2021年9月25日土曜日

グリホサートはほとんどのフムスやひよこ豆に含有されている ― EWGによる最近の調査結果

 

「フムス」とはひよこ豆を主成分としてニンニクや練りゴマ、オリーブオイル、レモン汁等を加えてペースト状にした食べ物。発祥の地はレバント地域だ。つまり、レバノン、パレスチナ、ヨルダン、シリア、イラク、エジプトといったアラブ諸国である。実に美味しい。特に、フムスをパンに塗って食べるのが好きだ。

米国での調査によると、フムスやひよこ豆単体から除草剤の主成分であるグリホサートが検出されているという。さまざまな食品中にグリホサートが検出されることはすでに当たり前にさえなった感があるが、グリホサートによる食品汚染は調査をすればするほどその実態がより広く見えて来ているのが現実である。

残留グリホサートの量が異常に高い理由のひとつは収穫直前に作物を一様に枯らすために除草剤を散布するという農法にある。除草剤のメーカーにとってはより大量に消費して貰えることであるし、農家にとっては一様に枯れた作物を収穫することができて省力化が期待できるといったメリットがある。

ここに、「グリホサートはほとんどのフムスやひよこ豆に含有されている ― EWGによる最近の調査結果」と題された記事がある(注1)。EWGは非営利団体であって、健康的な環境生活を保護するため、食料や化粧品などの分野で研究、啓発活動を行っている。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。

この引用記事が発行されたのは昨年の7月であるが、古きに失するというわけでは決してない。この記事の有効性は今も間違いなく継続している。

***

Photo-1

米国の非政府系組織である環境作業グループ(EWG)が行った独立した調査の結果によると、健康食品では定番であるフムスやその原料となるひよこ豆は高レベルのグリホサート、つまり、発がん性のある化学物質で汚染されている可能性がある。また、この調査結果によると、グリホサートは乾燥大豆や缶入り大豆、乾燥レンティル豆やひよこ豆の粉にも含有されている。

伝統的な、つまり、オーガニック食品ではないひよこ豆やひよこ豆製品の37個のサンプルの内で90%近くは検出可能なレベルのグリホサートを含有していた。27個の伝統的なフムスのサンプルについてはその3分の1が一日当たりの摂取量である60グラム(テーブルスプーンで約4杯)のフムスに対するEWGの健康基準を越していた。伝統的な乾燥ひよこ豆のサンプルについて行われた二つの分析の中のひとつは環境庁の余りにも緩い法的な基準量さえをも越していた。

2016年、 「デトックス・プロジェクト」と「フード・デモクラシー・ナウ」は人気のある米国食品に関して初めてグリホサートが残留しているかどうかの調査を行い、その分析データを発表した。グリホサート:如何なる料理も安全ではない

また、EWGはオーガニックのフムスについて12個のサンプル、ならびに、オーガニックのひよこ豆について6個のサンプルに関しても分析を行った。ほとんどのサンプルはグリホサートを含有しているものの、伝統的な栽培方法によるフムスやひよこ豆に比べてオーガニック品の含有レベルは遥かに低かった。われわれが調査したサンプルの中では乾燥ひよこ豆がもっとも高い平均値を示した。オーガニック食品の栽培ではグリホサートの使用は許可されないことから、これらのサンプルは伝統的な手法で栽培されていた近隣の農地から化学物質が飛散して来たものと推測される。伝統的な栽培がおこなわれたそれらの農地では収穫直前に除草剤が散布されたことであろう。あるいは、「スワッピング」として知られている手法に由来しているのかも。これはサプライチェーンの段階でオーガニック食品が伝統的な食品と交換されたことを意味する。

フムスおよびひよこ豆ならびに他の豆類は数多くの栄養上の利点を提供し、米国人はこれらを食料として消費することを止めるわけにはいかない。われわれの知見はグリホサートを収穫の直前に使用することを禁止するだけではなく、より厳しいEPA基準を採用すること、グリホサートが如何に広く食品を汚染しているのかを特定するためにFDAは分析作業を強化する必要があることを明白に示している。

