2019年8月29日木曜日

米国の資本主義は略奪で成り立っている


私は1983年から2000年までカリフォルニアの片田舎にある子会社で勤務をしていた。この時初めて米国の事をあれこれと具体的に理解するようになった。個人的な見方ではあるが、最初に感銘を受けたことは社会がオープンであるという点であった。実例を挙げると、たまたまカリフォルニア大学サンディエゴ校の図書館へ文献を漁りに行った。カリフォルニア大学の学生でもなく、カリフォルニアあるいはサンディエゴの住民でもない私(当時はまだグリーンカードを持ってはいなかった)でさえも簡単に図書館へ入ることが可能で、書籍を物色することができた。あれこれと文献を探し、コピーをとって帰ってきた。当時、日本では大学の図書館は閉架式が少なくはなかったから、この時の体験は今でも鮮明に記憶に残っている。

数々の発見があって、まさに「ワーオ!」の連続であった。

あの当時以降かなりの年数を経てから、米国社会の本当の姿が見え始めた。それは数多くの代替メディアがインターネットに現れ、大手メディアが報じる内容とは違った見解、つまり、より真実に近い情報を流してくれるようになったことが大きい。その種の情報を得ようとするとそれ以前は書籍が中心であったから、情報を漁ること自体が結構大きな負担となり、素人にとってはハードルが極めて高い作業であった。

それまではまったくの「ノンポリ」であった私が政治に目覚めるきっかけとなったのは「イルミナツィ」の歴史を詳述した本であった。英語の本であったので結構な時間をかけて読んだ。戦争に絡んで、当事国の政府へ財政支援を行うロスチャイルド家を始めとした政商たちの暗躍が歴史を動かし、形成していった。彼らのビジネスは戦争によって膨張した。

そして、最近10年間の私の興味の対象に関して言えば、RTのシュワルナゼ記者がシリアのアサド大統領にインタビューし、その一部始終を報じた記事に遭遇したことが大きなき切っ掛けであった。その記事は「Assad is completely demonized by the press」と題されていた。私はその記事の全文を仮訳し、1年以上前から開始していた「芳ちゃんのブログ」へ「徹底的に悪者扱いされているアサド大統領 — RTによるインタビュー」と題して掲載した(20121112日)。

このインタビュー記事を契機に、私はシリア紛争を継続的に注視し始めた。今やシリア紛争の主役は米国であったと誰でもが気付いているであろうが、当初は、米国は表には現れず、実際の戦闘部隊は「イスラム国」あるいは「ヌスラ・フロント」と称される反政府派の武装勢力であった。特に、大手メディアはこれは「内戦」であると報じていたことから、本当の姿は見えにくかった。つまり、米国の地政学的な意図は巧妙に隠蔽されていたのである。

シリア紛争以前から戦禍が続いていたアフガニスタンやイラクに加えて、シリア紛争は2011年に始まり、2014年にはウクライナでクーデターが起こり、選挙で選出されたウクライナ政府が転覆し、クリミアでは住民投票を通じて圧倒的多数の賛成でウクライナからの分離ならびにロシアへの復帰が決定され、その年の7月にはマレーシア航空MH17便撃墜事件、ウクライナ東部における内戦は膠着状態になり、2016年の米大統領選以降2年余り続いた「ロシアゲート」により米政界は大混乱、2018年には英国ソルズベリーでスクリッパル父娘殺害未遂事件起こり、米国がイラン核合意から脱退し、さらには、中距離ミサイル全廃(INF)条約を破棄、等々。国際政治の舞台ではいくつもの難問が目白押しである。目下、状況の改善は見られず、この新冷戦は悪化の一途を辿っている。

世界の覇権国家であると自他共に認める米国はいったい何を考えているのだろうか?

ここに「米国の資本主義は略奪で成り立っている」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
好むと好まざるとにかかわらず、国際政治は覇権国である米国によって政治的に、経済的に、そして、軍事的に牛耳られている。その現実を少しでも多く学んでおきたいと思う。


<引用開始>

その略奪は悪化するばかりである。

米国の資本主義は略奪で成り立っている。北米大陸の略奪が完了すると、米国の資本主義者は、イルツィン政権下で実際に行ったように、ロシアの富を略奪するためにはロシアの自由主義者や進歩派からの支持を得ることを目的に「大西洋統合主義」を標榜するロシア人を略奪品の中へ注意深く収めて、ロシアを略奪することによって自国を繁栄させようとした。ハーヴァード大学によるロシア中央銀行や経済学会の洗脳によってもたらされた新自由主義経済学を通じてその意図は今でも続いているけれども、プーチンは事実上米国・イスラエルによるロシアに対する強姦を押し止めた。ワシントン政府がロシアのような強力な国家を相手に経済制裁を用いて罰することができる主な理由は洗脳されたロシア人の経済専門家が存在することにある。 

