2014年9月14日日曜日

ウクライナ停戦 - Q&A


95日にウクライナ停戦が署名された後も所々で銃声が聞こえたり、砲弾が撃ち込まれたりしている模様だ。そうした報告はキエフ政府側からもノヴォロシア側からもされている。この停戦を盤石なものにするために、停戦を監視する業務に当たっている欧州安全保障協力機構は両者が政治的な打開策を見出すよう強く要請している。
停戦はどこでも、どの時代においても非常に脆弱であることが多い。それは歴史が教えるところだ。
ウクライナ停戦についてはさまざまな論評が出回っている。
それらの中で一段と興味深く感じられたのはこのウクライナ紛争の間中他の論評とは一味もふた味もちがった情報を送りだしていたThe Vineyard of The Sakerと称するブログである [訳注:The Vineyard of The Sakerとは文字通りに仮訳すれば「ハヤブサのブドウ園」となるが、vineには情報網という意味もあるので、このブロガーは「目の鋭いハヤブサによる情報網」という意味を込めて現地の情報を伝えようとしているように感じられる ]。私にとっては、これは今や毎日のように開いてみる貴重な情報源である。私が感銘を受けたのはプーチンの行動を論評する際にロシアの文化や歴史に基づいてプーチンの行動や発言を読み解こうとする独特の姿勢だ。こういう論評は非常に稀であると感じた次第だ。
この「ハヤブサ・ブログ」の96日付けの情報 [注1] はウクライナ紛争をどう理解するかという点で一読に値すると思う。今日はそれを皆さんと共有したい。 

<引用開始>
キエフの傀儡政権とノヴォロシアの指導者との間で最近締結された停戦に関しては実に多くの意見やうわさが入り混じっているので、私はQ&A/FAQの形式を設定して幾つかの問題点について詳細な調査を行おうと決心した。その結果については来週にでももっと突っ込んだ解析結果を書きたいと思う。まずは、この機会に自分の個人的な立ち位置について説明を加えておきたい。
Q: 最近合意された和平を支持しますか、それとも反対ですか?

A: どちらでもありません。まず最初に、私は実際に合意された14項目のすべてを把握しているわけではありません。基本的に重要な点としては、この和平プランが長く続くとは思いません。

Q: どうして長くは続かないと?

A: 何故かと言うと、この和平案は米国、NATO、ウクライナ国内のネオナチ、ノヴォロシアの多くの現地司令官たち、ロシア国内の多くの国家主義的思想家たちが反対しているからです。さらには、ポロシェンコ大統領は非常に非力で、自分の意思を他の者に徹底させることが出来ないでいるからです。最後の点としては、キエフの傀儡政権と西側の支持者たちは自分たちが署名した合意事項を今まで幾つも破ってきているからです。

Q: では、あなたはこの停戦合意は重要ではないとでもお思いですか? 

A: いいえ、そうではありません。ひとつ言えることはNATOサミットでの反ロシア派の追い風を結構鎮静したことです。でも、あのNATOサミットは結局のところ怪気炎を上げ、根拠のない脅しをかけるだけに終わっていますが… 

Q: これはロシアの勝利だと言っているのですか?

A: とてもそうは言えません。しかし、潜在的には非常に危険な状況を一時的に鎮静化する上では効果的な方法だったと言えます。また、EUNATOまたは米国がこのミンスクでの会合に立ち会わなかったという事実は「不可欠な国家」(つまり、米国)やその植民地を支配する手段は結局のところ必ずしも不可欠ではないということを象徴的に示したとも言えるでしょう。

Q: でも、この停戦は傀儡政権にとってはその軍隊(JRF)を整備し直す上で絶好の機会になるのでは?

