先日(4月15日)、私は「米国による対欧州戦争 - 911テロ攻撃の欧州大陸版」と題した投稿をしたばかりである。そこでは、ザ・セイカーのサイトから引用した記事の仮訳をご紹介した。また、それに加えて、ウクライナ紛争に関する最新の情報をいくつかご紹介し、「世界規模の核戦争に繋がる恐れのある米ロ間の直接武力紛争は絶対に回避するべきだ。これ以上重要な政治課題はあり得ない」と私の主張も付け加えた。
私がブログで主張している点と全く同様の発言をしている政治家が米国にいる。彼女の名前はトウルシー・ギャバードで、前下院議員である。4月16日のRTの報道では米FOXニュースのタッカー・カールソンによるインタビューの内容が伝えられている。その模様を報じる短い記事(注1)があったので、それを仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。
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最愛の人たちが「核戦争によって生きたまま焼き殺されるのを見たくはない」ならば、政治家は「武力に訴えた」行為を慎み、緊張緩和を始めるべきだ。これはハワイ州選出の前下院議員であり、米陸軍のベテランでもあるトウルシー・ギャバ―ドの言葉だ。
木曜日(4月15日)、フォックスニュースのタッカー・カールセンとのインタビューでギャバ―ドは「米国市民はウクライナのためにロシアと戦争をしたいのかどうかを決心しなければならない」と言った。「もしも戦争をしたくないならば、好戦的な文言を慎まなければならない。」
「米ロ戦争はわれわれの想像を絶するような代価をもたらすであろう」と彼女はカールセンに言った。「このことはあなたの視聴者の皆さんのひとりひとりに直接的な影響をもたらすだろう。」
「この戦争には勝者はいない」と彼女は付け加えた。
ドンバスにおける紛争は親ロ派でウクライナからの分離を標榜するふたつの共和国がキエフからの独立を一方的に宣言した2014年に始まった。同年の終わり頃和平協定が合意されたが、両者は相手の停戦違反を絶え間なく報じている。この地域の大部分は現在ウクライナから分離して、ドネツクとルガンスクのふたつの共和国に含まれる。キエフ政府によると、認証されてはいないこれらふたつの共和国は両者共ロシアによってコントロールされていると言うが、クレムリンはこの主張を否定している。モスクワ政府はドネツクとルガンスクはウクライナの一部であると言っている。
関連記事: Russian troops on Ukraine border ‘ready to defend country’ in event of war says Defense Minister Shoigu, warning of NATO buildup
この数週間というもの、全面戦争の恐れがいやましに高まって来た。メディアの報道によると、ロシア軍の兵力や機材が動員され、その傾向はクリミア半島とウクライナ東部との国境地帯で著しい。この状況はキエフ政府軍がウクライナ東部のドンバス地域への砲撃を行い、ウクライナ陸軍が同地域で将兵の数を増員したことを受けたものだ。
キエフ政府は米国から支援を受け、米国は資金や武器を提供し、技術支援を行っている。しかしながら、ワシントン政府はウクライナに同盟国としての位置づけを与えてはいない。
ギャバ―ドによれば、ウクライナで戦争が勃発したら大惨事となる。特に、彼女は何千発もの核兵器が相手国に照準を合わせており、戦争になった場合は「何億人」もの人たちが死亡し、悲惨な苦しみを味わうことになるだろうと警告している。
RT.COMからの関連記事:Western allies of Ukraine supplying ‘Kiev regime’ with weapons & inciting ‘bloody, distructive’ force in Donbass, Russia claims
この前下院議員によれば、米ロ間の戦争は「皆が知っているこの世界に終焉をもたらす。」 そのことから、彼女はジョー・バイデン米国大統領に対して制裁を課すことや緊張を高めることを止めるよう呼び掛けた。
