2021年9月2日木曜日

グリホサートを主成分とする除草剤は早産を有意に引き起こす ― ミシガン大学の研究

 

グリホサートを主成分とした除草剤、たとえば、バイエル/モンサント社の製品である「ラウンドアップ」は雑草に対してだけではなくミツバチ等の昆虫を含む動物界にもさまざまな形で悪影響を与える。人間を始めとする哺乳類も例外ではない。

「芳ちゃんのブログ」では2014/06/022019/06/035年間にモンサント、グリフォサート、ラウンドアップ除草剤、殺虫剤、遺伝子組み換え作物といったキーワードを巡って21件の投稿をし、腎疾患、悪徳商法、豚に激しい炎症反応、発がん性、安全性を裏付ける証拠の欠如、ミツバチの不妊化、遺伝子組み換え大豆に危険なレベルでのグリホサートを検出、モンサント社に対する有罪判決、昆虫の絶滅の危険性、遺伝子組み換えジャガイモの開発に従事した研究者による危険極まりない真実の告発、等、人の健康に及ぼす深刻な影響についての記事をご紹介してきた(注:これらの21件の投稿については、2019618日の「芳ちゃんのブログからひとつのテーマについて抽出、分類してみました」と題した投稿でモンサントのラウンドアップ除草剤に関係する投稿を纏めています。ご確認ください)。これらの投稿は読者の皆さんに多少なりともご参考になったのではないかと自負している次第だ。 

上記に加えて、昨年の1218日、グリホサートが人に対して環境ホルモン様の挙動を示すことに関しても投稿をした。

ここに、「グリホサートを主成分とする除草剤は早産を有意に引き起こす ― ミシガン大学の研究」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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ラウンドアップ除草剤やグリホサートを主成分としたその他の除草剤に使用されている化学品に対する暴露は有意に早産をもたらすことが水曜日(訳注:2021519日)に発表されたミシガン大学の新たな研究によって明らかにされた。

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この研究結果は「Environmental Health Perspectives」誌に発表され、妊娠後期にある女性の尿中に発見される本化学物質が早産のリスクをもたらすことが判明した。ところで、妊娠の初期における関係性については必ずしも一貫性は見られず、何の関係性もない。

「ほとんどの人はある程度の濃度のグリホサートに暴露されてはいるが、それとは気付かない。もしもわれわれの研究結果が真の関係性を示しているとするならば、一般大衆の健康に対して推測される影響は計り知れないものとなる」と主執筆者であって、ウィスコンシン大学公衆衛生学部の上級副学長であり環境衛生科学の教授を務めるジョン・ミーカーが述べている。

第一執筆者のモニカ・シルバーが、公衆衛生学部の博士号の取得後に研究員を務める中、この研究を行った。

「早産で誕生した子供は長期にわたって健康問題に見舞われるリスクが高まり、この研究成果はさらなる調査を行う必要性を示唆している」と彼女は述べている。

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グリホサート・ボックス:

食品に関するグリホサート残留物不在証明書 ―  こちら

自宅で食品や飲料水に含有されるグリホサートを検査 ― こちら

グリホサートや他の除草剤・殺虫剤に対する長期的暴露に関して髪の毛を検査 ―  こちら 

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23年前にミーカーと彼の同僚はプエルトリコの北海岸をドライブしていた。その地域の診療所を訪ね、共同研究者を募るためであった。その際、辺りは熱帯性の島特有の豊かな緑に覆われており、そんな背景の中に広範に使用されている除草剤の看板を目にした。

「研究参加者たちの間で除草剤の主要成分を検出することができるのではないだろうかと考えを巡らしていた。多分、この地域では高い相関性があるのかも知れない」とミーカーは思った。

12年前、プエルトリコにおける早産に関してどのような環境要因がそれを引き起こすのかを調査するためにミーカーと彼の同僚らは「妊娠・出産を防護する集団」を組織化した。同島では2030年前から早産が増えていたのである。

同島の5か所の診療所と2か所の病院から集まった何十人もの共同研究者らを含めてさまざまな専門分野を網羅する共同研究チームが発足し、長い時間をかけて母親にかかるストレスや化学物質、金属、等を含む広範な環境要因を調査した。「妊娠・出産を防護する研究」を実施するための資金は国立環境衛生科学研究所(NIEHS)のスーパーファンド・リサーチ・プログラムから提供された。

WHOの報告によると、「早産の件数が増加している。3か国を除き、全ての国で過去20年間早産が増えている」 のである。

道路わきの看板を見てから、ミーカーと彼のチームは科学論文を検索してみた。グリホサートは世界中でもっとも多く使用されている除草剤であって、グリホサートが人間の健康に害を及ぼす証拠は数多く報告されているのだが、出産前の暴露ならびにそれが人の生殖や胎児の発達にもたらす悪影響についての研究はほとんど見当たらないことに気付いた。

