2022年10月22日土曜日

誰が得をするのか? 大きな構図を見よう

 

不可思議な事件が起こった時、警察がその容疑者の解明に乗り出す際にまず考えることは「いったい誰が得をするのか」という点だ言われている。

ロシア・ウクライナ戦争についてもまったく同様であろう。いったい誰が得をするのか?西側の大手メディアの論調は、424日以降、世界の歴史はそれ以前には存在しなかったかのように構成された報道が主流となった。彼らはその日以前の8年間にウクライナ東部の住民がウクライナ政府軍から受けた砲撃による悲惨な苦難や被害は存在しなかったかのように振る舞った。つまり、ウクライナへ侵攻した「プーチンは悪党だ!」と喧伝したのである。このような報道をした場合、いったい誰が得をするのか?

過去の出来事についても、まったく同じことが言えるのだが、当局や大手メデイアによる解説や説明においては真相はうやむやに残されたままとなっていることが多い。だが、世間は真相を理解してこともまた多いのである。権力者側がいくら手の込んだアリバイ作りを行ったとしても、周到に織りなされた虚偽の縫い目は何処からか綻びてくるのが常であるからだ。

たとえば、9/11同時多発テロではいったい誰が得をしたのか?

マレーシア航空のMH-17便を撃墜し、その責任をロシアになすりつけることによって誰が得をしたのか?

ノルドストリームパイプラインを爆破することによって誰が得をするのか?

クリミア大橋を爆破することによって誰が得をするのか?

これらの最近の出来事に類する事例はいくらでも挙げることができる。そして、ある程度の時が経つと、全体像が見え始めて来る。それらの底流に流れる要素は、多くの場合、ひとつの動機に収斂されて来る。

ここに「誰が得をするのか? 大きな構図を見よう」と題された最近の記事がある(注1)。

現行の国際政治には米ロ間の力関係が背景にあって、そこでは覇権を失いつつある米国と台頭しつつあるロシアや中国との競り合いが起こっている。単独覇権に対する多極主義勢力の挑戦でもある。もちろん、他にも捨てることはできないさまざまな切り口や視点がある。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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(注:著者はロシア人ではないし、ロシア人は誰も知らず、ロシアに行ったことさえもない。)

誰がノルドストリーム・パイプラインを爆破したのか(米国)に焦点を当てた私の最近の記事、「動機、手段、機会」の要約に加えて、私たちはいったん立ち止まって、本日はより大きな世界像を描いてみたいと思う。ウクライナが繰り広げた大失敗の全体に関して「いったい誰が得をするのか?」と問いただしてみようではないか。

まず第一に、正気の沙汰とは到底思えない、めちゃくちゃなウクライナの現状は、2014年のよだれを垂らしたヌーランド/臆病なマケイン/CIAによるマイダン革命以来、確かに米国によって100%でっち上げられ、捏造され、設計されていたことを絶対に明確にしなければならないのであるが、話はそれ以前にまでも遡る。人生の場面においては一方の当事者が100%有罪で、邪悪で、道徳的に破綻していることが判明したとしても、他方の当事者が100%自己防衛と自己保存のために行動しているという状況は極めて少ない。しかしながら、このウクライナ情勢に関しては米国が100%邪悪な侵略者であり、ロシアは100%自己保存のためとウクライナのロシア語を日常語とする一般庶民を防護するために行動していたことを歴史は示している。これはまさに悪に対する善の戦いであり、あなたがまだこのメッセージを手にしてはいない場合に備えて、私はここで繰り返して言っておこう:「米国のディープステートこそが悪だ。」この現実は歴史的であり、文書化された事実については遠隔からの興味を示すだけの半ば昏睡状態にある人たちにとってさえも疑いの余地はなく、明らかなことである。疑問を感じている人たちは、ジャーナリストと軍事史家(どちらも英語圏の出身)によって調査された3部構成の包括的なポッドキャストの要約を聴いてみる必要がある。彼らは、2022224日以降、これらの報道や記事がグーグル検索のアルゴリズムから不思議なことに消えてしまう(または、検索リストでは500番目の優先順位を割り当てられる)以前に、西側の主流メディアから情報を実際に入手していた:

https://www.listennotes.com/pl/podcasts/crawdads-and/ukraine-part-1-a-us-proxy-LzOCIYSjFE0/

https://www.listennotes.com/pl/podcasts/crawdads-and/ukraine-part-2-from-maidan-xS4ef-80HVG/

https://www.listennotes.com/podcasts/crawdads-and/ukraine-part-3-bidens-cjuYZbW683q/

欧米の愚かな一般庶民、おそらくは、「黄金の十億人」の99%は、2022224日以降、アングロ・ヨーロッパ・シオニストの主流メディアの下水から吐き出される、容赦のない、嘘つきのプロパガンダ情報は信じられないほどの有効性の証となる「真実」とは正反対のものであったが、それらを簡単に信じてしまったことは極めて残念なことである。

ふたつのテロ攻撃(ノルドストリーム・パイプラインとケルチ大橋)が最近起こるまでは、ロシアは米国とその代理人の悪化振りに対しては極めて抑制された対応を示して来た。米国は何年も前に挑発を開始し、平和的な解決を複数回の機会を通じて軽蔑的に拒絶した。ロシアは間もなくそれを終わらせることだろう。だが、どういうふうに?ウクライナの屈辱的な敗北は確かにあり得るが、より大きな構図で見ると、われわれはヨーロッパの経済的荒廃(ルーブル払いでエネルギーを買う国々、たとえば、ハンガリーやトルコは別として)と、最終的には米国の不安定化を目にすることになろう。おそらく、米国自身の避けられない経済崩壊からは米国の内戦や革命がもたらされるであろう。後者のふたつの不測の事態は決してロシアが意図した目標ではなかったが、米国とEU自身が採った悪意ある行動が意図しなかった負の結末や宿命を招来させることになるであろう。

では、米国にとっては一体何がロシアにウクライナへの侵略を挑発する動機になったのか?どの政党がそこから利益を得ることを望んだのか(ヒント:間違いなく、それは米国民ではない)、そして、米国のディープステートの短・中・長期的な目標は何だったのか?ここでは文脈がすべてであり、われわれは大きな構図の中で物事を見る必要がある。下記のレビューでうまく要約されているアンドレイ・マルティアノフの優れた著書に描写されている全体像を見る必要がある:

https://americanaffairsjournal.org/2022/08/how-russia-views-america/

簡単に言うと、米国の産業、経済、社会の衰退は過去数十年間に全面的に米国自身によってもたらされたものであって、機能的社会としての米国に衰退を招き、それゆえに、今や、米国の世界覇権の喪失が差し迫っている。これは、誇大妄想的な「米国は不可欠な国家、丘の上でビーコンを輝かせている」といったイデオロギーを軽信する者にとってはそう簡単には受け入れることができない状況となっている。

かつての帝国の空洞化した嘲笑が自らが招いた完全崩壊の前夜に足を引きずりながらもいかにして歩き続けているかを正確に理解することが重要である。今や、消滅寸前なのだ:

  • 最も重要な点は米国の詐欺的な「経済」がどのように機能するかを理解することだ。この件に関して最高のコメントを与えてくれる識者は私がhttps://michael-hudson.com/を言及するにはあまりにも多くの著作があって、現実世界におけるもっとも素晴らしい経済学者*、マイケル・ハドソン教授である。要するに、米国経済は世界の他の地域から富を搾取し、より弱い国々をその革製の長靴(別名、経済新植民地主義)の下にとどめることによって、世界的規模で血を吸う寄生虫としてその大部分が機能している。主なメカニズムは国際準備通貨としての米ドルの熱狂的な特権であり、これは他の国にはないものだ。
  • この詐欺は、1944年のブルトンウッズ体制以降、米国の「ルールに基づく秩序」に合うように考案され、設計され、微調整され、洗練され、他のメカニズムと連携して動作し(世界銀行、WTOIMFの前駆体を設立し、同時に米ドルを国際準備通貨として指定)、ニクソンによる1971年の金本位制の放棄、特に米国のペトロダラーの創設へと続いた。後者は米国が中東の石油生産国に提示したゴッドファーザー的な「断るわけにはいかない申し出」であった。これには湾岸諸国が順次署名し、1974年までには完成したのだが、これはまさに保護下の金儲けであった。必要不可欠な商品である石油は湾岸諸国から米ドルでしか購入できず、他のすべての通貨は拒否された。国はいったいどこから米ドルを入手することができるのか?もちろん、米国からだ。現実世界の製品と引き換えに・・・。ペトロダラーは、無料の石油を得ることからはまったく別に、単に電子的に米ドルを「印刷」することによって米国が無限に高品質の輸入製品を無料で入手することを可能にした。それは、もっとも多様で、強欲で、貪欲な強盗男爵が描き得るもっとも野生的な空想さえをも遥かに超えており、想像を絶するような「富のあぶく銭列車」の一等車用チケットでもあった。もし米国が輸入品を無料で手に入れることができるならば、いったいなぜわざわざ国内産業に資金を投入するのか?なぜ彼らの工業生産をオフショア化しないのか?それこそがまさに米国が行ったことだ。
  • ペトロダラーのリサイクルには中東諸国からの過剰な石油利益を米国の債務証券/国債に投資することが含まれており、米ドル自体には本質的な価値がなかったにもかかわらず、法定通貨としての米ドルをさらに下支えした。米ドルの価値はこれらの米国の「資産」に投資した人々の自信に全面的に依存していた。それは保護下の金儲けに基づいた自信満々のトリックであった。これが、アメリカが外国からの貯蓄に裏打ちされた何兆ドルもの負債を積み上げることを、そして、世界中で800カ所以上もの米軍基地に資金を供給することを可能にしたのである。これはこの出資金詐欺の全体が崩壊した暁には決して返済されることがない負債なのだ。
  • しかし、すべては終わりとなる。このような米国の世界的寄生が機能し続けることを可能とする唯一の方法は「世界島」、すなわち、ユーラシアを服従させることであるとネオコンは信じている。プーチンと習主席を「政権転覆」させ、究極的にはユーラシア全土をバルカン化するために、各バナナ共和国は米国の傀儡独裁者によって「導かれる」のだ。この素敵な夢の「戦略」は使い古されたCIAの作戦書から全面的に派生したものである。そのような行動は何十年にもわたって、南米の事実上すべての国家に対して(「モンロー・ドクトリン」)、さらには、グローバル・サウス諸国に対して米国によって繰り返して課されてきた。米国のネオコン連中はユーラシアの服従はブレトン・ウッズ体制とペトロダラーの死体を復活させ、世界中の他の国々に対して連中の現実世界の貴重な商品や製品を米国に無料で注ぎ込み続けるよう強いる唯一の方法であると信じている。

「世界島を支配する者は世界を支配する」というマッキンダーの文言については多くのことが書かれており、ズビグニュー・ブレジンスキーが彼の著書「グランド・チェスボード」においてそれに共鳴し、それはディープステートを運営する米国のネオコンたちによって固執され続けてきた確かな感情である。これが靴下人形であるバイデンが、もっと具体的に言えば彼の側近たちが、バイデンの「選挙」以降、ウクライナと東シナ海で危険な対立を引き起こしてきた理由である。米国はその「砲艦外交」の歴史的ルーツに見られるように、過去に他の国々を虐め、遵守させようとして働いてきたが、今日では極超音速ミサイルを保有している国々に対しては機能せず、凶悪な野蛮さに立ち返ったのである。これらの米国の行動は一か八かの「ヘイル・メリー・パス」であり、失速しつつある単独覇権国の最後の絶望的な行為なのである。