 
Photo-1: ウクライナ兵 - ロシア兵

A: その通りです。しかしながら、再組織したり、組み直したりする際に傀儡政権が可能とする戦略には限度があることから、それほどは重要ではありません。ほとんどのJRFの部隊はすっかり打ちのめされていますから、「組み直し」を行っても強力な助けとはならないでしょう。せいぜい、(もちろん、JRF側にとっての話ですが)この停戦は速やかな撤退を多少とも組織化された撤退にし、皆が必要としている休息をとれるという意味では効果があるでしょう。しかし、何時も念頭に置きたいと思う重要な点は、戦争とは意志の力や道義的信条の強さ、あるいは、闘志によって勝ち取るものだということです。ロシア人とは違って、ウクライナ人の闘志はノヴォロシア軍(NAF)によって完全に打ちのめされてしまいました。上に転載した写真を見てください。これはRuNet上に掲載されているものです。グルジアとの戦争で負傷したロシア兵(200888日)とノヴォロシアで捕えられたウクライナ兵(ウクライナ政府のソーシャル・メデイア上に掲載された、軍国主義的で、ネオナチ的なビデオで有名になった)との写真です。この組み合わせ写真は非常に決定的なことを示しています。つまり、これらを比べてみると、結構ひどい負傷を受けながらも、ロシア兵の表情は固い決意を示し、不敗を誇っている。ところが、ウクライナ兵は完全に打ちひしがれ、恐怖に満ちた表情をしている。この違いは「ロシア人」とか「ウクライナ人」とかの民族的な違い(「ロシア民族」とか「ウクライナ民族」といったものは実際にはなくて、彼らは皆民族的にはすっかり混じり合っている)ではなく、基本的な違いはロシア兵とウクライナ兵の闘志です。USNATOからの援助を幾ら積み上げようともこの違いを変えることはできそうにはありません。ウクライナ政府側とは違って、ロシア人は何のために戦っているのかを明確に認識しており、覚悟がついています。

Q: マリウポリについてはどうでしょうか?

A: どういう質問ですか?マリウポリ市は依然として包囲されたままで、ノヴォロシア軍は撤退する気配はなさそうです。この停戦によって、同市を巡る状況は「凍結」状態になることでしょう。何かが起これば、それを機会にキエフ政府軍は大急ぎで逃げ出すでしょう。

Q: ノヴォロシア軍は停戦によって何らかのご利益があるのでしょうか?

A: はい、あります。ノヴォロシア軍の背後には何ヶ所かに包囲されたウクライナ軍がいます。これらは、言わば、臀部の痛みみたいなものです。相互の合意に基づいて、武器を放棄したまま、何とか彼らを排出したいところです。この停戦が実現しないならば、ノヴォロシアとロシアとの国境は完全にノヴォロシア軍の管理下にあって、秘密裏に武器や専門家を呼び込むことが衰えずに続くということを記憶しておいていただきたい。

Q: すべてがうまく行っており、われわれは喜ぶべきだと言うのでしょうか?

A: とんでもない。まず第一に、ノヴォロシアでは内部抗争が起こっている兆候が見られます。(司令官であった)ストレルコフが統制できなくなったとして後ろ指を指されたばかりではなく、昨日はアンテ
ウフェエフによるクーデターが未遂に終わったとの噂がありました。ノヴォロシアはこの情報を否定していますが、他の者たちはクーデターは失敗したと言っています。疑いもなく、目下ノヴォロシア内には緊張があることは事実であって、ある者は現在進行中の交渉戦略を支持し(彼らを「ザハルチェンコ派」と呼ぶ)、他の者は明らかに反対しています(彼らを「モズゴヴォイ派」と呼ぶ)。同様に、ロシア国内でも現行の交渉に賛成する人たち(「親クレムリン派」)とそれに反対する人たち(ドギン、カサド大佐、エル・ミウリド、準マルクス主義者である多くのブロガーや活動家たち)がいます。


Q:  この状況はノヴォロシアにとっては良くないと思いますか?

A: いいえ、そうは言ってはいません。これは勝利でも大失敗でもないこの紛争においては多分不可避であり、不可欠な一時的現象であって、この地で起こっている状況のごく自然な成り行きだと思います。

Q: それはどういう意味でしょうか?

A: ほとんどの批評家が言っていることとは違って、ノヴォロシア軍は「キエフでの凱旋行進は中断させられた」とは思いません。多くの人たちにとっては、南部で達成された驚くほどの大成功が否定のしようもないような次の事実さえをもまったく不明瞭にしてしまったのです。たとえば、ルガンスク北部におけるJRFは依然として大部隊であり、強力でもあり、あの地域を掌握していますし、ウクライナ軍はドクチャエウスク地域では(小規模で無意味ながらも)反撃を試みています。また、初期の報告とは矛盾しますが、ドネツク空港はNAFが完全に掌握したわけではありません。NAFが間もなくオデッサやハリコフ、ドニエプロぺトロフスク、あるいはキエフさえをも掌握するとの考えを抱く人たちは軍隊の状況を全然理解してはいないのです。NAFはスラビアンスクを奪還することさえもできないでいる現時点でノヴォロシア全域を征服することなどは考えない方がいいでしょう。

Q: この合意の背後ではロシアおよびウクライナの新興財閥が実権を握っているとの見方がありますが、これはどうお考えでしょうか?

