2019年7月31日水曜日

西側はなぜ中国の成功を無視しようとするのか

この投稿の表題が示す内容は西側のメディアにとっては触れたくはないテーマのひとつであろう。

この記事の著者はアンドレ・ヴルチェクである(注1)。アンドレ・ヴルチェクはこのブログではすでに何度か登場していただいている。たとえば、2016年7月11日には「日本のメディアが誰にも喋って欲しくはないこと」と題する投稿を掲載した。2018年1月9日に掲載した「戦場の特派員からの新年のメッセージならびに警告」という投稿ではこの著名なジャーナリスト・哲学者・作家・記録映画製作者としての信条を詳しく学ぶことができた。すでにお気付きのこととは思うが、これらの論評には歯に衣を着せない著者の姿勢が色濃く出ている。

私は彼の率直に意見を述べる姿勢や洞察力の深さが好きだ。建前論ではなく、物事の本質に迫ろうとする姿に敬意を表したい。真実を報告されることによって不都合に感じる政治家や政治団体が出てくるだろうが、好むと好まないとにかかわらず、それは政治にとってより本質的な視点を見い出すために必要なひとつのプロセスである。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

中国が今までに達成した事柄をべースにして著者は中国が近い将来何処へ行き着くのかを読み取ろうとしている。彼の主張は多くの識者が支持するであろうが、その一方では、恐らく、多くの政治家や政治集団は不都合な真実に当惑することであろう。

<引用開始>

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今までは漫画的でさえあったが、今や、決してそうではない。突然、状況が変わったのである。過去においては、盲目的な嫌悪感が中国についての無知を招き、少なくとも、西側のプロパガンダやマスメディアによる洗脳をもたらした。

しかし、今はどうか?中国が達成した大躍進、素晴らしい人道的な社会政策、決然と庶民に焦点を当てた科学研究を行い、いわゆる「生態学的文明」を目指して行進する中国の様子は詳しく文書に記録されており、そのことを本当に知りたいと思うならば、中国の本当の姿を学ぶのに誰でもが数多くの機会に恵まれることであろう。

しかし、本当に学ぼうとする者は少ないようだ。少なくとも西側では極めて少ない。

西側各国およびその衛星国においてはほとんどすべての国で中国は否定的に捉えられている。その一方で、アフリカで実施された調査によると、アフリカでは中国が称賛され、好まれていることは明白である。これは、ヨーロッパや北米からのマスターに対する依存性を断ち切るために中国がアフリカで支援の手を差し伸べていることを考えると頷けることだ。

昨年(2018年)、影響力のあるピュー・リサーチ・センターが行った調査によれば、中国は非西側諸国のほとんどの国によって好意的に評価されている。たとえば、中国がインフラの整備や社会的プロジェクトに従事しているケニアでは67パーセントが、アフリカで最大の人口を抱えるナイジェリアでは61パーセントが、アラブ人国家であるチュニジアでは70パーセントが、南シナ海における島々を巡る紛争では西側が火に油を注いで来たにもかかわらずフィリピンでは53パーセントが、今や中国にもっとも近しい同盟国となったロシアでは65パーセントの人々が好意を抱いている。

英国では49パーセントが、オーストラリアでは48パーセントが中国を好意的に捉えている。中国に好感を抱くドイツ人はたったの39パーセントで、米国では38パーセントだ。

しかしながら、本当に衝撃的な点は中国的な特徴を備えた真の社会主義に向けて中国を引っ張っている習主席に対する西側の態度にある。彼は極貧を撲滅し(2020年を目標に中国全土から極貧を駆逐する)、文化や生活の質、生態系、中国人民の健康や福祉を経済指標以上に押し上げようとしているにもかかわらずである。

保守的で反共産主義的なポーランドがこの集団の先頭をきっている。同国では習主席の指導力に「信任」を置く市民はたったの9パーセントである。ギリシャでは11パーセント、イタリアでは14パーセント、スペインでは15パーセントだ。これはヨーロッパの実情を伝えている。カナダでは42パーセント、米国では39パーセントである。

この実態は単に無知のせいであろうか? 