「彼がそうしないならば、われわれがロシアと戦争をするのかどうか、あるいは、この戦争は核戦争を招くのかどうかはもはや問題ではない。現実の問題は、その場合、いったい何時戦争が始まるのかという点だ。」
木曜日(4月15日)に、ホワイトハウスはロシアに対して新たに一連の制裁を課した。30以上の個人や団体を標的にしたもので、これらの制裁は米大統領選への介入や悪名高いソーラーウィンズを巡るサイバー・スパイ事件に対する罰であって、ワシントン政府はこれらはロシア政府による指し金であったと言う。制裁が課された後、記者たちとの話でバイデンは米ロ間の緊張を和らげるよう呼び掛け、「思慮深い対話や外交交渉」を好むと述べた。
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これで全文の仮訳が終了した。
この引用記事の最後の段落が素晴らしい。バイデンが米ロ間の緊張を和らげるように呼び掛けたのだ。仮にこれは単なるリップサービスであるのかも知れないが、バイデン大統領の発言として記録されたこれらの言葉は重い。彼の今後の行動や発言を拘束する効果を孕んでいるからだ。バイデン大統領は今後の行動や発言に今回の言葉を反映して欲しいものである。
ギャバード前下院議員は民主党所属である。2020年の大統領選予備選では大統領候補者の一人でもあったが、結局はバイデンが民主党候補となった。ギャバ―ドは米国の政界では正論を吐くユニークな地位を保ってきた。それだけに、ギャバードの言葉はバイデン政権にとっては無視できない提言であったのかも知れない。
トウルシー・ギャバ―ドはウクライナやシリアの情勢に関して多くを語って来た。つまり、戦争を回避する方向での発言である。頼もしい存在であると私は思う。
参照:
注1:Stop the ‘saber-rattling’ & begin de-escalation before Russia-Ukraine conflict turns into ‘nuclear holocaust,’ Gabbard tells Biden: By Jonny Tickle, RT, Apr/16/2021
登録読者のИ.Симомураです。セイカーさんの先の記事、今回のギャバードさんの記事、読みたいと思っていたものでした。簡潔明瞭な両訳に感謝もうしあげます。セイカーさんはずうっと前の記事で、露兵とウクライナ兵が衝突したならば、戦闘している敵兵士個人ではなく、後方の安全圏から指揮する指揮官個人個人を、ロシア軍幕僚部はミサイルで殲滅するだろう、と書いておりました。シリアである大佐級の高級指揮官が卑怯な方法で殺害された事件についての彼の反応だったと記憶しております。指揮官先頭は赤軍とロシア軍の最も尊重され、求められる原則だそうです。それに個人攻撃は戦闘ではなく、戦争犯罪だとする原則にしても、フセイン、カダフィ、スレイマニと虐殺されたことから、ショイグーはこの方法をゆるすのではないでしょうか。ゼーレンスキの今回の対露準宣戦布告は、逆に彼らの持ち駒が少なくなっていることを暗示しています。エストニア、ラトビア、リトワ、ポーランドには、ロシア兵や彼らより頑健で敢闘精神に富むべラルス兵と、顔を見あいながら殺しあう憎悪をもっていません。そうなったらおしましです。ラトビアなどは無国籍にされて差別され辱められている多数のロシア系市民がおります。まず内部から転覆することでしょう。ウクライナにしても、何か些末な事件を切っ掛けに、一気に崩壊するかも知れませんね。二年前キエフ経由でロシアへ行ったのですが、あの貧困と、市民のだらしなさには哀れを感じました。ソ連邦構成共和国時代のウクライナはロシア連邦よりも豊かな国だったですよね。1984年に白ロシア側からポーランドに入って、ワルシャワにきたとき、自分はカピタリズム国家に来た錯覚を感じました。戒厳令が撤廃されたばかりの時代でしたが、豊かな国だと感じました。
返信削除シモムラさま
削除コメントをお寄せいただき、有難うございます。
