「MH17便を撃墜したのは地対空ミサイルだ」とか「地対空ミサイルを用いたのは反政府派か、それとも、ウクライナ軍か」といった議論に捕らわれている間にインターネット上には非常に興味深い記事が現れた。
旅客機を撃墜をしたのはミサイルではなく、ウクライナ軍のジェット戦闘機だとの意見がドイツの専門家から提出された[注1]。7月30日のことである。
また、墜落の現場へ最初に到着したOSCE(全欧安保協力機構)からの監視団の一員であるカナダ人のメンバーもコックピットの外壁に残された多数の穴は重機関銃で撃たれた跡であると述べている [注2]。
今日はこれらの記事の詳細を仮訳して、共有したいと思う。
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先ずはドイツ人の元パイロットが提示した内容は次の通りだ。
<引用開始>
Photo-1: コンドル航空のDC10機のコックピットに座る著者、Peter Haisenko
マレーシア航空MH17便の悲劇は依然として非常に捉えにくいままである。フライトレコーダは英国に引き渡され、解析作業が進行中である。いったい何が出てくるのだろうか?恐らくは、あなたが思っていること以上のことが出てくるのではないだろうか。コックピットの外壁の写真を見ると、ボイスレコーダが特に何を教えてくれるのか非常に興味深い。航空ビジネスにおける専門家のひとりとして、私はインターネット上で入手できる残骸の映像を詳しく観察した。
先ず最初に驚いた点がある。グーグルで検索できる残骸の画像が意外と少ないということだ。そして、画像のほとんどは解像度が低い。でも、例外がひとつあった。それはコックピットの操縦士側の窓の下側の部分だ。この画像は衝撃的だった。ワシントンでは、今、MH017便に関しては「潜在的に非常に悲惨な過失、あるいは、事故」といった見方を聞くことができる。このコックピットの画像を見せられても、私には驚きではなかった。
コックピット区域には発射物体(弾丸)が入った穴と出た穴とが…:
Photo-2: これらの写真はすべてがインターネットから。
上に示す写真をクリックすることをお勧めしたい。そうして貰えば、この写真について解像度がより高いPDFファイルをダウンロードすることが可能だ
[訳注:確かに高解像度の写真を入手できるので、試してみて下さい。かなり大きく拡大できるので、詳細を観察するには持って来いです]。そうして貰うと、ここで私が述べようとしていることを良く理解していただける筈だ。事実は明快で、憶測の域を超える。つまり、このコックピットは銃撃の跡を示しているのだ!弾丸が入って行った穴と出て来た穴とを見ることができる。穴の縁の一部は内側に曲がっている。これらの穴はより小さな穴で、丸くて、きれいだ。これらは弾丸が撃ち込まれた場所であって、恐らく、口径が30ミリの弾丸である。別の形状を示す穴はより大きく、僅かに外側に向かってほころびたような外観を呈している。金属がずたずたに引き裂かれているが、これは機内から出て来た弾丸によって形成されたことを示している。さらには、二重のアルミの板で補強された構造体の外側の板がちぎられて、曲がっている。外側へだ!また、小さな切れ目が観察されるが、皆外側へ曲がっている。これは「小破片」が強力な破壊力でコックピットの内側から外側の板を破って外へ飛び出して来たことを示している。板がはがされた後に残っているリベットの頭も外側に曲がっている。
入手可能な画像を入念に調査したところ、ひとつの事実が際立ってきた。つまり、機体は破片としてしか残されていない事実を除けば、コックピットよりも後方の部分の残骸はかなり完全な状態にある。コックピットの部分だけがこれらの特別な損傷を示している。これは調査官にひとつの貴重な手がかりを残すことになる。この機体の中央部はミサイルに撃たれたのではない。破壊はコックピット部分に限られている。ところで、機首の部分は特別に補強された構造になっていることを念頭に置かなければならない。どの航空機の場合でも、機首部分は大型の鳥が高速でぶつかった時の衝撃に耐えなければならないからだ。機体の二重のアルミ板の外側の板(外皮)について言うと、コックピット部分には残りの部分に比べて遥かに強度が高い、特別に厚いアルミ合金が用いられている。ロカビーで墜落したパンナム便のことを想い出す人もいることだろう。あの事故では、特別に強度の高い構造を持っていることから、ひとつの塊として墜落後にも原型を保っていたのはこの機種部分であった。MH017便の場合は、機体の内部で爆発が起こったことも極めて明らかとなる。
戦車を破壊するだけの威力を持った複合型弾丸:
Photo-3: 外皮に見られる弾丸の穴
いったい何が起こったのだろうか?ロシアは最近レーダーの記録を公開したが、それによると、少なくとも一機のウクライナ軍のSU25戦闘機がMH017便の近傍を飛行していた。これは今や行方が分からないスペイン人管制官「カルロス」が述べた内容、すなわち、MH017便の直ぐ近くを二機のウクライナ軍のSU25が飛行していたという報告と一致する。典型的なSU25戦闘機に装備される武器を調べてみると、次のような事実を学ぶことができる。この戦闘機にはニ連装の口径30ミリのGSh-302/AO-17A型機関砲が装備されている。250発の弾丸が入った弾倉が装着され、対戦車用の焼夷弾と「小破片」が爆発的に飛び散る弾丸とを交互に発射する。MH017便のコックピットは明らかに両側から銃撃された。コックピットの一部である同一の機体破片に弾丸が入って行った傷跡と出て来た傷跡の両方が見出されるからだ!
