんどが免除されたのである。ドイツはソ連の「共産党の呪い」を排除する上で非常に重要な役割を持っていた。ソ連に対するヒトラーの戦争に資金を供給するために連邦政府はウールストリートの銀行を経由し、BISを使った。
何時ものように、米国はふたつの結婚式で踊っていた。つまり、ヒトラーのドイツと戦う振りをしながら、実際にはモスクワと戦うヒトラーを支援したのだ。よく聞く話だろう? 中東や世界中でイスラム国や他のテロリスト集団と戦う振りをしながら、実際には聖戦戦士であるテロリスト集団を組織し、軍事訓練を行い、資金を提供し、彼らを武装するのである。ソ連軍が莫大な人的犠牲を払いながらも第二次世界大戦で勝利を収めた時、米国とその同盟国やNATOは行進をし、勝利を叫んだ。そして、今日まで西側の学校では歴史の教科書でこれらを教え、ソ連やロシアの市民に帰せられるべき大きな名誉はひどく軽んじられている。
ソ連邦が敗戦には至らなかったことから、西側は冷戦を発明しなければならかった。そうこうしている内に、ワシントンのカモであるミカエル・ゴルバチョフやボリス・イルツインの助けを得て、西側はソ連を崩壊させ、一人勝ちの道を準備することができた。しかしながら、非常に幸運なことには、例外的国家が企てたこの壮大な目標はロシアのプーチン大統領の登場によって中断することとなった。
しかし、それだけではなかった。ロシアを征服するには、ヨーロッパを「植民地化」しなければならなかった。つまり、アメリカ合衆国のような本当の意味での連合体ではない欧州連合(EU)へと変えなければならなかった。欧州連合の考えはCIAによって第二次世界大戦後に構築され、その後はローマクラブに引き継がれた。そして、数多くの協定を経て、1992年にはマーストリヒト条約にまで漕ぎ着けた。EUをヨーロッパ諸国間の堅固な結びつきとして実現するためには、次の論理的な段階は共通した経済政策や国防、対外政策を持つ憲法をEUに与えることであった。しかし、これは決して実現するような代物ではなかった。 
ジスカール・デスタン前フランス大統領(19741981)はEU憲法を起草する役目を与えられた。多くの人たちは何も知らないだろうが、メンバー諸国が批准したくはないような内容をもった草案を作成するよう厳密な指示が彼に与えられた。つまり、EU参加国の主権のほとんどをブリュッセルへ委譲するという内容である。こうして、EU憲法は、フランスを始めとして、各国に拒否された。多くの国は憲法について投票を行おうとさえもしなかった。ヨーロッパ連合の連邦化は実現しなかった。仮にヨーロッパ連邦が実現していたならば、それは米国にとっては経済的にも軍事的にも打倒しがたい相手となっていたことであろう。それに代わって、NATOがワシントン政府の監督下で欧州の統合役を担うことになった 。今日、EUは今まで以上にNATOの下で統合されようとしている。
欧州連合の創設と平行して起こったのは1944年のブレトン・ウッズ体制の合意であった。この体制によってヨーロッパの金融および経済上の植民地化あるいは奴隷化が推進された。彼らは世界銀行を創設し、米国が出資してヨーロッパの復興を支える基金、つまり、「マーシャル・プラン」を管理し、主としてヨーロッパの兌換通貨に対する金の交換レート(1オンスの金が35米ドル)を監視し、規制を行った。実際に、マーシャル・プランは圧倒的に米ドルによって運営され、1971年のニクソン政権による金本位制からの脱退に刺激され、ヨーロッパ共通通貨としての地位に向けての第一歩として、当面、米ドルのイメージにならった不換通貨としての「ユーロ」が誕生した。米ドルの弟分としての不換通貨であるユーロは、こうして、新しい通貨となり、ヨーロッパの経済、金融、通貨に関する政策は外部勢力、つまり、連邦政府やウールストリートによってあれこれと操作されることになった。ヨーロッパ中央銀行の現総裁はマリオ・ドラギで、彼は以前はゴールドマンサックスの重役であった。
これらは戦争である。後者は経済戦争であるが、常に戦争が行われるが、勝つことはない。彼らは混乱状態や妄想を作り出し、虚偽の情報を信じ込ませ、ワシントン政府や政府の背後にいる親分の指示に向かって思い通りに国民を誘導し、動員する。彼らは皆が過去200年来西側の支配に関与してきた親分らと同様であるが、西側の一般大衆にはまったく知られてはいない。これらの親分たちは、今日われわれが知っているように、西側の通貨システムを牛耳る銀行や金融組織から成る小さなグループを形成している。これは連邦準備金法によって1913年に設立された。これらの親分は連邦政府やウールストリート、中央銀行の中の中央銀行と称されるBISを支配する。世界中の一握りの中央銀行を除き、BISはすべての銀行を支配する。
この不換金融システムは世界中で戦争や紛争、代理戦争のために資金を供給することによって借金を作り出す。借金はそのほとんどが米国以外の国の準備金として米財務省証券の形で運用される。このシステムを存続させるには戦争を継続することが重要である。ぼろ儲けが可能だ。もしも戦争に勝ったならば、平和が訪れる。平和では軍需産業は利益を得られない。平和では借金を作り出す銀行からの融資なんてあり得ない。戦争を続けなければならないのだ。そして、世界でもっとも多額の軍事予算(米会計検査院はこれを「前代未聞の借金」と称し、米国のGDP7.5倍にも達する)を使い、もっとも強力な軍事力を有する例外的国家が最終的な勝者となることが出来るのである。西側に住むわれわれはピラミッドの形状をした通貨詐欺の世界に住んでいる。この世界は、実際の経済や平和な行為に根ざした、これとはまったく違う、正直なシステムが次第に米ドルの覇権や世界中の準備通貨としての役割に取って代わってくれるまでは、戦争によってのみ維持し得るのである。この小論が印刷に回される間にも、この状況は続いている。東側の経済が、即ち、金と交換することが可能なユアンを擁し、国の借金がGDPの約40パーセントにしかならない中国の経済が米ドルの準備通貨としての役割に次第に取って代わることだろう。
こうして、米国はロシアや中国を悪魔視し、戦争に引き込むためには可能なことは何でも行うであろう。何故ならば、ユーラシア大陸を支配し、それを所有することが「キラー帝国」の究極の目標であるからだ。 