上記の記述は米国の長期的な「大展望」を説明しているが、どちらかと言うとそれは「大妄想」と呼ぶべきものだ。米国の衰退の進捗状態や軍事的、工業的、経済的、社会的な中国・ロシアの台頭は止められないと考えると、米国が優勢になる見込みは皆無だ。米国が後退するか、世界的な核ハルマゲドンが起こるかのどちらかだ。中間はない。

道徳的にも倫理的にも単独で言えば唯一正しく、適切で、まともな行動は何かと考えると「例外主義者」が舞台から引き下がることだ。彼らは何世紀にもわたって大量虐殺、奴隷制、人種差別、外国での不正行為、そして、世界中の国々からの搾取を犯してきた米国に対しては世界の他の国々が復讐の欲求を持ってはいないことを幸運に思うべきであろう。しかしながら、グローバル・サウス諸国は彼ら自身の幸福にもっとも多く気を取られており、彼らは単に米国の腐敗した死体を無視するであろうし、彼らは実際に公正に行動し、実際の国連や国際法を遵守するパートナーとの「ウィンウィン」の相互作用についてのみ興味があり、米国の不正操作された「ルールに基づく秩序」については何の関心もないのである。

短期的および中期的な、より限定的な視点からはどう見えて来るのであろうか?ウクライナでの戦争から具体的な利益を得ることを望んでいた当事者はいったい誰だったのだろうか?通常考えられる容疑者としては、軍産複合体、米国の石油・天然ガス産業、そして、おそらくは米国の銀行/金融部門だ。

軍産複合体: 

米国の軍産複合体は永久戦争からどのように利益を得ているのであろうか?あらゆる合理的な説明を見ても、米国によるアフガニスタンの侵略と占領は惨めな失敗だった。しかし、米国は米史上では最長の戦争となる20年間、それに固執し続けた。なぜだろうか?軍産複合体にとっては巨大な臨時収入であったので、あたかもそれは贈り物が与え続けられたかのようであった。それは軍産複合体の幹部や軍産複合体のワシントンのロビイストのために多数の豪邸や豪華なヨットのための資金を提供してくれた。アフガニスタンの大失敗はどのように展開したのかについての正確な説明についてはこの文書の最後にある付録二を参照されたい。実際、アメリカの果てしない侵略と介入はすべてが軍産複合体に財政的に有利に働いて来たのである:

https://www.dropbox.com/s/nio185d72vkqkpc/ChannellingTrout_full_compressed.pdf?dl=0

今日、「何十億ドル」にも相当する米国の軍需品をウクライナに送り届けることは(その多くは時代遅れの代物であるが)、米軍産複合体にとっては巨大な財政的贈り物である。それは彼らが合法的には決して売ることができなかったものを有益に処分することができる唯一の方法なのだ。たとえその30%が行方不明になったとしても(例えば、ジャベリン・ミサイルはテロリストらが車のトランクを開けて売り捌く)、残りはロシア軍によって爆破されたとしても、それは問題ではない。もちろん、そのような時代遅れの兵器は新型装備と置き換える必要がある。米国の公的資金が投入される道路や鉄道、学校、医療、図書館、等々を代償にしながらも、これまで以上に多額の納税者のお金で賄われる米国の軍需品の在庫を補充するには極めて高額な値札が付けられた新型装備と置き換えることになる。

米国の石油・天然ガス産業:

「誰の仕業か」と題した前の記事では私はノルドストリームのパイプラインを爆破することは超高価な米国産液化天然ガス(LNG)をヨーロッパに輸出できる唯一の方法であると言った。米国産のフラッキングLNGはパイプでつながれたロシア産の従来の天然ガスよりもはるかに高価**であり、はるかに環境破壊的で、炭素排出量がはるかに多い。エネルギー源が異なると生産と流通において大きく異なる費用を負担しなければならない理由を理解するには、EROI (エネルギー投資効率)の概念、ならびに、抽出から処理、搬出、最終消費者への輸送に至るまで、さまざまなエネルギー源について完全なライフサイクルを理解することが不可欠となる。だが、そのような説明はこの記事の目的の範囲外だ。高EROIのエネルギー源は抽出と輸送が安価であると言うだけで十分であるが、低EROIのエネルギー源は抽出と輸送に費用がかかり、実際には財政的に純損失をもたらす可能性がある。フラッキング製法による米国のシェールオイルはまさにそのようなものなのである。どのような価格(1バレルあたり100ドル以上)であってさえも決して利益を生まず、これは出資金詐欺の典型的な例である。それは市場の傲慢さや露骨な詐欺、低金利の銀行融資、不適切な政府補助金、等を活用してブルドーザーのように推し進められた不幸なプロジェクトであった。そういった経済面での愚かさと詐欺はフラッキングされた米国のシェールガスの海外輸出にもあてはまる。それを液化するためのエネルギーの費用は高価なものとなること(約マイナス163°Cまで冷却)や、専門的に高度に熱遮蔽されたタンカー(現在、世界中で不足している)での輸送中にそれを冷蔵し続けるために必要となるエネルギーのコスト、この目的のために設計された輸出入ターミナル(まだ建設されてはいない)での専門的な取り扱いが必要となること、等のために数十億ドルもの投資を考慮に入れる前の段階であってさえも非経済的なのである。

米国は経済的に実行可能な石油と天然ガスの供給源をすべて枯渇させてしまい、残りのすべての供給源は悲惨なほどに低いEROIを見せている。したがって、採掘、処理、輸送に莫大なコストがかかる(エネルギー的にも、そして、価格的にも)。フラッキングシェールオイルは従来の原油のようなものではなく、塗料シンナーのようなAPI指数と揮発性を持っており、それを輸送する貨物列車は「爆弾列車」と称されている。産業界に不可欠な主力燃料であるディーゼル燃料をフラッキングシェールオイルから生産することはできない。

ロシアはカスピ海地域とともに全体的に石油生産のピークを過ぎ、EROIは低下している(ピークには至ってはいない油田は少ない。たとえば、カシャガン)。しかしながら、米国と比較すると、ユーラシアの石油・天然ガス源のEROIは遥かに高く、米国が経済的に競争することは不可能だ。米国は、今や、採掘が簡単で安価な石油を使い果たしているという事実こそが彼らが今シリアから石油を盗んでいる理由であり、イランの石油タンカー数隻をハイジャックした理由でもある。パイプライン・テロリズムは、戦争を挑発することが米国が時代遅れの古い兵器をヨーロッパに「売る」唯一の方法であったのと同じように、米国がヨーロッパに不経済なLNGを売ることができる唯一の方法であったのだ。汚ならしいトリックと卑劣な不正行為は米国の「自由市場」と「ルールに基づく秩序」がどのように機能しているのか、実際に、それが常にどのように機能してきたのかをよく示している。

米国の金融部門:

ロシアを制裁すればロシアを経済的に崩壊せしめ、プーチンに対するクーデターに拍車をかけるだろうというのが米国の麻薬に狂った連中の夢であった。だが、ロシアがエネルギー輸出に対してルーブル払いを要求したことからこの目標は見事に裏目となった。これによってルーブル通貨はすべての期待を超えて、高評価された。ロシアの化石燃料輸出を制裁したことはヨーロッパと世界の石油、特に、天然ガスの市場価格を急騰させ、ロシアにとっては莫大な財政的贈り物となり、今や、ロシアの外貨準備の3000億ドルを米国が窃盗したことによって引き起こされた損失の大部分を補っている。世界的な不確実性の時代において、多くの国々はこれまで債務不履行の際の「安全な避難所」として金融資産を米国財務省債券/証券に移動させ、これが米ドルの価値を浮かせ続けてきた。しかしながら、これらの国々は、今や、米国の「ルールに基づく秩序」によって自分たちの貯蓄がいつでも恣意的に盗まれてしまう可能性があることを認識したことから、自国の準備金を米ドルから他に移行する方法を考え出そうとしている。現在、欧州通貨は、ロシアに対する独自のエネルギー制裁の結果として自国経済に景気後退を引き起こし、米ドルに対して下落している。欧州の産業部門はエネルギー飢餓によって崩壊する寸前にある。一旦、BRICS+によって米ドルを迂回する通貨取り決めや金融システムが立ち上げられると、それが稼働した暁には米国債券や証券からは大量の資金が逃亡し、米ドルの大規模な本国への送還が起こるであろう。その結果、ハイパーインフレと米ドルの切り下げがもたらされ、輸入品を買う余裕はなくなる。米国の脱工業化の状態とともに、重要な国内製造業もなく、「例外的な国家」にとってはすべてが極度の貧困を物語っている。

