2021年11月26日金曜日

コロナ禍を活用し、前代未聞な程にまで人々の権利を剥奪した政治家がまたもや強権を発動

 

PCR検査による擬陽性者を感染者と称し、増加する一方の感染者数を毎日報道することによって一般大衆に危機感を煽り、都市閉鎖を宣言し、安全性が十分に確認されてはいないmRNAワクチンの接種の必要性を喧伝した。こうして、多くの人たちは職を失った。都市閉鎖の中では職場にも行けず、長期間にわたって自宅に留まることを余儀なくされ、運動不足や欲求不満、等、精神的な面で大きな荷を背負い込んでいる人が多いようだ。今、ヨーロッパではワクチンパスポートの施行が一部で開始されている。その結果、国内政治は分断され、状況はますます危機的なものへと変わりつつある。強圧的なコロナ禍対策が長く継続され、誰もが辟易としている。

政府や大手メディア、SNSを運営するハイテック企業、ワクチンの製造に関与する製薬企業はどこもがひとつの巨大なプロパガンダマシーンと化したかのようである。新型コロナ用ワクチンの供給は医学・薬学分野の皆さんの日頃の努力の賜であるとも言えるが、長期的な安全性を十分に確認せずに「緊急使用」という隠れ蓑の下で世界規模での使用に踏み切った事実は素人目にさえもグローバル化した利益の追求が巧妙に隠されていることを感じさせる。

ハムレットは「このデンマークという国では何かが腐っている」と言った。そして、21世紀の今、現代人は「多くの政治家や巨大企業はすっかり腐っている」と日頃の専制主義的なコロナ禍対策についての印象を口にしたとしても決して不思議ではない。

ここに「コロナ禍を活用し、前代未聞な程にまで人々の権利を剥奪した政治家がまたもや強権を発動」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

医療に関する課題や対応策が政治家によって政治化され、先鋭な議論が進められ、国内は分断される。そういった動きが政治家の間で急速に広がり、一国に留まらず、他国へも広がって行く。一部の政治家は他の誰よりも先鋭化した施策を持ち出し、それを実践することがリベラリストとしての政治家の使命であるかのように振る舞っている。そんな先鋭化する一方の政治家の事例をチェックしておきたい。

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Photo-1:  オーストラリアのメルボルンで20211116日に州議会の正面階段にまで迫った反政府デモの参加者たち。© Getty Images / Daniel Pockett; (inset) Daniel Andrews. © AFP / MARK PETERSON

オーストラリアのビクトリア州ではダン・アンドリュース州首相が新型コロナ対策として専制的な規制を新たに導入しようとしたが、その試みはまさに能力不足を露呈し、人々の自由を無視した策として見なされ、コロナウィルスに対して発動された間違いだらけの策としてはもっとも最近の事例となった。

新型コロナウィルスの大流行は、過去の2年間、西側の多くの自由主義国家において政治危機を次々と引き起こして来た。そういった危機に対処することに失敗した指導者は選挙民から過酷な罰を課されることになった。

異論があるかも知れないが、それはドナルド・トランプが再選されなかった主要な理由でもあり、オーストラリアではワクチン接種を展開する際の不手際からスコット・モリソン首相は次回の選挙では敗退に直面するかも知れない。

新型コロナの大流行に首尾よく対処した政治家であってさえも都市閉鎖やその他の規制に辟易としている選挙民からの厳しい反発に立ち向かわざるを得なくなった。ほとんどの国で都市閉鎖が解除され、規制が取り払われた今でさえも、ワクチンは強制すべきものなのかどうかに関しては政治的分断が続き、論争が起こっている。

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コロナ禍による大衆行動は多くの場合暴力化し易いが、西側諸国においてはそういった状況が依然として普通に観察されている。

政治家たちにとっては、たとえどんな説得を試みようとしても、市民を防護する行為を進めながら、それと同時にこれが必然的にもたらす基本的権利の侵害を抑制することと上手くバランスさせることは並外れて困難な仕事である。

オーストラリアにおいては、新型コロナを巡る苦い政治論争はビクトリア州でもっとも劇的に、かつ、暴力的に進行した。同州は労働党出身の現職の首相を務めるダン・アンドリュース「議長」がかっては「オーストラリアではもっとも進歩的な州」として誇っていた程の州である。

これらの論争は「ダン議長」によって最近ビクトリア州議会に導入された新たな「パンデミック法」は猛烈な反対を受け、通りでは劇的なデモに発展し、今週、その頂点に達した。多分、驚くほどのものではないのかも知れないが、社会的不公正や偏見、人種差別といった事柄については極めて「ウォークな」姿勢を貫いているアンドリュース首相が市民らの人権がまたもやないがしろにされると主張する人たちの言動によって立ち往生し、身動きさえもできなくなったことは皮肉そのものである。

