その表題は「米国の民主主義を破壊しているのはロシアではなく、金だ」と断じている。世界中で数多くの政治家や政治評論家、あるいは、ジャーナリストがさまざまな形で論戦を張り、言いくるめようとして来た内容をこの記事は一刀両断し、実に明快な結論を示してくれた。
11月6日の米国の中間選挙の結果、下院では民主党が優勢となった。これを受けて、2年前の大統領選以来米国の世論を分断してきた「ロシア介入説」は、事実はどうであったのかとは無関係に、民主党が推進するトランプ大統領の罷免に繋がって行くのかもしれない、と一部のメディアがすでに論じ初めている。米国社会にとってだけではなく全世界にとって不幸なことには、米国の政治の混迷は晴れそうにはない。皮肉を込めて言えば、これは米国の政治が何時もの調子に戻ったということだ。
さっそく、この記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。
<引用開始>
Photo-1: 政治家の背後を金が追いかけて来るのではなく、政治家が金を追いかけるのだ © REUTERS/Brian Snyder
米国の中間選挙には52憶ドル以上が費やされたと推算されている。その内の何億ドルもの額は超富裕者らによって寄付されたものであることは何の秘密でもない。しかしながら、このようなシステムは民主主義とは相容れない。
先週のガーディアン紙の記事でチャック・コリンズは米国の三大富豪、つまり、ウォールマートを経営するウォルトン家、チョコレート製品や食品のマース家、コック兄弟は合計で3487憶ドルもの富を所有する。この金額は米国の平均的な一般庶民の家庭の4百万倍にも相当する。
ノースウェスターン大学の研究者が最近行った調査によると、いわゆる「博愛主義的」で自由主義的な富豪であるビル・ゲイツのスタイルが人気を博している一方で、これらの超富豪の政治的姿勢は「頑固な程に保守的」である。彼らは富裕者に対する減税や遺産税の廃止の正当性を信じている。銀行業や環境関連の規制には反対であって、何百万人もの米国人が頼りにしている社会福祉プログラムには何ほどの関心も示さない。
Photo-2: 共和党に寄付をする超富豪のデイビッド・コック © REUTERS/Carlo Allegri
これらの課題に関して誇り高く発言をする代わりに、彼らは研究者らが名付けるところの「ステルス政治」に徹する。換言すると、彼らは政治に関して公けに発言することは非常に稀で、ロビー活動をする政治家に対して密かに大量の金をばら撒く。これは保守派の超富豪寄付者は悪玉で、自由主義派の超富豪寄付者は善玉であると言おうとしているわけではない。そのような見方は自由主義系の大手メディアが善良さの典型としてジョージ・ソロスのような人物を推進し、コック兄弟の影響については文句を言いたい時にわれわれ一般庶民に信じて貰おうとして使う対比的な言い回しでしかない。事実、米国の超富豪は驚くほど保守的である。さらに言えば、平均的な米国の労働者のためになるより公正で、より良い社会を作ることに彼らが興味を示すことはまったく稀だ。
Photo-3: ジョージ・ソロス © REUTERS/Charles Platiau
しかし、お金を施しものとして分け与える連中の政治とは無関係に、このシステムは合法的な自由を享受するには余りにも腐りきったシステムであり、真の民主主義とは相容れない。いったいどうしてこんなことがあり得るのか?政治家たちは一般民衆に対しては恩義を感じないが、富裕な寄付者や特別利益団体には恩義を感じるのである。私の言うことを鵜呑みにはしないで欲しい。元議員で現在はホワイトハウスの行政管理予算局局長を務めるマイク・マルベイニーは4月に行ったスピーチで本件に関しては下記のように述べた。驚くほど率直であった。
「議会における私のオフィスには序列があった。あなたがロビイストであって、お金を銭さえも私に持って来ないならば、あんたとは話をしない。もしもあんたが私にたくさんのお金を持ってくるロビイストであるならば、私はあんたとじっくりと話をするだろう。」
富裕な寄付者やロビイストは政治家が議会において彼らの利益団体のために奉仕するだろうことをわきまえており、大量の金を政治活動のために費やす。たとえば、保守的な億万長者であるシェルドン・エイデルソンは1憶ドル超を2018年の中間選挙に寄付した。何億ドルもの財産を貯め込んでいるエイデルソンともあろう者がいったいどうしてこうも選挙にかまけているのだろうかと皆さんは不審に思うかも知れないが、その答は卑劣な程の拝金主義にある。コリンズがガーディアン紙に書いているように、彼らは自分たちのために何億ドルもの金を貯めこむためには何百万ドルかを費やすのだ。普通の米国人は、たとえ政治活動家であるとしても、国政にはほとんど何の影響力も持ち得ない。
Photo-4: 現ナマの大波 - 記録的な選挙費用が2018年の中間選挙を「かってない程金のかかる選挙」にした
しかしながら、ほとんどの米国人にとっては政治から金を追放し、自分たちの民主主義を取り戻すことはそれ程大きな関心事ではないようだ。それに代わって、超富裕なエリートらは大手メディアに支えられて、都合よく組み立てられた物語を駆使して、国民の関心をよそに向けることにまんまと成功している。