さて、一連の対戦車用の焼夷弾と小破片が爆発的に飛び散る弾丸とがコックピットに打ち込まれた場合いったいどういった状況が起こるのかについて考えてみよう。これらの弾丸は近代的な戦車を破壊するために設計されている。対戦車用の焼夷弾の一部はコックピットを横断し、弾丸の形は多少変形してはいるだろうが、コックピットの反対側に出て行った(航空関連の科学捜査専門家はキエフの軍部のコントロール下にある地域で地上に散らばった弾丸を見つけ出すことができるかも…)。結局、これらの弾丸は戦車の装甲版を貫通することができるように設計されている。また、小破片が爆発的に飛び散る弾丸の方は、数多くの小破片の衝撃によって、まさに設計通りに、コックピット内で大きな爆発を引き起こす。GSh-302機関砲の速射によって、非常に短い時間の間に、同機関砲はコックピット内で急速度で進展する爆発を引き起こす。これらは戦車を破壊するのに十分な威力を持っていることに留意されたい。
どんな「間違い」が実際に起こったのか?そして、いったい誰が間違いを起こしたのか?
Photo-4: 翼に見られる擦り傷
旅客機の内部は密閉され加圧された容器であることから、爆発が起こると機内の圧力は一気に上昇し、非常に極端な圧力に達する。場合によっては、破壊に繋がるようなレベルに達する。このような条件に対しては旅客機の強度は対応することができないから、ゴム風船のように瞬間的に爆発する。このことは一連の破壊現象を理解しやすく説明してくれる。もっともあり得そうな現象としては、結構大きな破片として残った機体の後部は異常に高まった機内圧力の下で強度がより小さい箇所から破壊を起こし、空中でバラバラになった。広範に広がっている残骸の画像と無残に破壊されたコックピットとは手袋の中の手のように相互に良く合致する。さらには、主翼の部分には擦り傷の跡が見られる。これは、とどのつまりは、コックピットに繋がるのだ。興味深いことには、私は弾丸によって何か所も撃ち抜かれたコックピットの断片の画像と擦り傷を負った主翼の画像 - 両者とも高解像度の画像 - が「グーグル画像」から撤去されてしまったことを後になって気が付いた。今や、煙をあげている、良く知られた画像を除いては、さらに多くの残骸の画像を実際に見つけようとしても、それはできない。
もしも「潜在的に悲惨な過失または事故」であると述べたワシントンからの声に耳を傾けようとするならば、最後に残る質問はここに演じられた「事故」はいったいどういった性格のものだったのかという点にある。私は憶測の域に長く留まっている積りは毛頭ないのだが、次の事柄についても注意を払うよう皆さんをお誘いしたい:MH017便の機体は三色のデザインでロシアの大統領専用機のデザインとよく似ている。プーチン大統領が搭乗していた専用機はあの当時マレーシア航空のMH017便の「近傍」を飛行していた。航空輸送業界では「近傍」という言葉は150~200マイル程度を指すものとして使用される。また、この文脈においては、「カラシニコフを使ってプーチンを撃ちたい」と述べたティモシェンコ女史の言葉も念頭に置くべきであろう。
でも、これはまったくの憶測である。しかし、マレーシア航空MH017便のコックピットへの銃撃は憶測ではない。
補足情報(2014年8月1日):
SU25戦闘機の到達可能な高度は7,000メートルであると繰り返して言及されてきた。だから、この戦闘機はMH017便を撃墜することは不可能だった、と言う。ウィキペデイアで答えを探してみると、次のような記述を確認することができる。もしもあなたが専門家用の書籍を紐解き、自分の知識を広げようとしさえすれば、あなたはまったく異なる情報を手にすることだろう:SU25戦闘機の最高到達可能高度は14,600メートルである。こちらで確認願いたい:
http://www.fliegerweb.com/militaer/flugzeuge/lexikon.php?show=lexikon-50
2014年の7月の始めまでウィキペデイアはSU25の最高到達高度は「約10,000メートル」としていた。英語版もドイツ語版もまったく同様だ。ところが、今は、7,000メートルに「改訂」されている。ウィキペデイアのデイスカッション・フォーラムでは正しい数値に関して議論が沸騰している。
W. Green著の「Flugzeuge der Welt」ハンドブック(1984版)は軍事用の「ジェーンズ・マニュアル」からデータを収録した標準的な書籍であるが(NATOの参照文献でもあった)、1984年にすでにSU25 (輸出用はSU25MK)の最高到達高度は10,670メートル(208頁)としている。その時点以降SU25の性能は改善された。