ビクトリア州政府の新型コロナの大流行に対する取り組みは最初から酷い不能振りを露呈し、市民の権利を無残なまでに無視しているとして酷評されて来た。同州では昨年の後半における新型コロナの第二波で800人もの死者と数千人の感染者をもたらしたのはアンドリュース州政府による犯罪的で、欠陥だらけの隔離政策のせいであった。

「ダン議長」は、この惨事については誰も責任はないとの結論を下すに至った従順な調査団を組織し、調査を開始させることによって、手際よく対応すれば回避することが出来たかも知れない大失敗に対処しようとしたのである。

専制的な都市閉鎖や規制がビクトリア州では何か月も続き、州都メルボルンは世界でもっとも徹底した都市閉鎖を行った都市として知られ、ビクトリア州警察の高圧的な振る舞いは世界中から非難を浴びた。

「ダン議長」はビクトリア州議会を実質的に閉鎖し、過去12か月間にわたって断続的に機能させただけであった。この期間、暴力的な反政府デモは定常的に起こった。先月、ビクトリア州では二回接種の率が80%に達し、「ダン議長」は都市閉鎖を解除し、規制を緩和し始めた。これに同調して、クリスマス前にオーストラリアの国境を開放し、海外からの旅行客が同国へ自由に入国できるよう計らった。

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責任を重んじる政治家は誰もが、このような状況においては、新型コロナの大流行に関して最後に抱く考えは弾圧的な法制化を広範に適用することだと誰もが考えることであろう。

だが、それは「ダン議長」が専制的なやり方でビクトリア州の市民をコントロール下に収めようとした彼自身の制御不能な衝動を無視することに繋がってしまうかも知れない。先月、アンドリュース首相はビクトリア州議会へ「公衆衛生と福祉に関する2021年の修正(パンデミック・マネジメント)」というオーウェル的な表題を冠した法案を導入した。この法案は下院の多数を占める労働党によって速やかに承認された。

本法案は12月に期限切れとなる既存の緊急事態法にとって代わるものであって、パンデミックや健康に関して幅広い事項を布告する権限を(今までは州のチーフ保健担当官の管轄であったが)州首相と保健相に付与しようとするものである。

この法案のオリジナル版は市民を無期限に拘束するすることを許容し、裁判所へ上訴する権利はなしというものであった。健康に関する指令に従わない者は最高で90,500豪ドル(訳注:1豪ドルを83円とすると、約750万円相当)の罰金を科せられる可能性があるが、本法案には議会や司法による適切な監督が備えられてはいない。

本法案は民主主義や法の支配に対する攻撃であるとして弁護士協会や人権擁護団体、ビクトリア州の反対政党からの非難に曝されている。

さらに重要な点としては、これはビクトリア州議会周辺で激しい抗議行動を引き起こしたこと、ならびに、首相や他の政治家に対して殺しの脅迫が出回ったことである。抗議行動に参加する人々の間には死刑台や首吊り用のロープまでもが駆り出され、「アンドリュースに死を」、「アンドリュースを首吊りに」といった掛け声が沸き起こった。

「ダン議長」は彼流の典型的なやり方を用いてこれに応えた。「私は阻まれはしない」と言い、抗議デモの参加者たちは狂犬と化した極右の「小さな、汚らしい奴らだ」との性格付けをした。

この法案は今週ビクトリア州議会の上院で審議される予定である。本法案を新法として通過させるにはアンドリュースの政府は無党派として独立している議員の支持を必要とする。かっては上院労働党のメンバーであったが汚職を行ったことで党から追放され、独立した議員となっている人物は水曜日(1124日)にはこの法案に反対するであろうと予測される。 

現状を見ると、この法案は通過しそうにはなく、審議は中断。本法案は当面棚ざらしのままだ。  

ビクトリア州はいったいどうしてこのような悲惨で、かつ、困難な状況に至ったのであろうか?同州はまさに修復のしようもないような分断と混乱に陥っていることをこの状況は示している。そして、このような状況は米国の政治を性格付けるものでもある。恐らく、その答えはいわゆる「進歩派」と言われているアンドリュース政権の性格に見出すことができるであろう。

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同政権は伝統的な意味における労働党による政府ではなく、従来の基盤であった労働者の関心を長く無視してきた。伝統的な意味においては同党は純粋な意味で「進歩的」であるというわけではない。西側の民主主義国家のほとんどを支配するグローバルなエリート層の関心を排他的に推進する政権であって、それらのエリートたちが固執する「ウォークな」イデオロギーを実践することに熱狂的に身を捧げているのである。

この点に関しては、同政権は米国の民主党と非常に良く似ており、その振る舞いはまったく同様だ。米国のグローバルなエリート層や民主党員は同国の分断をもたらし、アンドリュース首相もまたビクトリア州で同じ轍を踏んだのである。

