皆さんはこの表題を冠した新聞記事を読んでいますか?
殆どの人は見てはいないのではないかと推測されますので、今日のブログに取り上げる次第です。
これは6月18日に東京新聞と中日新聞だけに掲載されたもので、他の大手の新聞は取り扱ってはいないと言われています。
早速、インターネットで検索してみることにしました。この表題から東京新聞のホームページに到達するのですが、肝心の内容を確認することが出来ないのです。これは間違った推測であって欲しいのですが、多分、どこかからの圧力がかかって、新聞社側はこの記事を削除したのだろうとしか考えられません。
しかしながら、有難いことに、今日のインターネット世界ではこの新聞記事が掲載された当日(6月18日)にその内容を詳細にブログに書き込んでくれた方々がいます。結果として、今となっては、これらのブログは貴重な情報源の役目を果たしています。あるブロガー*1は東京新聞の切抜きを掲載しています。また、他のブロガー*2は日本学術会議総会の議事録の在処さえも記述してくれています。
この日本学術会議総会というのは今年の4月9日から10日の二日間に開催された第162回総会のことです。その速記録*3がpdf文書で公開されているのです。
先ず、今や幻の記事となってしまった東京新聞の記事を全文下記に紹介したいと思います。
(筆者注:今インターネットではこの幻の記事が急速に広がっている感じです。昨日と今日の違いだけでも検索数が大きく違うのです。)
<引用開始>
核のごみ 地層処分ムリ 日本学術会議でも解決見えず
2012年6月18日 07時04分
2012年6月18日 07時04分
原発から出る核廃棄物の処分場はいまだに受け入れ先が白紙だ。原子力委員会の依頼で、日本学術会議(会長・大西隆東大大学院教授)が解決の糸口を探るため二年前に議論を開始。だが今月上旬に出した結論は、地下深くに埋める現行の処分方針では安全性の確保も受け入れ先を見つけるのも難しく、方針転換が必要との内容で、一から考え直すことを提起した。近く報告書をまとめるが、将来に負の遺産をつけ回す原発の最大の問題点があらためて浮かんだ。 (榊原智康)
毎時一五〇〇シーベルト(一五〇万ミリシーベルト)と人がわずか二十秒で死に至る放射線を放つ高レベル放射性廃棄物は、処分がやっかいだ。国は二〇〇〇年に関連法を制定し、廃棄物をガラスで固め、地下三百メートル以上の地層に埋める「地層処分」方式を採用した。しかし、処分場の受け入れ先はまったくめどが立っていない。
何とか打開策を見いだそうとした原子力委は一〇年、学術会議に知恵を出してもらうよう頼んだ。
「研究者の国会」とも呼ばれる日本学術会議は、人文、社会、自然科学などの研究団体から選ばれた会員でつくる。今回の「核のごみ」問題では、原子力工学や地質学、歴史、社会、経済などさまざまな分野の研究者で検討委を組織し、議論を続けてきた。
核のごみの放射線レベルが十分に下がるまでには約十万年という想像もできないような時間がかかる。
日本はもともと地震や火山活動が活発なことに加え、議論を始めた後、東日本大震災が発生し地殻変動も活発化している。
検討委は、そんな現実の中で、十万年間安全だと説明しても住民の理解は得られないとみて、地層処分からの方針転換を議論。五十~数百年にわたって暫定的に貯蔵し、その間に抜本的な解決策を探る、と先送りの案も浮上した。
「将来世代にごみを送り続けるのは現代人のエゴだ」「未来の人類の知恵にすがらなければ、最終的な決定ができないとわれわれの限界を認めなければならない」
今月七日の検討委でもさまざまな意見が出た。結局、一致したのは、地層処分では住民理解は進まず、行き詰まりは解消されない-ということだった。
検討委は八月下旬にも報告書をまとめ、原子力委に提出する予定。検討委員長の今田高俊東京工業大教授(社会システム論)は「脱原発を進めても核のごみ問題の議論は避けられない。われわれの検討結果が、国民的な議論を呼び起こすことを期待している」と話している。
<引用終了>
また、もうひとつの重要な情報である日本学術会議総会(2012年4月9日-10日)の議事録では、二日目午後の自由討議の場で今田高俊委員が下記のような発言をしています。
<引用開始>
○今田高俊: 一部(筆者注:「人文・社会科学系」。二部は「生命科学系」、三部は「理学・工学系」を指す)の、社会学をやってます今田です。
今お話が出たエネルギー選択肢の話を実際まとめる時に参加していました。
理系、文系も混ざっていて随分と喧々諤々で、原子力エネルギーを無視するというのは大変な事になるという人もいれば、脱原発的な意見を言う人もいて、なかなかコンセンサスというのは言い難い中で出てきた案はエビデンスベースでやるという事で。
だから色々な代替エネルギー、再生可能エネルギーと原子力、それから火力等のミックスをどういうベストミックスで考えるか、ベストというのは変ですが国民の選択に叶う様なエネルギーミックスを一世紀くらい30 年、50 年くらいのペースで考えて6
つの選択肢を出して、それでその時に、どれくらいのコスト負担が起きますかという事で、そういう話だったのですが、コストの面に関して資源エネルギーのものだけでやっていたので、中で揉めて、最後は色々なタイプの原子力のコスト負担、それから再生エネルギーの可能エネルギーのコスト等を全部入れて、全部入れるというのはコストも4
