中国では新型コロナウィルスの大流行は収束が宣言され、経済活動が徐々に復帰しつつある。当面は、第二波に見舞われるのかどうかが最大の関心事だ。日本では全国規模の非常事態宣言が出されて、都市封鎖はないものの、これから規制がさらに厳しくなりそうだ。欧米ではようやく大流行が峠を超しそうな気配で、都市封鎖の解除をどのように進めるべきかに関する議論が盛り上がっている。大打撃を受けたイタリアやスペイン、ならびに、米国やカナダは今一息ついているに違いない。
さまざまな情報が行き交う中で、「ラボで人工的に作り出されたのでもなく、海鮮卸売市場からでもないとすると?Covid-19ウィルスの感染は何ヵ月も前から始まっており、武漢から始まったわけではないとケンブリッジ大学による研究が指摘」と題された記事が先日、4月18日に発表された。(原題:Neither
‘lab’ nor ‘wet market’? Covid-19 outbreak started months
EARLIER and NOT in Wuhan, indicates ongoing Cambridge
study:Apr/18/2020,
https://on.rt.com/af5e)
この表題が示しているように、これは新たに発表された文献についての記事であって、今まで多くの主要メディアが喧伝してきた武漢の華南海鮮卸売市場で動物から人への感染が飛び移ったとする説、あるいは、武漢にある生物兵器研究所から漏洩したことから感染が始まったとする説を覆して、まったく別の展開があった可能性を示唆している。この研究は数多くの感染者からサンプリングされた個々のウィルスの遺伝子を系統発生学的に突然変異の前後関係および類縁関係を示したものである。
文献に掲載された系統発生ネットワークの図を下記に示す。文献の内容を概要すると、次のような具合だ。
この系統発生ネットワークはウィルスの変異株の相互関係や前後関係を示す。世界中の研究者から寄せられたデータ(GISAIDデータベースには253人のデータが収録されているが、ここでは完全なゲノムだけを取り出し、160例が解析に供された)を系統発生ネットワーク上で配列してみると、これらの変異株は三つの大きなグループになる。A、BおよびC。A型とC型は東アジア以外、つまり、ヨーロッパ人とアメリカ人の間にかなりの割合で見られる。B型は東アジアで最も一般的に見られる。これらの三つのグループの中では、コウモリが宿主となっているコロナウィルスの遺伝子から判断するとA型がすべての型の祖先である。
Photo-1
「このウィルスは数か月前に最終的に人の体内に寄生することができる形に突然変異していたが、コウモリや他の動物の体内に、あるいは、人の体内に何ヵ月も留まっており、他の人には感染しなかった」と、研究者のピーター・フォースターが述べている。その後、ウィルスは9月13日から12月7日にかけて感染を繰り返し、周囲へ広がって行った。
この研究成果の中で特に重要な点は新型コロナウィルスの人から人への感染は去年の9月13日に始まったとする見解ではないだろうか?しかも、その場所は武漢ではなく、中国の南部であると言う(注:他の文献によると、)。
もう1点は研究者が「これらの変異株は三つの大きなグループになる。A、BおよびC。A型とC型は東アジア以外、つまり、ヨーロッパ人とアメリカ人の間にかなりの割合で見られる。B型は東アジアで最も一般的に見られる。これらの三つのグループの中では、コウモリが宿主となっているコロナウィルスの遺伝子から判断するとA型がすべての型の祖先である」と述べている点だ。つまり、中国や東アジアでもっとも一般的に検出されるウィルスはB型に属し、B型の祖先であるA型ならびにC型はヨーロッパ人やアメリカ人の間で多くみられる。
この系統発生ネットワークから言える内容と新型コロナウィルスの大流行については中国が責任をとらなければならないと主張する政治家の文言との間の整合性はいったいどのように説明するのだろうか?私には分からない。
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1月末に遡ると、日本の国立感染症研究所による研究成果が公開された。新型コロナウィルスの正体は日本の国立感染症研究所で電子顕微鏡による撮影によって暴かれた。その写真は2020年1月31日に公開された。
Photo-2:新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真。球状の粒子の表面にとげのような
スパイクたんぱく質がある(日本の国立感染症研究所提供)【時事通信社】
その写真と同時に、国立感染症研究所は下記のような説明も付記している:
国立感染症研究所ウイルス第三部で、新型コロナウイルスの分離に成功しました。使用した細胞はVeroE6/TMPRSS2細胞(TMPRSS2というプロテアーゼを発現している)です。臨床検体を接種後、細胞の形状変化を観察し、多核巨細胞の出現を捉えました。細胞上清中のウイルスゲノムを抽出して、ほぼ全長のウイルスゲノムの配列を確定しました。これは、最初に発表されたウイルスの遺伝子配列と99.9%の相同性がありました。分離したウイルスを用いて、ウイルス感染機構及び病原性の解析、ウイルス検査法・抗ウイルス薬・ワクチンなどの開発を進める予定です。また、新型コロナウイルス対策に役立てるため、ウイルスと細胞は国内外に広く配布する予定です。(出典:NIID国立感染症研究所>画像・映像アーカイブ>国立感染症研究所で分離に成功した新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真)