A: どの新興財閥のことですか? アクメトフはドネツクを永遠に失ってしまっただけではなく、同地域の重要なインフラは今や壊滅状態です。コロモイスキーはクリミアで所有していた資産を国有化され、アクメトフやポロシェンコとの闘いに釘付けにされています。ロシア側の振興財閥については、ドンバス地域では必要とするものはまったく皆無で、危険この上なく、不安定で、壊滅状態にある地域へ投資を行うにはあまりにも利にさとく、彼らはそんなことはしないでしょう。少なくとも短期的には、ロシア政府だけは政治的理由から支援を行うでしょうが、ロシアの富豪は破壊されたドンバスよりも遥かに安全で、利潤が大きい選択肢を持っているのです。

Q: その通りですね。それでは、将来性のある独立国家としてのノヴォロシアの樹立よりも、プーチンは、むしろ、第二のトランスニストリアを作り出してしまったとする批判についてはどうお考えでしょうか?

A: このテーマは何に基づいているのでしょうか?まだ誰も目にはしていない、直ぐにも破棄されるかも知れない「14項目」についてですか?

Q: いいえ、ポロシェンコやナチに対して闘う代わりに、ノヴォロシアは彼らと交渉をしなければならなくなったという事実についてです。

A: いい加減にしてください!一体何回私は同じことを説明しなければならないんでしょうか。ロシア人は、西洋人とはまったく違って、自分たちの敵を相手に話をすることにぜんぜん問題はないのです。ロシアへのタタール人やモンゴル人の侵略の歴史を学習してください。当時は、ロシアのプリンスたちは黄金軍団の君主たちとの「交渉」では何時でも彼らと話をしていました。だからと言って、それが彼らとの闘いの邪魔になることはなかったのです。ロシア人はヨーロッパ人であるよりはかなりアジア人的です。アジアでは敵に話しかけることは普通のことであって、それは戦争行為の一部でもあるのです。西側では、敵と話しをし、交渉すると、それは弱さを示すことになります。アジアでは、敵と話しをし、交渉をすることは弱さとは見なされないのです。

Q: そうしますと、この戦争ではプーチンは何を望んでいるとお考えですか?

A: 彼は自分の望みとして何時も言っていることは団結し、独立した、中立で、繁栄している、友好的なウクライナです。換言すると、キエフ政権の交替です。

Q: この目標を達成するために、プーチンはノヴォロシアを売りに出すとでも?

A: 分かりません。夜になると裏でテレパシー能力者や預言者として活動する多くの肘掛椅子に座り込んだ将軍たちとは違って、プーチンの場合はその心中を読んだり、将来を予測することはできません。ただ、私が言えることは、今のところ、プーチンが裏切ったとか、誰かを売りに出したとかということはありません。事実、多くの人たちが推測しているように、クレムリン主導のノヴォロシアの指導部の交替こそが、結果としては、JRFを打ち負かす大成功に繋がったという事実に気付かないままでいるには盲目であるか、理性の面で正直ではないことが必要となります。もしもプーチンがノヴォロシアを売りに出したかったとするならば、反撃を開始する前にいとも簡単にそうすることができた筈です。

Q: あなたはプーチンが大好きで、彼を信頼しているのですね?