中国のメディアからインタビューを受ける時、多くの場合、私は同じ質問に遭遇する:「われわれは規則にしたがって行動し、地球環境を改善するために最善を尽くそうとしているのに、西側ではどうして何時も批判されるのだろうか?」

答は明白である: 「まさにそのこと自体が理由なのだ。」 

***

20年程前、中国とその社会主義プロジェクトは依然として「未完の段階」にあった。東部の都市地帯と地方との間には生活水準に大きな違いがあり、歴然としていた。輸送インフラは不適切であった。工業都市の汚染はひどいものであった。何百万人もが職を求め、より快適な生活を求めて、地方から都市へ移動しようとしていた。これは中国の社会システムに大きな歪をもたらした。

中国を嫌う人たちは当時の中国政府を批判した。攻撃するための「実弾」は豊富にあった。中国は発展していたが、国家を優福にし、清潔で健康な社会を築くという仕事は果てしもなく続く無駄な仕事であるかのようにさえ見えた。

その後の展開はまさに奇跡である。人類の歴史には前例がない。第二次世界大戦前のソ連邦だけが高度成長と国民の生活水準の改善において中国が過去20年間に達成したレベルを越していただけである。

中国では何もかもが変わった。都市は綺麗になり、緑化され、生態学的に整備され、公園が多くなって、大人や子供たちのために運動器具が設置されている。都市の中心部には第一級の(生態学的にも優れた)公共交通手段が整備され、立派な博物館やコンサートホール、素晴らしい大学、医療センターが設けられている。超高速列車が国中の大都市間を結び、運賃は政府からの補助によって支援されている。共産主義国家である中国では政府と共産党がすべてを計画し、民間は国家に仕えるためにある。その逆ではない。この構造はうまく動いている。目覚ましいほど立派に動いている。自分たちの国家を如何に統御するべきかに関して中国の市民は西側の市民よりも発言力がある。

都市は清潔で、効率が良く、まさに市民のために構築されている。乞食は見当たらなく、スラム街もない。悲惨さはない。状況はますます良くなっている。

中国を初めて訪問する外国人は衝撃を受ける。つまり、中国は米国や英国よりも遥かに裕福に見えるのだ。街の通りや空港、地下鉄、超高速鉄道、劇場、歩道、公園を見ると、ニューヨークやパリの住人に恥じらいを感じさせるほどだ。

しかしながら、中国は金持ちではない。現実に、金持ちとは程遠い!中国の人口当たりの国内総生産は依然として相対的に低いが、そのことが「中国的な特徴を持った共産主義」を強く印象付け、帝国主義によって動機付けられた西側の資本主義に勝るのである。国家が繁栄を極め、国民が今まで以上に立派な人生を送り、環境を維持し、偉大な文化を推進するために人口当たりで5万ドルを超すような平均収入は中国では必要ではない。

まさに、これこそが西側が恐れ慄いている理由なのではないか? 

経済成長がすべてである西側では、将来を楽観視する代わりに、恒常的に恐れを抱くのである。毎年何兆ドル、何兆ユーロもが浪費されている西側では、超エリートは不条理なほどに優雅な生活を送り、理由もなく不必要な過剰生産や武器の蓄積を指揮し続ける。これらは大多数の国民の福利厚生には何の役にも立たない。

中国とその中央官庁の計画が自国の市民や世界のためにより好ましい、より論理的なシステムを提供している。

中国の科学はそのほとんどが地球上の生活を如何に改善するかにその焦点が当てられており、冷酷な利益を追求するためではない。 

習主席の申し子である一帯一路(BRI)は世界中で何億人をも貧困から救済し、世界を分断するのではなく、世界を連携するよう意図されている。 

どうして習主席はヨーロッパでこれほどまでに嫌われているのか? 

それは、まさに、中国がとてつもない大成功を収めているからではないか? 

***

前の論点へ戻ろう: 20年ほど前、中国は社会や環境に関して大きな問題を抱えていた。どんな形であろうとも共産主義を嫌う西側の連中は中国へやって来て、こう指摘したものだ: 「上海や深圳は今や繁栄を極めている。だが、沿岸にある他の都市を見たまえ。違いが見えるかい?」 