*

著者のプロフィール: ピーター・ケーニッヒは経済の専門家で、地政学的な分析を行う。また、彼は水資源や環境に関する専門家でもある。世界銀行や世界保健機構において環境や水資源の分野で世界中で30年以上も働いてきた。彼は米国やヨーロッパ、南アの大学で講義をしている。次のようなメディアに定期的に寄稿している。グローバル・リサーチ、インフォメーション・クリアリング・ハウス、RT、スプートニク、プレス・テレビ、The 21st CenturyTeleSUR、セーカー・ブログ、ニュー・イースターン・アウトルック(NEO)、その他のインターネットサイト。著書:「Implosion – An Economic Thriller about War, Environmental Destruction and Corporate Greed」  本書は諸々の事実や彼が世界銀行にて30年間にわたって世界中で経験した事柄に基づいて執筆されたフィクションである。共著者としては「The World Order and Revolution! – Essays from the Resistance」。 

ピーター・ケーニッヒはグローバリゼーション研究センター(CRG)の研究員を務める。

この記事の原典はGlobal Research

Copyright © Peter Koenig, Global Research, 2018

<引用終了>

 
これで全文の仮訳が終了した。
一般大衆が知らされてはいない事柄がいくつも懇切丁寧に解説されている。非常に分かり易く、啓蒙的な記事だ。
冒頭で私は「ウクライナでは米国の動向が今ひとつはっきりとしない」と言ったが、この記事の著者は『米国はロシアや中国を悪魔視し、戦争に引き込むためには可能なことは何でも行うであろう。何故ならば、ユーラシア大陸を支配し、それを所有することが「キラー帝国」の究極の目標であるからだ』と述べている。これらの文言を文字通りに受け止めれば、米国が今後ウクライナにおいて採用する動きは火を見るよりも明らかだ。ウクライナにおける代理戦争が何時の日にか米ロ間の直接の軍事的対決へと発展する可能性が高い。
ロシアの国防ドクトリンを見ると、ロシアが戦略的脅威を受けた場合には、それが通常兵器による脅威であったとしても、核兵器を使って防衛に当たるとしている。ウクライナにおける米国の干渉がロシアにとって戦略的脅威となるのはどのような状況なのか?それはロシアの指導者の判断次第だ。一旦戦術核兵器が使用されると、それは戦略核の使用へと一気に拡大する危険性を秘めている。軍部は相手を叩くことしか考えない。そして、叩かれれば、相手に報復する。どこかのレベルで自制することなんてあり得ないだろう。
世間には「米国は実際には核戦争はしたくはないのだ」との見方も多く見られる。米国の政策立案者が世界規模の核戦争が起こった暁には、勝者も敗者もなく、人類は完全に消滅してしまうという見方を十分に理解しているならば、核兵器による米ロ間の全面的対決は起こらないとする考え方は現実味を帯びてくるだろう。しかしながら、彼らの言動にはそうした見方を肯定することができる兆候が感じられるだろうか。まったく見当たらないのだ!彼らはあまりにも好戦的で、自国の軍事能力を異常なほどに過信している。彼らが喧伝する核兵器による先制攻撃論が彼らの心中を明瞭に物語っていると私には思える。
結局、すべてがあまりにも楽観的過ぎるのか、それとも、現実的な見方であるのかについては、素人の私には断定めいたことは何も言えない。著者の考え方を踏襲すれば、「米国は実際には核戦争はしたくはないのだ」と見ることは楽観的過ぎると言うしかないだろうと思う。
果たして、世界はいったいどちらに向かって進もうとしているのだろうか?



参照:
1The United States of America:  The Real Reason Why They Are Never Winning Their Wars: By Peter Koenig, Global Research, Sep/20/2018

 

 

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