A: いいえ、必ずしもそうではありません。しかし、この人物がロシアのためにしてきたことを私自身も観察し、世間が率直に彼を賞賛する様子を見るにつけ、多くの場合畏怖の念に近いものを感じますし、彼が路線を変更するのは見たことがありません。私がここに見て取るのは「肘掛椅子に座り込んだ一国の指導者」にとっては、多くの場合、彼の手法や戦略は余りにも捕え難く、複雑すぎて理解できないのではないかという点です。プーチン叩きを行っているまさに同じ一団が、今、裏切り行為を声高に叫んでいますが、彼らはプーチンが単独で米国のシリア攻撃を止めさせた時シリアについても同じことを言っていました。ロシアがシリアに(危険ではあるが、何の役にも立たない)化学兵器を廃棄するように勧めた時、プーチン叩きの連中は、これはロシアの究極的な背信行為を示す証拠だと言って、大騒ぎをしました。アサドは、内戦に勝ったとは言えませんが、大統領の再選には成功し、その一方、西側は今や屈辱を味わっており、イラクではどうしたらアサドの支援を得ることができるのだろうかと思案している有様です。プーチンが大好きというわけではありませんが、プーチン叩きの連中を軽蔑します。彼らが近視眼的で、専門的な知識に欠けているからだけではなく、彼らは知的な面で驚くほど不正直だからです。彼らは故障したレコードのように「プーチンが裏切った、プーチンが裏切った、プーチンが裏切った」と繰り返すばかりです。ロシアではこの種の国粋主義者を"горе патриоты"、つまり、「悲しみを背負った愛国者」と呼びます。彼らは実際には何か役立つようなことは何もしませんが、何をすべきかということになるともっとも口やかましい連中です。ここで、明確にしておきたい点があります。私はプーチンとはたまたま意見を異にしたストレルコフやモズゴヴォイあるいは他の本物の愛国者のことを言及しているのではありません。私はプーチン叩きそのものを目的化し、プーチンを叩くことが出来さえすれば他には何も考えようとはしない連中のことを指しているのです。

Q: 依然として、ノヴォロシアは独立を標榜し、プーチンはウクライナの連邦化を望んでいます。これは大きな矛盾だとは思いませんか?

A: もちろん、そう思います。しかし、それは一方が「悪」で、他方が「善」ということにはなりません。これはまさに米国で使われている「私が座っている場所が私の立ち位置だ」という格言が持つ真理を示すものです。現実味のある質問は、むしろ、どうしたらこの矛盾を解決することができるかという点です。この時点では、私には分かりません。職業的なプーチン叩きの連中とは違って、テレパシー能力者や預言者的な物の見方ではなく、私は事実に基づいて自分の意見を言いたいからです。

Q: あなたは常に「プーチン叩きの連中」のことを喋っていますが、多くの人たちはそれを攻撃的な発言として受け取りそうですが…

A: 聞いてくれますか?私は決して「いい奴」ではありませんよ。私は直接的に物を言います。自分が見た通りに表現します。もしそのことが誰かの気分を害したというならば、その晩当人は熊の縫いぐるみを抱いて寝て欲しいと思います。彼らに対する私からのメッセージは、「もっと成長して欲しい。私はあなたに何かの借りがあるわけではない。」これは私自身のブログであり、私は耳に心地よい言葉ではなくて、真実や正直さに価値を見出す大人に向けて書いているのです。

Q: ポロシェンコについてはどうお考えですか?勝利を手にすることはできなかったとしても、彼は大きな休息の時間を勝ち取ったということになりませんか?

A: 昨日私はウクライナ政府の宣伝番組である最新版の「シャスター・ライブ」を視聴していました。 あたかも葬式を観ているような感じでした。番組のホストとゲストたちは皆がしらふで、悲しみをこらえ、意気消沈の様子でした。彼らは自分たちの「無敵のウクライナ軍」が被った損失が如何に大きいかを認めようとはしませんでしたが、旗を振るのはもはやその日の議題ではないということが明白でした。ウクライナ政府のある高官は、3万ないし4万の将兵について話をする際、われわれはこれらの「テロリスト」に話しかけなければならい、とさえ言いましたが、これは実に滑稽でした。何かを勝ち取ることからは程遠い状況にあったポロシェンコは今や大問題を抱えています。まず第一に、彼の首相であるヤツ
ニュックはこの停戦に激怒しており、そのことをはっきりと言っています。テモシェンコも同様です。ナチの熱狂者についてはなおさらのことで、何も言うことはありません。現実には、ポロシェンコを援護することが、当面、当地のCIA組織にとっては頭痛の種となります。ポロシェンコ大統領は窮地に陥っています。彼にとってのただひとつの望みは次回の選挙では他の候補者に比べて人物の悪さとか狂気めいた点で少しでもましに見えるように努力することだけです。これは選挙が実施されることが前提であり、ヤロシュあるいはテアグニボクが簡単に政権をとり、ポロシェンコを犯罪や反逆罪あるいはFSB [訳注:ロシアの連邦保安局] の手先であったとして処刑するようなことにはならないことが前提となっています(彼はそんな人物ではないことは分かっているが、知ったことか)。キエフ政権は防御に精いっぱいで、この和平プランはプーチンのプランであることは誰でも知っているにもかかわらず、キエフ政権は宣伝戦を繰り広げて、これはポロシェンコ自身のプランであると一般大衆に認めさせようとしている有様です。ロシア人たちは、典型的な姿勢として、にっこりと笑って、彼に花を持たせてやることにやぶさかではありません。(覚えていますか?ここはアジアです。まったく違ったルールが支配しているのです。)

Q: では、次に何が起こるのでしょうか?