ベネズエラ市民によって支えられている政府をワシントン政府が倒そうとする理由は米国の資本主義が略奪に依存しているからである。シャベス前大統領はベネズエラに改革を標榜する政府を確立し、その路線は後継者のマドーロに引き継がれている。改革派政府はベネズエラの原油資源を国有化した。米国の石油会社に利益をごっそり持ち去られる代わりに、その利益はベネズエラ国内に留保され、識字率を向上させ、貧困率を低減させた。米国の資本主義は収益を自分たちの手に取り戻したいのである。こうして、ワシントン政府は今ベネズエラ政府を攻撃している。

イランについても同様だ。米帝国主義の軛を投げ捨てたのはイラン人であって、しかもそれは徹底していた。彼らは1979年に米国の傀儡であるシャー政権を倒し、米国の軍・安全保障複合体から武器を購入する代わりに原油からの収益はイランの開発のために使った。イランに関するプロパガンダのすべてはイラン原油のコントロールを再度手中に収め、イスラエルによる南レバノンの占領を阻止して来た民警のヒズボラーを支援するイランを崩壊させるための取り組みに他ならない。

ロシアと中国も目標にされている。両国の政府は騙されやすく、米国の手中に陥りやすい。両政府は米国が支援するNGOが自国内で活動することを許し、これらのNGOは公然と両国政府を阻害する売国奴的な活動を行っている。香港における街頭での反政府デモはワシントン政府が支援した動きであって、その目標は中国政府の名声や安定性を阻害することにある。中国政府はどうしてワシントン政府の攻撃目標でいることに甘んじているのだろうかと誰もが不思議に思うに違いない。 

プーチン政権は米国が財政支援を行っている国賊に対しては不思議な程に寛大で、これが最近の暴動や抗議行動をもたらした。ロシアの警察はこれらに対処するしかなかった。ロシア政府は抗議行動の参加者や彼らに資金を提供した米国人を捜査するのではなく、何と公衆の秩序を守るためのロシア警察を捜査した!ロシア政府に対して組織だった攻撃を仕掛ける米国を何とか鎮めたいロシア政府の眼にはロシア警察は「余りにも容赦がない」と映ったのだ。これ程までに混乱した政府の生存率は低いだろう。ロシア国内の事情は、多分、米国のメディアによって報じられているものとは違うのかも知れないが、米国で描写されているその姿はそのまま世界中で受け取られている。これはロシアにとっては決して利点とはならない。

ワシントン政府がプーチンや中国の指導者を弄ぶことができると見ていることには何の驚きもない。

恐らく、ロシアと中国は外国人が暴動を指揮することを許容することによって両国が如何に民主的であるかを何としてでも西側に認めて貰いたいのであろう。米国の国旗を振っている香港の若者たちは米国はほんの一握りの、中国よりもさらに性質の悪い億万長者によって牛耳られていることなんてまったく気が付いてはいないに違いない。

米国政府に何らかの影響を与えることに専念するNGOに対する資金提供については、イスラエルを除けば、米国はいかなる国にも許してはいない。私は米国内で活動を許されているロシア、中国、イラン、あるいは、ベネズエラのNGOなんて見たことがない。パレスチナのNGOがイスラエル国内で活動し、街頭デモや暴動を演出することをイスラエル政府が許容する・・・ こんなことはいったい誰が想像し得るであろうか。米国では、大統領がロシアとの関係を改善しようとしたが、彼は米国をロシアに売り渡す陰謀に関与した「プーチンの回し者」だとして、厳しく批判された。

ロシアには経済を良く理解している経済学者がいる。彼の名前はセルゲイ・グラジエフ。グラジエフはロシアではもっとも有能な経済学者であって、ロシアの経済開発は外国からの借金や資本に依存しなくてもいいことをよく理解している。単純に言って、西側からの借金は、ギリシャで起こったように、ロシアを外国の債権者の手中に陥れるだけであろう。最近の報告によると、グラジエフはプーチンの顧問役から排除された。親米派である大西洋統合主義者がロシアを低迷させ、結局、ロシアはワシントン政府による救済を求めなければならなくなるのではないかとさえ思える。(訳注: モスクワ政府は必ずしも全閣僚が親プーチンで固められている訳ではないと言われている。閣僚の中には親米派の大西洋統合主義者が混じっていると言われ、彼らは親プーチン派ではない。ハーヴァード大学によるロシア中央銀行や経済学会の洗脳によってもたらされた新自由主義経済学が今も続いていると言われる所以である。) 