グリホサートは数十年にわたってモンサント社によって、そして、今はバイエル社によって「ラウンドアップ」という商品名で販売されている除草剤である。これは国際がん研究機関(IARC)によって人に対しては発がん性が懸念され、「おそらく発がん性がある」として分類され、カリフォルニア州では癌を引き起こす化学物質であると見られている。

ラウンドアップは米国ではもっとも広く使用されている除草剤であって、さまざまな作物に使用され、栽培期間中のさまざまな異なった時期に使用される。消費者にとってもっとも心配な事柄は豆類や穀類の収穫の直前に乾燥剤として散布されるグリホサートである。EWGや他の公益グループによって今までに実施された分析結果によると、米国の大人や子供たちが好んで食べる朝食用シリアルやその他の食品にもグリホサートが検出されている。

これらのサンプルはすべてがEWGの研究者によってオンライン上で、あるいは、ワシントンDCやニューヨーク、サンフランシスコといった大都市圏にある食料品店で調達された。それらの食料品店にはアルディ、コストコ、ジャイアント、ハリス・ティーター、セイフウェイ、ショップライト、ターゲット、トレーダー・ジョウズ、ウールマート、ホールフーズ、等が含まれる。分析作業はサンフランシスコのアンレスコ・ラボラトリーズが行った。同社はカリフォルニア州の認定を受けている。

EWGはレンティル豆や黒豆、シロインゲン豆、グレート・ノーザン・ビーンの乾燥品や缶入りについて伝統的な手法で栽培された12個のサンプル、および、3個のオーガニックのサンプルを分析した。われわれはこれらのサンプルの60%にグリホサートを検出した。2019年に環境保護団体「地球の友」によって行われた分析では乾燥ピント豆の27個のサンプルのすべてにグリホサートが検出され、それらの平均値は509ppbであった。

米国においてはひよこ豆は主にアイダホ、モンタナ、ノースダコタおよびワシントンの諸州で栽培される。EWGが「国立農業統計サービス」のデータを解析したところ、ひよこ豆の栽培に供される面積は2015年から2018年までの間に4倍にも増加し、20万エーカーから80万エーカーとなった。

この増加はフムスやひよこ豆ならびにひよこ豆をベースにした他の食品を求める消費者が急増したことによって起こった。「コンシューマー・レポート」にて2018年に報じられたように、フムスの売り上げは指数的に増加しており、これは「新鮮なスナックの摂取」を反映したものであった。市場調査会社である「スタティスタ」によると、2019年のフムスの売り上げは約78千万ドルとなった。

1997年、EPAはひよこ豆に対するグリホサートの許容摂取量を200ppbから5,000ppbに引き上げた。EPAは当初この許容摂取量の引き上げは緊急時のための例外であると説明したが、それは1998年にさらに延長され、そのまま施行されることとなった。EPAのグリホサートの許容量は研究所における動物試験での毒性データに基づいていた。これは時代遅れの研究結果に基づいたものであって、最新の研究結果を反映するものではない。また、証拠が増えているにもかかわらず、グリホサートの発がん性は考慮されてはおらず、子供たちに必要となる10倍の安全係数を含めてはいない。

グリホサートはひよこ豆や豆類、レンティル豆、エンドウ豆の栽培で雑草対策や収穫作業を容易にするために収穫直前の乾燥剤として用いられてきた。収穫直前の散布は消費者に販売される食品に高濃度のグリホサートを含有させることに繋がっている。ドイツにおける最近の研究によると、レンティル豆やエンドウ豆を含め、豆類を消費した人は豆類を消費しなかった人に比べて尿中のグリホサートの濃度がより高いレベルにあることが判明している。

オーガニック作物を栽培する農家は作物を育て、収穫を行うに当たってグリホサートやその他の除草剤を散布することは法的に許されない。モンタナ州立大学の最近の研究によると、オーガニックひよこ豆を栽培する農家は浅耕を実施することや播種率を増やすことによって雑草と闘うことが可能である。