米国の場合とは違って、ビクトリア州においてはこの分断の過程は最初から存在していたものであって、それを予見する兆候はすでに見えていた。ビクトリア州の分断は深い。経済的にも、政治的にも、そして、イデオロギー的にも。たとえば、いわゆる「カルチャー戦争」はビクトリア州ではとりわけ憎しみを持って戦いが行われて来たのである。 

保守派の反政府政党はまったく機能してはいない。これらの政党は最近アンドリュース政権から圧倒的な政治的影響力に曝されて、他の州に比べるとより包括的に彼らの政策の実現を許してしまった。「ダン議長」に反対するビクトリア州民の多くは抗議行動という具体策(さまざまな策の中である種の策は特に暴力的で、過激であり、筋が通らなないものであった)を取らざるを得なかった。なぜならば、彼らの見解を受け入れる、あるいは、彼らの見解に譲歩するにはアンドリュース政権を余りにも徹底して拒み過ぎていたからである。

アンドリュースに反対する人たちに対して政治的な声を挙げるトランプ的な政治家はまだ誰も現れてはいない。そのような人物が出現するにはまさにトランプが共和党を手中に収めた時と同じような抜本的な政治の再編成が必要となろう。そして、そのような将来像はビクトリア州においては現時点での政治という風景の中にはまだ何も見えては来ない。

この法案が新法になろうがなるまいが、現状においては専制的なパンデミック法案を通過させようとする「ダン議長」によって生み出された現時点での政治危機は厳しくなる一方である。不幸なことには、ビクトリア州民は、当面、反政府抗議行動や政治の機能喪失にもっと頻繁に見舞われるに違いない。

注:この記事に述べられている発言や見解、意見はあくまでも著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見ではありません。

著者のプロフィール:グラハム・フライスはオーストラリアのジャーナリストであって、以前はメディア界の弁護士であった。彼の記事はThe AustralianThe Sydney Morning HeraldThe AgeThe Sunday MailThe SpectatorおよびQuadrantから出版されている。

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これで全文の仮訳が終了した。

選挙によって選出された国家や州の首長は何処まで信任を与えられたのかを時には見誤ることがあるようだ。そこには暴走の姿が見られる。特に政治危機に陥った時には極めて顕著なものとなる。何処かで方向性を見誤って信任を失うと、次回の選挙では落選が待ち構えていることから、大きな賭けに出て、信任を回復しようとする。その結果、状況がさらに悪化することが少なくはない。

首長が自分が勝ち取った権力の座を死守するために新型コロナウィルスの大流行に乗っかり、その状況を活用しようとする。多くの場合、負のスパイラルに落ち込む。妥当な方向性を見失い、新たに芽生えた邪心が大失敗をもたらすことがある。ビクトリア州のアンドリュース首相はその好例なのかも知れない。

ヨーロッパに目を向けると、特にオーストリアが目につく。オーストリアでは非常に急進的なコロナ対策が打ち出されている。

ロイター通信の報道によると、現在オーストリアではワクチン接種を受けてはいない人たちに対して都市閉鎖を行っているが、1118日に感染者数が最高レベル(全国で1日に15,145人が感染。このレベルは1年前に記録した9,586 人を大きく上回る。あの当時、オーストリアは全国規模の都市閉鎖に踏み切った)に達したことから、ワクチン接種者も含めて全面的な都市閉鎖を実施することにしたという。北部諸州やザルツブルグでの感染拡大が著しい。ヨーロッパでは冬の到来を控えて新型コロナの感染が増加している。オランダでは部分的な都市閉鎖が導入され、ワクチン接種の有無には関係なく全市民がその対象となっている。(出典:Austria’s focus shifts to full lockdown as COVID-19 cases keep rising: By Francois Murphy, Reuters, Nov/18/2021

その後の報道によると、オーストリアのシャレンベルク首相(訳注:1か月程前に首相の座に就いたばかり)は1122日から10日~20日間の全国規模の都市閉鎖に入ると1119日に発表した。これは第4回目の都市閉鎖となる。それと同時に同首相はオーストリアは来年の21日からワクチン接種を義務化すると宣言した。(出典:Austria is showing that vaccine mandates are no longer unthinkable: By Liam Hoare, The Guardians, Nov/22/2021

こうして、オーストリアはヨーロッパ圏でワクチン接種を義務化する最初の国家となった。義務化にともなって、違反者は罰金を課せられることになる。罰金を払わない場合は刑務所行きとなる。

コロナ対策は専制主義的なものへと急速に変貌しており、特にワクチン接種をしたくはない市民に対しては基本的人権が大きく侵害されようとしている。こうして、オーストラリアでもヨーロッパでも国家が分断され、まさに米国の国内政治をそのまま輸入し、それをコピーをしているかのような観がある。実に不幸なことだと思う。

 

参照:

1The politician who’s used Covid to restrict people’s rights to an unprecedented level strikes again: By RT, Nov/20/2021, https://on.rt.com/bl8v

 

 

 

 

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