A: すでに言いましたように、私は預言者ではありません。でも、私が理解しているのはこうです。 プーチンは、明らかに、ロシアとノヴォロシアを完全に掌握しています。彼の言うことが実際に起こるのです。彼には実行力があります。ポロシェンコは何も掌握してはおらず、自分が統治している筈の連立政権さえをも掌握することができないままです。バンデラスタン [訳注:ウクライナの民族主義者であった「バンデラ」をもじった言葉] には実権がなく、CIAの地方支部さえもが実権を持ってはいません。ですから、どのようにして停戦を維持するのかがまったく見えてはこないのです。軍事的バランスについても何の変化も見えません。NAFJRFに比べてはるかに有能です。JRFのたったひとつの有利な点は支配地域の奥行きが非常に深いという点です。JRFは所有する武器や人的動員能力では非常に有利でした(過去形に注意!)が、この点さえもが今大きく変わろうとしています。武器に関しては、彼らが所有していた最良の武器のほとんどは今や失なってしまったか、NAFの手中に落ちたかのどちらかです。今でも大量の予備を抱えていますが、それらは古く、整備がされてはいないのです。人的動員力については、キエフ政権にとっては数多くの減少を補充することがますます困難なものとなるでしょう。自分自身の胸に聞いてみてください。もしもあなたがウクライナ政府派であり、たとえ国家主義者であったとしても、JRFに加わり、NAFと戦いたいと思いますか? 確かに、NATO1500万ユーロの支援を約束しました。あの資金で、ウクライナ政府は多分10台の中古のT-72または3台のT-80 戦車を買うことができるでしょうが、これはもう冗談以外の何物でもありません。たとえ、米国が15千万を秘密裏に提供したとしても軍事バランスに影響を与えることはできません。ましてや、バランスを覆すことなどは不可能です。NAFはどうかと言うと、彼らはうまくやっています。多分、もっと多くの兵力や新しい装備を集めることができるでしょう。でも、あまり高望みすることはできません。NAFのある司令官の言葉ですが、「今まではわれわれわれは開放者の立場であったが、占領者にはなりたくないもんだ」と言っています。大雑把な目安としては、NAFが西方に行けば行くほどNAFが住民から受ける支えは少なくなり、地方の反対派によるゲリラ戦の増加に曝されることになります。それよりも遥かに賢い戦略はしっかりと腰を据えて、ウクライナ政府軍の内部抗争をじっくりと観察することです。

Q: 何故そういったことが起こるとお考えですか?

A: 何が起ころうとも、次のようなことが本当の姿として当てはまるからです。ウクライナは常に形だけの国家でした。バンデラスタンはもっとたちが悪い。国家を掌握している本物の権力は存在してはおらず、キエフ政府だってある程度の権力を握っているだけです。この国は経済的には死に体です。経済危機は始まったばかりで、今後は悪化する一方です。社会的には、人々はますます怒りを覚え、幻滅を感じ、嘘をつかれたと思うでしょう。それと同時に、思っていることを口に出すことがますます億劫になります。ナチの連中は今までのところ一番団結しており、理論的にはウクライナ軍を除いては、武装勢力としては国内ではもっとも装備が進んでいます。ウクライナ軍には指導者がおらず、それ故に、団結してはいません(この現状は今後変わり得るのかと言えば、多分…)。基本的には、大学で「社会科学101[訳注:心理学や社会学、人の性格や社会的行動を統計的手法によって理解する学問、等が含まれる] を履修した者ならば誰だってウクライナ軍は互いに反抗し合い、多分に暴力がはびこると予測することができます。NAFにとっては、ザポロジエやドニエプロペトロフスク、ハリコフ、あるいは、オデッサが誰も掌握しないまま無法の街になってしまうまではしばらく待っていた方がいい。そうなったら、力ずくでそれらの都市を手中に収める。混乱が最悪の水準に達すると、これらの都市でNAFが解放者として見なされることさえも現実には可能です。