ウクライナは内部から崩壊してしまうのかも知れないというご指摘はその通りだと私も感じています。ラトビアに関してもそのような指摘をどこかで読んだことがあります。政治家は国内政策ではもはや選挙民の関心を捉えることができないことから、NATO軍を自国へ引き寄せることで国内を政治的に結集することを試みているのだという見方です。ラトビアや他のバルト諸国を見ますと、国内のそういった政治的現実は想像以上に大きな要素であるのかも知れませんね。決して否定できないと思います。
この投稿でご紹介したバイデン大統領の言葉は単なるリップサービスで終わってはならないと思います。つまり、具体的な米ロ間の対話や
緊張緩和に繋がって欲しいものです。
ところで、本日になって知ったことですが、外交関係が途絶えているサウジアラビアとイランは政府高官による対話を開始したとの報道がありました。第一回目は建設的だったとのこと、両国は今後も対話を続けるといった報道がされています。イスラエルの存在を考えますと、最終的に米国とイランとが仲直りすることができるのかどうかは私には予測もつきませんが、中東における緊張はかなり和らぐのかも知れないと期待したくなって来ます。
また、われわれがよく知っているように、巷には戦争で大儲けをして来た人たちや、そういった連中に新たに加わりたい人たちが少なからず居ます。残念ながら、彼らがどんなサボタージュを企てるか分かったものではありません。果たしてどうちらの方向へ動くのでしょうか。
登録読者のИ.Симoмураです。「読む・考える・書く」というブログサイトで怖ろしい記事を読みました。311大震災のとき、右翼が中国人を殺害しようと徘徊し、当の人物が外国メディアのインタビューでとくとくと話しているのです。もっと恐ろしいのは、コメント欄に彼に共感を示すものどもがいることです。右翼は個々にいろんな活動してますよ。ボランティアとか。
返信削除「まあ僕は東日本大震災のときはまだ道路もついてないような陸前高田に4百人分の豚汁とおにぎり持って炊き出しに行きましたよ。…あと石巻とかは、中国人がね、亡くなった方の腕や指切って貴金属盗んでるって聞いて、こりゃ許せないだろってことで、被災地治安維持警備隊っていうのを結成して、パトロールしましたね。…で、すれ違う人に声かけて、こんばんは、って。返事がなければいろいろ話しかけて、そんで中国語でもしゃべろうもんならその場で殺しちゃえ、ってね。ガレキに埋めときゃわかんねえ、つって。…」とあります.阪神淡路大震災のとき、作家の小田実さんが朝鮮人の奥様が殺されるのではないかと、非常に心配した、という記事を覚えております。vergil2010というペンネームですが、この方のサイトには関東大震災当時の横浜で目の前で中国人留学生を惨殺された体験をもつ父親を、現代史研究家の保坂正康さんが忍「天下晴れての人殺し」という文があります.オデッサの生きたまま焼殺作戦も実際あったのでしょう.
シモムラさま
削除人間の精神にはどこかに闇の部分があるようです。普段は眠っているようですが、何らかの刺激によって呼び覚まされると人間はとんでもない行動に走ることがある。そんな風に感じます。東関東大震災や神戸淡路大震災、関東大震災、等の日常とはまったく異なる、危機的な境遇に置かれた時、人の心は非常に脆弱になって、日頃は正常に動いていてもバランスを欠いて、闇の精神に支配されてしまうのでしょう。7年前のオデッサでは生きたままでの焼殺作戦が実際に起こったと理解しています。ベトナム戦争の際にはソンミ村虐殺事件が起こり、米軍兵士が非武装の村民を大量虐殺しました。300人から500人が殺害されたと言われていますが、正確な数は不明だそうです。集落は壊滅し、3名が生き残っただけ。人間はこのようなことを仕出かすことができる。まさに気が狂ったとしか言いようがないですね。他にも数多くの事例があります。で、この狂気の沙汰は人種や宗教、文化、時代の違いによって多少の差異が出て来るのかも知れませんが、本質的にはまったく同様ではないかと思え、不幸なことには私は人間が持つ悪魔性を否定することができないでいます。