2024年2月3日土曜日

内戦の亡霊 ― 「バイデンの国境政策は強大な爆発を引き起こすかも」とペンタゴンの元分析専門家は言う

 

米国は、今、深刻な内政問題に直面している。国内がふたつに分断され、これらふたつの政治勢力はいつ内戦に突入してもおかしくはない状態にあるという。米国民は銃の保持を伝統的な国民の権利であると考え、そう考える人たちが圧倒的に多い。国内には総人口(333百万人)よりも多くの拳銃が保持されており、学校での乱射事件などに使われる自動小銃の総数は何千万丁にもなると言う。つまり、内戦の下地は十分に形成されているということだ。

ここに「内戦の亡霊 ― バイデンの国境政策は強大な爆発を引き起こすかもとペンタゴンの元分析専門家は言う」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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テキサス州の国境政策をめぐる連邦政府との対立は南北戦争の亡霊を呼び起こしたと、米国防長官室の元上級安全保障政策アナリスト、マイケル・マルーフがスプートニク通信社に語った。

ジョー・バイデン大統領が就任してから、移民危機は米国を悩ませる一方であり、前任者のドナルド・トランプ大統領が実施した国境制限は撤回された。

しかし、一部の共和党系の州はバイデン大統領の国境開放政策に反発している。中でもテキサス州は20213月に「ローンスター作戦」を開始し、テキサス州公安局と州兵とを結集させた。

最近、テキサス州兵が米国とメキシコの国境の一部を「押え」、連邦国境警備隊員が立ち入るのを阻止し、法的な紛争を引き起こした。米最高裁判所は不法移民の州内への入国を阻止するためにテキサス州当局が設置した鉄条網を連邦捜査官が切断することができると裁定した。それにもかかわらず、全米で25人の共和党系知事らは移民の「侵略」をめぐって連邦政府との国境管理の闘いでテキサス州を支持する旨の書簡に署名した。

「この移民問題は全体が完全に混乱してしまった」と米国防長官室の元上級安全保障政策アナリストのマイケル・マルーフはスプートニクに語っている。「はたしてどうなるのかを観察しよう。しかし、テキサス州のグレッグ・アボット知事と他の25州の知事たちはバイデン政権がやっていることには断固として反対しているようだ。そして、それは砂上の楼閣を示唆していることも付け加えておこう。関係する州を見ると、ほとんどが米国の真ん中にあり、東に向かって近づいている。今日、この国では、青い(民主党系)州と赤い(共和党系)州とがはっきりと分断されており、両勢力の間には政治的な線が引かれている。そして、これはすべてが2024年の大統領選に向かって展開されている。もしも今の調子のままで進行すれば、そして、バイデンが再選されれば、この国では大きな爆発が起きる可能性がある」と述べた。

これは昔の南北戦争のようだ:

マルーフによると、状況は、今や、テキサス州と共和党の25州と連邦政府との間の潜在的な衝突にまで煮詰まっている。

一方、民主党は引き下がる気はないようで、バイデン大統領にはテキサス州兵を「連邦化」し、同州のローンスター作戦をひっくり返すよう求めている。

「衝突することになるだろう」と元ペンタゴン分析官は警告している。「衝突に疑問の余地はないだろう。州兵をテキサス州に送り込んでいる州がいくつかあり、モンタナ州はすでにそうしたし、アリゾナ州もそうした。連邦政府は、それらの州兵をすべて連邦化しなければならないだろう。そのための資金はあるのか?予備役にお金を払わなければならないのは連邦政府の現役への呼び戻しとなるからだ。今のところ、そういった資金は予算には入っていない。」

スプートニクの対談者によると、テキサス州には連邦政府の支援がなくても自衛する力があることも念頭に置かなければならない。

「テキサス州知事の支配下にはテキサス州警察もあり、連邦政府の呼び戻しの対象とならない他の種類の地方警察部隊も全国に散らばっている。まだ言及されてはいないが、これらの州の多くには民兵が存在する。これらの民兵は、おそらく、テキサス州に役務を提供し、テキサス州の代理を務める可能性のある、静かな組織である。民兵らは連邦政府による呼び戻しの対象にはならない。しかし、問題は訓練、規律の問題である。もしも現状が非常に深刻な対立に至った場合は、おそらく対処しなければならない追加的な要因となるであろう。」

国境の鉄条網に関する米最高裁の最近の判決にもかかわらず、連邦政府機関である国境警備隊はこれまでのところ鉄条網の取り壊しには動いていないという事実にマルーフは注目している。問題の核心は国境警備隊は「州当局者との対立を望んではいないという点にある。彼らの多くは、おそらく、半分は隣同士に住んでおり、もう半分は緊密に協力し合っている」と専門家は説明した。

「昔の内戦のようだ。19世紀にさかのぼると、兄弟同士さえもが敵対した。基本的にはそういう感じであった。そして、われわれは再びそのような事態が起こることは何としても避けたい。可能性はあり、うまくいけば冷静な頭脳を使って、何とかなるだろう」と専門家は述べ、この状況が裁判制度の中で解決されることを望んでいると付け加えた。

トランプは米国の各州はテキサスを支援するよう呼びかけ:

2024年の大統領選では共和党の最有力候補であるドナルド・トランプ前大統領は自身の「トゥルース・ソーシャル」のアカウントで「不法滞在者の入国を阻止し、国境を越えて排除するために、テキサス州に警備員を配備する意思のあるすべての州」に呼びかけた。