ロシア、イラン、ベネズエラ、中国を搾取するを機会を待って、当面は、米資本主義は公的な土地に残されている富を略奪しようとしている。それは米国内の国有林であり、国立公園であり、国定記念物であり、野生生物保護地でもある。詳細については下記の資料を読んでいただきたい。

トランプ政権は民間の森林伐採業者の略奪のために国立公園を開放

(原典: Trump Regime Opens US National Forests to Plunder by Private Timber Companies


連邦政府所有地に関する使用規則の変更が提案され、この提案が認められると、アディソン県に入る9万エーカーのグリーン・マウンテン国有林には今まで以上に多くの商業伐採や道路建設、公益事業用地が姿を現すであろう。しかも、環境影響に関する評価や一般大衆からの意見の公募も行われないまま・・・。 

「基本的に、意見の公募は公有地の管理規則からは排除されるだろう」と、バーモント天然資源評議会(VNRC)の森林・野生生物プログラムのディレクターを務めるジェイミー・フィデルは言う。 

問題となっているのは米国森林局(USFS)からの提案で、その提案は国家環境政策法(NEPA)の改正を求めている。この法律は米国の環境政策の基礎となるものだ。USFSが提言する行動については、本法律はUSFSにそれらを最終決断する前に環境影響を評価するよう求めている。

「全面的除外」として分類されるプロジェクトの数やタイプを拡大させることによって、USFSの提案は同法の要件を大きく変えることになる。この分類に入るプロジェクトは環境影響の評価を行うこともなしに承認されるのだ。 

USFSが「全面的除外」として分類するプロジェクトには下記の項目が含まれる:
一回の伐採で最大4,200エーカーの面積における商業伐採。皆伐を含む。

一回の建設で最長5マイルの新たな森林道路の建設。
一回当たり10マイルまでの古い森林道路の補修。
森林中にパイプラインおよびその他の公益施設のために最長で4マイルをブルドーザーで整地する。
レクリエーションを目的とした道路や未舗装道路を閉鎖する。

非合法的に作られた道路や未舗装道路を公式にUSFSの道路システムに加える。

この新規則はほとんどすべてのプロジェクトの決定に際してUSFSが意見の公募を省くことを許すであろう。森林や環境に関連する数多くの団体から入手した推測によると、USFSのプロジェクトの90パーセント以上が意見の公募や環境影響評価を省いてしまうであろう。

USFSはこうすることが必要だと言う。なぜならば、他の事柄も含めて、USFSは未処理の「特別使用許可または更新」の案件をたくさん抱えているからだ。「環境影響の評価や最終決定を待っている案件が数多くあって、それらは7,000の企業と12万人の雇用に影響を及ぼす。」 [注: もしも政府が言うように失業率が3.5パーセントで、完全就業状態であるならば、雇用は必要ではない。] (訳注: 著者は前々から米政府発表の失業率はいかさまであって、真の失業率は20パーセントを超し、そんな低率ではないと主張している。このことを考慮すると、著者の注釈は皮肉を込めた発言である。)

加えるに、最近増加している森林火災への対応はUSFSの財政資源や人的資源をますます浪費する。 [注: 換言すると、地球の温暖化が森林火災に取り組むためのUSFSの予算を使い切ってしまう。]

しかしながら、USFSは何ら言及しようとはしない点がある。議会調査部によると、トランプ政権は2020年の会計年度では、森林火災対応費用での65440満ドルの削減を含めて、USFSの予算を約10億ドル削減することを提示した。

「このNEPAの変更提案はUSFSがそれ自身の予算を削減する中で提言されており、自分たちが行っていることを評価する資源さえにも事欠いている」と、ニューヨークタイムズでサム・エヴァンスが書いている。

エヴァンスは南アパラチアの国有林で仕事をしており、彼はUSFSの提案は「公有地という概念そのものに対する攻撃だ」と主張している。

「もしもUSFSがこれらの変更内容を行使するとすれば、伐採トラックが山道の始点に姿を現し、風光明媚な地点で天然ガスパイプラインのための用地の開発が始まるまでは、国有林へやって来る人たちはいったい何が起こっているのかを知る術はない。」

