ヨーロッパの一般大衆は、今、高騰するエネルギー価格とそれに伴う消費者物価の急騰によって貧困化に見舞われている。中でもドイツの現状は非常に厳しいようだ。冬将軍の到来が迫っている中、「今や、生活のし易さで言えば、ドイツはロシアを下回ってしまった」とある識者が指摘している程である。
「ロシア経済を弱体化し、米国を強化する」という目標が米国によって喧伝された。それに歩調を合わせたEU各国はロシアに対して発動した経済制裁の反動を受けて、回り回って自分たちこそがこの冬は寒い冬を耐え忍ばなければならないという皮肉な窮地に陥っている。最悪の場合、寒さによる死者が出るかも知れない。
各国政府はエネルギーコストの高騰に対しては支援政策を発動するとしているが、もちろん、その財源は市民が納める税金である。この事実を考慮に入れば、結局のところ、一般大衆は不必要な負担から解放されることはなく、踏んだり蹴ったりである。結果論的には、ロシアに対する経済制裁はヨーロッパにとっては超愚策であったと言えよう。
ウクライナ紛争に絡んでEUの政治エリートが選んだ選択肢は自殺のように見えるという指摘が数多く挙がっている。自殺は当人にしか分からない論理の末に決行される。周りの者には当事者の心の内は、多くの場合、正確に把握することは不可能だ。
ここに、「なぜドイツは自殺を図っているのか?EU/UKが脱工業化を図っているのもまったく同じ理由だ!」と題された最近の記事がある(注1)。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
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さて、これは極めて現実的な質問だ。ね、そうだろう?では、なぜか?「どのように」や「誰が」は公衆のためのに用意された単なる風景に過ぎない。まさに、オズワルド、ルビー、キューバ、マフィア、等のようにだ。パーラーゲームのように推測することだけが続き、もっとも重要な質問をすることを防げる。なぜケネディは暗殺されたのか?誰が恩恵を受けたのか?誰がそれを隠蔽する力を持っているのか?誰が?
~ これらは映画「Mr. X in JFK」から抜粋したものである。
それは米国が彼らにそうしろと命じたからだ!
最近、ウィリアム・F・エングダールは、「ヨーロッパのエネルギー・ハルマゲドンはモスクワが引き起こしたのではなく、ベルリンとブリュッセルによって引き起こされたもの」と題して、非常に興味深い記事を書いたが、本件はペペ・エスコバーの「ドイツのエネルギー自殺:解剖所見」という記事によっても再度取り上げられている。
http://www.informationclearinghouse.info/57224.htm
https://www.unz.com/pescobar/germanys-energy-suicide-an-autopsy/
どちらの記事もドイツが自殺しようとしている様子を秀逸に説明している。「グリーンアジェンダ2030」、「グレートリセット」、等。
私はエングダール宛に彼が自分の記事に書いた次のような声明について電子メールを送り、「グリーンエネルギーやグレートリセットといった戯言の他に、ドイツの完全な脱工業化の本当の理由はいったい何か」と尋ねた:
それはショルツやドイツのグリーン政策を主導するロベルト・ハーベック経済相のような政治家や欧州委員会でグリーンエネルギーを担当する副委員長のフランス・ティマーマンスが愚かで無知であるからというわけではない。だが、堕落しており、不正直であるという点は、多分、正しい。彼らは自分が何をしているのかを正確に分かっている。彼らは台本を読んでいるのだから。 これはすべてが地球上でもっともエネルギー効率の高い産業集中地域のひとつを脱工業化するというEUの計画の一部である。これは、クラウス・シュワブの「グレートリセット」としても知られる国連の「グリーンアジェンダ2030」である。
何らかの理由で、エングダールは私の電子メールには返信して来なかった。しかしながら、彼への電子メールの中で私が次の質問をしたときに自分の質問に私は基本的には答えていた:
それはヨーロッパをエネルギーと技術の両面でアメリカに完全に依存させるため、ヨーロッパを完全に壊滅させることなのだろうか?世界の他の国々はBRIやBRICSに向かって動いている。米国人のために強姦と略奪と称される略奪を行うために残された唯一の地域は今やヨーロッパ(さらには、日本と韓国)だけなのだ。
あれは2022年9月5日のことであった。
2022年9月16日、RT (ロシア・トウデイ) は「米国のエリート・シンクタンクはEU構想報告書は偽物だとして破棄」と題された記事を掲載した。
(https://www.rt.com/news/562911-rand-corp-ukraine-plot/):
米経済を支えるためにEUの資源を枯渇させるという米国の計画についての話は、火曜日(9月13日)、反グローバリスト、ヒューマニスト、親自由、独立を自称するスウェーデンの報道機関「ナヤ・ダグブレダッド」によって報じられた。英語版はその週の後半に出版された。