研究者たちは検尿を行って、グリホサートとアミノメチルホスホン酸(AMPA)を測定することに決めた。AMAPは除草剤の一次分解物質のひとつであり、これらの化学物質は哺乳類には代謝されず、尿中に検出が可能であるからだ。彼らは第一回目と第三回目の訪問で、妊娠1620週目および2428週目にある247人の妊婦の尿を試験した。

早産(妊娠37週未満での出産)の事例を対照群と比較してみると、早産の比率は尿中により多くのグリホサートやAMPAが検出された女性の間で有意に高くなることを研究者らは三回目の訪問の際に見い出した。しかしながら、一回目の訪問の際にはほとんど無関係で、一貫性は認められなかった。

AMPAはグリホサートの分解によって生成されるだけではなく、他の一般的な化学物質からも由来すると彼らは言う。また、AMPAはしぶとく存在し続け、環境中では分解するまでに何か月もの時間を要する。

「グリホサートやAMPAに暴露される可能性があるにもかかわらず、妊娠中の暴露が引き起こす健康影響に関する情報は極めて少ない」とシルバーは言う。「我々の研究はAMPAを測定し、それを報じる最初の研究であり、早産との関連性についてグリホサートを測定することは史上二番目の研究となる。」

ミーカーは、インディアナ州で行われた小規模の研究によると、グリホサートへの暴露が高くなることと妊娠期間の短縮との間には相関性があることが報告されていると述べた。

「われわれの研究成果は他の異なる参加者集団について行われた研究結果や調査手法が異なる研究から得られた研究結果ともよく一致する。このことはわれわれの知見に追加的な自信をもたらしてくれる。とは言え、さらなる研究が必要である」と彼は述べた。

ミーカー、シルバーおよび共同研究者らは米国においても別個の群(コホート)に関しても同様の研究を展開したいと言う。そういった機会はNIHが資金を提供する「子供の健康に対する環境影響」に関する調査の枠内で到来するかも知れない。その調査では「妊娠・出産を防護する研究」を含めて、何十もの出生群がひとつに統合され、米国中の何万人もの参加者から子供たちの健康や疾病を予測することが可能な諸々の要素に関して調査が行われる。

注:本研究は国立環境衛生科学研究所と国立衛生研究所ならびに「子供の健康成果に対する環境影響」プログラムから研究助成金を得た(助成金番号はP42ES017198, P50ES026049およびP30ES017885)。さらには、国立衛生研究所の所長室からも助成金を得た(UH3OD023251)。

ミーカーとシルバーに加えて、この記事の著者には次の研究者らが含まれる:ミシガン大学公衆衛生学部の環境衛生科学科のジェニファー・フェルナンデス、NSFインターナショナルのジェイソン・タング、アンナ・マックダドおよびジェイソン・サビノ、プエルトリコ大学公衆衛生学部UPR医学部サン・フアン校のザイラ・ロザリオおよびカルメン・ヴェレス・ヴェガ、ノースウェスターン大学ボストン校エンジニアリング学部のアクラム・アルシャワブケー、ならびに、ジョージア大学疫学・生物統計学科のホセ・コルデロ。

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これで全文の仮訳が終了した。

グリホサートが引き起こす健康被害には非ホジキンリンパ腫、腎疾患、等を始めとしてさまざまな事例がある。その他の具体的な健康障害については、たとえば、201592日に掲載した「アルゼンチン - モンサントによって汚染された国」と題した投稿をご一覧願いたい。世界で第三位の大豆輸出国となったアルゼンチンにおいて除草剤の暴露によって引き起こされた健康被害は目を覆うばかりである。

そして、今回の記事によってこの長いリストにさらに早産のリスクが加わった。

日本国内ではグリホサート系除草剤がさまざまな商品名で販売されている。たとえば、「グリホエースPRO」、「アイリスオーヤマ除草剤速効除草剤」、「CHEMTEST激枯れW」、「ハート除草剤原液タイプ」、「除草剤グリホサート41%」、「サンフーロン除草剤」、「グリホエキス液剤」、「クサクリア」、「除草剤ラウンドアップマックスロード500ml日産化学」、等。家庭菜園や庭先でグリホサート系除草剤を使用する際には暴露しないようにくれぐれもご注意ください。

 

参照:

1Glyphosate Herbicides Significantly Associated with Preterm Births - University of Michigan Study: By Sustainable Pulse, May/19/2021

 



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