国立感染症研究所がVeroE6/TMPRSS2細胞から分離に成功しコロナウィルスは、上述の系統発生ネットワークでは、おそらく、B型に属するのであろうが、いったいどこにプロットされているのかは分からない。同ウィルスは最初に発表されたウイルスの遺伝子配列(つまり、中国が発表した遺伝子配列)と99.9%の相同性があると言う。99.9%の相同性は中国で流行した変異株とかなり近いものであると判断されるが、その判断がどれだけ妥当であるのかについては専門家の説明を待たなければならない。
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ここで、さらに2015年に遡ってみよう。
その年の11月16日に「ラボで作られたコロナウィルスが議論を呼んでいる」と題された記事が出版された(原題:Lab-Made
Coronavirus Triggers Debate: By Jef Akst, TheScientist, Nov/16/2015)。
その全文を仮訳して、下記に読者の皆さんと共有しようと思う。
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副題:SARSウィルス様のキメラ・ウィルスの作成は科学者らの間に「機能獲得」に関する研究開発について議論を引き起こした。(訳注:「機能獲得」とは微生物に自然の機能とは異なる新たな機能を獲得させることを意味し、これは生物兵器の開発においてはもっとも基礎的な段階である。)
更新情報(Mar/11/2020):
ソーシャルメディアやニュースサイト上ではCOVID-19の大流行の原因となったコロナウィルスは研究所から漏洩したものであるとの説が流れた。しかし、SARS-CoV-2
ウィルスが研究所から外部へ漏洩したという証拠はないと科学者らは言っている。
ノースカロライナ州のチャペル・ヒルにあるノースカロライナ大学の感染症に関する研究者であるラルフ・バーリックは先週(11月9日)彼の研究チームがSHC014
ウィルスの表面タンパク質を持ったウィルスの作成に関する研究を発表した。SHC014
ウィルスとは中国に生息するキクガシラコウモリから検出されたウィルスであって、人の間で起こるSARSとよく似た症状をマウスに引き起こす病原体である。ネイチャーメディシン誌に発表された同チームの研究成果によると、このハイブリッド化されたウィルスはヒトやマウスの呼吸器系の細胞に感染する。
この研究結果によると、SHC014
ウィルスの表面にあるタンパク質が人の細胞に結合し、感染する能力はこのウィルス、あるいは、コウモリから検出される他のウィルスは、中間宿主の存在がなくても、人への感染を引き起こす能力を持っていることを示唆するものである、とネーチャー誌が報告している。それと同時に、機能獲得に関する研究開発と称されるこの種の研究は正当化されるのか否かという論争にこの情報が再度火を付けることになった。「もしもこの新たに作成されたウィルスが漏洩したとしたら、その結果は誰も予測し得ない」と、パリにあるパスツール研究所のサイモン・ウェイン・ホブソンがネーチャー誌に語った。
2013年10月、米政府は連邦政府が資金を提供した機能獲得に関するすべての研究を中断させた。その理由は、特に、インフルエンザやSARS、MERSの流行を懸念したからである。「国立衛生研究所(NIH)はそういった研究に資金を提供していた。彼らの主眼点は人と病原体との間に起こる相互作用における基本的な特性を知り、起こるかも知れない感染症の大流行についてその可能性を評価することを可能にし、一般大衆の公衆衛生や準備の取り組み方について情報を与えることにある」と当時NIH長官を務めていたフランシス・コリンズが述べている。「しかしながら、これらの研究はバイオセーフティーやバイオセキュリティーの分野に新たなリスクを与えるので、もっと十分な理解を必要とする。」
SHC014コウモリに由来するキメラ・コロナウィルスに関するバーリックの研究は研究中止が宣言される前にすでに開始されていた。しかし、NIHは審査のプロセスにおいてこの研究の続行を許可した。その後、この研究は新たに決められた制約の範疇には入らないと結論付けられた、とバーリックはネーチャーに語っている。しかしながら、ウェイン・ホブソンを始めとする研究者らはこの決定に同意してはいない。
この論争はこの研究成果が如何に豊富な情報を与えるてくれるものであるかという点にまで発展した。「この研究の成果はウィルスを作り出すという点だけだ」とラトガース大学の分子生物学およびバイオディフェンスの専門家であるリチャード・エブライトがネーチャー誌に語っている。
しかし、バーリックや他の研究者はこの研究の重要性を主張した。「この研究成果はこのウィルスを感染症の病原体としての候補者の地位から明白に生命に危険を与える存在へと押し上げてしまった」と、エコヘルス・アライアンスの理事長を務めるピーター・ダスザクがネーチャー誌に述べた。彼の団体は世界中の感染症のホットスポットに出かけて、動物や地域住民からウィルスのサンプルを収集している。