民主党員にとっては、いわゆるロシアによる「共謀」や「干渉」はドナルド・トランプが大統領に選出されてからというもの、国民の関心を逸らす戦術としては大成功であった。共和党員やトランプ自身にとっては、移民について度を越して恐怖を煽ることはその根本的な原因(多くの場合、米国の対外政策を不安定なものにする)を無視することにはなるが、国民の関心を逸らす戦術としては見事なものだ。
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ロシア人や移民の波がやって来ると言って米国人は際限なく議論していながらも、彼らは現在稼働している政治システムは芯まで腐っており、象牙の塔に住む一握りの超富裕者のために仕えているという事実に焦点を当てることはすっかり忘れてしまっている。女優のマーシャ・ウオーフィールドが先週ツイッターでこのことをうまく総括してくれた:
「より良い生活を求めている移民についてあんた方はどうして頭に来てしまったの?一握りの守銭奴らが世界中の資源を漁っている中で、私たちは自分たちの間で小銭を得ようとして戦いあっていることについてはどうして頭に来ないのかしら?」
2016年には約65億ドルが大統領選や議会選挙のために費やされた。これだけの金があれば、すべての教師に一人当たり2千ドルの昇給をしてやることが可能だ。こういった金はさまざまな形でもっといい使い道があることは明らかであるが、そのことは別にしても、政治の分野へ入って行こうとするとお金がかかり、これが大きな障害になっているという事実が存在する。資金を入手できなければ、選挙運動を行うことさえもできない。そして、(富裕者からの寄付によって)何とか資金を入手したとしても、彼らに対して後々恩義を感じざるを得ないのだ。候補者が大口の寄付や企業からの支援を得ずに草の根的な選挙運動に何とか成功することは非常に稀である。民主党は、多くの場合、政治から金の関与を排除することに賛成するが、現実には彼らは金を寄付しようとする者からは誰からであっても寄付金を受け取る共和党とまったく同じである。
Photo-5: 人種差別的な電話での録音メッセージやソロスからの資金が原因?フロリダ知事選が急速に汚い選挙に変化
中間選挙に影響を与えようとして、外部団体(選挙運動には関係なく、連携もない団体)が10億ドル以上もの金を費やした。約1億2千8百万ドルは寄付者が誰であるかを公表しない、いわゆる「黒い金」である。ここで、次のことを考えて欲しい。米国人のたった0.42パーセントが今年の選挙のために200ドル以上の寄付を行った。この数値は些細なものに見えるが、これらの寄付者は選挙に対する寄付総額の66パーセント以上を占めているのである。
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これでは民主主義が実施されているとは言えない。民主党と共和党のどちらかを選ぶという行為は顔をピシャリと殴られるか、鼻面にパンチを食らうかのどちらかを選ぶようなものである。このことを米国人が自覚するまでは、何も変わることはないだろう。11月6日に投票結果が集計され、民主党と共和党のどちらかが勝利を収めたとしても、全権力を保持しているのは一握りのエリートたちである。
注: この記事に示されている声明や見解、あるいは、意見はあくまでも著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代表するものではありません。
<引用終了>
これで引用記事の全文の仮訳が終了した。
ロシアによる米大統領選への干渉は作り話だと私はかねてから考えていた。私にとってはこの記事が言わんとしていることには十分に正当性があると思う。
「民主党と共和党のどちらかを選ぶという行為は顔をピシャリと殴られるか、鼻面にパンチを食らうかのどちらかを選ぶようなものである。このことを米国人が自覚するまでは、何も変わることはないだろう」という見方は実に秀逸だ。
私は個人的にはトランプ大統領が選出されて良かったと思っている。そう思っていた。もしも好戦的なヒラリー・クリントンが大統領になっていたとしたら、われわれは誰もがすでに核大国同士の核戦争の中で蒸発してしまっていたのではないだろうか。そう考えると、トランプの方が遥かにましだ。私はそんな風に考えていた。
しかしながら、ヒラリー・クリントンもドナルド・トランプも所詮は背後に控えている超富豪エリートに操られているに過ぎないとしたら、トランプの方がましだとする上記の議論はまったく意味を成さなくなる。「民主主義」とか「選挙」という言葉が超富豪のために都合の良い真実を隠すための煙幕として定期的に用いられ、われわれ一般庶民はそれらの言葉が織りなす疑似的現実の中で酔いしれているのだ。そのような現実を考えると、大きな無力感に襲われる。
参照:
注1:It’s not Russia that’s damaging American democracy – it’s money: By Danielle Ryan, RT OP-ED, Nov/04/2018, https://on.rt.com/9hw0
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