Q: キエフ政府の力をつけるためにNATOが戦力を送ったらどうなりますか?
A: 大笑いだ!まず、アングロ・シオニストの「パートナー」の皆さんに忠告をしたいと思います。まずはドイツやフランスおよびポーランドの同僚の意見を聞き、彼らがウクライナ問題の面倒を見ることに心地よい記憶を持っているのかどうかを確かめるべきです。二番目には、アングロ・シオニストの「パートナー」の皆さんに思い起こしてもらいたいのですが、彼らのイラクやアフガニスタンへの動きは彼らが利益を得るためにとったものです。三番目には、もし彼らが(イラクの)マリキ首相を好きになれなかったならば、彼らはヤロシュも好きにはなれないだろうと私はお伝えしておきたい。もちろん、ウクライナ政府軍と一緒の作戦を行使するためにいくばくかの軍を象徴的に送るのはいい考えだと思います。でも、これはいわゆる「旗を掲げる」行為だと言われていますが、ウクライナへ象徴的にNATO軍を送り込むことは、たとえそれに対してロシアが何もしないにしても、非常に危険です。

Q: EUについてはどうお考えですか?

A: EUはその気をすっかり失くしてしまったと思います(以前はその気があったというわけではありません!)。オランド大統領のあのぶざまな行動は崩壊へと繋がりました。彼が大声を張り上げて言った内容は「個人的な意見」に過ぎず、法的な意味合いは何もなかったのです。もちろん、EUの幼稚園のメンバー(ポーランド、リトアニア、等)は、目下、そのまま園児であり続けるでしょうが、大人のメンバー(ドイツ、フランス、等)にはもう飽き飽きしているという兆候が見られます。彼らが一夜の内に180度の方向転換をするとは思いませんが、事態を悪化させるようなことについては彼らが積極的に回避することを期待するだけです。ひとつの方向はEUの役割を軽減し、OSCE(欧州安全保障協力機構)の役割を増加させることです。

Q: アンクル・サムについてはどうでしょうか?

A: 米国は米国自身のモードに浸りきっています。要求し、脅し、非難する、要求し、脅し、非難する。この繰り返しです。米国およびNATO諸国のどちらにしてもロシアを攻撃する理由は何も持ってはいないことを除くと、通常、敵意はそのような信条の一部となります。アングロ・シオニストの「深遠なる国家」については、彼らはロシアを転覆させ、経済的に破壊しようとし続けることでしょうが、プーチンがクレムリンに居る限りはそのような戦略が成功することはないでしょう。

Q: あなたは楽観的に見ているようですね。

A: もし私が楽観的だとすれば、非常に慎重な楽観主義者です。今までに起こったことについて劇的な展開はありそうもないし、惨劇も起こらないでしょう。このゲームではロシアが強力な手を持っており、ノヴォロシアの住民にとっては危険はないと私は見ています。マイダンに向かって直進するタンクの上に乗りたかった連中については、私は彼らの希望や夢を多いに共有する者ではありますが、政治とは可能なことを実現するための技であると思います。さらに、賢明な政治は多くの場合緩慢で、時間を要するのです。過剰に走るのは十代の若者にとってはいいことですが、何百万人もの国民の命を預かる一国の指導者にとっては決していいことではありません。ということで、私の現時点の暫定的な結論はこうです。つまり、取り敢えず、ここまでは順調です。たった2か月前の状況と比べても好転しており、近い将来大きな反転が起こるとは思えません。

Q: 目下ノヴォロシアにとってもっとも危険なこととは何でしょうか?