また、ここにカナダから参加しているOSCEのメンバーによる発言が掲載されているサイトがある。彼は最初に墜落現場を観察したひとりであり、残骸は重機関銃で銃撃された跡を示している:
http://www.youtube.com/watch?v=76PG9RQStFU#t=470
<引用終了>
SU25戦闘機の最高到達高度に関して日本語のウィキペデイアを見ると、「7,000メートル」と記載されている。上記に説明されているように、日本語版でも最近「改訂」されたのだろうか。
(1)現場の残骸の一部の写真が撤去された。(2)マレーシア航空の旅客機の近傍をウクライナ空軍の戦闘機が追尾していたとの地元の目撃者の話を伝えたBBCロシア支局のオルガ・イヴシナが伝えた「BBCビデオ・リポート」は掲載の数日後に撤去された。(3)SU25戦闘機の最高到達高度に関するウィキペデイアの記述内容が最近改訂された。これらみっつの事象は個々に見るとそれとは分かりにくいが、これらを並べてみると、その背景には「情報隠し」という共通した具体的な意図が見えてくるような気がする。
また、上記の記事の最高に面白い点はこのMH17便の撃墜に関しては科学的な、あるいは、客観的な捜査を行うことが如何に大切であるかということを改めて教えてくれていることだ。
もしもこの墜落事故が米露間の地政学的綱引きゲームによって影響されなかったとしたら、あるいは、欧米のメデイア・マシーンによる偏見に満ちたゴリ押しがなかったならば、今頃は旅客機のコックピットを貫通して地上に落下していったSU25戦闘機由来の機関銃の弾は、キエフ政府によって隠ぺいされることもなく、何個も見つかっているのではないだろうか。
客観的な捜査の重要さは最初から分かっていたことではあるが、真相の追及は利害関係者間の政治的な駆け引きによってすっかり翻弄されてしまっている。まだ発表されてはいないブラックボックスの解析結果が果たして正当に取り扱われるのだろうかとの懸念は一向に消えようとはしない。
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8月7日のクアラルンプール発の記事 [注2] には米露間の地政学的綱引きには直接影響を受けない立場にある専門家の言葉が報道されている。これは上記のドイツの元パイロット氏の指摘と並んで重要な発言であると思う。
<引用開始>
…パリー [訳注:これは調査報道で有名なロバート・パリーのことを指しているのだと思われます]
は7月29日にカナダのテレビ局CBCがマイケル・ボーチュルキ [訳注:スペルはBociurkiwだが、その発音が正確には分かりません] 氏に対して行ったインタビューを参照している。彼は全欧安保協力機構(OSCE)の調査専門家としてはドネツクに近い墜落現場に最初に到着した。ボーチュルキ はウクライナ系のカナダ人でOSCEに派遣されている。彼は同僚と共にMH17便の撃墜後に残骸が散らばる現場へ入った最初の国際監視団のひとりである。
CBCのインタビューでは、ビデオに現れるリポーターは先ずこう説明した。「OSCEからの小さなチームが現場へ到着した時、残骸はまだくすぶっていました。もう何日にもなりますが、国際機関からは他には誰もまだ現地入りはしていません。」
「機関銃で撃たれたと思われるような、かなり、かなり強力な機関銃で銃撃された痕跡を示しています。そういった機体の破片が2~3個ありました」と、彼はインタビューで述べた。
「このボーチュルキ の証言はまったくの処女地のような誰も喋ったこともない証言であって、このような証言は今後も入手できるかどうかは分からない。ロシア、英国、ウクライナ、等の政府によるブラックボックスの解析はまだまだ長い時間がかかり、そのレースにはそれぞれの政府が自分の馬を走らせている。それとはまったく違って、ボーチュルキの証言は生のままであり、利害関係者からは独立しており、彼は初期の段階に物理的な証拠に近づくことができた二人の目撃者のうちのひとりだ」とパリーは述べた。
「あれは強力な、専門家らしい証言だ。後からやって来るOSCEの残りのチームのために現地の人たちと交渉を行っていたことから、ボーチュルキは現場へ早く到着した」とパリーは言う…
<引用終了>
MH17便が機銃で撃たれたと指摘するふたつの独立した情報源からの話をここに引用した。それぞれが説得力があり、貴重な情報であると思う。
また、上記に簡単に触れたけれども、三つ目の報告も存在する。地元の住民から入手した目撃談を収録したBBCロシア支局のオルガ・イヴシナ記者による「BBCビデオ・リポート」だ。これもウクライナ軍の戦闘機がMH17便の撃墜に関与していたことを示唆している。実に貴重な報告であるが、BBCビデオ・リポートそのものはすでに撤去されてしまった。しかしながら、そのビデオの一字一句を収録した記録はインターネット上で今でも入手可能だ [注3]。
