コロナ禍が始まって早くも1年半となった。当初は何が起こっているのかさえもが分からず、闇の中を手探りで歩いているような感じであった。しかしながら、さまざまな事実が解明され、多くのニュースがフェークニュースであることも指摘されている。新たな事実を発掘しようとする努力は今も続いている。少なくとも終息宣言が出されるまでは気を緩めることはできない。
好むと好まざるとにかかわらず、このコロナ禍を政治のための道具として使おうとする動きが各国各様で観察される。その最たるものは武漢の微生物研究所からコロナウィルスの漏洩があったとして中国政府を叩く米国だ。科学的な事実の究明よりも二国間の政治が先行しているような感じである。要するに、米国の国内政治のために中国叩きが最強の道具として使われている。
ここに「コロナ禍を総括する衝撃的なふたつの記事 ― 億万長者は3.9兆ドルを儲け、労働者階級は3.7兆ドルを失った」と題された記事がある（注1）。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。
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新型コロナウィルスの大流行が世界中の一般大衆に及ぼした経済的影響は物理的なそれに匹敵するほど大きいのではあるが、われわれは自分たちの災いのために単に超富裕者らを責めることはできない ― 本物の悪党は家の近くに居る。
簡単な比較として、コロナ禍による経済的影響については二つの記事がすべてを物語っている。つまり、そのひとつはビジネスインサイダーのウェブサイトからの記事であって、それは「億万長者らはコロナ禍の最中に3.9兆ドルを稼いだ」[訳注：2021年1月26日の記事] と報じ、ガーディアン紙に掲載されたふたつ目の記事は「新型コロナは世界中の労働者階級に3.7兆ドルものコストを掛けた」[訳注：2021年1月25日の記事] と伝えている。
一目見ただけで「ピーターから金を巻き上げて、ポールへの支払いを行う」という古典的なパターンを思い起こさせるが、もちろん、世界はそんな風に単純には動いておらず、サイクリングが好きで、純毛のセーターを着込んだ、クラフトビールをがぶ飲みする、社会主義者のあなたの友人らがたとえ何か言ったとしても、これらの見出しの背後にある二つの考えは必ずしも直接関係しているわけではない。
しかし、そのことはこれらのニュース記事を納得し易くしてくれるわけでもない。率直に言うと、私は世界の億万長者は気にもかけては来なかったし、今後も気にかけることはないだろう。彼らは巨大なロケットに乗って火星へ移住し、彼らが抱いている正気の沙汰とは思えない考えや超かっこいい競争の夢は小さな緑色の人間が取り扱うには難題となるかも知れない。
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the working class. They forget that, until all are safe, none are
しかしながら、急速に増加している彼らの富は見出しを決める連中にとっては夢となった。ここに引用されたふたつの記事に加えて、BBCは世界で一番金持ちの10人がコロナ禍の最中に実現した富の増加は地球上のすべての人間がワクチンを接種するために必要な費用を十分にカバーしてくれると声高らかに報じている。世の中は不公平だ！実に不公平である！
だが、このことについて泣き言を言っても仕方がない。われわれの責任でもあるからだ。このコロナウィルスの大流行を乗り切ろうとして家に閉じこもり、必要ではないものを購入し、アマゾンに配達をして貰い、オンラインの娯楽で何時間も声を張り上げ、中毒にでもなったかのようにティック・トックに打ち興じ、ソーシャルメディアでは猛烈にメッセージを発信しまくる。これらの行動のすべては、たとえ何らかの特別な意図がないにしても、株価のブームを引き起こし、世界規模のハイテック巨大企業やその所有者、たとえば、ジェフ・ベソス、マーク・ズッカーバーグ、エロン・マスク、ビル・ゲーツといったビジネス所有者のためになるのである。
誰もがわれわれの倦怠感を金に換えたというわけではない。うーん、大流行の前にさえもすでにお金が溜まり過ぎて、その状況に困っている連中はいた。19世紀の前途を共有する人たち [訳注：過去の100年以上にわたって米国の夢を追っかけてきた人たちを指しているようだ] は米国の強盗男爵、すなわち、ジョン・D・ロックフェラーの言葉である「私はどんな災難であっても、それを機会として捉えようとして来た」を共有している。いわゆるオバマの賢人と称されたウオレン・バフェットは昨年の3月以降に20兆ドル以上を儲けた。
不幸にも、彼の幸運は世間が使えるようなもの、たとえば、老人や弱者のための無料の養護施設、あるいは、誰もが買いたいと思うような信頼性の高い新型コロナワクチン、等を売ることによってもたらされたのではなく、彼がすでに所有している何百億ドルもの資金を上手に投資することによって実現されたのである。