A: 政治的な内部抗争です。今すぐこういうことが実際に起こるかどうかは分かりませんが、ストレルコフやザハルチェンコ、ボロダイ、モズゴヴォイ、コノノフ、コダコフスキー、ツ
ーレフ、ボロトフ、グバレフ、ならびに、他の政治的ならびに軍事的な指導者たちに対して公式、かつ、十分な支援を与えるノヴォロシアの指導者の出現を目にしたいものです。単なる「プーチンの地方総督」という存在ではなく、真の意味でのノヴォロシアの指導者のことです。このような指導者はノヴォロシアの住民のためにプーチンと交渉をする能力を備えています。これらの交渉は決して友好的なものとはなり得ないと言いたいわけではありませんが、もしもロシアに反対するノヴォロシアはあり得ないとするならば、この指導者は少なくともノヴォロシアの住民の利益を代表しなければなりません。プーチンによって代表されるロシア国民の利益を代表してはならないのです。現時点で、プーチンが何故ノヴォロシアに対してこれ程までに指導力を持っているのかという主な理由はノヴォロシアに真の政治的指導者が現れてはいないからです。ノヴォロシアには軍事的な指導者は居ますが、彼らでさえも、多分、多かれ少なかれ、ロシアの軍部から何らかの指示を受けています。真の意味で独立した、真の意味でノヴォロシア的な指導者の出現によってロシアとの関係が弱められるどころか、むしろ、ロシアとノヴォロシアの同盟関係はより強化されるだろうと私は思います。ノヴォロシアはクレムリンから細かい指示を受けるべきではありませんし、そんなことは不可能です。換言すれば、私の希望は、「ノヴォロシアの信奉者」はプーチンに対して忠実かつ誠実ではあっても、自分たちの主権を尊び、独立意識の強い同盟者であって欲しいと思います。決してブレアやオランドのようなプードルであってはなりません。ノヴォロシアはノヴォロシアの住民を代表して話をする権限を付託された広報担当者や交渉担当者を持つ必要があります。これが実現されるまでは、私はずっとノヴォロシアの市民の事が心配です。
*******
本日はここまで。この自分自身で作成したQ&A/FAQを用いて、すべてとは言えないまでも、多くの疑問点やコメントならびに電子メールに対してなんらかの返事をすることができた。一言で言えば、私には今まで返事をする時間がぜんぜんなかった。また、私の所見や意見は一部の不正直な連中、あるいは、端的に言って馬鹿者たちによって間違って説明されることが多かったが、このQ&A/FAQによって、私が今までに表明して来た意見がすっきりと整理されたものと思う。もしも私がプーチン嫌いの連中を究極的に怒らせてしまって、彼らのやる気をそぐことができたとすれば、それは非常に望ましいことだ。私は彼らの暴言には飽き飽きしている。ハヤブサ・ブログを嫌う連中についても同様だ。(前にも言った通り、私は決して「いい奴」ではない!) 彼らには次のメッセージを付け加えておきたいと思う。つまり、私が何を考え、何を書くべきかを私に言って来ないで欲しい。このブログは「AA会合」みたいなものだ。つまり、「自分の好きなことを取り上げ、それ以外は捨てる。」 [訳注:「AA会合」とはAlcoholic Anonymous meetingの仮訳です。これは「匿名アルコール依存症患者の家族の会」を指しています]  事実や論理をもって私が間違っていることをはっきりと私に示すことができない限り(できるとすれば、その場合、私は自分の間違いを正す機会を与えて貰って感謝するが)、私が自分の見解を変えるなどとは期待しないで欲しい。暴言は単に私をイライラさせるだけだ。特に、人種偏見的な暴言はなおさらだ 

コメント求む: 上記のどれかの項目あるいはすべての項目についてブレーンストーミングをしようではないか。

敬具

ハヤブサ・ブログ
<引用終了> 

私はこのハヤブサ・ブログが面白いと言ったが、上記の内容を読んだ方には十分に納得していただけたのではないだろうか。ウクライナ情勢の分析としては非常にユニークだと思う。特に、日頃ウクライナの政情、文化、歴史、等についてはうといわれわれにとっては、貴重な情報源のひとつになると思われる。
ウクライナにはもうじき冬がやってくる。ロシアの歴史を見ると、西欧の軍隊に侵攻されたロシアは「冬将軍」を味方につけて、祖国を何度も防衛した。それほどに冬将軍の威力は強い。今後、2ヶ月あるいは3ヶ月以内にもっと恒久的な和平が合意されない限り、インフラを破壊されたままのノヴォロシアの住民はひどい困難を強いられることになるのではないか。
もっとも大きな犠牲を払うのは、何時ものことながら、一般市民だ…
民主国家として十分に成長している筈のヨーロッパの良識は一体どこへ行ってしまったのだろうか? 


参照:
1: Ukrainian ceasefire Q&A/FAQ and RFC: By the Vineyard of The Saker, Sep/06/2014, vineyardsaker.blogspot.com/.../ukrainian-ceasefire-q-and-rfc.h...

 


 

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