ウクライナにおける命の値段：

 

ロシア・ウクライナ戦争を巡っては間違いなくさまざまな出来事が毎日起こっている。これらのほとんどはわれわれ一般庶民の想像がまったく及ばない世界の話である。そんな事例を下記に取り上げてみよう。

◆「私たちはAK-47アサルトライフルを渡され、30分足らずの訓練を受けた。30発の弾丸を撃ったところで、弾薬が高すぎるため、それ以上はもらえないと言われた」という。彼の中隊がドンバスに派遣されたとき、20人が即座に拒否し、脱走罪で逮捕された。「ここに来るとき、私たちは第3防衛線にいると聞かされていました。その代わり、私たちはゼロライン、最前線に行きました。どこに行くのか分からなかったんです」。120人いた中隊のうち、残ったのは54人。残りは死んだか、負傷したか、あるいは脱走した。
・・・抗議行動は、ウクライナ西部の別の地域、トランスカルパティアにも広がっている。フストでは、女性たちが、自分たちの部下が防弾チョッキもヘルメットもなしにドンバスに送られたことを理由に軍事委員を攻撃した。彼女たちは、軍の入隊事務局が違反行為や収賄をしていると非難した。彼らの情報によると、3,000ドルでドンバスへの派遣を免れることができるそうだ。

出典：kiyoさんのブログサイト：「ものセラ｜電気宇宙スピリッツ」　記事の表題：「旧世界は終わった。第25回サンクトペテルブルク国際経済フォーラムでのプーチンの演説」、2022年6月19日。

◆ウクライナからポーランドへと国境を越した避難民は数百万人にもなったという。次の話は最近どこかで読んだことなのだが、今となってはその記事を探しても、残念ながら見つからない。避難民らの証言によると、両国国境のウクライナ側では国境警備隊によるおおっぴらな収賄行為が行われているという。たとえば、家族が車で国境に到着し、そのままトランクを開けることもなく国境を通過するには約20,000ドル、単身で歩いて国境を通過するには5,000ドルとか。それだけ払えば、手荷物の検査や身体をくまなく検査されることもなく通過できるのだそうだ。車のトランクを開けることもなく国境を通過するということは、場合によっては武器の密輸が絡んでいると言う。ウクライナは数年前から闇市場に出回る武器の主要な供給国なのである。そして、ロシア・ウクライナ戦争では、西側諸国からは膨大な量の武器がウクライナへ供給されていることは誰もが知っている。そのような状況は今も続いている。過去4カ月近く続いてきたこのような現状は権力を持ったエリートらにとっては濡れ手に粟の好機会と見えたに違いない。

◆ウクライナへやって来る外国人傭兵（52か国から2万人）は3年間の雇用契約に署名を求められた。ここでも腐敗が蔓延している。新兵は苦労させられる。誰もやりだがらない仕事が新兵の任務となる。仲間とのコミュニケーションがうまく行ってない場合は、最悪の場合、背後から仲間に撃たれることだってある。

率直に言って、傭兵として戦場を渡り歩くことの本質は短期間のうちに大金を掴むことにある。

英国の民間軍事企業のひとつは次のように言って、傭兵を勧誘している：「ウクライナへ出かけたい者、多言語を操れる傭兵を募集。日給は最高で2,000ドル（1,523ポンド）。ボーナス付き。ウクライナ人の家庭を紛争によってますます深まっている混迷から救出しよう！」（原典：Private military firms see demand in Ukraine war: By Bernd Debusmann Jr, BBC News, Washington, Mar/09/2022）

こうして大金を掴もうとしてウクライナへやって来ても、運悪くドンバスの民兵に拘束されて、戦犯として軍事法廷にかけられ、有罪になると、厳しい刑が待っている。しかも、死刑を宣告されたとしたら、まさに身も蓋もない。6月9日の報道によると、ドネツク人民共和国の最高裁は3人の外国人傭兵に対して死刑を宣告した。ふたりは英国人で、残るひとりはモロッコ出身である。最近の報道によると、ふたりの米国人も当局に拘束されているらしい。

ロシア国防相は、6月17日、ロシアによる特別軍事作戦の最中にウクライナへやって来た外国人傭兵に関する数値を公表した。

それによると、ヨーロッパからは、

1位：ポーランド：1,831人。378人が死亡。272人が帰国。

2位：ルーマニア：504人。102人が死亡。98人がウクライナを去った。

3位：英国：422人。101人が死亡。95人がウクライナを離脱。

上記3か国の場合、大雑把に言って、４～５人にひとりの割合で死亡している。

北米の出身者としてはカナダから601人、米国から530人。

さらには、特別軍事作戦中にウクライナへやって来た外国人傭兵の総数は6,856人(注：上述のBBC Newsの数値とは大きく異なる)。1,956人が死亡し、1,779人がすでにウクライナを離脱したとのことだ。

外国人傭兵の死者数や裁判にかけられる傭兵の数は今後の成り行き次第では急増するかも知れない。話の内容はむごいものではあるが、現実を直視しようとすると避けては通れない事柄である。