USFSはこれらの変更は「NEPAの精神と意図によく合致する」と言うが、批判者は最近の提案をもっと大きな流れの中で捉えようとする。

昨年の12月、ジョージ・ワシントンおよびモノンガヒーラ国有林の一部、ならびに、アパラチアン・トレイルを通過して建設される予定であったアトランチック・コースト・パイプラインの認可を無効にした後、第四米国控訴裁判所は国有林管理法とNEPAの両法律を侵害するような許可を与えたUSFSを厳しく非難した。

3人の裁判官で構成されるパネルはUSFSが「国有林の資源を保全する責任を放棄してしまった」との結論を下した。特筆すべき点は「USFSの環境に関わる懸念は、突如、そして、摩訶不思議なことに、民間のパイプライン会社の許可期限に合わせて規則が緩和されたことだ。」 

グリーン・マウンテンにて

ヴァーモント州ではグリーン・マウンテン国有林(GMNF)におけるUSFSのプロジェクトがVNRCを含む数多くの環境防護団体に懸念を与えている。

「かっては、USNFGMNFで大きなプロジェクトに取り掛かる際には(NEPAの規定にしたがって)意見の公募や一般大衆の関与を促すのに十分な余裕や機会があった」と、VNRCの当事者が33日のブログで書いている。「VNRCはこれらの機会に参画し、われわれはGMNFとの協力関係を多いに謳歌して来た。」

しかしながら、2018年の後半から、USFSはプロジェクトに関する意見の公募に制限を加え始めた。その一例は同国有林の南側半分にある15,000エーカーでの同齢林伐採プロジェクトで、もうひとつは9,630エーカーの伐採を行うには新たに何十マイルもの道路の施設が必要となるプロジェクトである。
全てを一緒にすると、VNRCによれば、「USFS84マイルの道路(今後15年間に57マイルの新規ならびに仮設の道路を建設し、26.7マイルの道路を補修する)を建設するが、これらのプロジェクトが与える環境影響に関する意見の公募は行われない。」 

グリーン・マウンテン・ナショナル・フォレストはニューイングランド地域にあるふたつの国有林のひとつである。同国有林は過剰な伐採や森林火災、洪水を防止するために1932年に設立された。GMNF2011年現在821,040エーカーを占め、その半分近くは連邦政府の所有である。
アデイソン県の18パーセント以上がこの国有林圏内にある。

インデペンデント紙(訳注: これは英国のインデペンデント紙ではなく、バーモント州アディソン県にある週に2回発行する地方紙のアディソン・インデペンデントである。念のため)はこの記事に間に合うようにGMNFからのコメントを得ることはできなかった。


意見の公募や環境影響の評価を支援する側はこのNEPAの変更はトランプ政権がUSFSの最近の行動を法文化しようとするものだとして見ている。

そして、彼らの多くは反論している。

ナショナル・オーデュボーン・ソサイエティ―から始まってシエラ・クラブ、ナショナル・パークス・コンサベーション・アソシエーションに至るまで様々な団体が関心を抱く市民に対してこの規則変更の提案についてパブリックコメントを提出するよう求めている。
コメントの提出期限は826日。


「コメントはご自分の懸念を具体的に示すものとし、あなたのコメントをグリーン・マウンテン・ナショナル・フォレストといった特定の国有林に関連付けてください」と725日にVNRCの当事者が書いている。「USFSは同類のコメントをひとまとめにして、ひとつのコメントとして扱うので、ご自分のコメントは出来るだけ特徴のあるものにしてください。」 

USFSのウェブサイトによると、コメントは下記へ提出する: 
オンラインでは 
https://www.regulations.gov/comment?D=FS-2019-0010-0001 (注: この情報はこの記事のプリント・バージョンに基づいて更新した。)
郵便の場合の宛先: c/o Amy Barker, USDA Forest Service, 125 South State St., Ste. 1705, Salt Lake City, UT 84138.
電子メールの宛先: nepa-procedures-revision@fs.fed.us. (注: この情報はこの記事のプリント・バージョンに基づいて更新した。)
Christopher Ross
宛ての電子メールは: christopherr@addisonindependent.com.