米国乾燥豆・レンティル豆評議会が報告しているように、これらの作物は収穫前に自然に乾燥させることが可能である。さらなる研究が必要ではあるけれども、最近オーストラリアで行われた研究によると、グリホサートなしでも、栽培時期の始めに目標とする除草剤による措置と組み合わせることによって、あるいは、除草剤には頼らない除草管理を行うことによっても農業は利益を計上することが可能である。

2012年にモンサントは欧州食品安全機関(EFSA)にレンティル豆についてグリホサート許容含有量を増してくれるよう求めた。これは米国やカナダで行われている乾燥剤としての使用を新たに取り入れるためであった。EUにおける現行の乾燥ひよこ豆中のグリホサート許容含有量は10,000ppbであり、これは米EPA基準の2倍のレベルである。

「グリホサートにはおそらく発がん性がある」との結論がIARCによって出されたにもかかわらず、EFSAは今後グリホサートの発がん性に関して結論を出さなければならない。2016年、94人の科学者から成る国際的なグループが研究結果を発表した。これらの科学者はEFSAの決断を批判し、グリホサートに関してIARCが発表した発がん性の分類を踏襲するよう呼びかけた。

食品用作物に関して米国で除草剤としてもっとも広く使用されているグリホサートの含有量を分析する話になると、連邦当局はまったく別のことを考えているようである。

2018年、米農務省は同省の「除草剤データプログラム」の一環として除草剤含有量の分析を行うためにひよこ豆について500個ものサンプルを集めた。しかしながら、このプログラムにはグリホサートの分析は含まれなかった。FDAはいくつかの食品についてグリホサートの含有量を分析したが、これらの試験にはグリホサートが散布されていることが分かっている食品が含まれてはいなかった2019年、EWGは米国疾病管理予防センター(CDC)に対して同センターの「国家バイオモニタリング・プログラム」にグリホサートを付け加えるよう請願した。これはグリホサートへ曝されることが米国において如何に広っているのかを特定するのに必要な最初のステップである。

他の植物性タンパク源と同じように、フムスとひよこ豆ならびに他の豆類は素晴らしい栄養源として実に大きな利点を持っている。これらは食物繊維や高レベルのビタミンAEおよびC、葉酸、マグネシウム、鉄、カリウム、等の優れた供給源であり、体重管理やコレステロールの低減の助けとなる。フムスは成人によって広く消費されているだけではなく、スナックとしても子供たちの昼食用として人気が高い。また、ひよこ豆はベビーフードとしても店頭で求められたり、家庭で調理されている。

***

これで全文の仮訳が終了した。

この引用記事を読むと、国民の健康について責任を担っている筈のFDACDCといった米連邦機関がグリホサートの実態を調査することには極めて消極的であることが明白に感じ取られる。何故かと言うと、グリホサートを主成分としたラウンドアップ除草剤はモンサント社によって開発され、長い間市場に出回り、世界中でもっとも多く使用されている除草剤となっているからだ。除草剤としての認可から始まって、食品中の残留物の濃度の設定に至るまで、これらの連邦機関は長い間直接的に関与して来た。言わば、これらの連邦機関は大企業との運命共同体である。幸か不幸か、消費者の安全よりも大手企業の利益を確保することが彼らの優先目標となっていたと言わざるを得ない。

これらのあってはならない現実は米国の消費者だけではなく、米国産の食品を大量に消費している日本の消費者にとっても大問題である。

ところで、グリホサートやそれが抱き合わせで販売されている遺伝子組み換え作物がもたらす健康影響に関しては、このブログでも何回となく取り扱って来た。それらを総括したものとして2019618日の投稿(21件の投稿を収録)がある。さらに、最近のものとしては202192日の投稿もある(22件目)。そして、今回の引用記事は23件目となる。健康影響に関する全体像を把握したい方はこれらをご一覧いただくと便利かと思う。


参照

1GLYPHOSATE DISCOVERED IN MOST HUMMUS AND CHICKPEAS IN NEW EWG STUDY: By THE DETOX PROJECT, Jul/15/2020 

 



0 件のコメント:

コメントを投稿