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引用文書の全訳はこれで終わった。
トランプ大統領は新型コロナウィルスをあえて「武漢ウィルス」と呼んだり、「中国ウィルス」と呼んで、中国叩きの道具にしており、米国のある上院議員は中国は全世界に引き起こした損害に責任をとらなければならないとまで主張している。これらはすべてが本年11月の米大統領選に向けた国内政治のための戦術であると思われる。しかしながら、上記の情報や他の多くの情報を大きな構図にまとめて全体像を俯瞰すると、中国の責任を云々する前に、究極の責任の所在は米国の研究者ら、特に、ノースカロライナ大学の研究に起源を発しているのではないかとさえ推測されるのである。
もちろん、私はその方面の専門家ではない。したがって、断言は出来ない。しかしながら、歴史を見ると、この世の中には真相が報道されないままに放置されている出来事や大事件は山ほど存在する。そのことを念頭に置くと、今、その歴史が繰り返されているのかも知れないとさえ思える。
これほどまでに全世界を震撼させ、しかも、今ようやく峠を越したかどうかが議論されている新型コロナウィルスのことだ。誰もが真相を知りたいと思っているに違いない。
40年近く経過しても依然としてその正体が掴めず、決定的なワクチンの製造がままならないエイズの轍を踏まないで欲しいと私は思う。たとえば、「HIVワクチンへの期待しぼむ 臨床試験で効果みられず」(ミシェル・ロバーツ健康担当編集長、BBCニュースオンライン、2020年02月4日)を参照していただきたい。新型コロナウィルスについては、今後数多くの科学的知見が報道されることであろう。遅かれ早かれ、上述の推論と比べると精度がすこぶる高い結論が導き出されるであろう。
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ここで、最近の別の記事についても注目しておこうと思う。
「新型コロナウィルスは生物兵器か?」と題された今年の3月24日の記事である(原題:Is
the recent corona virus, COVID-19 a biological weapon? 著者はPeter
Bianco)。これはノースカロライナ大学と中国との関係を報じている。
それによると、
♦
世界中の学術研究所や政府の研究所は致死性のウィルスを扱っている。コロナウィルスも含まれ、致死性がより高い開発プロセスは「機能獲得」と称せられている。
♦ 中国ではこの種の研究を行うことができるのは武漢の研究所だけである。
♦
2015年にノースカロライナ大学の研究者は中国の武漢からやってきた研究者らと一緒に仕事をしていた。機能獲得の研究も含まれていた。
♦
ボイル教授は「機能獲得」という用語は攻撃用の生物兵器のことを指すと述べている。
♦
米国では、国立衛生研究所(NIH)、疾病対策センター(CDC)、および、トニー・ファウチが率いる国立アレルギー感染病研究所(NIAID)がナチに由来するこの生物兵器の技術開発に資金提供を行っている。
これらの開発研究は科学者や米政府高官らによって危険視されたことから、米国は機能獲得の研究を2014年に中断した。
♦
COVID-19ウィルスの出処がどこであろうともそれには関係なく、機能獲得の研究は誰にとっても安全上の脅威となる。
これらの研究に従事する研究所からは致死的な生物兵器の漏洩が起こるので、これらの研究所は閉鎖しなければならない。
最近のコロナウィルス、
COVID-19は生物兵器だろうか?
フランシス・A・ボイル教授はその通りだと言う。彼はイリノイ大学法学部で国際法の教授を務めており、「生物兵器とテロリズム/Biowarfare
and
Terrorism」と題された書籍を著している。ボイル教授が起草した生物兵器条約の条文は米国の上下院において全会一致で可決され、ジョージ・ブッシュ(シニア)大統領によって施行された。
メディアはこのウィルスは中国の武漢から発生したものであると報じた。
ボイル教授はその「決定的な証拠」は3人のフランス人研究者とモントリオールからの研究者が共同研究を行い、2020年2月10日に出版された「アンタイヴァイラル・リサーチ」誌にて発表した研究にあると言う。武漢コロナウィルスに関する遺伝子解析を行った結果、本ウィルスの特徴は、他のコロナウィルスと比較して、人の集団の中へ容易に拡散することができる機能を獲得している点にあると著者らは述べている。
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現時点で言えることは、武漢の研究所からウィルスが漏洩したとする説、新型コロナウィルスは人工的に作られた生物兵器だとする説、中国が新型コロナウィルスの大流行に関しては責任をとらなければならないとする説、等がある。それらのどれを取り上げてみても賛成論と否定論とが混在しており、どちらが真実を語っているのかを断定することは専門家にとってさえも決して易しくはないように思える。さらに多くの、幅広い研究成果が必要だと思う。
本テーマについては何回も再訪する必要がありそうだ・・・
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