同紙はランド研究所が署名した「ドイツを弱体化させ、米国を強化する」と題された機密文書を入手したと主張した。1月に作成されたとされるこの論文は米国が欧州の同盟国から資源を枯渇させることによって苦戦している米経済をどのように支えることができるかについてのシナリオを概説している。
陰謀とされるものにはロシアをウクライナ攻撃に追い込むことが含まれており、EUはロシアに経済制裁を課し、EU経済をロシア産エネルギーから切り離すことを余儀なくされる。
私はナヤ・ダグブレダッド紙の2人のスウェーデン人著者に連絡をとって、ランド研究所の文書を提供してくれるようにと頼んだ。著者の一人であり編集長でもあるマルクス・アンデルソンは速やかに対応してくれ、ランド研究所の所謂「偽の」文書が手に入った:
https://nyadagbladet.se/wp-content/uploads/2022/09/rand-corporation-ukraina-energikris.pdf
このPDF文書のコピーをハードドライブに保存し、ランド研究所の連中が血まみれの殺人をまくし立て、この非常に重要な「偽の」文書が消されてしまう前に、あなたのすべての友人たちに対して、特にドイツに住んでいる一般大衆に対しては読者の皆さんから送信してやることをお勧めしたい!
まもなく、ランド研究所の連中はこの文書を「偽造文書」と呼ぶことであろう。
このランド研究所の報告書は「要旨:ドイツを弱体化させ、米国を強化する」と題されている。
同文書は2022年1月25日付で、「機密」と表示されている。配布先リストにはWHCS(ホワイトハウス首席補佐官)、ANSA(国家安全保障問題担当大統領補佐官)、国務省、CIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)、DNC(民主党全国委員会)が含まれている。(訳注:民主党全国委員会は配布先に含まれているが、共和党全国委員会は含まれていない!)
この所謂「偽の」文書を少し覗いてみようではないか?
米国経済の現状はそれが外部からの財政的、物質的支援なしに機能し得ることを示してはいない [これは、まさに、寄生帝国の定義そのものだ!]。FRBが近年頼りにしてきた定期的な量的緩和政策や、2020年と2021年の新型コロナ禍での都市閉鎖中に制御不能となったキャッシュフロー問題は対外債務の急激な増加とドル供給の増加
[これは高いインフレ率の定義そのもの]を招いた。
経済状況の悪化が続く中、2022年11月に予定されている選挙においては議会と上院における民主党の立場が損なわれる可能性が高い。このような状況下では大統領の弾劾を排除することはできないので、いかなる犠牲を払ってでもそれを避けなければならない。
国民経済、特に銀行システムに資源を流入させることが急務である。EUとNATOの約束に縛られているヨーロッパ諸国だけが、我々の側に莫大な軍事的ならびに政治的なコストをかけずに、それらを提供することができる。[アメリカは強姦や略奪を強いる場としての第三世界や発展途上国を使い果たしてしまった。]
それに対する主な障害はドイツの独立が拡大することである。同国は主権が限定された国ではあるが、何十年もの間一貫してこれらの制約を撤廃し、完全に独立した国家になる方向に向かって動いてきた。この動きは緩慢で、慎重ではあるが、安定している。外挿してみると、究極の目標は数十年で達成できることを示している。しかしながら、米国の社会的および経済的な問題がさらに進行すれば、そのペースは大幅に加速する可能性がある・・・
ドイツやEUにおける経済の脆弱性:
ドイツが制御された経済危機を経験し始めると、ヨーロッパから米国への資源の流れの増加が期待できる。EU全体の経済発展のペースはほとんどドイツ経済の状態に依存しており、代替手段はない。より貧しいEU加盟国に向けられる支出の矢面に立たされているのはドイツなのである。
現在のドイツ経済のモデルはふたつの柱から成り立っている。それは安価なロシア産のエネルギー資源および原子力発電所の運転のおかげで安価なフランスの電力に対する無制限のアクセスである。最初の要因の重要性はかなり高い。ロシアからの供給を停止することはドイツ経済にとって、そして、間接的には欧州連合全体にとって体系的な危機を引き起こし、壊滅的な事態になる可能性がある・・・
制御された危機:
EU連合の制約により、ドイツの指導部は国内の状況を完全に制御しているわけではない。われわれが採った正確な行動のお陰で、鉄鋼および化学産業の業界からのロビイストによる反対があったにもかかわらず、ノルドストリーム2パイプラインの運用開始を阻止することができた。しかしながら、生活水準の劇的な悪化は指導部が現行の政策を再考し、ヨーロッパの主権と戦略的自治という考えに戻って行くことを促すかも知れない。
ランド研究所の要旨は、さらに、ドイツの金融・経済的損失の予測とともに「予想される結果」を詳しく述べている。
最期に残るのは彼らが言うように・・・ (ほぼ)ミッション達成!