もしも新型コロナウィルスの大流行は国家経済やわれわれの日常生活にもたらした、津波のような、想像を絶する影響を引き起こすためのものではなかったとするならば、これらすべてのことを無視することはいたって易しいことである。まさにその通りなんだ。国家経済や人々の日常生活に与えた影響はそれを報告する図表を一目見ただけでもよく分かることだ。
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われわれは誰もがこの新たに当たり前となった状況を受け入れている中、全体としての外観は驚くべき状況にある。経済大国はどこの国でも上昇する一方の失業率と闘っている。イタリアでは2020年には2019年と比べて11％も上昇。米国とフランスでは9％近くだ。英国は5.4％、欧州連合の機関車役を担っているドイツでは4.3％の上昇である。
全世界にわたって小売店に足を運ぶ買い物客は激減した。ドイツでは97％減、英国では78％減、フランスとカナダでは65％減、地球上で最大級の経済を担う米国では20％減となった。
観光業は世界的に崩壊。2020年はタイ国から始まってブラジルやイタリア、フランスに至るまで何処でも観光業は洗い流されてしまった。航空業界はどうであろうか？完全に打ちのめされた。この状況は何百万人もが職を失ったことを意味し、多くの人たちは旧職場に復帰することはないであろう。
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これ以上例を挙げ続ける必要はない。あなたが億万長者ではない限り、現実を受け留めようではないか！これらの数値はどれを見ても最悪だ。
われわれの経済が崩壊した結果、あの巨大なブラックホールに続いて、仕事場からは労働者のための稼ぎの場が失われ、その総額はいとも簡単に3.7兆ドルにも達したということをあなたは信じることができると思う。英国のような国々ではさまざまな形の政府支援を受けた一時帰休制度や収入支援プログラムがあるが、それらにも遅かれ早かれ終わりがやって来る。そうすると、この総額はもっと膨らむ筈で、あなたはそれに賭けるしかない。
世界の億万長者を悪魔の人形遣いとして描き、世界に君臨し、火星へ向けたマスターたちの間の競争を作り出すことが世界中の労働者の給与を搾り取ることに繋がり、彼らはもっと多くのロケット燃料を購入し、山の中にマンションを建てることができるのだと描写することはある意味で愉快なことではあろう。だが、悲しいことには、現実はそれよりも遥かに平凡である。
各国の政府はいずれもこの大流行によって素早く動くことはできず、どの政府も後に恐ろしい代価を支払うことになった。何年にもわたって自己満足に溺れ、公共医療予算がカットされ、世界的なパンデミックの警告に対しては否定的にしか対応しなかった。これらの状況こそが今のわれわれの悲惨な居所に追いやったのだ。
新型コロナ危機に対する無秩序とも言える対応は秘密の島の隠れ家へ逃避しようとするひねくれ者の億万長者のせいだとすることはできないが、その責任は我々自身が選挙で選出され、公の監視の中で行動する政治家の足元へ置くことは可能だ。
注：この記事の中で述べられている主張や見解、意見は全面的に著者のものであって、必ずしもRTの見解や意見を代弁するものではありません。
著者のプロフィール：ダミアン・ウィルソンはかってはフリート街 [訳注：ロンドンの主要道路のひとつで、新聞社が集まっている通りとして知られている] で編集者として勤務した英国のジャーナリストであって、英国やEUで財界でのコンサルタント役やコミュニケーションに関する特別顧問役を担っている。
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これで全文の仮訳が終了した。
英国人特有の回りくどい表現が気なるでしょうが、そういった箇所はもう一度読み返してみてください。訳文としては出来るだけ原文の雰囲気を残すように努めています。
最初に思ったことは上記に引用されているふたつの記事は今年の1月末の出版であるという点だ。つまり、あれから半年が経過し、億万長者たちはさらにどれだけの儲けを付け加え、労働者の失業に伴う損失はさらにどれだけ拡大したのであろうかという点だ。単純計算すれば、1.5倍に膨らんでいるのかも知れない。あるいは、新たな問題が派生して、それよりも大きな数値になっているのかも知れない。ただ、現時点ではデータを更新する時期ではないかも知れないが、遅かれ早かれデータの更新をして貰いたいものである。
参照：
注1：Two shocking headlines that sum up Covid: Billionaires MADE $3.9 trillion during the pandemic, while workers LOST $3.7 trillion: By Damian Wilson, Jan/30/2021, https://on.rt.com/b0na
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