もし再選されれば、彼はアボット州知事や他の国境地帯の州と「手を携えて侵略を阻止し、国境を封鎖し、史上最大の国内強制送還作戦を早急に開始する」と約束した。

「バイデンが受け入れた人々は帰国することになるので、入国できたからと言って、安心するべきではない」とトランプは警告した。

無所属の大統領候補ロバート・F・ケネディ・ジュニアもテキサス州を支持し、「国境のない国は国ではない」とツイートした。RFKはローンスター(テキサス州)が国境を守るのは「正しい」と強調した。

一方、バージニア州知事のグレン・ヤングキンはアボット州知事の国境措置を支持する書簡に署名した25人のうちの1人であって、バイデン・チームが「国境を守る」ことを拒否したと非難し、テキサス州の「憲法上の自衛権」を称賛した。

Photo-5:関連記事:DC Think Tank: House Could Kill Ukraine Aid Bill: Jan/23/2024

バイデン政権は超党派の妥協的な移民政策と引き換えにウクライナとイスラエルのために数十億ドルの支援パッケージを確保しようとしているため、国境問題は現在議題の中でも上位を占めている。しかしながら、超党派の合意の一部がマスコミにリークされた後、何人かの共和党議員は「下院に到着時に草案は死んだ」と結論付け、これはバイデン・チームがウクライナへの支援パッケージを速やかに受け取ることはないことを意味する。

「これは、今や、特に米国がウクライナやイスラエルに資金を提供し続けるかどうかという点でわが国の外交政策において大きな障害となっている」とマルーフは述べている。「そして、米議会ではこの問題が前面に押し出されている。上院で審議されている取り決めは基本的には資金援助を認め、一定量を認め、一定数の不法滞在者を受け入れるとしている。それが所定のレベルを超えると、流入は許可されない。マイク・ジョンソン下院議長は下院に到着した時点で法案は死亡したと宣言した。法案は受理されない。要するに、彼らは不法移民の流入を阻止したいのだ。」

共和党が移民改革の問題を提起したのは、バイデン大統領が不法移民を禁止する既存の法律に基づいて行動をしてはいないからだと専門家は強調した。彼は、合法的に米国に入国したい多くの移民たちは国境の混乱に幻滅しているという事実を嘆いている。

「率直に言って、追加の法律を制定する理由はどこにもない」と彼は言った。「現行法では不法入国者が入ってきたり、『侵略』があったりした場合に国境を封鎖することがすでに認められている。このような状況は、現在、毎日のように起きている。バイデン政権が既存の法律に基づいて行動することを拒否しているだけだ。」

「彼らは移民の入国を認めるよう運動をした。彼らはどのような手順でそうするのかについては何も言わなかったが、今はドアを開放して中に入れるだけだということが分かった。法的手続きを経て入国する人には手続きがある。今起こっていることに彼らは非常に困惑している。なぜならば、承認を得るのには何年もかかるだろうし、合法的に物事を進めるための策は何もなく、あるいは、合法的に手続きをすることへの報いもないからだ。」

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これで全文の仮訳が終了した。

「バイデンが再選されれば、この国では大きな爆発が起きる可能性がある」とマイケル・マル―フが述べているが、分断の深刻さを考えると、バイデンが再選されても、トランプが再選されても、どちらにしても内戦が起こる可能性は高いのではないかと私には思える。今年は何が起こってもおかしくはないと巷では言われている。米国では両党間の駆け引き、政府内の分断、連邦政府と州政府との相克、等が幾重にも折り重なって同時進行しており、国際政治の舞台ではロシア・ウクライナ紛争、ハマス・イスラエル紛争、イエメンのフーシ派による紅海でのシーレーンに対する脅威、等が進行している。米国には台湾問題に口を挟む余裕なんてもうないのではないか・・・

米国の混乱は今秋の大統領選に向けてエスカレートするばかりであるが、日本の政界の混乱振りにも唖然とさせられる。こういった混迷を深める日米ふたつの国家が支えようとしている安保条約も極めてハイレベルの混乱や矛盾を内包していると言いたい。

これらの混迷の根源は、恐らく、米国の覇権国として立場が最近弱体化していることが公然と暴露され、認識され始めたことにあると思う。

世界の多極化に目を移すと、こうした内外の混乱や動きの中、グローバル・マジョリテーは、今や、人口的にも、経済規模においても、すでに西側のG7諸国からマジョリティー・サウスに移行したと言われている。いわゆる、多極化である。しかも、この多極化のスピードは意外と速く、当事者らは現状の認識について行けないかのようだ。心理的には、欧米のエリートたちはこのような現実を決して認めたくはないのではないか。それを認めることは自分たちが今までやって来たことのすべてを否定することに繋がり、彼らが今まで享受して来た膨大なな利益や権威を手放さなければならないことを意味する。だが、彼らは自分たちの権益を死守しようとする。あれこれと稚拙な策を講じる。結果は必ずしも好ましいものではなく、個々の課題について必ずしも勝ち目があるわけではない。こうして、現行の国際政治を操ってきた西側のエリートに対する信頼は失墜し、風化していく。これが今の大局の姿だ。

 

参照:

1Specter of Civil War: Biden’s Border Policy Could Lead to 'Huge Explosion' – Ex-Pentagon Analyst: By Ekaterina Blinova, Sputnik, Jan/28/2024

 

 



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