<引用終了>


これで全文の仮訳が終了した。

著者のポール・クレイグ・ロバーツは次のように述べている:

恐らく、ロシアと中国は外国人が暴動を指揮することを許容することによって両国が如何に民主的であるかを何としてでも西側に認めて貰いたいのであろう。米国の国旗を振っている香港の若者たちは米国はほんの一握りの、中国よりもさらに性質の悪い億万長者によって牛耳られていることなんてまったく気が付いてはいないに違いない。

米国政府に何らかの影響を与えることに専念するNGOに対する資金提供については、イスラエルを除けば、米国はいかなる国にも許してはいない。私は米国内で活動を許されているロシア、中国、イラン、あるいは、ベネズエラのNGOなんて見たことがない。パレスチナのNGOがイスラエル国内で活動し、街頭デモや暴動を演出することをイスラエル政府が許容する・・・ こんなことはいったい誰が想像し得るであろうか。米国では、大統領がロシアとの関係を改善しようとしたが、彼は米国をロシアに売り渡す陰謀に関与した「プーチンの回し者」だとして、厳しく批判された。

非常に深い洞察であると私は思う。この辺りがこの著者の素晴らしさのひとつではないかと考える次第だ。

もちろん、彼の指摘はこの種の議論では始めてだということではない。歴史を紐解けば、同種の指摘や解説は幾つも見つかることであろう。

ロシアにおけるNGOの現状を調べてみた。ロシアでは、NGO2015年に制定された法律によって制約を受ける。「不適切」と判断されたNGOについては、検察当局はそのNGOの活動に制約をかけることができるし、停止させることもできる。NGOの規則を破って、有罪であると判断された場合、被告は罰金を喰らうか、最高で6年の刑務所暮らしが待っている。

たとえば、モスクワ・タイムズの201971日付けの「Russia Slaps U.S. Think Tank With‘Undesirable’Label After Post-Putin Report」と題された記事によると、米国を基盤とする或るNGOが、最近、ロシア当局によって「不適切」であるとの評価が下された。その理由はプーチン大統領のロシアにおける生活を報じたことであった。このNGO団体はワシントンに本拠を置く「フリー・ロシア・ファウンデーション」と称する組織である。

もちろん、ここに報じられている理由が唯一の理由であったのかどうかについてはこの記事からは判断できない。また、これだけの情報で「不適切」だと判断してしまうのかと息をまくのも余りにもナイーブである。日本でもよく起こることではあるが、当局側には別件逮捕という手法があることを考えると、本人やその団体が関与した今までの歴史を十分に吟味する必要がある。むしろ、表向きの理由よりも本質的に重要な理由が見つかるかも知れない。

フリー・ロシア・ファウンデーションのフェースブックを見ると、彼らの基本目標は政治的、経済的な理由で最近ロシアを離れた人たちに注目し、「プーチン後のロシア」、「プーチン主義のないロシア」のために戦略を開発することにあると述べている。このシンクタンクはプーチンが引退した後のロシアをどう料理するべきかをあれこれと研究しているのである。図らずもロシアゲートでわれわれ素人が学ぶことになった米諜報界や大手メディアならびに民主党左派の連中が喧伝して来た「反ロ思想」や「ロシア嫌い」そのものと非常に近く、同根であることは明らかだ。フリー・ロシア・ファウンデーションはCIAの活動家として相手国へ潜入し、カラー革命を起こすためにさまざまな活動をする工作員を要請し、相手国へ送り込む。上述したように、彼らの理念はこういった工作員が口にしそうな言葉ばかりである。

最近の20年間を見ると、米CIA主導のカラー革命はユーゴスラビア、ジョージア、キルギス、ウクライナと続き、カラー革命の手法を用いた反政府行動は広がるばかりである。もっとも最近の例はベネズエラだ。そして、決まったように、それらの資金源は米国である。外国からのNGOに対するロシアや中国の寛容さは何時の日にか両国に大問題を引き起こすのかも知れないとして著者のポール・クレイグ・ロバーツは懸念を示している。

もしもあなたがロシア国内の治安に責任のあるポストにあって、このような目標を掲げたNGOがロシア国内で活動をしていることを発見したら、当然、そのNGOはロシアにとっては「不適切」であると断定するに違いない。香港で反政府デモを行う若者たちも米国から活動資金を受け、さまざまな訓練を受け、扇動されていることは複数の報道によって報じられている。

NGO活動についてはこのブログでも取り上げたことがある。その詳細については、2014310日に掲載した「ウクライナでのNGO活動 - 芳ちゃんのブログ」と題した投稿をご一覧ください。

言論の自由や表現の自由と国家の安全や治安の維持との間には、洋の東西を問わず、綱引きが起こり、さまざまな形で力比べが行われる。ロシアや中国では何処でバランスを保つのかが今まで以上に難しくなりそうだ。



参照:

1American Capitalism Is Based On PlunderBy Paul Craig Roberts, Aug/19/2019




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