その後、沿岸のすべての都市も改善し始めた。公園を設け、大学を設立し、地下鉄を開通させ、美しい街並みを作り始めたのである。

西側の批判は続いた: 「沿岸地帯を離れて、西部へ入って見たまえ。中国はひどく不平等であることが分かるだろう!」 

そうこうしているうちに、中国西部も大きく改善した。これらの西部の都市と沿岸部の都市との間には生活の質について言えば実質的な違いはなくなった。

「すべてがすこぶる皮肉だ」と大言壮語氏は続け、こう言った。「都市部と田舎との違いはとてつもなく大きく、農民は自分たちの集落から離れ、都市部で職を探している。」 

習主席の指導下で、田舎はどこでもが徹底的な改善や見直しを受けた。交通機関や医療サービス、教育機関、求職、等が著しく改善されたことから、2018年には、現代史上で初めて、人々は都市部から田舎へ移動し始めた。

さて、今は何が問題であろうか?次の課題は?「人権かい?」 目を開いて良く見れば、もはや、けなす材料なんて見当たらない程だ。

しかし、中国が立派になればなるほど、中国が自国民や世界中の人々について面倒を見れば見るほど、中国はさらに厳しい攻撃を受ける。

西側の政府や大手メディアからは「ワーオ!」という感嘆詞は一言も発せられない。「環境問題や社会システム、科学、公的な物事については何であっても中国は今や世界の指導者だ」という言葉は一言もないのである。

なぜか? 

答は明確だ。不幸なことには気が滅入るほどだ: 何故かと言えば、西側は中国、あるいは、中国の指導者が成功することを望んではいないのだ。もしも成功すれば、彼らは沈黙するしかない。ふたつのシステムは大きく異なり、中国のシステムが正解だとすれば、西側のシステムは間違いだと言うことになるのだ。

そして、西側は世界にとっていいことだと言えるような概念なんて模索しようともしない。自分自身の概念が生き残り、地球上のすべての国家を凌駕することだけを望んでいる。それだけだ。

このことこそが自国民を窮乏から救済し、新たな、より立派な社会を構築しようとする国家の間では中国がもてはやされる理由なのである。これが、西側や西欧人の子孫がマスメディアを支配し、コントロール下に置いている国々(たとえば、アルゼンチン)においては、中国が徹底して中傷され、嫌われ、さらには嫌悪される理由なのである。

好意的な指摘について一言だけ付け加えておこう。西側において、ならびに、西側によってマスメディアがコントロールされている地域においては揺るぎのない、悪質なプロパガンダが絶え間なく展開されているにもかかわらず、今まで以上に多くの人々が習主席に信頼感を置いており、それは米国のドナルド・トランプ大統領を凌ぐ勢いである。トランプ大統領によって元気づけられると感じる人々は世界中で27パーセントにしかならない。

著者のプロフィール: アンドレ・ヴルチェクは哲学者であり、小説家、記録映画製作者、調査報道ジャーナリストでもある。彼は「Vltchek’s World in Word and Images」を(インターネット上に)構築し、「China and Ecological Civilization」を含め、何冊もの本を書いている。また、オンライン・マガジンの「New Eastern Outlook」にて独占的な執筆を続けている。 

<引用終了>

これで全文の仮訳は終了した。

「どうして習主席はヨーロッパでこれほどまでに嫌われているのか? それは、まさに、中国がとてつもない大成功を収めているからではないか?」という指摘は秀逸である。著者は言いにくいことをズバリと指摘している。

読者の皆さんはすでにお気付きのことと思うが、アンドレ・ヴルチェクの基本的な姿勢は米国が過去数十年間推進して来た持てる国、覇権国としての米国の対外政策には疑問を抱いており、持たざる国とその国の一般庶民を何とか防護しようとすることにある。たとえば、持たざる国での仕事を終えて、米国の空港に到着した時、一種異様な空気を感じると彼は自分の体験を他の記事で語っている。米国社会は持たざる国の一般庶民の現実とはかけ離れ、苦い錠剤の外側を口当たりのいい物質で覆った糖衣錠のようなものだと言う。彼はこのような状況を「疑似的現実」と称している。現実が呈する苦い味は美辞麗句に飾られたプロパガンダによって化粧され、本当の味は巧妙に隠されてしまう。外観的には決して見えない。この疑似的現実は長年にわたるプロパガンダの産物であり、マスメディアによって喧伝されてきた洗脳の成果である。

私が言わんとしていることに関して幅広く理解したい方には、そのスターターとして2018年1月9日の投稿、「戦場の特派員からの新年のメッセージならびに警告」を読んでいただきたいと思う。


参照:

注1:Reason Why the West is Determined to Ignore China’s Success: By Andre Vltchek, NEO, Jul/17/2019






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