種類くらい出して、それからエネルギー選択も6 タイプくらいにして、30 年、50 年でやって、どれくらいの生活のコスト負担になるかというのを出して、それで国民の皆さんに議論してもらうというスタンスだったんですね。
ところが報道ではあまりそういうふうにメディアでは取られなかった面もあって、報道の仕方がよほど気を付けて発表しないとダメだなっていうのもありました。
だから先程会長もおっしゃいましたけど、その選択肢は国民に出して議論をして頂くという精神が学術会議の役目であって、これがこの一つが良いというのはちょっと無理だというふうに思います。
それからもう一つ、いま現在委員長でやっているのですが、高レベル放射線廃棄物の処理、これ、地層処分がある程度出ているのですが、色々もう一年半くらいやりましたが、どうも七百から千メートルくらいの所の地層処分というのは安全が保障出来ない、信頼も無いから安心が出来ない、安心というのは安全性にプラス信頼性が加わってという事なんですけれども、だったら以外の選択肢も考えなければいけないという、そういう方向になっています。
これはもう原発を止める止めないに関わらず何万本とある。
どうするんですかというのは避けて通れないから、ここでたぶん国民が本気に選択しなければいけない状態になる。
お金の問題でも無くて、地層学的にも一万年は保障できないという事をおっしゃっておられましたから、この中で地層処分の合意形成はかなり難しいという事で、例えば全体の総量をどうやってコントロールするか、これから増え続ける、減らす等々も含めて色んなケースを考えていく必要がある。そういう問題をトータルに考えていかないと今回の東日本大震災は普通の津波のカタストロフィックな災害と原発事故とが二つ同時に重なって相乗作用を起こしてるから大変なんです。
阪神淡路大震災は原発事故が無かったから、皆がんばって一年くらいしたらかなり回復したけれど、今は心まで被爆してるから体の被爆だけでは無くて、心の被爆もあるからみんな素直にさっさと片付ければ良いという訳にはいかないという状況の中で、どういうふうに復興を考え、またエネルギー問題も考えるかという事を考える事の道筋をいくつか学術会議が提案して見せる、というそういう方向でないと、これが良いんですとかこれは良くないんですという言い方は出来るだけ避けた方がよろしいのではないかなという印象、今まで考えてきた結果思っております。
<引用終了>
今田高俊委員は東京工業大学の教授で日本学術会議では人文・社会科学を扱う第一部に属しています。日本学術会議のホームページを覗くと、日本学術会議の活動内容を確認することができます。
例えば、今田教授は日本学術学会の東日本大震災対策委員会では「エネルギー政策の選択肢分科会」で活動をされています。この分科会のことが引用文の冒頭にも出てきます。「七百から千メートルくらいの所の地層処分というのは安全が保障出来ない、信頼も無いから安心が出来ない」とこの分科会が現状を分析しているのです。これが真理を探究する大学の先生方や研究者の方々の率直な判断であり、現時点での理解であるのです。
つまり、幻となった6月18日の東京新聞の記事の内容そのものとなるのです。
私は「高レベル放射性廃棄物の処分場は設けることができるのか」と題してブログを掲載していました(2011年11月4日)。この表題の問いかけに、今回の幻となった東京新聞の記事が答えてくれた恰好です。「地層処分は日本では安心して使えるものではない」と。面白いことに、素人考えではありましたが私の考えが的中していました。
この日本学術会議の見解は安全神話の下で営々と原子力産業を育成して来た日本政府にとっても、原子力産業界にとっても非常に重い内容であると思います。「地層処分が出来ない」、「六ヶ所村の再処理施設が動かない」、「六ヶ所村では使用済み燃料をさらに受け入れる余裕は殆どない」といった現状では、核燃料サイクル全体を抜本的に見直すしかないからです。
また、大飯原発以外の原発も再稼動させるには使用済み燃料の一時貯蔵をどうするのかという基本的な難題に行く手を阻まれることになるのではないでしょうか。現時点でさえも、各原発では大量の核燃料廃棄物がたまっているからです。
「日本国内で駄目なら地層が安定している外国で、たとえお金を積んででも....」という考えもあったようですが、モンゴルでの核廃棄物処分場の話は国民の反対にあって昨年頓挫しました。他人様に頼ろうとしても所詮無理な話だっただろうと思います。これはもう、日本人が自分たちの責任で方策を考え出すしかないということです。
決断する時が来たということではないでしょうか。日本は「廃炉時代」に既に突入しています。もう、待ったなしという状況だと思います。私たち一人ひとりは日本の国にどんな将来を実現したいのでしょうか。官僚や政治家の判断だけでは済まされない時がいよいよ来たのかな、と思っています。
参照文書・情報:
*2:【徹底拡散】日本学術会議が「核ゴミの地層処分は無理」と報告(Jun/20/2012)
sensouhantai.blog25.fc2.com/blog-entry-1180.htmlCached
*3:日本学術会議トップページ>委員会一覧>総会>第162回速記録
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