MH17便が墜落した真の理由はいったい何だったのかという問いかけについては、今までの私のブログでは、地対空ミサイル、空対空ミサイル、戦闘機による銃撃といったさまざまな説明を掲載して来た。
欧米の大手メデイアが一般大衆に押し付けようとする筋書きとは別個に、われわれとしては、個人として、いったいどの説が真実であるのかをこの際じっくりと究明してみたいと思う。そのために必要な情報はインターネット上には山ほどもあるのだから。
主だった筋書きが出揃ったと思われる今、ブラックボックスの解析結果を待つしかない…
少なくとも、米国政府の姿勢は地対空「ブク」ミサイル説を捨てて、ウクライナ軍の戦闘機による撃墜に移行しつつあるようだ。親露派ならびにロシア、さらには、プーチン大統領に責任をなすりつけるべく大々的な宣伝戦を展開してみたけれども、真相を語る証拠の前にはどうしようもなかったということのようだ。
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MH17便が撃墜された直後から、まさに7月17日の当日から、米国・キエフ・NATO・EU枢軸ならびにその主要メデイアは政治的な宣伝戦に突入し、「撃墜したのは親露派の分離主義者だ」、「ロシアが支援した」、「プーチンは大悪党だ」という大合唱を始めた。
その背後では証拠の隠ぺいも進められていた。
それに加えて、ロシアに対する経済制裁が発動された。ロシア側は、それに対抗して、EUからの食料品の輸入を停止するとの対抗措置を最近発表した。欧米による経済制裁によってロシアが経済的な打撃を受けるばかりではなく、EU各国もこれによって大きな経済的打撃を受けることが明白になって来た。そうでなくても、経済の持ち直しが非常に微弱であったEU圏においては、昨今の不安定な国際政治の中、同圏内では経済規模が三番目に大きいイタリアがマイナス成長に陥ったとの報告がある。
ロシア政府は、当初、欧米がロシアに対してチラつかせていた経済制裁はブーメランとなって経済制裁を仕掛けた側にも悪影響を与えることになる…と言って牽制をしていた。この予告が、今、現実のものとなって現れようとしている。ヨーロッパ各国の政府は今狼狽しているに違いない。
ロシアとNATO間の戦争はウクライナを戦場とした局地戦から全面戦争に発展する可能性を秘めている。その全面戦争は、遅かれ早かれ、米露間の核戦争となる。そうなったら、地球上の生物はすべてが絶滅する。
核戦争を避ける鍵を握っているのはNATOのお膝元にいるEU諸国の市民だ。
ガザ地区でイスラエル軍が繰り広げている人間性を否定するような一般市民に対する暴力に抗議して、多くの市民が街頭デモに参加している。イエメン、ダブリン、ロンドン、ニューヨーク、モントリオール、マスカット、ザグレブ、バルセロナ、アルジェ、東京、ベルリン、シカゴ、エクアドル、カラカス、クアラルンプール、オタワ、マルタ、アイルランド、モンテビデオ、アムステルダム、テキサス州のオースチン、ワシントンDC、チリ、ブリュッセル、カラチ、ニコシア、ワルシャワ、香港で…まさに世界各地でデモが展開されている。
これと同じようにEU圏の市民の英知や良心を大きな声として政治に反映させなければならない。それに期待するしかないのではないか。
参照:
注1: Shocking Analysis of the ’Shooting Down’of Malaysian
MH17: By Peter Haisenko, Jul/30/2014, www.anderweltonline.com/.../shocking-analysis-of-shooti...
注2:MH17:
Pockmarks look like from very, very heavy machine gun fire, says first OSCE
monitor on-scene: By Haris Hussain,
New Straight Times ONLINE, Aug/07/2014, www.nst.com.my/node/20961
注3: Deleted BBC Report: Ukrainian Fighter Jet Shot Down
MH17, Donetsk Eyewitnesses: By Global Research News, Jul/27/2014,
www,globalresearch.ca/deleted-bbc-report-ukrainian-figter-je…
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