まとめ:

ウクライナ戦争の恩恵を受けるかも知れないというアメリカの銀行/金融部門による当初の願望はせいぜい米ドルがこれまでのところ中立のままであることにつながったけれども、必然的に米ドルの加速的な崩壊につながるであろう。

結論: 

米国はどうしようもない状態にある。米国を乗り越えて行こう。

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脚注:

*経済における詐欺的な新自由主義とは対照的に、新古典派はFIREセクターのイデオロギー信奉者であるレオ・シュトラウス、ミルトン・フリードマン、フリードリッヒ・ハイエクへと「伝わって行く」。(訳注:FIREとはFinanceInsuranceReal Estateの頭文字から成っている。つまり、金融、保険、不動産のみっつの領域。)

**ドイツへのロシアのパイプライン天然ガスの当初の契約価格は、現在の市場価格約2000ドルに対して、1000立方メートルあたり280ドルであった(そして、EUは、現在、米国の国内天然ガスのコストの「わずか」67倍で米国のLNGを購入すると予測されている)。

https://www.tribuneindia.com/news/comment/a-war-russia-set-to-win-441926

EAB

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これで全文の仮訳が終了した。

ウクライナ戦争で得をするのは米国だと主張する見解は決して少なくはない。だが、素人である一般読者に対する具体的な説明においては、それらの多くの見解の中でこの引用記事は極めて秀逸であると思う。

パイプライン・テロリズムは、戦争を挑発することが米国が時代遅れの古い兵器をヨーロッパに売る唯一の方法であったのと同じように、米国がヨーロッパに不経済なLNGを売ることができる唯一の方法であったのだ」と著者は解説している。この部分は世界に君臨する覇権国は、その相手が同盟国(たとえば、EU)であったとしても、そこに住む住民の苦難については何も考えてはいない、そして、覇権国が考えることは自分たちの特権と利益を継続的に維持することだけに尽きる、ということを明確に示している。

この解説は実に秀逸である私は言いたい。

今思うと、「ウクライナ危機の本命はウクライナではない。本命はドイツだ」と看破したマイク・ウィットニーの主張が鮮やかに思い起こされる(注:詳細は219日の投稿をご覧ください)。大きな構図で物事を考えることの重要性が見事に実証されたと感じられる。

参照:

1Cui bono? The Big Picture: By Eric Arthur Blair, The Saker, Oct/18/2022

 

 


2 件のコメント:

  1. マクロンは米国内より4倍高い値段でガスを買わされていると不満を言っていましたが、ドイツもそうですが、自国民のことよりアメリカに従うことの方が優先なんですね。11月は中間選挙がありますので、その前に、またろくでもないことを仕掛けるのではないかと気がかりです。

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  2. Kiyoさま
    まったくその通りです!
    今や、かの国では「自分の党のためならば、自分の国のためならば何でもあり」という感じですよね。倫理的な制約なんて何もないかのようです。そういう意味では、選挙の前夜に選挙結果を大きく動かすような出来事をでっち上げることは十分に考えられます。何十年にもわたって周囲のことなど何も気にせずに様々なことを仕出かして来た国のことですから、考えただけでもゾッとします!

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