追記:「俺は何も知らない!」と言ったショルツ軍曹が故国を掌握した今、アルゼンチンの墓に横たわっているアドルフはのたうち回っているに違いない・・・
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これで全文の仮訳が終了した。
著者は「なぜドイツは腹切り(あるいは切腹)をしようとしているのか?それは米国が彼らにそうしろと命じたからだ!」とあからさまに言ってのけた。著者は邪悪の帝国としての米国を見事に指摘した。
ロシアは西側メディアによる執拗なプロパガンダに応えたのではなく、むしろ、ランド研究所のこの戦争計画書の存在を知ったからこそ、ウクライナに対する特別軍事作戦を開始したのではなかろうか?つまり、ロシア政府はウクライナが近いうちに大規模な攻勢をかけて来ることを予知したのだ。このことについては2月24日以降明確に指摘する識者はいなかったが、今振り返ってみると、ロシア側はウクライナ軍による攻勢が開始されることを間接的に知っていたからこそ特別軍事作戦を開始したのだといった解説があったが、これは具体的にはランド研究所の戦争計画書であったのではないかと私には思える。
ランド研究所が戦争計画書の中で「ドイツによるロシア産エネルギーの供給拒否を保証する唯一の実行可能な方法はウクライナでの軍事紛争に双方を巻き込むことだ。この国でのわれわれの更なる行動は必然的にロシアからの軍事的対応につながるだろう。ロシア人は、明らかに、認識されてはいないドンバスの共和国に対するウクライナ軍の大規模な圧力に応えずにはいられないであろう。ロシアがそうしたならば、ロシアを侵略者として宣言し、事前に準備された経済制裁パッケージ全体をロシアに課すことが可能となる・・・」と述べた部分は過去の7カ月を今振り返って見ると、ほぼすべてがシナリオ通りに進行して来たと言える。
プーチン大統領がウクライナ東部の住民の安全を支えるためにウクライナで特別軍事作戦を開始すると宣言したのは2月24日であった。
その約2週間前、2月11日に「ウクライナ危機の本命はウクライナではない。本命はドイツだ」と題された画期的な記事が米国で出版された。当時はロシア軍がウクライナとの国境に集結しており、「ロシア軍はいつ何時自作自演の作戦をひきおこすか分かったものではない。明日かも知れない」といったプロパガンダが西側のメディアで連日喧伝されていた頃であった。この2月11日の記事は的を射た記事であった。われわれ一般読者の注目を引いた。読者の皆さんにはお分かりのように、当ブログではこの記事を2月19日に投稿した。
結局のところ、ドイツのショルツ首相はノルドストリーム2の使用許可を与えるプロセスを凍結した。米国からの政治圧力を受けて、ドイツが必要としている安価で安定供給が可能なロシア産エネルギーを彼が断ち切ったことによって、ドイツ経済は今や先が見えない窮地に陥っている。そして、これは単に国際市場でどこからかより高価な天然ガスを調達すれば済むという単純な話ではない。EU圏全体を覆うエネルギー危機が表面化し、物価が高騰している。ドイツは今まで自分たちが謳歌してきた経済競争力を失い、ドイツ経済の旗艦的な存在であった輸出が不振となる。ドイツ経済は前例のない形で低迷する。こうして、EU圏全体がタイタニック号と共に沈没する。経済的自殺と称される所以である。
あるいは、今後、何かの奇跡が起こって、ドイツの自殺行為に対する蘇生治療が施され、幸運にもそれが奏功して、思ったよりも軽度の障害だけで終わるのであろうか。もちろん、そうなってくれれば、自分たちの愚策を決して認めようとはしない政治エリートも含めて、EU圏の国々にとってはそれ程嬉しいことはない。
しかしながら、どちらに転ぶのかは分からない。
不透明な視界はしばらく続きそうである。11月の米中間選挙の結果次第では、新たな波乱が改めて世界を驚かすことになるのかも・・・
参照:
注1:WHY Is Germany
Committing Suicide? The Same Reasons WHY the EU/UK is Being Deindustrialized!:
By David Chu, The Saker, Sep/18/2022
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